徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2008年に亡くなった偉人たち

2008年12月30日 07時54分49秒 | 日記
私的に思い出深い偉人たちについて記してみます.

■「アーサー・C・クラーク」(SF作家)
巷ではスタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」の原作者として有名ですが、SF少年だった私にとっては昔からお気に入りの作家の一人でした.
彼の小説は構成がしっかりしていて読み応え十分.
多々あるSF小説の中には「?」というものに遭遇することもありますが、クラークの作品はぐんぐん引き込まれて期待はずれになることは皆無でした。
最高傑作は誰もが認める「地球幼年期の終わり」ですね.
テーマは「未来の記憶」(SF的でしょう?)
ヒトが共通して深層心理の中に有しているイメージは、実は未来の記憶だった・・・。
この作品は全世界SF小説のベストに挙げられることが多いようです.
イギリス人で「Sir」の称号も得ていますが、晩年はスリランカ(セイロン島)で余生を過ごしたと記憶しています。
他にアイザック・アシモフやレイ・ブラッドベリ、ロバート・A・ハインラインなどもお気に入りでしたが・・・皆さんまだ健在なのかなあ.

■「チャールストン・ヘストン」(アメリカの俳優)
言わずと知れた有名男優ですが、私にとっては「ベン・ハー」よりも全米ライフル協会会長としてのイメージが強い人です.
マイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」というアメリカ銃社会の歪みを描いた作品に、彼は「銃賛成派」の代表として登場します.彼の言葉の中に「開拓」という名の原住民制圧で発展してきたアメリカの歴史を感じました.相手を排除することで自分の生活が成り立ってきたので、いつ背後を狙われるかわからない、銃を持っていないと不安で仕方がない、というアメリカ人の精神的病理を垣間見るようです.現在でも周囲で反抗する勢力を見つけると躍起になってつぶそうとする姿勢は日本人から見ると異様に感じることがあります.
実はヘストン氏は若かりし頃公民権運動に参加し、逆にマイケル・ムーアは全米ライフル協会員だったそうです.
人生、いろいろな転機があるのですねえ.

■「ポール・ニューマン」(アメリカの俳優)
説明は必要ないですね.
私にとってはロバート・レッドフォードの共演作である「明日に向かって打て」と「スティング」が印象深いです(古い!).
アウトサイダーを描いた作品ですが、時代の閉塞感を良くも悪くも反映している内容だと思います.
「スティング」に出てくるバーボンを飲みたくて探し回ったこともありましたっけ.

■「小川国夫」(作家)
学生時代に古本屋で見つけた「アポロンの島」という小説.
オートバイに乗ってヨーロッパの辺境を一人旅する内容だと記憶しています.
ギリシャの熱い陽射しが生々しく感じられる文章.
ナイフで削いだような簡潔で乾いた文体に魅せられ続けて数冊をむさぼり読みました.
いわゆる「文壇」に縁を持たずに活動した孤高の作家であることは後に知りました.
彫りの深い端正な風貌も記憶に残リます.
最近、ネット・オークションで見つけて十数冊まとめ買いしました.
余裕ができたらじっくり読むつもりです.
あの感覚が甦るでしょうか・・・.
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東京見物

2008年12月30日 07時30分36秒 | 日記
冬休みを利用して長男(中学2年生)と東京見物に行ってきました.
一度地下鉄の乗り方をレクチャーしたいと前から計画していたのですが、ようやく実現しました.
行き先は「東京タワー」「アメ横」「浅草寺」とお上りさん丸出し.

東京タワーではいきなり「お父さん、階段で登ろうよ」と提案され、600段をヒーヒー言いながら登る羽目になりました.
景色は360度ビルばかり.晴天でしたが富士山は見えず.スモッグかな.
高さ150mの展望台の床にガラスがはめてあって、真下の地上が見える場所があります.ちょっと怖かった・・・.
タワー内の「ギネス記録博物館」では世界一背が高い男の靴(なんと56cm!)を持って記念写真を撮りました.
お昼はラーメン、と決めていたのですがタワー周囲には飲食店が無く、交番の若いおまわりさんに「一番近いラーメン屋はどこですか?」と旅の恥はかき捨てで聞きました.

師走のアメ横は文字通り「おしくらまんじゅう」状態.
値札6000円のタラバガニが2000円で売られていました.
買おうと思っても人の波に飲まれて立ち止まれず困りました.
少し空いている場所でせんべいとチョコセット(3000~4000円相当の袋詰めを1000円で)を購入.
15年前に行った記憶のあるミリタリーショップ「中田商店」は今も健在でした.
何度か通ったアンティーク・ウォッチのお店は見つけられず.無くなったのかなあ.

アメ横を通り抜けて上野公園で一休み.
人影はまばらで、500mしか離れていないアメ横とは別世界ですね.
ふと人だかりを見つけて立ち寄ると、ギターの路上ライブや大道芸のパフォーマンスでした.
博物館がたくさんある所ですが、国立なので年末年始の閉館期間でした.残念.

浅草寺の仲見世通りは和風の露店が多く、雑多で怪しいアメ横とはちょっと違います.
混み具合もそこそこ(年始は200万人の人出らしい)でした.
できたてホヤホヤの人形焼きやせんべいを頬張りながらそぞろ歩き、雰囲気を味わいました.

息子にとっては初めての東京歩き.
疲れたらしく、帰りの電車では寝てしまいました.
地下鉄の乗り継ぎ方も少しイメージできたかな.
やはり物を買うより経験で記憶を残したいですね.
私にとっても良い思い出になりました.
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「医療再建ー今何をすべきかー」を見て

2008年12月21日 22時59分54秒 | 小児科診療
NHKで表題の番組を見ました.
議論はなぜか「医師の適正配置」へ偏向.
現在の医療崩壊を招いた「医療費抑制政策」や「新臨床研修医制度」への言及はそこそこに、医師を公的な視点から配置しようとする考え方です.
確かに医業は公的な面がありますが、現在の日本の医師は税金で養われている公務員ではありませんので国に人事権はありません.
「真面目に働いている人間を逮捕したと思ったら、次は強制労働か? これでは人権の無いどこかの国と同じだね.」
と批判的な意見が医師の間で出てくると思います.
しばらく前に厚生労働省がひねり出した「開業制限をかける」という案は人権侵害です.歴史の汚点になるので止めた方が良いですね.

「地域に医師を確保する」という考え方は自治医科大学で昔から行われてきたことです.
すべての医大を自治医科大学扱いすれば、莫大なお金がかかることは明らかです.
国民にその覚悟はあるのでしょうか.

また、研修医から出た「卒業した大学で研修し、一定期間その地域で働くことにすれば良い」という意見は私が以前から考えていたものと一致します.
その昔、医学部卒業後に自由に研修先を選択できるシステム(日本全国どこでも行ける)に違和感を持ったものです.
逆に言うと、その土地の大学を選択したのだから、そこでしばらく働くことに違和感はないはずです.
医学部の定員増加より、この方法の方が実効力・即効性があると思います.

患者団体代表(女性)が「女性医師が結婚・出産・育児しながら働ける条件を整えるべきです」と発言されました.
これが実現できれば全て解決するんですよねえ・・・私もあちこちに投書したことがありますが、一向に進む気配がありません.
免許を持ちながら働いていない女性医師の数さえ公表されません.
何故か?
それを実現するには医療費抑制策を解除する必要があるからです.
医師の人件費を倍にして勤務医数を倍に増やして初めて可能になるのです.
病院が赤字倒産している現状では夢のまた夢.

イギリスやドイツの家庭医制度が理想像として紹介されていました.
でも理想的なシステムならもっと前から注目して取り入れていたはず。
何故でしょう。
「必ず診てもらえる」ことの引き替えに「選択の自由がなくなる」のです。
この点を報道しなかったNHKの姿勢に作為を感じます。

それらの国で生活した人たちからは「日本ほど恵まれた医療システムはない」という言葉がよく聞かれます(過去形かな).
「この分野の専門医に診てもらいたい」と希望しても家庭医が必要性を認めて紹介状を書いてくれなければアウトです.
紹介状をもらっても、イギリスではアトピー性皮膚炎専門医の予約は3ヶ月待ちだそうです.
それと、家庭医のレベルが今ひとつの場合はその地域の住民は不幸ですね.選択権が無く他の医者にかかれないのですから.

総じて問題点が多少なりとも浮き彫りにされたという意味ではよい企画でした.
ただ、医師に変化を求めるなら、患者側も変わる必要がある、という真実に触れていなかったのが残念.
医師の立場を顧みず、患者が望むままに変化してきた医療が限界を超えて崩壊した現実を国民は反省すべきでしょう.
厚生労働省の役人だけが「皆の考えていることを実現するにはお金が必要だ.安易に『ハイ、やります』とは言えない.」と現実味を帯びた答弁をしていたことに感心しました.
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小児アレルギー学会に参加してきました.

2008年12月14日 22時55分55秒 | 小児科診療
この週末は横浜で行われた「日本小児アレルギー学会」へ参加してきました.
2日間、缶詰状態で知識をアップデート.ちょっと疲れました.

印象に残ったこと.

・近年食物アレルギー診療が日進月歩.
 アレルギー物質の食品表示に始まり、ガイドライン作成など進歩が著しい分野です.
 食物負荷試験の標準化や栄養士の手引きなど、現場で一番待ち遠しかった情報が整備されつつあるのを感じました.
 ただ、中心となっている先生方は大きな病院で重症患者を診療しているので、軽症の患者さんを診療している開業医とはまだ温度差がありますね.数は圧倒的に軽症患者の方が多いのですけど.

・アトピー性皮膚炎のスキンケア実演!
 小児科医はスキンケアの研修をする機会がないので、本を読みながら手探り状態で患者指導もしているのが現状です.
 今回は机上の理論だけではなく、スキンケア(お風呂での洗い方&軟膏の塗り方)を料理番組のように実演したの企画は斬新な試みでした.笑いながら勉強ができました.

 夜は大学時代の旧友と再会して中華街で会食をしてきました.
 テニス部の仲間で、6年間毎日のように顔を合わせて過ごした連中です.
 皆それなりに年を取って、でも中身は変わらなくてホッとして・・・兄弟・家族と一緒にいるような安心感.
 よい週末となりました.
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日本アレルギー学会に参加してきました

2008年12月03日 07時20分25秒 | 小児科診療
先週末、東京で行われた日本アレルギー学会に参加してきました.
開催期間中診療を休むわけにも行かず、今回も日程の半分程度の参加です.

印象に残ったニュース.

・喘息に対する吸入ステロイドは根本治療にはなり得ない.
というデータが続々報告されてきています.
乳幼児喘息に吸入ステロイドによる早期治療開始により喘息の進行が止まるのではないか、と以前からの議論への一応の結論が出た感じです.つまり「ダメ」ということです.
「アレルギー性炎症」を抑える治療法ではなく、基本に返って原因アレルゲンへ目を向けようという雰囲気を感じました.

・アレルギー疾患に対する根本治療は目下、免疫療法しかない.
免疫療法(別名「減感作療法」)は古くから行われ、ここ10年以上は治療法ランキングでは下位に甘んじていましたが、ステロイドの効果の検証が一段落しその限界が明らかになった現在、再度注目を浴びるようになってきました.
ただし、これからは注射によるものではなく「舌下免疫療法」といって舌の下にアレルゲンエキスをしみ込ませた綿球を数分間置いてその後吐き出すという方法です.
これでアレルギーが改善するなら簡単でいいですね.今後広まりそうです.

・アトピー性皮膚炎治療を巡る混乱
以前程ではありませんが、小児科医は乳幼児期の食物アレルギーの関与を重視し、皮膚科医は皮膚疾患としての軟膏治療を重視するという視点の違いを今回も感じました.
現場の私からすると、両方大切だと思います.でも、それでもなかなか上手くいかないんだよなあ.

短時間の参加ですが、十分な刺激を受けてきました.
やはり知識のアップデートは必要ですね.
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