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圧倒的面白さ!ベイジン〈上〉(幻冬舎文庫) 真山 仁

2010年04月23日 00時05分22秒 | 書評 小説系
まだ、上巻しか読んでいませんが、
ものすごく面白いです。下巻に飛びつきました(笑)

ストーリーは、北京オリンピック前夜、
国家の威信をかけた原子力発電所の建設に携わる
日本人技術顧問と地方都市の中国共産党幹部との
葛藤を描く経済小説です。ストーリー展開のうまさ
もさることながら、日本人の思考方法、
中国人の思考方法というものが克明に描かれていて、
その対比をつかみ取りながら、中国のいま置かれている問題が
何に根差しているのかがよくわかる情報小説です。

本書は、北京オリンピック前夜に単行本として出版されていますが、
今また中国は上海万博の開催を控え
国を挙げての大イベントに総力を注ぎこんでいます。

国際社会の視線を気にして体裁を整える外側の部分と、
共産党一党独裁政治の中で腐敗と汚職が蔓延している内側の部分。
そこに、自我の強い中国人気質があいまって、
いわく言い難い強烈な国家体質を作り上げているのが今の中国です。
行ってみたいとは思いませんが、
強い興味と関心を惹きたてる魅力を持っています。


本書を読んでいると、
浅田次郎の「蒼穹の昴」「中原の虹」を思い出します。
こちらは、清朝末期の中国を描いたものですが、
中国人の気質は帝国主義社会下でも共産主義社会下でも
本質的には何ら変わっていないのだろうなと思わせる感じがしました。

もちろん創作の小説における描写で現実の中国人気質を語るのは
おかしな話だし、現実には様々な中国人がおられると思います。
しかし、観察力・洞察力に優れている二人の作家が描く
中国人の描写は、それほど的を外してはいないだろうと思いました。


ベイジン〈上〉 (幻冬舎文庫)
真山 仁
幻冬舎

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メーンストーリーからは外れますが、
映画監督の楊麗清を支援する李明恵が言った言葉
として紹介されていた次の言葉が印象に残ります。
「国際社会に仲間入りしようと必死にもがきあがく中国の姿を、
過不足なく後世に残す責任を負っていると。
そのためには・・・、目の前で起きている現実から目を背けず、
むしろその現実の中から真実を浮かび上がらせようとする・・・」


目の前の現実に目を背けず
その現実の中から真実を浮かび上がらせ
問題解決に立ち向かうのは、
中国人だけでなく日本人にとっても
とても大切なことだろうと思います。

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