徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

子宮頸がんワクチンは男子にも必要。

2023年09月22日 07時19分24秒 | 小児科診療
当初思春期女子だけが接種対象で、のちに男子にも接種拡大したワクチンは、
過去にもありました。

それは「風疹ワクチン」。
現在は「麻疹・風疹ワクチン(いわゆるMRワクチン)」として提供されています。
思春期男子に接種していなかったため、
当時の少年が現在は再生産世代となり、
妊婦に感染させることにより「先天性風疹症候群」を生み出している不幸。

さて、現在汚名をはねのけて復活した子宮頸がんワクチン。
現在はほかのガンの原因にもなりえることから「HPVワクチン」と呼ばれるようになりました。
子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因となり、
女性の体を守るためにワクチンが開発され、
当事者となる女性対象に接種が始まりました。

でもHPVは男性も持っています。
つまりHPVに感染している男性が性交渉で女性にうつすのです。
そして男性自身のがんのリスクとなることがわかり、
ようやく男子への接種も考慮され、海外では定期接種化した国も増えてきました。

日本ではようやく議論が始まったところで、
先進国の中では周回遅れというイメージがぬぐえません。

それを扱った記事が目に留まりましたので、引用させていただきます。

▢ 男女とも9価HPVワクチン定期接種を
日本産科婦人科学会が子宮頸がん予防のロードマップ示す

 世界保健機関(WHO)は、子宮頸がん予防に関し、
①15歳までに90%の女性がヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを接種する、
②70%の女性が35歳と45歳で確実性の高い子宮頸がん検診を受診する、③90%の子宮頸部病変を有する女性が適切にケアされる
―という3つの目標を掲げている。
日本産科婦人科学会は9月2日付で、将来は男女に9価HPVワクチンの定期接種を国に求めるなどの意向を会員に向けて公表した。
◆ WHOの3つの目標のうち、2つが未達
 2030年までにWHOが掲げる子宮頸がん予防に関する3つの目標が達成できれば、将来的に子宮頸がんの排除(女性人口10万人当たり4人以下の罹患率)に到達する。しかし現状では、目標の①と②が未達である。
・・・
◆ キャッチアップ接種に関しては、繰り返しの周知徹底が必要
・・・
 また世界では先進国を中心に、女子だけでなく男子へのHPVワクチン定期接種化の動きが広まっている日本でも10以上の自治体が独自に4価HPVワクチンの公費助成を行っているが、さらなる拡大が求められるとした。
 さらに、子宮頸部前がん病変および子宮頸がんに対しては、4価に比べ9価ワクチンでより高い予防効果が期待できるとの報告がある。そのため同学会では、将来的には9価ワクチンの男女への定期接種化を国に求める意向を示した。
◆ 子宮頸がん検診へのHPV検査導入は議論中
 子宮頸がん検診については、今年(2023年)4月に公表したHPV検査導入に言及。HPV検査導入には、現在日本で20歳以上に対し2年に1回行われている細胞診による検診と比較した不利益の程度(偽陽性者数)を評価することや、陽性者に対する長期的追跡を含む精度管理体制を構築することが必要であるとあらためて強調。議論を重ねている最中であるとした。
 同学会は、子宮頸がん予防の今後について「日本ではまだ実現できていない①90%の女性が15歳までにHPVワクチンを接種、➁70%の女性が35歳と45歳で子宮頸がん検診を受診―という2つの目標を達成するために、学会公式サイトや公開セミナーなどを通じて、他の関連団体とも協力しながら広く国民に向けた啓発活動を推進するとともに、行政への積極的な働きかけを行っていきたい」との意向を示した。

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