徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナ、5類 vs. 2類

2023年01月22日 16時38分07秒 | 小児科診療
出現以来、“2類相当”で扱われてきた新型コロナウイルス感染症が、
「そろそろ5類にしてもよいのでは?」
という雰囲気が強くなり、
岸田首相も、
「2023年4月に5類相当に見直す」
ことを明言しました(させられました?)。

ひとことで言うと、
「感染拡大のリスクより経済を優先する」
という選択です。
つまり、
「感染しても新型コロナは怖くない」
という認識が一般化したことを意味します。

みなさんはどう感じていますか?

家族に新型コロナ患者がいて濃厚接触状態の同僚と、
マスクなしに机を並べて仕事をしても気にならなくなりましたか?

抵抗があるなら、まだ5類への移行は早いのかもしれません。

私個人としては、
死亡者数が高止まりになっていることが気になります。

感染者の全数把握を放棄した今、
感染拡大状況を一番反映するのは死亡者数です。
これが減っていないということは、
数字に出てこない感染者数がたくさん存在しているはず。

つまり、流行は潜在化しているだけで収まってはいないのです。

医療側からすると、
すべての医療機関でコロナ診療が可能になるとTVでは言ってますが…
5類になると補助金等がなくなるため、
あえてリスクを冒す必要がなくなり、
新型コロナを診ない医療機関が出てくると思います。

すると、現在より医療逼迫のハードルが下がり、
新型コロナ患者がたらい回しに合うリスクが増えますね。

患者さん側にとっては、
かかりつけ医が「発熱患者お断り」と方針を変え、
行くところがなくなるかもしれません。

待合室では発熱患者とその他の相談患者さんが、
隣り合わせで座ることになるかもしれません。

また、ワクチンや薬も有料となり、
ワクチンは1回1万円程度、
新型コロナの特効薬は1回の感染で数万円かかることになるでしょう。

今一度、2類と5類で何が違うのか、
整理しておきたいと思います。

まずは毎日新聞の記事にあった比較図を引用;




次に、わかりやすい解説で定評のある忽那先生の記事を紹介します。


新型コロナが5類に移行 メリットとデメリットは?
忽那賢志:感染症専門医
※ 下線は私が引きました。
2023年1月20日に、岸田総理は今春にも新型コロナを5類感染症に移行することを発表しました。
大きな節目となるこの5類への移行ですが、必ずしも良いことばかりではありません。
現在の「新型インフルエンザ等感染症」から「5類感染症」に移行すると、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

◇ すでに感染症法上の措置の緩和は進んできている


新型コロナ流行初期には、病原性や感染経路など未知の部分が大きかったことから厳しい対応が行われていました。
例えば、感染者は全例入院し、感染者の隔離期間や濃厚接触者の待機期間も14日間と厳しく設定されていました。
現在は、感染者の入院は原則として重症例に限られており、自宅療養も7日間にまで短縮しています。濃厚接触者の対応も家庭内感染など限られた状況に限定されています。
また、感染者の疫学調査の実施や届け出についても実現可能性などに合わせて緩和が進められてきました。
このように、すでに感染症法上の措置としても緩和が進められてきた中で、今回5類感染症への移行が進められることになりました。
それでは、現在の状況から5類への移行が起こることで、どのようなメリットやデメリットが生じうるのでしょうか?

◇ 感染時の自宅療養や濃厚接触時の待機がなくなる


現在は新型コロナと診断された方は、症状の有無にかからわず自宅療養することになっています。
また濃厚接触者も、現在は家庭内等に限定されていますが、最大5日間の自宅待機が必要となっています。
5類感染症になると、自宅療養や待機を要請する法的根拠がなくなるため、濃厚接触者や無症状・軽症の感染者は必ずしも自宅にいる必要がなくなります。
例えば濃厚接触者は、これまで通りに出勤して社会活動を継続することができるようになりますし、個人や勤務先の判断によっては感染者であっても無症状や軽症者は出勤することができるかもしれません(個人的には体調不良者は仕事を休めるような社会が望ましいと思いますが)。
一方で、濃厚接触者や感染者が市中に増えることで感染が広がる可能性があります。
濃厚接触者や感染者の方は、周囲に感染を広げないための感染対策を普段よりもしっかりと行っていただく必要があります。

◇ 行政による病床確保・入院調整がなくなる

これまでは各都道府県の自治体や保健所が中心となって、感染症指定医療機関や都道府県が指定した医療機関医療機関に病床確保を求めており、地域における新型コロナ患者の入退院調整を主体となって行ってきました。
5類感染症になると、自治体や保健所が入院調整を行う法的根拠がなくなることから、入院についても診療所や病院の間での調整になると考えられます。
同様に、外来患者の診療も発熱外来で行われてきましたが、こうした縛りもなくなることになります。
これにより、新型コロナの流行以降、逼迫していた保健所の業務が軽減され、これまで犠牲になっていた他の保健所業務への対応が手厚くなる可能性があります。
・・・
病院にとっても、新型コロナ患者用の病床がなくなることで、本来の病院ごとの特性に合わせた診療に注力することができるようになります。
例えば、本来は高度医療を提供することが求められている大学病院も新型コロナ診療を行っていましたが、5類になれば本来の使命である高度医療の提供に注力できるようになることが期待されます。
一方で、それぞれの地域で確保されていた新型コロナ用の病床がなくなることで、混乱が生じる可能性があります。
5類になると法的には全ての医療機関で診療ができるようになりますが、確保病床がなくなることで「どの医療機関も診たがらない」ということが起こりえます
これまで新型コロナ病床を確保していた医療機関は、政府からの補助金が給付されていましたが、5類になりこれがなくなれば積極的に新型コロナ患者の診療を行う医療機関は減る可能性があります
また、現在新型コロナを診療していない医療機関についても「5類じゃないから」という理由で診療していないというよりは、専門医の不足や医療機関内での感染拡大リスクを考慮してという施設が多いと考えられます。
5類になっても新型コロナという疾患そのものの特性が変わるわけではありませんので、5類になったから直ちに全ての医療機関が新型コロナ患者の診療を行うようになるとは考えにくいでしょう。
他にもホテル療養がなくなることで、新型コロナ患者の受け皿が減るなどの事態も懸念されます。
このように、5類に移行するにあたって、医療を必要とする新型コロナ患者の受け皿が適切に提供される体制が維持されるのかについては、事前にしっかりと調整をする必要があると考えられます。

◇ 公費負担でなくなる

現在、検査、治療、入院など新型コロナに関する医療費は公費で賄われています。
新型コロナが5類になると、他の5類感染症のように公費負担でなくなるのか、というのも議論されているポイントです。
公費でなくなることのメリットは、一般市民にとっては感じにくいところではありますが、検査や治療の適正化が進むことは期待されます。
現在も、不必要に検査が行われていたり、過剰に治療薬が処方されている場面も少なくありません。
新型コロナの治療薬は、例えばモルヌピラビルという抗ウイルス薬は1回の治療分で94,312円になります。
重症化リスクが高い方に処方することで、重症化を予防することができる治療薬ではありませんが、必ずしも必要ではない患者さんに処方されていたり、公費だからということもあり自己判断で最後まで内服されずに廃棄されていたりという場面も見られます。
公費でなくなれば、必要性が高い事例に検査や治療が行われることが多くなり、検査や治療の適正化が起こるかもしれません。
一方で、デメリットとしては、新型コロナに罹患した際の自己負担が増えることです。
検査費用も決して安くないですし、10万円近い治療薬の3割を負担してでも処方を希望する人は減るでしょう。
そうすると、これまでは検査を受けて新型コロナと診断されていた人が、検査を受けずに未診断のまま周囲に感染を広げてしまうことや、これまでは治療薬を処方されて重症化を防げていた人が、処方をためらい重症化してしまうことが増えてしまうことが懸念されます。
重症化リスクが高く治療薬を必要とする方が、費用のために適切な治療を受けられないということは、医療者としてはできるだけ避けたいところです。

◇ 軟着陸のための段階的な移行を

このように、春から急に5類へ移行することで、良い面もあれば、混乱が生じうる面もあります。
新型コロナは「100年に一度のパンデミック」と言われる感染症であり、成立して20年少しの感染症法の枠組みに無理に当てはめようとすると、いろいろと齟齬が生じることが懸念されます。
私個人としては一気に5類に変更するよりも、入院調整や公費負担については段階的に5類に近づけていくという柔軟な対応の方が、前述したような混乱が生じにくいのではないかと思います(すでに公費負担についてはしばらくは維持されることが議論されているようです)。
なお、5類への移行に合わせて屋内でのマスクの着用をやめることが議論されているようですが、屋内でのマスク着用は個々人の感染対策として行うものであり、感染症法の変更とは本来関係がないものであり、別途議論されるべきものです。
また、新型コロナが5類になっても疾患の特性が変わるわけではありません。
これからも感染者や重症者は増えたり減ったりを繰り返すことになりますし、今後新たな変異株が出現し、再び大きな流行が起こる可能性もあります。
5類への移行は、日本にとって大きな節目ではありますが、これで新型コロナの流行が終わるわけでもありませんし、これからは感染対策やワクチン接種をしなくて良いわけでもありません。
むしろ、これまでは感染症法によって維持されていたセーフティーネットがなくなっても新型コロナによる犠牲者が増えないようにするためには、これまで以上に個人個人の感染対策が求められると言っても良いかもしれません。
持続性のある感染症に強い社会を目指して、市民の皆さまにも引き続き流行状況に合わせた感染対策をお願い致します。

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2022年12月、中国で新型コロナ感染爆発〜国際社会とのずれ〜

2023年01月16日 07時47分04秒 | 小児科診療
新型コロナパンデミックの始まりは、
2019年12月の中国武漢。
年末に「中国で重症化しやすい肺炎が流行っている」
という情報が流れて警戒したことを覚えています。

それからの展開は皆さんご存じのとおりです。

中国は「ゼロコロナ政策」をかたくなに継続し、
ロックダウンを繰り返し、
感染者数を抑え込んできました。

しかし経済に与える影響や、
不自由な生活に対する国民の反感・怒りが、
押さえきれないほど高まり、
とうとう2022年12月に「ゼロコロナ政策」を破棄しました。

それがあまりにも唐突に行われたため、
感染が爆発して中国の医療は大混乱。
中国で採用されていたワクチンは自国製の効果が弱いタイプだったので、
多数の死者を出しました。
病院は類を見ない患者数であふれ、
葬儀場に入りきれず、霊柩車の渋滞が発生しました。

ゼロコロナ政策中は患者数や死者数など公表してきた中国政府は、
PCR検査を放棄して感染者数の公表をやめました。
死者数も基礎疾患のある高齢者は算定しない方法をとり、
「健康者が新型コロナに罹って死亡した」数だけ算定しました。
なので、1日当たり一桁というありえない数字になりました。

国際社会は、中国政府の非常識さに呆れました。
彼らは正気で今回の措置をしたのか・・・
もしそうだとしたら、中国人の思考回路を疑うことになります。

中国寄りとうわさされてきたWHOさえも、
「正確な数字を透明性をもって公表するように」
指導しました。

国際社会の反論を受け、
1/16現在、中国政府も少しずつ方向転換しています。

感染爆発は2022年12月中旬に始まり、下旬にはピークアウトした、
とされています。
現在は「もう終わった」という雰囲気らしい。
まあ、今後控えている春節で地方に広がるリスクが残っていますが。

中国が採用した方法は正しいのでしょうか?

ゼロコロナ政策でロックダウンを繰り返したところまでは、
その後世界中で同じことが施行されたので支持する意見もあります。

しかし今回の「突然のゼロコロナ政策破棄」はどうでしょう。
世界各国が恐れて対策をとってきた医療崩壊・死者数抑制を、
まったく参考にしていない暴挙と言わざるを得ないと思われます。

それに、全世界に新型コロナ患者を輸出しようとしているとさえ思える行為。
中国の感染状況が隠蔽されているので、
世界各国は中国からの渡航者の入国に対してハードルを挙げざるを得ません。
それを「中国人に対する差別だ」として報復行為を発しています。
ここまでくると、やはり話の通じる国ではないのでは…とあきらめの気持ちさえ生まれてきます。

今後も中国政府が正確な死者数を公表することは期待できません。
このままのらりくらりと逃げ続け、
「中国の新型コロナ政策は成功した」
と言い続けるのでしょう。

専制国家の怖いところです。

参考記事を紹介します。

■ 感染爆発、中国は世界を巻き込むな
遠藤誉:中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、
 コロナ感染者数が9億とされている中国大陸の人の出国を中国政府は解禁したが、それは3年前の春節における武漢でのコロナ発生時の過ちをくり返すことにならないか。人類は3年間も耐えてきた。中国には責任がある。

◆中国国内で感染が落ち着く3月過ぎまで出国させるべきではない

 1月8日から実行されることになった<新型コロナウイルス感染症“乙類乙管”実施方案>の【三、主要措置】の(十二)に書いてあるように、中国当局は「1月8日を以て、国際的のコロナ感染の形勢と各方面のサービス保証能力に基づき、中国公民が出国して旅行することを認める」ことになった。
 しかし、その時点でも中国国民の35%~80%はコロナに感染していると計算する学者がいたわけだし、今では9億人(約65%)が感染しているという試算さえある。また、コロナ感染関連の専門家は何度も、全国的なコロナ感染は春節休暇期間(1月21日~2月5日)前後にピークを迎えるだろうと予測し、「3月に入ってから落ち着きを見せるだろう」という予見を発信してきた。
 中国政府もそれを否定せず、半ば、それは政府見解のような形で動いてきた。
 だというのに、今から感染のピークに差し掛かるという春節前の1月8日に、中国大陸内にいる中国公民を世界に向けて開放してしますのは、無責任ではないのか。
 中国大陸という国境内で、中国政府がどのようなコロナ政策を実施しているかに関しては、中国大陸の事情もあり、それは一定程度その国の自由だ。
 これまでコラムで数多く書いてきたように、中国は武漢のコロナ発生以来ゼロコロナ政策を実施しながら、少なくとも2021年1月からは規制緩和策を打ち出してきた。しかし、それは中国の中央政府と地方政府との関係により、末端の現場では実施されて来なかった。実施しないのなら逮捕するぞと中央が脅しをかけた頃には、すでに中国全土のコロナウイルスは感染力が強いオミクロン株系列のBF.7の類に変わってしまっており、もはや緩和したとしてゼロコロナでは防げない状況に至っていた。
 そこで2022年12月26日に、1月8日から実施する「乙類乙管」方案へと移行していったのだ。検査をしても追いつかないし経費も高額になるので、PCR検査も廃止した。
 こうして感染爆発を起こし、集団免疫を付けさせてしまう以外に方法はなくなったのである。
 それは中国の事情で、仕方のない結果だとは思う。
 これはある意味での「大地における壮大な実験」であり、その実験結果が出るまでは大陸の者を海外に出してはならないと思うのである。
 3月に入り、本当に感染が落ち着くならば、その落ち着いた状況で、ウイルスの種類なども検査し、これなら大丈夫となってからなら、まだ出国を許してもいいかもしれないが、今は出国させるべきではない。
 「大地における壮大な実験」に世界を巻き込むなと言いたいのだ。 

◆中国からの入国者に対する水際対策の各国比較

 中国の「第一財経」が「2023年1月9日21時までの各国の措置」としてまとめた図表が中国のネットを賑わしている。微妙に実態と異なる表現もなくはないが、それを忠実に日本語に翻訳したものを作成したので、以下に記す。



 このように、赤で示した国以外は、「制限なし」か「特殊制限」あるいは「証明書の提出」程度で、割合に水際対策が緩い。
 その違いは決して「政治的な友好関係の度合い」を反映しているのではなく、主として「中国人観光客が来ないと経済が成り立たない」という側面の方が強いだろう。あるいは、自国も似たり寄ったりの情況で大差ないという国もあるかもしれない。
 結果、受け入れた見返りに中国の「感染爆発」も引き受けるわけで、「大地における壮大な実験」に参加することになるのである。

◆中国のコロナ対策は「科学的」なのか?

 中国の外交部報道官は、日本や韓国が水際対策を厳しくしていることに対して「科学的でなく、コロナ感染問題を政治化している」と強い口調で非難したが、中国は「大地における壮大な実験」に際して世界を巻き込んでいることを、「科学的だ」と思っているのだろうか?
 ちょうど3年前の春節のときに、武漢で起きたコロナに関して、中国は春節前に大量の感染者を中国全土に、そして世界各国に移動させてしまった。そのことに強い憤りを覚え、数多くのコラムを日夜書き続けたものだ。
 たとえば2020年1月24日の<新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?>や、2020年1月27日の<「空白の8時間」は何を意味するのか?――習近平の保身が招くパンデミック>あるいは2020年1月29日の<一党支配揺るがすか? 「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰>などである。
 3年間で世界各国は、それぞれの方法で免疫を付けたり、一定程度のコロナ防疫制御にそれなりの成功を収めても来ている。
 しかし、ワクチンによる免疫取得が少なく、感染爆発している中国大陸から多くの旅行客を迎える各国で、今後、どのような新しい事態が生じないとも限らない。現に上海ではBF.7よりもさらに感染力の強い、アメリカで流行しているXBB.1.5感染者が発見され、中国では緊急体制を取っているという。
 「大地における壮大な実験」は中国国境内で行ってほしい。その実験に人類全体を巻き込むべきではない。
 3年間、人類は、どれだけ耐え難い苦難に耐え、親しい人たちを失ってきたかしれない。その苦しみと哀しみを軽視すべきではない。「科学的姿勢」は「人類への愛」に満ちていなければならないはずだ。そうでなかったとしたら、人は何のために生きているのか…。
 それを振り出しに戻すな。
 なお、今年1月12日のコラム<中国、ビザ発給停止の背後にある本音>や、1月13日のコラム<中国、韓国に対するビザ発給停止の舞台裏>で、中国の国際ニュースは「日本と韓国」に集中していると書いたが、案の定、岸田首相が日本に帰国すると、突然のように元に戻った。
 本日(1月15日)の国際ニュースの冒頭は、従来通り、ウクライナがトップに来て、次にアメリカ、スペイン、ハンガリー、イギリスの順番になった。日本と韓国は、話題にさえのぼっていない。中国がいかに政治的目的でビザ発給の一時的停止を行ったかが明瞭に見えてくる。
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インフルエンザの隔離期間、覚えていますか?

2023年01月10日 07時10分22秒 | 小児科診療
2022年末から、ちらほらA型インフルエンザ陽性者が出てきました。
当地域では治癒確認が必要なくなり、
患者家族の自己判断で隔離期間を自宅療養することになります。

さて、インフルエンザと新型コロナは隔離期間が異なります。
再確認しておきましょう。

季節性インフルエンザの隔離期間は…

① 発症翌日から数えて5日間
② 学童は解熱してから2日間(園児は3日間)

①と②の両方を満たすこと必要があります。
①は「発症後」ではなく「発症翌日」であることがポイントで、
誤解されやすい点でもあります。
「発症当日」は1ではなく0日目としてカウントするのです。

また、熱はなくて症状も軽いけど、
兄弟あるいは家族が陽性なので検査したら陽性、
という例も悩ましい。
この場合は「検査陽性日を発症日と考える」
ことになります。

インフルエンザの隔離期間に関する記事が目に留まりましたので、
紹介・引用させていただきます。

■ 覚えていますか、インフルエンザの療養期間 もし家族がインフルエンザにかかったら?
倉原優:呼吸器内科医
2023/1/9:Yahooニュース)より一部抜粋;
・・・

◇ インフルエンザの療養期間は?

・・・
季節性インフルエンザは「5類感染症」に位置付けられていますが、
学校などでは学校保健安全法にのっとって、
発症後5日間かつ解熱した後2日(満1歳から就学前の幼児は3日)を経過するまで自宅待機
の出席停止になることが一般的です。
・・・
発症後3日目までに解熱した場合、6日目に登校・出勤可能となりますが、
解熱が遅れるとそのぶん後ずれしていくことになります(図1)。



「あれ、インフルエンザの療養ってこんなに長かったっけ?」
と思われる人も多いかもしれません。
そう、新型コロナと療養期間はさほど変わらないのです。
新型コロナの療養期間は現在図2のようになっており、
基本的に7日間休むというスタンスです。



◇ インフルエンザの濃厚接触者は?

新型コロナは濃厚接触者に対する外出自粛を呼びかけていますが、
インフルエンザに関して定まったものはありません。
そのため、家族がインフルエンザにかかったとしても、
基本的には登校や就業には影響はありません。
・・・
新型コロナと比べるとインフルエンザの感染性はそこまで高くありませんが、
家族内に発症者がいるといつ感染するか分かりません。
通学通勤の途中や周囲との距離がとれない場面では、
必ずマスクを着用するよう心がけてください。

◇ インフルエンザも新型コロナも同じ対策

インフルエンザと新型コロナは基本的に同じ感染経路です。飛沫感染・接触感染に加え、密な環境ではエアロゾルを介した感染が起こりえます。
・・・


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新型コロナ、流行の中心は「BA.5」から「XBB.1.5」へ(2023年1月)

2023年01月09日 09時16分10秒 | 小児科診療
新型コロナの変異株は、
武漢株→α株→デルタ株→オミクロン株
と変遷してきました。

日本では、
2022年1~3月:BA.1/BA.2
2022年4月~:BA.5 
と、オミクロン株とその派生株が続いており、
オミクロン株の息が長いことがうかがえます。

2022年12月に、XBB.1.5という株が話題に上るようになりました。
これもオミクロン派生株で、オミクロン株(BA.2.75とBA.2.10.1)の組み換え体である「XBB」と呼ばれる変異株の子孫であり、BA.5 と比べると病原性は同等、しかし免疫逃避しやすい傾向があるとのこと。 
アメリカで急速に増加しています。

■ 米国で急拡大、オミクロン株の派生型「XBB.1.5」とは?:新型コロナウイルスと世界のいま
SANAE AKIYAMA(2023.01.06:WIRED

日本でもXBB.1.5の足音がだんだん大きくなってきました。
忽那先生の書いた記事を紹介します。

■ 日本、中国など海外の新型コロナウイルス変異株の状況は?アメリカで急激に広がるXBB.1.5の特徴は?
忽那賢志:感染症専門医(2023/1/8:Yahooニュース)より抜粋;



2023年1月…現在の日本や海外での変異株の状況についてご紹介します。

◇ 日本では現在もBA.5が主流

日本での変異株の移り変わり(https://covariants.org/より作成)


オミクロン株が世界に現れたのは2021年11月ですが、約1年経過した現在もオミクロン株の亜系統が99.9%を占めており、オミクロン株以外の系統の変異株はほとんど見つかっていません。
日本では、第6波が起こった2022年1月頃からオミクロン株BA.1が主流となり、その後BA.2に置き換わり、第7波の初期からBA.5に置き換わっています。今も日本ではBA.5が半分以上を占めているという状況です。
東京都の変異株の割合の推移(東京都. モニタリング項目の分析. 令和5年1月5日公表)


現在、日本でもBQ.1、BF.7、BN.1などオミクロン株の別の亜系統が増えてきていますが、これまでのBA.1、BA.2、BA.5の急激な広がり方と比べると非常に緩徐な増え方になっています。
このことは、現在少しずつ広がっているこれらの変異株が、BA.5と比べて極端に感染力や免疫逃避が強いわけではないことを示唆しています。

◇ 中国では現時点では新たな変異株の報告はない

爆発的な感染者の増加が報告されている中国ですが、1月5日時点で・・・BF.7やBA5.2などすでに中国以外でも報告されている変異株ばかりであり、現時点で中国で未知の変異株が広がっているということはなさそうです。
・・・

◇ アメリカではXBB.1.5が増加

アメリカ合衆国における変異株の割合の推移(CDC. COVID Data Tracker/Variant Proportions)


一方、アメリカではBA.5から徐々にBQ.1系統(BQ.1/BQ.1.1)が主流になってきていましたが、2022年12月からXBB.1.5という組換え体が急激に増加してきています。
特にアメリカの東側の地域では、すでにXBB.1.5が半分以上を占めている地域も出てきています。
Xで始まる変異株は組換え体を表しており、XBBはBJ.1とBM.1.1.1の組換え体です。
組換え体は、2種類以上の変異株に同時に感染することで、感染者の体内でそれらの遺伝子が混ざり合って発生するものです。
新型コロナウイルスはヒトだけでなく動物にも感染することがあるため、動物の体内で組み換えが起こることもあります。
複数の変異株が同時に流行している状況下における新型コロナウイルスの組換えは珍しいことではなく、新型コロナウイルス感染症の流行が始まってから、いくつかの組換え体が確認されており、これまでもデルタ株とオミクロン株との組換え体であるXD、XF(通称デルタクロン)やBA.1とBA.2との組換え体であるXEなどがありました。
しかし、これまではこれらの組換え体が他の変異株よりも感染力が強く拡大したという事例はありませんでした。
しかし、このXBBはシンガポールで主流となり、そのXBBから派生したXBB.1.5がアメリカで拡大しようとしています。

◇ XBB.1.5は免疫逃避が強く、ACE2受容体への親和性が高い

このXBB.1.5という組換え体は、過去の感染やワクチン接種によって得られる免疫から逃がれる性質(免疫逃避)が強いという特徴があります。
そもそも免疫逃避はオミクロン株全体に共通する特徴ですが、XBB系統は特にその傾向が顕著であることが分かっています。
つまり、これまでのオミクロン株と比べても、過去に感染した人やワクチンを接種した人も感染しうるということになり、従来のオミクロン株よりも感染者が増えることが懸念されます
また、XBB.1.5は免疫逃避だけでなく、ACE2受容体への結合力が強いことが示され・・・それだけ感染力が強くなっていることを示唆しています。

◇ XBB.1.5の重症度は?

ニューヨーク州における新型コロナの新規感染者数および入院患者数の推移(Johns Hopkins大学 CORONAVIRUS RESOURCE CENTERより)

では実際に、このXBB.1.5が広がると感染者や重症者は増えるのでしょうか。
・・・XBB.1.5の重症度については、今後のデータの集積を待つ必要があります。

◇ 私たちにできることは?

本では、1月4日時点での公開情報ではXBB.1.5は検出されていません
・・・私達一人ひとりができることに大きな変わりはありません。
この3年間で身についた基本的な感染対策をしっかりと続けていきましょう。
また、XBB.1.5も含め世界中で広がっている変異株は全てオミクロン株の亜系統であることから、効果の程度に差はあると思われるものの、オミクロン株対応ワクチンによる感染予防効果は従来のmRNAワクチンよりも高いと考えられます(XBBに対してはオミクロン株対応ワクチンの接種によって中和抗体の上昇が得られたと報告されています)。
ぜひワクチン接種をご検討ください。

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花粉は一日のうちでいつ頃多く飛散する?

2023年01月09日 08時24分17秒 | 小児科診療
時々質問されることです。
従来は「午前10時~午後4時」が多いので、
その間は屋外活動を控えるべし、
と言われてきました。

下記報告の最近のデータでは、
・午前中は飛散数が少ない。
・午後2~9時までは多い。
となっています。

・・・午後は屋外活動を控えるべし、でしょうか。

■ 1日のうちで花粉が多く飛散する時間帯が明らかに
提供元:HealthDay News
2022/12/27:ケアネット)より一部抜粋;  
 花粉症の原因となる花粉の飛散量は、季節や日によってだけでなく、1日のうちの時間帯によっても差があり、気温の上昇に伴い増加することが明らかにされた。
・・・
 Fineman氏によると、花粉の飛散量の監視はこれまでも行われてきたが、24時間単位での測定が一般的であったという。・・・その結果、花粉飛散量は、午前4時から正午までの間は比較的少なく、午後2時から午後9時の間は多くなることが明らかになった。
・・・
 Gupta氏は、「花粉の飛散量がいつ増えるのかを知っていれば、窓を開けたり、外で運動する時間帯を選ぶ際に役立つ。また、花粉の飛ぶ時期に外から帰宅した際には、顔や手を洗い、服を着替えるなどして花粉を落とすことも重要だ」と話す。さらに同氏は、「今回の技術を応用し、花粉飛散量の情報を、アプリ等を通してリアルタイムで受け取れるようになれば、大きな利点がある」との考えを示している。
 花粉症に対して飛散量を確認する以上のケアが必要な人には、市販薬を利用する手も考えられる。その場合には、「薬をどう使えば一番効果的なのかを、専門家に相談する方が有益だ」とGupta氏は話す。それでも改善しない場合には、注射等で環境アレルゲンを投与する免疫療法もある。また、イエダニおよび雑草花粉アレルギーについては、米食品医薬品局(FDA)が承認した錠剤薬がある。同氏は、「注射剤も錠剤も、患者の症状を大いに軽減する」と話す。

記事中にスギ花粉と明記されていません。「2021年3月24日から31日にかけて米エモリー大学の研究チームとともに、アトランタの3カ所のエリアで1週間にわたり1時間ごとの花粉飛散量 」という文章があったのですが…確かにアメリカではスギが存在しないのでスギ花粉症はないのです。

アメリカ・花粉・3月で検索すると、
こちらの記事がヒットしました。
アメリカの項目を抜粋します;

■ 世界中で猛威を振るう花粉症。世界各国の花粉症事情
YOKUMIRU

アメリカ:花粉症のピークは4~7月
4人に1人と言われるほど、ブタクサの花粉症が多いそうです。
時期としては、北東部では8〜10月、西部だと4〜7月中旬まで。
そのほかにも3月~夏前まで、オオバコ、ドクムギ、ヒロハノウシノケグサなど、様々な花粉症の人がいます。
地域によっても原因植物が様々で、アリゾナ州などの中西部ではジュニパーやアカシア、
カリフォルニア州などの南部ではオーク、ニレ、ウォルナッツなどの花粉が原因となっています。
 
すると、最初の記事は「ブタクサ花粉(Ragweed)」が相当するようですね。
ちなみに、「世界三大花粉症」は、
・日本のスギ花粉症
・米国のブタクサ花粉症
・欧州のカモガヤ花粉症
だそうです。
えっ、昔は「欧州はシラカバ花粉症」だったのに・・・。
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新型コロナのオミクロン株の肺炎は2種類あります

2023年01月07日 21時26分18秒 | 小児科診療
新型コロナウイルスによる肺炎といえば、
初期の頃の武漢株では、
発症してから1週間後に重症化して肺炎を合併し、
胸部CTで両側性に胸膜付近の影が広がるタイプがイメージされます。

しかし現在流行しているオミクロン株による肺炎は病像が違うそうです。
発症から1週間まで経たないうちに、
片側性に病巣を形成する細菌性肺炎が多いとのこと。
これは季節性インフルエンザと同じパターンですね。

すると、
「新型コロナも季節性インフルエンザと同じレベルになった」
という意見が出てきそうですが、さにあらず。

細菌性肺炎になるのはワクチンを複数回接種済みのヒト。
ワクチン未接種者では、武漢株と同じ両側性のウイルス性肺炎を発症するのです。

つまり、オミクロン株の病原性は武漢株と同等。
軽く済むようになったのは、ワクチン接種のお陰ということになります。

しかし高齢者の細菌性肺炎は治療に難渋し、
命を落とすことがあります。
季節性インフルエンザと同じです。

関連記事が目にとまりましたので、紹介させていただきます。

新型コロナ第8波の「肺炎」は、コロナ禍初期の「肺炎」とはまったく違う
倉原優:呼吸器内科医
2022/12/29:Yahooニュース)より一部抜粋;
・・・
一言でコロナ肺炎といっても、現在はコロナ禍初期のウイルス性肺炎とは別物なのです。
◇ コロナ病棟は高齢者が過去最多
アルファ株やデルタ株のときは、酸素吸入が必要になる重症例が多かったとはいえ、
若年~中高年の患者さんが主体でしたから、
トイレや食事など基本的な身の回りのことをできる人が多かったです。
しかし、第8波の新型コロナ入院は、高齢者比率が過去最多となっており、
たとえば東京都では全体の過半数を80歳以上が占めます。
・・・
◇ 第8波は細菌性・誤嚥性肺炎が多い
コロナ禍初期にみられた新型コロナ肺炎は、
ただただウイルスが肺内で暴走している現象をみていました。
「ウイルス性肺炎」は、肺の中で同時多発的に起こるので、
刷毛(はけ)で塗ったように薄い白色のカゲが肺全体に広がります。
そのため、「両肺が真っ白」になる人が多かったのです。
オミクロン株以降、
ワクチン未接種者を除いて、こういうウイルス性肺炎は減りました。
かわりに、高齢者が増えたことによって、新型コロナ陽性の細菌性・誤嚥性肺炎が増えました。
誤嚥した細菌・食事が肺の中に転がっていくから、
肺の背中側や下側に起こりやすいのです。
なので、限られた場所に肺炎が起こります。
高齢者の細菌性・誤嚥性肺炎は、
短期的に解決できる問題ではありません。
誤嚥する患者さんに対して、
「療養期間が終わったので施設に戻りましょう」というわけにはいかないのです。
・・・
◇ まとめ
コロナ禍初期と比べると、
細菌性・誤嚥性などの「治りにくい肺炎」が多くなってきているのが第8波です。
こういった医学的弱者の入院期間は長くなりますので、
間接的に他の患者さんの医療が逼迫してしまいます。
たとえ「5類感染症」になったとしても、
これは高齢者を支える世代である私たちが向き合わなければならない問題なのです。
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発熱しました・・・新型コロナ?インフルエンザ? → 両方検査!

2023年01月07日 14時50分29秒 | 小児科診療
2023年になりました。
この冬は、地球上の人類が初めて“ツインデミック”を経験するシーズンになりそうです。

当院でも年末から新型コロナ陽性者以外に、
A型インフルエンザ陽性者が散見されるようになりました。

年明け以降もまだ患者数は少ないですが、
その傾向が続いています。

さて、熱が出た場合、
症状で新型コロナとインフルエンザは区別できるでしょうか?
答えは・・・区別できません。

武漢株やデルタ株では初期の強い咽頭痛や味覚・嗅覚障害が特徴でしたが、
オミクロン株では目立たなくなってきました。

検査をタイミングよく行い、
鑑別するしか方法がありません。

そのタイミングとは・・・
インフルエンザは発熱後12時間(最低6時間)経ってから、
新型コロナは随時OKなのですが、
私自身の経験から、熱がない場合は連日数回の検査が必要と考えます。

私は2022年8月に新型コロナ陽性となりました。
その時点でワクチンは4回接種済み。
1日目:咽頭違和感と声がれ、無熱 → PCR検査陰性
2日目:咽頭違和感と声がれ、無熱 → 抗原キット陰性
3日目:咽頭違和感と声がれ、微熱 → PCR陽性
という経過で、なんと3回目・3日目でようやく陽性になったのです。

当院では新型コロナとインフルエンザが同時にわかる抗原キットを導入しています。
それを上記のタイミングで行っていく予定です。
※ 現在は市販もされています(具体的な使い方・扱い方はこちら)。

新型コロナとインフルエンザを比較した記事が目に留まりましたので、
紹介&引用させていただきます。

読んで私が感じたポイントは、
・2つの感染症の症状はオーバーラップするので、「この症状があるからコロナ」「この症状がないからインフルエンザ」などという区別はできない。
・各症状の“強さ”は①新型コロナと②インフルエンザに差が認められる。
(例)
咽頭痛  ①>②
頭痛   ①>②
節々痛  ①<②
味覚障害 ①>②
・・・ただ、これらの知識があっても、
目の前の患者さんがどちらか判定するのは至難の業です。

この症状は新型コロナですか?インフルエンザですか? 
倉原優:呼吸器内科医
2023/1/6:Yahooニュース)より一部抜粋;
・・・症状によって、新型コロナかインフルエンザか当たりがつくのかどうか、書きたいと思います。
◇ 症状に違いはあるのか?
コロナ禍初期は、咳や息切れがしんどかったり、味覚障害・嗅覚障害などの特徴的な症状があったりした場合、「新型コロナかな?」と当たりをつけることが可能でした。とはいえ、コロナ禍初期はインフルエンザ自体が流行していなかったので、そもそも両者を区別する必要がなかったのも事実です。
さて、症状によって新型コロナとインフルエンザの当たりがつくのかと問われると、オミクロン株以降は正直区別が厳しいです(⇩)。

表. 新型コロナ(オミクロン株)・インフルエンザ・かぜの症状(参考資料1, 2などをもとに筆者作成)

・・・
あくまで私見ですが、発熱や筋肉痛が急速にやってくる「典型的なインフルエンザ」っぽいときは、やはりインフルエンザのことが多いという印象はあります。新型コロナでも、急速に多彩な症状が出現することがありますが、ワクチンの効果もあって、ゆっくり症状が出現したり普通のかぜのような症状になったりすることも多いです。
また、潜伏期間が新型コロナより短めなので、「あの人からうつったのかな」というのが明確に分かりやすいのがインフルエンザでもあります。とはいえ、オミクロン株以降、新型コロナの潜伏期間もどんどん短くなっているため、この差もいずれなくなるかもしれません。
◇ 同時流行下では同時検査すべき
新型コロナとインフルエンザが同時流行している現在、同居家族がすでにどちらか陽性と分かっているような場合を除き、基本的に同時検査するほうが望ましいと考えます。
現時点では、発熱者のほとんどが新型コロナですが、今後インフルエンザの割合が増えて逆転する時期が来るかもしれません。そうなると、「まず新型コロナの検査をしましょう」という現在の推奨は体をなさない可能性があり、やはり同時検査キットの使用が望ましいと個人的に考えます(図)。

図. 同時検査キットを用いたフロー(筆者作成)


同時検査キットは、すでにドラッグストアやオンラインで市販が開始されています。第1類医薬品に該当するため、本来であれば薬剤師からの口頭説明が必要なのですが、事態が事態ですから、オンラインで問診に回答し、薬剤師からのメールを確認した後でも購入が可能となっています。
症状が出て間もない場合、インフルエンザ陽性がまだ検出できないことがあり、早すぎる検査は推奨されません
・・・
新型コロナとインフルエンザに同時感染する患者さんはまれですが、もし同時感染すると死亡リスクが大きく上がることが示されています(3)。
・・・
◇ まとめ
症状のみで新型コロナとインフルエンザの当たりをつけるのは至難の業なので、現状検査に頼らざるをえません。
重症化リスクが高くない人は、うまく自己検査を活用することが望まれます。
・・・

<参考>
(2) Pata D, et al. Mediterr J Hematol Infect Dis. 2022; 14(1): e2022065.
(3) Dao TL, et al. J Clin Virol Plus. 2021; 1: 100036.
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中国で爆発的に流行している新型コロナ株は「BA.5」

2023年01月06日 07時24分46秒 | 小児科診療
中国でなし崩し的に感染対策が緩和され、
現在パンデミック状態になっています。

中国産ワクチンはmRNAではなく、
“不活化”ワクチンというタイプなので、
効果が低く、免疫の持続も期待できません。

さて、中国で流行しているウイルス株は何でしょう?
気になります。

もし、新たな変異株であった場合、
それが外国に広がると被害が拡大します。

そこに飛び込んできたWHOからの報告は「BA.5」。
新たな変異株ではなさそうです。
少しホッとしました。

それにしても、中国の情報統制はひどい。
正しい感染状況が把握できません。
これをみると、新型コロナが武漢で発生したときも、
情報を隠していた可能性が大ですね。

やはり専制国家の情報は信用できません。


新型コロナ「感染急拡大の中国で新たな変異株確認されず」WHO
2023年1月5日:NHK)より抜粋;
WHO=世界保健機関は、新型コロナウイルスの感染が急拡大している中国の当局からウイルスのデータが示され新たな変異株は確認されなかったと明らかにしました。
一方で、死者数などについて実態を正確に反映していないと指摘し、中国側にさらなる情報の開示を求めました。
WHOは、感染が急拡大している中国の疾病予防センターの専門家と行った会合の中で先月1日以降に現地で採取された2000以上のサンプルに基づいたウイルスのデータが示されたと4日、発表しました。
中国側の解析では、これらのウイルスは、オミクロンの変異株である「BA.5.2」や「BF.7」など、すでに各国でも確認されているもので、新たな変異株は確認されなかったということです。
・・・
◇ EU 中国からの渡航者めぐる対応を協議
EU=ヨーロッパ連合の加盟国は4日、中国からの渡航者をめぐる対応について協議しました。
EUではすでに一部の加盟国が水際対策の強化を発表していますが、協議の結果、各加盟国が連携して予防的な対応をとることで合意しました。
具体的には、
▽中国を発着する便のすべての利用者に対して、機内でマスクの着用を推奨するほか、
▽各加盟国に対しては、中国からのすべての渡航者に、出国する前48時間以内に行った検査での陰性証明を求めるよう、強く推奨する
としています。
・・・

 日本、年末年始もコロナ世界最多 中国4位、感染実態反映は不正確
【ジュネーブ共同】世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス感染症の集計で、昨年12月26日から今月1日までの週間感染者数は、日本が94万6130人で世界最多だった。一方、感染拡大が懸念されている中国は韓国、米国に次いで4番目に多い21万人超にとどまっており、WHOは実態を正確に反映していないとみている。
 同期間の週間死者数は、2501人の米国が最多で、日本は2番目に多い1941人。中国は5番目に多い648人だが、新型コロナ感染者が死亡した際、呼吸器系不全が原因でない場合は死者数に含めていないため、WHOは死者数も過少報告されているとの見方を示している。


中国から成田に入国した新型コロナ陽性者のウイルス株も、
「BA.5」「BA.7」が中心のようです。

一方、東京で検出される新型コロナウイルス株は、
「BA.5」が減少して5割を下回り、
「BF.7」「BA.2」「BQ.1」に変わってきたようです。

免疫回避能力が高い「BQ・1」増加、第7波主流「BA・5」は5割切る…東京のコロナ感染
(2023/01/05:読売新聞)より抜粋;


 東京都内の新型コロナウイルス感染者のうち、昨夏の第7波で主流だったオミクロン株の「BA・5」の感染者が全体の5割を下回り、同株の新系統への置き換わりが進んでいることが、5日に公表された都の資料でわかった。新系統はワクチン接種などで獲得した免疫を逃れる能力が高いとされ、都は警戒を強めている。
・・・
 都によると、BA・5への感染が疑われる感染者の割合は、昨年7月中旬から10月上旬までは全体の9割以上を占めていた。その後、徐々に減少し、直近1週間(昨年12月20~26日)では44・9%まで下落した。
 一方で、オミクロン株の新系統の割合は徐々に上昇。BA・5から派生した「BF・7」疑いが22・4%、「BA・2・75」疑いが9・3%、「BQ・1・1」疑いが8・4%となった。
 国立感染症研究所が昨年末に公表した全国の推計では、「BA・5」の割合は昨年12月20日時点で50%にまで低下。代わりに「BA・2・75」や「BQ・1」などに置き換わりが進む可能性が指摘されている。
 特に「BQ・1」は感染を防ぐための免疫を回避する能力が高いとされる。厚生労働省の助言機関は「感染者の増加につながりやすいとの指摘もあり、感染状況を注視していく必要がある」としている。
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2020年以来のインフルエンザ流行(2022/23) → ツインデミック!

2023年01月05日 08時03分59秒 | 小児科診療
新型コロナが登場した2020年1月以降、
季節性インフルエンザは日本で流行しませんでした。

しかし2022/23年シーズンは、
感染対策緩和の影響で、
とうとうインフルエンザ流行が出現しました。

今シーズンは新型コロナ+インフルエンザの“ツインデミック”が予想されます。
医療現場は混乱しそうです。

それは、新型コロナPCR検査とインフルエンザ検査の両方を行う場合です。

当院は発熱外来を開設し、
濃厚接触者(≒ 家族内感染)を対象に診療しています。
新型コロナが陽性になっても、
小児に使える特効薬は存在しないので処方は変わらず、
検査結果を電話連絡して自宅療養のアドバイスをしています。

そこにインフルエンザ検査が入ると混乱します。
インフルエンザ陽性で抗インフルエンザ薬を希望する場合は、
処方箋が変わるので、結果が出るまで待機してもらわねばなりません。
新型コロナのPCR検査は時間がかかるので、
その待ち時間が長くなりがちです。

すると、具合の悪い子どもをずっと車の中で待たせることになり、
あまり好ましくありません。

当院では、一度帰宅していただいて、
インフルエンザ陽性者にはご家族が処方箋を取りに来る方法を考えています。

もしくは、新型コロナに関しては、
自宅で抗原キットを使用して確認する方が、
2回来院せずに済むという選択肢もあります。

なお、新型コロナとインフルエンザ両者がわかる“抗原キット”では、
待ち時間が長くなることはありません。
あくまでも“新型コロナのPCR検査”が入る場合です。


 インフルエンザ 全国的な流行期入り 17都道府県で目安超える
(2023年1月4日:NHK)より抜粋;


インフルエンザの患者数は、先月(2022年12月)25日までの1週間で全国で流行期入りの目安を超え、地域別でも17の都道府県でこの目安を上回っています。全国的な流行期に入るのは、新型コロナの感染拡大が始まって以降、今シーズンが初めてで、厚生労働省は新型コロナとの同時流行に備え、基本的な感染対策の徹底を呼びかけています。
厚生労働省によりますと、先月25日までの1週間に、全国およそ5000か所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、前の週より3511人多い6103人でした。
インフルエンザは1医療機関当たりの1週間の患者数が、全国で1人を超えると「全国的な流行期」入りとされていて、今回「1.24人」と目安を超えたことから、厚生労働省は「インフルエンザの流行期に入った」としています。
・・・

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新型コロナ陽性者の隔離期間を再確認

2023年01月04日 08時20分53秒 | 小児科診療
2022.9.26以降、
新型コロナ陽性者の管理を保健所が担当しなくなりました。
つまり「自己判断・自己責任」で、
「隔離」と「自宅療養」をすることになります。

自宅で抗原検査キット陽性の届出も“義務”ではなくなりました。
行政からの支援が欲しいときには、
登録してサポートを受ける“権利”はあります。

つまり、現在発表されている「陽性者数」は現実を反映していません。
私は発表数の2倍以上陽性者がいると思っています。

さて、当院で陽性判定をした患者さんには、
自宅療養・隔離の手引きとして以下の内容のプリントを配布しています。
参考にしてください(ただし群馬県在住者向けです)。


                                                                        
【新型コロナ抗原検査が陽性になった方へ】  
                       
(注)抗原検査キットが「研究用」は無効です。「医薬品」であることを確認してください。 
                       
<保健所からの連絡対象の変更(2022年9月26日)>                      
・9/26以降は「入院した方」「重症化リスクのある方」以外、保健所から連絡はありません。
・行政の支援を希望する方は、自分で「健康フォローアップセンター」に電話連絡して登録してください。

全国各都道府県の相談窓口(厚生労働省)
                       
<陽性者の自宅療養と隔離期間>
・検査陽性になった方は隔離・自宅療養が必要です。お薬ご希望の方は、当院の電話診療をご利用ください。 
・隔離解除は「発症日の翌日から数えて7日間以上経過しかつ症状軽快から24時間以上経過」が条件です。 
・10日間は感染リスクが残りますので、その間は自主的な感染予防行動を続けてください。
                       
<濃厚接触者と隔離期間>
・同居家族は基本的に濃厚接触者となります。濃厚接触者の隔離期間は、
1 .発症した翌日から数えて5日間(6日目に隔離解除)
2 .隔離2日目/3日目の抗原定性検査が両方陰性の場合は3日目に隔離解除               
→ただし1・2いずれの場合であっても7日間を経過するまでは検温など自身による健康状態の確認などを行うこと。                       
<陽性になったあなたと(同居家族以外で)濃厚接触した人がいる!>
・あなたと濃厚接触(1m以内で十分な感染予防なしで15分以上の接触)したと思われる方がいれば、あなたがその 人に連絡してあげてください。                                                                                                                                                             
    
★ 追加
忽那Dr.の解説で分かり易いイラストがありましたので、引用させていただきます;

さて、隔離解除される第8病日時点で、感染力(周囲の人に感染させる力)はゼロなのでしょうか?
・・・残念ながら、16%の人に感染力が残ります(⇩)。


もう一つ、興味深いグラフがありました。
新型コロナウイルス各株の感染力持続期間の比較です。
潜伏期は野生株(=武漢株)>デルタ株>オミクロン株と徐々に短くなってきましたが、
感染力持続期間は変わっていません。
ですから本当は、隔離期間はそのまま10日間必要なはずです。
それを短くしたのは、医学的・科学的知見より、
社会活動をこれ以上停滞させられないという政治的判断を優先しただけなのです。


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