徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

米国の親が子供にHPVワクチンを打たない5つの理由

2013年07月30日 06時06分46秒 | 小児科診療
 日本では先日CRPS(慢性局所疼痛症候群)騒ぎでHPVワクチンの積極的勧奨が停止になりました。
 ワクチン先進国であるアメリカではさぞかし接種率が高いものと思いきや、現実はそうでもないとのニュースが入りました:

米国の親が子供にHPVワクチンを打たない5つの理由
(2013年7月29日:MTPro)

 先日発表された報告で米国における10歳代女児のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの規定回数を完了した割合が低いことが明らかになり,当局が接種率上昇に向けた取り組みを展開している。米疾病対策センター(CDC)と米国小児科学会(AAP)のトップが7月25日,国内のメディア向けに会見を実施。「同ワクチン接種対象児の親たちは性行動開始前の11~12歳までの接種が勧告されていることを再度認識してほしい」と呼びかけた。同時に発表された情報では,親たちが子供に同ワクチンを接種させない5つの理由も示されている。

◇「勧められていない」「安全性への懸念」の他“うちの子に限って”!?

 25日の会見ではCDC長官のTom Frieden氏が2011~12年に10歳代女児のHPVワクチン接種率が減少傾向にあったと発表。CDCが実施するHPVワクチン接種率などに関する調査では,1回以上同ワクチンを接種した同女児の割合は2007年の25.1%から2011年には53.0%に増加したが,翌2012年には53.8%にとどまっている。さらに,規定の3回の接種を完了できた人の割合は2012年には33.4%と前年の34.8%をやや下回る結果となった。この数値は,米政府が策定するHealthy People2020の接種目標(80%)と大きくかけ離れている。

 CDCのMelinda Wharton氏はAAP公式ニュースの中で,同ワクチン接種率低迷の1つの理由として親のHPV感染症に対する知識が不足しているとの見解を示す。「性的に活発なほぼ全ての男女は,生涯のうちに,いろいろな形の性交渉を介して1つ以上の型のHPVに感染する。米国では若年者を中心に年間1,400万人がHPVに感染,2万6,000件のHPV関連がんが発生,4,000人の女性が子宮頸がんで死亡すると推計される」と同氏は指摘。また,親たちが「近いうちに自分の娘にHPVワクチンを接種させるつもりはない」と考える主な理由のトップ5が次のようなことだったと明らかにしている。

・HPVワクチンは必要ない
・HPVワクチンの接種を(受診の際に)勧められていない
・安全性への懸念
・ワクチンあるいはHPV感染症への知識がない
・10歳代は性的に活発な年齢ではない


 FDAや同ワクチンを販売する企業が行っている各種調査では,米国内で接種されているHPVワクチンの99%を占める4価ワクチンに関する結果が示されている。それによると2006~13年の同ワクチン接種回数は約5,600万回で報告された有害事象は2万1,194例。このうち非重篤な事象が92.1%であった。同ワクチンで「重篤」に分類された有害事象は7.9%で,頭痛,悪心・嘔吐,疲労感,めまいや失神が主であったと述べられている。


 な~んだ、接種率は思ったほど高くないんだ・・・。
 ただ、日本で問題視されているCRPSは話題になっていないようですね。
 それから、アメリカでは2価のサーバリックスではなく、4価のガーダシルばかりが使用されているようで、こちらも意外な事実でした。
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やりわすれた予防接種、何歳までに打てば効果的?

2013年07月28日 06時50分08秒 | 小児科診療
 やり忘れた予防接種、もう定期接種の期間を過ぎてしまったけど、かかるのが心配・・・今打っても効かないの?
 という疑問に小児科学会が答えました;

■ 予防接種、何歳まで大丈夫? 小児科学会、ウェブで公開
(2013.7.26:朝日新聞)
 【森本未紀】ワクチン接種、間に合う年齢教えます――。子どもの予防接種を期間内に受け損ねても、いつまでに受ければ効果があるのかを示した「キャッチアップスケジュール」を日本小児科学会が作った。25日、学会のウェブサイト(http://www.jpeds.or.jp/)で公開した。
 予防接種は、学会などが推奨しているスケジュールがある。これに合わせると、1歳までに受けなければならない予防接種は、任意も含めて計15回程度もある。子どもの病気や引っ越しなどで、その期間内にできない場合もあり、こうした保護者の悩みに応えた。
 学会は、ワクチンの添付文書や海外の事例などをもとに、安全で効果的に接種できる年齢の期限などを示した。例えば、小児用肺炎球菌の定期接種は生後2カ月から5歳未満までに4回する(標準的なケース)と勧められているが、今回のスケジュールでは最終の接種年齢を「10歳未満」としている。

 ただ、定期接種は定められた期間内なら公費が自治体から出るが、それを過ぎると自己負担になってしまうことがある。スケジュールを作った斎藤昭彦新潟大教授(小児科)は「予防接種は、自己負担になっても病気を防ぐというメリットがある」と話す。


 上記の範囲内なら、有料で副反応の補償は減額されますが、免疫をつけるという意味では有効です。
 ヒブと肺炎球菌、BCGにはなぜ上限があるのか不思議に感じた方もいらっしゃると思いますので簡単な説明を。

 ヒブと肺炎球菌はふつうに生活していると自然に免疫が獲得されるのです。
 上限の年齢(ヒブでは5歳、肺炎球菌では10歳)頃にはほとんどの子どもが免疫を有するようになるので、それ以降は必要なくなるのですね。

 一方、結核を予防するBCGは年齢が上がると効果が期待できなくなるという性質があります。
 乳幼児期は大人の肺結核と異なり、全身感染(結核性髄膜炎、粟粒結核)となり重症化しやすいのです。
 BCGはこの重症結核を8割の確率で予防してくれます。
 しかし、6歳以降は大人と同じく肺結核がメインになりますが、こちらの予防率は5割にとどまり、あまり意味がなくなるのですね。
 
 このニュースを見て、日本の予防接種行政が抱える問題を連想しました。
 日本は大人の予防接種が手薄です。
 もともと不活化ワクチンは免疫をつけても一生持続しないので追加接種が設定されてきました。
 一方、生ワクチンは一生持続すると当初考えられましたが、その後10年程度で減衰することが判明し、2回接種がスタンダード化しています。
 
 実は、ワクチンの接種率が上がって流行がなくなると、ワクチンの効果が早くなくなるので一生定期的に追加接種しなければならないのではないか、と近年考えられるようになりました。
 地域的な小流行が、ワクチン追加接種と同じ効果を発揮していたようなのです。
 つまりワクチンで予防する感染症の流行は、ワクチン接種済みのヒトにとって追加接種となるありがたい効果があったということ。

 ワクチン接種率を上げると、追加接種の必要性も上がる・・・想定外のジレンマに今後悩まされることになりそうです。
 将来、麻疹/風疹ワクチンは10年ごとに一生接種し続けましょう、ということになるかも。
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イギリスで麻疹流行?

2013年07月27日 06時22分26秒 | 小児科診療
 イギリスで麻疹流行が問題になっています。
 「ワクチン先進国であるはずの欧米でなぜ?」と素朴な疑問が生まれてきます。
 でも、きちんとした理由がありました。
 
 以前、「麻疹を含んだMMRワクチンは自閉症の原因になる」という論文が有名医学雑誌に掲載され話題になった時期がありました。結局データのねつ造が発覚し、論文は取り消され、発表した医師は医師資格も抹消されたという経緯。
 しかし社会的影響は残り、不安からワクチン接種を控える家族が続出し、数百万人の麻疹免疫を持たない子どもたちが発生しました。
 その子どもたちが現在の流行の主役です。
 その医師は問題提起をすることにより有名になりたかったのでしょうか・・・罪な論文です。

■ はしかワクチン未接種児200万人、流行懸念される英国
(2013年04月21日 AFP)
 英国では今年800人以上がはしかに感染しているが、はしかのワクチンと自閉症を関連づけた論文の影響で子供に予防接種を受けさせない親が増えたことから、同国の200万人近い児童が無防備な状態にさらされていることを示す統計が18日、明らかにされた。
 英国の今年のはしかは、ウェールズ南部の街スウォンジー(Swansea)を中心に発生している。公衆衛生の専門家らはウイルスがさらに広がる危険性は深刻だとし、特に首都ロンドン(London)での流行について警戒している。
 英健康保護局(HPA)の統計によれば、同国のはしかの患者数は、1996~2012年まで毎年平均550人だった。しかし昨年はおよそ20年ぶりとなる2030件の報告例があり、今年はすでに808人が感染している。

□ 予防接種を受けるよう政府が呼びかけ
 保健当局が非難の矛先を向けているのは、1998年に英医学専門誌「ランセット(Lancet)」に掲載されたアンドルー・ウェークフィールド(Andrew Wakefield)医師の論文だ。この論文は、はしかとおたふく風邪、風疹の新三種混合(MMR)ワクチンと自閉症の関連を論じていた。
 ランセット誌は、報告にねつ造などの問題があったとして論文を全面撤回したが、この影響で英国の多くの親が子供に予防接種を受けさせていない。
 ロンドン大学(UCL)小児保健研究所(Institute of Child Health)のヘレン・ベッドフォード(Helen Bedford)医師は「子供たちがはしかにかかるだろうことは疑いない。何故ならばおそらく200万人にも迫る子供たちの巨大な集団が予防接種を受けておらず、感染しやすいからだ」と危惧する。中でも子供たちの半数近くが予防接種を受けていないロンドンが最も危険にさらされているという。
 英政府は親たちに子供に予防接種を受けさせるよう呼び掛けている。

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手足口病、流行中

2013年07月24日 05時27分24秒 | 小児科診療
 全国あちこちで手足口病の流行が聞かれる中、近隣の栃木県と茨城県でも流行警報が発令されました。
 今週は当地域でも流行が始まり、複数の保育園で同時多発的に発生しています。

 手足口病は夏に流行る風邪の一つで、その原因はウイルス感染です。
 「手足口病ウイルス」という名前のものはなく、複数のウイルスが同じような症状を現すので症状でくくった病名となっています。
(例)コクサッキーウイルスA16、エンテロウイルス71など
 逆に言うと、1回だけではなく複数回かかることがあり得ます。
 大人は滅多にかかりません。子どもの時に感染した免疫が残っているため。
 ということで「夏風邪=子どもの風邪」です。

 症状は文字通り、手と足と口に発疹が出ます。具体的には手のひら・足の裏に水疱を伴う赤い発疹が出ますが痒みはあまりありません。
 口内の発疹(=口内炎)のひどさで重症度が決まります。つまり、口の中が痛くて飲み食いができなくなり、脱水傾向になるのですね。
 熱は出ることも出ないこともある程度で、高熱が続くことはまれです。
 特効薬はなく、抗生物質も無効です。症状を和らげる対症療法で治るのを待つのが基本です。

 ウイルスの種類により、少し病像が異なります。
 エンテロウイルス71が流行する年は、中枢神経系の合併症の報告が多くなります。1990年代に台湾で数十人の子どもが脳炎で命を落としました(日本では話題にならず)。
 2011年からコクサッキーA6という新しいタイプが散見されるようになりました。特徴として、手のひら/足の裏だけではなく手足全体に水疱疹が広がり、しかし口内炎は軽度で済む、といパターン。皮疹がひどいと治癒後に一過性の爪の変形が観察されます。

 隔離期間が決められている感染症ではありませんが、やはり他人にうつります。感染経路は飛沫感染(唾など)+糞口感染で、症状が治まった後も便の中に数週間ウイルスが排泄され続けるのが特徴です。つまり、治った後も感染力が残るのですね。
 登園できるようになってもオムツの処理は感染源として扱い、トイレに行った後はよく手を洗う、という一般的な感染対策はふだんから心がけましょう。
※ 園により「治癒証明」の発行を指示する施設がありますが、上記理由のため「感染力が無くなった」という意味の治癒証明は1ヶ月後でないと書けません。

 より詳しく知りたい方は、当院HP「夏風邪」項目を御参照ください。

手足口病大流行の兆し 予防策は
(2013年7月18日:NHK)

 毎年夏場に流行する「手足口病」の患者が、東京都内で小さな子どもを中心に急激に増え、この時期としては、過去10年で最も多くなっています。
 どんな注意が必要か、報道局の松岡康子記者が解説します。

◆ 手足口病大流行の兆し
 手足口病は、その名のとおり、手や足、口の中などに発疹ができ、主に小さな子どもがかかるウイルス性の感染症です。
 通常は1週間ほどで症状は治まりますが、まれに髄膜炎や脳炎を起こして重症化することがあります。
 東京都によりますと、今月に入ってから患者が急激に増え、今月14日までの1週間に報告された患者数は、1つの医療機関あたり10.97人で、この時期としては、過去10年で最も多くなっています。大流行となった平成23年を超えるペースです。患者のほとんどは、6歳以下の子どもで、このうち3分の2は2歳以下だということです。

◆ 脱水に注意
 手足口病は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスが主な原因ですが、抗ウイルス薬はありません。
 特別な治療を必要としないことがほとんどだということですが、三輪医師は「脱水」に注意が必要だと言います。口の中に発疹ができるため、痛みで食事や水分が取れなくなる子どもがいるためです。
 この暑さの中で、脱水状態になって症状が悪化する子どももいるので、食事がとりやすいように、薄味にしたり、柔らかくしたりするなどの工夫をし、水分補給を心がけることが大切です。

◆ 感染を広げないために
 手足口病は、患者のせきやくしゃみ、つばなどの飛まつやウイルスがついた手を介して広がります。
 発疹などの症状が治まったあとも、3週間から1か月ほどウイルスは便の中に含まれ、体から出続けます。このことが感染をさらに拡大させる原因にもなっています。このため、手洗いを徹底し、おむつの取り扱いに十分な注意が必要です。
 幼稚園や保育園など子どもたちが集団生活する場所で広がりやすく、おもちゃなどを通じて感染することがあります。
 東京・中野区の保育施設では、感染を予防するため、手洗いやうがいを徹底するだけではなく、子どもたちが遊ぶおもちゃを消毒するなどの対策をとっています。
 今月に入り2人の子どもが発症し、医師の許可が出るまで、休んでもらっていますが、予防するためのワクチンもないため、対策には限界があると考えています。
 施設長の小林葉子さんは「早めに保護者に知っていただいて、まずは保護者のところで対応していただく。園としては、手洗いやうがいなど、できることをしっかりやっていくという対応策しかないです」と話しています。

 手足口病は、例年、患者数がピークとなるのは、夏休みシーズンの7月下旬から8月上旬です。
 東京都感染症情報センターの杉下由行課長は「過去10年、20年で、これほど増えたことはありませんので、今回、非常に大きな流行だと考えています。濃厚な接触によって、感染が広がりやすくなるため、家族内で感染を防ぐことも重要になります。タオルの共用を避け、こまめに手を洗うなど予防に努めてほしい」と注意を呼びかけています。
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「カシューナッツ」「ゴマ」アレルギー表示2品目追加へ

2013年07月21日 21時57分20秒 | 小児科診療
 私としたことが、食物アレルギーに関する重要な情報を見落としていました。
 特定原材料のアレルギー表示項目が増えていたのです。
 それは「ゴマ」と「カシューナッツ」。
 もっとも、表示は年内に始まる予定ですぐではありません。さらに義務表示ではなく推奨表示なので、表示するかどうかは製造メーカーに任されており、非表示を罰せられることもありません。
 以前より一歩前進したことは認めますが、患者さんの生活への影響を考えるとバンザイと言うほどではなく、すっかり安心できるわけではないことを認識する必要があります。

「カシューナッツ」「ゴマ」アレルギー表示2品目追加へ
(2013年6月5日 読売新聞)


 加工食品のアレルギー表示について、「カシューナッツ」と「ゴマ」を推奨表示品目に加える方針を消費者庁が打ち出した。
 推奨表示は義務ではないが、表示が広がれば食物アレルギーのある人が食品を選ぶ目安のひとつになる。
 表示の追加は、5月30日に開かれた消費者委員会の食品表示部会で同庁が提案した。同庁は都道府県などに対する通知案を次回の部会に提示し、年内にも表示が始まる。
 同庁は、アレルギー表示を見直すため、定期的に食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査を実施。2011~12年度はアレルギー専門医約1000人に協力を求め、食べてから60分以内に症状が表れて、医療機関を訪れた2954例を分析した。
 カシューナッツでの発症は18例で、うち血圧低下や意識障害などを伴うアナフィラキシーショックと呼ばれるショック症状を起こしたのは5例。ゴマでは12例が報告され、アナフィラキシーショックは1例だった。カシューナッツとゴマは以前の調査でも症例が報告されていることから、表示対象品目に加えられた。
 アレルギー表示は食品衛生法などに基づき、これで対象は、義務表示が7品目、推奨表示が20品目になる。


 通院している患者さんの中にゴマアレルギーの子どもが数人いらっしゃいます。彼らは粒状態のゴマでは症状が出ません。粒状態で食べても消化されるのは一部で、ほとんどが未消化のまま便に出てしまう傾向があるからです。一方、すりゴマ・練りゴマでは強い症状が出ます。粒の内容物がすべて吸収されてしまうからです。
 ゴマを隠し味として使用されている食品は数多く、患者さんのQOLを上げるために製造メーカーの協力が期待されるところです。

※ より詳しくは当院HP「食物アレルギー」の「ピーナッツアレルギー」「ゴマアレルギー」の項目をご参照ください。
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神奈川県、未承認の風疹ワクチンも補助対象に

2013年07月14日 05時53分25秒 | 小児科診療
 風疹ワクチンを打ちましょう、という気運が高まったところに・・・



「ワクチンが足りない」と出鼻をくじかれた感のある今日この頃。

風疹ワクチン不足…大人は接種中止の医院も
(2013年7月12日 読売新聞)
 風疹の大流行で、関東地方を中心にワクチンが不足し始めている。
 自発的に予防接種を受ける人が急増し、例年の1年分以上が1か月で使われる事態が続いているためだ。妊婦が風疹に感染すると胎児に障害が出る恐れがある。感染防止には患者が多い20~40代の男性への接種が不可欠だが、子どもへの定期接種を優先するため、大人への接種を断念する医療機関も出ている。
 「当面、成人の接種を中止させて頂きます」
 横浜市戸塚区の「小川クリニック」は4日、ホームページ(HP)に「お知らせ」を掲載した。先月以降、ワクチン納入が減り、ストックをはき出してしのいできたが、今月初めに確保できたのは、70本の希望数に対してわずか10本。免疫がない1歳児の定期接種にしわ寄せが出かねないため、苦肉の策を取ったという。市もHPで「乳幼児の定期接種を優先させるため、希望者全員が接種するのは困難」と呼びかけている。


 裏技の「輸入ワクチン」を神奈川県が助成対象とすると発表しました。
 黒岩知事は不活化ポリオの際も輸入ワクチンを県の方針として行ったという実績(前科?)があります。
 今回も助成対象とするものの、副反応による健康被害が発生した場合はすべて自己責任で県は面倒をみないというスタンス。
 これって、車検の通っていない輸入外国車を保険無しで乗り回すのと同じことですよね。
 国の無責任さを含めて、また賛否両論・喧々諤々となりそう。

神奈川県、未承認の風疹ワクチンも補助対象に
2013年7月13日 読売新聞
 神奈川県は11日、風疹ワクチン不足に対応するため、医師が海外から個人輸入した国内未承認ワクチンの接種費用を新たな補助対象にすると発表した。
 県によると、全国初の取り組み。副作用が起きた場合は公的補償の対象外となる。
 市町村が助成した場合に限り、県の補助対象となるが、これまでに補助を申し出ている市町村はなく、県は「実際に活用されるかは市町村次第」としている。
 県内の全市町村は妊婦の夫などがワクチン接種をする際、費用の一部を助成しており、県は市町村負担額の3分の1を補助している。県によると、風疹の流行で全国的にワクチン不足が懸念されており、県内の一部の医療機関でも納品の遅れが起きているという。
 このため、県は未承認ワクチンも補助対象とすることを決めた。補助金総額は1億2900万円、1市町村あたりの上限は3000万円とした。
 厚生労働省は「個人輸入の未承認ワクチンを医師、希望者双方が理解した上で接種することは法的に問題ない」としている。
 県は副作用が起きた場合の補償制度を検討したが、黒岩祐治知事は記者会見で「県が補償する仕組みは難しい」と述べた。


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HPVワクチン副反応に対するWHOの見解

2013年07月09日 06時20分02秒 | 小児科診療
 日本で社会問題化しているHPV(子宮頸がん)ワクチンの副反応としてのCRPS(慢性局所疼痛症候群)。
 これがきっかけとなり6/14に「積極的勧奨中止」という措置が取られたことはすでに皆さんご存じですね。

 さて、その前日の6/13にWHOが日本向けに声明を出していることがわかりました。

HPV接種、WHOで安全声明 
(2013年7月6日 m3.com)
 子宮頸がん征圧をめざす専門家会議の野田起一郎議長と今野良実行委員長は7月5日、WHOの諮問機関の一つ、「ワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)」が出した子宮頸癌予防ワクチン(HPVワクチン)の安全を再確認すると報告した声明を紹介した。声明は6月13日に発表されたもの。6月14日には、日本でHPVワクチンの積極勧奨の差し控えを決定している。周知目的に同専門家会議が和訳して公開した。
 GACVSは2007年にオーストラリアで発生したHPVワクチンの際の女子学生の浮動性めまい、動悸などの事例についても心因反応の結果と説明。さらに、日本で5人報告された慢性疼痛について、HPVワクチンとの直接の証拠はないと分析結果を報告している。日本での症状の検討の結果、典型的な複合性局所疼痛症候群(CPRS)と一致せず、ワクチンとの因果関係を明確にできなかったと説明。GACVSは日本に対し、各症例において専門医による確定診断を含む調査を要請している。世界でHPVワクチン接種が増加する中で慢性疼痛の報告はほとんどなく、「現時点ではHPVワクチンを疑わしいとする理由はほとんどない」と見解を示している。
 GACVSは2009年6月にもHPVワクチンの安全性を検討、報告しており、今回は2回目の報告となる。「HPVワクチンは世界で1億7000万回超が販売されており、多くの国で接種が行われている。市販製品の安全性に大きな懸念はないことを再確認した」と総括している。


 その日本語訳版がこちら;
WHOの公式声明「HPVワクチンに関するGACVSの安全性最新情報」の日本語訳配布について

 後半の日本に関係する箇所を抜粋します;

 最後に、800 万回分以上の HPV ワクチンが販売されている日本から複合性局所疼痛症候群(CRPS)の 症例が報告された。CRPS は通常は外傷後に四肢に発現する疼痛状態である。傷害又は外科手技後の症 例が報告されている。本症候群は原因が不明であり、明確に記録される類の傷害がなくても生じること がある。HPV ワクチン後の CRPS は日本においてマスコミの注目を集めたが、報告された 5 例のほとん どが典型的な CRPS 症例と一致しないと考えられる。十分な症例情報がなく、多くの症例で決定的な診 断に達することができなかったことから、副反応検討部会による検討では因果関係を明確にすることが できなかった。これらの症例については調査中であるが、日本は国の定期接種において HPV ワクチンの 接種を継続している。
 日本から報告されている慢性疼痛の症例には特別に言及する必要がある。世界各国で使用が増加してお り、他からは同様の徴候が認められていないことから、現時点では HPV ワクチンを疑わしいとする理由 はほとんどない。一般市民の懸念を認識して、治療を最善に導くために各症例についての慎重な記録な らびに専門医による確定診断の早急な徹底的調査を当諮問委員会は要請する。各症例の時宜を得た臨床 評価及び診断に続く適切な治療が不可欠である。


 つまり、この副反応で騒いでいるのは日本だけという事実を認識する必要があります。
 それが何を意味するのか、日本女性特有の遺伝的問題があるのか、それとも国民性に問題があるのか・・・今後の解析を待ちたいと思います。
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マレーがウィンブルドン初制覇!

2013年07月09日 06時08分06秒 | テニス
 私としたことが、ウィンブルドン男子決勝(マレー vs ジョコビッチ)を見逃してしまいました。
 2000年代の主役の2人が相次いで姿を消した(ナダルは1回戦、フェデラーは2回戦で敗退)この大会、魅力に欠けるかと心配しましたがさにあらず、決勝戦は地元出身のマレーが登場し、近年まれにみる盛り上がりだった様子。
 「No.4の男」に甘んじてきたマレーの初優勝、お母さんの雄叫び応援をみたかった~

■ A・マリーが悲願の初優勝 英国選手としては77年ぶり
(2013.7.8 産経新聞)

 【ウィンブルドン=内藤泰朗】テニスのウィンブルドン選手権は7日、ロンドン郊外のオールイングランド・クラブで最終日を行い、男子シングルス決勝で第2シードのアンディ・マリー(英国)が第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)を6-4、7-5、6-4で下し、初優勝を成し遂げ、優勝賞金160万ポンド(約2億4千万円)を獲得した。英国選手として1936年のフレッド・ペリー以来となる77年ぶりのウィンブルドン制覇となった。


 両者一歩も引かずの熱戦だった様子。

-大会レポート- 最終日 重圧を超えてマレーが77年ぶりの地元優勝
(WOWWOW TENNIS ONLINE)

 再放送してくれるかなあ。

追記
 7/10にWOWWOWで編集したものを再放送したものを観ました。
 まれにみる充実した決勝戦。

 ジョコビッチは終止攻め続け、しかしはじめのうちはウィンブルドンという特別な舞台による緊張のためか、ショットの精度が今ひとつでミスが目立ちます。
 マレーは基本的に受け身ですが、チャンスがあれば決め打ちで反撃します。
 この辺が、以前ののらりくらりのまどろっこしいテニスをしていたマレーとの違いですね。
 後半は、マレーの守備力が勝り、ジョコビッチが攻め手がなくなりミスをし始め、ドロップショットも焼け石に水と化してしまいます。

 それにしても、2人ともビッグサーバーなのにサーブスエースの数が少ない。
 センターに200km/hr のサーブを打ち込んでもしっかりリターンが返ってきてしまう凄さ。
 
 一見互角に見えたゲームですが、観衆の声援が後押ししたマレーに軍配が上がったファイナルという印象でした。
 テニスウエアでしか名前を知らない伝説の名プレーヤー「フレッド・ペリー」以来77年振りのイギリス勢のチャンピオンが誕生しました。

 少し前まではセンターコートに隣接した広場は「ヘンマン・ヒル」と呼ばれていましたが、現在は「マレー・マウント」と呼ばれていることに驚きました。
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熱中症にご用心!

2013年07月05日 07時40分56秒 | 小児科診療
 TVニュースで「熱中症」という言葉が飛び交う季節になりました。
 猛暑でなくても、湿度が高ければ気温30℃程度でも熱中症になりますので、要注意。

 熱中症の分類というものが古くから存在します;

① 熱失神(heat syncope)
② 熱けいれん(heat cramp)
③ 熱疲労(heat exhaustion)
④ 熱射病(heat stroke)


 この違い、わかりますか?
 ①→ ④の順に重くなる印象がありますが、現実には①→ ②→ ③→ ④の順に進行するわけではなく、一応別の病態と説明されています。

 なんだか、わかりにくい。

 ずいぶん前から、熱中症に関する患者さんへの説明プリントを作ろうと本をあさったりネットで調べたりしたのですが、自分の中で整理できないでいました。
 ようやく昨年夏に数冊まとめて本を読んだら、熱中症の正体がわかったような気がしました。

 それは「脱水状態をベースとした全身臓器の虚血」です。
 熱が溜まった体から熱を放散すべく皮膚へ血流を増やして皮膚は火照っています。
 それに伴い内臓への血流は相対的に減るので「虚血」によるいろんな症状が出てきます。

 吐き気や嘔吐 ← 消化器への血流量が減るから
 頭痛やめまい、立ちくらみ ← 脳への血流量が減るから
 足のこむら返りやけいれん ← 筋肉への血流が減るから起こる


 と考えると納得できます。
 というわけで、上記の熱中症分類①と②は「どの臓器の虚血症状が目立つか」という区別に過ぎないのですね。
 それが全身臓器の虚血へ進行すると③になります。

 そして熱中症では、脱水のため汗をかけず、かつ環境温度が皮膚温度より高い場合は熱の発散をできない状態。
 うつ熱(熱がこもる)により脳がダメージを受けると④に進行します。危険な状態であり集中治療が必要です。

 近年、この名前による区別ではなく、重症度分類が登場しました。
 ①と②はI度、③はII度、④は度となっていますが、あまり普及していない様子。


 熱中症のケアのチェック・ポイントは「意識障害」と「嘔気(はきけ)」です。

 意識がおかしい、と感じたら迷わず救急車を呼んでください。
 意識はしっかりしているけど、吐き気が強くて水分を摂取できないときは病院を受診してください。
 意識もしっかりしている、水分も摂れるようなら、涼しい場所へ移動して休ませ、水分補給して観察するのが基本です。


 なお、熱中症に解熱剤を使用しても効きません
 いわゆる解熱剤は、脳の視床下部という場所にある体温調節中枢に働いて体温のセットポイントを変更することにより熱を下げるメカニズムですが、熱中症では脳がダメージを受けてこの体温調節中枢がうまく働かない状態なのです。
 つまり、薬が作用するポイントが作動してくれない。

 以上のことを医院のHP「子どもの熱中症と対策」にまとめました。
 理解の助けになれば幸いです。
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風疹ワクチン 個人輸入で対応の病院も

2013年07月01日 21時30分25秒 | 小児科診療
 風疹ワクチンの自治体による接種費用助成が広がりつつあるところに「ワクチンがない」というブレーキがかかりました。現場の小児科医達は不活化ポリオ・ワクチンの時のように個人輸入を始めるところも出てきました。

 でもちょっと考えてみてください。
 ワクチン行政の不備により風疹流行を野放しにし、CRSを発生させたのは国です。
 それをカバーするのは本来国の役割のはず。
 しかし田村厚生労働大臣は「まだ1万人しか患者がいない」と宣い、12例のCRSの陰に隠されている600の人工妊娠中絶による生まれてこられなかった命に寄り添う気持ちが微塵も感じられません。
 さらにさらに、希望者を目の前にして不足したワクチンを補うのも国の役割のはず。
 それを「救済制度が使えない」個人輸入をすることさえ傍観しているとは・・・

 国の無策、ここに極まれり。

 こうして幾重にも責任逃れをしている国と厚労省に、あきれ果てて怒りさえ覚えなくなりはじめている私です。

風疹ワクチン 個人輸入で対応の病院も(2013年6月30日 NHK)
 風疹の流行が続き、8月にも風疹のワクチンが一時不足するおそれがあるほか、手に入りにくい状況が起きていることから、東京の国立国際医療研究センターは、個人輸入したワクチンを副作用などのリスクを説明したうえで大人に限って接種する取り組みを始めました。
 風疹の流行が広がっている影響で、厚生労働省は、予防接種を受ける人がこのままのペースで続いた場合、8月にも風疹のワクチンが一時的に不足するおそれがあるとしています。
また、一部の医療機関では風疹のワクチンが手に入りにくい状況が起き、子どもの定期接種の予約の受け付けを部分的に見合わせるなどの影響が出ています。
 このうち東京・新宿区の国立国際医療研究センターでは毎週日曜日に大人を対象に風疹のワクチンの接種を行い、毎回60人以上が訪れていますが、ワクチンが手に入りにくくなっているということです。
 このためセンターでは、子どもの定期接種を優先する一方、大人の要望にも応える必要があるとして、医師が個人輸入したワクチンを副作用のリスクなどを説明したうえで大人に限って接種する取り組みを始めました。
 輸入したワクチンは風疹とはしか、おたふくかぜの混合ワクチンで、国の承認を受けていないため、厚生労働省は「承認していないものを国として輸入するのはハードルが高い」としています。
 こうしたワクチンは副作用が起きた際の国の救済制度がありませんが、医師の責任で接種することは認められていて、個人輸入を始める医療機関はほかにも出てきています。
 国立国際医療研究センタートラベルクリニックの金川修造医師は「風疹の流行を止めるために予防接種を呼びかけてきたのにワクチンがないので打てないという事態は避けたかった。子どもを優先するためには大人は輸入ワクチンに頼らざるを得ないと判断した」と話しています。
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