徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ノロウイルスに降参・・・餅つき大会中止が相次ぐ

2016年12月24日 06時34分19秒 | 小児科診療
 ノロウイルスが流行しています。
 まあ、毎年忘年会シーズンになると流行するので、年中行事のようなものですが。
 人と人の接触が濃厚な乳幼児の集団生活では、いくら感染対策をしても限界がありますね。

■ ノロウイルス患者数 13都県で警報レベルに
2016年12月20日:NHK
 激しいおう吐や下痢を引き起こすノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者数が、東京や埼玉など13の都県で警報レベルに達していて、国立感染症研究所は、忘年会など食事前の手洗いの徹底を呼びかけています。
 国立感染症研究所によりますと、全国およそ3000の小児科の医療機関から報告されたノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者は、今月11日までの1週間に6万1547人に上り、この時期としては過去10年間で3番目に多くなっています。
 1医療機関当たりの患者数を都道府県別に見ますと、山形県が45.37人、宮城県が41.44人、埼玉県が30.89人、東京都が27.24人などとなっていて、13の都県で大きな流行が疑われる警報レベルの20人を超えています。
 また、集団感染の発生場所を見ますと、保育所や幼稚園、小学校が全体の7割以上を占めていて、乳幼児や小学生を中心に感染が広がっているということです。
 国立感染症研究所の木村博一室長は「今は子どもを中心に感染が広がっているが、今後、大人や高齢者に感染の広がりが移っていくことが懸念される。また食中毒の危険もあるので、忘年会のシーズンだが、しっかりと食品は加熱するとともに、食事前をはじめ手洗いを徹底してほしい」と話しています。


 今年流行しているのはノロウイルスの中でも「GII. 2」というタイプだそうです。

■ ノロウイルス 遺伝子変異で感染リスク増大か
2016年12月21日:NHK
 大きな流行になっているノロウイルスは、遺伝子に複数の変化がおきて、ヒトへの感染の危険性が高まっているおそれのあることが国立感染症研究所などの調査でわかりました。過去に感染し免疫を獲得した人でもかかりやすくなっている可能性があり、専門家は、子ども中心の流行が、今後、大人にも拡大し、食中毒の多発などにもつながるおそれがあると注意を呼びかけています。
 ノロウイルスは、激しいおう吐や下痢などの胃腸炎を引き起こすウイルスです。感染力が強く、乳幼児や高齢者の場合、脱水症状などを起こして入院治療が必要になることもあります。
 国立感染症研究所や北里大学などの研究グループが、今シーズン、全体の7割以上を占める「GII.2」というタイプのウイルスを詳しく調べたところ、遺伝子に変化がおきていることがわかりました。変化は、ヒトへの感染力に関わる部分でおきていて、グループによりますと、過去に感染し、免疫を獲得した人でも感染しやすくなっている可能性があるということです。 同様の変化は、10年前の平成18年にも確認され、感染者が3か月間で推計300万人以上にのぼる大流行がおきています。
 国立感染症研究所の木村博一室長は「現状の子ども中心の感染が大人にも拡大し、調理などを通じて食中毒が多発することも考えられる。特別な治療薬はないので、まずは感染拡大を防ぐため、子どものおう吐物や便を適切に処理したり、手洗いを徹底したりするなどの対策を取ってほしい」と話しています。

◇ 遺伝子変異で過去にも大流行
 ノロウイルスの遺伝子に複数の変化がおきて大きな流行につながったケースは過去にも起きています。
 10年前の平成18年には、当時、流行していた「GII.4」というタイプのウイルスの遺伝子が変化し、ヒトが免疫を持たない新たなウイルスとなって感染を広げました。例年より1か月早い10月ごろから患者が急速に増えはじめ、国立感染症研究所によりますと、9月から12月上旬までの3か月余りで、子どもを中心に患者は推計300万人以上に上りました。
 このうち、都内のホテルでは利用客など360人以上の集団感染が発生。ノロウイルスの感染経路は通常、ウイルスの付着した手を口元に持っていく経路がほとんどですが、このケースでは利用客のおう吐物を通じて床にじゅうたんにウイルスが付着し、消毒が十分でないまま、そのじゅうたんの上を人が歩くことなどしてウイルスが空中に舞い上がり、感染が広がった可能性が指摘されています。
 またこの年は、ノロウイルスが原因の食中毒も多発しました。厚生労働省によりますと、ノロウイルスが原因の食中毒は499件、例年より100件以上多く、患者は2万7616人に上りました。
 ノロウイルスについて詳しい北里大学の片山和彦教授は食中毒が多発した理由について、遺伝子の変化によって免疫を持つ大人にも感染が広がったこと、症状が治まってもウイルスが1、2週間ほどは便から排出されることを知らない人が多いと思われること、手や腕の袖口などにウイルスが付着した状態で調理を行ったケースがあった事などを挙げています。
 片山教授によりますと年明けの1月以降に食中毒の発生が多くなったケースもあり、自分が感染した場合だけでなく家族に感染者がいる場合も調理前に服を着替え、手洗いの徹底を行うことが重要だということです。


 猛威をふるうノロウイルスに対して、日本人はとうとう白旗を揚げました;

■ ノロウイルス怖くて「餅つき中止」広がる...素手作業多く、感染が心配
(2016年12月21日 読売新聞)
 ノロウイルスが全国的に猛威を振るう中、集団食中毒の恐れがあるとして、餅つき大会を中止する動きが広がっている。「やむを得ない」と理解を示す声がある一方で、「地域の伝統文化を守りたい」との考えから、ついた餅と違うものを提供するなど、工夫して伝統行事を続けるケースもある。

◇ 「やめた方が...」と保健所
 国立感染症研究所が20日発表した定点調査の速報によると、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者数は、直近1週間(5〜11日)で、1医療機関当たり19・45人。13都県で同20人を超える警報レベルに達した。近年では2006年、12年に次ぐ規模の流行という。
 千葉県木更津市の郷土博物館は、23日に開催予定だった餅つきの開催を見送った。10年からほぼ毎年行っていたが、ノロウイルス対策を理由に中止するのは初めてだ。
 地元の保健所から、「流行のピークなのでやめた方がよい」と助言されたという。同館は「昨年は子どもからお年寄りまで150人ほどが来場した。万一の時はたくさんの人が感染してしまう」と理解を求める。
 岡山市の岡山 聖園みその 幼稚園も、年末恒例の餅つきを今年は中止した。「子どもが伝統文化に触れ食育にもなっていたが、子どもの健康が第一」と説明する。川崎市の武蔵小杉駅前の商店街や愛知県豊川市の豊川市民病院も、同様に取りやめた。
 餅つきは手返しや切り分け、味付けなど、手で触れる工程が多く、手指についたノロウイルスから感染が広がりやすい。熊本県南小国町の保育園では、8日の餅つきが原因とみられる食中毒が発生し、園児や保護者など計52人が 嘔吐おうと や下痢を訴えた。
 感染しても発症しない人もいる。気付かないまま、多くの参加者が集まる場で感染を拡大させることも想定され、餅つきの開催に慎重になっている。

◇ 「つく用」と「食べる用」分けて...工夫し決行も



 一方、感染防止策に取り組み、例年通り開催するところもある。東京都世田谷区の上町児童館では18日、餅つきが行われた。調理スタッフは全員マスクと手袋を着用し、子どもたちには消毒を徹底した。親子で参加した近くの主婦、三浦明子さん(40)は「餅つきは家庭ではできない体験。実施できて良かった」と話す。
 東京都町田市の小川自治会は昨年から、同市保健所の助言に従い、ついた餅をあんこ餅ときなこ餅に調理するのをやめた。白餅として販売し、自宅で煮たり焼いたりして食べてもらう。「ついた餅は飾り用の鏡餅にして食べないようにするか、雑煮や汁粉など火を通して提供すれば、感染リスクは減らせる」と同保健所。
 滋賀県近江八幡市で17日に行われた餅つき大会でも、つきたての餅ではなく、餅つき機で作ったものを加熱し、ぜんざいとして参加者に振る舞った。十数年前から続く行事だが、餅を「つく用」と「食べる用」に分けたのは初めてという。
 厚生労働省によると、餅つきに食品衛生法の規定はなく、主に自治体の保健所などの判断に委ねられる。そのため、各地で対応が異なっている。
 日本の食文化に詳しい、熊倉功夫・国立民族学博物館名誉教授は「餅つきには共同体を結びつけてきた側面もあり、中止すると地域がますますバラバラになる。衛生面と両立する方法を模索してほしい」と話す。


<参考>
・「ノロウイルスに関するQ&A」(厚生労働省)
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鳥インフルエンザ情報(2016.12.11):名古屋の東山動植物園が休園に追い込まれる

2016年12月11日 06時27分03秒 | 小児科診療
 鳥インフルエンザの続報です。
 愛知県名古屋市の東山動植物園で鳥の死亡が相次ぎ、鳥インフルエンザの可能性が排除できないことより休園に踏み切りました。

■ 鳥インフルエンザ 名古屋・東山動物園、11日から休園
毎日新聞2016年12月10日)
 名古屋市千種区の東山動植物園で死んだコクチョウから簡易検査で鳥インフルエンザの陽性反応が出た問題で、同園は10日、絶滅危惧種のシジュウカラガン1羽が新たに死んだため、11日から当面の間、動物園エリアを休園すると発表した。簡易検査では陰性だったが11月29日以降、鳥5羽が相次いで死んでおり、園内の消毒など防疫態勢を強化する。防疫を理由とした同園の休園は初めて。植物園エリアは一部を除き通常通り営業する。
 同園によると、死んだシジュウカラガンは2009年生まれの雌。陽性反応が出たコクチョウとは別の池で飼育していたが、動物病院で隔離。10日午後4時10分ごろ、獣医師が死んでいるのを確認した。解剖の結果、肝臓の腫瘍や気管などの出血が確認された。
 陽性反応が出たコクチョウなどの確定検査は12月20日ごろまでかかる見通し。少なくとも検査結果判明までは再開せず、陽性反応が確定した場合はさらに休園が延びる可能性がある。
 10日深夜記者会見した黒辺雅実・動物園長は「来園者の安全優先ということで苦渋の決断をした。早急に開園できるように努力したい」と話した。
 東山動植物園の15年度の入園者は258万3986人で、東京の上野動物園に次いで全国2位とされる。

 
 ちょっと基礎次項を確認。
 インフルエンザウイルスは鳥を宿主としているウイルスなので、本来は鳥に感染しても宿主には害を及ぼしません。
 話題になる鳥インフルエンザは「強毒性」と呼ばれ、宿主をも殺してしまう異常なタイプ。
 それが遺伝子変異で人への感染力を獲得すると大変な事態になる可能性があり、これが強力に監視している理由です。

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インフルエンザの流行が止められないわけ。

2016年12月09日 08時21分44秒 | 小児科診療
 先日のNHK「きょうの健康」(2016.10.20放送)でインフルエンザを扱っていました。
 その中で、下のようなイラストを使用し説明;



 インフルエンザ患者全体を、その重症度と人数によりピラミッドに例えています。
 頂点にある合併症を伴う重症者はほんの一部。
 「高熱・体がつらい・節々が痛い」という、いわゆるインフルエンザのイメージの症状がその下に来る構図。
 しかしこのイラストからすると、このような典型例も多数派ではなく一部と捉えることができます(20%くらい?)。
 典型例の下には、一般の軽い風邪症状(鼻汁・のどの痛み)で終わる軽症例がたくさんいて、
 その軽症例の下にはさらに多くの症状の出ない「無症候性感染」者がいる・・・。
 軽症者と無症候性感染者を合わせると、全体の3/4を占める?

 問題は人にうつす感染力です。
 このピラミッドの中の全員が感染力を有します。
 軽症者&無症候性感染者も、人にうつす感染力があるのでやっかいな存在です。

 軽症者は、医療機関を受診せず、せいぜい市販のかぜ薬を飲むくらいで済ませるでしょう。マスクくらいはしてくれるかもしれません。
 しかし無症候性感染者に至っては、ぜんぜんつらくはないのですから、ふつうに日常生活を送り、マスクもせずに満員電車に乗って通勤し、職場でも働き続け、商談ではウイルス飛沫を飛ばしまくり。

 つまり、軽症者・無症候性感染者という感染源が、インフルエンザ流行に大きく荷担しているのです。
 これは迅速診断が普及してわかってきたことです。
 昔は症状で診断していましたから、軽症患者はふつうの風邪として扱われていましたので。

 無症候感染者への対策は?
 インフルエンザ迅速検査を市販し、毎朝チェックする?
 お金がかかりすぎて無理無理。

 というわけで、インフルエンザ流行を止めるのは人類にとって至難の業。
 より有効率の高いワクチンを開発し、全世界で接種するしか・・・。
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第71回全日本ソフトテニス選手権大会(2016年、山口県)を観て

2016年12月08日 09時09分30秒 | テニス
 唐突にかつ久しぶりにテニス、それもソフトテニスの話題です。
 NHKで件名の大会の放映をしていたのを見つけ、録画して後でみてみました。

<参考>
組み合わせ表
動画(YouTube)

 男子決勝は
 「水澤/長江組(NTT西日本広島)」VS.「船水/星野組」(早稲田大学)
 というカード。

 さすがにトップレベルとなると、躊躇なくラケットを振り切っていてボールに伸びがあります。
 水澤、長江、船水の3選手は日本代表です。
 でも、私が注目したのは星野選手。
 体の使い方がリラックスしていてすごく自然なんですね。
 これは練習して獲得できるセンスではありませんので、天性のものなのでしょう。
 これからまだまだ伸びると思います。

 さて、実力も伯仲している中、何が勝負を分けるのかというと・・・一つは「我慢」でしょうか。
 自分の得意な体勢でボールを打てれば素晴らしい球筋になるのは誰もが同じ。
 速いボールを打てるだけなら、いくらでもいるはず。
 しかし試合中はそんなチャンスは滅多に訪れません。
 少し崩れた体勢で如何にボールをコントロールするか、が問われます。

 それは練習の中で培われること。
 無理に決めようとするとミスが多くなる。
 どの程度までバランスが崩れていても自分のボールとして打ち込めるかは足腰の鍛錬にかかっています。

 攻めが無理と判断した際は、我慢してボールをつなぎ、チャンスを待つ忍耐力が要求されます。
 しかしつなぎボールが甘くなれば容赦ない攻めが襲ってきます。
 つなぎボールは「攻められないよう深く」が基本です。

 トップレベルでは攻めのシュートボールの威力にはあまり差はありませんので、忍耐力とつなぎボールの精度で勝負が分かれるのではないかと考えます。

 そして攻めは、相手のバランスを如何に崩すか。
 相手がダブル前衛(今はダブルフォワードと呼ぶのですね)、頭越えのログで体勢を崩し、次に足下にシュートボールを鎮める。
 ダブル前衛の間のセンターを狙い、お見合い(ボールの譲り合い)を誘って中途半端な返球を期待する、等々。

 これは優勝した船水/星野ペアが徹底して実行した戦術です。

 女子の試合も見ましたが、男子より攻めと守りの組み立てが甘い印象がありました。
 なぜそんな無理な体勢から攻めるのかなあ・・・前衛に捕まるのはわかっているだろうに、なんて場面が多々ありました。

 この大会の放映をみて、あらためて錦織選手が活躍するテニスの世界を振り返ると・・・、そのレベルの高さに愕然とします。
 1球1球に込められた意味がわかり、無理なこと・無駄なことをするとすぐにポイントを失ってしまうゲーム運び。
 やはり世界を転戦してお金を稼いでいる人達は、ひと味違う。

 もっとも、忍耐力とつなぎボールの精度という点は共通していますが。
 錦織選手が最近上位で安定しているのは、まさにこれができるようになったからだと思います。
 数年前までは、途中で集中力を切らして我慢できなくなる捨てゲームを時々見かけました。

 ・・・昔取った杵柄(といってもインターハイに出ただけですが)で、偉そうな言葉を並べてしまいました。お許しを(^^;)。
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2016年11月、タミフルが1歳未満の赤ちゃんにも使えるようになりました。

2016年12月08日 08時34分14秒 | 小児科診療
 従来、赤ちゃんへのインフルエンザ対策は不十分なものでした。
 ワクチンは生後6ヵ月にならないと接種できません。
 抗インフルエンザ薬のタミフルは1歳未満への投与が許可されていません。
 つまり、生まれてから生後6ヵ月まではワクチンも抗インフルエンザ薬も使えない「空白期間」「無防備期間」だったのです。

 というわけで、日本の小児科医は「家族がワクチンを接種してインフルエンザを家庭に持ち込まないようにしましょう」と指導することしかできませんでした。
 一方、米国では1歳未満でもタミフルの使用が許可されていますし、「妊婦がインフルエンザワクチンを接種して、胎盤経由で移行する免疫抗体で赤ちゃんを守りましょう」と積極的に勧めています。

 さて、2016年11月24日からタミフルが1歳未満の乳児へ使えるようになりました。
 生まれて間もない新生児でもOKです。

 一つ注意点として、体重あたりの投与量が1歳以降の幼児と異なり、少し多い設定になっています。
 当院は電子カルテなので、一つの薬に対する設定は1種類しかできず、電子カルテ泣かせの薬になりました(^^;)。

 実は2009年、新型インフルエンザ発生の際に、特例として赤ちゃんへのタミフルとうよが許可されたことがありました。
 それが正式に認可されるまで、7年を要したことになります。
 専門学会は以前からしつこく要望してきましたが、世間が騒がないと厚生労働省の腰が重いのはいつものことですねえ。


■ タミフル、1歳未満も保険適用の対象に
2016.12.07:メディカル・トリビューン
 11月24日からオセルタミビル(販売名タミフルドライシロップ3%)の新生児および乳児への使用が保険適用の対象となった。薬事承認上は適応外でも医療上の必要性が高く、科学的根拠が十分であれば保険適用の対象とする「公知申請」の制度に基づき厚生労働省が承認した。同薬はこれまで1歳以上の小児への使用が承認されていたが、欧米諸国では1歳未満にも使用されている。小児ではインフルエンザウイルス感染症による致死的な合併症が認められる場合もあることなどから、日本感染症学会などの関連学会が新生児および乳児への同薬の使用を認めるよう要望していた。

◇ 欧米では標準的治療
 タミフルドライシロップ3%はこれまで「A型またはB型インフルエンザウイルス感染症およびその予防」を効能・効果とし、小児の用法・用量については1回用量を「2mg/kg(ドライシロップ剤として66.7mg/kg)を1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与する※」としていた。今回、これに「新生児、乳児の場合」の1回用量として「3mg/kg(ドライシロップ剤として100mg/kg)」が追加され、新生児および乳児への使用も保険適用の対象となる。
 今回の承認は「公知申請」によるもの。公知申請とは、医療上の必要性が高いが、欧米諸国では既に適応が承認されているにもかかわらず国内では適応外使用となる薬剤の使用について、科学的根拠に基づき妥当と判断された場合に薬事承認を待たずに保険が適用される制度。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開した「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の報告書によると、同薬の新生児および乳児への使用については、日本感染症学会など3学会が要望していた。
 同会議で検討の結果、小児ではインフルエンザウイルス感染による肺炎や脳症などの致死的な合併症が認められることから、適応疾患(今回はインフルエンザウイルス感染症)について、「生命に重大な影響がある疾患」に該当すると判断。また、同薬の医療上の有用性についても、現在承認されているインフルエンザウイルス感染症治療薬のうち吸入薬は1歳未満の小児には適切に使用することが困難であること、軽症例では重篤化しないよう発症初期に経口薬を投与する場合も考えられることなどが考慮された。
 さらに、米疾病対策センター(CDC)のガイドラインでは1歳未満を含む小児にも同薬が推奨されているなど欧米で標準的療法に位置付けられており、「国内外の医療環境の違いなどを踏まえても国内における有用性が期待できると考えられる」と結論付けられ、公知申請が妥当と判断された。
 この報告書に基づき厚労省の薬事・食品衛生審議会が事前評価を行い、11月24日から保険適用となった。 なお、PMDAでは公知申請によって保険が適用されることになった医薬品の使用に際しては、承認されるまでの間は「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」による「公知申請への該当性に係わる報告書」の内容を読み、承認後には審査報告書を合わせて読んで、適正に使用するよう呼びかけている。

※ただし、1回最高用量はオセルタミビルとして75mgとする
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新型インフルエンザ(H5)の足音

2016年12月01日 08時25分32秒 | 小児科診療
 巷では季節性インフルエンザの流行が話題です。
 感染対策として手洗いを励行し、咳をしている方はマスクをするなど「咳エチケット」を守りましょう。
 日本人には馴染みの「うがい」は20分間隔でやらないと効果が無いと先日TVで放映されていました(^^;)。

 でも私は、少し前から「鳥インフルエンザ」のニュースが増えてきているのが気になっていました。
 そして最近、日本各地(青森県/新潟県)・世界各地で鳥インフルエンザによる家畜としての鳥の集団死〜殺処分が報告されています。

 何となく怖いけど、どこまで怖がればいいのか・・・?

 2009年にはじまった「新型インフルエンザ」はダークホースの「ブタインフルエンザ(H1)」でした。
 本命は「鳥インフルエンザ(H5)」とされていた状況を覆したのです。

 ただ、ブタインフルエンザは強毒性ではなく、被害は歴代の新型インフルエンザよりも少なく済みました。

 しかし、鳥インフルエンザの脅威が無くなったわけではありません。
 鳥インフルエンザは強毒性です。
 その強毒性を保ったまま、トリインフルエンザウイルスが人間に感染できるよう変異したら・・・それはそれはたいへんなことになります。
 「国民の5割以上が感染し、死亡率10%」などと予想されていますが、これが現実になると日本で500万人が死亡するという試算になります。

 かといって、現時点ではその気配はまだありません。
 人間にも感染例が報告されていますが、濃厚な接触をしていた人に限定されています。
 みなさん、正しい知識を持って正しく怖がりましょう。


■ 鳥インフル検出、新潟県上越市の養鶏場でも
(2016年12月01日:読売新聞)
 新潟県は30日、同県上越市の養鶏場の鶏の死骸から、高病原性とみられる鳥インフルエンザウイルス「H5亜型」が検出されたと発表した。
 県は国からの指示を受け、この養鶏場で飼育する23万羽の殺処分を1日から始める。県北部の関川村の養鶏場でも同様のウイルスが検出されており、殺処分される鶏の数は計54万羽に上る。米山隆一知事は「徹底的に対処して感染を封じ込め、予防に全力を尽くしたい」と述べた。
 県畜産課によると、上越市の採卵養鶏場で11月29日に40羽、30日に60羽の鶏が死んでいるのが見つかった。7羽について簡易検査を行い、6羽から陽性反応が出たため遺伝子検査を行った。今後、国に調査を依頼して詳しい遺伝子型を特定する。



■ <鳥インフル>青森で1万6500羽殺処分開始
(2016.11.29:河北新報)
 青森市内の家禽(かきん)農場で飼育していた食用アヒル(フランスガモ)からH5型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されたことを受け、青森県は29日未明、農場の全約1万6500羽の殺処分を始めた。国と県による疫学調査チームが同日、現地調査を行い、感染ルートを調べる。
 農場では県職員234人が29日午前0時25分から4班体制で殺処分を開始。午前7時半までに37%に当たる6150羽を処分した。敷地内では白い防護服にゴーグル姿の県職員が殺処分したアヒルを詰めた袋を積み上げる姿が見られた。
 同日午前、県庁で記者会見した高谷清孝県農林水産部次長は「ウイルス確認から24時間以内の午後9時45分までには全ての殺処分を終えたい」と話した。袋詰めしたアヒルは、72時間以内に近くの市有地に埋却処分する予定。
 県は農場の半径3キロ圏内を家禽や卵の移動制限区域に、10キロ圏内を搬出制限区域として区域外への持ち出しを禁じた。移動制限区域では4農場で約1万4000羽、搬出制限区域では3農場で約40万羽が飼育されている。県は3キロ圏の4農場に加え、発生農場から種卵の移動があった青森市内の1農場を対象に、同日午前から臨床・ウイルス検査を行っている。
 同日午前6時40分までに農場から10キロ圏の5カ所に畜産関係の車両を対象にした消毒ポイントを開設し、農場外への感染防止を図っている。
 鳥インフルエンザが発生した農場では27日から28日朝にかけてアヒル10羽が死んでいるのが見つかり、県に連絡。県の簡易検査で陽性反応があり、青森家畜保健衛生所が実施した遺伝子検査でH5型鳥インフルエンザの可能性が高いと判定された。

◎新潟では鶏31万羽
 新潟県関川村の養鶏場で鶏約40羽が死んでいるのが見つかり、同県は29日未明、鶏から強毒性で大量死につながるH5型の高病原性鳥インフルエンザウイルスを検出したと発表した。
 新潟県は、関川村の約31万羽の鶏の殺処分を始めた。新潟県に出動要請された陸上自衛隊も従事。県は12月2日まで24時間態勢で作業に当たる。
 養鶏場の半径10キロ内に約60の業者があり、約50万羽を飼育している。養鶏場の職員が28日、鶏約40羽が死んでいるのを確認。うち5羽の簡易検査で陽性反応が出たため、ウイルスの遺伝子を調べたところ、高病原性と確認された。
 政府は「まん延防止には初動対応が重要」として、29日午前に農林水産省の政務官や専門家らを新潟、青森両県に派遣。関係閣僚会議を開催し、菅義偉官房長官は「感染拡大防止に万全の対応をとりたい」と述べた。安倍晋三首相も徹底した防疫措置を迅速に進めるよう指示した。


■ 世宗市でも鳥インフル発生の疑い、採卵鶏70万羽殺処分準備=韓国
(2016年11月27日: 中央日報/中央日報日本語版)
高病原性鳥インフルエンザ拡散遮断に向け家禽類の一時移動中止命令が発動された中、世宗市(セジョンシ)でも鳥インフルエンザが発生した。
農林畜産食品部と世宗市が26日に明らかにしたところによると、世宗市全東面宝徳里(チョンドンミョン・ポドクリ)の採卵鶏農場で鶏280羽余りが死んだという通報が寄せられた。簡易検査で陽性反応が確認された。世宗市で疑い例の通報があったのは初めて。この農場の飼育数は70万羽に達する。高病原性であるかどうかの判断は29日ごろに出る予定だ。
世宗市は農場主と家禽類の移動を遮断し、周辺統制哨所設置、車両消毒用拠点消毒施設設置などの措置を下した。高病原性の確認に備え鶏70万羽に対する殺処分準備に入った。通報が寄せられた農場から半径3キロメートル以内には20軒の農家で2万7000羽、半径10キロメートル以内で68軒の農家で184万9000羽の家禽類を飼育している。
一方、農林畜産食品部は高病原性鳥インフルエンザがアヒルと採卵鶏農家を中心に急速に拡散していると判断し、26日午前0時から28日午前0時まで48時間にわたり家禽類と関連した人、車両、物品などを対象に一時移動中止命令を発令した状態だ。


 こちらはNHKの解説記事です;

■ News Up 鳥インフルエンザ 知っておくべき4つのこと
(11月30日:NHK)
 この秋、全国で感染の報告が相次ぐ「鳥インフルエンザ」。新潟県と青森県では養鶏場などで飼育されているニワトリやアヒルから鳥インフルエンザウイルスが検出されるなどして、50万羽以上の処分が行われることになりました。
 ひとたび感染が広がれば、養鶏農家などに多大な被害が出るのが鳥インフルエンザです。今、大切なのは、養鶏場での感染拡大をいかに抑えるかですが、鶏肉や卵は食べても大丈夫なのか。飼っているペットの鳥が感染することはないのか。気になる人も多いのではないでしょうか。知っておいていただきたい4つのポイントをまとめました。

◇ そもそも鳥インフルエンザって何?
 インフルエンザと聞くとまず思い出すのは、今月25日に全国的な流行期入りが発表されたヒトのインフルエンザです。ことしはA香港型と呼ばれるタイプのインフルエンザウイルスが主に流行していますが、実は、このウイルスも元はといえば、鳥インフルエンザでした。
 インフルエンザウイルス(A型)には、現在、144種類があるとされていて、いずれも元はカモなどの水鳥が体内にもっているものです。
 通常、水鳥の体内では、これらのウイルスは病気を引き起こしません。ところが鳥類に対して高い病原性を獲得した「H5型」や「H7型」と呼ばれる鳥インフルエンザウイルスを体内にもつ水鳥が、シベリアなどから南下する際、経由地となる日本などの水辺に立ち寄り、ふんをすると、その中には大量のウイルスが含まれていて、周囲にばらまかれます。これを野鳥などが体内に取り込むとウイルスが病原性を発揮し、臓器などがダメージを受けて死ぬのです。
 また問題は、野鳥やネズミなどの小動物によってこのウイルスが養鶏場などにも持ち込まれることがあることです。狭い空間に大量に鶏が飼われている養鶏場はウイルスが広まる格好の場所で、一気に感染が広まってしまいます。

◇ 人に感染するの? 鶏肉や卵は食べても大丈夫?
 農林水産省によりますと、日本では、これまで鶏肉や卵を食べて鳥インフルエンザにかかった例は、報告されていません。そもそも「H5型」か「H7型」の鳥インフルエンザウイルスが検出された農場では、同じ農場の家きんは殺処分するなどの対策がとられるため、ウイルスに感染した鶏肉や卵が市場に出回ることはないということです。
 また鳥インフルエンザウイルスは加熱すれば感染性がなくるということで、仮にウイルスが付着していたとしても、食品全体が70度以上になるように、肉の場合はピンク色の部分がなくなるまで加熱すればよいということです。

 このように通常、人には感染することがない鳥インフルエンザですが、世界的にみると感染例の報告があります。WHO=世界保健機関によりますと「H5N1型」と呼ばれる鳥インフルエンザには、エジプトや東南アジアなどを中心に2003年以降、856人が感染・発症、半数以上の452人が死亡しています。
 こうしたケースは、鳥インフルエンザにかかった鶏を調理しようと手で羽を取る際などにウイルスを含む粉末状のフンを大量に吸い込むなどした特殊な場合で、通常、日本では起こらないと考えられています。

◇ なぜことし? 一体どのようなルートで日本に?なぜことし? 一体どのようなルートで日本に?
 鳥インフルエンザは、ことし4月以降だけでもヨーロッパ各国や東南アジアからアフリカに至るまでさまざまな国の野鳥や家きん類から検出されています。いずれもその大もとは、シベリアなどに生息する渡り鳥と考えられています。これらの渡り鳥が、経由地に立ち寄った際、ウイルスを周囲に広げるのです。





 京都産業大学鳥インフルエンザ研究センターの大槻公一センター長によりますとこれらの渡り鳥が日本に入ってくるルートは、以下の3つがあるということです。
 まず、▽シベリアから北海道を経由するルート。次に▽シベリアから中国大陸を南下して朝鮮半島を経由するルート。そして、▽ロシアと中国の国境から直接日本海を越えて山陰地方などに来るルートです。
大槻センター長は、この秋の場合、鹿児島と鳥取で野鳥から検出されたケースでは、朝鮮半島経由のルートが、また、青森や新潟の養鶏場などから検出されたケースでは、シベリアから北海道を経由するルートで持ち込まれた可能性が考えられるということです。

 またこの秋、日本国内で多く検出されているのは「H5N6型」というタイプの鳥インフルエンザウイルスです。大槻センター長によりますとこのタイプはここ数年、中国国内で感染が広がっていました。このため中国大陸からシベリアに戻った渡り鳥どうしの間で感染が広まり、この秋、そのうちの一部が渡り鳥の南下にともなって日本に持ち込まれた可能性があると指摘しています。

◇ 今 気をつけるべき事は? ペットの鳥は大丈夫?
 鳥インフルエンザの対策で重要なのは、感染が確認された養鶏場からウイルスを広げないことです。
 国のマニュアルでは、▽高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出された養鶏場から半径3キロ以内の養鶏場にニワトリや卵の移動を禁止するとともに、▽3キロから10キロの範囲にある養鶏場に対しては域外への出荷などを禁止する対策を行うことになっています。
 ただウイルスは、養鶏場を出入りする人や車などにも付着して広がることが知られていて、こうした感染の広がりを確実に抑えることが重要です。

 一方、自宅で鶏やペットの鳥を飼っているので、心配だという方がいらっしゃるかも知れません。
 農林水産省によりますと国内で鳥インフルエンザが発生したからといって、直ちに家庭などで飼っている鳥が感染するわけではなく、鳥を飼っている人は次のことに気をつければ心配はないということです。

▽鳥インフルエンザウイルスを運んでくる可能性がある野鳥が近くに来ないようにする。
▽飼っている場所はこまめに掃除し、フンはすぐに片づけ、こまめにエサや水を取り替える。
▽鳥の体やフンに触れた後は手洗い、うがいをする。口移しでエサをあげない。
そのうえで、農林水産省は飼っている鳥を野山に放したり、処分するようなことはしないでくださいと呼びかけています。
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