5〜11歳の小児への新型コロナワクチン接種が始まりました。
希望者は想定より少ないようです。
TVで街行く父母にインタビューしていました。
「オミクロン株への効果があるのかどうか」
「自分が副反応でつらかったので子どもがかわいそう」
等々、定番の疑問・不安に混じって、
「将来、どんな副反応が出るのか不安」
という意見もありました。
どの疑問・不安もごもっともです。
この中で、今回は「将来出るかもしれない長期的副反応」についてコメントさせていただきます。
新型コロナウイルスが登場して2年が経過しました。
WHOによりパンデミック認定され、
世界各国で医療崩壊を起こし、
死者はすでに500万人を越えています。
日本も例外ではなく、
感染対策を遵守する国民性から他国より被害は少ないものの、
医療逼迫から非常事態宣言やマンボーという施策をとらざるを得ず、
どう見ても、季節性インフルエンザの比ではありません。
それに対抗する武器として、現時点ではワクチンが最強です。
従来の他のワクチンと比較して、
“高い有効率と強い副反応”が特徴の mRNA ワクチン。
新たなワクチンですから、
当然、“長期的副反応”は不明です。
しかし新型コロナウイルス事態が新参者ですから、
当然、“長期的後遺症”も不明です。
インフルエンザと異なるところは、
単なる“呼吸器感染症”ではないこと。
新型コロナウイルスはその入り口が「ACE受容体」であり、
それがある臓器にダメージを与えます。
そしてACE受容体のある臓器はたくさんあるのでやっかいです。
今わかっているだけでも、
・味覚・嗅覚障害
・ブレインフォグ
・脱毛
は有名です。
最近、それ以外の“長期的後遺症”の報告も相次いでいます。
まずは「精神疾患罹患率が増える」という報告。
PCR陽性者78万人を罹患後1年間フォローした解析では、
あらゆる精神障害の新規診断のリスクは36倍に上ります。
各疾患の発症リスクは、
・不安障害:11倍
・うつ病性障害:15倍
・ストレス障害:13倍
・適応障害:13倍
・認知機能低下:11倍
・睡眠障害:24倍
と、すごい数字。
外見上わからないけど、
こころを病んでつらい生活を強いられる人たちが増えるということですね。
■ COVID-19罹患者では精神疾患発症率が増加診断から1年後の各種疾患発症率を対照群と比較した大規模コホート研究
大西 淳子=医学ジャーナリスト
米国VA Saint Louis Health Care SystemのYan Xie氏らは、退役軍人局(VA)のnational healthcare databaseを利用して、急性期を乗り越えた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が1年後までに各種の精神疾患を発症するリスクを対照群と比較する大規模コホート研究を行い、同時期にVAの医療機関を受診した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)非感染対照群や、パンデミック前にVAの医療機関を受診した対照群に比べ、各種精神疾患の発症リスクが増加していたと報告した。結果は2022年2月16日BMJ誌電子版に掲載された。
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同時期対照群と比較すると、COVID-19群では、不安障害の発症リスクが増加していた。ハザード比は1.35(95%信頼区間1.30-1.39)、1000人・年当たりのリスク差は11.06(9.64-12.53)だった。うつ病性障害のハザード比は1.39(1.34-1.43)、リスク差は15.12(13.38-16.91)、ストレス障害と適応障害のハザード比は1.38(1.34-1.43)で、リスク差は13.29(11.71-14.92)と有意であった。
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以上を合わせて分析したところ、あらゆる精神障害の新規診断のハザード比は1.46(1.40-1.52)、リスク差は36.48(31.93-41.19)、あらゆる精神障害関連治療薬の新規処方のハザード比は1.86(1.78-1.95)、リスク差は47.60(43.26-52.12)で、それらを合わせたハザード比は1.60(155-1.66)、リスク差は64.38(58.90-70.01)になった。
高齢者が重症化しやすいのが新型コロナの特徴ですが、
当然、後遺症も問題になります。
■ 新型コロナ感染の高齢者、32%が後遺症を発症/BMJ
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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した65歳以上の高齢者は、急性期後に診療を要する持続的または新規の後遺症のリスクが高いことが、米国・Optum LabsのKen Cohen氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、示された。後遺症は、呼吸不全、認知症、ウイルス感染後疲労を除くと、高齢者のウイルス性下気道疾患の後遺症と類似していたが、SARS-CoV-2感染後は、重要な後遺症が多岐にわたって発生することが明らかになったという。著者は、「後遺症のリスクは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した人で高いことが明らかで、いくつかの後遺症のリスクは男性、黒人、75歳以上で高かった。
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SARS-CoV-2感染が診断された65歳以上の高齢者のうち、32%(87,337例中27,698例)が急性期後に持続的/新規後遺症のために医療機関を受診し、これは2020年群(非感染群)と比較して11%高かった。
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呼吸不全(リスク差:7.55)、疲労(5.66)、高血圧(4.43)、記憶障害(2.63)、腎障害(2.59)、精神的診断(2.50)、凝固能亢進(1.47)、心調律異常(2.19)は、2020年群(非感染群)と比較してリスク差が大きい結果が得られた。
下記の報告を読むと、男性は恐くなってきますね。
新型コロナウイルス感染は、動物実験で雄の生殖器を傷つける・・・。
■ 新型コロナによる雄生殖器の損傷、サルやハムスターで確認
William A. Haseltine , CONTRIBUTOR
新型コロナウイルスはサルやハムスターの雄の生殖器に感染し、損傷を引き起こすという有力な証拠を示した査読前論文が、このほど相次いで発表された。新型コロナウイルスに感染した男性の一部に精巣痛や生殖能力の低下、精液中のウイルス残存などがみられる理由の解明につながる成果だ。ワクチン接種によって雄生殖器の損傷を予防できることも、初期段階の結果ながら確認された。
香港の研究チームは、鼻腔内投与または精巣への直接注入によってウイルスに感染させたハムスターで、精巣へのダメージが確認されるかを調べた。ウイルスは初期の新型コロナウイルスの分離株「HK-13」のほか、変異株「ベータ」と「オミクロン」の各分離株を用いた。その結果、これらの分離株はいずれも、病理学的にわずかな違いはあるものの精巣の損傷を引き起こすことが確認された。
以上、徐々に明らかになってきた新型コロナ感染症の後遺症の一端を紹介しました。
これからも自然感染による“長期的後遺症”がどんどん報告されてくると思われます。
ワクチン接種を迷っている方へ、
私が繰り返していつも言うセリフ;
・免疫をつけるために、ウイルス全部を体に入れる自然感染より、ウイルスの一部を体に入れるワクチンの方が、基本的にダメージが少ない。
・自然感染をワクチンに例えると、最強(免疫が強力)であるが最悪(重症化・後遺症のリスク大)のワクチンです。自然感染は「有効率最高のワクチンですよ」としてウイルスそのものを注射するのと同じこと。