徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

続・インフルエンザ(A香港型)が猛威を奮うアメリカ

2018年01月31日 08時13分45秒 | 小児科診療
 1月最終日も、インフルエンザ関連の話題が続きます。
 メディアでもワクチンの「集団免疫効果」が徐々に扱われるようになりました。
 ちょっと進歩。
 
 現在アメリカで流行しているH3N2型(A香港型)は変異するスピードが速く、ワクチンがなかなか追いつけない・・・人類がインフルエンザウイルスに負けている状況が続いています。

■ インフルエンザが猛威を奮うアメリカ。その裏には日本も例外ではないワクチン事情が
2018.01.30:GIZMODO
 アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は先週おこなったプレスカンファレンスで、「今年のインフルエンザは猛威を奮っており、終息に向かう様子は今のところ全くない」と発表。しかも、2009年の豚インフルエンザが世界的に流行したとき以来となる、過去10年で最大のインフルエンザ流行となるかもしれないとのこと。
 昨年12月末、アメリカ疾病管理予防センターは「ハワイ州以外のすべての州においてインフルエンザが広がり続けている」という発表をしました。それ以来、インフルエンザっぽい症状を持つ来院者数が毎週膨れ上がり、入院率も急激に高まったとのことです。この調子だと、近年で最も多かった2014年〜2015年の入院者数(71万人)と死亡者数(5万6千人)を超えてしまう可能性もあるそう。 
 「おおよそこれに近い数字が出るのではないかと予想しています。」とNew York Timesに話したのはアメリカ疾病管理予防センターのDaniel B. Jernigan医師。
 インフルエンザが辛いことは広く知られていますが、1950年代から流行し始めたH3N2型は特にひどいタイプだといわれています。早いサイクルで変異するため、ワクチンを作ってもみなさんが打つ頃には効きにくくなっているが多いそうです。一般的に、H3N2型のワクチンは予防効果が約30%となっていて、昨年オーストラリアで使用された卵培養によるワクチンにいたってはほんの10%だったという懸念も。「アメリカ版のワクチンは別の製造方法が採用されているため、効果は普通通りのはずだ」とアメリカ疾病管理予防センターは話しています。

編集部:アメリカが新規に採用した製造方法は「細胞培養」という、ワクチンの製造過程で必要なウイルスの培養に動物や昆虫の細胞をもちいるもののようです。これまでの鶏卵を使用する方法と比べて、ウイルスの遺伝子変異が少ないことが利点の模様(変異が大きすぎると人の免疫が反応しにくくなる)。アメリカでは2社の細胞培養ワクチンが承認を受けていますが(18歳以上向け)、日本はまだ開発中のようです。

 それでも、今のワクチンも一定の効果(予防or発症した場合は症状の軽減)は期待できるので、なるべく打ってもらいましょう! ひとりひとりが打つことで、ウイルスが広がりづらくなる「集団免疫」という効果もありますよ。
 アメリカ疾病管理予防センターは今季のインフルエンザで亡くなった子供の数も発表しました。先週は30名、今週は37名と増加しています。最終的な、大人も子供も含めた死亡者数がどこまで上るのかは、インフルエンザの季節が終わる頃にならないとわかりません。
 日本でもインフルエンザが猛威を奮っていますが、今からでもワクチンを打つのは遅くありません。高熱で辛い思いをするくらいなら、ワクチン打った方がよっぽどマシですよね。手洗い・うがいなどの予防もしっかり!


 鶏卵を用いた現在のワクチン製造方法より、新しく開発された細胞培養法の方が、ウイルス変異という問題に強い、とされています。
 しかし、鶏卵培養法でも「ウイルス変異なんのその」というスーパーワクチンが過去にありました。
 それは「全粒子ワクチン」です。
 ウイルスそのものをすりつぶして造るワクチン。
 一方、現在のものはHAワクチンとかコンポーネントワクチンを呼ばれる、ウイルスのほんの一部を取り出して造ったワクチン。
 なぜ効果の高いワクチンを捨てたのかというと、副反応(局所の腫れや発熱など)が強かったからです。
 日本は平和なので、効果より安全性を選択した歴史があり、今は「水のような効果の薄いワクチン」をせっせと接種していることを自覚すべきですね。
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B型インフルエンザ急増で大流行か

2018年01月30日 07時47分18秒 | 小児科診療
 もう一つ追加記事を。
 確かにA型とB型が同時に大きく流行するシーズンは希です。
 検査をするとA型とB型の両方が陽性の患者さんや、同じ日に検査したのに兄弟でA型とB型が分かれる例、などを経験します。

■ B型急増で大流行か インフルさらに拡大も
共同通信社:2018年1月29日
 厚生労働省は26日、1週間に報告されたインフルエンザ患者数が1医療機関当たり50人を超え、1999年以降で最多となったと発表した。
 検出されたウイルスはB型の増加が目立ち、専門家は「この季節に多いA型にB型も加わったため大流行になった」という見方を示す。
 インフルエンザは通常、1月下旬から2月上旬にかけてピークを迎える。今後さらに流行が拡大する恐れがあり、厚労省は「マスク着用や手洗いなど、基本的な対策をしっかりとしてほしい」と呼び掛けている。
 B型は例年、A型の流行が終わる2月ごろから増え始める。
しかし今年はシーズン序盤から検出され、最近数週間は2009年に新型として流行したA型と同程度にまで急増した。
中国や西欧でも同様にB型が増加傾向にあるといい、国立感染症研究所の小田切孝人(おだぎり・たかと)インフルエンザウイルス研究センター長は「海外渡航で持ち込まれた可能性がある」と推測する。
 厚労省は今シーズンのワクチン製造に当たり、より効果が見込めるウイルス株に変えようと試みたが難航したため断念し、供給が遅れるという問題が起きた。大流行との因果関係は分からないが、詳しい分析が求められる。
 インフルエンザは、ウイルスの型が異なれば1シーズンに2度以上かかる恐れがある。1度A型にかかった人でもB型や別のA型に感染する可能性があるので注意が必要だ。
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インフルエンザ脳症、新たに17例、死亡は3例に(2018年1月)

2018年01月30日 06時56分58秒 | 小児科診療
 2017/18シーズンのインフルエンザ脳症の続報です。
 合計55例中、A型が39例、B型が9例と、やはりA型優位。
 データは1/14までのものですが、1/30現在、北関東の当地では流行のピークを迎えています。
 つまり、あと2週間は脳症例も増加するはず。

■ インフルエンザ脳症、新たに17例、死亡は3例に〜今シーズン累計で55例に、約70%が10歳未満
2018/1/29 インフルエンザ診療Next取材班:日経メディカル
 インフルエンザ流行拡大に伴い、インフルエンザ脳症の患者も増えている。2018年1月14日までの1週間(第2週)だけで17例の報告があり、今シーズン累計で55例となった。新たに10歳代の死亡例も報告された。
 国立感染症研究所の感染症週報を基に、急性脳症の報告例を抽出し、インフルエンザウイルスが原因と明記されている症例を集計した。その結果、2018年1月14日までにインフルエンザ脳症例は累計で55例だった(図1)。


図1 インフルエンザ脳症例の推移

 55例の年齢分布を見ると、1歳が12例と多く、10歳代が9例、7歳が6例と続いた(図2)。10歳未満が37例と大半を占めていた。報告時死亡例も出ており、これまでに1歳児と30歳代の患者が死亡。第2週には10歳代の死亡例も報告された。
 ウイルス検出の結果は、A型が39例と多く、B型が9例だった。その他の7例は不明。


図2 インフルエンザ脳症の年齢別にみた患者数
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イギリスで話題の“ジャパニーズインフルエンザ”とは?

2018年01月30日 06時48分04秒 | 小児科診療
 イギリスで「猛烈に感染するジャパニーズインフルエンザが我が国で流行、ご注意を」と話題になっているそうです。
 記事を読むと、なんのことはない、B型インフルエンザ(山形系統)のことを指しており、新型インフルエンザを意味するわけではありません。
 マスコミによる扇動目的の造語ですね。売り上げ増加目的で扇動することはマスコミの常道で、さすがに慣れてきましたが、それによる弊害にも責任を持つ必要性を感じます。

ジャパニーズインフルエンザ、海外で騒動に「Warnings over‘super infectious’Japanese flu」
2018/1/30 勝田吉彰(関西福祉大学):日経メディカル
 これまでインフルエンザが、ある特定の国名を冠した呼称で呼ばれる事象が歴史上何度か見られてきた。スペインかぜ、アジアかぜ、ソ連かぜ……。そして今、Japanese fluなる珍病名が海の向こうイギリスのマスコミを賑わせている。
 日本ではA/H1N1pdm2009とB型(山形系統)が同時並行で流行しているが、かの国でもまた、B型(山形系統)が流行しており、それが「Japanese flu」とマスコミ命名されて見出しを賑わせている。いわく「猛烈に感染するジャパニーズインフルエンザが我が国で流行、ご注意を(Warnings over‘super infectious’Japanese flu which is now spreading in Britain)」といった具合に1)。そして、ジャパニーズインフルとは何ぞやと丁寧に解説する記事が大衆紙にも高級紙にも出て来ている2)3)ことから、これがあおり記事ではなく定着した表現のように見受けられる(実際に記事内容はB型インフルエンザについて淡々と解説したものになっている)。

◇ 先輩格は「オージーインフルエンザ」
 B型(山形系統)を「ジャパニーズインフルエンザ」と勝手にマスコミ命名して報道されるのは我々日本国民としては面白くないわけだが、実は「大先輩格」がいる。オージーインフルエンザがそれだ。
 今シーズンに先立つ、南半球のシーズンではオーストラリアでA/H3N2の大流行が起こり、入院病床の不足、待機手術の延期など様々な影響が出ていた。そしてオーストラリアと交流の多い英連邦諸国では、オーストラリア発のAH3亜型の流行に戦線恐々として、シーズン入り前から「オージーインフルエンザ」なる珍病名を大見出しに並べていた。英マスコミの期待どおり(?)にAH3亜型の大規模流行が起こり、連日の報道合戦を展開、挙句の果てに「オージーインフルエンザの生還者(Aussie flu survivor)」まで引っ張り出して「worst sickness EVERだった」と語らせ、エボラ熱流行時を彷彿させるような報道ぶりである4)。

◇ 「殺人インフルエンザが2カ月後に上陸してくる」
 我が国でも、オーストラリアの流行を見て秋口から某週刊誌が「殺人インフルエンザが2カ月後に上陸してくる」とあおっていたが5)、実際にはAH1pdm09亜型とB型の流行でAH3亜型の大流行で混乱する事態にはない。
 日本のマスメディアでは英国のように特定の国名を感染症に冠することは少なく(強いていえば2015年の韓国におけるMERS流行の際に見られた程度であろうか)、代わりにエボラ熱、MERS、鳥インフルエンザ、ジカ熱と、“殺人ウイルス”と命名される騒動に、医療界は毎年のように対応迫られてきた。
 昨年2017年にはヒアリがこのパターンを繰り返し、そのような対応に慣れていない農学部の先生方からは「日本への侵入自体はいつか起きると考えていたが、市民の反応については予期できていなかった…(中略)…多くの市民が存在さえ知らなかったこの小さな昆虫に『殺人アリ』という恐ろしい名が付与され、生命の危険が強調されるような報道が相次いだ。ヒアリを良く知る昆虫学者や生態学者の多くはこの事態を憂慮し、取材を受けた者たちは躍起になって…」と戸惑いの声も発せられている6)。
 ともあれ、執筆時点ではパニック的状況には至らず、また、昨年の今頃大いに世間を心配させていた中国の鳥インフルエンザH7N9の流行も、本稿執筆時点では落ち着いている7)。まずまず想定の範囲内でおさまっている2018年戌年の初頭、この範囲で展開してくれればと願うばかりだ。


<参考資料>
1)Warnings over ‘super infectious’ Japanese flu which is now spreading in Britain(Yahoo News UK16 January 2018)
2)What is Japanese flu, what are the symptoms and how can you avoid the virus? All you need to know(THE Sun)
3)??What is Japanese flu? How to prevent the virus and the symptoms to look out for(The Telegraph)
4)'Worst sickness EVER' Aussie flu SURVIVOR speaks out as reason for outbreak REVEALED(Daily Star)
5)南半球オーストラリアでは死者が前年の6倍 「殺人インフルエンザ」が2か月後に上陸する!(週刊ポスト 49(42):44-45 2017)
6)岸本年郎:ヒアリはなぜ怖いか.(文藝春秋 2017;95:86-88.)
7)H7N9 situation update(FAO)
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しつこく、インフルエンザワクチンによる間接予防効果(集団免疫)について

2018年01月28日 08時42分31秒 | 小児科診療
 当院では、初めて予防接種を受ける患者家族に「予防接種アンケート」と称したミニテストを(だまして)行っています。
 その第一問は・・・

1.予防接種の目的;次のどれが正しいと思いますか?(複数回答可)
(  ) ワクチンが対象とする感染症から接種した個人を守ること
(  ) 接種率を上げることにより、集団をその感染症から守ること
(  ) 集団を守ることで感染症の流行を阻止し、接種できない免疫弱者を守ること
(  ) その感染症を根絶すること


 です。
 2番目の文章が、いわゆる「集団免疫」ですね。
 さて、みなさんの回答はいかがでしょうか。
 解説の前に、これに関連したHUFFPOSTの記事をお読みください。

■ インフルエンザ大流行。日本から失われた「集団免疫」とは?
2018年01月27日:HUFFPOST
 30年前、小中学生の集団ワクチン接種で日本の社会にインフルへの免疫ができていた。
 厚生労働省が1月26日にまとめたインフルエンザの発生状況によると、全国の推計の患者数は約283万人で、調査を始めた1999年以来最多となった。学級閉鎖や学年・学校閉鎖になった保育園、幼稚園、学校の数は、21日までの1週間で7536カ所にのぼっている。
 大流行のたびに言われるのが、「集団免疫」の必要性だ。いったい、どういうことだろうか?

◇ 小中学生の集団ワクチン接種、覚えてますか?
 今から31年前に当たる1987年までの11年間だけだったが、小中学校でインフルエンザワクチンの集団接種が義務づけられていて、大半の子どもが学校で接種を受けていた時代があった。
 学校に校医が来て、クラスごとに並び、順番で注射を打たれるのだ。筆者もこの時期に小、中学生だったので毎年受けていた。注射は大嫌いだったが、友達の手前、我慢して受けたものだ。
 この集団接種が始まるきっかけは、1957年の新型インフルエンザ(アジアかぜ)の大流行にさかのぼる。約300万人が感染し、約8000人(推計)が亡くなった。このときの教訓から、1962年から子どもへの接種が推奨されるようになり、1977年には予防接種法で小中学生の接種が義務化された。
 だが、ワクチンを接種した後に高熱を出して後遺症が残ったと、国に損害賠償を求める訴訟が相次ぎ、国が敗訴するケースも少なくなかった。こうした社会情勢を背景に政府は法律を改正し、1987年に保護者の同意を得た希望者に接種する方式に変更、 1994年には、打っても打たなくてもいい任意接種に変わった。
 同時にワクチンそのものの効果を疑問視する声も広がり、かつて100%近かった小中学生の接種率は、90年代、数%にまで落ちた。

◇ 子どもの集団接種がなくなった後に起きたこと
 小中学生のほぼ全員が毎年インフルエンザワクチンを打っていた社会がそうでなくなった場合、前後でどんな違いが見えてくるのだろうか。この時期に焦点を当てた研究がいくつかある。
 その一つで、東京都内のある小学校を24年もの間、インフルワクチンの接種状況と学級閉鎖との関連を観察してきた慶応大の研究がある。
 ワクチンが集団で接種されていた時期、希望者だけに接種した時期、そして任意接種になった時期、再び増えてきた時期など5期に分け、その間の接種率と学級閉鎖の数の推移を比べた(表参照)。その結果は、明らかだった。



 大半の子どもが打っていた4年間の学級閉鎖の日数は1.3日。それが緩和されると接種率の低下と反比例する形で8.3日、20.5日と増えていく。1996年には、この学校の児童の接種率は0.1%まで下がった。
 だが同時に、高齢者施設でインフルエンザが流行し、入所者が相次いで亡くなったり、インフルエンザから脳症になって亡くなる子どもが増えたことなどがマスコミで相次いで報じられるようになった。そうした状況から、この学校でも1999年からインフルエンザワクチンを打つ人が増え始めた。それとともに学級閉鎖の日数も減っていった。
 つまり、集団接種をやめて接種率が下がると、その分インフルエンザになる子どもが増えるし、逆に上がると減るのだ。
 だが、子どもの集団接種をやめた影響は、学級閉鎖の増加だけにとどまらなかった。

◇ 小中学生の接種が幼児やお年寄りにも影響を及ぼす
 小中学生の集団接種の停止は、子どもだけではなく、幼児やお年寄りにも影響を及ぼしていたのだった。
 2001年、米医学誌に、日本で子どものインフルエンザワクチンの集団接種が続いていた間と、やめた後の年寄りの死亡率を日本とアメリカで比べた研究が載った。
 子どもへの集団接種が始まると、インフルエンザで亡くなるお年寄りの数(超過死亡)は減った。お年寄りの数自体は増えていたのに、だ。だが、集団接種がなくなったあたりから再び増えた。
 下のグラフを見ると、それが一目瞭然だ。日本では、ワクチンの集団接種率(棒グラフ)が高かった時期、肺炎やインフルエンザで亡くなる人の割合(折れ線グラフ)は下がっていた。88年に希望者のみの集団接種、そののち94年からの任意接種で接種率が極めて低くなったあたりから増え始めた。アメリカのそれと比べて、対照的だ。



 この研究からは、子どもにワクチンを打つことが、子どもたち自身の発症や重症化を抑えていただけでなく、インフルエンザで亡くなることの多い高齢者の発症をも抑える役割を果たしていたことが分かる。
 この研究によると、日本での小中学生にインフルエンザワクチンの集団接種が、年間約3万7000~4万9000人の死亡を防いでいたという。言い換えると子ども420人への接種で、1人の死亡を防いでいたことを意味する。
 研究で裏付けられた、子どもへの集団接種が、社会のほかの集団にも与える影響は「間接予防効果」(集団免疫)と呼ばれ、各国のその後のインフルエンザ対策に大きな影響を与えた。

一定割合の集団にワクチンを打つ取り組みを続ければ、それは接種を受けた本人や集団に免疫をつけるだけでなく、やがてその社会全体に免疫をつけることになるのだ。

そのことを説明しているのが、下の図だ。



 誰もワクチンを打っていない集団だと、インフルエンザのような感染症は集団にあっという間に広がる。ワクチンを打って免疫がついた人たちも多少いれば、その広がりは鈍る。
 さらにほとんどの人がワクチンを打って免疫を付けている集団ならその間で感染する人はぐっと低くなる。その分、免疫のない人たちと感染した人たちが接触する機会がぐっと減るからだ。
 いま、日本のインフルエンザワクチンは、定期接種の対象になっている高齢者らを除き、任意接種なので、医療機関で打つと1本3500円前後する。接種率が90年代のように数%という事態は脱したが、小中学生で6割前後にとどまるのは、こうしたお金の事情もからむ。
 皮肉なことだが、日本では集団接種をやめた後に、初めて集団接種でもたらされる「社会の免疫」が実感されるようになり、一方で海外で集団接種に進めるきっかけになったのだ。
 ​​ワクチンを打った人は確実にインフルエンザにかからないという訳ではないし、一人一人がうがいや手洗い、人混みを避けるなどの予防策を講じることはもちろん大事だが、集団接種という取り組みが、社会全体に「免疫」を与え、インフルエンザの大流行を抑えていたという点も、覚えておきたい。


 では設問の答えです。
 正解は「全問○」です。
 解説はこちらをどうぞ。
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インフルA&B流行拡大、全国的に警報レベル超える

2018年01月27日 07時32分45秒 | 小児科診療
 インフルエンザ流行のピークです。
 近隣の小学校でも先日「学校閉鎖」がありました。
 日経メディカルの記事では、西日本中心に記されていますが、関東地方も大流行中です。

■ インフル流行拡大、全国的に警報レベル超える
2018/1/25 インフルエンザ診療Next取材班:日経メディカル
 インフルエンザの流行が加速している。都道府県がまとめているインフルエンザ定点当たり報告数(速報)によると、1月21日までの1週間に全国の定点医療機関を受診した患者数は、定点当たり51.93人と前週の26.44人から倍増、警報レベルの目安とされる30人を大幅に上回った。多くの自治体が警報を発令し、流行がしばらく続くとして、手洗いや咳エチケットなど感染予防対策の徹底を呼び掛けている。
 インフルエンザ診療Next取材班が1月25日17時半現在で集計したところ、1月21日までの1週間(第3週)に新たに警報レベルを超えたのは25都府県となった。既に前週までに16県が超えており、この時点で少なくとも41都府県が警報レベルに突入した。


図1 インフルエンザ流行の推移

 大分県は3週に82.40人となり、感染症法に基づく1999年9月からの調査開始以来、最大値を記録した。
 佐賀県が69.64人、静岡県が67.92人、熊本県が66.26人、沖縄県が64.70人、高知県が64.08人、三重県が62.40人、愛知県が62.12人、埼玉県が61.63人、千葉県が61.05人と続き、例年にない大流行となっている自治体が目立つ。
 地域的にも拡大しており、全域で警報レベルを超える自治体は、これまで九州が中心だったが、ここにきて中四国、近畿、中部へと拡大。関東や東北でも患者数が急増している。


 この流行は、A型にB型が加わった混合流行のためで世界的な傾向、と説明されている毎日新聞の記事;

■ インフル専門家「A型にB型加わり大流行」さらに拡大か
毎日新聞2018年1月27日
 流行中のインフルエンザは1週間に報告された患者数が1医療機関当たり50人を超え、1999年以降で最多となった。検出されたウイルスはB型の増加が目立ち、専門家は「この季節に多いA型にB型も加わったため大流行になった」との見方を示す。今後さらに拡大する恐れがあり、厚生労働省は「マスク着用や手洗いなど、基本的な対策をしっかりとしてほしい」と呼び掛けている。
 B型は例年、A型の流行が終わる2月ごろから増え始める。しかし今年はシーズン序盤から検出され、最近数週間は2009年に新型として流行したA型と同程度にまで急増した。中国や西欧でも同様にB型が増加傾向にあるといい、国立感染症研究所の小田切孝人インフルエンザウイルス研究センター長は「海外渡航で持ち込まれた可能性がある」と推測する。
 今シーズンのワクチン製造は、より効果が見込めるウイルス株に変えようと試みたが難航したため断念し、供給が遅れるという問題が起きた。大流行との因果関係は分からないが、詳しい分析が求められる。
 インフルエンザは、ウイルスの型が異なれば1シーズンに2度以上かかる恐れがある。1度A型にかかった人でもB型や別のA型に感染する可能性があるので、注意が必要だ。


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米でインフルエンザ(H3N2)が大流行

2018年01月24日 08時28分11秒 | 小児科診療
 今年のインフルエンザ流行は、世界中で例年と異なる様相を呈しているようです。

米でもインフルエンザ流行 子ども37人死亡
2017年1月27日:NHK
 インフルエンザが世界的に猛威を振るう中、アメリカでもほぼすべての州で感染が広がり、今シーズンに入って少なくとも37人の子どもが亡くなりました。
 アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、50ある州のうちハワイ州を除く49州でインフルエンザの感染が急速に広がり、去年10月以降、少なくとも子ども37人が死亡、およそ1万2000人が入院したということです。
 また、ここ数年の流行と異なり、65歳以上の高齢者だけでなく、50歳から64歳の年代の感染も際立っているとしています。
 現地メディアによりますと、中西部のインディアナ州では、インフルエンザにかかった息子と夫の看病をしていた女性が感染し、発症した3日後に亡くなったケースもあったということです。
 日本でも、インフルエンザの患者数が統計を取り始めた平成11年以降、最も多くなるなど、インフルエンザの患者は世界的に増加傾向となっています。
 CDCは、このままのペースで感染が拡大すれば、過去15年で最悪の規模になるおそれがあると警告していて、手洗いやうがいの徹底のほか、予防接種を受けるよう呼びかけています。


 日本ではA型≒B型流行ですが、米国では相変わらずA型(H3N2)がメインのようです。
 以下の紹介記事中の「新型ウイルス」は勇み足の表現で、B型を意味しています。
 日本にはない細胞培養ワクチンにも言及しています(ただしワクチン反対派が問題視するアジュバントにはノーコメント)。

■ 米でインフル大流行、新型ウイルスの出現でさらに悪化の恐れ
Michelle Fay Cortez:2018年1月22日:Bloomberg
 米国では今シーズン、インフルエンザが保健当局が十数年前に追跡調査を開始して以来、最悪の流行となっている。シーズンが終わるまでにまだ11~13週あり、新型ウイルス出現の恐れがあるため、事態はさらに悪化する恐れがある。
 インフルエンザの外来患者数は1月の第1週に増加し、この時期の感染者数では過去最多となった。
 米疾病対策センター(CDC)によると、今シーズン最も猛威を振るっている「H3N2」型の流行が問題になっている州で、「H1N1」型の感染が確認され始めている。CDC国立予防接種・呼吸器疾患センターでインフルエンザ部門を担当するディレクター、ダン・ジャーニガン氏は、「B」型ウイルスが引き起こすまた別の種類のインフルエンザがシーズンの終わりまでに出てくるだろうと指摘した。
 現在、インフルエンザ予防に使われるワクチンの大半は卵の成分を含有しているが、卵はH3N2型の生育にはあまり適さず、効果的なワクチンができる確率が比較的低い。しかし最近の進歩によって卵の成分を含まない新種のワクチンが2種類、登場した。仏サノフィの「フルブロック」と、豪CSLの「フルセルバックス」だ。ジャーニガン氏は、いずれも製造工程で卵を使用しないため、できたワクチンは実際に流行しているものに近くなる可能性があると語った。
 「より幅広い有効性があり、効力が長持ちするワクチン、一生に1回か2回の接種であらゆる種類のインフルエンザを予防できるというようなものが最終的に登場してくれればいいのだが、そのようなものが現れるまでには数年かかると思う」とジャーニガン氏は話した。

原題:Think Flu Season Is Bad? It Could Get Worse Before It’s Over(抜粋)


 もう一つ米国発信の記事を。
 アメリカでは今シーズン既に小児が30人亡くなっているそうです。
 「インフルエンザに感染すると、ウイルスに対抗するため免疫反応が起きる、人によっては過剰反応を引き起こし、敗血症で死亡することもある」という記述は?で、ウイルス感染と細菌感染を記者は混同しているようです。敗血症ではなく、サイトカイン・ストームだと思います。
 なんだかアメリカの記事って、いい加減? それとも翻訳の問題なのかな。

■ インフルエンザが猛威、若者や幼児の死亡例も
2018.01.25 :CNN
 インフルエンザが世界で猛威を振るっている。米疾病対策センターによると、米国では今シーズンのインフルエンザで、これまでに子ども少なくとも30人が死亡した。
 この統計に大人の死亡は含まれていないものの、CDCの推計では、13日までの1週間の死者のうち、8.2%は肺炎とインフルエンザが原因だった。これは例年に比べて1%以上高くなっている。
世界保健機関(WHO)によれば、インフルエンザの流行を原因とする重症疾患の患者は世界で年間約300万~500万人、死者は29万~65万人に上る。
 専門家によると、特に高齢者は重症化しやすく、死者の80%は65歳以上の患者が占める。しかし幼児や心肺の疾患、糖尿病といった既往症のある患者も死亡する危険があるという。
 インフルエンザに感染すると、体内ではウイルスに対抗するため免疫反応が起きる。ところが人によっては過剰反応を引き起こし、敗血症で死亡することがある。米ピッツバーグでは昨年12月、それまで健康だった21歳の大学生が、インフルエンザに伴う敗血症と多臓器不全で急死した。
 24日の米医学誌には、インフルエンザに感染してから7日間の間は、心臓発作を起こす確率が6倍に増えるという研究結果も発表された。因果関係は特定されていないものの、感染症が炎症やストレスや血管収縮を引き起こし、血圧が上昇するのではないかと推論している。
 子どもへの影響も懸念される。5歳未満のインフルエンザの死者のうち、99%は途上国の子どもだった。先進国ではそれほど高いリスクは伴わないものの、幼い子どもがインフルエンザによる敗血症で死亡することもあると専門家は指摘している。
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毎年のワクチン接種で高齢者のインフル重症化リスクが低下

2018年01月22日 05時28分27秒 | 小児科診療
 インフルエンザワクチンは「罹らないためではなく軽く済ませるために接種」しましょうと私は説明しています。

 4シーズンに連続してインフルエンザワクチンを接種していた患者では、接種していなかった患者と比べてインフルエンザの重症化が原因でICUでの治療が必要となるリスクが74%、死亡するリスクが70%低くなったというスペインからの報告を紹介します。

 1回だけでは効果なく、毎年接種しても罹ってしまう、でも軽く済むというレベルの効果かあ。

■ 毎年のワクチン接種で高齢者のインフル重症化リスクが低下
HealthDay News:2018/01/22:ケアネット
 毎年必ずインフルエンザワクチンを接種している高齢者は、インフルエンザの重症化による入院や死亡のリスクが低いとする研究結果が「CMAJ」1月8日オンライン版に掲載された。研究を実施したナバーラ大学健康研究所(スペイン)のJesus Castilla氏らは「ワクチン接種によって完全に感染を防げるわけではないが、重症化しやすい高齢者も繰り返し接種すれば感染しても軽症で済むことが裏付けられた」としている。
 Castilla氏らは今回、スペインの病院20施設で2013/2014および2014/2015のシーズンにインフルエンザによって入院した65歳以上の高齢患者のうち一般入院患者598人と、集中治療室(ICU)での治療を要したか入院後30日以内に死亡した重症患者130人、さらに一般入院患者群と重症患者群の対照群として年齢や性、入院日をマッチさせたインフルエンザ以外の原因による入院患者(それぞれ1,493人、333人)のデータを分析した。
 その結果、入院したシーズンおよびそれ以前の3シーズンの計4シーズンに連続してインフルエンザワクチンを接種していた患者では、接種していなかった患者と比べてインフルエンザの重症化が原因でICUでの治療が必要となるリスクが74%、死亡するリスクが70%低かった。一方、1シーズンのみの接種ではインフルエンザの重症化を予防する効果は認められなかった。この結果を踏まえ、Castilla氏らは「高齢者でのインフルエンザの重症化の予防には毎年ワクチンを接種することが重要だ」との見解を示している。
 米疾病対策センター(CDC)によると、米国では毎年数十万人がインフルエンザのため入院しており、2010~2017年の年間死亡者数は1万2,000~5万6,000人と推定されている。高齢者は免疫系が弱いため、感染すると重症化しやすい。このため、入院が必要な状態となったり、合併症を発症したりすることが多く、死亡に至る場合もある。
 米クリスティアナケア・ヘルスシステムのMarci Drees氏は「最も重要なことは、今年のワクチンの効果がどの程度なのかは気にせず予防接種を受けることである」と強調。「米国では今シーズンのワクチンは流行中のインフルエンザウイルスの型に対して予防効果が低い可能性があると指摘されているため、ワクチン接種の意義を疑う人もいるかもしれないが、毎年欠かさず受けることで入院やICUでの治療が必要な状態になるリスクを抑えることができる」としている。
 また同氏は今後の研究課題について触れ、「小児を含めたより若い集団でも毎年のワクチン接種によって同様の予防効果が得られるか否かを明らかにする必要がある」と話している。


<原著論文>
Casado I, et al. CMAJ. 2018 Jan 8;190(1):E3-E12.
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医師がしているインフルエンザ対策

2018年01月21日 08時34分26秒 | 小児科診療
 情報飛び交うインフルエンザ感染対策。
 近年、うがいとマスクの効果は疑問視され、手洗いが強調される傾向があります。
 要は、「鼻粘膜にウイルスをくっつけないこと」。
 そのためには何が有効なのか?

 ・・・プロである医師は何をしているのか、という記事を紹介します。

■ 医師のインフルエンザ対策
2018/01/20:時事メディカル

★ 海原純子(うみはら・じゅんこ)
 東京慈恵会医科大学卒業。医学博士、心療内科医、産業医。日本医科大学・特任教授。ハーバード大学・客員研究員(2008-2010年)。近著に「男はなぜこんなに苦しいのか」(朝日新書)、「今日一日がちいさな一生」(あさ出版)、「こんなふうに生きればいいにゃん」(海竜社)。20年間休止していた歌手活動を1999年より再開。


 病院やクリニックで働く医師はどのようにインフルエンザを防いでいるのか、気になる方は多いと思います。もちろん医師もインフルエンザにかかることがあります。いくら予防に努めてもかかるときにはかかるものです。でも最大限の予防努力はしています。今回は、私の個人的インフルエンザ予防法をお話ししましょう。

 ◇手洗い20秒
 まずは手洗い。これは基本中の基本です。感染した人の分泌物に含まれるインフルエンザウイルスに触れたり、吸い込んだりすることを防ぐことが感染防止の第一歩です。手洗いはまめにします。
 大事なのは手洗いの時間です。少なくとも20秒間、手を洗うことが大事と言われています。手を水でぬらしただけで終わりという方がいますが、これでは予防になりません。問題は「20秒間をどのように計るか」ですが、「Happy Birthday To You」の歌を2回繰り返すとちょうどいいなどと言われています。

(つぶやき)
「石けんを使うべきかどうか?」という議論があります。ある本には「石けんを使う意義は、その洗浄力を期待したものではなく、石けんを洗い流すために流水で十分流す時間を稼ぐことが主目的である」と記されていました。なるほど。


 ◇喉の奥までうがい
 私は水に少し塩を入れて生理食塩水のような感じにしてうがいをします。うがいをする際には、「あー」とか「えー」とか声に出すと、喉の水に触れる部分が変わります。なるべく喉の奥の広い範囲を洗います。

(つぶやき)
 テレビの健康番組で「ウイルスが喉の粘膜について感染が成立するまでには20分かかる。つまり20分ごとに喉を洗い流せばよい、私は20分ごとにお茶を飲んでいます」とコメントされたドクターがいました。


 ◇鼻の奥を洗う
 ウイルスは鼻の奥辺りで増殖しますからこの部分を防御したいものです。私は耳鼻科で鼻の奥を洗えるミサトールリノローションという鼻うがいの錠剤を処方してもらい、仕事が終わるとこれを使って鼻を洗います。乾燥を防ぐこともできて、これは気に入っています。

(つぶやき)
 「鼻うがい」は鼻粘膜の繊毛を痛めるので推奨しない、という意見もあります。


 ◇乾燥対策
 この時期、職場の乾燥はひどいですよね。パソコンなどを使用する環境では機材のために湿度を上げない状態にしているところも多いと思います。
 私はスマホのアプリで自分の居場所の湿度を常に測ることにしています。私は産業医もしているので、訪問した職場の湿度が低下しているときには加湿を心掛けてもらいます。外来の診察室が乾燥しているときはデスクに温かいスチームが出る小型加湿器を置きます。
 加湿器を置けない環境の方は、ぬれたハンカチをデスクの横に置いて環境を整えてください。夜、ひどく乾燥しているところで寝るときには、室内にぬれたタオルや洗濯物を数枚干しておきます。タオルや洗濯物に気に入ったエッセンシャルオイルを数滴たらすと安眠効果もあります。ちなみにユーカリ・ラジアタのエッセンシャルオイルはヨーロッパでは風邪予防に使われることが多く、私はこれを使用しています。

(つぶやき)
 加湿器でも、霧が見えるようなタイプは粒子が大きいので結露の原因になり、粒子が見えないタイプの方が良い、と読んだことがあります。


 ◇マスクは使い捨て
 外出時にマスクをするのは大事なことですが、古いマスクを何日も使い続けるのはやめてください。1日に数枚使い捨てるくらいの感じで使用してください。

(つぶやき)
 患者さん自身がマスクをしてウイルスを含んだ飛沫を飛ばさないようにする(咳エチケット)ことは当然ですが、健康な人がマスクをする目的は2つあると思います。
1.患者さんからの飛沫をブロック
2.自分の鼻と口を触る手癖をブロック
 鼻粘膜にウイルスを到達させないためには、知らず知らずにウイルスを鼻に付けてしまう2が大切ではないかと。


 ◇まとめ 
 インフルエンザ予防の手洗いやうがいは「自分もしている」という方がほとんどでしょう。しかしそれをちゃんと効果的にしているかどうかが決め手なのです。きちんと実行しインフルエンザに付け入る隙を与えない。これが大事。相手はウイルスです。自分の免疫力を高めて予防してください。

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インフルエンザウイルスは通常の呼吸だけでも拡散している

2018年01月20日 08時12分03秒 | 小児科診療
 インフルエンザは患者さんがばらまくウイルスの飛沫感染による、と言われてきました。
 しゃべるときのツバとか、くしゃみ、咳による飛散が犯人。

 しかし、ふつうの呼吸でもウイルスがしっかり排泄されているという報告を見つけました。
 「インフルエンザウイルスはくしゃみに多く含まれるというわけではなく、通常の呼気にも同じ程度の量が含まれて拡散されているということが判明」という恐るべき事実!

■ インフルエンザウイルスは通常の呼吸だけでも拡散していることが判明
2018年01月19日:Gigazine
 冬になると流行が拡大するインフルエンザは、日本のみならず世界中の国で人々の高い関心を集める厄介な病気です。予防策としては、予防注射や発症者の隔離、そしてあまり効果はないことがわかった「マスクの着用」などが一般的に広く知られていますが、最新の研究からはウイルス保持者が単に呼吸するだけでもウイルスが拡散されていることがわかっています。

Infectious virus in exhaled breath of symptomatic seasonal influenza cases from a college community
Flu may be spread just by breathing, new study shows; coughing and sneezing not required | UMD School of Public Health

 メリーランド大学の科学者らによって実施された研究からは、これまで考えられていたよりもインフルエンザウイルスの拡散は容易に起こっていることが明らかになっています。全米科学アカデミー誌に掲載された論文「Infectious virus in exhaled breath of symptomatic seasonal influenza cases from a college community」(大学コミュニティにおける季節性インフルエンザ症例を示す人物の呼気中の感染性ウイルス)では、インフルエンザ患者が吐き出した空気に大量の感染性ウイルスが含まれており、呼気による空気感染を考慮する必要性を示す証拠が示されています。
 メリーランド大学公衆衛生学校の環境衛生学教授で、公衆衛生学修士の学位を持つドナルド・K・ミルトン博士は、「インフルエンザの症状を持つ人の周囲の空気が、咳やくしゃみを行わない呼吸だけによっても感染性ウイルスに汚染されていることを明らかにしました。インフルエンザを患っている人は、特にインフルエンザにかかった最初の日において、感染性エアロゾルを空気中に放出します。そのため、誰かがインフルエンザにかかった場合は、すぐに帰宅させて職場にいない状態にすることで、他者への感染を防ぐべきです」と述べています。
 ミルトン博士が率いる研究チームは、インフルエンザにかかっている142人から採取した「通常の呼気」「発話時の呼気」「自発的なせき」「くしゃみ」に含まれるインフルエンザウイルスを調べ、その感染性の度合いを調査しました。被験者からは、鼻の中を綿棒状の器具「スワブ」でぬぐったサンプルと、30分間にわたって採取した呼気とせき、くしゃみの呼気サンプルがそれぞれ218サンプル集められています。
 そしてこれらのサンプルを分析したところ、多くのインフルエンザ患者が放出する呼気に含まれるエアロゾルの中に、空気感染を起こすに十分なインフルエンザウイルスが含まれていることが明らかになりました。そして注目すべきなのは、通常の呼気でさえも多くのウイルスを含んでいたという事実。自然呼気に含まれていた23種類のエアロゾルサンプルのうち、48%にあたる11種類が検出可能なウイルスのRNAを含んでおり、さらにその11種類のうち8種類が感染性ウイルスを含んでいたといいます。そしてさらに、くしゃみに含まれるエアロゾルサンプルに含まれるウイルスの割合は、通常の呼気に含まれているそれと大きな違いはないという驚くべき事実も明らかになっているとのこと。つまり、インフルエンザウイルスはくしゃみに多く含まれるというわけではなく、通常の呼気にも同じ程度の量が含まれて拡散されているということが判明しています。
 論文の著者は、これらの知見はインフルエンザが空気中を伝播することについての数学的モデルを改善すること、より効果的な公衆衛生対策を生みだすこと、そしてインフルエンザの流行の影響を抑制および軽減することを可能にすると記しています。もしインフルエンザ患者が出た場合は、何よりもまず感染者を帰宅させるなどして隔離して外に出さないようにすることが大事であると同時に、予防接種を受けることもおろそかにすべきではないとのこと。たしかに予防接種を受けてもインフルエンザにかかることはありますが、病状の重篤化を防ぐ効果も期待できるため、全く無意味というわけではないためです。



■ インフルエンザ、予想以上に高い「空気感染」リスク 〜咳やくしゃみがなくても、患者はウイルスを排出している
2018/2/15 大西淳子=医学ジャーナリスト:日経Gooday
 今シーズンは、インフルエンザが例年にない大流行となっています。インフルエンザは主に、感染者のくしゃみや咳と共に飛び散った、ウイルスを含むしぶきを吸い込むことで感染する「飛沫感染」か、ウイルスが付着したものを触った手指を介して感染する「接触感染」のいずれかによって広まると考えられていました。
 しかし、このほど米Meryland大学の研究者たちが行った研究で、インフルエンザの感染者が咳やくしゃみをしていなくても、その患者の吐く息を吸い込んだだけで「空気感染」が起こる可能性が指摘されました。感染者の呼気に含まれる微細な粒子にも感染性のあるウイルスが含まれており、そのために、直接患者の咳やくしゃみを浴びなくても、同じ室内にいるだけでも、感染が起こり得るというのです。

<飛沫感染と空気感染の違い>
(飛沫感染)ウイルスなどの病原体を含む水分の粒子(飛沫;直径5μm超)を吸い込むことで起こる感染。飛沫は水分を多く含むため、1~2m飛ぶと落下してしまう。
(空気感染)飛沫の水分が蒸発した小さな粒子(飛沫核;直径5μm以下)を吸い込むことで起こる感染。飛沫核は飛沫よりも小さく、長時間空気中を漂うため、より広範囲の人々に感染を広げる危険がある。空気感染でうつる感染症の代表例は、はしか(麻疹)、水ぼうそう(水痘)、結核など。


◇ インフルエンザの患者が吐く息にはウイルスが含まれている
 研究者たちは今回、インフルエンザが疑われる若者355人を選び出し、呼気の中に排出されるインフルエンザウイルスの量と感染力を調べました。
 355人のうち、インフルエンザと診断され、発症から3日以内に鼻の粘膜から標本(鼻咽頭スワブ)が採取されていて、同時に30分間の呼気も提出していた142人を分析対象にしました。142人の年齢の中央値は20歳、男性が49%で、89人がA型、50人はB型、3人は両方の型に感染していました。これらの患者は、発症から3日以内に計218回受診して、標本の提出に協力していました。
 計218回の受診のうち、195回(89%)の受診では1回以上の咳が観察されていましたが、くしゃみが観察されたのは11回(5%)のみでした。多くの患者は、咳、鼻水などの「上気道症状」は軽症から中等症で、全身症状は中等症から重症、痰、気管支炎などの「下気道症状」は軽症だと報告していました。
 呼気の採取は、自由に話したり、咳やくしゃみをしたりする中で30分間行いました。呼気標本は、空気感染の原因となる「飛沫核」と同じ大きさの直径5μm以下の微細粒子が含まれる標本と、飛沫感染の原因となる「飛沫」と同じ大きさの直径5μm超の粗大粒子を含む標本に分けました。
 標本中にインフルエンザのウイルスRNAが存在するかどうかを調べたところ、微細粒子の標本の76%、粗大粒子の標本の40%、鼻咽頭スワブ標本の97%が陽性でした。さらに、感染性を持つインフルエンザウイルスの存在を調べたところ、微細粒子標本の39%と鼻咽頭スワブ標本の89%が陽性でした(粗大粒子の標本についてはこの検査は行えませんでした)。
 微細粒子の標本中にウイルスRNAが存在することと関係していた要因は、「呼気採取中の30分間に出た咳の回数」、「上気道症状あり」、「症状発現から経過した日数が少ないこと」などでした。つまり、咳や鼻水などの上気道症状が出ている、発症早期のインフルエンザ患者ほど、呼気中にウイルスが含まれていて空気感染を起こす可能性が高いということが考えられます。
 なお、呼気採取中に、くしゃみはまれにしか見られておらず、感染性のある微細粒子の産生にくしゃみは必須ではないと考えられました。
 この研究で得られた結果は、インフルエンザ感染者が普通に呼吸しているだけで、ウイルスが吐き出され、それが感染を広げる可能性があることを示しました。狭い空間での感染を防ぐには、こまめな換気を心がけ、インフルエンザに感染した可能性がある人は、できるだけ自宅で静養して人との接触を避けた方がよさそうです。
 論文は、2018年1月18日付の米科学アカデミー紀要(PNAS)電子版に掲載されました(*1)。


*1 Yan J, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jan 30;115(5):1081-1086. doi: 10.1073/pnas.1716561115. Epub 2018 Jan 18.
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