徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

理容店の感染対策にガッカリ・・・

2022年02月17日 15時55分11秒 | 小児科診療
10年来、行きつけの理容店での出来事です。

理容店に入り、客として椅子に座ると、マスクを外します。
マスクをしていると顔を剃ることができないから。

感染対策としては無防備状態で約1時間座っていることになります。
仕事中はマスクを外さない医療者の私としては、
結構ドキドキものです。

某日、私が先客で、
次の客が来店し、隣の席に誘導されて座りました。
彼ははじめからマスクをしていません。

常連客と思われる初老の彼は、
おもむろに大きな声でしゃべり出しました。
まあ、季節の挨拶が済めば静かになるだろうと思いきや、
世間話がずっと続きます。

店員が止める気配はありません。
店の理容師はマスクをしています。
客(マスクを外している私)を感染リスクにさらしておいて知らん顔?

私は、慌てて外していたマスクを装着し、
顔を剃るのを遠慮・省略して、
そそくさと店を出ざるを得ませんでした。

まあ、昔からの常連客は世間話を楽しみに通っているのでしょうから、
今回は自分が我慢して身を引こう、
店の人も私の気持ちをわかってくれて対策を考えてくれるだろう、
などと考えながら。

しかしその後、同じようなエピソードが繰り返されました。

2回目なので私は仕方なく、
「感染リスクがあるのでしゃべるならマスクをしてください」
「マスクをしないならしゃべらないでください」
と口頭で注意させていただきました。

すると、店の人も客も驚いた様子で怪訝そうな表情。
以降、話を止めてくれました。

ただ、その反応から、
「もしかしたらこの店では“マスクなし世間話”が常態化しているのかもしれない」
という懸念が頭をよぎりました。

その約1ヶ月後、その理容店に行くと、
想定外の扱いが待っていました。

「トラブルはごめんです」
「他の店に行ってください」

と門前払いを食ったのです。

私はあっけにとられました。

感染対策を改善するどころか、
そのリスクを指摘した私をクレーマー扱いです。

理容師の感染対策の認識って、こんなレベルなのか・・・
カミソリを扱うのでHIV感染とか研修を受けて、
気を遣っていると思っていたのに。

知り合いに美容師さんがいますが、コロナ禍になってから、
「お客さんも美容師もマスクを外さない」
「会話は必要最低限しかしない」
と彼女から聞いていたので、
理容師も同様と思っていたのは私の思い込みだったようです。

これがこの店だけなのか、
理容店一般のレベルなのかはわかりません。
みなさんの行きつけの理容店はいかがでしょうか。

ときどき、医療者と一般市民の感染リスクへの姿勢について、
ギャップを感じることがあります。

しばらく前に、政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身会長が、
「人流より人数」
「ステイホームは必要ない」
とコメントして物議を醸し出したことがありました。

私は彼の発言内容は“科学的に正しい”と思っています。
ただし「みんなが感染対策をきっちり守れば」という条件付き。

医療関係者は日々、新型コロナ患者を診療しているので、
感染対策のレベルがシビアです。

しかし一般の方に医療レベルの感染対策を求めるのは酷で、
「これぐらいはいいんじゃないか・・・」
と気の緩む場面が無きにしも非ず。

本来は「人数」制限で済むものも、
「人流」制限せざるを得ないのが人間社会なのでしょう。


さて先日、新型コロナ関係の医療者向けWEBセミナー(講師は忽那Dr.)を聴いていたとき、
参加者にアンケートを採る場面がありました。

Q.自施設で新型コロナの濃厚接触者は発生しましたか?
A.50%以上が「YES」

うわっ、多い!

Q.自らが感染しましたか?(医師限定)
A.「YES」は3%

えっ、それだけ?

医療機関でクラスターが発生するとメディアが大々的に報道しますが、
医師に限定すると、感染者はほとんどいないのです。

だって、医師が濃厚接触者・感染者になると、
7〜10日間休診にしなければなりませんから、
地域医療にとっても、経営的にもアウトです。

私は自分の子どもの結婚式にも行きませんでした(WEB参加)。

日々、そんな生活をしているので、
理容店でのエピソードは、受け入れられないものがあり、
半分愚痴っぽくなりましたが、書かせていただきました。

あの店にはもう行けないなあ。
行きつけの人は近所のご老人が多そうだから、
感染が広がって重症者が出ないことを祈るばかりです。
腕のよいだった床屋さんだったので残念。

感染対策を各シチュエーションでどこまでやるか・・・正解のない難問ですね。

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感染が怖くて学校の教室には入れない 〜マスクの効果と限界〜

2022年02月11日 20時35分58秒 | 小児科診療
先日、小学生高学年の子どもが、
「クラスに鼻出しマスクやあごマスクをしている子がいるから、
感染するんじゃないかと心配で怖くて教室には入れない」
と訴えて困っているという家族から相談を受けました。

マスクは感染対策の頂点に君臨しているアイテムです。
しかしその効果は100%ではなく、限界もあります。

教室内というリアルワールドでは、
どのくらいの感染リスクがあると認識すべきなのか、
それを知ると不安が減るのではないかと考え、
今一度整理してみたいと思い、トライしました。

ここで確認しておきたいのは、
メディアが報道する内容は、以下の2つがあること;

・マスク単体の性能
・感染リスク低下効果

これを混同すると、訳がわからなくなってしまいがちです。

マスクの有効率は飛沫透過性や捕集率で単純にシミュレーションできますが、
感染リスク低下効果はそこに距離や換気、そして時間の概念も入ってきて複雑になります。

また、いわゆる“飛沫”の定義もファジーな部分が残っています。
従来は、“飛沫”と“飛沫核”という二つの概念のみでしたが、
それでは新型コロナウイルスの感染性を十分説明できないため、
“マイクロ飛沫”とか“エアロゾル”とか表現される概念が自然発生的に登場しました。
科学的な定義はまだなされていないようですが、
イメージとしては“飛沫”と“飛沫核”の中間と捉えて良さそうです。

前置きはこのくらいにして、本論に入ります。

新型コロナ感染対策においてマスクの効果を評価する際、
いくつかの要素が影響します。

1.着用の有無
2.素材
3.吐き出しと吸い込み

そして実際の生活場面を想定して感染リスクを評価する際は、
以下の要素が加わります。

4.感染者との距離
5.接触時間
6.室内換気の程度

すでに一般化している知識としては、

1 → マスク着用が有利
2 → N95>サージカル>綿>ウレタンの順
3 → 吐き出しと吸い込みで飛沫捕集率が異なる
4 → ソーシャル・ディスタンス(1m? 2m?)でリスク減少
5 → 15分を目安にしているが、オミクロン株ではもっと短い
6 → 二酸化炭素濃度モニターで1000ppm未満でリスク減少

といったところ。

さて、マスクの効果と感染リスクをどこまで数字で表すことができるでしょうか。
メディアでは豊橋技術科学大学や、理化学研究所(理研)などによるスーパーコンピューター「富岳」によるシミュレーションが紹介されています。

初期によく目にしたマスクの効果一覧を提示します。


※ ここで用語確認;
・不織布マスク:サージカルマスクとも呼ばれ、医療現場でも使用されています。
・N95マスク:医療用マスクで一般には出回らないプロ用です。装着していると息が苦しくなるほど密閉性が高いのが特徴です。

データの数字を見るとき、もう一つ注意点があります。
それは「減らす%」か「残りの%」のどちらかを要確認。
例えば、上の表で、
「マスクなし → 0%」 
は「減らす%」を表示していますが、
表によってはここを、
「マスクなし → 100%」
と「残りの%」を表示しているものも散見されますので。

では表を読み込んでいきましょう。

まず気がつくのが、

飛沫捕集率(カット率)は(吐き出し)>(吸い込み)

が基本だということ。つまり、

非感染者がマスクをするより感染者がマスクをした方が効率がよい

ことになります。

(吐き出し)での飛沫カット率を高い順から並べると、

99%:N95(医療用)
86%:不織布+綿(二重マスク)
82%:不織布
72%:綿
52%:ウレタン

となります。
装着感からいうと「苦しいほど有効」ですね。

鼻出しマスク”ではどうでしょうか。
・・・表の「不織布マスク」の「ルーズ」がそれに相当します。

(吐き出し)カット率が82%→ 76%(マイナス6%)へ低下し、
綿マスクに近くなりますが、意外にも小幅な低下。

(吸い込み)カット率は75%→ 55%(マイナス20%)と大幅に低下するので、
“鼻出しマスク”は自分が感染するリスクを上げている危険な行為となります。

あごマスク”はマスクなしと同じと考えてよいでしょう。
会話をするときにマスクをアゴの下に下げるのもマスクなしと同じです。

二重マスク”(不織布+綿)では、
82%→ 86%と思ったほど上乗せのカット率が稼げません。

(吸い込み)での飛沫カット率を高い順から並べると、

98%:N95
84%:不織布+綿
75%:不織布
52%:綿
18%:ウレタン

の順です。
これは「自分を守る」ための数字ですから気になります。
前述の通り、(吐き出し)より少しカット率が低下しています。
綿やウレタンは50%以下とあまり効果が期待できません。
二重マスク(不織布+綿)は、
カット率9%アップですからやる価値がありそうです。

それから、フェイスシールドマウスシールドというアイテムもあります。
こちらのイラストがわかりやすいので引用・紹介させていただきます。



この表によると、飛沫カット率は、

(吐き出し)
20%:フェイスシールド
10%:マウスシールド

(吸い込み)
両方とも効果なし

というさみしい結果。
テレビを見ていると、
マウスシールドをしているタレントをときどき見かけますが、
まあ“建前”程度の意味しかありません。

ただ、私は診療中にフェイスシールドを装着しています。
これは、飛沫吸い込み防止目的ではなく、
飛沫による「目からの感染」を防止するためです。
エアロゾルは無理としても、会話や咳で飛ぶ飛沫はブロックしてくれます。

実は、子どもは遠慮なく咳をしたり泣き叫んだりするので、
マスクをしていても飛沫を浴びまくり、
たまに風邪をもらうことがありました。

しかし、フェイスシールドを使うようになってから、
この2年間、一度も風邪を引いていません。
“目からの感染ブロック”の効果を実感しています。

他にも、わかりやすいイラスト入りの表を見つけたので引用させていただきます;


前述しましたが、データを見るときに、
残存率を表示している場合(⇧)
があるので混乱しがち、注意が必要です。



さて次は、マスクの飛沫カット効果から一歩進んで、
感染力低下度のデータを紹介します。

私は「富岳」によるシミュレーションのデータを見るたびに、
「でもこれって本物のウイルスを使っていないから、どこまで信用していいんだろう?」
と懐疑的になるひねくれ者です。

そこに登場したこの報告は、
リアルワールドの数字により近くなります。

ただしどこでもできる実験ではなく、
厳密な感染対策ができる限られた施設でのみ可能な特殊な実験です。
倫理上、生身の人間を使うわけには行かないので、
マネキンに装着したマスクを通過するウイルス量を測定した実験系。

河岡教授はときどき、
「えっ、それやっちゃうんですか?」
という想定外の発想で実験・研究し、周囲を「アッ!」と言わせるお方。
以前、「新型インフルエンザウイルス」を造り、物議を醸し出したこともありました。

実験は、距離を50cmという日常会話に近い設定で行われました。



相談してきた子どもに説明できるデータです(こちらに動画があります)。

相手(不織布):自分(不織布) → 感染率75%低下
相手(布)  :自分(布)   → 感染率70%低下
相手(不織布):自分(なし)  → 感染率70%低下
相手(布)  :自分(なし)  → 感染率70%低下
相手(なし) :自分(不織布) → 感染率47%低下
相手(なし) :自分(布)   → 感染率17%低下

となります。
驚いたことに、相手がマスクをしている場合、
自分がマスクをしてもしなくても数字はあまり変わりません!

一方、相手がマスクなし(あるいは“あごマスク”)の場合、
自分だけマスクをしても、カット率は50%未満・・・
やはり相手にはマスクをして欲しいところです。
 

次にウイルス株(武漢株、デルタ株、オミクロン株)による感染力の違いのデータを提示します。
従来株(武漢株)とデルタ株の違いのイラスト解説を見つけました。


ここではマスクの有無は不問なので、マスクなしの設定と考えてください。
従来株の時期はソーシャル・ディスタンスが1m程度といわれていましたが、
デルタ株が登場した頃から、2mへ増えたのはこのようなデータに基づいているのでしょう。

では、マスク+ソーシャル・ディスタンスを変えた場合の効果はどうでしょう。
下のデータは、オミクロン株の感染力をデルタ株の1.5倍と設定したものです。



前述の東大のデータでは、
「両者が不織布マスクをして50cm間隔での会話で感染率75%低下」
という結果でしたが、上記「理研」(理化学研究所)のデータでは、
「両者が不織布マスクをして50cm間隔での会話で感染率90%低下」
となります。まあ、実験系(感染実験 vs シミュレーション)が違いますのでデータのばらつきは仕方ありません。

注目すべきは、テレビでも強調されていましたが、
相手がマスクを着用し1m離れていれば15分間会話しても感染率0%
という数字です。
これは前半の(マスクの性能)だけではなく、
(マスクの性能)+(ヒトとヒトとの距離)
を両方考慮した数字で、リアルワールドに応用できます。

以上をまとめると、

新型コロナの感染対策としてのマスクの効果は、
自分がマスクをするかしないの影響は少なく、
相手がマスクするかしないかの影響がとても大きい、

という結果になりました。

より具体的に、小学生の不安・心配に答えるために、
自分はマスクをしているけど、クラスメートの中には・・・
という状況を想定し、
飛沫カット率と感染低下率のデータを並べてみます;

「〇 〇 さんはアゴ出しマスク」ときの(50cm離れた)会話のリスク
 =(相手がマスクなし/アゴだしマスク)+(自分が不織布マスク着用)
 → マスクによる飛沫カット効果:25〜30%へ減少
 → 感染リスク:47%へ減少

「クラスメートはみんな不織布マスクをしている」ときの(50cm離れた)会話のリスク
 =(相手が不織布マスク着用)+(自分が不織布マスク着用)
 → マスクによる飛沫カット効果:20%×30%=6%へ減少
 → 感染リスク:30%へ減少(50cmの距離)

「クラスメートはみんな布マスクをしている」ときの(50cm離れた)会話のリスク
=(相手が布マスク着用)+(自分が布マスク着用)
→ マスクによる飛沫カット効果:26%×60% ≒ 16%へ減少
→ 感染リスク:75%へ減少(50cmの距離)

「クラスメートはみんなウレタンマスクをしている」ときの(50cm離れた)会話のリスク
=(相手がウレタンマスク着用)+(自分がウレタンマスク着用)
→ マスクによる飛沫カット効果:65%×50% ≒ 33%へ減少
→ 感染リスク:データなし

あえて、マスクの性能と、感染リスクの両方を表示しました。
なぜって、
「飛沫が半分に減る=感染率が半分に減る」
訳ではありませんから。

小学生の疑問に対するファイナル・アンサーとしては、

両者マスクなし状態での(50cm離れた)会話での感染リスクを100%とすると、
自分が不織布マスクをしていれば、
・アゴだしマスクをしている友達では、感染リスクは53%まで下がり
・不織布マスクをしている友達では、感染リスクは30%まで下がる

という説明になります。
リアルワールドでは、双方不織布マスクをしていても感染リスクは30%残り、ゼロ%にはならないことを認識すべし、という結論になりました。


※ 今回は「時間」と「換気」の要素は取り上げませんでした。また別の機会に(^^;)。


<参考>
■ 理研、スパコン富岳で不織布や手作りマスクの飛沫の差を解析
~オフィス内、イベントホールなどでのエアロゾル感染もシミュレーション
大河原 克行(2020年8月25日:PC Watch
■ 国立大学法人豊橋技術科学大学 Press Release
■ スパコン富岳で電車/タクシー/航空機内などでのコロナ感染リスクを検証
~機内ではリクライニングでの咳がワーストケース
大河原 克行(2020年11月27日:PC Watch
■ マスクの選び方は? ウレタンは性能劣る【素材別の比較結果】
■ 新型コロナウイルスに関する情報《マスク編2》「データから見るマスクの効果」
■ 50cmの距離で話すとマスク装着でも高リスク。オミクロン株を含めた富岳の飛沫感染分析
大河原 克行(2022年2月2日:PC Watch
■ 新型コロナウイルスの空気伝播に対するマスクの防御効果

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新型コロナワクチン、副反応の半分は“思い込み”

2022年02月11日 07時43分08秒 | 小児科診療
薬の効果を確認する治験では、
「本物の薬成分が入ったモノ」
「本物の薬成分が入らないモノ」
の両方をランダムに投与し、
かつ中身を処方医にも受け取る患者にも知らせない、
そして集計・データ解析は第三者が行う、
という方法をとります。

処方側にも患者側にもわからないため、
「二重盲検法」
と呼ばれています。

そして薬成分が入ったモノの効果が6割以上認められないと、
薬として認可されないと聞いています。

しかし、このような治験を行うと、
「本物の薬成分が入っていないモノ」
を内服したのに「薬が効いた」と答える患者さんが一定数います。

その比率は、だいたい3割程度。

多いですよね。

薬成分が入っていないニセ薬でも、
ヒトは薬と思って飲むと3割効いてしまうのです。
というか、“効いたと感じる”のです。

ヒトの思い込みとはそういうモノ。
この“偽薬でも効いたと感じる”ことを“プラセボ効果”と呼びます。

さて、現在鋭意接種進行中の新型コロナワクチン。

“mRNAワクチン”という新しいメカニズムゆえ、
安全性が話題になっています。
人類の危機に対して、人類全体で行う実験のような側面がありますから、
不安になって当然です。

ここで、前述の薬の効果と同じような実験を、
新型コロナワクチンで行った報告があります。

mRNAの入ったワクチンと、
mRNAが入らない偽ワクチンを、
接種者にも接種されるヒトにもわからないように接種し、
その副反応の発生率を第三者が解析したのです。

その結果を、あなたはどう予測しますか?

mRNAが入ったワクチンの副反応発生率と
mRNAが入らない偽ワクチンの副反応発生率を比較すると・・・

なんと、“ワクチンの副反応”を訴えたヒトの半数以上は“思い込み”という結果になりました。

「ワクチンは痛い」
「ワクチンは怖い」
という不安や、接種前に、
「〇〇〇などの副反応が出ることがあります」
と説明されると、そのような気持ちになってしまうのですね。

これは全身の不定愁訴で顕著ですが、
局所反応(接種部位の腫れ、痛み)では少ない傾向があります。

なお、偽薬による副作用(ワクチンでは“副反応”)は“ノセボ効果”と呼ぶそうです。

ところで皆さん、
「病気」
というネーミングについて考えたことがありますか?

そのまま読めば「気を病む」状態です。

検査でわかる内臓疾患だけでは、
人間の病気は理解しきれず、治療しきれません。

私は小児科医ですが、珍しく漢方を多用しています。
西洋医学の治療で上手くいかない、満足できない患者さんには、
希望があれば漢方薬を処方しています。

これを15年以上続けてきた結果、
現在では外来患者さんの約半分に漢方を処方しています。

その魅力はいろいろありますが、
まず「手応えがある」ことです。

そして「病気(=気を病む)」を「“気”の異常」と捉え、
漢方薬のほとんどに「“気”の異常」を解消するための生薬が含まれていることです。

例えば、夜泣き、泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)、かんしゃく持ち、チック、寝ぼけ・・・
検査では異常が出ないので、西洋医学では治療できません。

おそらく小児科医に相談しても、
「様子を見ましょう」
と言われてガッカリするご家族が多いと思われます。

しかし漢方を知っている私は、逆に診療が盛り上がります。
「このお子さんは怒りんぼタイプですか、シクシク泣くタイプですか?」
などと深掘りて質問し、お子さんに合う漢方薬を模索します。

つらい症状を訴えて受診しても検査で異常がないため、
「気のせいですよ」
と言われた方、
漢方治療を考えてみると活路が見いだせるかもしれません。

「“気のせい”といわれたんですね」
「漢方ではそれを“気”の異常と捉えます」
「“気”の異常には、気鬱・気滞・気逆の三つがありまして、それぞれに効く方剤が・・・」
などと会話が続き、あなたに会う漢方がきっと見つかることでしょう。

あらら、大分脱線しました(^^;)。


コロナワクチンの副反応 5~7割が「ノセボ効果」によるもの?
  薬として効く成分がまったく含まれていない偽薬を「プラセボ」と呼びます。プラセボを飲んでも、理論上は何の効果も期待できませんが、実際には身体に有益な作用が得られることも多く、これがプラセボ効果です。 
 しかし、プラセボによってもたらされる効果は有益な作用だけとは限りません。プラセボを飲んでいるにもかかわらず、本物の薬と同じような副作用が表れることをノセボ効果と呼びます。新型コロナウイルスワクチンの接種にあたり、副反応を心配される方は多いと思います。同ワクチンの副反応は接種部位の痛み、発熱、頭痛、倦怠感など、その症状の多くは軽いものです。しかし、副反応に対する不安が強いと、ノセボ効果の影響によって副反応が強まる可能性もあります。 
 新型コロナウイルスワクチンの副反応とノセボ効果の影響を検討した研究論文が、米国医師会が発行しているオープンアクセスジャーナルに2022年1月4日付で掲載されました。 
 この研究では、新型コロナウイルスワクチンの有効性や安全性について、プラセボワクチン(生理食塩水など)と比較した12件の臨床試験データが解析対象となりました。 
 臨床試験に参加した被験者のうち、2万2802人が新型コロナウイルスワクチンを、2万2578人がプラセボワクチンを接種していました。
  解析の結果、プラセボワクチンを接種したにもかかわらず、何らかの副反応を報告した人は、初回の接種で35.2%、2回目の接種で31.8%でした。この頻度をもとに新型コロナウイルスワクチンによるノセボ効果の影響を検討したところ、新型コロナウイルスワクチンによる全ての副反応のうち、初回の接種で76%、2回目の接種で52%がノセボ効果に相当すると見積もられました。 

 COVID-19ワクチン有害事象のノセボ効果の説明が必要

新型コロナワクチンの登場により、
副反応についてたくさん報道されました。

不安を煽るというマイナス面はある一方で、
国民の理解も進むというプラス面もあったと感じています。

従来“アナフィラキシー”という言葉は専門用語でしたが、
メディアがたくさん取り上げたお陰で一般化しましたから。

また、思春期に多いワクチン接種後の不定愁訴や失神・転倒の一部は、
自律神経系の“血管迷走神経反射”であることも認知されるようになりました。

その影響もあってか、
以前副反応が問題になり事実上中止に追い込まれたHPVワクチンが、
2022年4月に復活することになりました。

小児科医を長くやっていると、いろんなことに遭遇します。

実はHPVワクチン以前にも、
副反応で中止に追い込まれたワクチンがあります。

それはおたふくかぜワクチン(=ムンプス・ワクチン)。
もう20年以上前に定期接種から外され、
未だに定期接種として復活できていません。
私が引退する前に、復活できるかなあ。
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オミクロン株の症状はデルタ株までと、どう違う?

2022年02月07日 15時29分50秒 | 小児科診療
前項ではオミクロン株の、
「感染力は強いが重症化しにくい」
という特徴を取りあげました。

今回は具体的な症状です。
テレビでは、
「のどの痛みが目立ち、熱も出る」
「味覚障害や嗅覚障害は目立たない」
などと報道され、
「従来株以上に風邪との区別が難しい」
と専門家は解説しています。

また、
「潜伏期が短いので隔離期間も短くできるのでは?」
という意見もあり、これは実際にルール変更されました。

ポイントを抜粋します。

■ 症状

まずは症状です。
オミクロン株登場以前の新型コロナの症状は、

・咳、息切れ、息苦しさ
・発熱、寒気
・筋肉痛、関節痛
・嘔吐、下痢
・嗅覚・味覚の異常

と言われてきました。
オミクロン株ではどう変わったのでしょう。


先ほど述べたように、頭痛・のどの痛み・鼻水が50%以上に見られ、
いわゆる“かぜ症状”ですね。

以前は「鼻水が目立たないのが特徴」とされてきましたが、
オミクロン株では鼻水もふつうに見られるようになりました。

「食事もとれないほどの喉の痛み」も新たに登場した症状です。
現在は、この“強いのどの痛み”が特徴とされつつあります。

筋肉痛/関節痛、発熱が目立つとインフルエンザ様です。
ただ、日本全国でインフルエンザはほとんど出ていないのが現状ですので、
今は新型コロナを疑うべきでしょう。

デルタ株で目立っただるさ(全身倦怠感)も半分以下。

当初、特徴的と言われた嗅覚/味覚異常は13%ですから、
それがないからといって否定はできません。

また、頻度は10%前後であるものの、嘔吐/下痢も見られ、
これは現在流行中のウイルス性胃腸炎とオーバーラップします。

やはり、新型コロナ・オミクロン株感染と、それ以外のかぜを症状で区別するのは困難です。

実際当院に来院する小児患者さんも、
ふつうの風邪症状が多く、
敢えて言えば頭痛と咽頭痛が目立つことが特徴でしょうか。
発熱は1-2日で下がり、
熱の勢いはインフルエンザの方がありそうです。

私は全身倦怠感が強い患者さんには、
桂枝湯や柴胡桂枝湯などの漢方薬を処方しています。
西洋医学では対応する薬がありませんので。

■ 潜伏期

さて、次は潜伏期の話。



上のイラストでは、デルタ株までの従来株の潜伏期:約5日間が、
オミクロン株では約3日まで短くなっています。

■ (追加)藤田次郎教授(琉球大学)の解説

感染力の強い期間を以下のグラフのように説明しています。


従来株の感染力は発症日がピークであり、
その2日前から感染力があるとし、
一方オミクロン株では発症前の感染リスクは少なく、
感染力のピークは発症3-6日と後ろにずれ込んでいるというデータを示しました。

いや〜、同じウイルスなのにこんなに違うのですね。

そしてこれらのデータを元に、
濃厚接触者の追跡開始日や待機期間(隔離期間)を、
オミクロン株に合わせて以下のように変更することを提言しています。


今のところ提言にとどまり、
厚労省がルールを変更するまで至っていません。

さて、忽那先生の解説記事に戻ります。

■ 重症化までの時間

オミクロン株は潜伏期が短くなりましたが、
重症化するまでの期間も短くなったようです。
従来は発症後7日間で肺炎などの合併症が出てくるとされていましたが、
オミクロン株ではなんと3日まで短くなりました。
あっという間です。
自宅療養者はこのことを認識して要注意対応する必要がありますね。


■ 無症状感染率

「無症状感染者率」も気になります。
従来の新型コロナウイルスでは、
・子どもの約半分
・成人の3分の1
・高齢者の5人に1人
ーが無症候性感染者と報告されています。
しかしオミクロン株による無症状感染者率のデータは、
報告により1.2〜4〜20〜27%と大きくばらけています。

(1.2%)ノルウェーの集団感染例81人のうち、1人(1.2%)のみが無症状だった。
(4%)沖縄県でのオミクロン株による感染者50名のうち、4%が無症状だった。
(20%)デンマークの初期の感染者785例のうち、20%が無症状だった。
(27%)日本国内で12月27日までに診断されたオミクロン株による感染者109例のうち29例(27%)が経過中無症状で経過した。

おそらく、国や地域により感染者の年齢構成が異なること、
ワクチン接種率も異なることなどが影響しているのではないか、
と忽那先生は推測しています。

■ 重症化率

重症化率についても言及しています。
デルタ株よりは低いものの、最初に登場した武漢株並みとのこと、
やはり侮れません。

(イギリス)デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者の入院リスクは約3分の1
(南アフリカ)デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者の入院リスクは0.2倍、重症化リスクは0.3倍
(アメリカ)デルタ株と比較して、オミクロン株の感染者のICU入室リスクは0.26倍、死亡リスクは0.09倍

2022年1月前半までと、1月後半以降では、重症度が違う、呼吸不全に陥る患者が増えたという声も聞こえてきます。

欧米でもオミクロン株が猛威を振るっていますが、イギリスでもフランスでもオランダでも「制限解除」へ方針を変更しています。

しかし日本では死者数がデルタ株中心の第5波なみまで増加し、
むしろ「制限強化」と逆行しています。

なぜこんな風になってしまったのか?

テレビでも解説しているように、
「高齢者への3回目接種(ブースター接種)が出遅れたから」
が当を得ているようです。

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オミクロン株の重症度 ~沖縄の報告から~

2022年02月05日 06時32分12秒 | 小児科診療
日本列島は相変わらず新型コロナウイルスのオミクロン株が席巻中です。

「感染力は強いが、重症化はしにくい」
のが特徴と言われていますが、実際のところ、どうなんでしょう。

最初にオミクロン株の洗礼を受けた沖縄からデータが公表されました。

以下の記事を読むと、
・小児(0〜19歳)はすべて軽症か無症状
・加齢とともに中等症例が増加するが、重症例はいない
という傾向が読み取れます。

第六波は第五波までとは異なり、
小児中心に感染が拡大していますが、
少しずつワクチン効果の切れつつあり高齢者にも広がっています。

すると、中等症例が多くなり、医療を圧迫し、
さらに感染数の母数が増えれば、一部重症化して死亡例も出てくるでしょう。

リアルワールドでは、死亡者数が第五波をとうとう上回りました。

欧米では、重症化しにくいオミクロン株を“もはや脅威ではない”と、
感染対策を緩める方向へベクトルを変更しました。

しかしここ日本では、まだそれができない状況です。

何が違うのでしょう。

それはワクチン3回目の接種完了状況です。

欧米では3回目接種完了者が日本と段違いに多く、
高齢者が罹患しても、重症化する率が日本よりさらに低いため、
入院に至らず医療を圧迫しないため制限緩和に踏み切れました。

現在、子どもへの接種が話題になっていますが、
その前に高齢者を含むハイリスク者の3回目接種を完了しなければ、
感染対策としての意味が薄れてしまいます。


沖縄の第6波から見えてきた重症度の実際 〜80歳以上では中等症7割、若者にとってはインフルエンザ様〜
三和 護=編集委員(2022/01/13、日経メディカル)より抜粋;

 沖縄県疫学統計・解析委員会が2022年1月11日に公表したCOVID-19発生動向報告によると、宮古・八重山医療圏で診断された新規陽性者714人のうち、

(96.6%)無症候または軽症:690人
(   2.4%)中等症I(息切れ、肺炎所見あり):17人
(   1.0%)中等症II(酸素投与、呼吸不全あり):7人

・年齢別では80歳以上の69.3%が中等症
・人工呼吸管理を要する重症者は出ていない。

 年齢別に見ると、

【中等症I】
(20~39歳)5人
(40~59歳)5人
(60~79歳)2人
(80歳以上)5人

【中等症II】
(20~39歳)0人
(40~59歳)2人
(60~79歳)1人
(80歳以上)4人

・80歳を境に重症度に大きな違いが表れており、80歳未満では97.9%が無症候または軽症だったが、80歳以上では中等症Iが38.5%、中等症IIが30.8%だった。

 図1 沖縄県宮古・八重山医療圏の新規陽性者数に見る重症度の分布
   (沖縄県の発表から)

■ 年代別推移
(50%)20歳代3624 人
(12%)30歳代896人。
(12%)10歳代 859人
「活動性の高い20歳代に突出して陽性者が多く、40歳未満が78%を占めている」のが特徴。

■ オミクロン株感染の病原性と症状
・若者にとってはインフルエンザに近い。
・ハイリスク者、特に高齢者については、沖縄県でも症例が少なく「まだ判断できない」。
・中等症以上の80 歳以上9人のうち8 人はワクチン2回接種を完了し、1人は1回接種の段階だったと紹介している。
・60~79歳では中等症以上が6.7%。

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オミクロン株にマスクは有効か ~感染者がマスクをしていて1m以上距離があれば、15分間会話しても感染確率は0%~

2022年02月04日 07時18分37秒 | 小児科診療
スーパーコンピューター「富岳」による新型コロナウイルスの感染シミュレーションは以前から行われてきましたが、先日、オミクロン株を想定した解析結果が報告されました。

マスクの有無、
人と人との距離、
というパラメーターを色々変えての解析結果は、
危険の認識にとどまらず、
どこから安全か、というリアルワールドでの感染対策に役立ちます。

「マスクなし15分間の会話で感染確率は60%」──理研、富岳でオミクロン株の感染リスクをシミュレーション
松浦立樹(2022年02月02日、ITmedia)より

実験では、オミクロン株の感染力をデルタ株の1.5倍に設定したそうです。
結論から申し上げますと、安全圏は、
感染者がマスクをしていて1m以上距離があれば、15分間会話しても感染確率は0%
というもの。
距離とマスクの有無で感染確率は変わります。
・マスクなし → 60%
・50㎝以内  → 30%

他のシミュレーションにおけるポイントを抜粋して列挙します;

(カラオケボックス)
・感染者が右隣の人と1時間会話をした場合、マスクを着用していても隣人の感染リスクが40%あるという。
・室内の人数が多いほど感染するリスクが増加する。1部屋当たりの人数を減らす他、歌う場所をエアコンの排気口の下にするなど、飛沫の発生場所を限定することでも感染確率を下げられる。

(飲食店)
・16人程度が入る小型飲食店に感染者が1人おり、30分間大声で話をしている場合でシミュレーションをし、換気機能が働いていて、さらにパーティションも取り入れることで感染リスクは3分の1程度まで下がる。
・法令に定められている換気だけでは、オミクロン株の新規感染者数が必ず増える状態にあると分かった。換気やパーティションなど対策を施すことでリスクを3分の1まで下げられる。

あれ?
パーテーションは空気がよどんで喚起効率が悪くなるから推奨されない、と聞いていましたが、それは否定されたのかな・・・。


↑ マスクを着けず、15分間話す感染者と対面した時の感染リスク。
縦軸が感染リスクで横軸が距離。実線は平均値で、最大値は一点鎖線、最小値は破線で変動


↑ マスクを着けて、15分間話す感染者と対面した時の感染リスク


↑ 1m(マスク非装着)と50cm(マスク装着)の距離での感染確率と時間の関係 

↑ (飲食店)1時間滞在で新規に発生する感染者数の期待値 

↑ (カラオケボックス)新規感染者の期待値。室内の人数(左)と歌唱場所による違い(右) 


同じデータを用いたNHKの記事では以下のように伝えています。
こちらの方がわかりやすいかな。



会話とマスクの有無
・感染している人と15分間対面で会話したときの平均の感染確率は、
感染者がマスクをしている場合、
→ 1メートル以上の距離ではほぼ0%
→ 50センチ以内の距離ではおよそ14% 
感染者がマスクをしていない場合、
→ 1メートルの距離でおよそ60%
→ 50センチ以内の距離ではほぼ100%

・会話する時間が長くなると感染確率は上昇し、50センチの距離で1時間会話すると、マスクをした状態でも感染確率は平均でおよそ10%、最大では27%余りになる。

イベント会場
・イベント時に隣に座った人と会話をしたシミュレーションでは、
→ 感染者がマスクをした場合、隣の人は40%
→ 感染者がマスクをしていない場合、周囲の人に50%近い感染確率
→ 感染者がマスクをして1席分の間隔を空けて座った場合には、感染リスクを大幅に抑えられる。   

・学校の授業などはマスクをして十分な距離をとれば感染リスクは低いと指摘し、近い距離で会話することが増える休み時間は飛まつが充満しないよう短時間で複数に分けて取ることも対策の一つ 。
 
飲食店
・飲食店での感染のリスクについても分析。シミュレーションは、およそ44平方メートルの飲食店で16人の客がマスクを外して1時間滞在し、感染している客の1人が大声で30分間会話するという想定で行われた。

→ 法律で店内に設置することが義務づけられている換気装置だけが作動している場合と、それに加えて、エアコンも作動させた場合を比較すると、
エアコンも作動させた方が、感染確率が2割から3割程度、減少する。
→ちゅう房の換気扇を作動させ、テーブルにパーティションを設置すると、
感染確率は3分の1程度まで下がる。 

カラオケボックス
カラオケボックスで歌う際に座る位置で感染リスクがどう変わるか。
およそ8平方メートルの定員9人のカラオケボックスに、マスクを着用せずに1時間滞在し、感染者が1人いた場合を想定。

・定員いっぱいの9人では、
→ 全員が大声で歌い続けた場合、平均の感染確率は35%で、2.8人の新規感染者の発生が予測された
→ 1人ずつ自分の席で歌った場合には、平均の感染確率は9%で、新規感染者数は0.7人に抑えられた。

・グループを分割して、同じ部屋に入る人数を減らすことで感染リスクを低く抑えられることも分かりました。

・部屋の排気口の下で1人ずつ歌った場合は、平均の感染確率は4%、新規感染者数は0.3人と、自分の席で歌った時に比べ感染リスクを半減できる。

・歌う場所を決めることで、飛沫の発生か所が限定され、感染リスクの低減が期待できる。

・歌う人以外がマスクをすることで、新規感染者の発生が2分の1から3分の1ほど低減できる
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小児科医の機嫌が悪くなるとき

2022年02月01日 07時43分49秒 | 小児科診療
数日前に「Google map の口コミに答えて」とう文章を書きました。

元々愛想がなく、不機嫌そうに見えて評判の悪い私ですが、
さらに機嫌が悪くなる場面が確かにあります。

今回はそのことについて書かせてください。

1.自分の方針と異なる診療を見つけたとき

これにはいくつかのパターンがあります。

多いのが「風邪患者を抗生物質漬け」にする医師。
近隣では耳鼻科医にその傾向がありますが、
他の地域では小児科医でもそのような処方をする方もいて、
「〇〇科の医師」というわけではないようです。

大分周知されてきましたが、
風邪の原因の90%はウイルスが原因であり、
残りの10%が細菌ほかです。

いわゆる抗生物質は細菌撃退用の薬であり、
ウイルスには効きません。

つまり、風邪症状の全員に抗生物質を処方するということは、
9割の患者さんに無駄な治療をしていることになります。

そして抗生物質には、腸内細菌そうを乱すので下痢したり、
まれながらアナフィラキシーの副作用もあります。

以上のことはガイドラインにも書いてあることで、
私の独断ではなく、日々、知識をアップデートしている医師には常識です。

それから、「風邪薬と称してアレルギーの薬を処方」する医師。

これも近隣では耳鼻科医に多いのですが、
地域によっては小児科医でもいると耳にします。

これは、いわゆる“鼻水止め”のペリアクチンをいう薬を避けるために生じた現象のようです。

その医院では、風邪の患者数だけアレルギー性鼻炎や喘息患者がいることになります。
保険審査で問題にならないのが不思議ですね。

当院では漢方薬にシフトしており、
“苦い漢方薬を飲む”というハードルを越えた方は、
逆に手応えがあるのでリピーターになる患者さんが多いです。

それから、「ステロイド内服薬をその説明なしに処方」している場合。

これは皮膚科医に多いです。

湿疹がひどいときに、ステロイド外用薬と一緒にステロイド内服薬も処方するパターン。
別にそれが悪いわけではありませんが、
説明がないのが問題だと思うのです。

当院ではステロイドを内服している患者さんは、
基本的に予防接種を避けて延期しています。

ステロイドは炎症を抑える薬ですが、
免疫力も抑えるため免疫がつきにくくなります。
つまり予防接種をしても“やり損”になる可能性があります。

なので、他の医療機関に通院している人は、その処方内容をしっかりチェックする必要があります。

以上は、患者さんに対して不機嫌になっているわけではなく、
患者さんの向こうにいる他の医師に対して不機嫌になっている状況です。
お気を悪くなさらないでください・・・
といっても、区別できませんよね(^^;)。


次のパターンとして、

2.患者さんが「この薬ください」と指定してくる場合

があります。

他の医療機関に通院していて、都合によりたまたま当院を受診した場合や、
里帰り分娩で一緒に帰省したお兄ちゃん・お姉ちゃんに多いです。

専門が同じ医師でも、治療方針が全く同じということはなく、
微妙に違うのがふつうです。

そして、自分が処方した薬には責任があります。

ほかの医師が処方した薬を患者さんの希望通りに処方して、
もし副作用が発生した場合は私の責任になります。

なので、いらぬリスクを伴うことになり、私は基本的に対応していません。

例えば、ヒルドイド。

近年、アトピー性皮膚炎に使用する保湿剤としてヒルドイド(=ヘパリン類似物質)がベストセラーで、この塗り薬を希望される方が散見されます。

当院では別の保湿剤を使用しているので処方できない旨を説明すると、
今度は途端に患者さんが不機嫌になります。
その場合は、市販されていますのでご購入ください、と誘導しています。


・・・前回と今回、読み返すと私は「頑固じじい」路線をまっしぐらに進んでいますね。

まあ、あと数十年の人生、
仕事は“死ぬまでの暇つぶし”ですから、
自由にやらせていただきましょう。

昨日、石原慎太郎氏が亡くなりました。
生前の元気な時の映像がテレビから流れました。
特に印象的だったのは、
「これからも好きなことを言って、
 好きなことをやって、
 みんなに恨まれながら死んでいきたい」
というコメントでした。

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