徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

エアロゾル、マイクロ飛沫、空気感染・・・新型コロナで混乱中。

2020年07月12日 07時10分50秒 | 小児科診療
最近、TVでよく取り上げられる「感染形式」。
基本的に
1.接触感染
2.飛沫感染
3.空気感染
の3つに分類されます。

例えば、いわゆるカゼ(一過性の軽症ウイルス性上気道炎)は1と2、
3を起こす感染症は現時点では水ぼうそう、はしか、結核の3つのみです。
2と3の違いは、ウイルスを含んだ粒子の大きさです。
2(飛沫)の方が大きく、患者の鼻と口から出てもすぐに落ちて遠くまで飛びません。
3(飛沫核)は小さく浮遊して遠くまで飛ぶため、同じ部屋・同じ空間にいると感染する可能性があります。

さて、新型コロナはどうでしょう?
従来、一般のカゼ同様、1+2で語られてきました。
しかし途中で「エアロゾル」とか「マイクロ飛沫」という単語が飛び交うようになりました。
これは従来の感染症学では目にしなかった単語です。
聞いていると、私のイメージは「飛沫」と「飛沫核」の間の大きさで、性質も中間、というものです。
ただ、メディアが先行して報道するだけで、感染症専門家は「まだ学術レベルでの評価は定まっていません・・・」と口を濁してきました。

ところが先日、総元締めのWHOが「空気感染の可能性を除外できない」と衝撃的な発言をしました。
これが認定されると、感染対策がガラッと変わります。
というか、不可能になります。

この辺のことを解説しているネット情報がありましたので概要を紹介します。
結論から申し上げると、現在の日本で認識されている“想定内”の内容で、感染対策も含めて目新しい事実はありませんでした。
皆さん、三密を避けて、必要な場所ではマスクをして、手洗い励行を辛抱づくよく続け、習慣化しましょう。

新型コロナウイルス:やっぱり空気感染するの?
坂本史衣 | 聖路加国際病院QIセンター感染管理室マネジャー(2020/7/11:Yahooニュース)より一部抜粋

・従来、日常生活における新型コロナウイルスの主要な感染経路は飛沫感染と接触感染とされてきた(WHO、CDC)。

・最近、新型コロナウイルスはモノや環境表面では、それほど長く活性(細胞に感染する力)を維持できないので、接触感染は主要な感染経路ではないのでは?という見解が発表された。

・2020.7.9に世界各国の研究者らが連名で新型コロナウイルスが空気感染するとの書簡を専門市場に発表し、WHOに感染対策を見直すよう求めた。

・エアロゾルの定義:(定まっていないが)空気中を漂う液状あるいは固形の微粒子。感染症学分野における慣習として、
(飛沫)droplet:水分を多く含み、粒子径が比較的大きな微粒子
(エアロゾル)aerosol:水分量が少なく、粒子径が比較的小さな微粒子
と区別するのが一般的である。ただし、粒子径の線引きに統一見解はない(慣習としては5μm)。
飛沫の水分が蒸発すると乾燥した固形の微粒子となるが、これを飛沫核 droplet nuclei と呼ぶ。エアロゾルと飛沫核を同義に扱う文献もあれば、区別している文献もあるのが現状。
・ヒトが呼吸、咳、くしゃみ、会話などで口や鼻から出す微粒子には飛沫とエアロゾルが混在しており、飛沫感染と空気感染は連続するスケール上にある現象と捉える必要がある。どちらの経路で艦船が寄り起こりやすいかという観点での区別は可能である。
(例)インフルエンザウイルスは空気感染する可能性がゼロではないが、主要な感染経路は飛沫感染と判断
(例)麻疹ウイルスは2時間ほど空気中を漂い空気感染することで感染が広がる

・専門家からの書簡の要約;
  • ウイルスは呼気(吐く息)、会話、咳の際に微細な飛沫(書簡ではマイクロドロップレットと表現=エアロゾルと同義)に含まれて空気を漂うことにより、発生源から1~2メートル以上離れたところに到達可能である。
  • 屋内の典型的な気流速度に乗った5μmの微粒子は、数10メートル浮遊し、1.5メートルの高さから床に落ちることがある。
  • 中国のレストランでは感染者のテーブルと隣接するテーブルの2家族(滞在時間それぞれ60~90分間)に二次感染例が発生しており、換気の悪い空間で、気流に乗ったウイルスが拡散した可能性が指摘されている。
  • 新生児に呼吸器感染症を引きおこすRSウイルス、インフルエンザや中東呼吸器症候群を引き起こすMERSコロナウイルスは、エアロゾルに付着して空気中を浮遊することが知られており、SARS-CoV-2でも同様のことが起こり得ると考えられる。
  • 現在、国際機関や各国の専門機関が発行しているガイドラインでは、手指衛生、ソーシャル・ディスタンシング(注2)、マスク着用などの飛沫感染対策に重点が置かれており、空気感染のリスクについては医療機関におけるエアロゾル産生手技(注3)にのみについて注意喚起がなされている。
  • 感染者の鼻や口から放出され、空気中を漂うウイルスを含むマイクロドロップレットを吸入することによる感染は、特に屋内の閉鎖空間、なかでも人が密集しており、換気が不十分な環境において問題となりやすい。
 ⇩ (これらを踏まえた対策の提案)
  • 特に公共の建物、職場、学校、病院、高齢者施設における効果的かつ十分な換気(外気の供給、最小限度の空気の再循環)
  • 通常の換気に局所排気装置、高性能エアフィルター、紫外線などを併用
  • 公共交通機関や公共の建造物内における密集の回避
 ⇩ (WHOの公式回答)
  • これまでに得られた科学的根拠に基づくと、新型コロナウイルスの主要な感染経路は飛沫感染と接触感染だと考えられる。
  • 空気感染は医療機関でエアロゾル産生手技を実施した場合に起こると考えられる。また、屋内の人が密集した環境において空気感染の可能性が除外できない集団感染事例が報告されている。
  • 今後もこまめな手指衛生、可能な場合はフィジカル・ディスタンシングを継続するとともに、人が密集した換気の悪い密閉空間を避け、そのような場所にいるときには布製のマスクを着用して他者に感染させることを防ぎ、換気や適切な清掃・消毒に努める必要がある。
 ⇩(WHOの回答の根拠)
  • 新型コロナウイルスが空気感染を引き起こすために必要なエアロゾルの濃度やウイルス量について、まだよくわかっていない。
  • 新型コロナウイルス以外のウイルスが、通常の会話や咳の際に放出されて空気中を浮遊する場合があることは以前から報告されているが、新型コロナウイルスがこのような経路で感染することは確認されていない。
  • 密閉されたドラムの中にジェットネブライザーで新型コロナウイルスを注入した実験では、3~16時間後にもウイルスの遺伝子が空気中から検出されているが、人間が咳をした状況とは異なるので現実世界で同じことが起こるとは言えない。
  • 病院やその他の環境において、大量の空気中から少量のウイルス遺伝子を検出したとの報告はあるが、活性のあるウイルスを検出したという報告はない。
  • 医療従事者を対象とした最近の研究では、新型コロナウイルス感染症の患者に対してエアロゾル産生手技を実施しない場合には、飛沫感染と接触感染を防ぐ対策を適切に実施している限りにおいて、院内感染は起きていない。
  • 医療機関以外で、三密空間で空気感染が起きた可能性が否定できない集団感染事例が発生しているが、飛沫感染と接触感染によって起きたという説明も可能な状況である。
・WHOは、「空気感染が起こる可能性は除外できない」(cannot be ruled out)と否定も肯定もしていない一方で、専門家は「空気感染はあり得る」(likely)と温度差がある。
・空気感染に関しては決着はついていないが、現状での理解は、「三密空間において空気感染のリスクはゼロではなく、特に流行地域では1人の感染者から一度に複数に感染するスーパー・スプレディング・イベント(superspreading event)に遭遇する可能性がある」でよいのではないか。
・逆に、三密空間ではない場所や屋外では空気感染を恐れる必要性はほとんどない。エアロゾル産生手技を行っていない医療現場などでも空気感染の心配はない。


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