徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

17人目の先天性風疹症候群

2013年08月29日 04時38分00秒 | 小児科診療
 国の無策による被害者ともいうべき赤ちゃんがまた1人増えました。
 先天性風疹症候群を心配して人工妊娠中絶に至る例がこの数字の60倍存在するというデータがありますので、17×60=1020人の赤ちゃんが生を受けたにもかかわらず生まれて来れなかった可能性があります。大変な数です。

先天性風疹症候群は17人に(8月28日:NHK)
 風疹の流行の影響で、東京で新たに1人の赤ちゃんが母親が妊娠中に感染したことで目や心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」と診断されました。去年からの流行で風疹によって障害が出た赤ちゃんは全国で17人となりました。
 風疹は妊娠中の母親が感染すると赤ちゃんの心臓や目、耳などに障害が出る「先天性風疹症候群」になるおそれがあり、去年の春以降、流行が続いています。
 東京都によりますと、先週、新たに1人の赤ちゃんが「先天性風疹症候群」と診断されたと都内の医療機関から報告があったということです。
去年から続く流行で「先天性風疹症候群」と診断された赤ちゃんは全国で合わせて17人となりました。
 ことしに入ってからの人数も12人目で現在の報告制度が始まった平成11年以降、全国で最も多かった平成16年の10人をすでに上回っています。
風疹の流行はピークを過ぎていますが、ことしに入ってからの患者数は1万3000人を超え、首都圏や関西を中心に依然として患者数が多くなっています。


 根本的解決法は予防接種率を上げて流行を抑制することですが、今回もそのレベルの施策はなく、ハイリスク者対策でお茶を濁そうとしているようです。
 しかし、下記のごとく抗体検査を行った場合、検査試薬が枯渇することはないのか、一抹の不安が残ります。
 また、風疹抗体価の評価方法も議論のあるところであり、国が責任を持って数字を指定するのかどうかもチェックポイントです。

風疹大流行 妊娠を望む人ら対象に抗体検査費用を全額補助へ(2013.8.28:FNN)
 2013年に風疹が大流行したことを受けて、厚生労働省は、風疹の免疫を持っているかどうかを調べる抗体検査の費用を、妊娠を望む人らを対象に、2014年度から全額補助する方針を決めた。
 風疹をめぐっては、妊婦が感染すると、胎児に障害が出るおそれがあることから、厚労省は、妊娠を望む人や、そのパートナーを対象に、風疹の抗体検査をしたうえで、免疫がないとわかれば、予防接種を受けるよう呼びかけている。
 2013年の風疹の流行の際、一部の自治体では、抗体検査や予防接種の費用を補助する動きがあったことから、厚労省は、2014年度から、抗体検査の費用を、第1子の妊娠希望者とそのパートナーを対象に、全額補助する方針を決め、2014年度の概算要求に8億円を盛り込んだ。費用は、国と自治体で半額ずつ負担する方針。


 検査はしますが、肝心の予防接種への補助は自治体任せ。

成人への風疹対策,再開・継続に取り組む自治体相次ぐ ~川崎市,横浜市,千葉市,仙台市の最近の広報から(2013.8.27:MTPro)
 国立感染症研究所の発表によると,2013年8月現在の国内における風疹報告数は1万3,747例に達している。8月21日の1週間当たりの報告数は61例と今年初めの水準まで下がったが,流行前の2010年の全報告数87例と比較すると,流行終息とはいえない状況だ。流行の中心である成人への風疹含有ワクチン(以下,MRワクチン)の任意接種への費用助成を行う自治体が増え,接種率が上がったために特に関東圏でワクチンの在庫不足が顕在化。川崎市など一部の自治体が成人の助成対象を一時的に限定,風疹流行対策への支障が生じていた。しかし,最近ワクチンの流通状況が改善しつつあることを受け,助成対象の限定を解除するとともに,当初今年9月末までとしていた助成期限を延長する自治体も登場している。最近,相次いで風疹対策に関する公式発表を行った川崎市,横浜市,千葉市,仙台市の取り組みを紹介する。

◆ 川崎市「妊婦の夫以外への助成再開と今年11月末までの期間延長」
 MRワクチンの不足が懸念されるとして,7月5日から助成対象を「妊婦の夫」のみに限定していた神奈川県川崎市は8月23日,「ワクチンの必要量が確保できる見通しが立った」との理由から限定解除を発表した。9月2日以降,妊婦の夫の他,23~39歳の男性,23歳以上の妊娠を予定あるいは希望している女性への事業が再開される。7~8月のおよそ2カ月間,一部対象者では助成の空白期間が生じたことから同市では,当初今年9月30日までだった助成期間を同11月30日まで延長することも明らかにしている。

◆ 横浜市「供給不安定続くが,引き続き接種を」来年3月まで助成延長
 MRワクチンが不足,乳幼児の定期接種への影響が懸念されるレベルだとして「現時点で希望する方全てへの接種が困難」との広報を続ける横浜市。一方で「ワクチンの増産供給が予定されている9月以降も,引き続き接種していただきたい」と,8月26日,助成期間の締め切りを今年9月30日から来年(2014年)3月31日まで延長すると発表した。

◆ 千葉市長はツイッターで呼びかけ「9月30日までに多くの方の接種を」
 千葉県千葉市でも本日(8月27日)から,「ワクチンの供給状況が改善した」として任意接種の助成限定を解除,妊娠を予定・希望する女性とその夫,妊婦の夫への助成を再開すると発表した。助成期間は今年9月30日まで。同市では熊谷俊人市長が自らツイッターで「接種者は7月に入って減少している。来年の流行を抑制するためにも多くの方の接種を」と呼びかけている。

◆ 仙台市「負担軽減と利便性向上のため“償還払い”を取りやめ」
 助成開始以降も引き続き,対象者の負担軽減に取り組む動きもある。今年4月から利用者が接種費用を医療機関でいったん立て替え,費用の還付を自治体に申請する「償還払い」による助成事業を行ってきた仙台市。今年9月1日から来年3月31日までは,医療機関に予約をした対象者が窓口で健康保険証や母子手帳を提示すれば無料で接種できるよう制度を変更した。公式サイトによると,今年4月の助成開始から既に5,000人の市民が助成制度を利用していることが明らかにされている。同市は「助成対象者の負担軽減と利便性向上を通じて,風疹流行による先天性風疹症候群(CRS)の防止を図りたい」と説明している。


 この施策を全国くまなく展開しないと「谷間の世代」はなくなりません。
 また5~10年後に風疹流行騒ぎが発生する余地を残すことになります。

 
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水痘ワクチンは2回必要ですか?

2013年08月22日 06時54分02秒 | 小児科診療
 おたふくかぜワクチンについて書いたので、水痘ワクチンについても触れておきます。
 これも定期接種ではなく任意接種と扱いはおたふくかぜワクチンと同等です。
 各HPでは、

KNOW*VPD水痘(みずぼうそう)
 1歳すぐで1回、1回目の接種後3か月たったら2回目を接種するのがおすすめです。

日本小児科学会日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール:2013年4月最新版
 予防効果を確実にするために、2 回接種が必要。
 ①は 1 歳を過ぎたら早期に接種、
 ②は 3 か月以上あけて、2 歳未満に接種することが望ましい。

国立感染症研究所乳幼児予防接種スケジュール Ver 2
 日本小児科学会推奨案として、①生後12ヶ月、②生後15ヶ月。


 となっており、「3ヶ月開けて2回接種」が推奨されています。
 「生ワクチンなのに2回必要?」という疑問をお持ちの方は、前項を御参照ください。

 さて、水痘ワクチンで問題なのは1回目と2回目の接種間隔です。
 MR(麻疹・風疹)ワクチン、おたふくかぜワクチンともに1回目は1歳、2回目は年長児(5-6歳)と4年間開けているのに、水痘は3ヶ月と短いのはなぜでしょうか。
 
 水痘ワクチンはもともと免疫不全者の命を守るために作られたワクチンなので、副反応を弱くするために効果も少し犠牲にせざるを得なかったという経緯があります。
 有効率は麻疹・風疹ワクチンが軽く90%を超える一方で、水痘ワクチンは80%にとどまります。
 なので、「水痘ワクチンを打ったのに罹ってしまった」というお子さんが時々出てくるのですね(軽症で済みますが)。
 
 以上を鑑みて、1回目と2回目の接種間隔を不活化ワクチン並みに短くして、「水痘ワクチンは2回連続接種して初めて他の生ワクチンと同等の効果が期待できる」という考え方に至ったわけです。
 当然、その5~10年後には免疫が弱まり追加接種が必要になるのですが、その議論はこれからですね。
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おたふくかぜワクチンは2回必要ですか?

2013年08月21日 06時26分03秒 | 小児科診療
 という質問を昨日受けました。
 おたふくかぜワクチンは定期接種ではなく任意接種なので、自治体の保健センターに聞いても「自分たちの仕事の範囲外」ということであまり的を得た回答が得られません。
 参考となるHPをご紹介します;

■ KNOW*VPD「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
 1歳で1回、1回目の接種後2~4年たったら2回目を接種するのがおすすめ。

■ 日本小児科学会「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール:2013年4月最新版
 予防効果を確実にするために2回接種が必要。1は 1 歳を過ぎたら早期に接種、2は MR の第 2 期と同時期(5 歳以上 7 歳未満で小学校入学前の 1 年間)での接種を推奨

■ 国立感染症研究所「乳幼児予防接種スケジュール
 (表から読むと)小児科学会推奨というコメントつきで2回接種、1回目は13ヶ月、2回目は就学前の年長児学年を推奨。


 以上より「おたふくかぜワクチンは2回接種がお勧め」と云うことがおわかりいただけると思います。
 諸外国では「3種混合ワクチンであるMMR(麻疹・おたふく・風疹)を2回接種が標準」であり、このような質問が出るあやふやな日本のスタンスは逆に例外的です。
※ 日本はその昔、MMRを導入したのですがおたふくかぜワクチンの副反応が問題視され中止に至り、その後復活する際におたふくかぜのMが抜き取られて現行のMRワクチンになった経緯があります。

 生ワクチンの効果持続期間について。
 以前は「生ワクチンの免疫は一生涯有効」と考えられてきましたが、2008年の首都圏における大学生を中心とした麻疹流行の際に、麻疹ワクチン接種済みの人も罹患していることがわかり、「生ワクチンといえども5~10年で免疫が弱くなる」ことが判明しました。
 その後、現行のMRワクチン2回接種に変更されたのですね。
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夏の駐車場は危険がいっぱい。

2013年08月16日 07時56分07秒 | 小児科診療
 今日は盆送りですが、関東地方は日中は35℃近くまで気温が上昇し、まだ熱帯夜が続く日々。
 子どもを連れて自動車で外出する際、気をつけるべき事をニュースが教えてくれています:

車内でも熱中症に注意
(2013年8月14日:tenki.com)


車内は熱気がこもりやすく、短い時間で温度が上がります。
駐車した直後は冷房が効いて涼しくても、油断は禁物です。
炎天下の車内の温度は、わずか15分で10度上昇します。
25度だった車内の温度は、35度という猛烈な暑さに。
ダッシュボードはさらに高温になります。
少しの間だからと油断しないで、ほんのちょっとの間でも車内に子どもやペットを残したままにすることは絶対にやめましょう。


 ちなみに、アメリカでは駐車場に止めた車内に子どもを置いていくと「虐待」として警察へ通報されるそうです。
 日本でも事故が相次ぎ、啓蒙活動が盛んになりつつあります:

やめて!子供の車内放置(全日本遊技事業協同組合連合会)



 思わぬ「やけど」の被害も報告されています。
 自分の経験ですが、炎天下に駐車した車に触ったら熱くて手を引っ込めたことが何回もあります。昔はこんな事、あまり話題にならなかったけどなあ。
 くわばらくわばら・・・。

■ 炎天下 子どものやけどに注意
(2013年8月13日:NHK)
日ざしの強い日に、子どもが屋外にある身近なものでやけどをする事故が起きています。
やけどの原因というと、火やお湯を思い浮かべますが、猛暑が続くこの時期、特に注意が必要なのは直射日光で熱くなったものです。

立体駐車場で思わぬやけど
東京都内に住む女性は、去年7月、1歳の娘の悲鳴で異変に気付きました。
車で出かけようと外で準備をしていた女性が慌てて駆け寄ると、娘の手のひらは真っ赤になっていて、大声で泣いていました。
目を離したすきに娘が転び、炎天下で高温になっていた立体駐車場の車を止める金属製の台の上で、手をついてしまったのです。
全治1か月の大やけどでした。
医師からは皮膚移植となる可能性も告げられましたが、痕が残ることもなく治すことができました。
女性は、「今まで、こうした事故のことを聞いたことがなかったので、こんな所でまさかこんなにひどいやけどをするなんて、というのが正直なところです」と話していました。

立体駐車場は63度に
やけどをしたのは午前11時半、よく晴れていたといいます。
女の子が手をついた場所はどのくらい熱かったのか。
8月10日、実際に測ってみました。温度分布を色で表示する特殊なカメラの映像で見ると、気温36度の炎天下、駐車場の台の部分は高温を示す赤。63度もありました。

公園や路上も高温
屋外には、見た目以上に直射日光で高温になっているものが多くあります。
猛暑が続くこの時期、子どもたちが遊ぶ公園にも注意が必要なものが見つかりました。
気温36度の暑さの中、鉄棒は56度、ベンチは62度、ブランコの周りの地面は72度、砂場は75度に達していました。
試しに56度の鉄棒に触ってみましたが、熱くて3秒も持っていられませんでした。
道路では、マンホールのふたは64度、道路脇に止めてあった自転車のサドルやバイクのシートも64度ありました。

特に金属に注意
特に注意が必要なのは金属です。
熱をしっかり蓄えて高温を保ち、触っている間、ほぼそのままの温度を伝え続けます。
人が触った程度では熱は奪われず、冷えないのです。
実際に、高温になった金属に子どもが触れてやけどをしたケースがほかにも報告されています。
自宅では、ベランダにある避難用のはしごの金属製のふたを踏み、足にやけどをしています。
行楽地でも、船の見学会に参加した子どもが甲板の鉄板で足にやけどをしたり、動物園のペンギン舎の前にあった鉄板に子どもが両手をついてやけどをしたりしています。

子どもの皮膚は薄い
人の皮膚は、触ったものによっては、60度で5秒、70度だと僅か1秒で、やけどをするというデータもあります。
日本小児科学会で子どもの事故対策を担当する山中龍宏医師は、「子どもの皮膚は非常に薄いので、大人の値をそのまま当てはめることはできない。もっと低い温度で深いやけどになりやすいのが特徴だ」と指摘しています。
そのうえで、「子どもは何が熱いか分からないうえ、動作がまだ不安定で、転んでもすぐに起き上がれないため、注意する必要がある」と話しています。

行楽シーズン 外出先でも注意を
皆さんも、この季節、車のボンネットなどに触って、あまりの熱さに驚いた経験があると思います。
大人だと「熱かった」で済みますが、小さな子どもはそれでは済まず、やけどのおそれがあります。
強い日ざしが原因となるこうしたやけど、日常生活だけでなく、夏の行楽シーズンは外出先でも、子どもの視点で気をつけてほしいと思います。

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手足口病の妊婦感染で胎児異常の心配は?

2013年08月15日 06時25分20秒 | 小児科診療
 日本全国、手足口病が大流行中です。
 子どもを連れてきたお母さんから「実は私妊娠中なんですが、私が罹るとお腹の赤ちゃんに影響ありますか?」という質問を複数回受けました。風疹感染による先天性風疹症候群(CRS)と同様の病態があるのか心配になるのはうなづけます。
 現時点では、その可能性は確認されていませんのでご安心を。
 もっとも、手足口病を含めた夏風邪(ほかにヘルパンギーナ、プール熱)に関しては、ほとんどの人が子どもの頃に罹り、大人になっても免疫が残っているので子どもが罹ってももらわないのがふつうです。

手足口病の妊婦感染で医会声明 胎児異常の心配はないと説明
(2013年8月1日 日本産婦人科医会)
 日本産婦人科医会の木下勝之会長と先天異常担当常務理事の平原史樹氏は7月25日、手足口病の大流行を受け、妊婦が感染しても胎児異常を心配する必要はないと説明する声明文を発表した。手足口病は主に小児が罹患する感染症であり、妊婦に感染することはまれ。流死産や胎児水腫などの報告はわずかにあるものの、胎児異常との明らかな因果関係を証明した報告はない。もし妊婦が手足口病に罹患しても、対症療法と慎重な経過観察で問題ないと説明している。


 妊婦の感染による胎児感染が問題になるウイルスは、古くから「TORCH症候群」と呼ばれてきました。
T:Toxoplazma(トキソプラズマ)
O:Others(その他)
R:Rubella(風疹)
C:Cytomegalo(サイトメガロ)
H:Herpes Simplex(単純ヘルペス)
 現在話題の風疹も当然入っています。
 今朝のニュースで、またCRS例が増えたことが報道されました。

■ 先天性風疹症候群16例目 過去最多に
(2013年8月14日:NHK)
 風疹の流行の影響で、東京で新たに2人の赤ちゃんが母親が妊娠中に感染したことで障害が出る「先天性風疹症候群」と診断されました。風疹によって障害が出た赤ちゃんはことしに入って11人となり、現在の報告制度が始まってから最も多くなりました。
 風疹は妊娠中の母親が感染すると赤ちゃんの心臓や目、耳などに障害が出る「先天性風疹症候群」になるおそれがあり、去年の春以降、流行が続いています。
 東京都によりますと、先週、新たに2人の赤ちゃんが「先天性風疹症候群」と診断され、ことしに入ってからの人数は都内では6人、全国では11人となりました。
 現在の報告制度が始まった平成11年以降、全国で最も多かったのは平成16年の10人で、このうち都内は3人だったことから今回はいずれも上回り、最も多くなっています。また、去年から続く流行で「先天性風疹症候群」と診断された赤ちゃんは全国では合わせて16人となりました。
 風疹の流行はピークを過ぎていますが、ことしに入ってからの患者数は1万3000人を超え、首都圏や関西を中心に患者数が多い状態が続いています。多くの妊婦の相談に当たっている三井記念病院産婦人科の小島俊行部長は、「障害が出る赤ちゃんは、今後さらに増える恐れがある。風疹の流行はまだ続く可能性があるので、妊娠を希望する女性は今のうちにぜひ予防接種を受けてほしい」と話しています。


 これでも政府・厚生労働省は知らんぷりなのですね・・・怒りを通り越して呆れるばかりです。
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医院のメインテナンス

2013年08月12日 05時17分57秒 | 日記
 医院建築は、建ててお終いではなくメインテナンスが必要となります。
 最近行った箇所2点;

1.庭木のさつきの手入れ
 駐車場の道路側と医院北側にさつきが植えてあります。今まで草むしり以外ケアをしてこなかったのですが、近年枯れる木が出てきて今年は植木屋さんに手入れを依頼しました。
 すると意外なコメントが返ってきました。
 「除草剤で枯れてしまったようだ」
 「!?」
 実は近年、草むしり前にラウンドアップという除草剤を使うようになりました。何を隠そう、その植木屋さんに教えてもらった品です。
 それまでは、田んぼに囲まれている土地なので下手に除草剤を使うと農家の方々に迷惑がかかるのではないかと使用を控えてきたのでした。そんな中、クスノキを移動してもらったときに「光合成を止める除草剤なのでかかった草しか枯れず、周囲の農家からクレームは出ませんよ」と聞いて導入したのが数年前。
 しかし雑草だけではなく、樹木も枯れるとは想定外でした。確かにQ&Aを読むと、樹木でも高濃度では枯れるようですね。
 さつきさん、ごめんなさい。
 今後はさつきから顔を出した草だけ切り続ければ、いずれ雑草は無くなっていくだろうとアドバイスを受けました。

2.外装木部の再塗装
 当院は木造建築であり、木部の塗装が年単位で劣化してしまうので定期的に再塗装が必要になります。
 建築当初は気づかなかった事実(説明がなかったので)。
 前回再塗装してから約5年が経過し、あちこちはげ落ちてみすぼらしくなってきたため、再塗装を依頼しました。
 そして先週、終了したところ。
 職人さん、酷暑の中(40℃の日もありました)ご苦労様でした。
 終了後に一回りして確認したところ・・・あれ、塗りむらのようなモノが目に付きます。
 質問すると、「日光への当たり具合により劣化の程度も異なるので、瓦で影になる部分はどうしても差が出てしまう、使用する塗料は木に吸収されるタイプなので隠しきれない(2回塗布済み)、ペンキのように膜を張るタイプの塗料もあるが素材感が失われて劣化も速いのでお勧めしにくい」との返答でした。
 なるほど、いろいろあるのですね。
 次回の再塗装は5年後が目安とのこと。

 というわけで、少し見栄えのよくなった医院となり、気持ちも新たに診療に望む所存です。
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小児科学会から厚労省への要望書3件

2013年08月07日 06時13分56秒 | 小児科診療
 一般市民からすると「学会」という団体はちょっと縁遠い印象があります。
 医学専門学会はその分野の研究の他に、政治に影響されない学術的な視点に立った見解を政府に伝えるという役割もあります。
 さて、私も所属する「日本小児科学会」が最近政府へ提出した要望書が3件、某メディアで取りあげられていましたので紹介します;

日本小児科学会が風疹対策,HPV勧奨中止などで要望書(2013年8月6日:MTPro)
 日本小児科学会(会長:五十嵐隆氏)は8月5日,同学会を含む小児科関連の4つの医学団体が,厚生労働大臣および厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会長宛てに予防接種に関する3つの要望書を提出したことを公式サイトで明らかにした。
 要望は
(1)昨年(2012年)から流行が続く風疹および先天性風疹症候群(CRS)への対策について,
(2)より多くの血清型をカバーするワクチンへの切り替えが予定されている結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)の指針,
(3)現在,国の勧奨が中止されているヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン,
の3点について行われており,7月19日に提出された。

風疹・CRS制圧の緊急対策求める要望書は5月に続き2度目
 風疹流行対策に関して同学会は,「厚労省がこれまでに発出した種々の注意喚起だけでは流行制圧には不十分で,風疹およびCRS予防にはワクチン接種が極めて有効かつ唯一の方法」と指摘。一方,自治体の公費助成が広がっているにもかかわらず財政的な問題で助成を行えない地域もあると現状を説明。厚労省分科会に対し,現在の流行の中心である成人の予防接種につながる緊急対策と中期的な施策を早急に厚労大臣に提言するよう求めた。
 同学会は,今年5月23日にも風疹予防接種を予防接種法上の臨時接種とするよう大臣宛の要望書を提出している。

PCV13「補助的追加接種も定期接種に」ただし,結論は覆らない見通し
 7価から13価への切り替え方針が話し合われていたPCVについては,13価の登場を待ち「7価の接種控え」が起きないよう早期の指針策定を要望。また,一斉切り替え後に既にPCV7の規定回数を完了した小児へのPCV13を定期接種として1回追加接種(補助的追加接種)を行うことも求めていた。
 なお,同要望書提出から4日後の7月23日に開かれた分科会では,「補助的追加接種は有効性,財政上の問題などから任意接種とする」との分科会下部組織からの提言が覆ることはなかった。

HPVワクチン「CRPSの明らかな増加なければ,勧奨中止の即刻解除を」
 HPVワクチンについては,現在の国による勧奨中止で接種者の大幅な減少が想定され「将来,子宮頸がんを発症する者が出ることが予想される」と懸念を示した。また,勧奨中止の根拠となっている同ワクチン接種後の複合性局所疼痛症候群(CRPS)の頻度が海外や国内での献血事業との早急な検討などが必要と提言。その上で「同ワクチン接種後のCRPSの明らかな増加がなければ有効性とリスクを勘案し,勧奨中止を即刻解除することを要望する」と述べている。


原文はこちら
風疹流行対策に関する要望書(2013年7月19日)
小児用肺炎球菌ワクチン~7 価から 13 価への切り替えに関する指針の早期策定に係る要望書(2013年7月19日)
子宮頸がん予防ワクチンの「積極的な接種勧奨の差し控え」に関わる要望書(2013年7月19日)


 しかしこれまでの経緯では、厚労省がアカデミズムの意見を取り入れて政策に反映させることは遅々として進まず、政府は科学的事実ではなく別の力(社会現象?)で動いているんだなあという印象を私は持っています。

 わかりやすい例が「子宮頸がんワクチン」です。
 産婦人科系の学会も要望はしていましたが、小児科系が要望していたヒブや肺炎球菌、B型肝炎の方がその活動は長かったはず。しかし、子宮頸がんを患った芸能人(某女優と某議員)の活動であっけなく認可されてしまい、医師達は愕然としたことは記憶に新しい。そのタイミングでとってつけたようにヒブと肺炎球菌ワクチンも認可したのでラッキーと言えなくもないですが・・・順番が変、これは世界からも指摘されています。

 そういう事情が、トラブル後のフォローの差になって現れています。
 ヒブと肺炎球菌ワクチン同時接種後の死亡が問題になった際、一旦停止となりましたが1ヶ月後には再開されました。
 一方、子宮頸がんワクチンはCRPSが問題になり積極的勧奨停止となり、しかしこれが解除される見通しが立っていません。
 表に出ない学会系の地道な努力が効いているのだと感じます。
 結局影響力のあるヒトが騒いだ者勝ち、という感が否めず、その都度ガッカリする私です。
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予防接種スケジュール、どれが本命?

2013年08月04日 08時57分24秒 | 小児科診療
 定期接種のワクチンがどんどん増えてスケジュールを組めない方が増えてきた昨今。
 当院でも「どうしたらよいのかわかりません!」と丸投げしてくる患者さんも少なからずいらっしゃいます。
 そんな方々に一から説明してスケジュールを組むのは大変なエネルギーを要し、スタッフから悲鳴が上がっています。

 しかし、厚生労働省は知らんぷり。
 「基本は単独接種、同時接種は医師の判断なので個別に相談してください」というスタンスのままです。
 ですので、予防接種を担当する医院や自治体保健センターが家族の希望を聞いて1本ずつ行う単独接種ならこちら、複数を一緒に行う同時接種ならこちら、というふうに誘導しているのが現状なのです。

 現場の小児科医としてお勧めできるスケジュールが公開されているHPを紹介します;

「KNOW※VPD」作成の接種スケジュール
 「KNOW※VPD」は「ワクチンで子どもの命を守ろう」というスローガンの元に集まった小児科医の集団です(私も会員)。定期接種だけでなく任意接種も子どもの健康に必要と思われるワクチンはスケジュールに入れ、同時接種を前提に組まれているのが特徴です。ワクチンの解説だけでなく、予防できる病気の説明もわかりやすいので参考になります。

日本小児科学会推奨の接種スケジュール
 日本の小児科学の総本山である小児科学会が作成したスケジュールです(2013年4月改訂版)。「KNOW※VPD」同様、定期接種だけでなく任意接種も子どもの健康に必要と思われるワクチンはスケジュールに入れ、同時接種を前提に組まれているのが特徴です。

国立感染症研究所作成の接種スケジュール
 国立なので、この3つの中では国が認めた唯一の公的スケジュールです。その立場上、定期接種と任意接種が明確に分けられています。さらに「四種混合(DPT-IPV)」と「三種混合(DPT)+不活化ポリオ(IPV)」に分けられ()、さらにさらに年齢別に分けられているほか、注目すべきは「単独接種」「2つまでの同時接種」「3つ以上の同時接種」のどれかを希望するかによりさらにさらにさらに細分化していることです。さすがお役所仕事、これだけでも混乱しそう・・・。
 どれを選択するかによって、生後1年間に医療機関に足を運ぶ回数が異なります;
・「単独接種」→ 31~32回(四種混合では29~30回)
・「2つまでの同時接種」→ 19回(四種混合では18~19回)
・「3つ以上の同時接種」→ 14回(四種混合では12回)
 自治体保健センターなどの公的機関は、これを参考に説明する場合が多いと思います。

※ 「四種混合(DPT-IPV)」と「三種混合(DPT)+不活化ポリオ(IPV)」:将来的には四種混合がスタンダードになる予定ですが、現在生産量が間に合わないため三種混合を使わざるを得ないという事情があります。

 さあ皆さん、ご検討ください。
 イクメンを自認しているお父さん、出番ですよ!

 余談ですが、ワクチンとワクチンの接種間隔を1週間とか4週間とか開ける理由をご存じでしょうか?
 実は「生ワクチン後の4週間」以外は根拠が乏しく、世界標準は「不活化ワクチンはいつやってもOK」なのです。
 日本も世界標準に近づけるべく、日本小児科学会は厚労省に対して2012年9月に要望書を提出していますが(「異なるワクチンの接種間隔変更に関する要望書」)、現在のところなしのつぶて状態。

 あ~あ、予防接種のことを考えるとため息ばかりですね。
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先天性風疹症候群 14人目

2013年08月01日 07時16分04秒 | 小児科診療
 一時より話題性が減りましたが、風疹の問題は続いています。
 風疹流行の犠牲者ともいうべき先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんがまた確認され、今回の流行で14例目となりました。
 CRSを心配して人工妊娠中絶を選択する妊婦さんの数はCRS数の約60倍との試算もあり、これを適用すると14×60=840人の胎児が生まれる前に命を絶たれた可能性があります。
 しかし相変わらず厚労省は「接種をご検討ください」レベルの施策にとどまり、ワクチンが足りる・足りないの枝葉末節の議論に終始しているのが現状です。
 これから生まれてくる子どもたちの命を軽んじている現政府を、私は認めることができません。

先天性風疹症候群 14人目(都内4人目)
(2013年7月31日:NHK)
 風疹の流行の影響で、東京で新たに1人の赤ちゃんが、母親が妊娠中に風疹に感染したことで目や心臓などに障害が出る「先天性風疹症候群」と診断されました。
 母親が妊娠中に風疹に感染したことで心臓や目、耳などに障害が出る「先天性風疹症候群」と診断された赤ちゃんは、ことしに入って全国で9人となり、去年から続く風疹の流行では、合わせて14人となりました。
 風疹は、妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出る「先天性風疹症候群」になるおそれがあり、去年の春以降、流行が広がり続けています。
 風疹の流行は、首都圏や関西を中心に全国に広がっていて、ことしに入ってからの患者の数は7月21日の時点で1万3110人となっています。
 風疹について多くの妊婦の相談に応じている、三井記念病院産婦人科の小島俊行部長は「障害が出る赤ちゃんは今後さらに増える恐れがあり、行政などが赤ちゃんや母親を支援する態勢の整備を急ぐ必要がある。風疹の患者は依然として多く、妊娠を希望する女性やその周囲の人などは予防接種を受けてほしい」と話しています。
 都道府県別では、東京が4人、大阪、兵庫、愛知でそれぞれ2人、埼玉、神奈川、千葉、香川でそれぞれ1人となっています。


 繰り返しになりますが、今必要なのはコスタリカのような緊急一斉接種を行い集団免疫率を上げることです:

コスタリカ:大人への1カ月間の緊急接種で麻疹も排除
(2013年6月23日、メディカルトリビューン)
 米国に先駆けて、風疹と麻疹の国内発生をゼロにした国がある。コスタリカでは1999年、風疹にかかったことや予防接種を受けたことのない15~45歳で大規模な風疹の流行が起き、30例の先天性風疹症候群が発生した。これを受け、保健当局は2001年5月の1カ月間で15~39歳の国民を対象とした緊急接種キャンペーンを実施。風疹とともに麻疹も排除するため麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を使い、全国民の42%を占める同年齢層への接種が行われた。このキャンペーンでは、全ての地域で80%以上、過半数に当たる60の地域で95%以上の接種率を達成。これ以降、コスタリカでは麻疹、風疹の国内報告がゼロとなった。
 臨時接種には保健当局だけでなく、社会保障、教育、労働関係の省庁や地方自治体も参加したほか、臨時接種の2週間前からはテレビやラジオなどで国民に接種への協力を求める放送も行われた。接種は医療機関、ショッピングモール、大学、職場で行われ、人口の少ない地域では医療チームが直接、住宅を回って接種したと報告されている。

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