風疹が流行してから「ワクチンを接種しましょう」というフレーズを多く聞くようになりました。
たくさんの人がワクチンを接種すれば、流行しにくくなることは何となくわかるけど、具体的にはどうなの?
という疑問に答えるべく、ワクチン接種率について説明してみたいと思います。
キーワードは「基本再生産数」と「集団免疫率」。
まず、基本再生産数という概念があり、これはその病原微生物(おもにウイルス)の感染しやすさ、広がりやすさの目安となる数字です。風疹の基本再生産数は7~9であり、例えて言うと「風疹患者を1人診たら、その周囲に7~9人患者がいると思え!」ということ。
集団免疫率はこの基本再生産数から計算式で出される数字です。その集団から病原微生物を排除可能、つまり流行を抑制できるワクチン接種率を表します。風疹では80~85%とされています。
解説はこちらをご覧ください;
■ ビケンワクチンニュース(2011年 Vol.12)
その中の表を引用します;
上から3番目に風疹がありますね。
前述の如く、風疹の基本再生産数は7~9、そして集団免疫率は80~85%と記されています。
つまりワクチン接種率を85%以上に維持すれば風疹流行が抑制可能であり、CRSの発生を防げることが理論的にわかっているということ。
では現実を見つめてみましょう。
日本のワクチン行政の過去の接種率記録をいくつか提示します。
まず、中学生に風疹ワクチンの集団接種をしていた頃の接種率;
1977年~1994年に中学生女子に集団接種(左の薄緑のバー)、1994年以降は中学生男女に経過措置としての個別接種(右の黄色いバー)が行われました。
接種率(実施率)をご確認ください。
1997~1994年は接種対象の女子でも平均70%程度で、残り30%は風疹に対する免疫がないまま現在に至っています(この年齢の女性は現時点で妊娠年齢を過ぎつつありますが)。当然対象外の男子の感受性者は100%に近いことになります。
1994年以降では男女に対象が広がりましたが接種率がどんどん下がり、50%~30%台まで落ち込んでいます。
前回ブログで記した「谷間の世代」とは、イコールこの年齢層であり、より正確に誕生日で記すと、
・男性:1962年4月2日~1987年10月1日生(現在の年齢:25~51歳)
・女性:1979年4月2日~1987年10月1日生(現在の年齢:25~34歳)
となります。
ではそれ以降はどうなのか、というと1994年から幼児期接種が始まっていますので、一応免疫がある人がほとんどです。
しかし、免疫はいずれ減っていくもの。
当初は一生ものと考えられた生ワクチンの効果は10年持たないことが判明し、2回接種が2006年に導入されました。
1回しか接種していない子どもたちを対象に2012年3月まで経過措置が取られました。
いわゆるMRワクチン第三期(中学1年)と第四期(高校3年生)ですね。
すると、この第三期/第四期の接種率が気になります。
検索すると、厚労省が2012年度の接種率を公表していました(↓)。
下図では、黄色(85~90%)とピンク(90~95%)と赤い(95%以上)都道府県が85%以上を達成しています;
数字が小さくて見にくい方はこちらからどうぞ:
■ 2012年度の麻疹・風疹ワクチン接種率(厚労省)
あなたの住んでいる地域はいかがでしょうか。
風疹の流行を排除可能な集団免疫率85%以上を達成している県はむしろ少数派であることが読み取れます。
これすなわち、将来の風疹流行とCRS発生が約束されていることを意味するのです(涙)。
外国はこのような日本の現状をどう見ているのでしょうか。
公式見解ではありませんが、日本の某感染症専門家に届く世界各国からの声は;
・「アジアやアフリカの予防接種拡大プログラム(EPI)にもたくさんお金を出してサポートしているのに自国の子供は守らないのか」
・「誰が放置していいと決めているのだ。そもそも感染症対策の優先順位がおかしくないか」。
などなど。
風疹はもともとVPD(Vaccine Preventable Diseases)のひとつとして、このような大騒ぎをすること自体、先進国では「想定の範囲外」なわけです。
公式にはイギリス、アメリカ、カナダが見解を出しています:
■ 米CDCが勧告「風疹抗体のない妊婦は日本への渡航延期を」(2013.6.20)
米疾病対策センター(CDC)は6月19日,日本とポーランドに関する新たな渡航注意情報を発表。2つの国で風疹の流行が続いていることから「風疹抗体のない妊娠中の女性は,流行期間中の渡航を避けるべき」との勧告が出された。CDCは特に妊娠20週目までの女性に注意を呼びかけている。
今回の渡航注意情報は3段階(レベル1:注意/通常の予防措置,レベル2:警戒態勢/予防措置を拡大,レベル3:警告/不要不急の旅行を避ける)のうちのレベル2とされている。最近,CDCが出している渡航情報はイスラム教の聖地巡礼の時期を迎える中東地域における中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS)やエチオピアでの黄熱に関するものだが,いずれも最も低い「レベル1」の注意にとどまっている。
■ カナダ公衆衛生局が「日本の風疹大流行」で渡航注意情報(2013.5.27)
カナダの公衆衛生局は5月24日,「日本で風疹の大規模な流行が続いている」との渡航注意情報を発表。日本に渡航する自国民に,免疫状態が不明な場合は,風疹含有ワクチンの接種を行うよう呼びかけた。
たくさんの人がワクチンを接種すれば、流行しにくくなることは何となくわかるけど、具体的にはどうなの?
という疑問に答えるべく、ワクチン接種率について説明してみたいと思います。
キーワードは「基本再生産数」と「集団免疫率」。
まず、基本再生産数という概念があり、これはその病原微生物(おもにウイルス)の感染しやすさ、広がりやすさの目安となる数字です。風疹の基本再生産数は7~9であり、例えて言うと「風疹患者を1人診たら、その周囲に7~9人患者がいると思え!」ということ。
集団免疫率はこの基本再生産数から計算式で出される数字です。その集団から病原微生物を排除可能、つまり流行を抑制できるワクチン接種率を表します。風疹では80~85%とされています。
解説はこちらをご覧ください;
■ ビケンワクチンニュース(2011年 Vol.12)
その中の表を引用します;
上から3番目に風疹がありますね。
前述の如く、風疹の基本再生産数は7~9、そして集団免疫率は80~85%と記されています。
つまりワクチン接種率を85%以上に維持すれば風疹流行が抑制可能であり、CRSの発生を防げることが理論的にわかっているということ。
では現実を見つめてみましょう。
日本のワクチン行政の過去の接種率記録をいくつか提示します。
まず、中学生に風疹ワクチンの集団接種をしていた頃の接種率;
1977年~1994年に中学生女子に集団接種(左の薄緑のバー)、1994年以降は中学生男女に経過措置としての個別接種(右の黄色いバー)が行われました。
接種率(実施率)をご確認ください。
1997~1994年は接種対象の女子でも平均70%程度で、残り30%は風疹に対する免疫がないまま現在に至っています(この年齢の女性は現時点で妊娠年齢を過ぎつつありますが)。当然対象外の男子の感受性者は100%に近いことになります。
1994年以降では男女に対象が広がりましたが接種率がどんどん下がり、50%~30%台まで落ち込んでいます。
前回ブログで記した「谷間の世代」とは、イコールこの年齢層であり、より正確に誕生日で記すと、
・男性:1962年4月2日~1987年10月1日生(現在の年齢:25~51歳)
・女性:1979年4月2日~1987年10月1日生(現在の年齢:25~34歳)
となります。
ではそれ以降はどうなのか、というと1994年から幼児期接種が始まっていますので、一応免疫がある人がほとんどです。
しかし、免疫はいずれ減っていくもの。
当初は一生ものと考えられた生ワクチンの効果は10年持たないことが判明し、2回接種が2006年に導入されました。
1回しか接種していない子どもたちを対象に2012年3月まで経過措置が取られました。
いわゆるMRワクチン第三期(中学1年)と第四期(高校3年生)ですね。
すると、この第三期/第四期の接種率が気になります。
検索すると、厚労省が2012年度の接種率を公表していました(↓)。
下図では、黄色(85~90%)とピンク(90~95%)と赤い(95%以上)都道府県が85%以上を達成しています;
数字が小さくて見にくい方はこちらからどうぞ:
■ 2012年度の麻疹・風疹ワクチン接種率(厚労省)
あなたの住んでいる地域はいかがでしょうか。
風疹の流行を排除可能な集団免疫率85%以上を達成している県はむしろ少数派であることが読み取れます。
これすなわち、将来の風疹流行とCRS発生が約束されていることを意味するのです(涙)。
外国はこのような日本の現状をどう見ているのでしょうか。
公式見解ではありませんが、日本の某感染症専門家に届く世界各国からの声は;
・「アジアやアフリカの予防接種拡大プログラム(EPI)にもたくさんお金を出してサポートしているのに自国の子供は守らないのか」
・「誰が放置していいと決めているのだ。そもそも感染症対策の優先順位がおかしくないか」。
などなど。
風疹はもともとVPD(Vaccine Preventable Diseases)のひとつとして、このような大騒ぎをすること自体、先進国では「想定の範囲外」なわけです。
公式にはイギリス、アメリカ、カナダが見解を出しています:
■ 米CDCが勧告「風疹抗体のない妊婦は日本への渡航延期を」(2013.6.20)
米疾病対策センター(CDC)は6月19日,日本とポーランドに関する新たな渡航注意情報を発表。2つの国で風疹の流行が続いていることから「風疹抗体のない妊娠中の女性は,流行期間中の渡航を避けるべき」との勧告が出された。CDCは特に妊娠20週目までの女性に注意を呼びかけている。
今回の渡航注意情報は3段階(レベル1:注意/通常の予防措置,レベル2:警戒態勢/予防措置を拡大,レベル3:警告/不要不急の旅行を避ける)のうちのレベル2とされている。最近,CDCが出している渡航情報はイスラム教の聖地巡礼の時期を迎える中東地域における中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS)やエチオピアでの黄熱に関するものだが,いずれも最も低い「レベル1」の注意にとどまっている。
■ カナダ公衆衛生局が「日本の風疹大流行」で渡航注意情報(2013.5.27)
カナダの公衆衛生局は5月24日,「日本で風疹の大規模な流行が続いている」との渡航注意情報を発表。日本に渡航する自国民に,免疫状態が不明な場合は,風疹含有ワクチンの接種を行うよう呼びかけた。
しっかりしろ、ニッポン!