徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナワクチンを高齢者に接種すると死亡者が多くなる?

2021年02月21日 19時27分58秒 | 小児科診療
以下の記事を読んで感じました。
「やれやれ、またマスコミがワクチンの副反応を誤報的強調して不安を煽っているなあ」
とくに「ワクチン接種後に高齢者が亡くなる」ことをどう捉えるか、正しく伝わる配慮が全くなされていません。
マスコミは「ワクチン接種後に高齢者が〇〇人死亡」という題字で報道します。インパクトがあります。しかしそれがワクチンと関係した死亡かどうかは、ニュースの最後にちょこっと足す程度で印象に残りません。

施設に入っている高齢者は、そこが最後の住処、いずれ死を迎える人々です。ワクチン接種後に死亡したとしても、それが持病によるものなのか、ワクチンによるものなのか、判定は難しい・・・そういう例さえも一緒くたにワクチンのせいにされる可能性があります。
すると当然、反対運動が発生して、ワクチン接種に不要なブレーキがかかります。

新型コロナワクチンの副反応の報道をどのように捉えればよいのか
忽那賢志 | 感染症専門医

「アメリカの高齢者施設では2021年1月18日までにワクチン接種後に129人の高齢者が亡くなられたと報告されていますが、これは平時に高齢者施設で亡くなられる方と比べて多いわけではなく、この129人もワクチン接種との因果関係はないだろうと結論付けられています。」

「ノルウェーでも同様にファイザー社の新型コロナワクチンを接種後に1月26日までに33人の高齢者が亡くなられたものの、接種との因果関係はないと判断しており・・・」

「今後、日本国内でも「ワクチン接種後に死亡」という事例が「副反応疑い」として報告されることになりますが、それをそのまま「ワクチンのせいで死んだ」と捉えてはいけません。
大事なのはその頻度です。
例えば、65歳以上の高齢者は1年間に123万人亡くなっています(平成30年人口動態調査)。
つまり、1日当たり約3400人の高齢者の方が亡くなられています。
今後、高齢者にワクチン接種が進んでいけば、因果関係はなくともワクチン接種後に亡くなられる方は必ず出てきますが、その数が「ワクチン接種をしていない高齢者」と比べて明らかに多いのかどうか、を慎重に評価する必要があります。」


そう、因果関係が明らかな副反応がある一方で、判断に迷う副反応も報告されます。

もし、ワクチンを打たなかったらどうだったろう?
症状は出なかったのではないか?

誰しもそう思うことでしょう。
しかしそれを確認することはできません。
我々はタイムマシンを持っていないからです。

ではどうやって判断するか?

ワクチンを接種した人と、ワクチンを接種していない人で、その症状の発生頻度比較すればいいのです。
たくさんたくさん人数を集めて。

そのように解析されたワクチンの副反応疑い症状を二つ紹介します。

1.MMRワクチンと自閉症
英国の医師が書いた論文で関連性が疑われましたが、デンマークでの大規模調査(65万人対象)比較によりMMR接種者とMMR被接種者の間で発生頻度に差がないことが報告され、この疑いは否定されました。
また、きっかけの論文に詐称問題が指摘されて撤回され、執筆医師は医師免許を剥奪されました。

2.HPVワクチンとCRPS
被害者の会が提出した24症状について接種者と被接種者を数万人単位で比較し、発生頻度に差がないことが報告されました(名古屋スタディ)。

上記2つについては、科学的に因果関係が否定されたものの、未だに反対運動にとらわれている人々がいます。
自分の身内に症状に苦しむ人がいて、それがワクチン接種後であれば、ワクチンを責める気持ちはどうやっても拭えないのでしょう。

そして日本のワクチン忌避の風潮は「日本政府への不信感」がその根底にあることを感じます。
その根っこは「水俣病」だと思います。
チッソという会社が皮に排泄した有機水銀が健康被害を発生させた事件ですが、病気の認定から日本政府が会社が流したメチル水銀が原因であることを認めるまで12年もかかりました。
体の後遺症だけでなく、心の後遺症に、国民はいまだに悩まされ、政府を信頼できずにいるのです。

“忖度”で官僚が左遷される現在の日本政治。
本当の黒幕は官僚の人事を握って官僚を操っている政府、そしてその根源である内閣人事局創設に関わったのは安部前総理や官房長官時代の現・菅総理なのに・・・。

こんなことでは今後も“日本政府の提供する”ワクチンは信用されないことでしょう。
ん、また脱線しましたか?

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子どもが頭を打った、さあ大変!

2021年02月21日 06時43分00秒 | 小児科診療
当院は小児科ですが、件名の相談者がよく来院します。
頭部打撲は外傷ですので、本来の担当は外科系ですが、「どこを受診してよいかわからない」小児患者さんは、とりあえず小児科を受診されます。

当然、頭蓋内出血リスクの高い患者さんは脳神経外科へ紹介しています。
その判断基準となるものがアメリカやカナダから公表されていますが、専門用語が多くて一般市民には理解できません。
当院では上記ガイドラインをまとめ、わかりやすい言葉に置き換えた説明プリントを作りました。
ただし、あくまでも「目安」なので、完璧ではありません。「ふだんと違う、おかしい・・・」と親の第六感が働いたら救急病院へ行くべきです。



頭を激しくぶつけたとき、頭の中の出血、脳へのダメージが心配になります。
保護者のやること・すべきことの順番は、
1.意識があるかを確認
2.ぶつけ方と症状を確認
です。

□ 緊急性がある場合
→ ひとつでもあれば
救急車搬送
・意識がない、ボーッとして反応が悪い
・けいれんしている
・おう吐が止まらない
・歩く・話すことがうまくできない
・ガマンできないほど頭が痛い
・出血が止まらない(傷が大きい、深い)

□ 緊急受診すべきかどうか迷う場合
 → 以下の一つでも当てはまるときは、頭部CT検査可能な病院の救急外来

(ポイント1)頭のぶつけ方
・高いところ(2歳未満は90cm、2歳以上は150cm)からの転落
・交通事故などの高速スピードで移動中(あるいは移動する物)に激しく頭をぶつけた
・誰かに突き倒された

(ポイント2)本人の症状・様子
・(一瞬でも、一過性でも)意識消失があった
・強い頭痛(乳児では強いグズリ)
・おでこ以外のコブ(2歳未満)
・さわってわかる頭蓋骨骨折(凹みや溝)
・様子がおかしい(眠りがち、元気がない、変におとなしい、遊ばない)
・パンダのように目の周りが紫色(眼底骨折の可能性)
・鼻や耳から血や血液混じりの液体が出ている

□ 緊急性がない場合
→ 
小児科開業医を受診(当日あるいは翌日)
・足が地面や床についた状態からの転倒や、歩行中に止まっている物へ頭をぶつけた
・すぐ泣き、その後ふだんと変わりない
・頭をぶつけて4~6時間後も症状らしきものがない

* 頭をぶつけた直後は元気でも、最低48時間は慎重に様子観察してください。まれに、数日後~数ヶ月後に症状が出てくることもあります。


・・・おおまかには、子ども自身の活動スピードでは大けがになることは少なく、自分以外の強い他力が働いた場合は重症化することがある、とイメージできます。
また、年齢(2歳未満、2歳以上)により基準が異なる(落下の高さなど)項目がありますね。

さらに当院はスマホ問診を導入しており、受診前に入力していただくと上記質問群が出てくるので、緊急性があるかどうかをその場で判断できて適切な医療へ誘導される仕組みになっています。

<参考>
■ 頭を打った小児、頭部C T 撮影は必要?
花木奈央(大阪大学公衆衛生学教室)
■ 日本小児神経外科学会小児頭部外傷時のCT 撮像基準の指針・提言

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新型コロナワクチン「コミナティ®」接種後の“発熱率14.8%”は恐い?

2021年02月20日 07時06分45秒 | 小児科診療
よく効く薬には副作用があり、
よく効くワクチンには副反応がある、
・・・医療関係者なら誰もが認識していることです。

そう、薬はもともと“毒”であることが多い。
それを応用してアレンジして、人体に有用な効果を抽出して“治療薬”を創り出してきた歴史があります。
特に漢方薬はその傾向がありますね。

さて、新型コロナワクチンの副反応に関して、いろいろ報道されていますが、まとまっている記事を見つけましたので紹介します。

■ コロナワクチン接種時の注意点、副反応まとめ
2021年02月17日、Medical Tribune

この中の「発熱」について考えてみましょう。

まずは一般論から。
当院ではワクチン接種後の発熱について、説明プリントを作成しています。
現在子どもたちに接種しているワクチンの発熱率一覧表を提示します;


注目していただきたいのは、肺炎球菌ワクチン(プレベナー13®)の発熱率です。
①31.1%、②30.8%、③31.9%、④40.0%、
(①、②、は1回目、2回目を意味しています)
と毎回30〜40%、つまり接種した3人に1人が発熱しているのです。
実際に肺炎球菌ワクチンが定期接種になってから、接種後の発熱が“珍しい現象”ではなくなりました。大抵、接種した夜か翌日の一過性の熱です。

※ 四種混合のクアトロバック®の数字が46.7%と突出して高いですが、これは1回目から4回目を全部合わせた合計の数字です。

アメリカでは肺炎球菌ワクチンの導入が随分日本より早かったので、発熱することが国民にも認知されており、対応方法も確立されています。

小児科医の先輩が四半世紀前に家族を連れてアメリカ留学された際、ワクチン接種後に解熱剤を渡され、投与時間まで指示されて驚いた、という話を聞かせてくれました。
当時の日本の小児医療では、予防接種後の発熱は“一大事”というイメージだったので、使わずに様子を見たら案の定お子さんは発熱、無治療ではらはら様子を見たら翌日には下熱。

その次の予防接種の際に、このことを報告したら、
「なぜ指示通り解熱剤を使わなかったのか?」
と叱られたそうです。

先日(2020年12月某日)、アメリカから帰国した患者さん家族から、現状はどうなっているのか教えていただきました。
すると、現在は「解熱剤を使用するよう指示が出るのは同じで、ただ薬は購入して帰る」そうです。

以上のように、データで安全性が確立されていれば、発熱は恐い副反応ではありません。


■ コロナワクチン接種時の注意点、副反応まとめ
 新型コロナウイルス(SARS‐CoV-2)ワクチンの医療従事者への接種が、本日(17日)全国の医療機関で始まった。続いて優先される65歳以上の高齢者への接種は4月以降になる見通しだ。国内で初めて特例承認を取得したファイザーのコロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(商品名コミナティ)が使用されるが、厚生労働省は接種に当たっての留意事項に関する通知を2月14日に都道府県に発出した。厚労省の資料や同ワクチンの添付文書なども含め、現在までに判明している特徴や副反応、適正使用に当たっての注意点をまとめた。

十分な免疫獲得は2回目接種から約7日以降
 コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンで、SARS-CoV-2のスパイク蛋白質(ウイルスがヒトの細胞に侵入するために必要な蛋白質)の設計図となるmRNAを脂質の膜に包んだ構造となっている)。
 ワクチンの接種対象は16歳以上で、3週間間隔で2回接種する。間隔が3週間以上空いた場合は、できるだけ速やかに2回目を接種する。ワクチンによる十分を免疫ができるのは、2回目の接種を受けてから7日程度経過してからとされている。
 海外で12歳以上のSARS-CoV-2感染歴の有無を問わない4万人以上が参加した臨床試験では、94.6%の有効率(発症予防効果)が確認されている(主要評価項目は、2回目接種後7日以降のSARS-CoV-2による感染症に対する有効性)。
 また20~85歳の日本人健康成人160例を対象に、同ワクチンを19~23日間隔で2回接種した際の安全性、忍容性および免疫原性の評価を目的としたプラセボ対照の試験では、2回目接種1カ月後に血清中の中和抗体価が上昇し、海外の臨床試験と同程度以上の結果が得られており、日本人でもワクチンの有効性が期待できると考えられている。

疲労、頭痛、筋肉痛などの副反応に注意
 主な副反応(出現率5%以上)として、
・疼痛(84.3%)
・疲労(62.9%)
・頭痛(55.1%)
・筋肉痛(37.9%)
・悪寒(32.4%)
・関節痛(23.7%)
・下痢(15.5%)
発熱(14.8%)
・腫脹(10.6%)
ーなどが報告されている。
 重大な副反応としてまれに、ショック、アナフィラキシー(頻度不明) が現れることがあるため注意が必要だ。初回接種時にこれらの反応が認められた場合は、2回目の接種は行わない。また、接種前に過敏症などに関する問診を十分行い、接種後は一定期間、被接種者の状態を観察することが望ましいとしている。
 厚労省の通知によると、「ワクチン接種直後または接種後に、注射による心因性反応を含む血管迷走神経反射として失神が現れることがある。失神による転倒を避けるため、接種後一定時間は座らせるなどして、状態を観察することが望ましい」としている。
 同ワクチンは三角筋に筋肉内接種するため、国内で流通している皮下に注射するインフルエンザワクチンなどと異なる点に十分留意が必要だ。
妊婦、腎臓や肝臓疾患、心血管疾患患者は慎重に判断
 接種対象者は16歳以上で、
①明らかな発熱を呈している
②明らかに重篤な急性疾患にかかっている
③同ワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往歴があるーに該当する人
ーは接種を受けることができない。
 さらに、妊婦、授乳婦、高齢者、腎臓や肝臓などの疾患、心血管疾患などを有する場合は接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する)とされ、診察および接種適否を慎重に判断し、予防接種の必要性などの十分な説明を行い同意を得た上で注意して接種することとしている。
 注意が必要な者は、
①抗凝固療法中の者、血小板減少症または凝固障害を有する者(接種後に出血または挫傷が生じることがある)
②過去に免疫不全と診断されている者および近親者に先天性免疫不全症の患者がいる者(同ワクチンに対する免疫応答が低下する可能性がある)
③心血管疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害などの基礎疾患を有する者
④予防接種で接種後2日以内に発熱が見られた者および全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
⑤過去に痙攣の既往がある者
⑥同ワクチンの成分に対して、アレルギーを呈する恐れがある者
⑦腎機能障害を有する者
⑧肝機能障害を有する者
⑨妊婦・授乳婦
⑩小児など(16歳未満についての有効性、安全性は確立されていない)
⑪高齢者
―としている。

希釈後は6回分を採取、6時間以内に使用を
 通知では、解凍方法や希釈方法についての注意点も記載されている。解凍方法については、
①冷蔵庫(2~8℃)で解凍する場合は、解凍および希釈を5日以内に行う
②室温で解凍する場合は、解凍および希釈を2時間以内に行う
③解凍の際は、直射日光や紫外線が当たらないようにする
④解凍後は再冷凍しないー。
 希釈方法は、
①希釈前に室温に戻しておく
②保存料を含まないため、無菌操作で希釈する
③同ワクチンのバイアルに日局生理食塩液1.8mLを加え、白色の均一な液になるまでゆっくりと転倒混和する。振り混ぜない
④希釈後に微粒子が認められる場合は、使用しない
⑤希釈後の液は6回接種分(1回0.3mL)を有する。デッドボリュームが少ない注射針または注射筒を使用した場合、6回分を採取することができる。標準的な注射針および注射筒などを使用した場合、6回目の接種分を採取できないことがある。1回0.3mLを採取できない場合、残量は廃棄する
⑥希釈後の液は2~30℃で保存し、希釈後6時間以内に使用する。希釈後6時間以内に使用しなかった液は廃棄する
⑦希釈後保存の際には、室内照明による暴露を最小限に抑え、直射日光や紫外線が当たらないようにすることーとしている。


こちらに各ワクチンの副反応一覧が1回目/2回目に分けてまとめられていましたので引用させていただきます;




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新型コロナワクチンで世界がどう変わるか?

2021年02月20日 06時46分56秒 | 小児科診療
新型コロナウイルスに対して、人類は「ワクチン」という武器を手に入れました。
残念ながら治療薬・特効薬の開発はまだであり、手持ちの駒はワクチンのみです。

それをどう使えば一番効果的なのか、考えていたら、高山医師の論説が目に留まりました。
彼はワクチン後の世界がどうなるかについて、いくつかのシナリオを作成しています。

1.ワクチン接種率70%以上を達成して“集団免疫”を獲得し、日常生活がコロナ前に近い状態に戻る。
2.ワクチン接種率70%未満であれば集団免疫は獲得できず、現在のような自粛と緩和を繰り返す生活が続く。

新型コロナウイルスは変異しやすいRNAウイルスなので、将来のリスクにも言及しています。

1’.ワクチン効果持続期間が短い場合は、インフルエンザのように毎年接種が必要になるかもしれない。
2’.流行が長引くと次々と変異株が発生してワクチンで制御できなくなり、長期間にわたる自粛・制限により経済は疲弊して自滅する国が続出するかもしれない。

ワクチンという人類の英知を利用してこの状況を打破するか、
無抵抗で神に祈るか・・・。

■ 新型コロナワクチン その特性と接種後の世界
高山義浩 | 沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科
 アメリカの製薬大手ファイザーが開発した新型コロナウイルスに対するワクチンについて、間もなく国内承認される見通しとなりました。筋肉内への注射による投与で、21日の間隔を空けて2回接種となります。
 まず、今月中には医療従事者(370万人)に先行して接種が始まり、来月以降、高齢者(約3,600万人)、基礎疾患を有する者(約820万人)、高齢者施設従事者(約200万人)へと順次接種が進められます。
 なお、接種の対象者は当面16歳以上とし、過去にワクチン成分で重いアレルギー反応が出た方への使用は認められない方針です。

ワクチンの作用と効果
 このファイザー社のワクチンは、ヒトに使用するワクチンとしては新しいタイプのもので、mRNA(メッセンジャー・アールエヌエー)というタンパク質を生成するための設計図が封じ込められています。
 これを接種すると私たちのマクロファージという細胞内に取り込まれ、そこでコロナウイルスの表面にある「スパイク」というトゲトゲした突起の部分に該当するタンパク質を作ります。
 このトゲトゲが細胞表面に出てくることで、コロナウイルスに対する免疫が誘導され、私たちの免疫細胞がウイルスの侵入を早期に認識できるようになり、コロナウイルスを中和する抗体を大量に産生する準備も整います。
 なお、このmRNAは細胞内でタンパク質を作りますが、私たちの遺伝情報が入っている細胞核に入ることはなく、つまり、私たち自身のDNAが書き換えられることはありえません。
 このワクチン、臨床研究によって発症予防効果 95%という結果が確認されています。これは「プラセボ(偽薬)群よりも、ワクチン接種群の発症率が95%少なかった」というもので、まあ、ビックリするぐらい高い有効性ですね。少なくとも、インフルエンザワクチンとは比較にならないほど期待してよいと思われます。
 また、この臨床研究では、重症化した10名のうち1例がワクチン接種群、9例がプラセボ群だったとのことで、どうやら重症化も予防しているようだと考えられます。
 発症を防ぐ効果は明らかですが、感染そのものを防ぐ効果があるかどうか、まだ分かってはいません。ワクチン接種後に感染した場合、周囲に感染させなくなるかも分かっていません。ただ、mRNAワクチンには、侵入早期に反応する細胞性免疫までもを活性化する作用機序があるため、感染予防効果まで期待できるのではないかと言われています。
 一方、気になる副反応ですが、接種した部位の痛みは強いようですね。8割ぐらいの人が12~24時間の痛みを訴えています。しかも、かなり痛い・・・ らしいです。また、2回目の接種後には11~16%の方に38以上の発熱があったそうです。免疫をつけている証拠なんでしょう。
 さらに、アメリカCDCによると、190万人に1回目の接種をしたところ21人にアナフィラキシー反応が起こったとのこと。接種後30分ぐらいは、気分が悪くなったりしないかを確認し、医療従事者のいるところで休んだ方が良さそうです。

ワクチン接種後の世界
 ワクチン接種が進んだあと、私たちの暮らしは元に戻るのか・・・? よく聞かれますが、誰にも分かりません。ただ、先が真っ暗よりは、何らかの道標があった方が良いかもしれません。

シナリオA:国民7割以上への接種が完了し、集団免疫を達成
 もっとも楽観的なシナリオですね。ワクチン接種が進んで集団免疫が達成されれば、地域流行しなくなることが期待できます。
 米国のファウチ博士は、「ワクチンによる集団免疫は70~90%が目標になる」と言ってますが、その根拠は明白ではありません。実際は、ワクチンの感染防御効果と持続期間によると思いますが、いずれにせよ数年はかかるでしょう。それまでは、次のシナリオBのような状態が続くと考えます。
 なお、ワクチン接種が進んでいない国においては、ウイルスが定着して風土病になることも考えられます。こうした国から就労や長期滞在を目的として日本を訪れる場合には、事前ワクチン接種を推奨するとともに、出国前のPCR検査、入国後14日間の自己隔離を求めるようになるかもしれません。

シナリオB:十分な接種率に至らず、国内で散発的流行が続く
 比較的安全なワクチンが開発されたと思ってますが、それでも、若者たちが接種してくれるかは不明です。このあたり、冒頭で紹介したように、ワクチンに期待される効果を正確に読み取り、副反応のリスクについて適切に情報提供することが必要です。

 報道の在り方などにより、ワクチン忌避の風潮が高まってしまえば、おそらく集団免疫には至りません。ワクチンの感染防御効果や持続期間が不十分であった場合にも、集団免疫には至らないでしょう。
 その場合でも、ハイリスク者や医療介護従事者への接種を着実に進めていくことが必要です。あるいは、飲食店や小売店、あるいは観光事業者など接客にあたる方々についても接種に協力いただくことを期待します。
 そうなれば、ワクチンによって重症者や死亡者を抑え込んでいくことが期待できます。ワクチン効果の持続期間が短い場合でも、年に1回など定期接種にすることで免疫維持できるでしょう。さらに、一般の方々の間に接種への協力が広がれば、集団免疫に至らなくとも、地域流行の規模や頻度は減らしていけると思います。
 こうして、社会全般に求めるような自粛要請は行われなくなり、地域流行を認めたときには、一般にはマスク着用や手指衛生を呼びかけるレベルで済むかもしれません。多少の緊張感は残しつつも、ある意味、社会は日常を取り戻していくことでしょう。
 ただし、社会福祉施設や病院は相変わらず大変だと思います。疑われる患者さんが出たときに、念のため、さっとゾーニングを確立したり、そこで設定されたレッドゾーンに入るときの防護具を適切に着脱できたり・・・ といった感染対策が日常になっていくかもしれません。

シナリオC:ワクチン耐性の変異株が発生し、世界的流行が続く
微生物との闘いは、しばしば進化とのイタチごっこになります。治療薬を開発すれば耐性ウイルスが出現し、ワクチンを開発すれば耐性株へと置き換わります。流行している状況で使えば、さらに耐性株が選択されやすくなります。とくに、遺伝子変異の活発なRNAウイルスでは、そのリスクが高まります。

 すでに世界では、3種類の変異株を認めています。イギリス変異株は、国内でも市中感染を認めていますが、幸いなことにワクチンへの耐性は生じていないようです。しかし、南アフリカ変異株とブラジル変異株については、従来型の抗体への活性が低下しているようで、ワクチンについても有効性が低下している懸念があります(結論は出ていません)。
 ワクチン接種による集団免疫の獲得が、耐性株の出現に間に合わなければ、世界的流行が繰り返されることになります。病原性が強まったり、あるいは小児への感染性が高まれば、より悲劇的なことが生じるかもしれません。
 そのとき世界は・・・ このウイルスを封じ込めるしかないでしょう。国際的な協調のもとで人の移動を制限し、活動を自粛して、封じ込めた状態を世界的に維持しながら、ワクチンの再開発とともに、ワクチン接種プログラムを途上国を含めて迅速に実施する・・・ というオペレーション。
 あまり想像したくはないのですが、そうしたシナリオも考えておく必要があるかもしれません。まあ、耐性株が広がる前に、さっさと皆が接種して封じ込めるのが、変異の速度も低下するし、制御しやすくなるし、一番だと私は思ってます。
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新型コロナワクチンを受けるべきか・・・「正論」を読むべし!

2021年02月16日 09時08分59秒 | 小児科診療
新型コロナウイルスワクチン、医療従事者向けの先行接種がいよいよはじまります。
しかしTVでは、相変わらずワクチンの副反応を強調して報道するスタンスが垣間見えます。

このブログでも繰り返し「ワクチンを受けるリスク」と「ワクチンを受けないリスク」を天秤にかけて判断しましょう、と書き込んできました。

日本ワクチン学会が提示した内容が、医学界のスタンダードだと思われ、引用してみます。

<私の受けた印象>
迅速に開発されたワクチンで、高い有効率が示されているけど、長期的な効果持続期間が不明、長期的な副反応も不明ということは認識しておくべきである。これらの情報は透明性をもって逐一公開され、検証されなければいけない。
その認識の上で、ワクチン接種を進めて新型コロナパンデミックに臨もう、という慎重姿勢がうかがえます。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関する提言
※ 下線部は私が引きました
 感染症の制御にワクチンの果たしてきた役割は大きく天然痘の根絶に始まり、ポリオ・ 麻疹の制御も期待されています。COVID-19 が報告され 1 年がたちますが世界的に拡大し、わが国においても感染の急速な拡大が報告されており、その制御に有効なワクチンの開発が期待されています。
 世界中で多くのワクチン開発が急速に進みファイザー社、 モデルナ社の mRNA ワクチン、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンの Phase III 試験での有効性が報告されています。 先行するファイザー社の mRNA ワクチンの中間発表では軽微な有害事象・副反応のみで 95%前後の有効性が示され感染拡大が急速に進むイギリス、アメリカでも承認され、 すでに高齢者、医療従事者を対象に接種が始まっています。
 高い有効率から COVID-19 の感染を抑え流行をコントロールできるような風潮で、我が国でも高齢者、医療従事者を対象に早期承認を求めるような考えが広がっています。
 こうした期待が高まる一方、 有効性・安全性に関しても完全に理解されたものではないように思います。 Phase III の有効性と安全性については以下の理由から慎重に評価する必要があると思います。
1) Phase III では短期間の有効性のみが示され、1 年以上経過した時の免疫原性・有効性 は不明で COVID-19 の流行を完全に制御できるものではないと思われます。
2) 先日発表された Phase III 論文では 70-80%前後の局所反応、50%前後の倦怠感に加え て頭痛、発熱も報告されています。
 こうした、副反応は接種後数日以内の急性期反応で自然免疫応答によるものです。また、海外では接種が開始された後でアナフィラキ シー反応が報告されており、その因果関係の有無について解明されるべきと思います。 ワクチンによって得られる免疫応答は常に有益なものとは限らず、かつてワクチン接種後に感染することで増悪した以下のような例があります。
3-1) ホルマリン不活化麻疹ワクチン接種後に麻疹に罹患して異型麻疹を発症した。
3-2) ホルマリン不活化 respiratory syncytial virus (RSV)ワクチンを 31 名に接種した後 RSV に感染して入院が 80%、2 名が死亡した。
 一方コントロールとしてパラインフルエ ンザウイルスの不活化ワクチンを接種した 40 名での入院例は 1 名(2.5%)でした 。
3-3) Dengvaxia (黄熱ワクチンとデングウイルスの組換え生ワクチン)接種後 II 型デング ウイルスに罹患し接種前抗体陰性者で感染増悪し重症化死亡例も報告されています。 開発早期のホルマリン不活化ワクチンでは Th1/Th2 のバランスのとれた免疫応答を誘導できなかった事、Dengvaxia では抗体依存性感染増強(ADE)がその機序として考えられ ます。
 また、拙速にワクチン政策を進めたことで負の遺産を残した事例もあります。
4) Fort Dix 事件;1976 年 1 月にブタインフルエンザがアメリカの陸軍基地で流行しス ペイン風邪再来が危惧され、ワクチンが製造され 10 月からアメリカで 4300 万人に接種 されました。ただ、流行は基地内だけにとどまり、一方、ワクチン接種者の中からギランバレー症候群が 500 例近く報告され 30 名が死亡しワクチンの訴訟と賠償だけが残ったことが報告されています。
 新たに開発されたワクチンの安全性についての検討の重要性とともに、その接種対象 についても十分に考える必要性があることを示唆しています。 COVID-19 の医療・経済に及ぼす影響は極めて大きく、早期の収束を図ることが喫緊の課題であることは誰もが認めるところであります。そのためには長期的な有効性・安全性に関する十分なデータが必ずしも得られていないとしても、新型コロナウイルスに対する新規ワクチンを導入することは必要であると考えます。ただ導入に当たっては、現在明らかにされている有効性及び安全性に関する情報を接種者及び被接種者が共有し、 先行する諸外国のデータも参照しながらリスクコミュニケーションを取ったうえで、慎重に接種を進めていく必要があります。 特にワクチン接種後の副反応に関する情報を速やかに収集・分析できるシステムの構築、健康被害に対する適切な対応を行うことのできる体制整備とともに、アナフィラキシー反応などの重篤な副反応が出現した際にはワクチンとの因果関係を科学的に研究す る評価委員会を組織しておく必要があります。その上で、まずは個人防衛と医療崩壊を防ぐという観点からハイリスクと考えられる集団から接種を開始し、次いでワクチンの忍容性を観察しながら、広く社会全体に接種を広めていくという姿勢が必要ではないか と考えます。
以上

中国とロシアもワクチンを開発して自国民への接種を進めています。 
しかし日本に輸入する気配はありませんね。
なぜでしょう?
それは、中国とロシアが秘密主義でワクチン開発データを公表していないからです。
公表しない→都合の悪いことが隠蔽される、と考えざるを得ません。

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目に留まった世界のトンデモ“コロナ対策”

2021年02月12日 09時24分45秒 | 小児科診療
新型コロナウイルス、その流行、そしてワクチンをどう捉えるかは、世界中を見渡すと実に様々。

人類の歴史は病原体(ウイルスや細菌など)との闘いで、生き残った子孫が現在の私たちであります。
その影には、感染症で命を落とした膨大な数の犠牲者が存在すると思われます。

現代医学でも有効な治療薬が未だ開発されず、ワクチン頼みの現状の中、世界各国では様々な治療法が試みられています。

ただ、科学に裏打ちされておらず、伝統医学〜因習のレベルの治療も少なからず存在します。
目に留まった情報を紹介します。
まずは科学を信じないタンザニア大統領から・・・


新型コロナワクチンは「危険」 タンザニア大統領
2021年1月28日、AFPBB)より抜粋
神がタンザニアを新型コロナウイルスから守っていると主張するジョン・マグフリ(John Magufuli)大統領は27日、同ウイルスのワクチンは「危険」との見解を示した。
・・・
「われわれはこうした輸入ワクチンに細心の注意を払わなければならない」「新型コロナワクチンを開発できるのであれば、マラリアやがん、結核、エイズウイルス(HIV)のワクチンだって今頃は開発されているだろう」
「今、もてはやされているワクチン接種はわれわれの健康にとっては危険だ。保健省は全くもって急ぐべきではない」
一部のタンザニア人が国外でワクチンを接種し、
「奇妙なコロナウイルスを持ち帰る羽目になった」
「われわれは、この危険な病気との闘いにおいて、神を最優先しなければならない。だが、それと同時に予防措置を講じて、自身の身を守らなければならない」
「われわれは、1年以上にわたり新型ウイルスに感染することなく暮らしてきた。ここにいる人の大半が、マスクを着用していないことがその証拠だ」

タンザニア人は「神に守られているので安全」と信じ、
「ワクチンはウイルスそのものを注射している」と誤解し、
このままでは民族消滅の危機で歴史から国が消えてしまいそうです。

次はスリランカからの情報です。

コロナ対策に魔術や魔法薬推奨のスリランカ保健相、検査で陽性
2021年1月23日、AFPBB)から抜粋
 スリランカ当局は23日、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めようと魔術や魔法薬を公に推奨していた同国の保健相がコロナ検査で陽性となり、自主隔離に入ると明らかにした。
 陽性と判明したのはパウィトゥラ・ワンニアラッチ(Pavithra Wanniarachchi)保健・伝統医療相。ワンニアラッチ氏は魔術師が製造したという魔法薬を服用したと明言していたほか、はちみつとナツメグ入りだという同薬を公に推奨していた。
 またワンニアラッチ氏は昨年11月、自称「聖人」の男から感染拡大を止める方法だと進言され、「聖水」を川に注いでいた。
・・・
 しかしスリランカでは先月、神に新型ウイルス治療薬を示されたと主張する大工のダンミカ・バンダラ(Dhammika Bandara)さんが作ったコロナ薬を求め、約1万2000人が集会禁止の規制を破り中部の小さな村に殺到した。

 スリランカでは国の中枢にいる保健相が科学よりも因習を信じている・・・救いようがありません。
 この国も消えていきそうです。

 次はスリランカ近隣の大国インドからの情報です。

■ 新型ウイルスの特効薬は牛の尿? ヒンズー教団体が「飲尿パーティー」開催 インド
・・・インドの首都ニューデリーでは、ヒンズー教の活動家数十人が、新型ウイルスから身を守るために牛の尿を飲むパーティーを開いた。
 新型ウイルスと闘うべく、「ガウムトラ(牛の尿)パーティー」と銘打った、火を用いた儀式と飲尿の集会を開催したのは、「全インド・ヒンドゥー・マハーサバー(All India Hindu Mahasabha)」のメンバーと支持者ら。
 13億人の人口を抱え、ヒンズー教徒が大多数を占めるインドでは、牛は聖なる動物とみなされており、近年はにせの療法として専門家が否定するにもかかわらず、牛の尿が万能薬であるとの主張が相次いでいる。
 AFPの取材に応じたボランティアの一人ハリ・シャンカル・クマール(Hari Shankar Kumar)さんは集会で、土製の器に「薬」を注ぎながら「牛の尿を飲めば誰でも癒やされ、守られる」と述べた。
・・・
 同団体の指導者であるチャクラパニ・マハラジ(Chakrapani Maharaj)氏は報道陣に対し、「われわれはここに集まり世界の平和を祈る。コロナ(ウイルス)を鎮めるためにささげものをする」と説明。牛の尿を飲み干すと、ウイルスを「鎮める」ため、悪魔の姿をかたどった新型コロナウイルスの絵に向かって器をささげた。
・・・
 近隣のウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州から集会に参加した人は、「コロナウイルスはバクテリア(ウイルス)でもあるから、牛の尿はわれわれに害を及ぼすあらゆる形態のバクテリアに対して効果がある」と語った。

インドは伝統と最新科学(IT大国!)がごちゃ混ぜになっている国。
伝統医学、というか因習にとらわれている人々も生き残れず、歴史の舞台から退場しそうです。

しかし一方で、先進国中の先進国であるアメリカの前大統領も科学を信じていませんでしたし、「コロナ・パーティー」でうつしあっている状況です。

ヨーロッパでは外出制限に反対するデモも発生しています。

さて、世界のどの民族が生き残るでしょう。
パンデミックが過ぎ去るまでじっと動かないでガマンできるのはどの国かな?

こういうのを集めると番組が一つできあがりそうです。

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ヨーロッパ人はなぜ風呂(湯船)に入らないのか?

2021年02月10日 14時45分15秒 | 小児科診療
最近、日本人がマスクをするようになったのは「スペイン風邪」(1918-1919年)の感染対策がキッカケだったことを知りました。

そして今回、ヨーロッパの人が入浴しなくなったのは、中世に流行してたくさんの死者を出した「ペスト」(黒死病)がキッカケだったことを知りました。

ヨーロッパ人はシャワー中心で、浴槽に入るとしても泡風呂で、油を満たして浸かる習慣はないイメージです。
でも昔は日本人同様、湯船に浸かっていたらしいのです。

疫病は文化も変えてしまうのですね。

ペストで変わった習慣といえば、洗濯もあげられます。
ヨーロッパではお湯で洗濯するのが当たり前。
ペスト以前は水だったのですが、ペスト以降はお湯になり、現在に至るそうです。

お湯で洗うと生乾きのニオイ(モラクセラ菌)が消えるそうです。
NHKのガッテンでやってました。

日本にも少しずつですが、お湯対応可能な洗濯機が登場してきました。


 ペストに怯えた中世の人々が採った仰天の対策
ジョン・ロイド : BBCプロデューサー
ジョン・ミッチンソン : 作家、リサーチャー

・・・黒死病の流行で、人々が忌み嫌ったのは「魔女」でも「ネズミ」でもない。・・・流行直後に、人々が徹底的に避け始めたのは水(または湯)に触ることだった。・・・実は、当時のどこの都市や町にもかならず大衆浴場があった。・・・この習慣を変えたのが、黒死病である。
・・・なんとしても、水に入ることは避けなければならない。浴場は即時閉鎖。その後の300年間、ヨーロッパ中のほぼすべての住民が入浴を完全にやめてしまった。
・・・油脂、パウダー、香料などが体臭を抑えるために使われ、髪もよほどの場合にしか洗わず、ほとんどブラシをかけてパウダーをはたくだけだった。結果、階層や職種に関係なく、あらゆる人々の頭と体がシラミやノミだらけになっていた。
 18世紀の終わりに、薬湯の効能が見直されるようになると、ようやく水は社会的地位を取り戻し始める。



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新型コロナワクチンではADE(抗体依存性増強)が起こるのか?

2021年02月09日 09時38分25秒 | 小児科診療
ワクチンは人体の免疫システムに刺激を与えて、病原体に対抗する抗体を作らせる医薬品であることは皆さんよくご存知のこと。

しかし、作られる抗体にはたくさんの種類があり、感染症に有利に働く抗体(中和抗体など)だけを作るわけではないようです。
過去には感染を予防するのではなく、なんと感染を誘導して重症化したという記録が残っているのです。

医療関係者の間ではデング熱ワクチンが有名です。
熱帯地方で流行するウイルス感染症ですが、
このワクチンを接種された人々が実際にデング熱に罹った場合、
より重症化することが判明し、ワクチンは中止されました。

ちなみにデング熱において「二度目の感染が重症化する」現象は自然感染でも確認されています。
ワクチンだけが悪いわけではありません。

それから、完成には至りませんでしたが、
2003年から流行したSARSのワクチン開発の過程で、
動物実験レベルで同じ事象が観察されたと聞いています。

今回の新型コロナワクチンではADEは話題には上るものの、まだ結論めいた記述を目にしたことはありません。
現時点では現象としては観察されていないようです。

今後もアンテナを張り続けて情報収集する所存です。
参考になる記事を紹介します。


 副反応のADEは起きるのか?
千葉 雄登 BuzzFeed News Reporter, Japan
BuzzFeed、2021年2月4日)より抜粋

 よく話題となる副反応に、抗体依存性増強(現象)(ADE)というものがあります。一部の「専門家」とされる方がメディアでADEへの懸念をよく指摘しています。
 ワクチンを打つことや感染することによって、体の中に中和能のない抗体である「非中和抗体」というものができると、これも中和抗体同様にウイルスにくっつきます。しかし中和能はないので、ウイルスの感染を防ぐわけではない状態となります。
 すると、この抗体を足掛かりにして、ウイルスが細胞の中に入って増える。または、くっついた抗体の複合体などが炎症性細胞など炎症性のある物質を集めて、より強い炎症を引き起こす、そういったことが起こり得ます。
 つまり、ワクチンを接種すること(場合によっては感染すること)で、感染したり発症した場合により強い症状が出ることがあるという現象のことを、ADEというのです。
 このような現象は、デングウイルスへのワクチンの治験段階と承認後に問題になりましたし、今回の新型コロナウイルスに非常に似ているSARSコロナウイルスに対するワクチンの動物実験段階でも観察されていました。
 しかし、今回の新型コロナウイルスのワクチンでは動物実験や治験含め全ての過程で、今のところこのような現象は確認されていません。
 1つの目安となるT細胞(リンパ球の一種)のサブセット(T細胞を構成するTh1とTh2という細胞の集まり)における比率も全く問題ないことがわかっていますので、新型コロナウイルスのワクチンについてはADEについて懸念する必要は現状ではほぼないと考えています。


新型コロナウイルスワクチンの米国における現状と今後
紙谷 聡(エモリー大学小児感染症科) 
2020.10.19、医学書院)より抜粋
・・・懸念される副反応とは
 現在COVID-19ワクチンで最も懸念される副反応は,ワクチンによって逆に感染が悪化してしまう病態であるVaccine-enhanced diseaseであり,抗体依存性感染増強現象(Antibody-dependent enhancement:ADE)およびワクチン関連増強呼吸器疾患(Vaccine-associated enhanced respiratory disease:VAERD)の2つに分けられます。
 ADEは,ワクチンによって産生された抗体がウイルスの感染を防ぐのではなく,逆にFc受容体を介してウイルスが人間の細胞に侵入するのを助長し,ウイルス感染を悪化させてしまう現象です。これは,ウイルスに対する中和作用の低い抗体が多く産生される場合に生じる現象で,デング熱に対するワクチンなどで報告されています。一方,VAERDは1960年代にRSウイルスや麻疹に対する不活化ワクチンで認めた現象ですが,やはりワクチンによって中和作用の低い抗体が産生され,その抗体がウイルスとの免疫複合体を形成し,補体活性化を惹起して気道の炎症を引き起こすものです。さらに,この不完全な抗体はTh 2細胞優位の免疫反応も惹起して気道内にアレルギー性の炎症を引き起こします。これらの病態によって,より重症なRSウイルス感染をワクチン接種者に認めたのです。
 ADEやVAERDを防ぐには,高い中和作用を有する抗体を産生させ,かつTh 1細胞優位の免疫反応を惹起するワクチンの開発が必要だと考えられています。そのためには立体構造的に正しくかつ安定した,質の高いスパイク糖たんぱく質(抗原)をワクチンによって作りあげることが重要です。現時点で学術誌に報告されているワクチン(mRNA-1273, ChAdOx 1, Ad 5 vectored vaccine, BNT 162 b 1など)は,いずれも高い中和抗体反応を認め,一部はT細胞性免疫反応も確認できており(mRNA-1273はTh 1細胞優位の反応も確認),この基準を満たしている可能性があります。また,9月上旬までに医学誌に発表された報告では,接種部位の痛みや倦怠感,発熱などの反応はあるものの,深刻な有害事象は認めておらず,安全性に一定の期待が持てる結果となっています。しかし,ADEやVAERDの可能性を正しく評価するためには,ワクチン接種者が実際に新型コロナウイルスに感染したときにどのような反応が起きるかを対照群と比較する必要があり,今後の第III相試験を含めた安全性評価および後述するワクチン認可後の安全性モニタリングが鍵となります。
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新型コロナワクチンによる“アナフィラキシー”の原因と対策

2021年02月09日 08時56分27秒 | 小児科診療
テレビでもよく取りあげられる“アナフィラキシー”。
漠然とした不安を抱いている方も多いと思われます。

それを解消する目的で、現在どこまでわかっているのかを調べてみました。

当初、「アレルギー疾患患者は危ない!」と報道されていましたが、
現在は、

・アレルギー疾患のある人が全員ハイリスクになるわけではない。

と修正されています。
日本人の4割がスギ花粉症、という時代ですから、
アレルギー疾患患者はダメと言われると、
日本人の4割はワクチン接種ができないという困った事態に陥ります。

では、どんな人がハイリスクなのか?

アレルギーの基本は「特定の物質に対して過剰な免疫反応を起こす病態」です。
この「特定の物質」をはっきりさせれば、無用の不安が払拭できます。

問題にしているのはワクチンによるアナフィラキシーですから、
ワクチンに入っている物質に限定されます。

・ワクチン成分にアレルギーのある人はハイリスク

ワクチンにはワクチンそのものの他に、
安定性・保存性を持たせる目的で様々な物質が含まれています。
現在までの解析では添加物の中でも、

・ポリエチレングリコール(PEG2000)

の可能性が指摘されています。

・・・と言われても、ピンときませんね。
実はこの物質、いろんなものに添加されて含まれています。
例えば、医薬品、ヘアケア・スキンケア製品、洗剤、顔料分散剤、潤滑剤・・・
たくさんありますね。
医薬品にはポリエチレングリコールそのものがあります。
便秘薬「モビコール®」です。
これらのものにアレルギー反応を経験した事のある方は、
ハイリスクということになります。

さらに、この類似物質である、

・ポリソルベート(ポリソルベート20/ポリソルベート80)

も可能性が報告されています。

ただ、現在は“諸説あります”の段階で、
上記が確定しているわけではないようです。

より具体的に、例えば
「化粧品が肌に合わない経験がある」
レベルのエピソードがどれくらいのリスクになり得るか?
まで言及している記述は見当たりませんでした。

ではどうしたらよいか?

答えは「従来のワクチン接種と同様」。
つまり、「アナフィラキシー対策を取りながら粛々と接種を進める」のみです。

今後もアンテナを張って情報収集をしたいと思います。
今回の情報源は以下の通り(⇩)


ワクチンによるアナフィラキシー経験者はどんな人?

(⑤)モデルナ社のワクチンによるアナフィラキシー例の詳細が公開されている。


(⑦)ファイザー社ワクチンによるアナフィラキシー例;
・・・アナフィラキシーを起こした21人のうち17人は、医薬品や食品、昆虫刺傷などに対するアレルギーの既往歴を持っていた。このうち7人は過去にアナフィラキシーも経験していた。7人のうちの1人は狂犬病ワクチンの接種後に、別の1人はインフルエンザA(H1N1)ワクチンの接種後にアナフィラキシーを発症していた。

(⑨)ファイザー社ワクチンによるアナフィラキシー例;
アレルギーまたはアレルギー反応の既往は医薬品、造影剤、食品、虫刺されなどによるものが21例中17例(81%)に認められ、7例(33%)は過去に医薬品や食品の他、狂犬病ワクチン接種とインフルエンザA(H1N1)ワクチン接種によるアナフィラキシーを経験していた(表)。



アナフィラキシーが危険なのはどんな人

(⑥)英国では、医薬品医療製品規制庁(MHRA)が昨年末に、ファイザー製ワクチンの接種を避けるべき人を「同社ワクチンの1回目接種後、あるいはその含有成分(PEG、後述)によって過去に、全身性のアレルギー(アナフィラキシーを含む)を経験した人」に限るとの方針を出している。
・・・
今回、インフルエンザなど従来のワクチンに比べて高頻度にアナフィラキシーが発生しているのは、「ポリエチレングリコール」(PEG)という物質が含まれるからだ、という説が『Science』誌等で指摘されている。
PEGは「医薬品添加物」として、さらにはヘアケア・スキンケア製品、洗剤、顔料分散剤、潤滑剤などの用途で、人体に使用するさまざまな製品に含まれている。・・・『Science』の記事によれば、新型コロナで初めて実用化された「mRNAワクチン」では、体に免疫反応を起こさせる主役のmRNAが、脂質ナノ粒子のカプセルに入っている。このカプセルの分子をくるむことで、変質を防いで長持ちさせるのがPEGだ。
最も権威ある医学誌『The New England Journal of Medicine』は、mRNAワクチンは今回世界で初めて実用化されたため、アレルギーの可能性やメカニズムについては過去に1つも報告がないとしている。
ただ、高分子量のPEGを含む薬剤では、アナフィラキシー報告があるという。例えば、手術前の腸管の洗浄剤や、心臓のエコー検査の造影剤などだ。有効成分よりもPEGが誘因の可能性が高いとされている。
・・・“PEG犯人説”は現段階ではあくまで仮説なので、今後の検証が必要だ。

(⑧)・・・Pfizer社-BioNtech社とModerna社のmRNAワクチンは、脂質ナノ粒子にmRNAを封入して、酵素によるmRNAの分解を防ぎ、in vivoでの送達効率を高めている。脂質ナノ粒子は、ポリエチレングリコールPEG2000)修飾により安定化されている。mRNAワクチンに関する研究は以前から行われてきたが、緊急使用が許可されたのは今回の2製品が初めてだ。
 PEGは医薬品の賦形剤として使用される化合物で、まれにIgE仲介性の反応とアナフィラキシー再発に関係することが示されている。ゆえに、mRNAワクチン含まれるPEG 2000がアナフィラキシーを引き起こしている可能性はある。これまでに行われた研究では、感作リスクは、高分子量のPEGを含む注射薬において高いことが示唆されている。
 Pfizer社-BioNtech社のワクチンに対してアナフィラキシーを起こした患者の、Moderna社のワクチン接種時のアナフィラキシーリスクを推定することは困難だ。いずれもPEG2000をベースとしているが、組み合わされている脂質は異なるためだ。
 英国で2020年末に緊急使用が認められたAstraZeneca社のアデノウイルスワクチンには、PEGと構造が似ているポリソルベート80が用いられており、Janssen社がフェーズ3試験を行っているアデノウイルスベクターワクチンとNovavax社がフェーズ3試験を進めているサブユニットワクチンにもポリソルベート80が、Sanofi Pasteur社とGSK社がフェーズ1~2試験を実施中のサブユニットワクチンにはポリソルベート20が含まれている。それらがアナフィラキシーを引き起こすかどうかについては現時点では不明だ。

(⑩)コロナのワクチンに含まれる成分で、アレルギーを起こしやすいものは分かっている?
 今のところ、ファイザー/ビオンテック社のワクチンに含まれているポリエチレングリコール(polyethylene glycol; PEG)が、アナフィラキシーの原因のひとつとして推測されています。そして類似した(科学的には“交差した”と表現します)成分であるポリソルベートが注意するべき成分と考えられています。
▷Br J Anaesth. 2020 Dec 17:S0007-0912(20)31009-6. doi: 10.1016/j.bja.2020.12.020. Epub ahead of print. PMID: 33386124.
 つまり、過去、新型コロナのワクチン接種でアナフィラキシーを起こした方、そしてポリエチレングリコールやポリソルベートにアレルギーがある方以外は、接種可能と考えられているということです。
なお、ポリエチレングリコールは本来、安全性の高い成分であり、さまざまな医薬品にも含まれる成分です。

現在までの情報を踏まえたアナフィラキシー対策は?
(⑨)CDCは、mRNA COVID-19ワクチンの使用およびCOVID-19ワクチン接種後のアナフィラキシーの管理についてガイダンスを発表している。
 ワクチン接種後のアナフィラキシーの管理については、次のような対策が明記されている。

1.ワクチン接種を実施する場所にはアナフィラキシーの評価および管理に必要な医薬品や備品、特に十分量のエピネフリンプレフィルドシリンジまたはオートインジェクターなどの準備をする。

2.アレルギー反応の既往に応じてワクチン接種後15分間または30分間の観察時間を設ける。

3.アナフィラキシーが疑われる場合は直ちにエピネフリン筋注で治療する(アナフィラキシーは急性で生命を脅かす有害事象であるためエピネフリン投与に禁忌はない)。

4.全ての被接種者に対し、観察期間が終了しワクチン接種場所を離れた後にアレルギー反応の徴候または症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診するように指示する必要がある。

■ 新型コロナワクチンによるアナフィラキシーは他の医薬品と比べると多い?少ない?
(⑩)・・・最近、ファイザー社のコロナワクチンは、189万回中21件、モデルナ社のコロナワクチンは約400万回中10人にアナフィラキシー反応があったと報告されています。
▷JAMA. 2021 Jan 21. doi: 10.1001/jama.2021.0600. Epub ahead of print. PMID: 33475702.
▷Allergic Reactions Including Anaphylaxis After Receipt of the First Dose of Moderna COVID-19 Vaccine — United States, December 21, 2020–January 10, 2021
 そして今のところ、報告されているコロナワクチンに対するアナフィラキシーは、アドレナリンというアナフィラキシー時の薬剤など、適切な対応によって全員が回復されています。
コロナのワクチン接種後のアナフィラキシーは、頻度は高くなく、適切な処置が行われるならば比較的安全であるといえるでしょう。
 これらのコロナのワクチンに対するアナフィラキシーは、大部分が30分以内、一部が数時間以内に起こっています。ですので、接種後30分は医療機関内で、接種後しばらくは医療機関の周辺で受診できるようにしておくと、より心配が少ないと思われます。
 では、コロナのワクチンのアナフィラキシーは多い方なのでしょうか?
 米国のデータベースにおける、従来のワクチン接種約2500万回を検討した報告では、アナフィラキシーの発生率はワクチン 100 万回あたり 1.31回と推定されています。
▷Journal of Allergy and Clinical Immunology 2016; 137:868-78.
 そして、よく使われるセファロスポリンという抗菌薬に対してのアナフィラキシーの頻度は、100万人あたり1人~1000人(幅が広いのは研究ごとに差があるからです)、解熱鎮痛剤に対するアナフィラキシーの頻度は、100万人の過去1年あたりで考えると30~500人程度ではないかと考えられています。
▷New England Journal of Medicine 2001; 345:804-9.
▷Current Treatment Options in Allergy 2017; 4:320-8.
 新型コロナのワクチンには世界の注目が集まっており、その副反応の情報収集はより丁寧に行われており、『最大限の情報がひろいあげられている』可能性が高いですので、新型コロナのワクチンが、特別にアナフィラキシーが多いとはいえないでしょう。


<参考資料>
⑤ コロナワクチン、アナフィラキシー例の続報!モデルナ10例の特徴
⑥ ワクチン接種で発症「アナフィラキシー」の正体 
久住 英二 : ナビタスクリニック内科医師
⑦ COVID-19ワクチンでアナフィラキシーを起こした21人のプロフィール〜アナフィラキシーの発生率は接種100万回当たり11.1件
⑧ SARS-CoV-2ワクチンによるアナフィラキシーの機序は? 現状で接種10万回当たり1件、アナフィラキシーにはPEGが関係か
⑨ コロナワクチン、アナフィラキシー例を詳報!〜米・CDC発表、 21例の特徴
⑩ 新型コロナのワクチンは、アレルギーの病気を持っていると接種できないの?
堀向健太 | 日本アレルギー学会専門医・指導医。日本小児科学会指導医。

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新型コロナワクチン Q&A(2021年2月現在)

2021年02月07日 07時23分43秒 | 小児科診療
今月(2021年2月)末に医療関係者に対して新型コロナワクチン接種が始まる予定です。
その後はハイリスク者、一般の方へと広げていくスケジュール。
いよいよ間近になってきました。

現在、新型コロナワクチンに関する情報があふれています。
一体、どれを信じたらよいのか・・・ネットで検索するとマイナスイメージのコメントがヒットしやすい傾向があり、毎度のことながらマスコミは不安を煽る言葉を並べて注目を集めようとするあこぎな商売をしています。

ということで、私(小児科専門医)からみて信頼できる情報を集めて、詳しくなりすぎない程度のQ&A集を作成してみました。
ただ、情報は毎日更新されている状況なので、現時点での情報と割り切っていただくよう、お願い致します。


■ 新型コロナウイルスワクチンは今までのワクチンと違うの?

(④)ワクチンとは、病原体特異的な免疫を獲得させるために投与する弱毒化または死滅させ た病原体および病原体の成分を含む生物学的製剤の一種です。特異的な免疫というのは標的とした病原体だけに有効な免疫という意味です。弱毒化した病原体を用いるものを生ワクチン、死滅させた病原体や病原体の成分を用いるものを不活化ワクチンと呼んでいます。 この他に、感染性のあるウイルスベクターを用いたワクチンも開発されています。現在開発中の COVID-19 ワクチンには、不活化ワクチンまたはウイルスベクターワクチンが多くみ られますが、生ワクチンの開発も行われています。 これまでの不活化ワクチンに用いられた病原体の成分は、タンパク質や多糖体が主体でしたが、COVID-19 ワクチンでは、mRNA(メッセンジャーRNA)、DNA などの核酸用いられています。核酸ワクチンやウイルスベクターワクチンは迅速に実用化できる利点があり、緊急性が求められるパンデミックワクチンの方法として有用です。

(①)米国で承認されている2種類のワクチン(ファイザー社/BioNTech社製、モデルナ社製)はいずれも、mRNAワクチンと呼ばれるもの。このワクチンは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす、ウイルス表面のスパイクタンパク質の遺伝情報を含んでいる。そのため、接種すると、mRNAの情報に基づいてヒトの細胞表面にスパイクタンパク質が形成される。ヒトにとっては異物であるこのスパイクタンパク質を認識した免疫系により抗体が作られることで、本物のウイルスが侵入しようとしてもブロックされ、感染を防御するという仕組みである。
・・・mRNAは、スパイクタンパク質が形成された後、速やかに分解される。このため、mRNAが細胞核の中に入ることはなく、DNAに変換されることは決してない。

(②)米・ファイザー/独・ビオンテック、米・モデルナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン。この種のワクチンが実用化されたのは世界初である。原理だけを見れば、安全性はむしろ既存の不活化ワクチンなどに比べて高いとも思えるのだが、これ以前に実績のないものゆえに逆に不安に思ってしまう接種対象者が出てきてしまう点は否めない。


■ 新型コロナワクチンは“筋肉注射”らしいけど、痛いの?

(②)・・・アメリカでのワクチン接種映像が放映されたことをきっかけにSNSをはじめ各所で「なんで注射針を腕に垂直に刺してるの?」などとおびえている人たちは少なからずいるのだ。・・・未知のワクチンを経験のない方法で接種しなければならないことに怖さを感じるほうがむしろ自然である。
・・・はっきり言って筋肉内注射に伴う痛みは一定程度注射を行う人の手技に左右されている側面があると感じる。


■ 新型コロナウイルスワクチンを接種すると、新型コロナに感染したときと同じ症状が出るの?

(①)新型コロナウイルスワクチンは生きたウイルスを含んでいない。スパイクタンパク質が感染を引き起こすことはない。


■ 新型コロナウイルスワクチンの有効性はどれくらい?

(④)ワクチンの有効率 90%というのは「90%の人には有効で、10%の人には効かない」 もしくは「接種した人の 90%は罹らないが、10%の人は罹る」という意味ではありません。接種群と非接種群(対照群)の発症率を比較して、「非接種群の発症率よりも接種群の発症率のほうが 90%少なかった」という意味です。発症リスクが、0.1 倍つまり 10 分の 1 なるとも言えます。

(④)有効性の評価方法
 ワクチンの有効性の評価方法には次の 3 つがあります。
1) 免疫原性(immunogenicity):被接種者の血清中の抗体のレベル(抗体価)が感染や発症を防ぐレベルに達した人の割合で評価します。
2) 臨床試験での有効率(efficacy):接種群と対照(コントロール)群との発症率の差を比較します。
3) 実社会での有効率(effectiveness):多くの接種対象者にワクチンが普及したあと、目的の感染症が実際にどのくらい減少したかを評価します。 有効率はおもに発症するかどうかで評価しますが、重症化率や致命率を指標とすること もあります。
 COVID-19 ワクチンはまだ接種が開始されたばかりですので、実社会での有 効率の評価はこれからですが、先行する一部のワクチンでは免疫原性が確認され、臨床試験での有効率が報告されています。

(①)インフルエンザワクチンの有効性が一般に40~60%であるのに対して、新型コロナウイルスワクチンの有効性は94~95%である。

(④)被接種者の年齢は、16 歳 または 18 歳以上でいずれも高齢者を含みます。前述したように、ファイザーとモデルナの mRNA ワクチンはいずれも 90%以上の有効率を示し、アストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、イギリスだけで実施した 1 回目低用量・2 回目標準用量の接種様式では 90%、 イギリスとブラジルで実施した 2 回とも標準用量の接種では 62%でした。両方を合わせた有効率は 70.4%となっています。



(④)いずれの臨床試験でも、年齢層ごとの有効性が評価されており、75 歳未満までは有意な 有効性がみられていますが、75 歳以上では対象者数が十分でなく評価できていません。 また、基礎疾患ごとの有効性についても今後の課題と考えられます。これらの臨床試験における被接種者の人種構成は、白色人種がファイザー83%、モデルナ 79%、アストラゼネカ 92%でした。アジア系の割合は、それぞれ 4.2%、4.4%、2.6~5.8% にすぎません。有効性に人種差が影響する可能性も想定されますので、国内での臨床試験の結果が重要ですが、国内の COVID-19 の罹患率は海外に比べて低いため、その評価にはかなりの時間が必要と考えられます。 さらに、これらの臨床試験の観察期間は 100~150 日という短期間であるため、どのくらいの期間ワクチンによって防御免疫が維持できるかという免疫持続性についての評価がまだできていないことにも注意が必要です。


■ 新型コロナウイルスワクチンの副作用(副反応)が心配です。

(①)副作用としてごく一部の人に重篤なアレルギー反応が生じることがある。そのため、米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスワクチンに含まれる成分に対してアレルギー反応が生じたことのある人は、このワクチンを接種するべきではないとしている。また、他のワクチンに対してアレルギー反応が生じたことのある人は、医師に相談することを勧めている。その一方で、ワクチン以外のアレルギー(食物、ペット、季節性アレルギーなど)のある人は、このワクチンを接種しても安全であると述べている。
 その他、注射部位の腫れや痛み、発熱、頭痛、筋肉痛などの副反応が起こることがあるが、一過性のものだという。

(②)副反応という点ではほとんど問題がないとしても、
(1)未知のワクチンへの怖さ、
(2)未経験の筋肉内注射への怖さ、
(3)人によって痛さが異なることによる疑問・不信感、
というネガティブ要素がどうしても避けられない。その前提がある中で、国が主体となってこのワクチンを接種している以上、国や地方自治体、医療従事者の側にどうしても副反応が生じた際に接種者により親身に対応する窓口があることが望ましいと考える。


■ COVID-19に罹患したことがあっても新型コロナウイルスワクチン接種は必要?

(①)CDCは、COVID-19の罹患歴がある人にもワクチン接種を勧めている。感染後、ウイルスに対する免疫がどの程度持続するのかが明確になっていないからである。


■ 新型コロナウイルスワクチン接種後はマスクをしなくてもよい?

(①)マスク着用、手洗い、ソーシャルディスタンスの維持は、ワクチン接種後も継続する必要がある。ワクチンによって発症率は抑えられるが、それでも感染する可能性がまだあるのか、他者へウイルスを広げる可能性があるのかについては、はっきりしたことが分かっていないためである。

(③)ワクチン接種さえ受ければ以前の日常を取り戻せると、期待を膨らませている人もいるだろう。しかし、感染症の専門家は、既に供給が開始されているファイザー社やモデルナ社のワクチン、あるいは現在開発中のワクチンのいずれであっても、接種したからといって感染予防策が不要になるわけではなく、引き続きマスクを着用し、社会的距離を維持する必要があると警告している。
 これらのワクチンの安全性と有効性を検証した臨床試験では、主にCOVID-19の重症化や死亡を防ぐことができるかどうかに焦点が当てられているという。よって、ワクチン接種を受けた人が感染した場合は無症状で経過することが多いと考えられるものの、その人から周囲の人にウイルスが伝播してしまう可能性の有無は、まだ分かっていない。
 米ヴァンダービルト大学医療センターのWilliam Schaffner氏は、「ワクチンを接種していても感染する可能性があり、かつ他者に感染させる可能性もある。COVID-19のワクチン接種後にそのようなことが起きた事例はまだ確認されていないが、それが起きないと否定できる根拠もない」と述べている。
・・・ワクチン接種後にもマスクを着用し社会的距離を保つことで、自分が無症候性の保因者になるリスクを下げられるとしている。・・・「ワクチン接種後に、もし糖尿病患者や60歳以上などのハイリスクの人をハグしたりすると、その人たちに感染させてしまうかもしれない」と警告を発している。
・・・ワクチンの有効性が十分でないと指摘する声も聞かれる。接種により罹患リスクが低下するが、それでもわずかながらリスクは存在するという。・・・ワクチンの有効性は95%だ。つまり、5%のリスクが残されている・・・。


■ 新型コロナウイルスワクチンにマイクロチップが入っているというのは本当?ワクチンは不妊の原因になる?

(①)ワクチンにマイクロチップは入っておらず、不妊の原因にもならない。


<参考資料>
① 新型コロナウイルスワクチン、よくあるQ&A
② 副反応に匹敵!?新型コロナワクチンのもう1つの不安要素とは
③ ワクチンを打てばCOVID-19対策は不要?
④ 一般社団法人日本感染症学会ワクチン委員会「COVID-19 ワクチンに関する提言(第1版)」(2020.12.28)

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