徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

子宮頸がんワクチン副反応被害から回復した人たちの声

2017年02月11日 08時01分47秒 | 小児科診療
 HPVワクチン(=子宮頸がんワクチン)に関しては、医学学会は推進、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は訴訟に踏みきり、間に挟まれた国は右往左往して動きが取れない状況です。

 そんな折、下記の記事が目に留まりました。

 「被害者連絡会」に入会した副反応被害者が、民間療法の施術で回復した旨を会に報告すると、その有用な情報は会員に共有されること無く、会幹部により握りつぶされてしまったという驚くべき事実が明かされています。
 さらにその情報を広げないよう圧力をかけられ、会から除名に等しい扱いを受けたと。
 
 これを読んで私はガッカリしました。
 被害者連絡会を運営している人たちは被害者の回復を目指すのではなく、訴訟に不利になることは覆い隠すという体質が見え隠れしたからです。

 そしてさらにガッカリしたことは、これらの声を取材したメディアの記者達が「このニュースは当社では扱えない」と告白していること。
 つまり、「ワクチン反対」という情報は世間の注目を浴びるので記事にしやすいが、その逆の記事(ワクチン被害を覆す=ワクチンを褒める・推進する)は記事にならないというのです。

 もう、お手上げです。
 やはりメディアは信じられない。
 みなさん、メディアは「ワクチン反対」というマイナス情報しか報道しません。
 残念ながら日本のメディアには真実を報道する心意気はないのでご注意を!

 これは「情報操作」という犯罪ではないでしょうか。
 過去に何回か新聞やTVから取材申し込みがありましたが、断ってよかった。

■ 子宮頸がんワクチン被害者から、「決意の重大告発」相次ぐ
2017.02.09:Business Journal
上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

 2016年11月26、27日の2日間にわたり、「現場からの医療改革推進協議会シンポジウム(現場シンポ)」を開催した。今年で11回目だ。
 このシンポジウムは、私と鈴木寛・東京大学教授(当時参議院議員)が呼び掛け人となって10年前に始まった。さまざまな分野の専門家が集まり、議論を深め、自分たちでできることからやっていこうという主旨だった。
 今年もテーマは多岐に渡った。そのなかで、とりわけ参加者の注目を集めたのは、子宮頸がんワクチンの副反応から回復した人たちの経験談だった。
 このセッションには、4名の母親が登壇した。彼女たちの話にはリアリティーがあった。娘の調子がおかしくなったときに、非常に心配したこと、最初に受診した医師は十分に話を聞いてくれなかったこと、情報を集めるために、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会(被害者連絡会)に加入したこと、最終的には自らの判断で食事療法などの民間診療を選択し、娘が回復したことなどを紹介してくれた。
 彼女たちは、非常に理性的だった。ワクチンの問題を強調せず、多くの副反応に心因的な要素が強いことを認めた。ある母親は「症状はワクチンがトリガーとなった心因性である子がほとんどでないか」と主張した。
 一方で、西洋医学的アプローチが娘たちの症状の回復にあまり貢献しなかったことを強調した。このことは示唆に富む。民間診療の専門家と比較し、私たち医師はコミュニケーション力が弱いのだろう。
 対照的に、民間診療の専門家は患者の意見を傾聴し、共感し、そして自らが信じる治療行為を提供した。ある母親は「R先生の施術であっさり痛みがとれた」という。ここでは、施術の科学的妥当性は議論しない。医学的・薬学的には効果のない薬品投与や治療によって患者が回復や治癒することを「プラセボ効果」と呼ぶが、そのような民間診療の専門家の診療態度が、患者に対して「強力なプラセボ効果」を与えたのではなかろうか。治療者として見習うべき点が多い。そして、このような経過こそ医学論文として記載し、世界の人々と情報を共有しなければならない。
 意外だったのが、情報開示・共有に否定的な人がいたことだ。彼女たちが、娘が回復した旨を被害者連絡会に伝えたところ、この情報を会員には提供せず、むしろ彼女たちにこの情報を開示しないように圧力をかけてきたそうだ。
 ある母親は、「娘が回復した時、 連絡会に食餌療法で回復したことを伝え、連絡会内でも回復情報を共有してほしいと提案したが、却下された」と明かした。 別の母親は、「当時会がつくっていた掲示板にその旨を書き込んだところ、掲示板自体が消された。数日後、事務局長から電話があり治ったことを告げたら、『もう連絡いらないわね』で話が終わる。次々にSNSでブロックされる。事実上会から除名されたような状況となった」と配付資料に記した。
 彼女は「被害者連絡会はなくなるべき」と主張する。これでは、被害者そっちのけでもイデオロギー闘争に明け暮れている感じだ。いい加減、こういうことはやめてはどうだろうか。
 こうした証言について、事実確認も含めて被害者連絡会の見解を聞くべく、今月上旬に4日連続(平日ベース)で複数回にわたり同会HP上に掲載の電話番号に電話をかけたが、いずれも不在であった。

◇ 徹底的な議論が必要
 当日は、大勢のメディアの方も来ていた。シンポジウムのあと、お母さんたちのインタビューをとった記者もいた。果たして、記事になるだろうか。ちなみに、ある新聞の記者に話したところ、「うちは、この問題は社内の都合で扱えない」と言われた
 また、シンポジウムには国会議員や官僚、医学界の重鎮の方々もいた。彼らは、この問題を国会や審議会で議論できるだろうか。
 現場シンポのモットーは、それぞれが自分の現場でベストを尽くすことだ。子宮頸がんワクチンをいかに日本社会に根付かせるか、そのためには国民の合意形成が欠かせない。メディアが正確な情報を伝え、そのような公開情報をベースに政府や議会でオープンに議論すべきだ。医学界でも、患者視点に立ち、徹底的な議論が必要だ。
  今回のシンポで、お母さんたちは勇気を振り絞って、自らの経験を説明した。これからは我々医師の出番だ。私たちの矜持が問われている。


 私なりに裏を読んでみると・・・

・被害者連絡会が回復した患者さんの声を握りつぶした。
→ 訴訟は被害者を救済する=裁判で勝つことが至上命題であり、真実がどうであるかは関係ない。これは過去の予防接種裁判でも同様です。

・メディアの記者が上記の事実を知りながらも記事にしない。
→ 読者である国民は「ワクチンの批判」「人の悪口」を好み、「ワクチンを褒める」「人を褒める」ことには興味がない。出家している瀬戸内寂静さんも「人の悪口を言いながら食べる食事ほど美味しいものはない」と断言しています。人間の煩悩ですねえ(^^;)。
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花粉症に使う点眼薬(目ぐすり)のお話

2017年02月05日 11時21分34秒 | 小児科診療
 インフルエンザ流行のまっただ中ですが、スギ花粉症が始まりました。
 私自身が患者なので、鼻をグズグズさせながら診療しています(^^;)。

 私が使用している薬を内緒で公開します;

1.内服薬;①と②を併用してます
① 抗アレルギー薬;下記のどちらか
クラリチン(ジェネリックでは「ロラタジン」)
アレグラ(ジェネリックでは「フェキソフェナジン」)
② 漢方薬:苓甘姜味辛夏仁湯(119)
3.点眼薬:パタノール点眼
4.点鼻薬:リノコートパウダースプレー(ジェネリックでは「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル点鼻薬」)

 使用理由も記しておきます。

1.クラリチンアレグラは眠くなりません(医学的には「脳内移行が少ない」と表現・・・下表参照)。飛行機のパイロットに許可されている抗アレルギー薬はこの二つだけ、と昔から有名です。ただ、効果は今ひとつかなあ・・・なので次の漢方薬を併用してます。

<鎮静性比較:非鎮静性〜軽度鎮静性〜鎮静性>



 学会講演を聴いていると「鎮静性と効果はパラレルではない」(眠くなる薬がよく効くわけではない〜眠くならない薬でも十分効果がある)と演者の偉い先生は強調します。
 しかし、効果と眠気をプロットした下図も見つけましたので、さもありなん、ですね(^^;)。

<抗ヒスタミン薬の比較>
(「花粉症対策まとめ」より)



2.以前は小青竜湯(19)を使っていました。麻黄(≒エフェドリン)という生薬が入っているので鼻汁だけでなく鼻閉も楽になります。最近発売されたディレグラはアレグラ+プソイドエフェドリンという内容で、私がしてきた治療内容を後から真似たようなもんです(^^)。
 しかし私の健康上の理由で小青竜湯が使えなくなったため、その裏処方と言われている体に優しい苓甘姜味辛夏仁湯(119)を飲んでいます。鼻汁のグジュグジュ感が楽になります。

3.パタノール点眼薬の成分は「オロパタジン」です。内服薬では「アレロック」という薬でベストセラーですね(なぜ名前を変えたんだろう?)。この点眼薬のいいところは、しみないこと。

4.リノコートは液体ではなく細かい粉です。そのため、刺激や液だれなど子どもが嫌がる要素が少ないため採用しています。自分で使うと「あれ、薬は出ているのかな?」と疑いたくなるほど刺激がありません。

 さて、今回は点眼薬について少々書いてみます。

 花粉症に用いられる点眼薬は大きく「抗ヒスタミン薬」と「メディエーター遊離抑制薬」(難しい名前ですねえ)の2種類に別れます。前者の方が即効性があると言われています。
 点眼薬は“差しごこち“”が大切です。
 私は以前、アレギサール点眼薬を使用したことがありますが、ジワーと目頭が熱くなる違和感がありました。
 パタノール(=オロパタジン)はそんなことはありません。
 何が違うかというと、pH(酸性度)。
 ヒトの体はpH7.0に保たれていることはご存じですね。
 点眼薬のpHがそれに近いほど刺激感が乏しく“優しい差しごこち”なります。

 下表(「非眼科医でも抗アレルギー点眼薬の積極処方を」2017.1.31、日経メディカルより)を見ていただくと、各点眼薬のpHが記されていますので参考にしてください。


 ただし「刺激がないこと=よいこと」とは限らないのが面白いところ。
 「しみないと効いた感じがしない」という患者さんもいらっしゃいます。
 お年寄りが湿布薬を貼る際に「においがしないシップは効いた感じがしない」というのと似てますね(^^)。

 それから、高校生以降になるとコンタクト・レンズ使用者が増えてきます。
 これも悩ましい。
 私は1日2回で済むアレギサール点眼薬を処方し「コンタクトを入れる前と外した後に使ってください」と指導しています。
 ところが近年、コンタクト・レンズを装着したまま使用できるアレジオン点眼薬が登場しました。
 当院ではこれから導入予定です。

 どの点眼薬を使用しているか、医師にアンケートをして記事(「抗アレルギー点眼薬:3人に1人はオロパタジン」2016/10/20:日経メディカル)では、

1.オロパタジン(=パタノール)
2.エピナスチン(=アレジオン)
3.ケトチフェン(=ザジテン)

だったとのこと。2のアレジオンは急速にシェアを伸ばしているそうです。これはコンタクト装着中も使用できることがメリットとして働いてのことでしょう。



 4位以下は次の通り。
4.レボカバスチン(リボスチン他) 8.8%
5.クロモグリク酸(インタール他) 8.4%
6.トラニラスト(トラメラス、リザベン他) 3.2%
7.アシタザノラスト(ゼペリン) 2.6%
8.ペミロラスト(アレギサール、ペミラストン他) 1.7%
9.イブジラスト(ケタス他) 0.9%
10.アンレキサノクス(エリックス、ソルファ) 0.8%
11.グリチルリチン酸(ノイボルミチン) 0.3%


とっても古いケトチフェンが3位に入っているとは驚きです。おおっ、インタールが5位だ!
きっと超ベテランの先生方が使っているんだろうなあ。

実は上記以外にも“禁断の点眼薬”があります。
それはステロイド点眼薬です。
目は脳神経が向き出しになっている唯一の臓器であり、副作用には十分注意する必要があります。
(例)リンデロン点眼薬フルメトロン点眼薬(0.1%と0.02%があります)
有名な副作用は眼圧が上がる「緑内障」で、耐えられないような眼痛発作が現れるそうです。
しばらく前に、TVで「急に目を痛がった幼児の原因がステロイド点眼薬だった」という内容を観ました。
もちろん、本人に処方された薬ではなく、おばあちゃんに処方された薬を目が赤いからと流用したのが理由です。
なので、基本的に私は処方していません。
内服薬+抗ヒスタミン薬点眼でも目の痒みがつらいときは漢方薬(越婢加朮湯が効きます)を追加するか、漢方を希望されない方は眼科へ誘導しています。
どの教科書にも「ステロイド点眼薬を長期に使用する場合は眼科専門医の管理下に置くべきである」と記されています。
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節分の豆まき〜3歳以下は要注意!

2017年02月03日 13時11分34秒 | 小児科診療
 豆まきの季節がやってきました。
 この頃になると「豆の誤嚥に注意!」というニュースを耳にするのも年中行事。

 随分昔になりますが、研修医時代に豆をつまられた患者さんを担当したことがあります。
 その子は全身麻酔下に豆のかけらを摘除しましたが取り切れず、低酸素性脳症となりしばらく後に亡くなりました。
 諦めきれないご両親の表情が今でも忘れられません。

 このような事故が繰り返されないよう、ご注意ください。

■ 節分の豆、3歳頃まで食べさせないで 消費者庁が注意
朝日新聞デジタル 2017/2/3
 乳幼児が豆を食べて窒息するケースがあることから、消費者庁は節分にあわせ、「3歳ごろまでは乾いた豆やナッツ類は食べさせないでほしい」と注意を促している。
 消費者庁が30(昨年末時点)の医療機関から得た情報によると、0~3歳が豆やナッツ類を食べたことで起きた事故は、2010年12月からの6年間で二十数件発生。半数以上のケースで入院が必要だった。
 そのうち1歳児のケースでは、節分豆を食べた後に息がぜいぜいし始めた。病院で診察したところ、気道に豆の破片が入っており、全身麻酔をして摘出したという。
 消費者安全課によると、豆やナッツは形や大きさ、硬さから他の食品よりも気管に入りやすい。担当者は「特に乳幼児ののどは未発達で気管に入りやすい。窒息する恐れがあり、小さな破片でも肺炎を起こすことも。誤って口に入れないように豆まきをしたら片付けも徹底してほしい」としている。
 豆による事故を防ごうと、豆を小分け包装し、袋のまま豆まきができる商品も。小林製菓(東京都)は2010年の節分用から販売を始め、今年の売り上げは当初の約5倍に伸びたという。小林義明社長は「袋のまままけば掃除も楽」と話している。


■ もうすぐ「節分」… 豆まきの「豆」が窒息事故につながる恐れ 
2017.1.24:産経新聞
 もうすぐ節分。豆まきを楽しみにする子供は多いが、豆を気管支などに詰まらせる事故も起きている。専門家は「3歳頃までは、豆類を食べさせないようにしてほしい」と呼びかけている。

◇ 子どもは気管が狭い
 「小さな子供はかみくだく力が弱いうえ、大人よりも気管が狭く、窒息事故につながりやすい。節分の時期は豆による事故に注意してほしい」。こう説明するのは、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)呼吸器科医長の川崎一輝医師だ。
 同センターでは、平成17年から28年の12年間に、異物を気管支などに詰まらせて受診する子供(0~11歳)が75人いた。このうち豆類が原因だったのは44人だった。
 豆の種類は、最も多いのがピーナツで20人。大豆(10人)、枝豆(9人)と続いた。大豆が原因の10人のうち8人は節分の2月に受診していた。
 川崎医師は「大豆やピーナツは硬くて滑りやすく、誤って口に入れると気管や気管支にまで入りこみやすい」と指摘。「3歳くらいまでは豆類は食べさせないほうがいい」とする。

◇ 肺炎の危険も
 気管や気管支に豆などの異物が入ると、激しくせき込んだり、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音が喉や胸から聞こえてきたりする。
 気管が完全にふさがってしまうと死亡することもある。気管や気管支に入った豆を取り除くのは難しく、全身麻酔による内視鏡手術になることが多いという。
 左右どちらかの気管支に異物が入り込み、気管が完全にふさがれていない場合は、呼吸が可能なため一時的に症状が落ち着くこともある。しかし、川崎医師は「異物を放置すると肺炎を起こす危険もある。疑いがある場合は必ず医療機関を受診してほしい」と進言する。

◇ 逆さにしないで
 子供が異物を詰まらせた場合の対応は、年齢や症状によって異なる。
 呼吸をしていなかったら119番通報して救急車を呼ぶ。呼吸ができていたら刺激をしないように注意しながら医療機関に連れていく。



 日本小児呼吸器学会では、ホームページで応急処置の方法を紹介している。異物を詰まらせ、声が出せない状態で意識があるときは、1歳未満なら頭部を低くして背中をたたいたり、胸部を圧迫したりする動作を繰り返す。1歳以上の場合は、背後から両腕をまわし、子供のみぞおちの下で握り拳を作り、腹部を上方へ圧迫する。
 子供がむせていると、逆さにして体をたたく人がいるが、「嘔吐(おうと)したり、余計に悪化させたりする可能性があるのでやらないでほしい」と川崎医師はアドバイスしている。

◇ 「片付けやすい」小分け包装人気
 豆による事故をなくし、節分を楽しく過ごしてもらおうと、菓子メーカーなどが対策に乗り出している。豆を小さな袋に小分けにしたり、豆以外のお菓子が登場したり。売れ行きも好調という。
 百貨店の高島屋日本橋店(東京都中央区)の食品売り場では、小分けに包装された節分用の豆が人気だ。同売り場のシニアマネジャー、宮崎伸一さんは「豆まきの後に片付けやすいと喜ばれています」と話す。回収しそびれた豆を子供が誤って口に入れるのも防げる。
 大手通信販売サイト「楽天市場」でも、小分け包装された節分用の豆の売り上げが増加。平成28年は前年比36%増と好調で、24年の約6倍と大幅に伸びた。
 豆以外の食品も出てきた。サイトを運営する楽天の広報担当者は「豆のようにまいてもいいように個包装されたマシュマロや、子供が安心して食べられるたまごボーロが売れています」と話している。


 「1歳以上の場合は、背後から両腕を回し、子どものみぞおちの下で握り拳を作り、腹部を情報へ圧迫する」方法をハイムリッヒ法と呼ぶことは、医療者の常識です。
 先日(2016年12月)、この考案者のハイムリッヒ氏が亡くなったというニュースが流れました。名前からドイツの人だと思い込んでいましたが、アメリカの医師だったのですね。

■ 米医師ヘンリー・ハイムリッヒ氏死去 誤えん対処法考案
2016年12月18日:朝日新聞
 ヘンリー・ハイムリッヒさん(米医師)AP通信によると17日、米オハイオ州シンシナティの病院で死去、96歳。
 74年に、食べ物などをのどに詰まらせた人を助けるため、背後から抱きついて拳で腹部を圧迫し、突き上げる方法を考案。「ハイムリッヒ法」と呼ばれるようになり、世界各地で多くの命を救ったとされる。今年5月には、老人ホームで女性を助けるため自ら実践し、「緊急時に自分でハイムリッヒ法を使ったのは初めて」と明らかにして話題となった。


<参考>
■ 「小児の気道異物事故予防ならびに対応」(日本小児呼吸器学会)
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インフルエンザの基本知識

2017年02月01日 07時47分40秒 | 小児科診療
 ただいま当地域(北関東)ではインフルエンザ流行まっただ中。
 1/31には群馬県でも「インフルエンザ警報」(一医療機関で1週間の患者数>30人が基準)が発令されました。
 先週から学級閉鎖が相次いでいますので、今週がピーク、来週終息に向かうと思われます。

 今更ですが、インフルエンザに関するわかりやすい記事を見つけましたので紹介・抜粋させていただきます。

■ インフル流行警報……今知っておきたいこと
2017年1月27日:読売新聞
◇ いよいよ流行警報のレベルに
 本年度のインフルエンザは、例年より早めの流行入りとなっていました。しかし、年明けの立ち上がりが予想よりも緩徐であったため、例年並みの時期の流行ピークへ向かっています。そんな状況の中、いよいよ東京都からも「流行警報」が出されました。その他にも、すでに流行警報レベルになっている地域があり、今後は一気に全国的な警報レベルとなっていきます。

◇ 今、流行しているウイルスは?
 冬に全国で流行するインフルエンザには、「A型」と「B型」の2つの型があります。「A型」のインフルエンザでは、かつては「AH3(A香港型)」と「AH1(Aソ連型)」の2種類が大きな流行を繰り返していました。しかし、2009年に新型インフルエンザとして世界で大流行した「AH1pdm09」が、新たな季節性のインフルエンザとして加わり、「AH1(Aソ連型)」の大きな流行がみられなくなっています。そして近年は、「AH3(A香港型)」と「AH1pdm09」が交代に流行しており、今は「AH3(A香港型)」が流行の中心となっています。

◇ 2回感染する可能性もあり
 「B型」のインフルエンザは、「山形系統」と「ビクトリア系統」の2種類に分けられています。今のところ「B型」の報告はごくわずかです。しかし「B型」は、A型が減少してくるころから、春先にかけて増えることがよくあります。すでにインフルエンザにかかった人も、もう感染しないと安心してはいけません。別な型のインフルエンザに再び感染することもあるからです。

◇ インフルエンザの症状は?
 インフルエンザに感染してから発症するまでの潜伏期間は1~3日です。したがって、発症した人と接触したことがわかったら、数日間は症状に注意する必要があります。インフルエンザは突然の高熱で発症することが多く、頭痛、筋肉痛、関節痛も、よくみられる症状です。また、鼻水、喉の痛み、 咳せき などを伴うこともあります。多くの人は自然に軽快するのですが、小児や高齢者では脳症や肺炎を合併して重症化することがあります。

◇ インフルエンザの検査を過信しない
 インフルエンザの検査では、長い綿棒のようなもので鼻腔(鼻の奥の方)をぬぐい、それを短時間で判定する迅速検査が一般的です。発症直後は、検査しても陽性とならないことが多いので注意が必要です。また、最も検出される時期でも100%診断できるわけではありません。つまり、検査して陰性だからといって、インフルエンザではないと完全に否定されたわけではないのです。インフルエンザの検査は、絶対的なものではありません。検査で陰性であっても、症状から強く疑われる場合には、インフルエンザと考えて対応しておくことがすすめられます。

◇ 抗インフルエンザ薬の効果は?
 インフルエンザは、軽症ならば解熱剤などの対症療法のみでも、自然に良くなることが多い感染症です。インフルエンザと診断されたら、必ず抗インフルエンザ薬を投与しなければならない、というわけではありません。
 現在一般的に使われている抗インフルエンザ薬には、内服薬(タミフル)、吸入薬(リレンザ・イナビル)、そして点滴薬(ラピアクタ)があります。そして、一般的には発症48時間以内の治療開始がすすめられています。
 「薬を飲んだのに、熱がすぐに下がらない。」と心配される方もいますが、飲んだら熱がすぐに下がるというほどの特効薬ではありません。抗インフルエンザ薬は、症状を軽くして発熱期間を短くするという効果、そして少しでも重症化を防ぐことを期待して投与されます。

◇ ワクチン打っても安心しないで
 インフルエンザのワクチンは、「かからないワクチン」ではなく、重症化を防ぐのが目的のワクチンです。重症のインフルエンザは、治療が間に合わないようなスピードで増悪して、重症の脳症や肺炎を起こすことがあります。したがって、特に基礎疾患のある人、子どもや高齢者など、重症化のリスクが高い人ほど接種が強くすすめられているのです。ワクチンを打っていても、発症することはあります。ワクチンを過信せずに、手洗いなどの日常的な予防を続けることが大切です。

◇ 発症したら、どれくらい休むの?
 子どもの場合には、インフルエンザ後の出席停止期間が「発症したあと5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで (注:保育所は解熱後3日) 」と、学校保健安全法によって定められています。しかし、大人については、このような規定はありません。したがって、子どもの基準を参考にして、就労停止の期間を説明されているというのが現実です。会社から、感染しないことを証明してもらうようにと言われて、困って相談に来る方もいますが、病院や診療所で感染しないかどうかを検査で証明することはありません。

◇ 手洗いも大切です
 インフルエンザは、乾燥に強いウイルスです。今のように流行が拡大している時期になると、いろいろな環境も、感染した人の手を介して汚染されています。そして、くしゃみや咳だけでなく、汚染された場所に触れた手を口や鼻にもってくることでも感染してしまいます。したがって、特に人の多いところでは、しっかりと手洗いをすることも大切です。

◇ 感染を広げないために
 インフルエンザは、かかった本人が気をつけることで、感染が広がるのを防ぐことができます。もしも、インフルエンザを発症した人と接触したことがわかったら、数日間は発症する可能性を考えて行動してください。マスクは、発症した人がつける方が、予防効果も高くなります。
 インフルエンザが疑われる症状があるときには、無理して職場や学校に行かないようにしてください。そして、職場や学校の現場でも、調子が悪い人が休みやすい環境づくりをしておくことが重要です。


<補足>
・「2回感染する可能性あり」は間違いで、正確には「4回」(A型2種類、B型2種類)です。実際には診たことはありませんが。
・現在検出されるのはほとんどがA型であり、情報によるとA香港型(H3N2)らしい。今シーズンの印象は、①高熱の勢いが強くない、②A型でありながら初期に嘔気/嘔吐など消化器症状を訴える人が多い、③迅速診断検査では発熱当日陰性/翌日再検査で陽性例が多い、等々。
・大人はインフルエンザにかかってもいつまで休むというルールが決まっておらず、また軽症の人は医者にもかからず仕事を続けてウイルスをまき散らしている・・・これが流行が収まらない理由です。
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