徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

RSウイルスも流行・・・秋なのに

2012年09月26日 05時32分09秒 | 小児科診療
 今シーズンは早々とインフルエンザ患者が発生したと前回のブログで記しました。
 今度はRSウイルスです。やれ忙しい。
 昨夜「RSウイルスが流行中」というニュースがNHK他で流れました。

RSウイルス感染症、去年の2.7倍(2012年9月25日 17時39分、NHK)
 乳幼児に肺炎などを引き起こすRSウイルス感染症の患者が全国で急増し、この時期としては、統計を取り始めて以降、最も多かった去年の2.7倍に上る異例の流行となっていることから、国立感染症研究所は手洗いなど対策の徹底を呼びかけています。
 RSウイルス感染症は、発熱やせきなど、かぜに似た症状の出る病気で、秋から冬にかけて主に乳幼児で流行し、初めての感染では肺炎や脳炎を引き起こして重症化することがあります。
 国立感染症研究所によりますと、今月16日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関で新たにRSウイルス感染症と診断された患者は3789人で前の週を1000人余り上回りました。
 この時期としては統計を取り始めた平成15年以降、最も多かった去年の2.7倍に上る異例の流行となっています。
 都道府県別に見ると、福岡県が643人、東京都が358人、宮崎県が353人、大阪府が225人など、都市部のほか九州で多くなっています。
 RSウイルス感染症の流行は例年12月ごろにピークを迎えることから、患者数は今後もさらに増えると見られています。
 国立感染症研究所の安井良則主任研究官は「流行は、これから患者数が少ない地域に拡大していくと考えられる。0歳児の場合、呼吸状態が悪化して入院が必要になることも珍しくないので、熱が下がってもせきが続いているようであれば早めに医療機関を受診してほしい」と注意を呼びかけています。


 やはり・・・。
 最近、乳幼児でゼーゼーしたり気管支炎~肺炎になるケースが増えてきている印象がありました。先日肺炎で病院へ紹介入院となった患者さんも「RSウイルス陽性」とのこと。
 
 RSウイルスは本来冬中心に流行する呼吸器感染症で、乳幼児は年齢が小さいほど気管支炎になりやすく、とくに生後3ヶ月くらいまでは重症化しやすいことで知られています。大人が罹ってもふつうの風邪で済んでしまうのも特徴です。

■ 当院HP「かぜ」ページの「RSウイルス感染症」を参照

 風邪症状のある高齢者が「孫が生まれた」と喜んで面会し、その後お孫さんが気管支炎を起こして入院してしまうという例を時々経験しますのでご注意を。風邪症状のある大人は安易に赤ちゃんに近づかないようにしてください。

 また、乳幼児が集団で生活する保育園・幼稚園ではやっかいな感染症です。
 「手洗い・マスク着用」とテレビでは感染対策を謳いますが、小さな子どもには限界があり、みんな体をすりあわせて遊ぶので、感染拡大を防ぐことは至難の業。
 究極の感染対策は「個別保育」で接触を避けることですが、現実的に無理ですね。

 園でRSウイルス陽性患者が発生すれば、その時に風邪症状のある園児たちはほとんどRSウイルスに感染していると考えて差し支えないでしょう。子どもを預けている親御さんは「うつっても仕方ない」という覚悟が必要です。

 なお、感染すれば全員が重症化するわけではありません。
 生まれて初めて感染した赤ちゃんでは、ふつうの風邪で終わるのが約70%、ゼーゼー気管支炎を起こすのが30%、呼吸が苦しくなり入院治療に至るのが約3%と云われています。
 2年目の冬以降に罹っても、最初よりも軽く済むのがふつうです。

 そして、乳幼児が感染すると、感染力(他人にうつす力)は数週間続きます。症状がおさまっても感染力はゼロにはなりません。よく保育園・幼稚園から「治癒証明」を要求されることがありますが、感染力ゼロを保証するには1ヶ月の期間が必要です。
 1ヶ月園を休ませるなんて無理・・・よって、この場合は「治癒証明」ではなく「登園許可」という内容が現実的です。「感染力は少し残るけど元気になったので園生活に戻れます」くらいの意味です。

 TVでは「感染が疑われたら早めに病院を受診しましょう」と勧めています。
 しかし小児科医にとって、RSウイルスは効く薬がないことで有名な悩ましい感染症なのです。
 ウイルスなので抗生物質は効きません。
 早期乳児に鼻水止めを使うと、かえって粘稠になり苦しくなることもあります。
 家庭療養で一番有効な治療は「鼻水を吸って取る」こと。市販の赤ちゃん用鼻吸い器を購入してせっせと吸ってあげてください。
コメント (3)
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今シーズン初のインフルエンザ患者

2012年09月13日 06時15分32秒 | 小児科診療
 今週月曜日(9/10)に当院では今シーズン初のインフルエンザ患者が来院しました。
 ふだんは流行情報がなければこの時期にインフルエンザ迅速診断をすることはないのですが、今回の患者さんは熱性けいれんを起こしており念のため検査したところ、A型インフルエンザが陽性に出たのでした。

 9月に患者さんが発生するなんて、開業してから初めての経験です。ちょうどインフルエンザワクチンの予約受付を開始した日でもあり、ちょっとショックでした。その後数日経過しましたが、今のところ大きな流行にはなっていないようです。

 しかし巷では、8月中も沖縄では流行(ニュース1)があり、9月に入り東京で学級閉鎖が発生したとのニュース(ニュース2)も耳にしていたので「今年は早いなあ」くらいに思っていた矢先の出来事でした。あ、前橋市の消防学校でもインフルエンザが発生して休校措置が取られたそうです。

(ニュース1)沖縄で夏にインフル大流行 県南部で深刻化、亜熱帯気候が影響との指摘も
(2012. 9. 4:日経メディカル)
 近年、沖縄県では夏にもインフルエンザの流行が見られるようになってきた。今夏は県内の定点当たり報告数が20人を超え、大流行の様相だ。夏の流行は、同じ亜熱帯気候のタイや台湾でも認められている。
 今夏、沖縄県でインフルエンザが猛威を振るっている。県内の定点当たり報告数は26週(6月25日~7月1日)から増え始め、29週(7月16日~22日)には21.10人に達した。2009年の新型インフルエンザの流行を除けば、同県の定点当たり報告数が20人を上回ったのは06年以来のことだ。特に人口が集中する県南部では流行が深刻化し、29週の定点当たり報告数が35.89人に達して、流行警報まで発令された。琉球大感染症・呼吸器・消化器内科学教授の藤田次郎氏は、「南部の病院の救急外来は、どこもインフルエンザの患者であふれていた」と話す。
 沖縄県で、冬に加えて夏にもインフルエンザの流行が見られるようになったのは最近のことだ。05年の27週(7月4日~10日)に同県の定点当たり報告数が11.24人となって、全国で初めて夏に注意報が発令され、06、07年の夏にも流行が認められた。従来、インフルエンザは冬の感染症と考えられていたこともあり、診断キットなどが夏にはほとんど流通していなかった。今では季節を問わず診断キットが流通するようになり、いつでも診断が可能になったが、「他の都道府県での定点当たり報告数は0.1~0.2人程度で、大きな流行は認められない」と感染症研究所感染症情報センター主任研究官の安井良則氏は話す。
 なぜ沖縄県だけで夏にインフルエンザが流行するのかは分かっていない。ただ、同じ亜熱帯に位置するタイや台湾でも、冬だけでなく夏(雨期)にも流行するパターンが確認されており、安井氏は「亜熱帯気候の影響が指摘されている」と話す。


(ニュース2)都内公立小学校でインフルエンザ急増 墨田区で学級閉鎖も
(9/6:FNN)
東京都内の公立小学校で、インフルエンザによる欠席が急増し、今シーズン初めて学級閉鎖があった。
学級閉鎖されたのは、墨田区の横川小学校の2年生の1クラス。
墨田区によると、このクラスでは、4日から発熱やせきなど、インフルエンザの症状による児童の欠席などが目立ち始め、6日の時点で34人のうち11人が欠席しているという。


 当院の外来を見渡すと、ほかにマイコプラズマ肺炎が散発しています。
 それから、近隣の保育園でRSウイルスも発生したという未確認情報もあります。
 RSウイルスも例年より早く増加しているとニュースが伝えています(ニュース3)

(ニュース3)RSウイルス感染症が急増 対策徹底呼びかけ
(9/12:NHK)
乳幼児に肺炎などを引き起こすRSウイルス感染症の患者が、この10年で最も速いペースで増えていることから、国立感染症研究所は、例年より早く流行のピークを迎えるおそれがあるとして、手洗いなど、対策の徹底を呼びかけています。
RSウイルス感染症は、発熱やせきなどかぜに似た症状の出る病気で、秋から冬にかけて主に乳幼児で流行し、初めての感染では肺炎や脳症を引き起こして重症化することがあります。
国立感染症研究所によりますと、今月2日までの1週間に全国およそ3000の小児科の医療機関で新たにRSウイルス感染症と診断された患者は1998人で、前の週の1.7倍に急増しました。
患者の数はこの10年で最も速いペースで増えていることから、研究所は例年より早く、流行のピークを迎えるおそれがあるとしています。
患者の数を都道府県別に見ると、▽福岡県が433人、▽東京都が251人、▽宮崎県が177人など、九州で多くなっています。
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漢方が好きな医者、嫌いな医者

2012年09月07日 06時32分40秒 | 小児科診療
私は小児科医には珍しく、10年ほど前から漢方にはまっています。
初めは自分に使用し、よく効いたので身内に処方し、これもよく効いたので患者さんへ処方するようになりました。

それ以前は「漢方は怪しいもの」と漠然と考えておりました。
まあ、学生時代に教わることもありませんでしたし、食わず嫌いといったところでしょうか。

いざその効用を知ってみると・・・漢方薬は約2000年前、検査機器のない時代に完成した医学ですから自分の五感を駆使して診療する医学であり、聴診器一本で勝負する開業医向きとも云えるかもなあ、とさえ感じるようになりました。

しかし、現在でも漢方が嫌いな医者がたくさんいます。
説明しても(以前の私のように)端から疑っているので議論は平行線をたどります。
反対派の主張は「漢方はEBM(エビデンスに基づいた医学)がないから評価できない」というもの。
つまり、漢方医学の概念を理解する気はなく、漢方薬を西洋医学の土俵に強引に乗せている印象なのです。
この現象を、私は以前からプロレスと相撲に例えられると思ってきました。
「プロレス(≒西洋医学)のルールと相撲(≒東洋医学)のルールは異なる。西洋医学的に漢方薬を使うことは、プロレスのリングで相撲を取るのと同じであり、実力が十分発揮できないだろう。」と。

このことに関して、最近読んだ「日本東洋医学会誌」(Vol.58 No.3 407-412, 2007)の浅岡俊之先生の文章がわかりやすく説明していると感じたので、一部を抜粋してみます:

・日本で復活し見直されてきたのは「漢方薬」であり「東洋医学」ではない。

・結局漢方の効果や評価は西洋医学的な表現でなされなければ納得できない。

・東洋医学の発想の元に漢方薬を使えばそれは東洋医学をしていること云うことになるが、西洋医学的にやってくれないと分からないし納得もできないといって漢方薬を使うと云うことは、要するに西洋医学をやっていることになると思う。

・漢方薬はいろいろな生薬を混ぜるという形態を持っており、有効成分だけ絞るという西洋医学のやり方とは正反対である。

・漢方を扱う医者は2種類いる。
①西洋医学として漢方を使う医者・・・これは正式には漢方診療とは云えない
②東洋医学の思想に沿って漢方を使う・・・これこそ真の漢方診療

・いろいろな点で正反対であるのに、東西医学の融合は可能なのか?
 (漢方医学) ↔ (西洋医学) 
  生薬 ↔ 合成薬
  心身一如 ↔ 心身二元論
  証 ↔ 病名
  ヒトを自然界の一部と認識 ↔ 自然界をコントロールする存在としてのヒト

・よく「個の治療」「オーダーメイド治療」という言葉が使われるが、別に漢方薬がオーダーメイドな薬剤であるわけではない。漢方薬(特にエキス剤)は生薬を使った約束処方であり、オーダーメイドの反対のレディメイドな薬剤である。東洋医学が持っている解析の基本的スタンスがオーダーというか、個を見つめるというスタンスを有しているからオーダーメイド治療になり得るのである。

・東西医学の融合という話をするならば、まずその前提として、基本的に双方が全く違うものであるということをはっきりと認識するべきである。私は、東西の医学は融合した方がいいと思うが「混ぜること=融合」とは到底思えない。一人一人の医師が自分の中に二つのものを同じ価値で用意しておくというのが、本当の意味での融合ではないだろうか。


私は浅岡先生の昔からのファンで、ケアネットDVDの漢方シリーズは何回も見て勉強させていただきました。
この教育講演の内容も、さすが浅岡先生、と拍手を送りたくなりますね。
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町医者の勲章?

2012年09月07日 06時20分20秒 | 小児科診療
プチ自慢を。

先日、Googleで「食物アレルギー」を検索したら、当院HPがトップページにヒットするのを発見しました。
しがない町医者のHPごときが、ヒット数200万件以上のうちのNo.3ですから、たいしたものです(自画自賛?)。

このページは元々、自分の備忘録としてのメモを書きためたものとして始まりました。
食物アレルギーの診療で必要な知識は膨大であり、細かいことはどうしても忘れてしまいがち。
そうだ、HPにまとめておけば辞書代わりに使えるし、患者さんへの説明の際も使える・・・と考えました。

また、開業すると勤務医時代のように学会へのフル参加が困難になり、耳学問より読書学問へ移行する傾向があります。
近年の私は、学会会場の書籍販売で新しい本を見つけると購入し、それを読んで新知見があればHPを更新する、という行動が習慣になりつつあります。

気がつくと、結構な量になりました。
というわけで最先端というわけにはいきませんが、これからもマイペースで更新を続ける所存です。
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