みんな嫌いなインフルエンザ迅速検査。
鼻をグリグリ綿棒でこするので痛い痛い。
当院ではかんだ鼻水で検査できるキットも用意しているので、小学生以上でどうしてもいやな患者さんはそれを使用しています。
ただ、インフルエンザ初期は鼻水があまり出ていないことが多く、少ないと感度が落ちるのが難点。
さて、今や普及しまくって当たり前のインフルエンザ迅速検査ですが、病院・医院受診が必須です。
ところが「将来は自宅でインフルエンザ診断ができる日が来る」という記事が流れました。
唾液あるいは鼻かみ液を使用し、スマホで診断する方法です。
あれ? この記事は2017年だ・・・2018年にも記事が出回った記憶があるけど、見つかりません(^^;)。
■ スマホでインフルエンザを1分診断――迅速診断チップが検査を変える。
(HEALTHCARE Biz:2017.03.17 Fri.) 「チップとスマートフォンで、どこでも、だれでも、簡単に」――近い将来、インフルエンザ検査が自宅で手軽に、しかもたったの1分でできるかもしれない。
そんな次世代の診断チップの開発に向け、昨年6月に創業されたデジタルヘルスのスタートアップがナノティス(東京都渋谷区)だ。H27年度のインフルエンザ推定患者数は1,601万人※1。国民の約12%がかかっているという社会的な疾病に着目した、画期的な取り組みを紹介する。
◇ 大人でも激痛。時間もかかる。それなのに感染初期には判定不能。現状のインフルエンザ迅速診断キットの問題点
現在のインフルエンザ検査の主流は、A型・B型・C型ウィルスの判別が可能な「迅速診断キット」。長いめん棒を鼻やのどの奥に入れて粘膜を採取し、ウィルスの有無を判定。こするときの痛みは強く、大人でもつらく、ましてや子どもでは大泣きする子も多い。粘膜採取後も、高熱でぐったりしながら待合室で15分ほど待機してようやく結果を聞くという流れだ。
この検査法の問題点としては、
・患者側→痛み、検査結果が出るまでの待ち時間
・病院側→検査前後における二度の診療、患者の待ち時間による院内の混雑および感染の拡大
・双方→感染初期では反応しないことがあり、発症後12~24時間が望ましいとされる
などが挙げられる。高熱が出てすぐに病院に行ったけれど陰性、翌日あらためて通院した、なんて話はちらほら聞かれる。
◇ インフルエンザの自宅検査を可能にする東京大学の実力派メンバー
ナノティスの開発目標とするコンセプトは、現状の迅速診断キットの問題点を解決してくれる画期的なものだ。想定される使い方もとてもシンプル。
1.ナノティスに体液(鼻かみ液、将来的には唾液等も想定)をのせ
2.スマートフォンで撮影すると
3.1分以内に診断結果が表示!
チップは使い捨てで衛生的。スマホとチップさえあれば自宅で簡単にインフルエンザを検査できるという仕組みだ。まさに即時検査のイノベーションと言っていいだろう。
技術についてはすでに2016年8月に米国特許仮出願を完了。共同研究のパートナーはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)研究の第一人者、東京大学生産技術研究所の藤田博之研究室と、同じく東京大学大学院工学系研究科、化学生命工学専攻で遺伝子工学やタンパク質工学、酵素工学などの研究をリードする長棟輝行研究室だ。
MEMSは車のエアバッグ制御やスマートフォンに使用されているマイクロサイズの微小電気機械システムだ。バイオ・医療分野においてはDNAやタンパク質を解析するバイオチップや、操作性などに限界があるとされるカテーテルや内視鏡の機能向上など、スマートマイクロセンシングチップとしての応用が期待されている。
特筆すべきは大量生産が可能なこと。微細加工技術やチップ製造プロセスを応用した技術のため安価に量産化でき、常温保管で有効期限も長いため、一般社会への普及が大いに見込まれる。
医療面でのサポートは米国在住の医療機器専門の医師からアドバイスを得るほか、顧問にテルモ株式会社顧問/日本医療機器産業連合会会長の中尾浩治氏を迎えるなど、医療機器開発のエキスパートたちから支援を受けている。
代表取締役CEOの坂下理紗氏の経歴も興味深い。東京大学大学院理学研究科修士課程、東京理科大学理学部物理学科では量子コンピューター構築のための理論研究に従事。大学院修了後は投資銀行業務や外資系金融機関に勤務ののち、コンサルタントとして独立。直近では技術マッチングサービスのスタートアップ、リンカーズ株式会社に参画し、執行役員営業統括本部長を務めた。同社として在日仏商工会議所2016年度フレンチビジネス大賞審査員特別賞を受賞するなど、テクノロジーにもビジネスにもフィールドを持つ国際派だ。
このような実力者がそろったスタートアップは頼もしく、第2回バイエル薬品「Grants4Apps」注)(2016年12月)では大賞を受賞している。
昨シーズンでは国民の約12%がかかったというインフルエンザ。今シーズンのインフルエンザ抗原検出キット(迅速タイプ)の供給予定量は約2,733万回分とされる※1。
インフルエンザをはじめアデノウィルスやノロウィルスといったウィルス検出のPOC(Point Of Care)検査市場は2018年に1,062億円の予想※2。
世界のリキッドバイオプシー(血液や尿、リンパ液など人間の体液に含まれる成分を手軽かつ精密に検査する手法)市場は2020年には45億米ドルに達すると予測され、年平均で約22%の成長が見込まれている※3。
どの数字をみても、ナノティスが着目したマーケットはビジネスにおいて有利なことが予想される。
現在は製品としての開発段階。日本国内では規制の壁があり、今後のソリューションは検討中とのこと。実現されたならば、個人はドラッグストア、ネット通販等でナノティスを購入、疾患を自分で即時診断。通院することなく薬の処方まで行われる仕組みができたなら、体力的にも費用的にもどんなに負担が減るだろうか。
病院や医療機関においても即時診療が可能となり、遠隔診療や蓄積されたデータ解析により、効果的な医療・研究が行われていくだろう。
「今後の方向性としては考えているのは2つ。まずは日本でのインフルエンザ診断に活用されることを目標とし、その後、アメリカをはじめ先進国に普及していきたい。もう1つはインフルエンザウィルス以外のノロウィルスやジカ熱、危険度の高いHIVやエボラ熱ウィルス診断への応用。新興国や発展途上国など、医療が発達しておらず、電源がないような地域でも使えるナノティスの技術についてフィールドワークを行っていきたい」(坂下氏)。
40兆円を超える医療費高騰に歯止めをかけ、インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)への備えも期待される。それだけにとどまらず、あらゆるウィルス性疾患への技術展開により、世界が抱える感染症対策に活用される未来を望んでいる。
※1:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/
※2:https://www.fuji-keizai.co.jp/market/15005.html
※3:Liquid Biopsy Research Tools, Services and Diagnostics: Global Markets http://www.spi-information.com/report/12249.html
なるほど、なるほど。
ただ、自宅で診断可能となると、“ズル”をする輩が出てくるのは間違いありません。
一度陽性に出たキットを何回も医療機関に持ち込んで薬を処方してもらい、それを転売してもうけるとか・・・。
医療用IDカードですべての医療機関の受診歴がすぐにわかるシステムを構築してからでないと、これは防げませんね。
まあ、便利なものには何らかのリスクがつきものですから。