徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナ感染対策は消毒(接触感染対策)から換気(エアロゾル感染対策)重視へ

2022年04月24日 07時31分33秒 | 新型コロナ
前項の続きです。

新型コロナがここまで拡大し、かつ消えない原因は、
その「エアロゾル感染」という感染様式にあります。

接触・飛沫感染中心なら「環境消毒」は有効な対策ですが、
いくらそれを頑張っても新型コロナは消えませんでした。

私は以前から、クラスター発生の際の「環境消毒」に違和感を持っていました。
中国の街中全体を消毒して廻る映像、
日本の医療機関でも消毒液を吹き付けまわり、
「消毒完了」しないと再開できない・・・等々。

当院には医学書の類いがたくさんあるので、
もしクラスター発生した際に大切な本に消毒液をかけられてはたまらないと危険を感じ、
私は本棚にはビニールカーテンを付けたり、
本をビニールで包んだりしました。

つい最近ですが、
「環境には感染力のあるウイルスは残っていないらしい」
という科学的事実が報告され、
私の違和感が見事に解消しました。

▢ 環境表面を介したコロナ感染リスクは極めて低い
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生当初、多くの人が、環境表面に付着しているウイルスに触れることで感染するのを恐れ、買ってきた食品を消毒していたことは記憶に新しいだろう。しかし、米デューク大学医学部教授のDeverick Anderson氏らが実施した新たな研究により、汚染された表面から新型コロナウイルスに感染する可能性は低く、このような消毒は不必要であることが明らかにされた。この研究の詳細は、「Clinical Infectious Diseases」に1月12日掲載された。
 Anderson氏らは今回、同大学病院に入院中のCOVID-19患者20人の部屋の内外の環境表面から、新型コロナウイルスの陽性判定後24時間以内、および3、6、10、14日目に検体を収集した。検体は、ベッドレール、シンク、準備スペース、室内のコンピューター、ドアノブ、室外の看護ステーションのコンピューターの6カ所から採取された。
 集められた総計347点の検体のRT-PCR検査を行ったところ、新型コロナウイルス陽性の判定が出た検体は、全体のわずか5.5%(19点)であった。陽性は、ベッドレールからの9点(9.2%)、シンクと室内のコンピューターからのそれぞれ4点ずつ(ともに8.0%)、準備スペースとドアノブからのそれぞれ1点ずつ(ともに2.0%)の検体で確認された。また、陽性検体の採取日は、新型コロナウイルス陽性の判定後24時間以内に採取されたものが6点、3日目が10点、6日目が2点、10日目が1点だった。
 さらに、培養細胞を用いて陽性の検体に含まれるウイルスの感染性を調べたところ、ウイルスの増殖が確認されたのは、下痢と発熱の症状があった患者のベッドレールから発症後3日目に採取した1点(0.3%)の検体のみであった。
 Anderson氏は、「パンデミックが始まって間もない頃の研究では、新型コロナウイルスが環境表面で何日も残存することが報告されていた。しかしこれは、ウイルスが感染力を持ち続けることを意味するわけではない。今回のわれわれの研究により、環境表面には、感染性のある生きた新型コロナウイルスはほとんど存在していないことが明らかになった」と述べている。
・・・
<原著論文>

コロナの「接触感染」リスクはそれほど高くない

PCR検査はウイルスのかけらを検出する手法なので、
PCR陽性イコール感染力がある、ではないのです。
つまり「PCR陽性≠感染力あり」。

ですから、感染対策も以下のようにシフトさせる必要があります。
消毒中心 → 換気・ソーシャルディスタンス〜マスク中心

以前にも書きましたが、ウイルス粒子・エアロゾル粒子はタバコの煙粒子と同じくらいの大きさです。
室内でタバコを吸うとしばらくニオイが残る=タバコの煙粒子が浮遊している状態です。
タバコをニオイを消すほど換気しないと新型コロナ対策として不十分なのです。
窓を少し開けておくくらいではタバコのニオイはしばらく残りますから、
不十分と言わざるを得ません。
その間、感染リスクが高い状況が続くことを認識すべきです。

一方で「過剰な接触感染対策を整理して減らしていこう」という声が、
ご意見番の医師からも聞こえるようになりました。

ビュッフェの手袋、エレベーターの抗菌シート・・・そろそろ過剰な感染対策をやめていこうッ!
忽那賢志:感染症専門医
2021/12/12:Yahooニュース)より抜粋;
・・・
新型コロナの感染経路は3つです。
接触感染:ウイルスで汚染した物、感染した人の手などに触れることで自分の手などにウイルスが付着し、その汚染した手で目や鼻など粘膜に触れる
飛沫感染:会話などで発生する飛沫を浴びる
エアロゾル感染:特に換気の悪い屋内では飛沫の飛ぶ距離(1-2M)を超えて感染が起こり得る
基本的にはこの3つの感染経路を意識した感染対策が重要です。
接触感染に対してはこまめな手洗い、飛沫感染やエアロゾル感染に対してはマスク着用と3密を避けることで感染を防ぐことができます。
◆ ビュッフェでの手袋は不要!
・・・結局ビニール手袋をつけたとしても、ビニール手袋であちこち触ればビニール手袋そのものが汚染してしまい、汚染したビニール手袋でトングを触ればトングも汚染し、何がなんだか分からなくなります。
なんとなく「ビニール手袋は汚染しないんだ」という謎の信頼感があるのかもしれませんが、ビニール手袋にもウイルスや細菌は付着しますし、ウイルスが付着したビニール手袋であちこち触ればウイルスは広がっていきます。
ということで、大事なのは食事を取る前にアルコールなどで手を洗うこと、そして取り終わった後にも手を洗うことです。
・・・スーパーのレジの店員さんもずっと同じ手袋をつけて接客をされているのを見かけることがありますが、あれも「手袋はウイルスに汚染されない神話」によるものではないかと思います。前述の通り手袋も普通に汚染されますので、手袋で触った商品もお釣りを渡したお客さんの手も汚染されていきます。これを避けるためには、こまめに手を洗うか、手袋を使う場合は毎回換える必要があります。
◆ ハンドドライヤーは普通に使ってもいい
・・・ハンドドライヤーは手を洗った後に使用するものですので基本的にきれいな手を乾燥させるために使用するものであり、そこに新型コロナウイルスがいて、エアロゾルが舞って感染するなんてことは極めて稀であり、そんなことを気にするよりはマスク着用と手洗いという基本的な感染対策を徹底することが重要です。
日本経団連のホームページにも、
「オフィスや製造事業場といった、基本的に有症者がいない管理された場所のトイレでのハンドドライヤーの利用での感染リスクは限定されること、また、ハンドドライヤーの利用で発生する水滴、マイクロ飛沫による感染リスクが極めて小さいことが、複数の実験と数値流体シミュレーションを組合せて確認できたことから、ハンドドライヤーの利用停止を削除する。」
と記載があり、経団連もこう言っていることですし、そろそろハンドドライヤーも普通に使いませんか?
最後に「トイレのフタ問題」についても言及したいと思います。
「新型コロナの感染対策としてトイレの水はフタを閉めて流してください」という張り紙を見かけることがありますが、これも流行初期にトイレの水を流すことでウイルスが舞い上がるのではないかというモデル上の仮説があったり、便から発生したエアロゾルがトイレの配管を通して感染に関与したのではないかという都市伝説的な症例報告があり、「トイレは危険だ!」ということになったのではないかと思いますが、もしトイレを介した感染が起こるとしても極めて稀な感染経路であり、フタをするしないで感染リスクが「ほぼゼロ」から「ほぼほぼゼロ」になるくらいのものでしょう。
◆ 感染対策はシンプルに
全く未知の感染症であった新型コロナも、この2年間で様々なことが分かってきました。当初はとにかく感染リスクを下げるために何でもやる、ということで行っていた対策の中には、現在では「ここまではやらなくてもいいんじゃないの?」と思えるものも出てきました。
マスク着用、こまめな手洗い、3密を避ける、といった基本的な感染対策を継続していくためには不要な対策はできるだけなくしシンプルにしていくことが大事です。

 トイレ問題に関しては、便中にウイルスが排泄され、それが便器や周囲に付着して感染するという考え方がありましたが、現在は便から排泄されるウイルスは基本的に壊れている“ウイルスのかけら”であり、感染力はないとされています。

新型コロナは接触感染・飛沫感染もしますので、
手指消毒が不要になることはありません。
しかし環境中のウイルスは感染力がないことが判明した現在、
それ以外の環境消毒は取捨選択して整理し、
空気感染対策(換気、ソーシャルディスタンス〜マスク)を重視する方向で考えていきましょう。
なお、マスクをする目的はソーシャルディスタンスが保てない場合のかわりの手段であることを再度強調したいと思います。

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