徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

医師の命の耐えられない軽さ

2017年10月29日 09時36分44秒 | 小児科診療
 何人過労死すれば、医師の労働条件は改善されるのでしょうか?
 「働き方改革」でも、医師は蚊帳の外です。

■ 「病院が長時間労働を放置」自殺した研修医の遺族が告発
2017年10月27日:朝日新聞デジタル
 新潟市民病院で女性研修医が過労自殺した問題を巡り、遺族が26日、片柳憲雄院長と篠田昭・新潟市長、同市を労働基準法違反の疑いで新潟労働基準監督署に刑事告発した。研修医の自殺後も病院が違法な長時間労働をさせ、対策を取らなかったと主張している。代理人弁護士によると、告発は受理されたという。
 同病院を巡っては、研修医だった木元文さん(当時37)が昨年1月に自殺し、新潟労基署は長時間労働による過労が原因の自殺と認定した。木元さんの夫は昨年11月、市に長時間労働の是正を申し入れていた。この日、代理人の斎藤裕弁護士を通じて「法にのっとり適切と考える行動をしました」とコメントした。
 斎藤弁護士は告発後「長時間労働を知りながら何もせず、1人の命を失わせても全く責任が問われないのはやはりおかしい」と語った。同病院では現在も労働時間の適正管理が行われていないと指摘し、「このまま任せていても改善は実現できない」と述べた。
 告発状では、院長らは今年1~6月、医師のべ90人に労使協定の上限を大幅に超える長時間労働をさせた疑いがあると主張。昨年11月の遺族による申し入れ後も、対策を取らず放置したとしている。

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HPVワクチンは安全であり、深刻な副反応を警戒するリスクや根拠はない(JIM)。

2017年10月27日 07時59分35秒 | 小児科診療
 HPVワクチンの副反応に関するヨーロッパの大規模調査の結果が論文として報告されました。
 独立行政法人国立国際医療研究センター病院国際感染症センターのFBより引用させていただきます;

2017年10月18日発表のHPVワクチン接種後の体調不良関連の調査報告。
3,126,790人、(デンマーク1,195,865人 スウェーデン1,930,925人) が調査対象。
これまでの調査結果と同様、このワクチンは安全であり、深刻な副反応を警戒するリスクや根拠はない、という結論。


■ Human papillomavirus vaccination of adult women and risk of autoimmune and neurological diseases
Journal of Internal Medicine
Authors:A. Hviid, H. Svanström, N. M. Scheller, O. Grönlund, B. Pasternak, L. Arnheim-Dahlström
First published: 18 October 2017Full publication history

<Abstract>
Background
 Since 2006, human papillomavirus (HPV) vaccines have been introduced in many countries worldwide. Whilst safety studies have been reassuring, focus has been on the primary target group, the young adolescent girls. However, it is also important to evaluate safety in adult women where background disease rates and safety issues could differ significantly.
Objective
 We took advantage of the unique Danish and Swedish nationwide healthcare registers to conduct a cohort study comparing incidence rate ratios (RRs) of 45 preselected serious chronic diseases in quadrivalent HPV (qHPV)-vaccinated and qHPV-unvaccinated adult women 18–44 years of age.
Methods
 We used Poisson regression to estimate RRs according to qHPV vaccination status with two-sided 95% confidence intervals (95% CIs).
Results
 The study cohort comprised 3,126,790 women (1,195,865 [38%] Danish and 1,930,925 [62%] Swedish) followed for 16,386,459 person-years. Vaccine uptake of at least one dose of qHPV vaccine was 8% in the cohort: 18% amongst Danish women and 2% amongst Swedish. We identified seven adverse events with statistically significant increased risks following vaccination—Hashimoto's thyroiditis, coeliac disease, localized lupus erythematosus, pemphigus vulgaris, Addison's disease, Raynaud's disease and other encephalitis, myelitis or encephalomyelitis. After taking multiple testing into account and conducting self-controlled case series analyses, coeliac disease (RR 1.56 [95% confidence interval 1.29–1.89]) was the only remaining association.
Conclusion
 Unmasking of conditions at vaccination visits is a plausible explanation for the increased risk associated with qHPV in this study because coeliac disease is underdiagnosed in Scandinavian populations. In conclusion, our study of serious adverse event rates in qHPV-vaccinated and qHPV-unvaccinated adult women 18–44 years of age did not raise any safety issues of concern.

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週刊ポストの誇張されたインフルエンザ表現に辟易。

2017年10月27日 07時01分10秒 | 小児科診療
 9月まで、南半球ではA香港型が流行していたようです。
 つまり、これから流行が始まる北半球でも同じA香港型がくる可能性大。

 それが週刊誌である「週刊ポスト」の手にかかると下記のような見出し・記事になります。
 まるでエボラ出血熱のような扱いですが、死亡率は全然低いです。確かに死亡数が先シーズンと比較して多いという統計ですが、過去10年と比較すると堂なんでしょう。
 煽るのはやめて欲しい・・・。

<strong>■ 南半球で猛威を振るった『殺人インフルエンザ』が日本上陸秒読みか
2017年10月23日:NEWSポストセブン
<記事のまとめ>
・南半球でインフルエンザが大流行しており、豪州では9月29日時点で417人が死亡している
・前年同時期の豪州でのインフルエンザによる死者は65人で、今年は6倍以上となっている
・この『殺人インフル』は日本上陸秒読みらしく、南半球と同程度以上の流行が危惧される
・南半球で猛威の「殺人インフルエンザ」 日本上陸秒読みか

 今冬は例年以上に警戒を強める必要がありそうだ。南半球で猛威を振るった「殺人インフルエンザ」が、上陸秒読みと見られているからだ。
 日本とは季節が真逆の南半球、特にオーストラリアでインフルエンザが大流行している。豪政府の統計によれば、9月29日の段階で19万5312人の罹患者、417人の死亡者が確認されている。
 前年同時期のオーストラリアでのインフルエンザによる死亡者は65人。今年はその6倍を超える死者が出ている異常事態なのだ。
 オーストラリアではA型、B型のインフルエンザが同時に流行しているが、死者の多くは香港A型の一種である「H3N2亜型」に罹患していた。国立感染症研究所の前インフルエンザウイルス研究センター長・田代眞人氏が解説する。
「昨年米国で大流行したH1N1型は2009年に発生した新型インフルエンザの系統でしたが、今回のH3N2亜型はそれよりも人に対する病原性が強い。特に免疫力や抵抗力の弱い高齢者や乳幼児、妊婦などを重症化させやすいことが指摘されています」
 オーストラリアでも5~9歳、80歳以上の高齢者に特に感染者が多かったと公表されている。
 「南半球で流行したインフルエンザはその半年後に北半球で流行する傾向が見られます。今後の流行はウイルス動向の集計を待つ必要があるが、南半球と同程度以上の流行を想定しておく必要があるでしょう」(前出・田代氏)

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2015/16年に子供のインフルエンザワクチンは効いていたか?

2017年10月25日 08時09分37秒 | 小児科診療
 インフルエンザの生ワクチンは「有効率90%!」と華々しく登場しましたが、近年の報告ではその有効率が不活化ワクチンに劣り、2016/17シーズンにはとうとうCDCから「無効なので推奨しない」と判断されるに至りました。
 この2015/16シーズンの報告も、不活化ワクチンと同等かやや低い有効率にとどまっています。
 一般に有効率は生ワクチン>不活化ワクチンですが、なにが起こっているのでしょうか?

■ 2015/16年に子供のインフルエンザワクチンは効いていたか? 〜アメリカ1,012人の統計から
from Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America
2017.10.23:MEDLEY
 インフルエンザウイルスは流行する型が毎年違い、ワクチンも流行予測をもとに作っているため、ワクチンの予防効果は年によって少しずつ違います。2015/16年シーズンの子供のデータから有効率が報告されました。

2歳から17歳でのインフルエンザワクチンの有効率
 アメリカの研究班が、2015年末から2016年初のインフルエンザ流行について、2歳から17歳の子供でのインフルエンザワクチンの有効性を調べ、専門誌『Clinical Infectious Diseases』に報告しました。
 アメリカ8か所の施設(フロリダ州、ミネソタ州、ノースカロライナ州、オハイオ州、オレゴン州、テネシー州、テキサス州、ウィスコンシン州)で、2015年11月30日から2016年4月15日までに発熱と呼吸器症状が出て5日未満で受診した2歳から17歳の子供のデータが記録されました。
 研究班は、対象者の鼻から取った検体からインフルエンザウイルスの遺伝物質が見つかるかを調べ、ワクチンを打っていた子供と打っていなかった子供を比較して、有効率を計算しました。

生ワクチンで46%、不活化ワクチンで65%
 対象となった1,012人の子供のデータを解析しました。ワクチンを打っていたかどうかで分けると次のようになりました。

・未接種:59%
・生ワクチン:10%
・3価不活化ワクチン:10%
・4価不活化ワクチン:20%
・不活化ワクチン(3価か4価か不明):1%

 インフルエンザワクチンには種類があります。日本で主に使われているワクチンは4価不活化ワクチンです。2014/15年シーズンまでは3価不活化ワクチンが使われていました。
 生ワクチンは日本では未承認です(2017年10月時点)。生ワクチンは針を刺さず鼻からスプレーすることで予防接種ができるとされています。
 生ワクチンと不活化ワクチンに分けて有効率を計算すると次の結果が得られました。
 
・すべてのインフルエンザに対して、ワクチン有効率は生ワクチンで46%(95%信頼区間7-69%)、不活化ワクチンで65%(95%信頼区間48-76%)だった。
・生ワクチンの有効率は46%、不活化ワクチンの有効率は65%でした。不活化ワクチンのほうが有効率が高いように見えますが、統計的には偶然としても説明がつく範囲でした。いずれも未接種に比べるとインフルエンザが減っていることが確認できました。

2015/16年もワクチン有効
 2015/16年のアメリカのインフルエンザ予防接種の結果を紹介しました。
 同じ2015/16年のアメリカの別の統計によると、不活化ワクチンは有効だったが生ワクチンの効果は確認できなかったとする報告もあります。

関連記事:インフルエンザの「痛くないワクチン」は効かない?2015-16年の結果

 2016/17年シーズンについては、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)が生ワクチンを「使うべきではない」と明言しました。理由として、2013年から2016年までのデータで生ワクチンの効果が弱かったことが挙げられています。
 生ワクチンは日本では未承認のため、知らずに使ってしまうことはほとんどないと思われます。不活化ワクチンについては、例年有効率が報告され、効果が確認されています。
 2017/18年の流行シーズンに向けて予防接種が各地で始まっています。全国的な流行が始まる前にワクチンを打っておくことで高い効果が期待できます。まだ打っていない方はぜひ検討してください。
(執筆者:大脇 幸志郎)


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外国人旅行者による麻疹感染が全国に拡大中

2017年10月22日 11時24分24秒 | 小児科診療
 麻疹に感染した外国人旅行者が全国にウイルスをばらまいています。
 医師会経由でも注意喚起のFAXが届きました。
 関連記事を2つ紹介します。

■ 広域で麻疹患者が発生するリスクが高まる〜感染研、麻疹発生で医療機関に注意喚起
2017/10/14:日経メディカル
 国立感染症研究所は10月13日、広域で麻疹患者が発生するリスクが高まっているとして医療機関に向けた注意喚起を発表した。10月6~9日にかけて、富山県と宮城県で確認された麻疹患者が感染可能期間中、国内を広範囲に移動していたことを受けたもの。
 それによると、10月6~9日にかけて、富山県と宮城県から、麻疹症例が感染可能期間中に国内を広範囲に移動していたことが発表さた。また、これらの事例とは別に、9月下旬に麻疹患者の発生が関東地方・中部地方の複数の自治体から感染症発生動向調査(NESID)に報告された。
 感染研は、これらの麻疹患者の発症日は9月中旬から10月上旬と報告されていることから、「既に感染が広域に拡大している可能性がある」と指摘。医療機関に対して、発熱・カタル症状・発疹などの症状を認めて受診した症例には麻疹である可能性も考慮し、渡航歴や旅行歴、さらには麻疹を含んだワクチン接種歴を問診するよう求めている。
 また、医療機関側の対応としては、職員らを対象に、麻疹を含むワクチンの接種歴や麻疹罹患歴を確認し、発症予防を徹底すべきとしている。症状から麻疹が疑われる患者には、医療機関に事前に電話をした上で医療機関の指示に従って受診するよう指導することも求めている。

図1 麻疹症例が感染可能期間中に滞在したと報告された地域(国立感染症研究所の発表資料から)



■ 13都府県に麻しんが広まった可能性 国立感染症研究所、広域感染への注意喚起を呼びかけ
2017/10/21:J-CAST
2017年10月13日、国立感染症研究所は、10月6~9日に富山、宮城で相次いで発表された麻しん(はしか)患者が感染可能期間中に国内を広範囲に移動していたことが確認され、広域で麻疹患者が発生するリスクが高まっていることから医療機関へ向けて注意喚起を発表した。
日本旅行で全国各地を移動
国立感染症研究所の注意喚起によると、富山県で10月5日に20代の外国籍女性が体調不良を訴え市内の医療機関を受診。麻しんと診断され、翌日に受けたウイルス検査で陽性となり確定した。
女性が麻しんと確定した時点で保健所が女性に行動自粛要請を伝え、宿泊施設で経過観察を続けながら静養している状態だったという。
しかし、その後の調査でこの女性に同行していた女性も9月23日、宮城県に滞在中発熱や咳など麻しんの初期症状らしき症状が表れていたことが判明。症状は自然に消失していたものの、ウイルス検査を行ったところやはり麻しんを発症していたことがわかった。
宮城・富山両県が女性らに聞き取りを行った結果、9月13日に入国後、宮城、仙台、青森、群馬、東京(渋谷区,千代田区,荒川区、大田区、江東区)、埼玉、静岡、新潟、愛知、奈良、京都、福井と広範囲を乗用車で移動していたことを確認。
群馬以降の各地は、麻しんの感染力が最も高まると考えられる初期症状が出てからの数日間で移動しており、感染症研究所はすでに感染が広域に拡大している可能性があると判断。
医療機関に対し、発熱などの症状を訴える患者が訪れた場合は麻しんである可能性も考慮し、ワクチン接種の有無や渡航歴などを詳細に確認するよう呼びかけている。
麻しんの感染力は極めて強く、空気・飛沫・接触感染などの経路から、どれだけ広い場所でも同じ空間にいるだけで感染するリスクがある。ただし、予防接種を2回受けている場合、高い確率で感染は予防可能だ。


<参考>
最近報告された麻疹患者に関する医療機関への注意喚起(2017.10.12:国立感染症研究所)


 先週のNHK「すくすく子育て」は予防接種特集でした。
 お母さん・お父さんから疑問・質問噴出。

・なぜたくさんワクチンを受けなければいけないのか?
・副反応が心配で受けさせるかどうか夫婦げんかになる。
・任意接種はうけなくていいの?
・同時接種は危険かなと心配。
・注射で泣き叫んだ記憶がトラウマにならない?

 などなど。
 予防接種のみならず、病気の基本的知識がないんだなあとあらためて感じました。
 副反応についてはネット検索しても、病気そのものの検索はしないのだろうか?

 こんな記事も見つけました。参考になります。

■ どちらが危険?予防接種を受けるvs受けないリスク
2017年10月20日 All About:清益 功浩
 ワクチンでの訴訟や死亡事故の報道を目にすることもありますが、ワクチンに関する正しい知識をできる限り冷静に得ることが大切です。予防接種を受けるリスクと受けないリスクについて解説します。
◇予防接種副作用での訴訟や死亡事故…ワクチン接種は危険?
 2011年3月、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンを含む予防接種後の死亡例が報告され、ワクチン接種が一時中止されました(2017年現在はすでに再開されています)。ワクチンとの明確な因果関係は認められないという結論が発表されましたが、これから予防接種を予定されている方は不安を感じるかもしれません。これから予定している予防接種は受けずに、病気になってしまった場合に考えよう、という方もいるかもしれません。
 ワクチンを受けるべきか、やめるべきか、冷静な判断ができるよう、ワクチンの副作用と、ワクチンを受ける意味、ワクチンを受けない場合のリスクについて、基本的なことを理解しておきましょう。

◇予防接種を受けないリスク…病気感染による後遺症・死亡例
 まず、「ワクチンを受けない」という選択についてですが、これは医療者としては非常に感染するリスク、感染させるリスク、感染して重症化したり、重篤な後遺症を残すリスクを無視した考えではないかと感じます。
 以前問題になった「Hibワクチン」ですが、定期接種がスタートする前は、毎年600人の子供がHibによる髄膜炎になっており、死亡する子供は約15人、発達の遅れなどの後遺症が残った子供が150人発生していました。
 フィンランドの報告によると、Hibワクチンを接種した約97000人の子供にHibによる全身の重症感染症が起きた例は0でした。Hibワクチンを接種していない子供のうち、42人がHibによる全身の重症感染症になると推定されています。
 また、アメリカのデータでは、肺炎球菌ワクチンによって、肺炎球菌による重症例である侵襲性肺炎球菌感染症の年間発症率が平均95.2例/10万人から平均 22.6例/10万人と約4分の1に減少しました。ワクチン接種が感染リスクを下げている事は確かです。髄膜炎に罹ってからの発見が遅いと、死亡率も後遺症を残す率も上がってしまいます。そして、髄膜炎の早期発見は簡単ではありません。
 副作用のリスクを理解することはもちろん大切ですが、受けるリスクと同じように、受けなかった場合のリスクの高さを冷静に考えなければなりません。
 もちろん、ワクチンは医薬品で、他の薬と同じように、副作用・副反応を完全に0にすることはできないという事実は知っておかなくてはなりません。100%予防効果があり、副作用リスクがゼロのワクチンがあれば理想ですが、副作用の確率がごくごくわずかなワクチンであっても、多くの人に接種すれば個々人で反応が異なる可能性は残ります。薬がすべての人に同じだけ効くとは限らないように、全人類の体質に同じように適した万能のワクチンというのもないのです。

◇ワクチンの副作用・副反応は? 予防接種のリスク
 予防接種後の副作用として多いのはワクチンによって異なりますが、多いのは接種部位の腫れや赤くなったり、しこりができたりすることです。不活化ワクチンの方が腫れやすくなります。全身症状としては、発熱、不機嫌、眠くなるなどの副作用が見られます。

<接種部位の腫れ >
Hib   肺炎球菌   初回DPT  2回目以降DPT  
44%   70~80%    5%    30~40%
<接種部位のしこり>
Hib   肺炎球菌   初回DPT  2回目以降DPT  
18%  60~70%    20%    30~40%
<発熱>         
Hib   肺炎球菌   初回DPT  2回目以降DPT  
2.5%  20%前後    1%      4%

 Hibワクチンや肺炎球菌ワクチンの日本での治験の段階では重篤な副作用で接種を中止した例は見られませんでした。また、頻度が不明ですが、アナフィラキシーというアレルギー反応が過剰に起こって、蕁麻疹、喘息、呼吸困難などの症状は命に関わることもあり、要注意な反応です。
 アメリカでは肺炎球菌ワクチン接種後に117名の死亡がありましたが、90%はワクチンとの因果関係はなく、10%は不明で、現在もワクチンは継続されるために、肺炎球菌による侵襲性肺炎球菌感染症の発症は低いままです。
 平成23年3月8日時点の報告では、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンを含む接種後の死亡例においては、基礎疾患を有する例が3例、基礎疾患を有しない例が2例、明確な因果関係は無いと推定されています。基礎疾患を有する子供がHibや肺炎球菌に感染すると、重症化する可能性があります。

◇そもそも「何のために予防接種を受けるのか」?
 予防接種とは、その名の通り、病気を予防するために行う医療行為です。主に深刻な感染症予防のために行われ、感染症にかかるリスクを大幅に下げることを目的としています。
 細菌やウイルス、カビなどが体に侵入すると、例えば、肺に入ると炎症を起こし、呼吸をしにくくしたり、髄膜に侵入すると、痙攣を起こして、脳へのダメージが起こり、体が正常に機能しなくなってしまいます。ヒトからヒトに感染する病原体をワクチンを使わず野放しにすることは、社会的にも非常に大きなリスクなのです。
 感染力や罹患率、致命率が高い天然痘を例として挙げると、世界保健機構(WHO)では1958 年世界天然痘根絶計画が立てられました。その当時、世界で発生数は推定で約2,000 万人、死亡数は400万人でした。ワクチンの接種率を上げるとともに、天然痘の患者を見つけ出し、患者周辺に天然痘ワクチン(種痘)を行って天然痘を封じ込めることで、1977年ソマリアにおける患者発生を最後に地球上から天然痘はなくなり、その後、1980年5月にWHOは天然痘の世界根絶宣言をしました。
 ワクチンによって、病原体を無くすことができるのです。

◇予防接種を受けない人が増えると大流行のリスクもあがる
 天然痘や麻疹、風疹、おたふく風邪など治療薬がない病気に罹った場合、病原体に対して自分の免疫力だけで抵抗しなくてはなりません。予防接種では、弱めた病原体の全部または一部を体に入れて、免疫細胞に記憶させます。病原体を一度少しだけ侵入させることで免疫がつき、その病気に罹りにくくなります。また、病原体の感染力や病気を起こす力を弱めているため、安心して使用出来るようになってはいるものの、生ワクチンであるため軽い症状を起こすこともあります。
 もちろん、細菌に対する抗生物質はありますが、最近では抗生剤が効かない細菌も増えているため、ワクチンがより大切になってくるのです。
 感染症の中でも、一緒にいるだけで感染する感染症は、大流行しやすく危険です。麻疹の場合は空気感染しますので、1人が発症すると周りの10人が感染、インフルエンザの場合は飛沫感染しますので、1人から2~3人に感染すると言われています。このような病原体の場合は、自分だけでなく、周りへの影響を減らすためにもワクチンが大切なのです。

◇病気別に見る予防接種を受けなかった場合に発生するリスク
 ここまで読まれても、「周りのためにも大切と言われても、ごく稀であれ死亡リスクがあるものをわざわざ受けるなんて!」と考える人もいるでしょう。それではさらにいくつかの具体的な例を見ながら、「予防接種を受けなかった場合」におきうるリスクを考えてみましょう。

◇麻疹感染による死亡・後遺症
 感染力の強い麻疹(はしか)は、間質性肺炎などによる死亡率も高い病気です。しかも、麻疹ウイルスによっておこる「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」になると、麻疹ウイルスが持続して脳に感染し、数年以上経ってから発症し、徐々に脳炎が進行して神経症状が悪化し、最後は数年で死亡してしまいます。SSPEに一度罹ると、有効な治療方法はなく、進行を完全に止めることはできません。SSPEは自然に麻疹に罹ると10万に1人起こりますが、一方、最近の研究で、麻疹ワクチンの副作用ではSSPEは発生していません。
 MRワクチンを受けなかった場合、麻疹について言えば、まだ接種率の悪い1950年頃から2001年までは数十万人の発生と数千人が麻疹で死亡していました。しかしワクチンの接種率が良くなったこともあり、2003年頃より数万人の発生と数十人の死亡があり、現在、2回接種を行うようになったことで、麻疹の患者そのものの発生を1000人以下にすることができました。さらに発生率を減らすためには接種率は95%以上を保つ必要があると言われています。
 それに、自分が麻疹になると、周りにも麻疹ウイルスをばら撒いてしまいます。社会的な大流行を防ぐためにもワクチンは大切なのです。もし麻疹に感染してSSPEになった時、「ワクチンをするのはイヤだったから仕方がない」と運命を受け止められるのでしょうか?

◇ムンプス難聴(おたふく風邪による難聴)
 おたふくかぜによる難聴もおたふくかぜに罹った1000人に1人起こってしまい、一旦難聴になると治りにくいので問題になっています。現在任意接種のために接種率が悪く、毎年のように多くの患者が発生し、全国3000医療機関による実数だけで20万人発生していますので、実際におたふくかぜ患者はその数倍あって、その数に比例して難聴患者も増えています。

◇日本脳炎によるてんかんや発達の遅れなどの後遺症
 日本脳炎1960年代半ばまでは毎年数千人の患者がありましたが、ワクチンの普及とともに減少し、現在は年間数人の患者発生を見るだけとなりました。脳炎になってしまうと治療方法がなく、感染者の実に50%にてんかんや発達の遅れなどの後遺症が残ってしまいます。
 もし、この世の中にワクチンが1つもなければ、感染症による死亡率はかなりの数になっていたと推定されています。さらに深刻な後遺症が残る可能性まで含まれると、ワクチン接種で多くの人の命が救われ、後遺症などの苦しみを避けることができていると分かると思います。
 伊達政宗が右目を失明した天然痘は、ワクチンのおかげで撲滅できた病気のひとつです。誰も感染する人がいないため、今は天然痘ワクチンを受ける人はいません。逆に、病原体が存在する以上はワクチンによる予防が大切なのです。

◇問題が指摘されていたポリオ生ワクチンも不活化ワクチンに
 ただし、やむをえない副作用のリスクを超えて、問題が指摘されたワクチンも過去にはありました。ポリオ生ワクチンの接種です。生ワクチンを接種することで、450万人に1人がポリオを発症してしまっていたのです。ポリオの生ワクチンは2011年まで行われていましたが、自然のポリオ発症が見られない国でポリオ生ワクチンを使っている国は日本ぐらいでした。
 2011年時点では、ワクチンによるポリオ発症の危険を負いたくないからと、ポリオワクチンを受けないのも危険でした。周りの人がポリオ生ワクチンを受けた際に、その便を介してワクチンのポリオが毒性を持った状態で感染し、ポリオを発症してしまう可能性があったためです。2012年9月に不活化ワクチンが登場し、現在は生ワクチンは中止され、不活化ワクチンのみになりました。
 ワクチンに対する過剰反応によって、ワクチン後進国のままになってしまうことは避けなければなりません。

◇◇◇まとめ:ワクチン接種の意味と行政の行方◇◇◇
 最後にもう一度、ワクチンの役割をまとめてみましょう。

<自分も周りも守るために必要なワクチン>
 MRワクチン、水痘ワクチン、おたふく風邪ワクチン、BCG、ポリオワクチン、インフルエンザワクチンなど

<自分を守り、ある程度周りも守るために必要なワクチン>
 Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンなど

<感染リスクは低いが自分自身を守るために必要なワクチン>
 日本脳炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、A型肝炎ワクチンなど

 副作用の少ないワクチンを、任意接種ではなく全て定期接種で行っていくのが、ワクチン接種の最終的な理想形でしょう。そして、ごく少数とはいえ、起きうる万が一の副作用に対しては手厚い基金を作り、速やかに広く救済する制度も求められます。定期接種での副作用の救済ですら、非常に時間がかかってしまっているのが現状なのです。
 そして、副作用などの情報をしっかりと公開し、接種する側もワクチンについての正しい知識をできる限り冷静に得ること。ワクチンの必要性は一人一人が考えていかなければならない問題なのです。
 最後に、私は小児科医として日々ワクチン接種も含めた小児対応を行っておりますが、自分の子供にはその当時できるワクチンはすべてしてきました。余談ですが、3種混合ワクチンの集団接種会場で水痘に感染してしまったため、水痘ワクチンだけはしていません。医師としての経験も含め、私自身は親として子供の病気を防ぐことができるなら、できる時にしてあげたいと考えています。
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ヒルドイドの功罪-3

2017年10月19日 06時15分35秒 | 小児科診療
 とうとう皮膚科学会も声明を発表しました。
 今後「治療目的ではなく予防目的なら保険適応にならない」という考えのもと、保険外しされそうな雰囲気です。

■ 皮膚科用薬が美容アイテムに!? 一般誌で紹介された美容目的の処方に対する問題
2017年10月17日:メディカル・トリビューン
 医療用ヘパリン類似物質製剤(商品名ヒルドイト、ヒルドイトソフト)が美容アイテムとして雑誌やウェブで紹介され、「乾燥肌(皮脂欠乏症)」などを訴えて皮膚科で同製剤を処方してもらうケースが問題となっている。これに対し、日本皮膚科学会は10月16日に公式サイトで適正処方を呼びかけた。この問題については、健康保険組合連合会(以下、健保連)が10月6日に政策提言を行っている。

医師に処方してもらう方法を説明する記事も
 ヘパリン類似物質製剤は、血行促進と皮膚の保湿の作用を有する皮膚科用薬で、血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結ならびに疼痛)、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎などに用いられている。
 しかし、一般向けの雑誌やウェブでは、同製剤を美容アイテムとして使用する目的で入手することを勧める記事や処方してもらうための手順を紹介する記事が掲載されているという。

健保連が保湿剤処方の適正化で政策提言
 健保連が取りまとめた2014年10月~16年9月の医科および調剤レセプトデータの分析結果によると、保湿剤のみの処方額は男性で約11億円、女性はそのおおよそ1.5倍に当たる約17億円であった。年代別に見ると、25~54歳の処方額は男性が1.2億円であるのに対し、女性はその5倍の5.9億円であったという。
 こうした保湿剤の処方をめぐる問題に対し、健保連は10月6日に保湿剤処方の適正化に関する下記の政策提言を発表した。

①皮膚乾燥症に対しヘパリン類似物質または白色ワセリンなどの保湿剤が、他の皮膚科用薬や抗ヒスタミン薬と同時に処方されていない場合は、保湿剤を保険適用から除外する
②一般用医薬品の流通状況などを踏まえ、保湿剤そのものを保険適用外とすることも検討すべき


 また、上記の政策を施行した場合に削減が見込まれる医療費についても言及。それによると、①は年間約93億円減、②では年間約1,200億円減と推計されるという。  
 日本皮膚科学会は、健保連の政策提言に対する見解を会理事会で検討中とし、同学会会員に対しては引き続きヒルドイトなどの医療用ヘパリン類似物質製剤の適正処方に努めるよう呼びかけている。
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インフルエンザワクチン2017、数不足の他にも心配なことが・・・

2017年10月17日 06時44分39秒 | 小児科診療
 小児医療の現場では毎年インフルエンザワクチンに振り回されることは慣れっこになっています。
 今年は早くも「ワクチン不足」が話題になり、国も「13歳以上は1回接種を!」と喧伝しています。
 当院では2シーズン前からすでに「3歳以上は条件付で1回接種も可能です」と減回数接種を呼びかけてきました。

 さて、今シーズンの問題はワクチン不足だけではなさそうです。
 ワクチン株を変更したため、有効率の低下も懸念される事態となりました。
 その内容とは?
 日経メディカルの記事から引用させていただきます;

■ 不足だけでないインフルエンザワクチンへの懸念
2017/10/16:日経メディカル
 生産が例年より遅れ、供給不足の恐れが指摘されている今シーズンのインフルエンザワクチンに、新たな懸念事項が浮上している。
 今冬は、仮にAH3亜型ウイルスが流行した場合、ワクチン株と流行株との抗原性の合致度が良好でないことから、ワクチンの効果が十分に発揮されない可能性がある。厚生労働省はAH3亜型についても有効率は期待できるというデータを示しているが、医療現場ではAH3亜型でワクチンが効きにくいという最悪のシナリオも想定した準備が求められている。
 インフルエンザワクチンは、感染予防に加えて重症化予防にも欠かせない。2015/16シーズンからはカバー範囲が広がり、近年流行しているA型(A/H3N2、A/H1N1pdm2009)とB型(ビクトリア系統、山形系統)の4種類のウイルスに対する予防効果が期待されている。しかし今年は、AH3亜型において、ワクチン株と流行が予想される株との間で抗原性の一致度が低いというハンディを背負っている。
 インフルエンザワクチンは、鶏卵で増やすという工程をたどる。このため、ウイルスが卵の中で増える段階で抗原性が変化してしまう「鶏卵馴化による抗原変異」という問題が生じる。つまり、ワクチンの基になったインフルエンザウイルス株と、実際に流行する可能性が高いウイルス株の間で抗原性が一致していたとしても、ワクチン製造の過程で抗原性が変化することがあるのだ。
 これまでも度々、ワクチン製造用のインフルエンザウイルスが発育鶏卵に馴化するという難題に直面してきた。例えば、2012/13シーズンにAH3亜型が流行したときは、ワクチンに選定した株と実際に流行した株で抗原性の一致率は高かったものの、製造したワクチン株と流行株との一致率は低下していた。つまり製造過程において、ワクチン株が馴化という洗礼を受け、その抗原性が低下してしまっていた
 実は昨シーズンも「鶏卵馴化による抗原変異」が起こり、流行株と抗原性が乖離するという傾向が認められた。流行したウイルス(分離株)の9割以上が、ワクチン製造株に対する抗血清との反応性が低下しており、ワクチン株と流行株の抗原性が相違していのだ(図1)。

図1 2016/17シーズン流行株のワクチン株抗血清との反応性(感染研「インフルエンザウイルス流行株抗原性解析と遺伝子系統樹、2016年12月28日」より
 医療現場では、このような情報が早期に発信されることを歓迎している。ワクチン防御に代わる対策を、いち早く打ち出すことができるからだ。では、今シーズンはどうなるのか。
 
生産量確保を優先、AH3亜型の反応低下懸念は残ったまま
 通常、ワクチン株の選定過程は、厚生労働省健康局長が国立感染症研究所長にインフルエンザワクチン製造株の検討を依頼することから始まる。感染研は、所長の私的諮問機関である「インフルエンザワクチン株選定のための検討会議」の議論を踏まえて製造株を選定し健康局長に回答。これを受けて、健康局長が製造株決定の通知を出している。 
 今シーズンの選定では、AH3亜型に対応するワクチン株は当初、馴化の影響を受けにくい株である「A/埼玉/103/2014(CEXP-002)」が選ばれていた。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会の資料によると、A/埼玉/103/2014(CEXP-002)は「卵馴化による抗原変異の影響が小さく、約60%の流行株と抗原性が類似していた」という。
 ところが6月になって、この株の増殖効率が想定より著しく悪いことが判明した。A/埼玉/103/2014(CEXP-002)を選定した時点では、昨年度比で「約84%のタンパク収量」だったものが、実際の製造過程において約33%程度と大幅に低下していた。このまま製造を進めると、ワクチン総生産量自体が低下し、昨年度比で約71%程度にとどまるというリスクが浮上した。
 生産量を確保できなければ希望してもワクチンが接種できない人が相当数発生すると見込まれ、社会的な混乱を生じる可能性がある。このため急きょ、A/香港/4801/2014(X-263)株に切り替えられた。AH3亜型に対する反応低下の懸念は残ったままだが、AH1pdm09亜型、B型のビクトリア系統と山形系統のそれぞれのウイルスには効果が見込めることから、このような決断に至ったと理解できる。この点は、当然の判断と受け止める人は多いだろう。
 加えて、厚労省が示した「ワクチンの有効性・安全性の臨床評価とVPDの疾病負荷に関する疫学研究」(研究代表者:医療法人相生会臨床疫学研究センターの廣田良夫氏)によると、AH3亜型が流行ウイルスの主流だった2016/17シーズンでは、ワクチン株と流行株の抗原性の合致度が良好でなかったものの、6歳未満の有効率は約41%だった。
 流行株の9割以上でワクチン株との反応性が低下していたにもかかわらず、6歳未満での有効率は約41%だったという事実をどう受け止めたらよいのだろうか。
 問題は、ワクチン株と流行株の抗原性合致度と、実際の有効率の間に一定の関連性が見られないということだろう。米疾病対策センター(CDC)のデータを見ても、合致度が良好でないときの有効率は19%から42%と幅がある。
 では、医療の現場はどのような対応を考えておかなければならないのだろうか。
 インフルエンザワクチンの接種を呼び掛ける際や接種時には、AH3亜型が流行した場合にワクチンの効果が十分でない可能性についての説明は必須になるのではないだろうか。加えて、これはなにもAH3亜型の流行に限ったことではないが、ワクチン以外の予防策の徹底を求めることも忘れてはならないだろう。
 その上で、仮にAH3亜型が流行した場合、ワクチン接種者であっても重症化する症例が出てくるという最悪のシナリオを想定し、その対応を考えておくべきだろう。
 今シーズンの流行株がどうなるかだが、現時点では混合感染の様相を示している。感染研がまとめているインフルエンザウイルス分離・検出報告数(10月6日、速報値)を見ると、検出されたウイルスはAH3亜型が10件、AH1pdm09亜型が20件、B型(山形系統)が8件だった。A型では今のところAH1pdm09亜型が多くなっている。しかし、地域別で見るとAH3亜型のみが検出されている自治体もあり、現段階ではどちらが流行の主流となるかは見通せない状況だ。
 AH3亜型にはワクチンが効きにくいというハンディを負って迎えた今シーズンは、例年以上に地域の流行株を注視する必要がある。

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40年間で10倍に増えた子どもの肥満(WHO発表)

2017年10月14日 08時23分35秒 | 小児科診療
 大人だけではなく子どもの肥満も社会問題化してきました。
 記事の中で原因とされている「低栄養で高カロリーな安価な食品」とはなんでしょうか?
 ハッキリ書いてありませんが、内容は「糖質=炭水化物」に間違いありません。

■ 子どもの肥満、40年で10倍に WHO発表
(2017年10月13日:朝日新聞デジタル)
 世界保健機関(WHO)は11日、世界の肥満の子ども(5~19歳)の人口が過去40年間で10倍に増え、1億2400万人に達したとする推計を発表した。特に低中所得の途上国で急増しており、低栄養で高カロリーな安価な食品に頼りがちな食生活が影響しているなどと分析している。
 英医学誌ランセット電子版に論文が掲載された。WHOによると、5~19歳の肥満の割合は、1975年に男女とも1%未満(500万~600万人)だったのに対し、2016年には男子約8%(7400万人)、女子約6%(5千万人)になった。肥満までいかない「太りすぎ」の男女も2億人以上いた。
 肥満の割合が特に高かったのは、太平洋の島国ナウルやクック諸島で3割を超えた。先進国では米国が高く約2割を占めた。日本は男女とも割合が少なく、特に女子は2%以下で、ベトナムやインドなどと並ぶ最も少ない国の一つだった。
 WHOのフィオナ・ブル博士は「世界的な危機だ。大胆な対策に乗り出さなければ数年以内によりひどくなる恐れがある」と各国に対応を呼びかけている。
 推計は、世界200カ国・地域で行われた2416件の健康調査(計約1億3千万人を対象)などから、5~19歳の男女約3千万人分の身長と体重などのデータを抽出。欧州や東アジアといった地域や、英語を話す高所得国(豪州、カナダ、英国、米国など)など各国を21グループに分類し、それぞれ肥満の指標となるBMI(体格指数)の平均を求めて比較した。
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今年はなぜか早いインフルエンザ流行2017

2017年10月14日 08時14分20秒 | 小児科診療
 インフルエンザ関連記事を紹介します。
 今シーズン、現時点で検出されているのはA型で、H3(香港型)>H1(パンデミック2009型の末裔)だそうです。

■ インフル流行、今年はなぜ早い?ワクチン効果や変異は?
(2017年10月13日:朝日新聞)より抜粋
 全国各地で早くもインフルエンザの患者が増えている。9月から学年・学級閉鎖が首都圏などで相次ぎ、すでに17都府県に上る。外国との人の行き来、温暖化などさまざまな要因が考えられるが、専門家は予防策として手洗いやうがい、ふだんの体調管理といった「基本動作」を挙げる。
 例年、国内では気温が上がる夏になると患者がゼロに近づく。だが全国約5千の定点医療機関の患者数は8月上旬が昨年の10倍の約1千人、9月上旬が3倍以上の約900人だった。アジア各地でも夏に流行し、香港では7月にピークが来た香港衛生防護センターによると5~8月に18歳以上の579人が重症化し、うち429人が死亡世界保健機関(WHO)によると、タイやミャンマー、フィリピンなどでも夏に異例の流行があった
 感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「流行地を旅行した人がウイルスを国内に持ち帰った可能性もある」と指摘。熱帯地域で湿度の高い雨期に流行することがあり、「国内でも気候変動の影響で夏に流行しているのでは」とみる研究者もいる。
 8月にインフルエンザ脳症で亡くなった女児の一家は全員が昨年10~11月に予防接種を受けていた。だが、国立感染症研究所によるとワクチン効果が高いとされる期間は約5カ月間。ワクチンは流行が始まる秋に向け、春ごろに専門家が流行するウイルスの型を予想し、メーカーが鶏卵で培養して数カ月かけて作る。このため、夏から初秋はワクチンの効果が落ちる「谷間」の時期でもある。
 夏に流行したウイルスには複数の型があり、香港やタイで流行していたのは主にH3N2型、フィリピンやミャンマーではH1N1型。国立感染症研究所によると国内で9月以降に分析されたウイルス46個のうちH1N1型が20、H3N2型は10だったという。東京大学医科学研究所の河岡義裕教授は「今のところインフルエンザウイルスに大きな変異は見つかっていない。なぜ季節外れの流行が起きているのかわからない」と話す。
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小児科学会から「新生児のインフルエンザ」に新対応案

2017年10月06日 11時47分18秒 | 小児科診療
 従来、タミフルは1歳未満には使用できませんでしたが、2017年3月に生後2週以降の乳児に公知申請という形式で保険適用となりました。
 それを踏まえ、日本小児科学会と日本新生児成育医学会が新生児のインフルエンザ診療対応案を公表した、という記事を紹介します。
 医師向けなので、ちょっとわかりにくですね。
 ポイントは、

・インフルエンザと診断されれば、生後2週間からタミフルを使用可能、ただし早期産児や低出生体重児(罹患時2500g未満)の児は対象外。
・タミフル予防投与は適応外。
・妊婦へのインフルエンザワクチンを推奨

でしょうか。

■ 新生児のインフルエンザに新対応案 〜日本小児科学会・日本新生児成育医学会
2017年10月05日:メディカル・トリビューン
 日本小児科学会は日本新生児成育医学会と共同で、10月2日に新生児に対する新しいインフルエンザ対応案を公表した。新型インフルエンザが世界的に流行した2009年と2010年にも対応案を公表したが、日本では母子感染による重症化例はなく、その後も大きな問題は見られなかった。しかし、前回の提言から一定期間が過ぎたこと、オセルタミビルの新生児に対する適応が承認されたことを受け、今回改訂されることになった。
◇ 新生児に対する予防的投与は原則行わない
今回のインフルエンザにおける新生児への対応案の要点は次の3点。

1.正期産児(妊娠37~41週で出生)またはそれに準じる早産児の出生直後の母子同室は妨げず、飛沫・接触感染に十分注意を払う。
2.今年(2017年)3月、公知申請によって新生児、乳児に対するオセルタミビルの治療的投与が承認された。しかし、低出生体重児または生後2週未満の新生児への投与経験が得られていないため、投与する場合は副作用に十分注意する。
3.新生児へのオセルタミビルの予防的投与の有効性は明らかでないため、原則として行わない方針を継続する。

 
◇ インフルエンザの症状がない新生児―母子同室は妨げない
 今回の具体的な対応策として、「インフルエンザの症状がない新生児(正期産児とそれに準じる対応が可能な早産児)」と「インフルエンザを疑う症状がある新生児(同)」に分けて示している。
 前者のうち、母親が妊娠~分娩8日以前までにインフルエンザを発症し、治癒後に出生した場合は通常の新生児管理を行う。一方、母親が分娩前7日~分娩までに発症した場合については他の母子と隔離するが、飛沫・接触感染予防を講じていれば母子同室を妨げないとした。また新生児に対するオセルタミビルの予防投与は推奨されない。
 母親が分娩後~退院までにインフルエンザを発症した場合は、カンガルーケアや直接授乳などを介して、児と濃厚接触がある。しかしその場合でも母子同室の継続は妨げず、個室に移動して飛沫・接触感染を予防し、児は保育器に収容したり、母児間で十分な距離を取るなどの予防措置を行う。この場合も児にオセルタミビルの予防投与は行わない。
 母親の発症状況や児への感染曝露の程度から、児への厳格な管理が必要と判断された場合は、管理が可能な施設に移送する。

◇ インフルエンザを疑う症状がある新生児―直ちに検査診断を
 一方、インフルエンザを疑う症状がある新生児では直ちに検査診断を行うが、新生児では同様の症状を呈する他の疾患の可能性もあるため、鑑別に努めるとした。 インフルエンザ陽性と判定された児については、オセルタミビルによる治療(3mg/kgを1日2回、5日間内服)を考慮する。ただし今年、新たに承認された同薬の対象は、生後2週以降の新生児・乳児である。そのため、使用経験がない生後2週間未満または体重2,500g未満の新生児に投与する際は、下痢や嘔吐などの消化器症状をはじめとする副作用に十分注意する。

◇ 原則、直接母乳を与えてもよい
 母親がインフルエンザを発症しても、重症な場合を除き、マスク・清潔ガウンの着用、手洗いの厳守により原則、直接母乳を与えてもよいとしている。また、母親が抗インフルエンザ薬で治療中であっても授乳は可能だが、搾母乳または直接母乳とするかは、母親の状態を見て判断する。

◇ 妊婦へのワクチン接種を推奨
 妊娠中期以降にインフルエンザを発症した母親では早産となることがある。切迫早産の徴候がある妊婦でインフルエンザを発症した場合については、周産期管理を行う施設への搬送を考慮する。
 なお両学会は、妊娠中のインフルエンザ発症による早産や新生児への感染を防ぐため、妊婦に対しインフルエンザワクチンの接種を勧めている。
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