徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ダニアレルギーの舌下免疫療法も近々登場

2015年01月30日 17時04分19秒 | 小児科診療
 2014年10月に発売されたスギ花粉症舌下免疫療法(シダトレン®)につづき、ダニアレルギーを対象とした舌下免疫療法、しかも今回は錠剤が近い将来に発売されそうです。

■ ダニアレルギー減感作の舌下錠申請
(2015年1月28日 化学工業日報)
 鳥居薬品はこのほど、室内塵ダニアレルギーを対象とした減感作療法薬「TO-203」について、アレルギー性鼻炎を適応症として厚生労働省に製造販売承認申請した。先月末に注射剤の承認を取得したが、舌下投与の錠剤も開発した。
 減感作療法はアレルゲンを少量ずつ投与して過敏性を減少させ、アレルギー症状の完治や軽減を図る治療法。TO-203はダニから抽出した原末を錠剤化した薬剤。デンマークのALKアベロ社から日本での独占的権利を取得して開発した。鳥居薬品はアレルギー性喘息の適応症でも国内第2/3相臨床試験を行ったが主要評価項目を達成できず、主要評価項目を満たした鼻炎症状のみで承認申請した。
 先月末に同様の効能効果で注射剤の「TO-204」、アレルゲン検査薬「TO-205」の製造販売承認を取得しており、経口剤の選択肢が加わる。ダニアレルギー性鼻炎に対する減感作療法では、塩野義製薬も舌下錠を承認申請中。


 喘息の治験もしたけど、有意差が出なかったのですね(残念)。

 ダニアレルギーによるアレルギー性鼻炎患者さんは1年中鼻汁/鼻閉に悩まされています。
 ずっと薬を使うことになるので「症状が楽なときは休薬してください」としかアドバイスできずにいました。
  そのような患者さんには、この舌下免疫錠は大きな福音になりますね。
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インフルエンザに罹ってしまいました。

2015年01月30日 16時42分31秒 | 小児科診療
 恥ずかしながら、医師の私自身がインフルエンザに罹ってしまいました。

 悪寒が少しあったものの発熱はせず、くしゃみ/鼻汁/鼻閉で経過し「ちょっと早いけど花粉症かな?」と抗アレルギー薬を飲みはじめたのですが、その後風邪声になってきたので念のため調べたらはっきりくっきりA型インフルエンザが陽性。
 診断後に倦怠感があり体温を測ると37℃台の微熱、それも翌日平熱に下がり、今は元気です。

 感染対策(隔離措置)として今週いっぱい、臨時休診とさせていただきました。
 ご迷惑をおかけします。

 毎年インフルエンザワクチンを2回接種し、冬期はマスクをして診療してきましたが、撃沈です(涙)。
 まあ、軽く済んでいるとは言えますが・・・。
 迅速診断キットが発売されてから、自分自身が陽性になったのは初めての経験。
 迅速診断キットがない時代は、「風邪気味」として診療を続けていたんだろうなあ。

 大人でこの程度の症状なら、ふつう医者には行かないと思われます。
 すると、「ちょっと風邪気味」、しかしその実態は「インフルエンザ患者」が街にはあふれていることになりますね。
 くわばらくわばら。



 
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救急車同乗記~小児医療過疎を実感

2015年01月27日 07時49分16秒 | 小児科診療
 最近、患者さんを病院へ搬送する目的で救急車に2回同乗しました。
 患者さんは2人とも熱性けいれんで、当院待合室でけいれんが始まりなかなか止まらないので処置をした後の搬送です。

 当地域は、市内の基幹病院小児科病棟が閉鎖してしまい、救急対応不能状態。
 そのため、市外の総合病院小児科まで搬送する必要があります。
 搬送先の病院には、圏外からの受け入れを承諾していただき、感謝しております。
 ただ、以前は5分で病院に着いた救急搬送が、受け入れ先により20~30分かかるようになったことも事実です。

 幸い、今回の例は途中でけいれんが止まってくれたものの、もし脳症などで止まりにくい場合は病院レベルの医療を受けるまでに時間がかかり、その間に病状が悪化する可能性が否定できません。
 また、私が救急車に同乗すると、当然ながら当院の患者さんの診療ができなくなります。
 患者さんを受け入れ先病院の医師にお願いし、帰ってくるまで約2時間。
 2回とも、診療を待つ患者さん20名弱に事情を説明して帰っていただき、ご迷惑をおかけしました。

 地域小児医療過疎を実感するエピソードでした。
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最近のインフルエンザ集団感染と死亡例

2015年01月25日 09時14分41秒 | 小児科診療
 現在、日本列島はインフルエンザ流行のピークを迎えています。

■ インフルエンザ:猛威、全国警報レベル 2週連続、200万人突破
(毎日新聞社 2015年1月24日)
 国立感染症研究所は23日、18日までの1週間に全国約5000の定点医療機関を受診したインフルエンザの患者は平均37人で、全都道府県で警報レベルの30人を超えたと発表した。医療機関内での集団感染による死亡例や高齢者の重症化が目立つことから、専門家は抗ウイルス薬の予防投与を呼び掛けている。
 感染研によると、この間のインフルエンザ患者数は推計201万人で、2週連続で200万人を超えた。九州地方での増加が目立ち、1医療機関当たりの患者報告数は宮崎県99・58人▽沖縄県84・78人▽熊本県73・59人▽佐賀県69・74人▽大分県66・47人――など。
 検出されたウイルスはA香港型(H3N2)が最も多い。他の型に比べ、高齢者や小児で重症化しやすいと言われる。報告された入院患者の66%が60代以上で、22%が9歳以下だった。


 最近話題になった、病院/施設でのインフルエンザ集団感染のニュースをピックアップしました。

(報道年月日)所在地 ー 病院/施設 ー 感染者数(患者・入所者/職員)ー 死亡者数(患者/職員)ー 施行していた感染予防対策
(1.24)広島県八千代市 ー 八千代病院 ー 25人(16/9)ー 1(1/0) ー 不明
(1.24)滋賀県草津市 ー 特老「ぽぷら」ー13(8/5)ー 1(1/0)ー 不明
(1.23)愛媛県西条市 ー 西条中央病院 ー 29(17/12)ー 4(4/0)ー ワクチン(ほとんどの患者と職員)
(1.22)大阪府寝屋川市 ー 結核予防会大阪病院 ー 31(不明)ー 2(2/0)ー 不明
(1.21)福岡県北九州市 ー 鳥巣病院 ー 51(41/10)ー 2(2/0)ー 不明
(1.21)愛媛県八幡浜市 ー 市立八幡浜総合病院 ー 36(24/12)ー「マニュアルに従って対策を講じてきた」
(1.20)大阪府箕面市 ー 箕面市立病院 ー 12(9/3)ー 2(2/0)ー 不明
(1.19)長野県松本市 ー 国立病院機構まつもと医療センター松本病院 ー 25(21/4)ー 2(1/1)ー 不明
(1.18)香川県観音寺市 ー 高齢者施設「とよはま荘」ー 22(19/3)ー 不明
(1.10)広島県竹原市 ー 安田病院 ー 93(66/27)ー 1(1/0)ー 不明
(2014.12.30)宮崎県高千穂町 ー(高齢者施設)ー 30(20/10)ー ワクチン(全員)


 これらの中で、感染拡大の原因にまで言及した記事はほとんどありません。
 メディアはキチンと情報収集して報道していただきたい!
 ・・・そんな中、なんとか二つ見つけました;

■ インフル感染後も「鼻水程度の症状」で勤務続行(2015年01月24日:読売新聞)
 愛媛県西条市朔日市の西条中央病院でインフルエンザの集団感染が起き、入院患者4人が死亡した問題で、23日の記者会見で、感染拡大を防げなかった病院の体制の甘さが明らかになった。会見で、高田泰治院長らは、感染していた職員が勤務を続けたため、職員同士で感染が広がったと説明した。「職員は予防接種を受けていて、鼻水程度の症状はあったが仕事を続けた」として、当初、職員には感染の自覚がなかったことがわかった。

■ インフルエンザ 施設の対策 再点検を(2015.1.25:信濃毎日新聞より抜粋)
 松本市の国立病院機構まつもと医療センター松本病院でインフルエンザの集団感染が発生し、入院患者と看護師が亡くなった。
 亡くなったのは、重症の白血病で入院していた70代の男性と、病棟でインフルエンザ患者を担当していた40代の女性看護師だ。病院の説明では、今月10日にインフルエンザの患者3人が入院して以降、入院患者21人と看護師4人に感染が広がった。
 病院はマスクの着用や手洗いの励行など例年通りの予防を実施。感染拡大が確認されてからは、面会を制限し、新たなインフルエンザ患者を受け入れないなどの対策を進めたという。
 2年前、上田市の病院で集団感染が発生し、高齢の入院患者2人が亡くなった。発症した患者、職員は全員が予防接種を受けていたが、防げなかった。この時、早めの検査や疑わしい段階で抗ウイルス薬を投与することが今後の課題として挙がった。こうした教訓が共有され、生かされたのか。病院だけでなく県も検証すべきだ。
 厚生労働省は「インフルエンザ施設内感染予防の手引き」を示し、施設の特性に応じた対策を求めている。例えば、感染の拡大防止では、流行期に可能な限り空いた個室を用意しておき、患者が発生した場合に使うといった危機管理を挙げている。足元の対策に盲点がないか。病院や高齢者施設は確かめる必要がある。
 今回、医療従事者の間に波紋を広げているのは、健康だったとされる看護師がインフルエンザ脳症で亡くなったことだ。
 インフルエンザで最も重い合併症である脳症の発症は、これまで乳幼児に集中していた。まれに大人が発症するのは、持病があるケースだった。2009年にも鹿児島県内の看護師が新型インフルエンザの脳症で亡くなっているが、脳や甲状腺に持病があった。持病がなく、予防接種も受けていた大人がなぜ、重症化し死亡に至ったのか。解明し、対策に生かすことも欠かせない。


 「ワクチンを接種していたから大丈夫と思った」と病院側が認識していたら、それはプロとして甘いと云わざるを得ません。
 また、日本では「鼻水くらいでは病気のうちに入らない、高熱で寝込む以外仕事を休むなんてあり得ない」というのが一般常識。これを変えない限り、集団感染のリスクはなくならないでしょう。難しいですね・・・。

 当院でも先週はスタッフが2人インフルエンザに感染し、約1週間隔離措置(学童と同じ基準を適用)として休んでいただきました。おかげでやりくりが大変になり、医師の私は元気だけどスタッフがいないため、あわや臨時休診となる危機に見舞われました(苦笑)。
 あ、もちろん私を含めてスタッフ全員、毎年せっせとワクチンを接種しています。
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「HPVワクチンの勧奨中止は残念」と考えている10歳代後半女性は多い

2015年01月22日 06時58分10秒 | 小児科診療
 HPVワクチンに関するニュースでは“反対派”の意見が目立ちますが、実際に受ける10歳代女子の考えが報道されることは希です。
 そんな中、下記アンケート結果が目にとまりました;

「HPVワクチンの勧奨中止は残念」10歳代後半女性で最も高い 日本家族計画協会
(2015.1.19:MTProより)
 日本では若年女性への子宮頸がん予防を目的に一昨年(2013年)4月,ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが定期接種化されたが,2014年6月に積極的勧奨が中止されている。このたび,日本家族計画協会の調査で「HPVワクチンの積極的勧奨が中止されたのは残念」と回答した割合は,同ワクチン接種対象年齢に該当する16~19歳の女性で全年齢を通して最も高かったことが分かった。



 一方,20歳以上の女性では「痛みなどの原因を追究するためには必要な措置」が「勧奨がなくなったのは残念」より多くなり,「検診で十分」という割合も増えていた。
 日本家族計画協会理事長の北村邦夫氏は「“HPVワクチン定期接種の勧奨がなくなったのは残念”との回答割合は,接種対象年齢に該当する16~19歳の女性で高かった」と指摘。一方,それ以上の年齢の女性では「ワクチン接種がなくても検診で十分」との回答が「勧奨がなくなり残念」を上回って多かったと述べ「子宮頸がんは検診だけでは予防できないことが成人女性の間で十分認識されていないことは問題」と話した。


 予防接種を受ける受けないは基本的には個人の判断によりますが、選挙権のない、発言権の弱い彼女らの考えを代弁するのは、いったい誰なのでしょう?

<追記>
 関連ニュースです。

■ HPVワクチン「1回で十分」 【米国癌学会】(2013年11月21日 米国学会短信:m3.com)
◇ 1回投与で抗体レベルは4年間安定
 米国癌学会(AACR)は11月4日、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの1回投与で十分な長期的免疫が得られることを示唆する研究を紹介した。Cancer Prevention Research誌に掲載。
 この研究は、米国立癌研究所(NCI)によるHPV 16/18 L1 VLPワクチン(商品名サーバリックス)の有効性に関する第3相臨床試験のデータを使用。ワクチン投与を受けた被験者女性(1回投与78人、2回投与192人、3回投与120人)の血中抗体レベルを調べ、ワクチン未投与だが過去の感染により抗体を持つ女性113人と比較した。
 ワクチン投与を受けた被験者は、HPV 16および18に対する抗体を、回数にかかわらず全員が最高4年間保持していた。また、1回投与を受けた女性の抗体レベルは、投与完了者(3回投与)よりも低いとはいえ安定しており、長期的な免疫応答が得られていることが分かった。1回および2回投与群の抗体レベルは、ワクチン未投与のHPV感染経験者より5-24倍高かった。
 「このような結果を得たことから、HPVワクチンの投与スケジュールを簡素化できる可能性がある。ただし、米国その他で使用頻度の高いガーダシルについては調査しておらず、ガイドライン書き換えにはさらにデータが必要」と、研究者は述べている。

【関連リンク】
・One Dose of HPV Vaccine May Be Enough to Prevent Cervical Cancer

■ 9価HPV接種、癌化9割予防を予測 【米国癌学会】(2014年10月14日 米国学会短信)
◇ 浸潤性子宮頸癌約90%と前癌病変の大部分が予防可能に
 米国癌学会(AACR)は10月1日、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対する9価ワクチンにより約9割子宮頸部癌を予防できる可能性を示した研究を紹介した。Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌に掲載。
 この研究は、4価HPVワクチンに対する治験3件でプラセボ群に登録された女性1万2514人(15-45歳)のデータを分析したもの。被験者のうち2507人が、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1-3または上皮内腺癌(AIS)と診断された。これらの前癌病変について、米国食品医薬品局が現在審査中の9価HPVワクチンが対象とするHPVサブタイプを有する病変の数を推定した。
 単独病変に存在する複数のHPVサブタイプについて補正すると、9価ワクチンに含まれる高リスクサブタイプのうち7種が認められたのはCIN1の約55%、CIN2の約78%、CIN3の約91%、AISのほぼ100%。前癌病変のある女性のうち、単独HPVに罹患していたのは15-26歳で54%、24-45歳で59%、1種以上のサブタイプに感染していたのは15-26歳で32%、24-45歳で19%だった。
 研究者は「子宮頸部前癌病変の85%以上が、9種のサブタイプ(6、11、16、18、31、33、45、52、58)によって起きる。9価ワクチンを適切に使用すれば、世界中の浸潤性子宮頸癌の約90%と前癌病変の大部分が予防できるだろう」と述べている。

【関連リンク】
・Nine-valent HPV Vaccine May Prevent Nearly 90 Percent of Cervical Cancers
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流行期にインフルエンザ検査は必要か?

2015年01月21日 08時34分58秒 | 小児科診療
 当地域でもインフルエンザが流行中。
 現在のところ、ほとんどがA型ですね。

 日々、鼻をこちょこちょ(グリグリ?)する検査で子どもに嫌われています(苦笑)。
 ちなみに、当院の検査方針は・・・

・希望があれば基本的に検査します。
・発熱当日の場合は、検査の感度が低いことを説明し、待てるようであれば翌日以降の検査を勧めます。それでも希望される場合は「今日陰性でも明日再検すると陽性になる可能性があります、2回やる羽目になっても恨まないでね」と念を押して行います。
・家族内にすでに診断された患者がいれば、検査を省略して治療をするのも可。ただし、その場合も隔離期間は守っていただきます。


 ・・・といったところ。
 この悩ましいインフルエンザ検査の問題点を指摘する記事をみつけました;

インフルエンザ検査は必要か
(2015.1.20 産経新聞より)
 インフルエンザの流行期には、多くの患者が検査を希望します。検査によって「インフルエンザかどうか診断がつく」と思っている人は多いのですが、そんなに簡単な話ではありません。がん検診の際に「検査には偽陽性と偽陰性がある」という話をしましたが、それはインフルエンザ検査も同様なのです。
 インフルエンザ検査の最大の弱点は、かかり始めの初期には実際はインフルエンザであるにもかかわらず、検査が陰性になってしまう偽陰性が20~30%あるということです。
 検査の結果に基づいて、医師が「陰性だからインフルエンザではない」と言えば、患者は「インフルエンザじゃなかった」と無理をして職場に行き、結果的に流行を広げてしまうことになります。困ったことですが、これは検査をするから起きる問題とも言えます。
 インフルエンザの初期には、病歴と診察だけで診断した方が検査をするより正確という研究結果があります。インフルエンザにかかった場合、のどにイクラ状の盛り上がりができます。流行期にこうした症状がみられれば、検査をしなくても、かなり正確にインフルエンザであるとの診断がつきます。
 インフルエンザ検査をむやみに受けるのはよくありません。とくに流行期には、いかにもインフルエンザという人の検査は不要で、むしろ、インフルエンザらしくない人にこそ検査が必要と言えます。(武蔵国分寺公園クリニック院長・名郷直樹)


 一方で、インフルエンザ流行期に症状だけで診断すると、ベテランの医師でさえ2割は間違う(インフルエンザでない患者をインフルエンザと診断してしまう)という報告も過去にはありました。
 喉の奥がイクラ状にブツブツ腫れるのは有名な所見ですが、全員に観察されるわけではありません。
 また、不顕性感染(インフルエンザに罹っていても無症状、しかし人にうつす)というこまった存在も2割いると言われています。

 やはり悩ましい・・・。
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子どもへの「かぜ薬」をめぐる議論あれこれ

2015年01月18日 06時35分28秒 | 小児科診療
 かぜ薬は無効? 
 子どもには使ってはいけない?
 咳止めはハチミツで十分?

 等々、かぜ薬をめぐる議論は絶えることなく続いています。
 最近の論調は「かぜ薬が有効であるというエビデンスは乏しい」「薬より十分な説明を」というものですね。
 欧米では2歳未満の小児への市販かぜ薬(OTC:Over The Counter)の投与は厳しく制限されています(処方薬の制限はありません)。
 これは、欧米の医療事情も関連しており、かの国では日本のようにフリーアクセスではなく医療費も高額のため「市販薬(OTC)で治らなかったら受診」が一般常識。
 さらに、市販かぜ薬の形態も問題で、日本の液剤より10-20倍濃い濃度で発売されており、過量誤飲事故が後を絶たないという事情もあります。
 以前、調べてHPにまとめましたので、興味ある方は御一読ください;

かぜ薬のお話(当院HP)

 参考になりそうな記事をいくつか紹介します。

■ 「乳幼児の風邪薬使用に警鐘 OTC薬のみならず医師の処方にも見直しの余地
(2011/3/10 日経メディカル)
 諸外国では、有効性が乏しい上、重篤な副作用を来し得ることからOTC風邪薬の乳幼児への使用を規制する動きが出ている。一方、国内では注意喚起止まりで、OTC薬と同様の成分を処方する医師も多い。
 「2歳未満の乳幼児には、OTC風邪薬を飲ませるより医師の診療を優先させるよう、購入者に情報提供すること」─。昨年末、厚生労働省が小児の用法があるOTC風邪薬の製造販売元に対し、こんな注意喚起を行った。
 きっかけは昨年11月、薬害オンブズパースン会議(東京都新宿区)が、OTC風邪薬の6歳未満への使用禁止を求め、厚労省に要望書を提出したことだった。OTC風邪薬は、抗ヒスタミン薬や鎮咳去痰薬などを配合した医薬品。小児への使用について米国や英国などでは、症状緩和の有効性のエビデンスが十分でない上、重篤な副作用の発生や誤用・過量投与の恐れがあることなどを理由に、2歳未満もしくは6歳未満への使用を厳しく規制している(表1)。


表1 小児のOTC風邪薬の規制に関する諸外国の対応


 だが、日本OTC医薬品協会は「国内の製品は海外に比べて成分含量が少なく、本来の用法・用量を守って服用する限りは十分安心して使える」との考えで、厚労省も「全く効果がないというエビデンスはなく、国内では副作用報告もほとんどない」(医薬食品局総務課)とのスタンス。対応は冒頭の注意喚起にとどまり、使用年齢の見直しには至らなかった。


表2 風邪に処方される薬剤の乳幼児に対する主なエビデンス(西村氏による)


 実際、西村氏は風邪と診断した乳幼児にこれらの薬剤を処方していない。「風邪の多くは治療の有無に関係なく、数日間の経過で自然治癒する」からだ。
 にもかかわらず、わが国では長年、投薬が風邪診療の“標準治療”として行われてきた。患者は「薬をもらうことが当たり前」と刷り込まれているから、当然処方を希望する。よって、医師の処方行動も変わりにくい。
 西村氏はその一因が医学教育にあると指摘する。風邪のようなコモンディジーズの診療スキルを学ぶ機会は乏しく、「重症疾患の治療の仕方は教わっても、『どのような患者を治療すべきか?』という教育はほとんど行われてこなかった」(西村氏)。結果、治すことに重きが置かれ、投薬が優先されてしまう。
 京都府立医大救急医療学助教の安炳文氏は、風邪薬の有効性を示すエビデンスが乏しいことは認めつつも、「だからといって患者ニーズを一切無視して全く処方しないというのも、現状では保護者の納得が得にくい」と話す。保護者の求めに応じて風邪薬を通り一遍に「セット処方」することには否定的だが、症状がひどく保護者の不安が強い場合、副作用のリスクを評価した上で、症状緩和効果を期待し抗ヒスタミン薬や鎮咳去痰薬を処方することもあるという。
 「まずは、保護者の疑問や不安、ニーズを把握した上で納得いく対応をすること、そして予想される風邪の自然経過を伝えることが重要だ。説明は時間がかかるが、こうした積み重ねが、長い目で見ると救急外来の適正受診にもつながるのではないか」と安氏は話している。


 誤解を防ぐために繰り返しお断りしておきますが、欧米で使用制限しているのはあくまでも「市販かぜ薬」であり「処方薬」ではありません、念のため。
 記事に出てくる小児科医の西村先生は咳止めとして実際にハチミツを処方されているそうです。

「薬よりも効果が高い?かぜの代替療法」より引用
(2014/12/24 日経メディカル)


図A 小児の咳嗽に対する蜂蜜の効果


 「子どもの咳には蜂蜜が効果的かもしれない」─。にしむら小児科の西村龍夫氏はこう話す。実際、就寝30分前にスプーン半分から2杯の蜂蜜を与えた小児の群は、プラセボを投与した群に比べ夜間の咳嗽が緩和され、夜間の咳に伴う本人と親の睡眠状態を有意に改善したというランダム化比較試験(RCT)のデータがある(図A)。
 日本薬局方には「ハチミツ」が収載されている。「外来で親に説明し、初回は薬局で処方してもらうとよい」(西村氏)。ただし、蜂蜜にはボツリヌス中毒の恐れがあるため、1 歳未満には与えないよう注意が必要だ。
 このように、対症療法が中心となるかぜ診療では、補完代替療法のエビデンスが数多く報告されている。
 またdL-カンフルやテレビン油からなる「塗るかぜ薬」と称する「ヴィックスヴェポラッブ」が近年、2~11歳の小児の夜間咳嗽や睡眠の改善といったかぜ症状の有意な緩和の効果を持つことが証明された(Paul IM, et al.Pediatrics.2010;126:1092-9.)。ただし、成人のエビデンスはない。
 一方、かぜの予防や罹患期間の短縮効果が有力視されてきたビタミンCには有効性なしというシステマティックレビューが最近報告された(Hemila H, et al. Cochrane Database Syst Rev.2013;1:CD000980.)。


図B 医師の共感の有無による治療効果の違い
(12歳以上の350例を対象に調査・出典:Rakel DP. et al. Fam Med 2009;41:494-501.)


 このほか、医師の「共感」が治療効果に影響を与えるというデータもある(図B)。診療で医師に共感してもらったと感じた患者群は、そうではなかった患者群に比べかぜが治ったと感じるまでの期間が短かかった(Rakel DP. et al.Fam Med 2009;41:494-501.)。かぜ診療で最も重要なのは、薬の処方よりも患者の不安を取り除き、納得させる診療なのかもしれない


 ムムム・・・いろいろありますねえ。
 さらに、西村先生の主張を否定する「ハチミツ類も無効である」という報告も出てました。
 下記報告は、ハチミツ類は有効であったが、プラセボ=偽薬(ニセぐすり)も有効であり、両者に差がなかったというもの;

乳幼児の夜間咳嗽にはプラセボでも効果 アガベネクターとプラセボでは無治療よりも有意に改善、RCTの結果
(2014/11/20 日経メディカル)
 急性の非特異的咳嗽で受診した生後2~47カ月の乳幼児に対して、就寝前のアガベネクター(アガベシロップともいう。リュウゼツラン由来の天然甘味料で、主にフルクトースとグルコースからなる)またはプラセボの投与により、無治療に比べて有意に症状の軽減効果があることがランダム化比較試験(RCT)の結果として示された。米Pennsylvania州立大学のIan M. Paul氏らが、JAMA Pediatrics誌電子版に2014年10月27日に報告した。
 小児の咳嗽を和らげるために米国などで用いられるのは蜂蜜だ。ソバの蜂蜜が夜間の咳嗽を緩和する効果がRCTでも示されている。しかし蜂蜜は、ボツリヌスの胞子を含む危険性があるため、1歳未満の乳児には使用できない。
 アガベネクターは蜂蜜に似た特徴を有し、ボツリヌス感染の報告はない。炎症のある粘膜を保護する作用が予想されており、甘みもあることから、蜂蜜と同様に小児の咳嗽を和らげる効果を持つのではないかと著者らは考えた。そこで、殺菌されたアガベネクターもしくはプラセボ、治療なしが、急性の非特異的咳嗽で受診した乳幼児における夜間咳嗽と睡眠障害に与える影響を調べるために、部分的二重盲検のRCTを実施した。
 アガベネクター、プラセボ、治療なしの比較により、非特異的咳嗽に対するプラセボ効果が示された。また、アガベネクターにプラセボに優る効果がないことも示された。ただし著者らは、「急性の非特異的咳嗽を呈する乳幼児には、注意深い観察よりも、プラセボ効果のみが期待される治療の実施を検討してもよいのではないか」と述べている。
 原題は「Placebo Effect in the Treatment of Acute Cough in Infants and Toddlers: A Randomized Clinical Trial」。


 ここまでくると、何が有効で何が無効なのか、わけがわからなくなってきます・・・(苦笑)。

 私は「お母さんの看病」が一番のクスリではないかと感じでいます。
 昔から「手当て」という言葉がありますが、体に手を当ててさすってあげると痛みやつらさがやわらぎますよね。

 また、「効果を実感できる」という意味では、漢方薬の方が西洋薬より上でしょうか。
 西洋薬を飲んでいてもなかなかよくならず「もう少し何とかなりませんか?」という患者さんに対して「では漢方薬を試してみますか?」というスタンスで私は処方しています。
 同じ「咳」でも、漢方では乾いた咳と湿った咳ではクスリが異なりますし、やっかいな「鼻閉」「膿性鼻汁」は耳鼻科を受診すると抗菌薬(=抗生物質)を長期に処方されますが、漢方薬を上手く使うことにより抗菌薬使用を減らすことができます。
 まあ、「苦いクスリを飲む」というハードルがありますが・・・そこは「工夫次第」ということで。
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鼻水止め(抗ヒスタミン薬)はけいれんを誘発する?

2015年01月17日 07時25分58秒 | 小児科診療
 熱性けいれんを語るときに忘れてならないのが「けいれんを誘発するリスクのある薬」です。
 日常的に処方される中では、テオフィリン製剤(テオドール®など)と抗ヒスタミン薬があります。
 テオフィリン製剤の方は、メーカーから警告・情報提供があり使用する医師はいなくなってきましたが、問題は抗ヒスタミン薬です。
 この薬は「鼻水止め」「抗アレルギー薬」として広く普及しています。

 以前、読売新聞に記事がありました(医療ルネサンス:2014.7.28)。
 その中で、新島新一先生(順天堂大学小児科)がコメントしています。
 「抗ヒスタミン薬は、鼻炎や皮膚のかゆみに処方される薬で、体内のヒスタミンという物質の働きを妨げ、アレルギー症状を抑える。だが、薬の成分が脳に取り込まれ、脳の働きが抑制されるとけいれんを誘発するおそれがある。」
 そして新島先生は、安全性を3段階に分類した表を提案しています。

安全:アレグラ、アレジオン、ザイザル
比較的安全:クラリチン、ジルテック、アレロック、ゼスラン、ニポラジン、アゼプチン
けいれんを誘発する可能性のあるもの:ザジテン、セルテクト、ポララミン、アレルギン、ペリアクチン、ヒスタール、アタラックス、レスタミン、タベジール、テルギンG

(すべて商品名で記述)

 私は、熱性けいれんを起こしたことのある幼児に鼻水止めが必要なときは、けいれんのリスクのない漢方薬か、「熱が出ているときは止める」条件で処方しています。また、抗けいれん薬を定期内服している患者さんには、抗ヒスタミン薬は避けるようにしています。
 
 ただ、この知識は小児科専門医は熟知していますが、子どものけいれんの診療経験のない小児科標榜医(元々の専門は小児科以外の開業医)や他科の医師はあまり気にしていない様子。
 処方される患者さん側が知識を更新して「わが子を守る」必要があるのが現状です。
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解熱剤は熱性けいれんを予防するか?それとも引き金となるか?

2015年01月17日 07時18分05秒 | 小児科診療
 小児科外来でよく聞かれる質問です。
 的確な回答を以下に見つけましたので、一部を引用させていただきます;

■ ラジオ NIKKEI 小児科診療 UP-to-DATE 2013年4月24日放送
熱性けいれんに対する適切な対応」(順天堂大学 小児科学 准教授 奥村 彰久)
 「外来をしていますと、保護者の方がこの子は熱性けいれんの既往がありますので解熱薬は要りませんとおっしゃられることが時々あります。
 解熱薬で一旦熱が下がった後に再び熱が上がると、けいれんを起こす可能性があると説明を受けているようです。しかし、現在のところ解熱薬が熱性けいれんの確率を上げることを証明した研究は皆無です。
 一方、解熱薬によって熱性けいれんを予防する試みを検証した研究は、現在までいくつか行われています。その結果はすべて同じで、解熱薬の種類に関わらず熱性けいれんを予防することはできませんでした。 しかし、これらの研究全てで、解熱薬を使うことで熱性けいれんの頻度は増えませんでした。
 解熱薬はあくまで対症療法ですので使用が必要とは限りませんが、熱性けいれんの既往があることを理由に禁止しなくてもよいと思います。」

熱性痙攣の予防に解熱剤は使用すべき?
(2014/7/24:日経DIより引用)


図 解熱薬による熱性痙攣の再発予防効果

※ 「95%信頼区間」の読み方
(1)95%信頼区間とは、臨床試験参加者から得られたデータをもとに全患者での数値を推定するための統計データ。
(2)絶対差において信頼区間が0をまたげば統計的に有意差なし。0を超えていればアウトカム増加。下回っていればアウトカム低下。
(3)相対差において信頼区間が1をまたげば統計的に有意差なし。1を超えていればアウトカム増加。下回っていればアウトカム低下。


 つまり、「解熱剤と熱性けいれんは無関係、増やすことも減らすこともない」ということです。
 よく言われるように、発熱は病原体と戦っている証拠です。解熱剤はあくまでも「対症療法」であり、病気を治す薬ではありません。
 そう割り切り、
「高熱でぐずるのをかわいそうで見ていられないときは頓用で使ってあげてください」
「睡眠が取れて少し飲食できれば体力が回復し、また病原体との戦いに挑めますからね」
 と私は説明しています。

 こちらもわかりやすく、参考になりますね。

「こまったときの薬の使い方」(神戸大学大学院医学研究科小児科学分野 こども急性疾患学部門 池田 真理子先生)
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熱性けいれんは遺伝子が原因らしい。

2015年01月16日 07時13分28秒 | 小児科診療
 小児科では避けて通れない熱性けいれん。
 高熱の際に全身のひきつけを起こす現象で、日本人では欧米より多く発生する傾向があります。
 熱性けいれんを繰り返す起こす子どもには予防治療をすることもあります(ただし日本のみ?)。
 その熱性けいれんの原因が遺伝子によるものという報告を紹介します。
 あらかじめ危険遺伝子を持つ子どもがわかれば、対応が可能になる可能性を期待できそう;

熱を出して子どもが突然のけいれん、なぜ?
 ~理由の一端が判明 ワクチンの副作用の研究から起こる子と起こらない子に差

2014.11.19 Medエッジ
 子どもが熱を出したときに、けいれんを起こして、親が青ざめることはよくある。「熱性けいれん」と呼ばれ、時間が経つと基本的に収まる、しかし、異常事態に見えるのは確かで、親が慌てて救急に駆け込むという話はざらにあることだろう。
 実はこのけいれんの背景には遺伝子の違いがあるようだ。このたびワクチンの副作用の研究から判明した。
 デンマークと米国の研究グループが、有力科学誌ネイチャー誌の姉妹誌であり、遺伝学に関する国際学術誌であるネイチャー・ジェネティクスのオンライン版で、2014年10月26日に報告している。
◇ ワクチンにけいれんの副作用
 そもそもワクチンを打ったあとに、熱を出して子どもがけいれんすることがある。
 「MMRワクチン」とも呼ばれる新三種混合ワクチンは、死亡を含む深刻な副作用があったため、日本では現在、接種が中止されている。ただ、世界的には一般に行われている。
 この副作用の1つとして、「熱性けいれん」がある。
 研究グループが、
・MMRワクチンによって熱性けいれんを起こしたことのある子どもたち、
・ワクチンとは関係なく熱性けいれんを起こしたことのある子ども
・熱性けいれんを起こしたことのない子どもたち
 の3つのグループを対象として調査したところ遺伝子に関係した2カ所の違いが関係すると分かった。
 「インターフェロン刺激遺伝子」という異物からの防御に関係する遺伝子「IFI44L」、「麻疹ウイルス受容体」というはしかに関係した遺伝子「CD46」に関係した2カ所だ。
◇ 普通の熱性けいれん関係でも判明
 さらに、ワクチンに関係しない熱性けいれんについても、ほかに4カ所が関係していることも分かった。
 けいれんを起こすかどうかはあらかじめ予測不能とも見られたが、遺伝子が関係していると分かったことで、事前に検査を受けられれば、予測可能になり有益と考えられそうだ。安全にワクチンを使うときの参考になるほか、熱を出したときの心構えもできるため意味はありそうだ。

文献情報
Feenstra B et al.Common variants associated with general and MMR vaccine-related febrile seizures.Nat Genet. 2014 Oct 26 [Epub ahead of print]


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