徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

カラス対策

2012年05月31日 07時56分06秒 | 日記
 医院敷地内でカラスの糞被害が発生し困っています。

・車のドアミラーに止まり車を汚す(どうやらミラーに自分の姿を映して眺めているらしい)。
・玄関のカラス戸の下に集まる虫を食べに集まり、フンをまき散らす。
・二回ベランダの手すりに止まりフンで汚す(動機は不明)。


 等々。

 ネットでカラス対策を検索してみました。
 光るものや、カラスの死骸もどきをぶら下げるものなど、いろいろ出てきました。
 しかし、驚かせる手法ではいずれ慣れが生じて効かなくなると書いてあります。
 カラスが嫌がることを常に経験させないとダメらしい。

 手っ取り早い方法は足に絡む糸を仕込むこと。
 具体的にはゴミ収集上で見かけるように網を張るとか、釣り糸(テグス)を張ること。
 早速釣り糸を購入してベランダの手すりに張りました。
 すると、見事な効果!
 翌日からフンがなくなったのです。

 でも、玄関入り口には釣り糸をはれません。
 網を張るのもちょっと見栄えが悪い・・・。

 こんな品物を見つけました。
 「カラスなぜ逃げる?
 「防鳥トルネード
 これらを眺めていて、「ウ~ン、何かに似ているなあ」と思いました。
 そうそう、パーティーなどで使うキラキラのモール
 あれだったら100円ショップで売っているはず。
 さっそく購入して玄関ガラスの内側に張ったところ、効果抜群!
 翌日からフンがなくなりました。

 というわけで、一件落着。
 さて、賢いカラスからの反撃はあるのでしょうか?
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木漏れ日も金環日食

2012年05月21日 20時38分08秒 | 日記
 2012年5月21日午前7:30。
 今後忘れることはないであろう、特別な日。
 生まれて初めて「金環日食」を目撃・観察した記念日です。

 事前に用意した「日食用眼鏡」で7時頃から観察すると、刻々と太陽が三日月型に削られていく様が見て取れました。
 ドキドキワクワク。
 金環日食となった頃には、晴れているのに何となくほの暗く、少し肌寒い不思議な雰囲気になりました。
 レイ・ブラッドベリの「何かが道をやってくる」の一場面を思い出しました。

 一眼レフをもっているので、写真もと思いきや、日食用フィルターを準備が間に合わずきちんとした写真を撮ることはできませんでした。それでもなんとかならないものかと、絞りを絞りに絞って、ソフトでさらに加工して、ようやく金環食らしき姿に(苦笑)。



 う~ん、やはり今ひとつ・・・。
 それより驚いたのは庭の木陰。木漏れ日の一つ一つの光が「金環日食」しているのです。
 解説書で読んで「ほんまかいな?」と半信半疑だったのですが、実物を見て納得しました。





 自然の神秘ですね。
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大人にも予防接種を

2012年05月20日 18時42分41秒 | 小児科診療
 予防接種というと「子どもが受けるもの」というイメージがありますね。
 しかし、この理解は正しくありません。
 なぜって、小児期に受けた予防接種の効果は一生持たないからです。

 ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンが存在することはご存じだと思います。
 生ワクチンは自然界に存在するウイルスそのものを弱毒化してヒトに投与して感染させ、症状は出さずに免疫だけ付けるという方法。
 一方の不活化ワクチンはウイルスや細菌などの病原体の一部を取り出してヒトに投与する方法。一回では効果が不十分なので複数回注射し(基礎免疫)、その後免疫が弱くなる頃に追加接種をするのが基本です(追加免疫)。

 従来生ワクチンは1回で十分有効と考えられてきましたが、2007年の大学生を中心とした麻疹流行でみられたように、一回では足りないことが判明し、2回接種が標準になってきました。
 不活化ワクチンは追加免疫をしても5~10年後にはまた免疫が低下するのは避けられません。つまり理論的には5~10年間隔で一生追加免疫が必要になるのです。

 でも、現在の日本では行っていませんよね。

 私が勤務した病院の中で、1箇所だけ破傷風の追加免疫を5年ごとに行っている病院がありました。
 夕方地域の公民館に出張して、農作業帰りの人たちに接種するのです。
 10ヶ所の病院に勤務して1ヶ所だけですから、どちらかというと例外的です。

 さて、不活化ワクチンは三種混合(DPT、Diphteria-Pertussis-Tetanus)、日本脳炎ワクチン、ヒブ/肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、HPVワクチンなどがあります。

 現在問題になっているのは三種混合に含まれる百日咳
 前項でも触れましたが、大人で1ヶ月以上咳が続いているヒトの3割は百日咳であるという報告があります。皆、小児期にDPTを受けているはずなのに罹ってしまう。つまり、免疫が長持ちしないのです。
 ではDPTを追加接種すればいいじゃないかと思いきや、そう単純には行きません。
 DPTの追加接種として位置付けられているのは小学校高学年で受ける二種混合(DT)です。
 なぜか「P」(Pertussis)つまり百日咳が省略されています。これは、百日咳は大人が罹っても軽く済むから省略してもよいだろうと昔考えたからです。
 しかし、前項で触れたように、大人の百日咳患者→乳児へ感染し重症化、が問題になっていますので、そんな暢気なことは言っていられません。
 
 米国ではすでに成人用3種混合ワクチン(Tdap)を作って接種をしています。これは子ども用DPTを大人に接種すると局所の腫れがひどくなる傾向があるため、ジフテリア・トキソイドと百日咳ワクチンを減量して新たにつくった混合ワクチンです。

 一方、日本はなにも指針を出していません。無策。

 DTよりTdapの方が有効なのに・・・と知りつつ接種せざるを得ないストレスフルな状況は、生より不活化が安全と知りながら生を接種せざるを得ないポリオワクチンと状況が重なります。
 そんな時、頭の中で「ワクチン後進国日本」「日本の常識世界の非常識」という言葉が巡ります。
 
 何時になったら、このストレスから解放されるのでしょう。
 
追記>(2012.8.24)
 日本脳炎ワクチンに関して、IDSC(国立感染症研究所感染症情報センター)はQ&A「大人になってからの予防接種」を掲載し、その必要性を説いています。また、厚生労働省検疫所のHPでは、以下のように説明されています;

■ 日本脳炎ワクチンの追加接種
定期の予防接種を完了していても、予防接種の有効期間は3~4年といわれています。この期間を経過した後に、流行地域(特に農村部)に長期間渡航される方は、追加で1回接種し、以後3~4年ごとに接種することが勧められます。
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百日咳対策を見直す~米国の「Cocoon Strategy」

2012年05月20日 09時19分41秒 | 小児科診療
 近年、成人の百日咳が社会問題化しています。
 1ヶ月以上咳が長引く患者さんの3割は百日咳の可能性があるとの報告もあります。ただし、典型的な咳込み発作が出にくいので、診断が後手に回りがちで早期治療が困難なのが悩ましいところです。

 さて、このとばっちりを受けるのが赤ちゃん。
 乳児が百日咳に罹ると、命に関わる重症の病気になります。
 咳き込みが止まらず呼吸が苦しくなり、顔色が悪くなり、特に3ヶ月未満の乳児では息を止めて(無呼吸発作)しまうのです。ネットで検索すると、YouTubeで動画を見つけました;
百日咳乳児の咳込み
 もう、かわいそうで見ていられません。

 実例を挙げると、2010年米国カルフォルニア州で百日咳の流行があり、8000人を超える患者が発生しました。そのうち死亡例が10人、すべて乳児でした。
 ちなみに米国では小児期定期接種として5回DTP、さらに成人用Tdap(局所反応軽減目的でジフテリア・トキソイドを減量した成人向けワクチン)を11~12歳で追加接種し、合計6回免疫を付けていますが、それでもこのような現象が起きてしまうのです。
 米国では生後2ヶ月からDTP接種可能ですが、接種完了以前の赤ちゃんは免疫不十分なため罹ってしまいます。

 咳が続けど百日咳と自覚していない大人が、DPT接種前の赤ちゃんに面会して抱き上げると・・・考えるだけで恐ろしい。

 米国はこの状況にいち早く対応し、ワクチンができない時期の赤ちゃんを守る戦略がとられています。
 名付けて「Cocoon Strategy」(繭戦略)。
★「Cocoon Strtegy by AGPN」(こちらはオーストラリア版)
 母親の妊娠が判明すると、母親自身はもちろんのこと、その家族や今後赤ちゃんの面倒を見る可能性のある人全員のワクチン接種歴および罹患歴を調査し、罹患歴がなくワクチン接種が年齢における必要数行われていない人に対しては不足分のワクチン接種が行われます。また、もし母親がTdap(前項参照)未接種であった場合、出産後すぐにTdapを接種する(基本的には妊娠前の接種を推奨)、さらには出産に関わる医療従事者にもTdapの接種が推奨されており、ありとあらゆる感染経路をワクチン接種によりつぶすことで生まれてくる赤ちゃんを百日咳から守る努力がなされているのです。
 カイコが幼虫の周りに硬い嚢をを作って幼虫を守る繭(Cocoon)に似ていることからこのネーミングがなされました。日本もよいところは見習って後に続いて欲しいものですが、今のところ何の動きもありません。

■ ワクチンを接種したくてもできない子ども達を守る
 この繭戦略の根底にあるのは「ワクチンを接種したくてもできない人を守ろう」という考え方、つまり「集団免疫」という思想です。
 ご存じのようにワクチンの効果には「個人免疫」と「集団免疫」があります。
 ワクチンは接種した本人を守ってくれます(個人免疫)が、接種率を上げることによりその環境から病原体が駆逐され流行を抑えることができるのです(集団免疫)。

 もう一つ例を挙げると「白血病と水痘ワクチン」。
 水痘は健康な子どもが罹っても1週間で治る、どちらかというと軽症の感染症です(まれに重篤な合併症はあります)。
 しかし免疫不全状態の子どもが罹ると命に関わります。
 白血病や小児ガンの子ども達は、病気そのもの、あるいは治療で免疫不全状態にあり、病院で闘病生活を送っています。その病棟に、肺炎や脱水症で入院してきた患者さんがもし入院中に水痘を発症したら・・・病棟は大変な騒ぎになります。
 もちろん、白血病の子ども達には予防的な治療が施されますが、一旦発症してしまうと重症化は避けられません。
 水痘の伝染力の目安である再生産数(Ro)は8~10人、つまり1人患者が発生したら周囲に10人患者がいると思え、という感染力の強い病気であり、大変なのが感染対策。
 小児病棟は潜伏期間の3週間は閉鎖され、他に水痘患者が発生しないことを確認後、ようやく再開することになります。この間、新たな入院患者は受け入れ不能となり病院は機能不全状態に陥ります。
 この影響は甚大であり、白血病治療を専門としている小児科医達から悲鳴が上がっています。
 
 日本にはワクチン反対の論陣を張っている小児科医もいますが、上記のような状況をどう考えているのでしょう。知った上でも「自然に罹った方がよい」と言うのでしょうか。
 
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ワクチン「接種率」の重要性

2012年05月20日 07時13分01秒 | 小児科診療
 予防接種の有効性の要素のひとつに「接種率」があります。
 簡単に云うと「みんなが受ければ流行しなくなる」ということなのですが、今ひとつピンと来ません。
 ちょっと解説を試みてみます。

 予防接種関連書籍を読んでいると「herd immunity」という言葉に出会います。「集団免疫率」と訳されていますが、意味は?・・・より正確には「感染伝播を抑制するのに必要な集団免疫率」らしい。これでも言葉が硬いなあ・・・「接種率をこの数字以上に保てば流行を防げる」といったところでしょうか。
 
 感染症はその病原体により他人にうつす力~流行する力が異なります。
 これを基本再生産数(Ro)という数字で表します。
 Ro とは1人の患者が周りにいるヒト何人に感染を広げるかを示す数字です。つまり、1人患者が発生したら Ro の人数だけ患者がいると思え!ということですね。
 herd immunity は Ro の値から計算式で求めることが可能です(省略)。
 各感染症の数字を列挙してみます;

 (感染症)ー(Ro)ー(herd immunity)
 ジフテリアー(6~7) ー (85%)
 麻疹 ー  (12~18)ー(83~94%)
 おたふくかぜー(4~7)ー(75~86%)
 百日咳 ー (12~17)ー(92~94%)
 ポリオ ー (5~7) ー(80~86%)
 風疹 ー  (6~7) ー(83~85%)
 インフルエンザー(6~7)ー(67%)
 水痘 ー  (8~10) ー(90%?)


 等々。
 
 こんなわかりにくい数字に興味を持ったのは、昨年(2011年)のヨーロッパにおける麻疹の流行でした。
 ヨーロッパと云えば先進国、かなり以前から麻疹に関しては2回接種を始めていたはず、なのになぜ?
 答えは「接種率が herd immunity の数字に届かなかった」という説明なのでした。
 上記のように麻疹ワクチンの herd immunity は83~94%、つまり95%以上の接種率を達成して初めて流行が制圧されるのです。

 さて、わが日本ではどうでしょうか。
 2007年に大学生中心に麻疹が流行した事実は記憶に新しいところです。
 当時の日本の麻疹ワクチン接種率(10~20代)は85%程度で、麻疹に罹ったことのあるヒトが5~10%、麻疹ワクチン未接種かつ未罹患者が5~10%という状況でした。このような集団に麻疹ウイルスが侵入し、大規模な流行が発生したのですね。

 翻って、2011年、麻疹ワクチン2回接種が浸透した後、「麻疹輸出国」と非難されてきた日本が「麻疹輸入国」へ切り替わったと報道されました。ワクチンの効果が証明されたことになります。

 ワクチン接種率が低下すると流行する可能性上昇、と聞くと「ポリオ」が気になりませんか。
 ポリオの herd immunity は80~86%、つまり接種率87%以上を維持しないと流行が抑えられないのです。
 最近30年ポリオの発生をゼロに抑えてきたのは、取りも直さず接種率が高く維持されてきた効果に他なりません。
 昨今「生ワクチン接種控え」で既に80%を下回っているという報道も散見します。

■ ポリオ生ワクチン接種率、急減 「不活化」導入待ちか
(2012年4月21日:朝日新聞)
 ポリオ予防のため自治体が現在使っている生ワクチンについて、昨秋の都道府県別の予防接種率が20日わかった。厚生労働省によると、全国平均の確定値は前年同期比15.5ポイント減の76.2%だが、千葉57.6%、埼玉65.8%、東京66%、神奈川66.2%と首都圏で特に低かった。まひが起きない個人輸入の不活化ワクチンの接種が受けられる医療機関が多いことなどが背景とみられる。
 千葉は前年同期比32.6ポイント減で最も落ち込みが大きかった。他に接種率が低かったのは青森62.9%、山梨66.7%、熊本66.7%、奈良68%など。国産の不活化ワクチンの導入を待つ保護者らが増えたためとみられる。


 今、海外から空路・海路で野生ポリオが日本に持ち込まれたら乳幼児中心に流行する可能性が大、ということを認識する必要があると思います。
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ポリオワクチンで気になること

2012年05月19日 20時46分47秒 | 小児科診療
 不活化ポリオワクチンが単独では9月、三種混合(DPT)と合わせた四種混合(DPT-IPV)は11月開始予定と報道され、ようやく世界標準に追いつきました。
 ポリオワクチンについて、日々感じることを書いてみます。

■ 経口生ポリオワクチンは悪者?
 ポリオワクチンに関して、現在日本では副反応の視点から「生は悪、不活化は善」一色という感じになっています。
 しかし、生ワクチンは過去の流行を制圧してきた実績もあり、悪者扱いは少しかわいそうな気もします。私としては「今までご苦労様」と云いたいところです。

 1950年代までは日本でもポリオが流行し、何万人単位の患者さんが発生していました。
 当時の日本が選択・導入したのは不活化ポリオワクチン。
 接種を始めたところ、流行は治まるどころか広がるばかり。

 不活化ワクチンの効果に不満な国民は日本政府を責めました。
 当時の記録動画で「ポリオの被害者が多数発生しているのは、生ワクチンを採用しない選択、つまり医原性だとお考えですか?」と母親代表が説明会で政府に詰め寄る場面を拝見したことがあります。
 皮肉なことに今の状況と真逆ですね。

 民意に押されて日本政府は生ワクチンをロシア(当時はソ連)とカナダから緊急輸入しました。接種を始めると、あれだけ流行していたポリオが瞬く間に征圧されたのでした。

 それから50年・・・すでに流行はなく、1980年を最後に患者さんもゼロ更新が続きました。
 実は流行が制圧された段階で生から不活化へ移行するのがポリオ政策のセオリーです。
 世界を見回すと、先進国では着々と不活化へ変更していきました。
 しかし日本は問題意識に乏しく、国民が騒がないのでなんとなく生を接種し続けたのでした。

■ 不活化ポリオワクチンの効果の限界~流行抑制効果はない
 不活化ポリオワクチンは接種した個人を守ってくれるものの、流行は抑制できません。そのカラクリは、ワクチン接種により獲得できる免疫の種類によって説明可能です。

 経口生ワクチン:血中免疫と腸管免疫
 不活化ワクチン:血中免疫のみ


 つまり不活化ワクチン接種後でも腸管免疫がないので、野生ポリオウイルスが口から入った際に腸管(消化管)での増殖を許してしまうのですね。すると、便の中にウイルスが排泄され、他人にうつす感染源になってしまう(被害者にはならないけど加害者にはなり得る)・・・よって流行が抑えられないことになります。

■ 野生ポリオが今輸入され流行したら?
 日本では制圧された野生ポリオ、海外での状況はどうでしょうか。
 アフリカ、インド、そして中国では現在も発生しています。
 グローバル化した現代、野生ポリオが飛行機や船に乗って日本に侵入してくるかもしれません。特に情報公開がされていない中国の状況が気になります。
 ワクチン接種率が低下している現在、子どもを中心に感受性者が多数存在する状況ですから、野生ポリオが侵入すると流行する危険があります。
 
 もし、野生ポリオが流行したら、日本政府はどんな政策を選択するでしょうか?
 私見ですが、正解は「生ポリオの緊急強制接種」ですよ。

■ 生ワクチン接種を避け、不活化ワクチンを待っている子どもが背負うリスク
 生ワクチンで問題になっている麻痺の副反応(VAPP、vaccine-associated paralytic poliomyelitis)は480万接種に1人の割合(近年では100万接種に1.4人というデータも)。
 生ワクチン接種者から家族や周囲の人にウイルスが伝播(cVDPV、circulating vaccine-derived poliovirus)して麻痺が発生する頻度は780万接種に1人。
 ということは・・・生ワクチンを接種せずに不活化の開始を待っている子ども達は「780万人に1人」の麻痺リスクを背負ってしまうことになります。

 また、これからプールの季節になります。
 生ワクチンを接種すると腸管で増殖したウイルスが便に排泄されます。
 接種していない子どもを一緒にプールに入れてよいものか・・・問題になりそうです。
 一応、ポリオ研究所のQ&Aでは「お風呂、プールは問題ない」となっていますが。
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「太もも予防接種」導入記

2012年05月11日 06時28分10秒 | 小児科診療
 予防接種の世界では「日本の常識は世界の非常識」の数々がまかり通っています。

 接種ルートと接種部位もそのひとつ。
 世界では「不活化ワクチンは筋肉注射」が標準ですが、日本はなぜか皮下注射。
 これは1970年代の大腿四頭筋拘縮症訴訟のトラウマで「子どもへの筋肉注射は危険」というあやまったイメージが染みついてしまったためです。
 そのときに問題になったのはスルピリン(解熱鎮痛剤)やクロラムフェニコール(抗菌剤)の年間100回以上の頻回注射でした。ワクチンは関係なかったのに・・・とんだとばっちりです。
 それ以降、筋肉注射より痛くて効果の低い皮下注射を受け続けている日本の子ども達は不幸と云わざるを得ません。

 ワクチン接種部位も日本は上腕に限定されてきました。
 現在、当院では乳児の同時接種を行っていますが、細くて小さい赤ちゃんの腕にスペースを探しながら苦労して皮下注射しています;


 一方世界では大腿部が標準で、アメリカでは生後2・4・6ヶ月時に以下のような同時接種を受けるのがふつうです;

 ちなみにイラスト中の略号で、IM=intramascular(筋肉注射)、SC=subcutaneous(皮下注射)です。「太ももへの皮下注射もOK」とも書いてありますね。

 さて、遅ればせながら日本でも2012年春、皮下注射というルートはそのまま、接種部位が大腿部にも解禁されました。「予防接種ガイドライン」に下のイラストが掲載されたのです;

 かわいいイラストなのですが、これだけではアバウトすぎてどの範囲が接種部位なのかわかりにくい・・・イラスト中の文章は乳児への筋肉注射から引用した接種部位の説明文です。

 待ちに待った太もも接種解禁、早速当院でも導入を検討しました。
 そこでまた迷いが発生。
 「赤ちゃんを寝かせてやるべきか、抱っこしながらやるべきか?
 ガイドラインには何も書いてありません。
 そこで予防接種関係のMLにこの疑問を投げかけてみたところ、たくさんのアドバイスをいただき「横向き抱っこ」が標準であることを知りました;

 実は「痛くない予防接種の方法」という研究論文があって、寝かせるより抱っこの方が不安が少なく、一番泣かない方法は「母乳を飲ませながらの太もも接種」という驚きの手法が紹介されていました・・・当院ではちょっとそこまではできかねます(苦笑)。

 これで準備万端、今週から開始にこぎ着けました。
 当初、患者さんが受け入れてくれるか不安がありましたが、お話しするとちょっと驚きはするものの、「世界標準」「腕より痛くない」「院長お勧め」としっかり説明することにより予想より抵抗なく大腿部接種に同意していただきました。

 そして実際に接種。
 感想を一言で云うと「みんなが楽ちん」です。
 お母さんが固定するので看護師の仕事が楽になり、接種部位が広いので医師の私の苦労が減り、そしてなによりも赤ちゃんの泣き方が軽くなった、つまり痛みが軽減されたようなのです。
 上腕を使用して同時接種をした際は、火のついたように泣いて泣き止まない赤ちゃんが毎日何人もいましたが、大腿部接種では注射中はそれなりに泣くものの、終わって診察室を出る頃には泣き止む赤ちゃんがほとんど。
 これはいい方法です。
 もっと早く許可してくれればよかったのに、と感じた次第です。

 プクプク・ムチムチの赤ちゃんは採血や点滴では苦労するので小児科医泣かせなのですが、太ももへの予防接種に関しては大歓迎です(笑)。

追記
 その後大腿部接種をしていて気がついたことを記します;
・やせているお母さんは太ももで挟んで固定しようとしてもスカスカで赤ちゃんの足が抜けてしまう
 → 看護師が足首を下から手を回して固定。
・元気で脚力がある赤ちゃんはぴょんぴょん蹴るので、針を刺した後動いて痛そう
 → やはり1歳くらいまでがよいかと。

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そろそろスギ/ヒノキ花粉症も・・・

2012年05月03日 07時00分29秒 | 小児科診療
 終わる季節になりました。
 自身花粉症の私も、マスク・ゴーグルなしで症状がほとんど出ません。
 一方、先週あたりからレギュラーメンバーのイネ科花粉症患者さんが受診するようになり、花粉症の種類で季節を感じる今日この頃です。

 ネットで見かけた花粉症の話題をいくつか:

花粉症デビュー7・4歳 若年化、食生活も原因?
(2012.5.2 産経新聞)
 子供の“花粉症デビュー”は平均7・4歳、医師の9割が「子供の花粉症が増えた」と感じている-。気象情報会社ウェザーニューズ(東京)のアンケートで、花粉症の若年化が進んでいる可能性が浮かび上がった。調査に協力した医師からは、はっきりした要因は不明だが「高タンパク、高カロリーの食事をする子供が増えている」「免疫力の低下」などの見方が出たという。
 同社の携帯電話サイトの利用者らを対象に4月に調査。約3万人の有効回答をまとめたほか、医師50人にも質問した。自分の子や周りの子供は何歳ぐらいから発症しているか尋ねた結果、4~6歳の発症が最多の27・4%。次いで7~9歳の17・5%、0~3歳の17・4%で、平均7・4歳となった。子供ではなく回答者本人を対象に、いつから花粉症になったか尋ねたところ「10年以上前」が23・9%で最多。花粉症でないとの回答は18・2%だった。


 花粉症発症年齢の低年齢化はよく話題になりますが、あらためて数字を見るとちょっと驚かされますね。それでも今シーズンは大量飛散の昨シーズンより子どもの新規発症者は少ない印象でした。
 それにしてもこのニュース、医者の印象だけで「高タンパク、高カロリーの食事をする子供が増えている」「免疫力の低下」などとタイトルを付けないで欲しいですね。

花粉症に朗報-林野庁、「少花粉スギ」の供給拡大
(2012年05月02日 日刊工業新聞)
 林野庁は通常のスギよりも花粉の発生量が少ない「少花粉スギ」などの年間苗木供給量を、2017年度までに現在に比べて約8・5倍の1000万本にする。花粉症対策の一環。少花粉品種の採種園の造成・改良を支援するほか、関東圏に比べて普及が遅れている関西圏や九州などで少花粉品種を普及させる。
 林野庁は秋田県、大分県などの産地の特性に応じ、現在、少花粉スギ135品種、少花粉ヒノキ56品種、無花粉スギ2品種を開発している。花粉症対策の一環として05年度から少花粉スギの普及を開始した。
 東京都などの首都圏は花粉症患者が多いため、花粉症対策への関心が高く、少花粉スギへの置き換えがほぼ100%に達している。一方、関西や九州など西日本地域では数%にとどまっているのが実情だ。このため各県や地域の協議会を通じ、少花粉品種への置き換えを促す。伐採時期を利用して転換を急ぐ。


 こちらもよく話題になります。ただ、下記の疑問に答える内容はいつも皆無;
・治水対策としては針葉樹より保水力に優れた広葉樹を選択すべきなのになぜスギにこだわるのか?
・木材として利用しないなら、スギを植えるメリットは何か?
 
 誰か教えてください。

 それから、スギ花粉症の二次的弊害の記事を;

献血:春は不足気味 年度替わり多忙、花粉症の薬で不可 県センター、PR懸命 /兵庫
(毎日新聞 2012年04月18日)

 春の陽気がようやく本格化する中、県内の献血事業がピンチを迎えている。年度替わりの忙しさから献血に協力する人が減る上、花粉症対策で服用した薬が原因で、血液を利用できないケースが増えるからだ。献血を利用した血液製剤の需要が高まる中、何とか血液を確保しようと、県赤十字血液センターは献血キャンペーンを展開している。
 同センターによると、県内で献血の受け付けをした人を月別にみると、04~11年度の8年間の平均で4月は2万1084人と6番目で、目立って少ないとは言えない。ただ、献血に協力する人が減るのを見計らい、キャンペーンなどで下支えしているのが実態だ。
 春に献血をする人が減るのは、団体で協力する企業や大学が新年度や新学期で多忙を極め、献血への協力が難しくなることが背景にある。さらに、花粉症の流行で恒常的に薬を服用する人が急増。せっかく献血の受け付けをしても、大半が医師の内診などで「血液が利用できない」と判断されてしまうからだ。


 これも毎年話題になる事項ですね。
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