徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

卵アレルギーとインフルエンザワクチン、再確認

2014年09月30日 15時17分43秒 | 小児科診療
 よく話題になる「卵アレルギー患者にインフルエンザワクチンは接種可能か?」という疑問。
 結論から言うと「卵を食べたときにアナフィラキシーの危険がなければ可」となります。

 インフルエンザワクチンは鶏卵を使用して作られます。その後の製造過程で精製され、卵由来たんぱく成分はほとんど除去されますがゼロにはなりません。
 一方、重症の卵アレルギー患者では微量の卵成分が体に入ってもアナフィラキシー(前項参照)を起こすことがあります。
 実際に卵由来たんぱくを測定すると日本のインフルエンザワクチンでは数ng/mL以下、一方、アナフィラキシーを起こす量は600ng/接種量以上とされています。
 つまり、日本のワクチンは理論的には安全であり、注意喚起しているのは「念のため」あるいは「石橋を叩いて渡る」というわけです。

※ ちなみにアメリカのワクチンでは数百ng/mLと日本より含有量が多いそうです。アメリカでのルールは「ワクチン中の卵白アルブミン濃度が0.7μg/0.5mL以下を許容値としているが、アナフィラキシーを生じない安全な値は不明である。卵アレルギーの方ワクチン液によるプリックテストを実施し、分割接種する方法もあるが、プリックテストは精度が低い」とのこと。

 悩ましいのが「検査で卵アレルギーと診断され完全除去しているため、食べたときにどんな症状が出るかわからない」乳幼児。
 離乳食開始前の乳児期にアトピー性皮膚炎と診断され、食物アレルギーをチェックしたところ血液検査で卵陽性、ではしばらくの間除去しましょう、というパターンですね。
 おそらく食べても強いアレルギー反応は起こらないことがほとんどと思われますが、なにぶん食べたことがないので何が起こるか予測不能。「想定外」の現象まで考慮すると、安全とは言えません。

 このような例に対して、私は以下のように対応しています;
 1歳過ぎ→ 卵除去を解除するよう指導しています(ただしアナフィラキシー経験例は除く)。食べてもじんましんなどの皮膚症状だけの場合は、ふつうに接種しています。
 1歳前→ 除去解除にはまだ早いため、アナフィラキシーが起きても対応可能な病院レベルでの接種をお勧めし、紹介状を書いています。
 以前は皮膚テストを行っていましたが、この検査は偽陽性あるいは偽陰性反応を呈することが多く信頼性に欠けるため、やめてしまいました。

 なお、食物アレルギーとしての卵アレルギーのない漠然としたアレルギー体質(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、じんましんなど)は接種不適当者にはなりません。
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インフルエンザワクチンの副反応、基本を再確認

2014年09月30日 08時13分26秒 | 小児科診療
 再びインフルエンザワクチンの話に戻ります。
 まずは基本に戻ってインフルエンザワクチンの副反応を確認;

副反応】(厚生労働省HPのQ&A、「予防接種ガイドライン」より)
局所症状(発赤、腫脹、疼痛など)・・・10~20%にみられますが通常2~3日で消失。
全身症状(発熱、頭痛、悪寒、倦怠感)・・・5~10%にみられますが通常2~3日で消失。
過敏症:まれに接種直後から数日中に、発疹、じんましん、紅斑、掻痒などが現れることがあります。
ショック、アナフィラキシー様症状:まれにみられるので接種後30分間程度は接種した医療機関内で安静にすることが推奨されます。 
 ほかにまれながらギラン・バレー症候群、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の報告もあります。


 下線部の「接種後30分間程度は接種した医療機関内で安静にする」は守られていないことが散見されます。アナフィラキシーを一度でも経験すると、怖くて守るようになるのですが・・・。

アナフィラキシー:接種後30分以内に以下の症状が出現
・全身皮膚症状:じんましん、掻痒感、紅斑、皮膚の発赤など
・消化器症状:胃痛、吐き気、嘔吐、下痢など
・眼症状:視覚異常、視野狭窄など
・呼吸器症状:嗄声、鼻閉塞、くしゃみ、咽喉頭の掻痒感、胸部の絞扼感、犬吠様咳嗽、呼吸困難、喘鳴、チアノーゼ
・循環器症状:頻脈、不整脈、血圧低下
・神経症状:不安、恐怖感、意識の混濁


副反応への対処法
 接種局所の熱感や発赤が強いときには、局所の冷湿布を行います。硬結は次第に小さくなりますが、1ヶ月後でもなお残る場合があります(放置してかまいません)。
 接種後に発熱した際は、ほかの原因による発熱の可能性を除外後、発熱時の一般的処置として、冷却、アセトアミノフェンなどの解熱剤を投与します。


副反応が見られた場合の再接種について
 これまでの接種で発赤や腫脹などの局所反応、全身倦怠感、頭痛が認められた対象者への再接種は可能です。
 前回接種で局所反応が出現した場合、次回からはなるべく深く皮下接種します。


 ちなみに、インフルエンザワクチンは日本では皮下注射ですが、欧米では筋肉注射です。
 筋肉注射は痛そうなイメージがありますが、正しく行うと皮下注射より痛くないそうです。さらに、筋肉注射は局所反応(発赤・腫脹など)がほとんど発生しないという大きなメリットがあります。
 早く世界標準にしてほしいものです。

チメロサールについて>
 チメロサールを含有するワクチンの接種によって、接種後に局所の過敏反応が生じる可能性があります。
 以前、チメロサールと発達障害との因果関係が指摘されて話題になりましたが、最近の疫学研究では関連性は示されておりません。アメリカでは接種可能としており、WHOでも「ワクチンに含まれる微量なチメロサールと神経系副反応の因果関係を見いだすことは困難」とコメントしています。


 参考までに、インフルエンザワクチン接種後の副反応報告基準を提示します。
 (事象・症状)   (症状発現までの時間)
 アナフィラキシー     4時間(24時間)
 肝機能障害        28日(28日)
 間質性肺炎        28日(ー)
 急性散在性脳脊髄炎    28日(21日)
 ギラン・バレー症候群   28日(21日)
 けいれん         7日(7日)
 血管炎          28日(ー)
 血小板減少性紫斑病    28日(28日)
 喘息発作         24時間(ー)
 ネフローゼ症候群     28日(ー)
 脳炎・脳症        28日(ー)
 皮膚粘膜目症候群     28日(ー)

※ ( )内は改正前の数字、(ー)は記載なし
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リレンザの有効性、最新の評価は?

2014年09月26日 18時19分21秒 | 小児科診療
 こちらもBMJ掲載論文から。
 リレンザ使用例より対症療法の方が有効という報告もあり、なんだかパッとしない結果です。
 タミフルと比較すると、悪心/嘔吐の副作用がないことが異なります。まあ、吸入製剤なので当たり前かな。

 日本では流行期に熱が出たら早めに医療機関を受診して迅速診断陽性なら抗インフルエンザ薬を処方してもらう、というシステムができあがっていますが、これは世界の常識とは異なるようですね。

ザナミビルは症状を軽減、臨床的意義には疑問
 ~症状軽減効果は対症薬の方が高い、メタアナリシスの結果
(2014/5/2:日経メディカル)
※ 下線は私が引きました。

 ザナミビルに関する全ての臨床試験の完全なデータを用いたシステマティックレビューとメタアナリシスの結果、治療目的での投与では症状軽減までの時間を短縮し、予防投与では症候性インフルエンザの発症リスクを低減するものの、それらの利益が臨床的に意義のあるレベルかどうかについては疑問が呈された。英Oxford大学のCarl J Heneghan氏らが、BMJ誌電子版に2014年4月9日に報告した。

 成人を対象とする治療目的の試験では、プラセボに比べてザナミビルは、インフルエンザ様疾患の症状軽減までの時間を0.60日(95%信頼区間 0.39-0.81、P<0.001、I2=9%)短縮していた。小児ではこの利益は有意ではなかった(平均差は-1.08、-2.32から0.15)。
 症状軽減までの時間は、ザナミビルのみを用いたグループよりも、症状を抑える何らかの薬剤をサナミビルと併用したグループで短く、その差は最大で2.5日だった。また、プラセボと症状を抑える薬剤を併用したグループと、ザナミビルのみを用いたグループを比較すると、前者の方が全般的に症状軽減までの時間は短かった。

 ザナミビル投与では、成人患者の診断未確定の肺炎リスクは減少せず(リスク差0.17%、-0.73から0.70)、放射線学的に確認された肺炎のリスク低減効果も示されなかった(-0.06%、-6.56から2.11)。加えて、小児の肺炎にも有意な影響は見られなかった(0.56%、-1.64から1.04)。
 成人と小児の中耳炎、副鼻腔炎に有意な影響は見られず、成人の気管支炎リスクは少ないながらも有意に低下(1.80%、0.65-2.80)したが、小児の気管支炎リスクへの影響は有意ではなかった。成人、小児ともに、入院への影響を評価するために必要なデータは得られなかった。

 予防目的の試験では、ザナミビル投与により症候性インフルエンザが有意に減少(1.98%、0.98-2.54)、罹患率は3.26%から1.27%に低下した。1件の症候性インフルエンザを予防するための利益に対する治療必要数(NNTB)は51(40-103)だった。曝露後の世帯を予防対象とした研究でも症候性インフルエンザの発症は有意に減少(14.84%、12.18-16.55、NNTBは7、6-9)していたが、この結果は2件の小規模研究(計824人を登録)のデータに基づくものだった。
 一方で、抗体価は上昇しているものの症状のない無症候性インフルエンザの予防には有意な影響を示さなかった(リスク差0.14%、-1.10から1.10)、曝露世帯を対象とする研究でもリスク差は1.32%(-2.20から3.84)と有意差を認めなかった。
 予防投与により、成人における未確定肺炎リスクは低下した(0.32%、0.09-0.41、NNTBは311、244-1086)が、小児の肺炎と、成人・小児の気管支炎、副鼻腔炎に対する影響は有意ではなかった。

 ザナミビルの忍容性は高かった。成人では悪心や嘔吐などのリスク上昇は見られず、小児の有害事象報告もわずかで、リスク上昇は認められなかった。また、成人に対する予防投与、治療目的のいずれも、重篤な有害事象または治療中止を引き起こす有害事象に有意差はなかった。小児については、この分析を行うために必要なデータは得られなかった。

 ザナミビルは、成人患者の症状軽減までの時間を半日強短縮(オセルタミビルと同程度)するが、その利益は症状軽減に用いられる他の薬剤より小さいことが示唆された。著者らは、「有害事象はほとんど見られなかったのは、生体内利用率が低いことが理由ではないか」と述べている。

 原題は「Zanamivir for influenza in adults and children: systematic review of clinical study reports and summary of regulatory comments」、全文は、BMJ誌のWebサイトで閲覧できる。
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タミフルの有効性、最新の評価は?

2014年09月26日 18時09分41秒 | 小児科診療
 イギリスの権威ある医学誌BMJに掲載された論文から。
 発熱期間を短縮するというデータの一方で、短縮しないという報告も存在し、有効と評価されていません。
 悪心/嘔吐などの副作用のリスクは無視できない、気になる「異常行動」はデータ不足で判定不能とのこと。

オセルタミビルの広範な使用を支持せず
 ~全臨床試験データを対象としたコクランレビューの結果
(2014/5/1:日経メディカル)
※ 下線は私が引きました。

 成人と小児のインフルエンザに対するオセルタミビルの有効性と安全性を、関連する全臨床試験の完全な情報を得て分析したところ、投与の利益は大きくなく、複数の有害事象が発生し得ることなどが示された。イタリアのコクラン急性呼吸器感染症グループのTom Jefferson氏らが、BMJ誌電子版に2014年4月9日に報告した。

 成人を対象とする治療目的の試験では、オセルタミビルはプラセボに比べて、症状軽減までの時間を16.7時間(95%信頼区間8.4-25.1、P<0.001)短縮していた。インフルエンザ以外に健康上の問題がない小児を対象とした1件では、症状軽減までの時間は29時間(12-47、P=0.001)短縮されていた。しかし、基礎疾患として喘息を有する小児を登録した3件では症状軽減までの時間に有意差はなかった(P=0.53)。
 治療目的の試験では、成人の入院に対する有意な影響は見られなかった(リスク差0.15%、-0.91から0.78、P=0.84)。小児の入院については十分なデータがなかった。
 成人では、医師主導試験において診断基準が曖昧(未確定)な肺炎が減少したと報告されていた(リスク差1.00%、0.22-1.49、利益に対する治療必要数:NNTBは100、67-451)が、より厳格に肺炎を診断していた5件では、オセルタミビルの利益は有意ではなかった。肺炎の確定診断例について報告した試験はなかった。また、小児の未確定肺炎に対する影響は認められなかった。
 成人、小児ともに、オセルタミビル投与群による未確定の気管支炎や中耳炎、副鼻腔炎、重篤な合併症、脱落の原因となる合併症のリスクに有意な低減は認めなかった。

 成人ではオセルタミビル投与により、悪心リスクが上昇(リスク差3.66%、0.90-7.39、害に対する治療必要数;NNTHは28、14-112)、嘔吐リスクも上昇していた(4.56%、2.39-7.58、NNTHは22、14-42)。小児でも、嘔吐リスク(5.34%、1.75-10.29、NNTHは19、10-57)が有意に増加していた。
 一方、成人では下痢(2.33%、0.14-3.81、NNTBは43、27-709)や心血管イベント(0.68%、0.04-1.0、NNTBは148、101-2509)のリスクが低下していた。
 治療目的の試験では、治療中の精神医学的有害事象の発生率に有意差は認めなかったが、2件の主要な臨床試験データがオセルタミビルの精神面への影響に用量反応関係を示した。標準用量(75mg)に比べて150mgを1日2回投与した場合に、精神医学的有害事象リスクは上昇していた(P=0.038)。小児の精神医学的有害事象のリスクについては分析対象となるデータがなかった

 予防目的の試験は主に成人を対象に行われていた。オセルタミビルの予防投与により、症候性インフルエンザ確定例は減少した(リスク比0.45、0.30-0.67、リスク差3.05%、1.83-3.88、NNTBは33、26-55)が、抗体価は上昇するものの症状が出ないという無症候性インフルエンザ確定例には影響は見られず、オセルタミビルによる感染拡大の抑制効果を示した質の高い研究はなかった。
 予防目的の試験では、オセルタミビルは精神的な有害事象のリスクを高めていた。治療中と治療終了後の追跡期間を合わせると、リスク差は1.06%(0.07-2.76、NNTHは94、36-1538)だった。また、オセルタミビルは治療中の頭痛リスク(リスク差3.15%、0.88-5.78、NNTHは32、18-1150)と悪心リスク(4.15%、0.86-9.51、NNTHは25、11-116)を上昇させ、腎イベント(0.67%、-0.01から2.93)も増加させる傾向を示した。

 今回の解析では、予防目的のオセルタミビル投与は症候性インフルエンザを減少させ、治療目的での投与は症状軽減が見られるまでの時間に中等度の短縮をもたらすことが示された。一方、投与により、悪心・嘔吐、頭痛、神経症状などのリスクが上昇することも示された。

 著者らは、「今回得られた情報は、備蓄や日常診療での広範な使用に疑問を投げかけるものである。オセルタミビルをインフルエンザの治療や予防に使用したり、備蓄するかどうかを決める際には、利益と害のバランスを勘案すべきだ」と述べている。

 原題は「Oseltamivir for influenza in adults and children: systematic review of clinical study reports and summary of regulatory comments」、全文は、BMJ誌のWebサイトで閲覧できる。 
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人気の抗インフルエンザ薬「イナビル」に欠点はあるのか?

2014年09月23日 08時51分58秒 | 小児科診療
 抗インフルエンザ薬の中で、タミフルに次いで処方率が高いのがイナビル(一般名:ラニナミビル)です。

患者年齢別に見た「主に使う抗インフルエンザ薬」
(2014/7/11:日経メディカル)
 患者の年齢層別に見た「主に使う抗インフルエンザ薬」を見たところ、10歳未満はタミフルが第一位だったが、その他の年代ではすべてイナビルが第一位だった。日経メディカル Onlineのテーマサイト「インフルエンザ診療Next」が行った「2013/14シーズン・インフルエンザ治療レビュー調査」で明らかになった。




 1日吸入しただけで済む手軽さが受け入れやすいのでしょう。
 しかし、最近発表された有効率に関してのデータはあまり芳しくありません。

抗インフル薬イナビルの海外第Ⅱ相試験で臨床症状の有意な改善示せず 米Biota社が発表
(2014.8.4:MTPro)
 米biota社は8月1日,抗インフルエンザウイルス薬ラニナミビル(商品名イナビル)の臨床第Ⅱ相試験IGLOOの結果に関する速報を発表。海外12カ国,639例の患者をエントリーして行われた同試験で,主要評価項目のインフルエンザ症状の改善までの有意な短縮が認められなかったと述べた。同薬は日本国内で2010年10月から販売されている。


 ウイルス耐性はタミフル/ラピアクタで話題になっており、リレンザ/イナビルは耐性化しにくいとされてきましたが、今年は少ないながら検出され、安全とは言い切れなくなりました。

国内で初めて、二重耐性変異のH1N1pdm09ウイルスを検出
タミフルが約1万2000倍、ラピアクタが約5500倍、リレンザ・イナビルも約20倍の感受性低下
(2014/6/6:日経メディカル)
 日本国内で初めて、H275Y/I223R二重耐性変異を持つインフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルスが検出された。薬剤の感受性を調べたところ、タミフルが約1万2000倍、ラピアクタが約5500倍と感受性が大きく低下しており、リレンザ・イナビルでも約20倍の感受性低下を認めた。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターの高下恵美氏らが6月5日、発表した。
 2013/14シーズンに日本国内で確認された耐性ウイルスは、いずれもH275Y耐性変異を持つウイルスだった。これはタミフル、ラピアクタに耐性を示すが、リレンザやイナビルには感受性を保持していた。しかし、4月に広島で検出された耐性ウイルスは、H275Y耐性変異に加えてI223R耐性変異も持っており、タミフルとラピアクタに高い耐性を示す一方、リレンザとイナビルに対しても感受性が低下していた。
 感受性試験の結果、二重耐性ウイルスは、タミフルに対して約1万2000倍、ラピアクタに対して約5500倍と感受性が大きく低下していた。加えて、リレンザとイナビルに対しても約20倍の感受性低下が確認された。H275Y耐性変異だけを持つウイルスに比べると、タミフルで約50倍、ラピアクタで約70倍、リレンザとイナビルでも約15倍程度、感受性が低下していた。
 米国でも2009年に、自己免疫疾患のため免疫抑制剤による治療を受けていた10代の女児の検体から検出されている。しかし、それ以降、検出報告はなく、加えて「日本国内におけるH275Y/I223R二重耐性変異ウイルスの検出率も0.007%と極めて低い」ことから、高下氏らは「現時点ではこのウイルスが流行する可能性は低いと考えられる」との見解を示している。


 それから、1日吸入して終わりの薬ですが、翌日解熱するほど即効性はなく、熱が下がるまでの数日間はじっと待つことになります。効いているのか効いていないのかわからない待ち時間がもどかしい、それだったら毎日使用するリレンザの方が精神衛生上よろしい、という訴えもあるようです。

タミフル・リレンザ・イナビル、さぁどれっ?(2011.1.10:おねぇ系薬剤師の独り言)
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インフルエンザ“経鼻生ワクチン”の小児への効果

2014年09月23日 07時39分28秒 | 小児科診療
 何かと話題のインフルエンザ経鼻生ワクチン(現在日本で使われているのは不活化ワクチン)。
 2003年に米国で認可され、10年以上の安全な使用実績があり、2011年からは欧州でも認可されています。ただ、日本ではまだ無認可のワクチンなので個人的に輸入している医院でしか接種できません(当院では扱っておりません)。

 その効果は、Wikipedia によると、

 A型インフルエンザに対する、5歳未満児における発症予防効果は株一致で89.2%, 株不一致で79.2%と驚異的である(6か月~7歳では発症予防効果は83%)。

 と、不活化ワクチンと比べものにならないくらい優秀。
 ただし、注意すべきこととして不活化ワクチンと注意/禁忌事項が異なります;

注意事項
・接種可能年齢は制限される(2歳~49歳まで)
・5歳未満の喘鳴既往児や、喘息患者への投与は推奨されない。
・免疫不全患者には接種禁忌である。
・免疫不全者をケアする立場にいる介護者も接種不適である。
・妊婦への接種も不適である。
・長期アスピリン服用中の未成年者
・生ワクチンであるため、理論上、インフルエンザ様症状(熱、咳など)を発症する可能性はある(この場合抗インフルエンザ薬を服用すれば、速やかに治癒する)。

禁忌
・5歳未満で喘息のある場合
・成人で1年以内に喘鳴を認めた場合
・妊娠中(授乳中は問題なし)
・心疾患、肺疾患・喘息、肝疾患、糖尿病、貧血、神経系疾患、免疫不全などの慢性疾患を持つ場合
・造血幹細胞移植など、重度の免疫不全の方と接触する場合
・小児期や思春期で長期アスピリン内服中の場合
・重度の卵白アレルギー
・インフルエンザワクチン接種後にギラン・バレー症候群になった場合(原則)


 残念ながら2歳未満は接種対象から外れてしまうのですね。
 当院通院者に多い「喘鳴既往者」もダメですか・・・。

 気を取り直して、昨年行われたイギリスからの報告を紹介します。
 直接的な有効率ではなく“医療機関受診率の減少”で評価され、それが非接種地域の半分に抑制できたという内容;

小児への経鼻インフル生ワクチン一斉接種のインパクトが明らかに 英保健省などが発表
2014年6月9日:MTPro
 英イングランド保健サービス(PHE)は6月6日,英保健省の公式サイトで禁忌例を除く2~17歳の小児への経鼻インフルエンザ生ワクチン(LAIV)の試験的導入によるインフルエンザシーズンへのインパクトに関する発表を行った。英国では2013/14シーズンの大規模な流行はなかったが,LAIV一斉接種(universal vaccination)により,非接種地域に比べインフルエンザ様症状(ILI)罹患率の減少傾向などが確認されたと述べている。
 英国では2012年,予防接種とワクチンに関する専門委員会(JCVI)が政府に対し,2~17歳の小児に対しインフルエンザシーズン前のLAIVの一斉接種を推奨。現在,国内でのワクチン供給体制に合わせ,段階的導入が始まっている。
 今回,一斉接種の第一段階として,2013/14シーズンに2~3歳の全小児と7カ所の地域における4~11歳の小児への試験的(パイロット)導入による結果が発表された。
 PHEによると,今シーズン前のパイロット地域における対象年齢(4~11歳)の接種率は52.5%(19万9,475人中10万4,792人)。LAIVの禁忌を有する児には注射によるワクチン接種が実施された。
 今シーズン,英国ではインフルエンザの大流行はなく,統計学的有意差を示した結果は得られなかったものの,インフルエンザシーズン前のLAIV一斉接種により,パイロット地域で非パイロット地域に比べ,一般医や救急部門のILIによる受診率が40~66%減少するなど,良好なインパクトが見られた。
 PHEのRichard Pebody氏は,小児へのLAIV一斉接種導入1年目において,目標接種率の達成と良好なインパクトがもたらされたと評価。学校などでの一斉接種により,ほとんどのパイロット地域で高い接種率が達成できたことから,同システムの実現性も確認できたと述べている。
 PHEは今年のLAIV一斉接種を9月に2~4歳の全小児に行う他,パイロット地域の接種対象年齢を12歳までに引き上げ,導入地域を増やすことを明らかにしている。

※ 原文はこちら「Eurosurveillance 2014年6月5日オンライン版」。
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妊婦への“不活化”インフルエンザワクチンは赤ちゃんを守る

2014年09月23日 07時25分36秒 | 小児科診療
 インフルエンザワクチンは生後6ヶ月から許可されており、それ以前の乳児には接種できません。
 では赤ちゃんの感染予防はどうしたらよいかというと、赤ちゃんのいる家族は兄弟や親がワクチンを接種して家庭にインフルエンザを持ち込まないようにしましょう、と呼びかけています(これを「コクーン戦略」と言います)。

 そこで発想を転換し、お母さんとなる妊婦さんへワクチンを接種して、胎盤を介して赤ちゃんに免疫を付与しようという考え方が出てきました。
 この方法、「有効」です。

妊娠のfluワクチン、児にも効果
(2014年9月:m3.com ソース:NEJM)
文献:Madhi SA,et al.Influenza Vaccination of Pregnant Women and Protection of Their Infants.N Engl J Med. 2014 Sep 4;371(10):918-31.
 南アフリカで妊娠女性を対象に、三価不活化インフルエンザワクチン接種の有効性を2つのプラセボ対照試験(対象者2310人)で検討。接種1カ月後、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の有無に関わらず接種群の方がプラセボ群よりもインフルエンザ抗体価が1:40以上となる割合が高かった。新生児の抗体価も接種群より出生した児で高かった。


flu接種の妊婦、産児の死亡低い
(2013年2月7日 m3.com ソース:BMJ)
文献:Rubinstein F et al.Influenza A/H1N1 MF59 adjuvanted vaccine in pregnant women and adverse perinatal outcomes: multicentre study.BMJ 2013;346:f393.
 妊婦3万448人対象に、MF59アジュバント添加のA/H1N1インフルエンザワクチンの妊娠中接種と周産期有害事象の関連を多施設共同研究で検討。接種なしの妊婦に比べ、接種した妊婦で主要転帰(低出生体重児、早産、死産、新生児死亡)リスクが低かった(9.3%対7.0%、調整後オッズ比0.80)。母体の転帰に有意差はなかった。


妊婦fluワクチン、児にも効果
(2011年12月8日:m3.com ソース:Ann Intern Med )
文献:Tsatsaris V et al.Maternal Immune Response and Neonatal Seroprotection From a Single Dose of a Monovalent Nonadjuvanted 2009 Influenza A(H1N1) Vaccine: A Single-Group Trial.Ann Intern Med.2011;155:733-741.
 妊婦107人を対象に、単回接種した2009年型インフルエンザA(H1N1)非アジュバントワクチンの免疫原生と経胎盤移行を単一群試験で評価。インフルエンザ抗体価が1:40以上の妊婦の割合は、ワクチン接種後42日、出産時、出産後3カ月で98%、92%、90%だった。新生児88人の臍帯血の95%で抗体価が1:40以上あった。


 日本では「え?妊婦にワクチン?危なくないですか?」
 という反応が多いと思われます。
 日本産科婦人科学会が見解を公表しています;

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対してのインフルエンザに対する対応Q&A(平成22年12月22日)
Q2: 妊婦へのインフルエンザワクチン投与の際、どのような点に注意したらいいでしょうか?
A2: 妊婦へのインフルエンザワクチンに関しては安全性と有効性が証明されています。昨シーズンの新型インフルエンザワクチンに関しても、妊婦における重篤な副作用報告はありませんでした。チメロサール等の保存剤が含まれていても安全性に問題はないことが証明されています。


 というわけで、現在妊娠中でこれから生まれる赤ちゃんのインフルエンザ罹患が心配な方は、産婦人科主治医にご相談ください。

 はて、日本政府の見解はどうなのでしょう?
 厚生労働省の「インフルエンザQ&A」には妊婦に対するワクチン接種に対する言及はありません。「定期接種」ではないので自己責任でやってください、という相変わらずのスタンスです。
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現行の“不活化”インフルエンザワクチンの子どもへの有効性

2014年09月23日 06時58分51秒 | 小児科診療
 毎年9月になるとインフルエンザワクチンの予約が始まります。
 当院も9月中旬に開始し、結構埋まってきました。

 さて、インフルエンザワクチンは“発症予防”の有効率が低いことで有名です。
 健康成人では流行株と型が合えば50~70%有効、小児ではそれより劣り、幼児期では20~30%、乳児に関しては有意差がない、とされてきました。

乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について
-日本小児科学会見解-(2004年)
1) 1歳未満児については対象数が少なく、有効性を示す確証は認められなかった。
2) 1歳以上6歳未満児については、発熱を指標とした有効率は20-30%となり、接種の意義は認められた。


 私は開き直って、
 「効くんですか?」
 という質問に、
 「罹らないためではなく、重くならないためのワクチンと考えてください」
 と説明しています。

 実感としても報告論文から見ても、インフルエンザワクチンの学校集団接種がなくなってから「インフルエンザ性脳症」「老健施設での高齢者死亡増加」が社会問題化し、その後接種率が改善したらそのことが話題になる回数が減りました。

 “発症予防”としての有効率が低い一因として、小児では接種量が少ないことが以前から指摘されてきました。

 それが2011年にようやく世界と同じレベルに増量され、有効率改善が期待されました。そのタイミングで取られた日本のデータ記事を紹介します。接種量増量により幼児に対する有効率が20-30%から40-50%へ改善したという報告です(一部を抜粋。下線は私が引きました):

2012/13年シーズン、保育園児のインフルエンザワクチン有効率が向上
(2013/10/31:日経メディカル)
 2012/13年シーズンにおける保育園児のインフルエンザ罹患率は17.1%で例年より低く、ワクチン(2回接種)の有効率はA型38.5%、B型48.2%と例年より高かったことが示された。川崎市医師会保育園医部会が同市の保育園児約1万2000人の保護者を対象に行ったアンケート調査の成果で、同部会長の中島夏樹氏(川崎市・中島医院院長)が、第19回日本保育園保健学会で報告した。罹患率低下、有効率向上には、2011年秋より、特に3歳以上の小児に対するワクチン接種量が大幅に増やされたことが寄与している可能性を示唆した。
 9797人(82.5%)より得られた回答を集計した結果、まずインフルエンザに罹患した園児は17.1%で、2011/12年シーズンの罹患率34.1%の約2分の1に留まった。例年の20~25%に比べても低かった。また、罹患率は例年、3歳以上よりも4歳以上で明らかに高いが、2012/13年シーズンはほとんど差が見られなかった。
 迅速診断は、罹患した園児の94.9%が受けていた。結果はA型が罹患者の83.8%、B型が6.5%だった。
 ワクチン接種は71.8%(2回接種64.8%、1回接種7.0%)の園児が受けていた。ワクチン接種の有無別、回数別に見た罹患率は、未接種群ではA型19.7%、B型1.6%だったのに対して、1回接種群ではA型13.2%、B型1.6%、2回接種群ではA型12.1%、B型は0.9%と、ワクチン接種を受けた園児、特に2回接種の園児で低いことが分かった。A型では未接種群と1回接種群、2回接種群との間で、B型では未接種群と2回接種群との間で、それぞれ有意差が認められた(P<0.001)。
 以上のデータから算出した2012/13年シーズンのワクチン有効率は、A型の1回接種群で32.7%、2回接種群で38.6%、B型の1回接種群で2.4%、2回接種群で48.2%。特に2回接種群では、A型、B型とも高い有効率が得られた。2回接種群の有効率がA型29.6%、B型21.2%であった2011/12年シーズンに比べて明らかに高く、例年の有効率に比べてもやや高かった
 インフルエンザワクチンの1回接種量は2011年秋に、米国などの基準と統一された。保育園児の場合、従来は1歳未満0.1mL、1~5歳0.2mLだったのが、6カ月~2歳0.25mL、3歳以上0.5mLにそれぞれ増量された。このことから、中島氏は、2012/13年シーズンのワクチン有効率が高かった理由について「特に0.2mLから0.5mLへと大幅に増量された3歳以上の児でワクチンの有効性が高まったことによる可能性が考えられる」と推測した。


 以上のように、接種量増量により幼児に対する有効率が20-30%から40-50%へ改善し、ワクチンを勧める根拠に少し自信がつきました。
 しかしそれでも50%未満と満足すべき数字ではなく、皮下注射という方法の限界を示しています。
 海外に目を向けると、欧米では経鼻生ワクチンが導入されており、より高率の有効性を示しています(次項で扱います)。
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インフルエンザ対策として高性能空気清浄機は有効か?

2014年09月20日 06時44分39秒 | 小児科診療
 私の調べた範囲では「無効」のようです。

 10年以上前からアレルギー学会の「化学物質過敏症」のシンポジウム類を興味を持って聴講してきました。その中に空気清浄機の有効性の有無を検証する演題もありました。
 発表者曰く「“イオン発生”という名前がついた製品はおしなべて効果がない、単純なフィルター式の方がまし」。
 それ以来、私は「感染対策としての空気清浄機」を信用していません。

 しかし時代は「プラズマクラスター」とか「ナノイー粒子」とかよくわからない物質を放出する高性能空気清浄機を重用する方向へ。
 某市町村では「全小学校に高性能空気清浄機を導入」と喧伝しました。

子どもの感染を防げ 新型インフル 学校に空気清浄機を導入 群馬
(2009年10月5日:東京新聞)
 群馬県内でも学校での新型インフルエンザ集団感染が目立ち始めているが、ウイルスを破壊する効果があるとされる空気清浄機を学校に設置する動きが広がっている。メーカー担当者は「接触感染は防げないが、空気感染はかなりの確率で防げる」と効果を強調。学校側も「子どもの健康を守るためにありがたい話」と期待を寄せている。
 いち早く導入を決めた太田市で二日、小学校と特別支援学校の一年の全クラスにサンヨー製の空気清浄機が設置された。県衛生環境研究所(前橋市)との共同実験で、ウイルスの感染力を99%以上抑制することが確認された機種だ。
 同じ機能を持つ空気清浄機は、伊勢崎市が一日、保育所への設置を表明した。公立保育所は全保育室に、私立の認可保育所には各園に一台を無償貸与する計画で、八十台を十一月中に設置する計画だ。大泉町も保育園、幼稚園、小中学校、図書館など、子どもや高齢者が集まる三十三施設に約三百三十台を設置する予定だ。

■ (動画)新型インフルエンザから子どもを守る(平成21年10月、群馬県太田市)


 この動画内で有効物質とされている消毒薬「次亜塩素酸」に関する記事も紹介します;

インフルエンザ対策? 保育園で次亜塩素酸ナトリウム溶液を加湿器噴霧
誤った感染症対策は無意味なだけでなく危険

(2012/10/22:日経メディカル)
 医療機関や介護施設では、さまざまな感染症対策が施されているが、なかには的はずれだったり、逆に悪影響が懸念されるものもある。山口大学医学部附属病院薬剤部の尾家重治氏は、例えばインフルエンザ対策においては、感染経路として飛沫感染のみならず、近年関与が否定できないとされている空気感染(飛沫核感染)のリスクも考慮する必要はあるものの、空気中の噴霧消毒は意味がないだけでなく、危険であることを、第23回全国介護老人保健施設大会 美ら沖縄(ちゅらうちなぁ)(10月3~5日、開催地:沖縄県宜野湾市)の初日に行われた第6回老健医療研究会のシンポジウム「エビデンスに基づいた感染症対策」(座長:医療法人和香会・江澤和彦理事長)で指摘した。 
 医薬品、医療器材の微生物汚染とその対策や消毒薬、抗菌薬の抗菌効果と適正使用を専門とする尾家氏のもとには、感染症対策に関する多くの相談が持ち込まれる。シンポジウムでは、一部の相談事例が紹介された。
 ある保育園から相談されたのは、超音波加湿器による室内空気の噴霧消毒の是非。現場に行ってみると、強アルカリ性消毒薬の次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする哺乳瓶消毒剤の希釈溶液を超音波加湿器に入れ、園児のいる保育室空中に噴霧していた。理由は「インフルエンザ予防のため」。確かに、インフルエンザウイルスに対して次亜塩素酸ナトリウムは有効な消毒薬の1つだが「毒性を考えると、噴霧は非常に危険と思われ、すぐに止めてもらった」と尾家氏。「消毒剤と加湿器がセットになっている商品も売られているようだが、噴霧してどれほどの効果があるかは疑問だし、何より人体への悪影響が心配される。基本的に消毒剤の噴霧は望ましくない」と注意を呼びかけた。「もしインフルエンザ感染予防のために室内消毒するのであれば、次亜塩素酸ナトリウムと同じくインフルエンザウイルスに有効で、毒性は低い消毒用エタノールを使ってテーブルなどの上を清拭するのは効果があると思われる」とした。


 その翌年に「空気清浄機を導入してインフルエンザ患者が減ったのか教えて欲しい。多額の税金をつぎ込んで導入したのだから、検証・報告義務がある」と質問しましたがなしのつぶて。

 そんな中、昨年入手した「インフルエンザ診療ガイド 2013-14」(日本医事新報社)に空気清浄機を扱った項目を見つけました。一部を抜粋します;

・大手電機メーカーから出されている空中への特殊な物質の放出により“空中浮遊ウイルスの不活化や殺菌効果”を謳う電気製品は、既に一般家庭に限らず医療現場を含め、市中のさまざまな場に広くみられている。
 しかし、それらの有効性については企業側の一方的な説明があるだけで、まともで真に中立的、第三者的な検証報告はみあたらなかった。
 そこで筆者らは独自にそれらの客観的検証を開始し、これまで「プラズマクラスターイオン」なるものによる空中浮遊ウイルス・空中浮遊菌・環境付着細菌の抑制を謳う機器、ならびに「ナノイー粒子」なるもので同様の効果を謳う機器等について、実用的意義の有無を検証してきた。
 簡単に結論を言うと、空中浮遊インフルエンザウイルスに対する不活化効果は実用上、期待できない。それらに比べれば、性能のよい単なる空気清浄機の方が、はるかに効果がある。


 検索すると、以下の記事を見つけました;

空気清浄機ではインフルエンザを予防できない?

新規電気製品の浮遊ウイルス除去効果、HEPAフィルター装着空気清浄機に遠く及ばず
(2011/10/18:日経メディカル)
 プラズマクラスターイオン発生機やナノイー発生機、フラッシュ・ストリーマ放電装置付き空気清浄機など、浮遊ウイルスの抑制あるいは除去を特徴の1つとする新規電気製品では、一部に有意な除去効果が見られる機器があったものの、HEPAフィルター装着空気清浄機の効果には遠く及ばないことが分かった。国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンターの西村秀一氏らの研究で明らかになったもので、成果は感染症学雑誌に発表された。

高性能の空中浮遊インフルエンザウイルス不活化を謳う市販各種電気製品の性能評価
独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター 西村秀一
感染症学雑誌 第85巻 第 5 号


 以上です。
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昨年も同じ日に同じ記事を書いてました(笑)

2014年09月19日 18時06分35秒 | 小児科診療
 昨年はB型でスタートしたのですね。

インフルエンザ流行による今シーズン初の学級閉鎖

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