HPVワクチン関連情報で目についた記事を賛成派・反対派から一つずつ紹介します。
まずは賛成派から;
■ 脱ワクチン後進国を目指して
(2016.7.18:ケアネット)より一部抜粋
「ワクチンの日(7月6日)」を記念し、在日米国商工会議所(ACCJ)は、7月11日に「日本の予防接種率向上に向けた課題と取組み」をテーマに、都内で講演会を開催した。講演会では、ワクチン接種に関するわが国の課題や、世界的なワクチン開発の動向などが広く語られた。
◇ なぜ、ワクチンのベネフィットは報道されない!?
はじめに、森内 浩幸氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 新興感染症病態制御学系専攻 感染分子病態学講座 感染病態制御学分野 教授)が、わが国のワクチン接種の現状と、とくにHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンをめぐる諸課題について解説した。
日本では、1990年代頃よりワクチンの副反応への懸念などから接種率が向上せず、ワクチン後進国として位置してきた。しかし、2008年から小児領域でHib(インフルエンザ)ワクチンが任意接種となり、以降、米国とのギャップを埋めるべくHPV1ワクチン、PCV7(肺炎球菌)ワクチンなど接種できる種類が増やされ、定期・任意接種と幅広く接種できるようになった。しかし、ここに来て、HPVワクチンについて副反応、副作用が広く報道され、その接種が定期接種から任意接種となったことを受けて、現在では接種がほとんど行われていない状況だという。
ワクチンのリスクについて米国では、子供に重症アレルギー反応を起こす確率は100万分の1とされている。これは落雷に遭う(1万2,000分の1)、億万長者になる(76万6,000分の1)確率よりも低いとされているが、マスコミは、このまれなケースを取り上げて報道していることが多いと指摘する。また、HPVワクチンに関しては、世界保健機関(WHO)からの勧告や関連学会からの声明、全国の地域での独自調査報告など、さまざまな科学的な検証が行われ、ワクチンの有用性が示されているにもかかわらず、依然としてベネフィットに関する報道は少ないという。
今後も検証が必要だが、HPVワクチンの不定愁訴では、接種と因果関係のないものが散見され、明確に接種を中止すべきエビデンスがない以上、接種しないことで起こる将来の子宮頸がん(毎年約3,000人の患者が死亡)や性感染症でQOLを損なう患者が増えることに憂慮すべきという。
最後に、森内氏は「WHOなどの基準からすれば、わが国は今でもワクチン後進国であり、定期接種に向けてさらに働きかけを行う必要がある。また、疾病予防が評価対象とされていないことも問題ではないか」と課題を提起し、講演を終えた。
◇ 医療費を抑えるならワクチンは武器になる
続いて、マイケル・マレット氏(サノフィ株式会社サノフィパスツールワクチンビジネスユニット執行役員/ジェネラルマネジャー)が、ワクチンメーカーの視点から開発の現状と今後の展開について講演を行った。
ジェンナーの天然痘ワクチンから始まる開発の歴史を振り返り、ワクチンの効果について、ポリオを根絶しつつあることを一例に挙げて説明した。
次に、ワクチン接種の経済的ベネフィットとして、コスト効果が高いことを挙げた。ワクチン接種により、重症化による医療費増大、疾病による経済損失リスクなどを避けることができるという。また、日本のような超高齢社会では、医療コストが増大する中、予防接種により少しでもその上昇を抑えることが重要であると指摘した。さらに、日本では小児・成人ワクチン接種が増加しているが、まだ未導入のワクチンもあり、早急な導入を望むとも述べた。
世界的なワクチン開発の現状をみると、前臨床試験でジカウイルス感染症が、I/II相試験でノロウイルス、C型肝炎、III相試験でマラリア、エボラ出血熱、承認段階ではデング熱などの開発が進められている。そのうえで、大切なことは、完成したワクチンが確実に患者さんの元に届くことであり、新しいワクチンの供給には約3年が必要となることから、ワクチンがスムーズに安定供給されるために、今後も政府・産業・医療のパートナーシップが不可欠となる、と見解を述べた。
最後に「現在、ワクチンは20疾患で供給され、毎年600万人の命を救っている。これは公衆衛生上の大成果であり、今後も社会貢献のために産業、学術が手を取り合って開発・供給を行っていく」と講演を終えた。
<参考>
□ 予防接種政策への国家的取組みと改革による予防強化(ACCJによる2015年の提言)
次に反対派;
■ 子宮頸がんワクチン被害64人が提訴へ...今月27日、国と2社に賠償請求
(2016.7.13:読売新聞)
子宮頸がんワクチンの接種後に体の痛みや運動障害などの重い症状が出たとして、全国の15〜22歳の女性64人が、国と製薬企業2社に損害賠償を求める集団訴訟を今月27日、東京など4地裁で起こす。
原告弁護団が12日、記者会見を開いて明らかにした。
原告1人当たりの請求額は精神的苦痛の慰謝料1500万円に、治療や介護などの費用を加える予定。各地裁の原告数は東京28人、大阪16人、福岡14人、名古屋6人で、今後、追加提訴も検討する。
弁護団は、接種後の副作用の報告(10万回当たり約30件)が他のワクチンより多く、ワクチンに含まれる成分が体内で免疫異常などを引き起こしたことが原因だと主張。子宮頸がんの原因となるウイルス感染の5割程度しか防げないなど効果は低く、「ワクチン接種の危険性を上回る有効性はない」とする。
海外でも副作用の報告があったのに、国は2009〜11年に2種類のワクチンの製造販売を承認し、10年以降は、補助事業や定期接種で被害を拡大した責任があるとしている。危険性の高いワクチンを販売した製薬企業の責任も問う方針。
厚生労働省によると、同ワクチンの接種者は約339万人。このうち2945人について、今年4月末までに頭痛や筋力低下、記憶障害などの副作用の報告があった。同省は、症状の原因はワクチンの成分ではなく、接種時の強い痛みや不安をきっかけに体が反応したものという見解。ワクチン導入で、子宮頸がんの死者数が5600〜3600人減るとの推計を出し、効果は十分としている。
世界保健機関(WHO)の専門家委員会は、症状が同ワクチンの接種の有無とほとんど関係なく起きているという研究結果を踏まえ、接種のリスクは小さいとし、「薄弱な根拠で安全で有効なワクチンを使わないことは実害をもたらす」と声明を出している。
ますます溝は深まるばかり・・・。
まずは賛成派から;
■ 脱ワクチン後進国を目指して
(2016.7.18:ケアネット)より一部抜粋
「ワクチンの日(7月6日)」を記念し、在日米国商工会議所(ACCJ)は、7月11日に「日本の予防接種率向上に向けた課題と取組み」をテーマに、都内で講演会を開催した。講演会では、ワクチン接種に関するわが国の課題や、世界的なワクチン開発の動向などが広く語られた。
◇ なぜ、ワクチンのベネフィットは報道されない!?
はじめに、森内 浩幸氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 新興感染症病態制御学系専攻 感染分子病態学講座 感染病態制御学分野 教授)が、わが国のワクチン接種の現状と、とくにHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンをめぐる諸課題について解説した。
日本では、1990年代頃よりワクチンの副反応への懸念などから接種率が向上せず、ワクチン後進国として位置してきた。しかし、2008年から小児領域でHib(インフルエンザ)ワクチンが任意接種となり、以降、米国とのギャップを埋めるべくHPV1ワクチン、PCV7(肺炎球菌)ワクチンなど接種できる種類が増やされ、定期・任意接種と幅広く接種できるようになった。しかし、ここに来て、HPVワクチンについて副反応、副作用が広く報道され、その接種が定期接種から任意接種となったことを受けて、現在では接種がほとんど行われていない状況だという。
ワクチンのリスクについて米国では、子供に重症アレルギー反応を起こす確率は100万分の1とされている。これは落雷に遭う(1万2,000分の1)、億万長者になる(76万6,000分の1)確率よりも低いとされているが、マスコミは、このまれなケースを取り上げて報道していることが多いと指摘する。また、HPVワクチンに関しては、世界保健機関(WHO)からの勧告や関連学会からの声明、全国の地域での独自調査報告など、さまざまな科学的な検証が行われ、ワクチンの有用性が示されているにもかかわらず、依然としてベネフィットに関する報道は少ないという。
今後も検証が必要だが、HPVワクチンの不定愁訴では、接種と因果関係のないものが散見され、明確に接種を中止すべきエビデンスがない以上、接種しないことで起こる将来の子宮頸がん(毎年約3,000人の患者が死亡)や性感染症でQOLを損なう患者が増えることに憂慮すべきという。
最後に、森内氏は「WHOなどの基準からすれば、わが国は今でもワクチン後進国であり、定期接種に向けてさらに働きかけを行う必要がある。また、疾病予防が評価対象とされていないことも問題ではないか」と課題を提起し、講演を終えた。
◇ 医療費を抑えるならワクチンは武器になる
続いて、マイケル・マレット氏(サノフィ株式会社サノフィパスツールワクチンビジネスユニット執行役員/ジェネラルマネジャー)が、ワクチンメーカーの視点から開発の現状と今後の展開について講演を行った。
ジェンナーの天然痘ワクチンから始まる開発の歴史を振り返り、ワクチンの効果について、ポリオを根絶しつつあることを一例に挙げて説明した。
次に、ワクチン接種の経済的ベネフィットとして、コスト効果が高いことを挙げた。ワクチン接種により、重症化による医療費増大、疾病による経済損失リスクなどを避けることができるという。また、日本のような超高齢社会では、医療コストが増大する中、予防接種により少しでもその上昇を抑えることが重要であると指摘した。さらに、日本では小児・成人ワクチン接種が増加しているが、まだ未導入のワクチンもあり、早急な導入を望むとも述べた。
世界的なワクチン開発の現状をみると、前臨床試験でジカウイルス感染症が、I/II相試験でノロウイルス、C型肝炎、III相試験でマラリア、エボラ出血熱、承認段階ではデング熱などの開発が進められている。そのうえで、大切なことは、完成したワクチンが確実に患者さんの元に届くことであり、新しいワクチンの供給には約3年が必要となることから、ワクチンがスムーズに安定供給されるために、今後も政府・産業・医療のパートナーシップが不可欠となる、と見解を述べた。
最後に「現在、ワクチンは20疾患で供給され、毎年600万人の命を救っている。これは公衆衛生上の大成果であり、今後も社会貢献のために産業、学術が手を取り合って開発・供給を行っていく」と講演を終えた。
<参考>
□ 予防接種政策への国家的取組みと改革による予防強化(ACCJによる2015年の提言)
次に反対派;
■ 子宮頸がんワクチン被害64人が提訴へ...今月27日、国と2社に賠償請求
(2016.7.13:読売新聞)
子宮頸がんワクチンの接種後に体の痛みや運動障害などの重い症状が出たとして、全国の15〜22歳の女性64人が、国と製薬企業2社に損害賠償を求める集団訴訟を今月27日、東京など4地裁で起こす。
原告弁護団が12日、記者会見を開いて明らかにした。
原告1人当たりの請求額は精神的苦痛の慰謝料1500万円に、治療や介護などの費用を加える予定。各地裁の原告数は東京28人、大阪16人、福岡14人、名古屋6人で、今後、追加提訴も検討する。
弁護団は、接種後の副作用の報告(10万回当たり約30件)が他のワクチンより多く、ワクチンに含まれる成分が体内で免疫異常などを引き起こしたことが原因だと主張。子宮頸がんの原因となるウイルス感染の5割程度しか防げないなど効果は低く、「ワクチン接種の危険性を上回る有効性はない」とする。
海外でも副作用の報告があったのに、国は2009〜11年に2種類のワクチンの製造販売を承認し、10年以降は、補助事業や定期接種で被害を拡大した責任があるとしている。危険性の高いワクチンを販売した製薬企業の責任も問う方針。
厚生労働省によると、同ワクチンの接種者は約339万人。このうち2945人について、今年4月末までに頭痛や筋力低下、記憶障害などの副作用の報告があった。同省は、症状の原因はワクチンの成分ではなく、接種時の強い痛みや不安をきっかけに体が反応したものという見解。ワクチン導入で、子宮頸がんの死者数が5600〜3600人減るとの推計を出し、効果は十分としている。
世界保健機関(WHO)の専門家委員会は、症状が同ワクチンの接種の有無とほとんど関係なく起きているという研究結果を踏まえ、接種のリスクは小さいとし、「薄弱な根拠で安全で有効なワクチンを使わないことは実害をもたらす」と声明を出している。
ますます溝は深まるばかり・・・。