徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

スギ花粉症、始まりました。

2014年01月31日 06時37分44秒 | 小児科診療
 花粉症シーズン入りが発表されました。

関東で花粉シーズン始まる 昨年より1週間早い
(2014年1月30日:毎日新聞)
気象情報会社ウェザーニューズ(千葉市)は29日、関東地方で花粉シーズンが始まったと発表した。スギ花粉に敏感な人に花粉症の症状が出る飛散量に達したという。昨年より1週間早い。西日本では2月中旬以降、東北地方では2月下旬以降にシーズンに入るという。
 同社によると、今シーズンの花粉飛散量は昨年の8割程度に減るが、平年と比較すると1割程度多い。飛散のピークは関東から西日本で3月上旬~中旬、北陸で3月下旬、東北で4月上旬~中旬になるという。


 重症度に応じた治療のわかりやすい図表を朝日新聞の記事に見つけました;

進化する花粉症治療 眠気少ない市販薬、症状ごとに選択肢
(2014年1月14日:朝日新聞)
 今年もスギ花粉が大量に飛ぶ季節が近づいてきた。つらい鼻水や鼻づまり。花粉症は今や、3人に1人が苦しんでいるという国民病だ。最近は、眠気などの副作用が少なく、症状ごとに効果的な薬も増えている。自分に合った治療法を見つけることが大切だ。
 東京都内に住む主婦(53)は、20年ほど前からスギ花粉が飛ぶ季節になると、鼻水や鼻づまりに悩まされてきた。約3年前から、花粉が本格的に飛ぶ時期より前に、薬を飲み始める「初期療法」を始めた。飲むのは、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬だ。症状は軽くなり、夜もよく眠れるようになった。同じタイプの薬はもともと眠気などの副作用が強かったが、第2世代の薬は副作用もほとんど感じなかった。「花粉を心配しないで生活ができるようになった」と話す。
 現在、第2世代抗ヒスタミン薬は花粉症治療の主力になっている。国内で承認された薬は約15種類に増えた。それぞれ症状を止める作用や眠気などの副作用の強さに違いがあり、選択肢が広がっている。2011~12年に眠気などの副作用が少ないアレジオンアレグラが市販薬としても発売され、12年に鼻水と鼻づまりの両方の症状に効果があるディレグラが医療用薬に承認された。
 日本医科大学の大久保公裕教授ら耳鼻咽喉科の専門家チームは、13年に花粉症の治療に使う鼻アレルギー診療ガイドラインを4年ぶりに改定した。新しい薬を含めて重症度ごとに治療法を整理した。





 上図は「鼻アレルギー診療ガイドライン」に沿った治療ですが、抗アレルギー薬(第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬)の欠点は「高い」ことです。
 漢方薬をうまく使った方が安く済むのに・・・。

 トピックスだった「舌下免疫療法」の発売は4月以降となるようで、今シーズンの対策としては使えないことになりました・・・残念です。
 アレルギー学会などが中心にガイドラインを発表しました。
★ 「スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き
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小児科学会による2013/14年版インフルエンザ診療指針

2014年01月29日 06時03分48秒 | 小児科診療
 日本小児科学会が季節性インフルエンザの診療指針を発表しました。
 今シーズンの特徴は、この2年間ほとんど検出されなかった「A(H1N1)pdm09」が一定の比率で検出され、かつ一部にタミフル/ラピアクタ耐性株が確認されていることです。このウイルスは2009年に新型インフルエンザとして登場した新しいタイプで、2010年以降は季節性インフルエンザに格下げされていますが、怖がる必要はないもののまだまだ要注意、との注意を喚起するスタンスです。
 重症リスクのある患者には早期の抗インフルエンザ薬の使用を推奨する一方で、「尾木ママによるTV-CMは過剰広告」と問題視されている点滴薬のラピアクタ®の外来使用は推奨していません

小児学会がインフル指針を発表 A(H1N1)pdm09流行で重症肺炎の増加を危惧
(2014年1月28日:M3.com)
 日本小児科学会インフルエンザ対策ワーキンググループは1月28日、「2013/2014シーズンのインフルエンザ治療指針」を発表した。2009年にパンデミックを起こした「A(H1N1)pdm09」の分離が50%を超えて再流行し、小児への感染拡大と重症ウイルス性肺炎の増加が危惧されている。さらに、オセルタミビル(タミフル®)とペラミビル(ラピアクタ
®)の耐性を獲得した「A(H1N1)pdm09耐性株」も報告されていることから、学会が抗インフルエンザ薬処方、ワクチン接種や重症肺炎への対応などをまとめた。
 指針では基本的な考え方として、「A(H1N1)pdm09耐性株の病原性については不明で、報告も限られているため、インフルエンザ診療方針に大幅な修正の必要性はない」と説明。
 外来対応としては、早期の薬剤投与による重症化予防を期待して、重症化リスクの高い幼児や基礎疾患のある場合、呼吸器症状が強い場合には投与を推奨する。発症から48時間が経過していても、リスクが高く症状が続く場合は投与を考慮する。ただし、多くの場合で自然軽快する疾患なので、薬剤投与は必須ではないとも記載している。薬剤はオセルタミビル(タミフル®)、ラニナミビル(イナビル®)、ザナミビル(リレンザ®)の3剤から選択するのが原則で、ペラミビル(ラピアクタ®)の外来使用は積極的に推奨しない。指針では年齢による3剤の使い分けを表で示している。
 一方、入院患者では全例に薬剤治療を推奨。耐性ウイルスの疑いがある時には、感受性が保たれているラニナミビル、ザナミビルを選択する。重症で吸入できない場合は、ペラミビルの増量および連日投与も考慮する。指針では「10mg/kg/回、1日1回、連日5日間投与で有効濃度がほぼ維持される」いう研究結果も紹介している。また、詳細な症例とともに、小児インフルエンザ重症呼吸不全に対する診断、治療、感染防御策、診療支援などをエキスパートオピニオンとしてまとめている。
 ワクチンについては、現時点ではワクチン株と流行株のずれは認められていないため、未接種の児童にはできるだけ早く接種するよう推奨している。


2013/2014シーズンのインフルエンザ治療方針(日本小児科学会)

 一方、これからの新型インフルエンザ候補の診療指針も過去に発表されていますので、こちらも記しておきます。

日本感染症学会「鳥インフルエンザ指針」発表 日本の事情を勘案し、投薬も具体的に解説
(2013年5月21日:m3.com)
 日本感染症学会は5月17日、提言「鳥インフルエンザA(H7N9)への対応」を公開した。5月13日時点での情報を基に策定した指針であり、暫定的なものと位置付けている。ホームページに掲載している。
 現時点ではヒト―ヒト感染は確認されていないが、今後パンデミックに至る可能性はゼロではない。高い病原性を持つ鳥インフルエンザA(H5N1)と比べ、H7N9はより広く感染が広がる可能性があるとした上で、「日本の優れた診療体制を効果的に駆使すれば被害を小さくすることが可能」と述べている。
 重要な点として、
(1)迅速診断キットも有用だが、感度が必ずしも高くない点もあり、臨床診断が重要であること
(2)疑い例を含めノイラミニダーゼ阻害薬による早期の治療開始が最も重要だが、発症後48時間を過ぎても投与すべきこと
(3)原則としてオセルタミビルを推奨。服薬困難な場合は最初からペラミビルを投与する。ザナミビル、ラニナミビルは推奨しないこと
ーなどを挙げている。


★ 日本感染症学会提言「鳥インフルエンザA(H7N9)への対応【暫定】

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予防可能な病気が先進国で流行する理由

2014年01月28日 07時13分02秒 | 小児科診療
 感染症・伝染病の流行はワクチンで予防可能なものがあります。
 しかし、ワクチンの存在=感染症撲滅とはなかなかスムースにいかず、いろんなハードルがあります。
 途上国では貧困が主因となりますが、先進国では・・・

伝染病の世界地図:予防可能な病気が先進国で流行する理由
(WIRED.jp 2014年01月24日・・・livedoor news)
 麻疹や風疹などのワクチン予防可能疾患が、発展途上国だけでなく、先進国でも流行していることがわかる地図を紹介。英国では、反ワクチン運動が一因となっている可能性があるという。
 米国の超党派組織で、『フォーリン・アフェアーズ』の刊行などで知られる外交問題評議会は、ワクチンで予防可能な伝染病の流行に関するデータを2008年から収集し、そのデータを インタラクティヴマップで可視化している。
 関心がある人は、この数年間に世界で病気が流行した地点を時系列で確認できる。主なデータは、麻疹(はしか)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、風疹、百日咳、およびポリオだが、他のいくつかの病気が流行した記録も見ることが可能だ。
 アフリカでは麻疹とポリオが最もよく流行しているが、あまり見られない病気の流行もある。例えば、ザンビアとジンバブエでは腸チフス、ウガンダではエボラ出血熱の流行があり、シエラレオネでは2012年にコレラが大流行している。一方、風疹はそのほとんどが日本と東欧で発生しており、百日咳は米国、オーストラリア、ニュージーランドでよく発生している。
 『Los Angeles Times』紙はこの地図について、さまざまな反ワクチン運動とワクチンへの恐れが世界の一部地域で影響している可能性を示すと指摘した。その一例として挙がっているのが、麻疹の流行が集中的に起こっている英国だ。

◇ 英国での予防接種率を下げてしまった論文
 英国では1998年、アンドリュー・ウェイクフィールドが、新三種混合ワクチン(MMRワクチン:麻疹、流行性耳下腺炎、風疹)が子どもの自閉症に関連しているという内容の論文を発表した。
 その後の研究と調査によって、この論文は信ぴょう性に乏しいことが広く認められたため、複数の共著者がこの説の支持を撤回し、ウェイクフィールド氏は医療監察委員会(GMC)から医師免許を剥奪された(英医学誌『ランセット』は2010年、1998年の論文を完全に撤回すると発表した)。
 だが、ウェイクフィールド氏の研究は英国等の諸国で影響力を持ち、多くの保護者が新三種混合ワクチンに疑いを抱くようになった。英国での接種率は、この論文が発表される前には92%だったが、論文公開後には80%に減少した。
 ただし、指摘すべき点がもうひとつある。英国で新三種混合ワクチンが標準的な予防接種として導入されたのは1988年になってからであり、しかも、この時期に予防接種を受けた子どもの中には、免疫をつけるために必要な2回の接種のうち1回しか受けられなかった人もいたのだ。従って、英国で麻疹が流行する原因が、ウェイクフィールド氏の論文のみにあるとは言えない。それでも、この論文が影響した可能性は大いにあり、現在でもその影響は確実に見ることができる。

※日本では、1988年から新三種混合ワクチンが実施されていた。しかしムンプス(流行性耳下腺炎)ワクチンによる副反応(無菌性髄膜炎の発生率が高いこと)が問題となって、1993年に中止となった。現在では、個別接種が行なわれているほか、2006年4月から、副反応が問題となったムンプスワクチンを除いた、麻疹・風疹混合(MR)ワクチンの接種が開始された。


 この記事で紹介されている「インタラクティブマップ」はいろんな見方ができて興味深い。例えば、2013年に設定すると、

麻疹

 途上国に混じってイギリスが突出して流行していることが読み取れます。
 記事の中で紹介された内容そのもの。

風疹

 日本とポーランドしか流行していない?
 日本はワクチン反対派による接種率低下ではなく、国の予防接種行政不備のために国民が犠牲になっている構図です。
 先進国として「恥ずべき状況」としか言いようがありません。
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花粉症の話題2つ

2014年01月26日 07時38分12秒 | 小児科診療
 「そろそろ花粉症の季節なので薬をもらいに来ました」という患者さんを散見するようになりました。
 最近目にとまった花粉症関連のニュースを;

増える子供の花粉症、5歳までの発症が4割超える ロート製薬調査 乳幼児期の湿疹治療がカギ
(2014.1.22:メディカルトリビューン)
 「子供が花粉症で寝つきが悪く、鼻詰まりのせいで夜泣きをする」―保護者としては、小さな子供が花粉症に苦しむ前に手を打ちたい。ロート製薬は2014年1月8日、16歳以下の子供を持つ保護者を対象にアンケート調査を実施した結果、「子供が花粉症」が約3割、「5歳までに発症」が4割を超え、低年齢化傾向にあると報告した。また、1歳までに2カ月以上湿疹が続いた子供の花粉症発症率は1.5倍との結果から、大阪府済生会中津病院小児科の末廣豊医師は「乳児期の湿疹から子供のアレルギー疾患が始まり、湿疹をできるだけ早く治すことが"アレルギーマーチ"(成長とともにアレルギーが変化すること)の発展阻止につながることが証明されつつあります」との見解を示した。
 この調査は昨年11月26日~12月2日、0~16歳の子供を持つ全国の父母2,082人(子供3,472人)を対象に、インターネットを介して行われた。その結果、「子供が花粉症だと思う」と回答した父母は28.8%、そのうち、子供が花粉症を発症した年齢について「5歳」と答えた人が12.5%で最も多かった。なお、5歳までに41.8%、10歳まで78.8%が発症していた。
 これらの調査結果を受けて、末廣医師は、「子供の花粉症患者の増加や低年齢化が目立ち、両親がスギ花粉症の場合では理論的に子供もほぼ100%発症する」「いったん発症すると自然に治ることはなく、乳幼児期から花粉を避け、屋内に花粉が侵入するのを防ぐこと、発症してからは早めに予防治療することが大切」と話す。
 近年では、皮膚から食物アレルゲンなどのアレルゲン感作が始まることを証明するデータは増え続けることから、「乳児期の湿疹から小児のアレルギー疾患(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎/花粉症)が始まる、すなわちアレルギーマーチは皮膚から始まるということが証明されつつあり、乳児期の湿疹をできるだけ早く治しておくことがアレルギーマーチの発展を阻止につながります。湿疹やアトピー性皮膚炎の予防には、保湿剤などで皮膚をつるつるにしておくことが重要との報告があります」と述べた。


 近年指摘されてきた「スギ花粉症の低年齢化」が数字として表れています。確かに、1歳でもスギ花粉症と云わざるを得ない患者さんもいらっしゃいます。
 また、「”茶のしずく石鹸”事件」で有名になった「経皮感作」も話題です。口から入ると大丈夫だけど、炎症のある皮膚から入るとアレルギーの原因になりかねない、という学説。
 次は私の花粉症診療に多用している漢方薬の記事;

花粉症に効く、眠くならない漢方の種類
(JIJICO:2014年01月25日)
 花粉シーズンが近づいてきました。花粉症は、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となってアレルギー症状を起こす病気です。花粉の飛ぶ季節に症状が起きるため、「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれています。日本では、スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、シラカバなど約60種類の植物により花粉症を引き起こすと報告されています。
 くしゃみ、鼻水、鼻づまりだけでなく、目のかゆみ、なみだ、充血などをともなうことが多く、喉や皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽい、といった症状が現れることもあります。一年中、症状が出る場合は「通年性アレルギー性鼻炎」と呼ばれ、花粉以外に、ダニ、ハウスダスト、昆虫、ペットの毛・フケなどに対してアレルギーが起こり、喘息やアトピー性皮膚炎などを合併することもあります。 
 花粉症は、漢方では「 溢飲(いついん)の病」といって、体の余分な水分が外へあふれ出る病とされています。水毒体質で体に余分な水分を抱えた冷え性の人が多く、体質改善に使用する漢方薬と、くしゃみや鼻水といった寒証型の症状を改善する漢方薬で対応します。よく使用されているのは、小青龍湯(しょうせいりゅうとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)。これらは、主に体が冷えやすく鼻水がサラサラの人に効果的で、体を温めて鼻汁を減らす生薬が用いられています。
 鼻が詰まってくる場合は、葛根湯加辛夷川芎(かっこんとうかしんいせんきゅう)や辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)などを処方します。喉や鼻の粘膜が赤く腫れてくる慢性炎症であれば、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)なども使用します。漢方薬は眠くならないので、ビジネスマンや受験生に喜ばれています。
 スギは、恐竜の生息した時代に登場した起源の古い植物群です。奈良・吉野地方には昔からたくさんのスギがありますが、花粉症患者が特に多い地方でもありません。となると、花粉症が増え、治りにくいのは「現代人の体質の変化」と考えられます。
 スイーツ(洋菓子・和菓子・果物)の食べ過ぎは、水毒体質にもつながります。水毒体質を改善することが、アレルギーを改善する近道です。花粉症の人は、花粉が飛び始める前から極力、スイーツを控えてみてください。きっと、漢方薬の効きも良くなるでしょう。


 西洋医学の薬はどうしても眠くなる傾向があるので、大人では車の運転が心配ですし、受験生にも使いづらい。
 この点、漢方薬は眠くならないし、とくに”麻黄”という生薬入りのエキス剤は逆に目が冴えるのです。
 一つの薬で効果不十分の時は、西洋薬+漢方薬の併用療法がお勧め。
 ”眠気を消して効果2倍”というおいしい治療法です。

 ただし、安易な使用はトラブルの元です。
 虚弱体質の方には”麻黄”は胃にくるし、循環器疾患をお持ちの方には症状増悪の危険があります。
 また、「熱証」(炎症を起こして熱を持っている)と「寒証」(冷えている)の見立てを間違うと、全然効きません。
 漢方薬は主治医と十分相談されてから処方してもらいましょう。

 最近気になるのは、大人でも「粉薬はダメなんです」という方が少なからずいらっしゃること。
 これでは子どもに薬を飲ませることも難しいだろうなあ・・・「(お母さんは飲めないけど)この粉薬を飲みなさい!」というのは説得力に欠けますよね。
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40例目の先天性風疹症候群が発生

2014年01月23日 13時02分19秒 | 小児科診療
 予想通り、CRS(先天性風疹症候群)の赤ちゃんが増えています;

風疹で障害の赤ちゃん40人に
(2014年1月22日:NHK)
 風疹の流行の影響で赤ちゃんに障害が出る症例が全国で相次ぐなか、新たに2人の赤ちゃんが「先天性風疹症候群」と診断され、おととしからの流行で障害が出た赤ちゃんは全国で40人となりました。
 風疹は、妊娠中の母親が感染すると、赤ちゃんの心臓や目、耳などに障害が出る「先天性風疹症候群」になるおそれがあり、去年の春から夏にかけて風疹の流行がピークとなったことから、この冬にかけて生まれる赤ちゃんへの影響が心配されています。
こうしたなか、埼玉と東京の医療機関からそれぞれ1人ずつ、合わせて2人の赤ちゃんが「先天性風疹症候群」と診断されたと自治体に報告があったということです。この結果、おととしから続いた流行で「先天性風疹症候群」と診断された赤ちゃんは全国で40人となりました。
日本周産期・新生児医学会では、風疹で障害の出る赤ちゃんは今後も増えるおそれがあるとして、医療機関での対応の方法をまとめた産科や小児科の医師向けのマニュアルを作り、赤ちゃんを早期に診断して治療や支援につなげるよう呼びかけています。


 一方、来たる東京オリンピックまでに、世界から非難されることを予想して対策を掲げてはいます;

風疹 6年以内に流行根絶目指す
(2014年1月22日:NHK)
 風疹の流行で、妊娠中の母親が感染して赤ちゃんに障害が出るケースが相次いだことを受けて、厚生労働省は、6年後までに風疹の流行を無くすことを目標に、予防接種などの対策を進めることになりました。
 風疹は、おととしから去年夏にかけて職場を中心に感染が広がり、去年1年間に全国で1万4000人余りが感染し、母親が妊娠中に感染して目や耳などに障害が出る「先天性風疹症候群」と診断された赤ちゃんは、31人に上りました。
 厚生労働省の専門家会議は22日、会合を開き、中長期的な対策を盛り込んだ初めての指針をまとめました。
 それによりますと、風疹の流行を6年後の平成32年までに無くし、先天性風疹症候群もできるだけ早く無くすとしています。
 そのための対策として、予防接種を受けていない人の割合が多い昭和37年度から平成元年度に生まれた男性と、昭和54年度から平成元年度に生まれた女性が、予防接種や免疫の有無を調べる検査を受けやすい環境を整えるよう、企業に依頼するとしています。
 また、妊婦が訪れる機会の多い学校や医療機関などでも予防接種や免疫検査を呼びかけ、免疫がある人の割合を増やすなどとしています。
 厚生労働省は、今後、この指針を基に、企業や都道府県向けの具体的な対策を盛り込んだ手引書を作り、配布することにしています。


 読む限りでは、「呼びかけ」が主で「予算を組む」予定はなさそうですね。
 絵に描いた餅にならないことを祈りましょう。
 ただ、今までの経緯から考えるとあまり期待できません・・・。

★ CRS関連の過去ログ
(2013年12月31日)34例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年12月20日)33例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年12月07日)30例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年11月08日)26例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年10月31日)22例目の先天性風疹症候群が発生
(2013年10月11日)20例目(19+2-1)の先天性風疹症候群が発生
(2013年09月21日)19人目の先天性風疹症候群
(2013年09月05日)18人目の先天性風疹症候群
(2013年08月29日)17人目の先天性風疹症候群
(2013年08月01日)14人目の先天性風疹症候群
(2013年04月26日)風疹流行止まらず・・・10人目の犠牲者(先天性風疹症候群)

<追加>
 医療者の意見を載せておきます;

国の風疹対策に懸念「抜本的な予防接種策」求める要望書 日本小児科学会,日本産科婦人科学会
(2014.1.23:MTPro)
 昨日(1月22日)の「第5回風しんに関する小委員会」(委員長:五十嵐隆氏,国立成育医療研究センター総長)で,風疹の特定感染症予防指針に関する最終的な取りまとめが行われた(関連記事)でゼロとする」目標を入れるよう提言。しかし,指針には「定期接種対象年齢を外れた成人感受性者への予防接種」については該当者に対し踏み込んだ記載は行われていない。これに対し,日本小児科学会,日本産科婦人科学会は厚生労働省に予防接種に関する抜本的な対策を盛り込むことを求める要望書を提出した。

◇ 小委員会でも指摘多数「推奨,情報提供だけで対策進むのか」
 指針では「今回の風疹流行が過去の定期接種の接種率が低かった成人男女に起きていたこと,職域での感染が相次いで先天性風疹症候群(CRS)が増加し社会的影響が大きかった」と策定の主旨を説明。
 また,2007年に策定された麻疹に関する特定感染症予防指針に連動し,定期接種の対象である小児への積極的な勧奨など,今後の風疹対策を行っていくことが盛り込まれた。
 一方,成人感受性者への予防接種策については「予防接種法に基づかない予防接種の推奨」の項目を設定。「罹患歴や予防接種歴が明らかでない者への風疹抗体検査や予防接種の推奨を行う必要がある」との記載が中心で,臨時の定期接種化などの措置には言及されていない
 この点に関しては今回の小委員会の議論においても,複数の委員から「感受性者への予防接種なしには風疹・CRSは排除できない」「排除の目標をまず設定した上で行程について議論すべき」「“推奨”“情報提供”の表現が多いが,これでどれだけ対策が進むのか」「麻疹では定期接種漏れ者への5年の経過措置という予防接種対策が取られ,排除目標を達成しつつある。予算の兼ね合いがあるのだろうが,最小の労力で最大の効果を発揮できる施策が必要」などとの指摘が行われていた。
 昨日,最終となった同小委員会では,指針の最初の項目である「目標」に関する議論が最後に実施。また,感受性者対策やCRS児の療育に関しては学会,研究機関,事業者などと連携して,ガイドラインづくりや啓発を進めていくこととされた。

◇ 日本小児科学会は厚生科学審議会での再検討求める
 こうした議論の推移を受けて,日本小児科学会(会長:五十嵐氏)は1月14日,厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(部会長:岡部信彦氏,川崎市健康安全研究所長)に,1月14日付で要望書を提出。小委員会でとりまとめた指針案を今後,同部会で審議する際に12の項目を指針に盛り込むことを要望した。
 12項目は「東南アジアや他の発展途上国の模範になる指針策定を」「対策の骨子は麻疹風疹混合ワクチン(MR,MMRワクチン)の接種による感受性者ゼロ作戦」「妊娠年齢女性やその関係者への緊急対策と公費補助」などが含まれている。同学会の要望書は昨日の小委員会で参考資料として配付された。

◇ 日本産科婦人科学会は厚労大臣に「成人男性への対策を」
 日本産科婦人科学会(理事長:小西郁生氏,京都大学産科婦人科教授)は1月21日,厚労省の田村憲久大臣宛てに要望書を提出(関連記事)。同学会は2012~13年の全国的な風疹流行でCRS児が40例近くに上っていると指摘。「今回の風疹流行は従来のワクチン政策で接種機会に恵まれなかった成人男性が中心。男性から妊婦への風疹感染でCRSが起きており,厚労省がこれまで同様に成人男性への実効性ある対策を取らなければ,今後10年以内に起こると予測される風疹再流行を防止できないことは明らか」とした上で,感受性者の成人男性へのワクチン接種の徹底と財政支援などを強く要望すると述べている。


 このままでは2004年の二の舞です・・・。
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2014年全豪オープンはレジェンド達の同窓会

2014年01月23日 05時50分08秒 | テニス
 今年の全豪オープンは見ていて楽しい。

 昨夜のWOWWOWライブでは準々決勝で新生フェデラー(ランキング6位)がマレー(同4位)を3-1下して復活ののろしを上げました。
 お気に入りのフェデラーが元気なのは喜ばしいことで、試合内容もまあまあだと感じましたが、なんだか物足りない・・・
 と、その時気づきました。
 数日前のナダル-錦織圭の熱戦のインパクトが強く、そちらの方が明らかに迫力があったのです。
 復活後ばく進中のナダルと攻撃テニスに磨きをかけ昨シーズンとはひと味違う錦織。
 一本一本のショットに緊迫感があり、見応え十分。
 セットカウントこそ3-0のストレートですが、タイブレーク2回を含め、3時間を超える熱戦でした。
 あと一つ何かをつかめば錦織君のベストテン入りは間違いないでしょう。
 とにかく、昨年のフレンチオープンではナダルに名前負けしてよいところがなかった錦織君の成長に目を見張ったゲームでした。

 錦織選手が2013年12月に往年の名選手マイケル・チャンをコーチとして迎え入れたことは以前に触れました。
 実は現在、「レジェンド」と呼ばれる往年の名選手達が現役選手をコーチとしてバックアップする例が多いのです。
 例えば、マレーにはイワン・レンドル(グランドスラム8勝)。
 マレーを下したフェデラーには”グラスの貴公子”ステファン・エドバーグ(グランドスラム6勝、ダブルスを入れると9勝)。
 さらにジョコビッチのコーチにはボリス・ベッカー(グランドスラム6勝)。あ、ジョコビッチは準々決勝でバブリンカ(ワウリンカ)に負けてしまいました。

 なんだか1980~90年代の同窓会でもしているようですね。
 思い起こせば、1989年にマイケル・チャンが17歳でフレンチオープンを制したときの決勝の相手がエドバーグでした。
 皆さん元気そうで何よりです。

 さて、明後日は「フェデラー VS ナダル」という、実質上の決勝戦です。楽しみ。

<2014.1.24 追記>
 フェデラーはストレートでナダルに負けてしまいました。残念。
 ナダルが良すぎた!
 スピンボールでフェデラーをネットに付かせない戦法をフェデラーは破ることができませんでした。
 フェデラーは随所で積極的なプレーを見せたものの、unforced error(凡ミス)が多くてプラスのカウントに至らず。
 しかし、昨シーズンよりは力強い印象を受け、今シーズンはグランドスラム上位で戦う姿をたくさん見ることができそうな予感・・・楽しみです。
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浜松市の集団食中毒でクローズアップされた「不顕性感染」

2014年01月22日 21時33分55秒 | 小児科診療
 浜松市の集団食中毒はパンがノロウイルスに汚染されていることが原因と断定されました。
 パン工場の検品作業にあたっていた社員数名からノロウイルスが検出されたとのこと。
 しかし「ノロウイルス陽性者に嘔吐下痢の症状はなかった」との報道に驚かれた方が多かったのではないでしょうか。

 感染しても症状が出ない状態を「不顕性感染」と呼びます。
 まあ本人は無症状でつらくないからいいのですが、やっかいなのは「他人にうつす」能力があることです。
 本人も知らないうちに加害者になり得るのです。

 この「不顕性感染」、いろんな感染症にふつうにみられる現象です。
 だから感染症は、症状がある人だけ目の敵にして隔離しても、完璧な対策にはなりません。
 私が調べ得た不顕性感染率を表にまとめましたのでご参考にどうぞ。
★ 「風邪のおはなし」の「不顕性感染率」の項

 抜粋しますと、
<ウイルス感染症の不顕性感染率>
 インフルエンザ:20~30%
 風疹    :20~50%
 ノロウイルス:20~50%
 ロタウイルス:20~30%

 などなど。

 「じゃあどうやって予防するの?」という素朴な疑問が生じます。
 結論から申し上げると「無理」です。

 病院ではアメリカのCDCが提唱している「スタンダード・プリコーション」(すべての患者に適用する疾患非特異的な予防策)という考え方が採用されています。全ての患者の血液・汗を除く体液(唾液,胸水,腹水,心嚢液,脳脊髄液等すべての体液)のみならず、分泌物・排泄物・傷のある皮膚・粘膜などをすべて感染源とみなし、予防策を講じることです。
 具体的には、以下のことを励行します;

1.一患者、一処置ごとの手洗いの励行
2.患者の体液に触れる可能性がある場合は、手袋・マスク・ゴーグル、必要に応じてフェイスシールドや防水ガウンなどを着用する
3.鋭利な器材などは適切に取り扱う
4.使用したリネンや器材を適切に処理する
5.環境の整備
6.必要な場合は患者の隔離 

 勤務医時代は1の手洗いを患者毎に行うだけで、手が荒れて大変でした。
 これらを日常生活の中で行うことは・・・無理ですねえ。

 ここで視点を変えてみましょう。
 「感染しても症状が出ない状態」で何か連想することはありませんか?
 実は、このメカニズムを逆手にとって医療に応用したのが「生ワクチン」なのです。
 弱毒化したウイルスなどの病原体を人体に投与し、症状は出ない(たまに軽く出ることがありますが)けど免疫反応を起こして抗体を作らせる方法を確立した人類の英知。まあ、現時点では全ての感染症に対するワクチンはありませんが。
 話題のノロウイルスに対するワクチンは現在開発中です。
 誤解を避けるために記しておきますが、生ワクチンと不顕性感染が違うところは、生ワクチンを接種した人から他人に感染することはありませんので、ご安心を。

 さて、「不顕性感染」に加えて感染症対策の大きな壁として立ちはだかるのが「ウイルス排泄期間」です。
 他人にうつす能力があるのは症状がある間だけとは限りません。
 症状の出る前(潜伏期)の後半にウイルスの排出ははじまり、さらに症状が消失してからもウイルスはしばらくの間居残るのがふつうです。

 前出「風邪のおはなし」の「感染症と隔離について」の項目をご覧ください。
 そこに「ノロウイルスの排泄期間」という表があります。
 「1歳以下の乳児の70%以上が症状消失後も2週間以上便からノロウイルスを排出している」と読み取れますね。
 つまり「ノロウイルスの流行期に下痢が治まって登園してきた園児はまだウイルスを排出していて感染力が残っている」のが紛れもない事実なのです。
 保育園はよく「治癒証明書を書いてもらってください」と要求しますが、感染力がゼロになるまでに3週間くらいかかりますから、現実的ではありません。
 「感染力がゼロになるまで休んでください」という方針をとると、園から園児が消えてしまい、感染症が流行する度に閉園する必要が出てきます。

 感染対策に立ちはだかる「不顕性感染」「ウイルス排泄期間」問題は現代の医学でも解決できない難問です。
 結局は集団生活をしているなら「うつるのはお互い様」と開き直るしかありません。

 ここでまた視点を変えて注目していただきたい事実があります。
 浜松の集団食中毒でも、パンを食べた生徒全員が嘔吐下痢を発症したわけではありませんよね。
 では発症しなかった児童と発症した児童の差は何?
 食べた量にもよるのでしょうが、発症しなかった児童はおそらくふだんから便通がよく、腸内細菌叢が元気であることが想像されます。
 腸内細菌叢が元気であれば、悪玉菌が入ってきても排除してくれるのです。

 これはその昔、病原性大腸菌O-157の集団食中毒で判明した事実です。
 発症者と非発症者を比較すると、発症者はふだんから便通が不安定(便秘気味)、非発症者は快食快便の傾向があったとの報告を読んだことがあります。
〇 排便習慣が1日1回以上で、朝食後にすぐ排便する小児が軽症で、便秘で排便時期不定の小児は重症化していた。
〇 菌の腸内での停滞時間が長いほど増菌され、粘膜への直接侵襲で血便となる。
〇 重症化予防には日常の良い排便習慣が形成されることが望ましい。
 また、発症/非発症者の生活習慣の違いを検討した報告もあります。

 というわけで、究極の感染対策は「ふだんから体を健康に維持すること」という当たり前の結論に落ち着くのです。
 これを医学として発展させたのが「プロバイオティクス」という分野ですね。
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子宮頸がんワクチンの副反応は「痛み」や「恐怖感」などが原因か

2014年01月21日 07時50分43秒 | 小児科診療
 厚労省の専門家会議の判断がようやく発表されました。
 内容は、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の副反応を疑われたCRPS(複合性局所疼痛症候群)の原因はワクチン成分ではなく注射という痛みを伴う医療行為であるという結論です。
 ヨーロッパでは問題になっている症状を「心因反応」と捉えて副反応に含めてきませんでしたが、それに準じた妥当な判断ということになります。

子宮頸がんワクチンの副作用、痛みや恐怖感などが原因か
(TBS系(JNN) 1月21日)
 子宮頸がんの予防ワクチンで、女子中高生らから副作用を訴える声が相次いでいる問題で、厚生労働省の専門家会議は、「ワクチンを打つ際の痛みや恐怖感などが原因の可能性が高い」と判断しました。
 子宮頸がんワクチンは去年4月から定期接種となっていますが、接種後に全身の痛みやけいれんなど副作用を訴える声が相次ぎ、厚労省は積極的な接種の呼びかけを中止しています。
 20日、厚労省の専門家会議は、130の症例を分析した結果、子宮頸がんワクチンは筋肉注射のため、接種した時の強い痛みなどが原因になっている可能性があると判断しました。
 痛みへの恐怖感や不安感など心理的要因も加わり、「心身の反応」となって体に様々な異常を引き起こしていると考えられるということです。治療法としては、体への治療と共に心理的な治療を行うことが重要としています。
 専門家会議は、ワクチンの成分自体については副作用の原因になるとは考えにくいと結論付けていて、来月、報告書にまとめた上で、ワクチン接種の推奨を再開するか検討することにしています。


 さて、ワクチンの副反応に過敏な日本国民がこれを受け入れることができるかどうか・・・。
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ワクチン接種済みの子どもたちに風疹が流行した衝撃。

2014年01月18日 06時54分36秒 | 小児科診療
 小児科医にとって、ショッキングなニュースが流れました。
 保育園で風疹が集団発生し、なんとその半分以上の子どもが風疹ワクチン接種済みだったのです(下線は筆者が引きました)。

ワクチン接種しても園児ら風疹に集団感染…島根
(読売新聞 2014年1月16日)
 島根県の保育園で昨春、風疹のワクチンを接種した園児らの集団感染が起きていたことが、国立感染症研究所などの調査で分かった。唾液がついたおもちゃをなめるなどしてウイルスが広がった可能性が高いという。感染研は、ワクチンを接種した幼児の風疹の集団感染例は国内で初めてとし、「妊婦が出入りすることが多い保育園などは注意してほしい」と呼びかけている。
 感染研や県によると昨年4月、予防接種を受けていない1歳の男児がまず発症し、その後、約2か月間に、この男児を含む1~5歳の園児22人と職員1人、家族7人の計30人に感染が広がった。このうち少なくとも園児18人は風疹の予防接種を受けていた。ただ接種した園児の症状は1人を除いていずれも軽く、発熱と発疹がない園児も6人いた
 感染研は当初、ワクチンの品質を調べたが、問題はなかった。一方、〈1〉風疹ウイルスは唾液に多く含まれる〈2〉幼児は物を口に入れたり、なめたりする――ことから、感染研は「1歳児を中心に、ワクチンの予防効果を超える大量のウイルスが唾液を介して広がったのではないか」とみている。
 風疹ワクチンは2006年度から、1歳と就学前1年間が定期接種対象になった。調査した感染研の中島一敏主任研究官(感染症疫学)は「接種した幼児は症状が軽いため、逆に『隠れ集団感染』が各地で起きる可能性がある。保育園ではおもちゃはなるべく清潔に保ち、流行期は一緒に使わないなどの注意をしてほしい」と指摘している。


 ワクチンも100%万能ではないことを思い知らされる事実を突きつけられた感じです。
 対策はあるのか?
 ーーーあります。それはワクチン接種率を上げて、地域社会から風疹ウイルスを排除すること。
 以前、このブログで扱ったのでこちらをご参照ください;

風疹流行を阻止できるワクチン接種率は85%

 2013年6月に書いたものです。
 やるべきことはわかっているのに、この後も日本政府は何ら対策を取ってこなかったのですね。
 先天性風疹症候群(CRS)は発生し続けています。
 まだニュースとして取りあげられていませんが、今年に入って既に数例発生が確認されたという情報もあります。

 呆れて開いた口がふさがりません・・・。
 そろそろ「国が適切な予防接種行政を行わないためにCRSの大量発生と招いたことを裁判所に訴える」動きが出てきてもおかしくないと思います。
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食物アレルギー児童は4.5%

2014年01月17日 07時51分35秒 | 小児科診療
 食物アレルギーは乳幼児に多い疾患というイメージがありますが、先年、学童の死亡例が発生、報道されて話題になりました。
 乳幼児期発症の食物アレルギーは卵・牛乳・小麦などが多く、一部の重症例を除き、そのほとんどは就学前まで治るのが一般的です。
 一方、幼児期以降に発症するナッツ類、甲殻類、ソバなどのアレルギーは治る可能性が低く、一生付き合っていく覚悟が必要です。
 学童期の食物アレルギー患者の実態は、乳幼児期発症の重症例の持ち越しと、幼児期以降に発症したタイプが合わさったもの、ということになります。

 さて、このたび学童の食物アレルギー罹患率が公表されました。
 6年前と比較して37%増えているそうです。
 アナフィラキシー(じんま疹だけなく、嘔吐したり咳き込んでゼーゼーしたりするアレルギー症状)対策のエピペン®保持者が0.3%という数字に私は驚きました。
 従来、アナフィラキシーは0.1%(1000人に一人)と言われてきましたので、0.3%(1000人に3人)は3倍です。
 必要十分な対策が望まれます。

食物アレルギー児童は4.5%~文科省、全国の公立学校で調査
(2014年1月14日 化学工業日報)
 小・中・高の学校で食物アレルギーを抱える生徒は約45万4000人、全体の4・5%に上ることが、文部科学省の調査(速報値)によりわかった。この人数は2007年実施の調査に比べ、12万人と約37%増加している。一方、給食における「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」に基づく管理は、95・9%の学校が対応していると回答している。
 調査は、全国の公立小・中・高校約2万9000校の141万6607人を対象に実施した。調査した学生全人数のうちの4・5%にあたる食物アレルギー疾患保持者だったが、07年調査時2・6%から確実に増えていた。
 アレルギー反応によって皮膚、消化器、呼吸困難などの症状が急激に発症するアナフィラキシーについては、約5万人の0・5%が有症者だった。アナフィラキシー補助治療剤であるアドレナリン自己注射薬「エピペン」(ファイザーの医薬品)保持者は約2万7300人で、0・3%を占めている。08年から13年8月までの約5年間で学校でエピペンが使用されたのは408件。
 給食を提供している579校では、555校がガイドラインに基づく対応を図っていて、73%の学校ですべての教職員が周知しているとの結果を得た。アレルギー対応による体制整備では、高位や主治医の指導助言によるものが77%にあたる446校で整備、入学や転校時の学校間における情報共有をしている学校が94%の544校あった。

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