コロナ禍以前、欧米ではマスクをする習慣はありませんでした。
マスクをしているのは顔を見られてはマズイ“犯罪者”というイメージなんだそうです。
これは、欧米ではその人の表情を「口」で捉え、
日本人のように「目」で捉えるのではない、という背景もあります。
・・・口が見えていないと安心できないんだそうです。
日本ではサングラスをしていると“怪しい人”と捉えますが、
欧米ではマスクをしていると“怪しい人”になるのですね。
日本の「目は口ほどにものを言う」という格言は、
欧米では通用しないのです。
まあ、文化の違いです。
さて、コロナ禍が去りつつある現在、欧米では、
“マスクは犯罪の隠れ蓑になる”という思想に戻ってきたようです。
私事ですが、思い起こせば40年前の学生時代、
大学校内でアジ演説をしていた学生運動の人たちは、
「サングラスにマスク」という出で立ちでしたね。
あ、ヘルメットもかぶっていたなあ。
さて、アメリカの各州で「マスク禁止条例」が検討されている、
という記事が目に留まりました。
またトランプ大統領の奇抜な発想・・・と思いきや、
民主党知事が推進しているとのこと。
頻発する学生のデモに歯止めをかけたい、
という考えのようです。
しかしコロナ禍で明らかになったように、マスクが必要な人も一定数存在します。
感覚過敏の神経発達症児、
持病があり免疫力が低下している人、等々。
それらの人たちの人権も守られてしかるべき。
この議論、どのような方向に向かうのか注視する必要があります。
▢ マスク着用は犯罪に──米国で進む着用禁止の動き
Omer Awan | Contributor
近年、特に新型コロナウイルスのパンデミックを通じて、感染拡大の予防などマスクの重要性が広く認識されるようになった。しかし米国では今、多くの自治体でマスク着用を犯罪行為とする法律の制定が検討されている。その背景には、大学をはじめとする公共の場での「暴動」──学生デモなどの頻発がある。
ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事(民主党)が推し進めているのは、マスクを着用して他者の安全を脅かす行為を刑事罰の対象とする法案だ。健康上や業務上、また天候などの理由がある場合は例外とされる。テキサス州の上院議員もマスク着用を禁止し、嫌がらせや脅迫、威嚇などにマスクを使用した者を罰する法案を提出。ノースカロライナ州やニューヨーク州ナッソー郡など他の多くの自治体も、同様の理由ですでにマスク着用を禁止している。
もちろん公共の安全を守ることは重要だが、法律でマスク着用を禁止することは公衆衛生上のリスクとなる可能性がある。マスクは万能ではないものの、さまざな科学的データにより、呼吸器感染症の感染および蔓延を抑制する効果が証明されている。マスク着用の目的は、会話や咳、くしゃみなどで吐き出される感染性粒子をブロックすることだ。それゆえパンデミック中はマスクの着用が推奨、あるいは義務付けられた。
マスクには大気汚染による有害な化学物質や粒子状物質(灰、すすなど)の吸入を防ぐ役割もある。そのため、とりわけ山火事など煤煙被害が深刻な場合の着用が推奨される。山火事で放出される粒子状物質や刺激物質は肺の中にとどまり、喘息や閉塞性肺疾患などの慢性疾患を引き起こす可能性があるが、マスクをつけることで有害な微粒子の多くをブロックできる。
重ねて言うが、感染症の拡大を防ぐ手段としてのマスクの有効性は多くの研究結果によって裏付けられている。研究室での実験と、医療現場での検証の両面において、ウイルスを含む感染性粒子の伝播を抑制する効果が示されているのだ。CDC(米国疾病対策センター)の見解は以下の通り。
• 感染者がマスクを着用することで、ウイルスの飛散を低減できる
• 非感染者はマスクを着用することで、空気中の感染性粒子を吸い込むリスクを低減できる
マスク着用を禁止する法律は「健康上の理由がある人」を例外の1つとしているが、実際に「例外」を見極めるのは難しい。法律上、警察が市民に宗教や健康状態について尋ねることができるのは、該当する犯罪に関連するときだけだ。見た目での判断が難しいマスク禁止法は、免疫力の低下など健康上の理由で着用している人を不利益な状況に追い込む。外出時に知らない人から着用の理由を聞かれたり、マスクを外すよう命じられたりするのは不快な体験だ。そもそも着用の理由を聞くことは、HIPAA法(個人情報保護に関する法律)で規定されたプライバシーの侵害にあたる。「免疫力が低下した人」とは化学療法を受けているがん患者、ステロイドを服用中の人、臓器移植を受けた人、慢性疾患を抱えている人などであり、私たちが想像する以上に多く存在することを忘れてはならない。
マスク着用が法律で広く禁止されると、こうした人々が逮捕の不安から外出を控えるようになるなど、社会的に孤立する可能性がある。レストランなどでは、マスク着用者の入店拒否を行うところも出てくるかもしれない。マスク着用の禁止は、社会で最も弱い立場にある人々への不当な偏見と差別を生み出す危険性をはらんでいる。
マスク着用禁止を求める政治家には、デモに参加した学生の特定などではなく、真に犯罪を撲滅したいという思いがあるのかもしれない。しかし法律というものは人々のさまざまな事情を広く鑑み、国民全体の幸福を前提に制定されなければならない。マスク着用を法律で禁止することは、何より致死率の高い感染症の広がりを抑制するというマスクの重要な役割を無視している。科学や公衆衛生まで政争の具となっている現在、米国はすべての国民の幸福のために戦うリーダーを必要としている。
「Mask Together America(マスク・トゥギャザー・アメリカ)」の創設者であり、自由なマスク着用の権利をうったえるジュリー・ラムは言う。「私は今、服用している治療薬の副作用で免疫力が低下しています。そして今、他の病気に感染すれば入院する事態も避けられないと主治医に忠告されています。私はマスクを着用して抗議活動を行っていますが、それはマスク着用の自由を訴えるためだけではありません。政府による公衆衛生予算の大幅削減に反対し、みんなで声を上げようと呼びかけているのです」