徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

全米で小児に最も多く処方された薬剤トップ30

2012年06月28日 06時22分21秒 | 小児科診療
 アメリカFDA(食品医薬品局)が発表した資料です。
 日本と随分違うんだな、というのが第1印象。
 気になった点は・・・

いわゆる「かぜ薬」がベストテンに入っていない:医療費が高額のため風邪レベルでは受診しないアメリカの事情が垣間見えます。
抗喘息薬が上位に入っている:アルブテロール(=ベネトリン)が3位、フルチカゾン(=フルタイド)が7位、モンテルカスト(=シングレア、キプレス)が10位、ブデソニド(=パルミコート)が25位、それからステロイド(8、19、20、24、28位)も喘息発作の治療でしょうか。
ADHDの薬であるメチルフェニデート(=リタリン、コンサータ)がなんと16位。日本では乱用対策として登録制となっている薬物です。未登録の私は処方したことがありません。

全米で小児に最も多く処方された薬剤トップ30~米FDAが報告
 (2012.6.21:MTProより抜粋)
 米食品医薬品局(FDA)の医薬品評価研究センター(CDER)のGrace Chai氏らは,大規模処方せんデータベースに基づく小児への薬剤処方動向に関する報告をPediatrics(2012; 130: 23-31)に行った。同データベースの運用が始まった2002~10年の動向の他,2010年に0~17歳の小児に最も多く処方された薬剤トップ30も明らかにされている。
抗菌薬,抗アレルギー薬の処方件数は減少,ADHD治療薬,避妊薬が増加
 今回,同氏らは全米を網羅する規模の処方せんデータベースIMS Vector Oneを用いた検討を実施。同システムは2002年から米国で運用されており,全米の約5万9,000軒の薬局が加入,年間14億件以上の処方せん,1億2,000万人分の患者数に相当するデータが蓄積されている。FDAは同システムを用いて,薬剤に関する事故や危機管理を目的としたデータ収集も行っている。(参考:FDA2011年11月15日メモランダム)。
 2010年の1年で0~17歳の小児に出された処方せんの数は2,636万件で,2002年に比べ7%減少。一方,成人への処方件数は同時期の比較で22%増加していた。
 検討期間において,小児に最も処方された12の領域の薬剤における処方動向を見たところ,明らかな傾向の変化が認められた。2002年に比べ,2010年の時点で処方件数が減少していたのは抗菌薬(systemic antibiotics)が-14%,抗アレルギー薬が-61%,鎮痛薬が-14%,抗うつ薬が-5%,去痰薬を除くかぜ薬が-42%。一方,同時期の比較で喘息治療薬(14%),注意欠陥多動性障害(ADHD)治療薬(46%),経口避妊薬(93%)の処方件数増加が確認された。2010年の1年で0~17歳の小児への処方が多かった薬剤トップ30は表の通り。



1歳未満へのPPI処方が年間35万件
 Chai氏らはまた,今回の検討を行った背景として,当局が米国における最近のADHD治療薬の使用状況に加え,小児へのプロトンポンプ阻害薬(PPI)の処方動向にも関心を寄せているとも述べている。
 同検討の結果からは2010年,1歳未満の小児に対するランソプラゾールの処方が35万8,000件出されていたことも明らかにされた。同氏らは,添付文書でも生後1カ月~1歳未満の小児の胃食道逆流症状に対する有効性はないとしており,成人対象の複数の臨床試験からも長期のPPI使用により骨折などの有害事象リスクが上昇することも指摘されていると指摘。FDAがこうした「適応外使用」に関心を寄せているとも記されている。
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新型インフルエンザの総括

2012年06月27日 06時43分57秒 | 小児科診療
 2009年に流行した新型インフルエンザの死亡者数が修正されて報告されました;

死者28万人と推計 2009年の新型インフル
共同通信社 6月26日(火)
 【ワシントン共同】2009年に世界的大流行を引き起こした当時の新型インフルエンザによる死者数は世界で約28万人との推計結果を米疾病対策センター(CDC)などの国際チームが25日、英医学誌ランセットに発表した。
 世界保健機関(WHO)が公表した死者数1万8500人の約15倍。WHOの数値は検査で確認された例にとどまるが、発展途上国では検査を受けないまま肺炎などで亡くなった患者も多く、こうした死者の推計値を加えた結果、大幅に増えることになったという。
 推計では、09年4月から2010年8月までに28万4400人が死亡。通常の季節性インフルエンザと異なり、若い人の死亡が多いのが特徴で、死者の80%は65歳未満だった。地域別では東南アジアとアフリカで計59%となった。
 論文をまとめたCDCのダウッド博士は「流行が大きな人的被害をもたらしたことを示している。研究結果を今後の流行対策に役立ててほしい」とコメントしている。
 厚生労働省によると、日本国内の死者数は10年9月末までに203人。


 大したことがないのに騒ぎすぎだという一部の批判はありましたが、やはりインパクトのある感染症であることが証明されました。初期対応やワクチン接種など、反省・改善すべき点も指摘されており、リスク管理の甘い日本を脱却すべく準備を進めて欲しいと思います。
 こんな記事もありました;

新型インフル法、来春施行へ=検討会議を7月設置
2012年 6月 26日 [時事通信社]
 政府は26日、新型インフルエンザの発生時に集会中止などの私権制限を可能にする特別措置法を来春施行する方針を明らかにした。都道府県の担当課長を集めた会議で示した。
 同法は4月に成立した。内閣官房新型インフルエンザ等対策室は来月、感染症の専門家らから成る検討会議を設置。私権制限を可能にする緊急事態宣言を出す基準や、集会中止の対象となる施設などについて議論し、関係政省令を制定する。 

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ホタル撮影

2012年06月18日 05時51分55秒 | 日記
 近隣の里の川でホタル撮影にトライ。
 前回書いたとおり条件が良いとは云えず、街灯が明るかったり、車のライトが眩しかったり、今回は懐中電灯を振り回す見学者がいたり・・・。

 20枚ほど撮影して、ホタルらしきモノが写っているのが2枚のみ(苦笑)。
 近くに飛んできたホタルをトラップして帽子の中で1枚。
 




 カメラはNikon D5100、バルブ撮影用のリモートレリーズの準備が間に合わなかったので、マニュアルモードのシャッタースピードを上限の30秒とし、ASO200、絞りはほぼ解放です。

<追記>
 その後台風4号が通り過ぎてから、ホタルの姿が消えました。風雨で流されてしまったのかなあ。来年がちょっと心配です。
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2012年全仏、ナダルが7回目の制覇。

2012年06月15日 05時43分17秒 | テニス
 2012年のフレンチオープンが終了しました。

 男子決勝は昨年と同じナダル vs ジョコビッチというカード。
 ランキング2位と1位の対戦ですが、その他にもいろんな大記録のかかった決勝戦となりました。
 ナダルが勝てば全仏7勝となりボルグの記録を抜いて単独トップへ(なんとナダルは全仏でまだ1回しか負けていません)。さらにグランドスラム11勝はボルグ、ロッド・レーバーに並ぶ偉大な記録です。
 ジョコビッチが勝てば、生涯グランドスラム達成、かつ連続4勝という離れ業。

 今大会のナダルは絶好調で決勝までワンセットも落としていません。一方のジョコビッチは万全とは言えず、準々決勝のツォンガ戦ではマッチポイントを握られるなど、苦戦を何度か経験し、準決勝のフェデラー戦でようやく本来の強さを取り戻したところ。

 いざ試合が始まると、前評判通りナダルの好調さが目立つ展開でした。第三セットのはじめまでは彼のスピンボールがうなりを上げてコートに突き刺さり、ジョコビッチは劣勢に立たされます。第二セット終了時には、苛立ちのあまりジョコビッチはラケットでベンチを叩き壊してしまい、ブーイングを浴びる始末。

 しかし、そこに雨。

 雨が降るとボールが重くなり、スピンがかかりにくくなります。
 つまりナダルのショットの威力が半減するのです。ジョコビッチにとっては恵みの雨となりました。
 第三セットの3ゲーム目から、ジョコビッチの反撃が始まりこのセットを奪取。
 逆にナダルの苛立ちがつのります。

 迎えた第四セット、またも雨が強くなり中断、翌日に順延となりました。

 ナダルにとっては救いの雨となりました。う~ん、なんて微妙なゲーム展開なのでしょう。
 翌日は天候に左右されず、本来のナダルの力強いショットが戻り、ジョコビッチを封じたのでした。
 雨に振り回された決勝戦でしたね。

 女子決勝はシャラポア vs エラーニ
 両者ともフレンチオープンの決勝は初めてで、かつ対戦も初めてらしい。
 シャラポアは一時はファッションに走ったり、話題が先行して肝心のテニスに精彩を欠いていましたが、最近少し大人の雰囲気になり落ち着いてきました。精神的にも安定し、自滅するパターンが影を潜め、この決勝もダブルスを制したエラーニを寄せ付けない強さで圧倒。
 かくして生涯グランドスラムを達成したのでした。そして、4年ぶりのランキング1位復帰というおまけ付き。

 それにしてもエラーニのタフさには驚かされました。
 12日間、ダブルスと掛け持ちで毎日試合をこなしてきたのです。
 それでも決勝戦に疲れを見せることはなく、シャラポアの強力ショットに果敢に挑む姿はすばらしいの一言に尽きます。

 ちょっと脱線しますが、シャラポアの身長は188cmでジョコビッチと同じです。ちなみにナダルは185cm。

※ 今大会、フェデラーは準決勝でジョコビッチに完敗しました。残念。
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初ホタル

2012年06月08日 21時03分16秒 | 日記
 6月・・・梅雨入り・・・とくると私の頭に浮かぶのは「ホタル」。
 昨年、昔水遊びした近所の川にホタルが出没することを知り、驚き喜びました。
 シーズンが終わるまで何度となく撮影にも挑みました(出来は今ひとつ)。

 今日は日中気温がグングン上がり、今年初の真夏日を関東地方で記録。
 そして夜間は雨が降るという予報。
 ムシムシして雨が降りそうで降らない夜・・・そう、これがそのままホタルの飛ぶ好条件なのです。

 夜8時過ぎに川の畔に向かうと・・・いましたいました、今年の初ホタル!
 数百mの範囲に20匹くらい。
 淡い光を点滅させ、川面を行き来していました。

 ああ、今年も会えた。よかった。

 昨年も書いたと思いますが、この川は子どもの頃に水中メガネ&ヤスで魚を突いた懐かしの場所です。
 護岸工事がなされず、自然が残っていたことに感謝する次第です。

 昨年秋に一眼レフデビューしましたので、また撮影にトライしたいと思います。
 ただ、条件が悪いんですよねえ。
 ふつうの道路脇にある川なので、街灯が点いていてまわりが明るく、安全なのはよいのですが蛍の光をキレイに写真に収めるコントラストが表現しにくいのです。
 でも懲りずにやってみようっと。
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繰り返す風疹流行

2012年06月02日 07時23分44秒 | 小児科診療
 今年に入って風疹が流行しているというニュースが何度となく流れましたが、ここ数日また新聞を賑わしています;

風疹:近畿で流行 患者数昨年の1.6倍
 (毎日新聞2012年05月31日)
 発疹や発熱などの症状が出る風疹の患者が近畿地方を中心に増加していることが、国立感染症研究所のまとめで分かった。今年に入ってから5月23日までの患者数は205人で、昨年同期の約1.6倍。現在の報告形式になった08年以降で最も多い。厚生労働省は全国的に感染が広がる恐れもあるとして、予防接種の徹底などを全国の自治体に呼びかけている。
 風疹は風疹ウイルスが原因で、せきやくしゃみなどを通じて感染が広がる。
 同研究所によると、23日までに報告があった都道府県別の患者数は、兵庫62人▽大阪46人▽東京28人▽京都12人--など。兵庫、大阪、京都の3府県で全体の6割近くを占める。人口100万人あたりでは兵庫、大阪、京都、和歌山の順に患者数が多い。
 男女別では男性が153人と全体の4分の3を占め、さらに男性患者の56%は20代、30代だった。この世代の男性は、乳幼児期の予防接種や学校での集団接種で風疹が対象外だったため、免疫のない人が多いことが影響しているとみられている。


 やはりキーワードは「予防接種」。
 風疹の予防接種の歴史を見ると・・・

1976年:接種開始
1977年:女子中学生に対する定期接種
1989年:生後12~72カ月児へのMMR(麻疹・おたふく・風疹)開始
1993年:MMR中止
1995年:生後12~90カ月未満の男女に風疹ワクチン接種開始
2006年:MRワクチン開始


 と複雑な経緯をたどってきました。
 その結果として接種率の低い以下のハイリスク集団を作ることになったのです;
男性は1989年まで全くやってこなかった
女性も現在25~33才の年齢層はやっていない人が多い」(某TV番組による)。
 そしてその人達の感染が現在問題になっています。
 とくに注意すべきは25~33才の再生産(妊娠可能)年齢の女性で、妊娠中に風疹にかかると胎児に影響が出ることがあり、これを先天性風疹症候群(CRS)と呼びます。
 この病気の被害者が出ないことを祈るのみです。

 しかし、上記の予防接種の歴史を見れば、このような状況が発生することは予想可能だったはず。
 日本政府はこの件に関しても無策だったのでしょうか?
 ちょうど私の疑問に対する答えをMTProの記事が取り扱っていましたので、内容を抜粋します;

・2003~2004年にはCRSが例年の1~2例から10例と激増し、国立感染症研究所が「風疹流行およびCRSの発生抑制に関する緊急提言」を発表、同提言書では「中途半端な予防接種率で、未接種かつ小児期に自然感染しないまま成人を迎える人が増加する」と対策不十分であることが指摘されている。
 さらに感染研は「CRSに対するウイルス特異的な治療法はなく、個人防衛としては女性は妊娠する前にワクチンによって風疹に対する免疫を獲得すること、社会防衛としては風疹ワクチンの接種率を上げることによって風疹流行そのものを抑制し、妊婦が風疹ウイルスに曝露されないようにすることが重要」と述べ、未接種者への啓発が必要としている。

・しかし予防接種率は上がらなかった。
 妊婦がかかると重大問題となるが、健康人がかかった場合、風疹は軽症の感染症で終わることも危機感が乏しい一因。「風疹の現状と今後の風疹対策について」という感染研の報告(2003年)では、各因子がワクチン接種率に及ぼす影響を分析している;
 「風疹の流行」によるワクチン接種率上昇は18%
 「強い勧奨」では12%
 「集団接種」では10%
 「休日夜間接種」では3%

であり、つまりあの手この手の啓発作戦を展開してもワクチン接種率の上昇にはつながらないのである。

・風疹ワクチン接種に関する情報が乏しい。定期接種である風疹ワクチンは期間が過ぎると接種できないと思い込んでいる人がいる(実際は自費になるが任意接種可能)。成人対象に風疹ワクチンを取り扱っている医療機関も少なく、一念発起してワクチン接種を受けようとしても途中でくじけてしまいがち。

・厚労省が自治体などに出した5/25の事務連絡では「これまで風疹にかかっていない方、予防接種を受けていない方および妊娠適齢期の方への情報提供、注意喚起をお願いする」と呼びかけられている。


 と云うわけで、見ていて歯がゆくなるデータです。
 まとめると、一般国民も、医療機関も、日本政府も認識が甘いと云わざるを得ません。
 今回も「呼びかけ」だけですから、根本的な対策にはなりそうにありません・・・これからも流行を繰り返すことでしょう。
 そして被害を受けるのは言葉を発することができない胎児という構図。

★ 参考HP
・「最近の風疹とワクチン接種の問題点」(アボット感染症アワー)
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