徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

コラーゲンサプリも根拠なし?

2024年07月30日 16時45分50秒 | 小児科診療
TVのCMで、
「コンドロイチン配合!」
「コラーゲン配合!」
というサプリメント通販の宣伝を目にしない日はありません。

あたかも関節痛などに効果があるような素人のインタビュー画像が流れますが、
画面の端に、
「効果を約束するものではありません」
「感想には個人差があります」
などと“責任逃れ”のための注意書きが小さく表示されます。

昔からこのような品物を、
医療関係者は「怪しい」と指摘してきました。

理由は、有効成分を飲んでもそのまま患部に達することはあり得ないからです。

例えば「コラーゲン」。
コラーゲンはたんぱく質でアミノ酸からできています。
コラーゲンを飲んだり食べたりすると、
消化管でアミノ酸にまで分解されてから吸収されます。
これはすべてのたんぱく質に共通すること。

体内に吸収されたアミノ酸は、
線維芽細胞という特殊な細胞内でコラーゲン造りの原料となります。

コラーゲン → アミノ酸に分解されて体内に吸収 → 線維芽細胞でコラーゲンに
たんぱく質 → アミノ酸に分解されて体内に吸収 → 線維芽細胞でコラーゲンに

つまり、アミノ酸の元は、コラーゲンでも他の蛋白質でもOKなのです。
だから、高いお金を払ってコラーゲン・サプリメントを飲むより、
ふだんの食事の中でしっかりたんぱく質を摂取すれば同じ効果が期待できますよ。

こんな単純なことなのに、
日本人はだまされサプリ製造会社のよいカモになっている・・・
と呆れているのが医療関係者です。

おそらく、TVのCMは番組のスポンサーなので、
TVのニュースでは悪口は言えないというカラクリもあるのでしょう。

これは統一教会の悪口を言えない政治家と同じ構図です。
票田になる宗教団体の悪口を言うと、選挙で勝てないのです。

それはさておき・・・
コラーゲンサプリに関して少し詳しく解説した記事を見つけましたので紹介します。

<ポイント>
・一部の研究は、特に肌の見た目などにある程度の効果を期待できるかもしれないとしているが、明確な答えは出ていない。
・サプリメントを摂らなくても、食事や生活習慣によって同じ目的を達成させることは可能。
・患者にコラーゲンのサプリメントを勧めたり、自分で摂取しようと思えるほどの証拠はない。
・コラーゲンは、哺乳類が最も豊富に持っているタンパク質。私たちの体内にあるタンパク質の30%をコラーゲンが占めている。コラーゲンは、皮膚、靭帯、筋肉、腱、骨、血管、腸の内壁、その他の結合組織を構成する重要な要素である。
・コラーゲンは、3本のアミノ酸の鎖がねじれた三重らせん構造になっている。この鎖がしっかりとからみ合うことで、強く、硬いタンパク質になる。分子構造や体のどこにあるかによって、コラーゲンは28種類に分類される。体内のコラーゲンの90%はI型で、皮膚、骨、腱、靭帯に見られる。また、I型からV型までが最も多い。
・人体はコラーゲンをそのまま吸収することができないため、最終的には個々のアミノ酸にまで分解し、必要に応じて利用する。
・コラーゲンは、主に線維芽細胞と呼ばれる専門化された細胞によって、吸収されたアミノ酸から私たちの体が作り出している。
・日本ではコラーゲンは薬機法上の医薬品に該当しないため、成分や表示については一般の食品と同様の規定に従う。
・サプリメントに含まれているコラーゲンは、人由来ではなく、牛、魚、鶏など、由来はさまざま。
・経口サプリメントの場合、目に見える皮膚の変化とコラーゲンを関連付けたデータはあまりない。肌の張りやうるおい、しわなどへの効果を調べたランダム化比較試験の結果にも、大きな違いは見られなかったと指摘している。髪や爪に関する研究はほとんど存在しない。
・コラーゲンを豊富に含む食事と栄養素を取り入れ、体が自らコラーゲンを作るようにすることが大事。


■ コラーゲンサプリの効果は根拠なしとの意見も、ホントはどっち?
肌や関節の衰えを改善する機能が謳われ人気、今わかっていることを詳しく解説
2023.05.20:National Geographic)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 コラーゲンが皮膚や髪、爪、骨、関節、その他あらゆる体の部分の老化防止に効くという宣伝文句や有名人の証言が巷にあふれている。多くの消費者がこれを信じ、2021年には米国でコラーゲンのサプリメントに20億ドル(約2750億円)が費やされたという。この数字は、今後さらに増えると予測されている。しかしコラーゲンに関していえば、科学を差し置いて評判ばかりが先走りしているようだと、専門家たちは言う。(参考記事:「効果うたう投稿動画が量産、マグネシウムは不眠や不安に効くの?」)
 一部の研究は、特に肌の見た目などにある程度の効果を期待できるかもしれないとしているが、明確な答えは出ていない。サプリメントを摂らなくても、食事や生活習慣によって同じ目的を達成させることは可能だ。
 米ラッシュ大学の皮膚科医であるソニア・ケンケア氏は、患者にコラーゲンのサプリメントを勧めたり、自分で摂取しようと思えるほどの証拠はないと語る。・・・「摂取しているという人は多いですが、そういう人たちには、効果を裏付けるデータがないと言っています」(参考記事:「「汗をかいてデトックス」はウソだった、研究報告」)

▶ コラーゲンとは何か
 コラーゲンは、哺乳類が最も豊富に持っているタンパク質だ。私たちの体内にあるタンパク質の30%をコラーゲンが占めている。コラーゲンは、皮膚、靭帯、筋肉、腱、骨、血管、腸の内壁、その他の結合組織を構成する重要な要素であると、米クリーブランド・クリニック人間栄養センターで管理栄養士を務めるジュリア・ズンパーノ氏は言う。
 コラーゲンは、3本のアミノ酸の鎖がねじれた三重らせん構造になっている。この鎖がしっかりとからみ合うことで、強く、硬いタンパク質になる。分子構造や体のどこにあるかによって、コラーゲンは28種類に分類される。クリーブランド・クリニックによると、体内のコラーゲンの90%はI型で、皮膚、骨、腱、靭帯に見られる。また、I型からV型までが最も多い

▶ 体内でのコラーゲンの働き
 コラーゲンは、主に線維芽細胞と呼ばれる専門化された細胞によって、私たちの体が作り出している。アミノ酸を結び合わせてコラーゲンにするために、線維芽細胞はビタミンCや亜鉛といった栄養素も必要とするとズンパーノ氏は言う。
 コラーゲンの主な仕事は、体の組織に支えや強度、構造を与えることだ。皮膚に弾力を与え、内臓を守る。また、止血や新しい皮膚細胞の成長も助ける。
 体がコラーゲンを十分作ることができないと、このプロセスが崩壊する。遺伝性の病気であるエーラス・ダンロス症候群は、コラーゲンに関わる遺伝子に異常があるため、皮膚が柔らかくて伸びやすい、あざができやすい、関節が外れやすいといった症状が出る。全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの自己免疫疾患も、コラーゲンにダメージを与えることがある。

▶ 年を取るとコラーゲンが減少
 年を取ると、体が作るコラーゲンの量が減り、分解されるのも早くなる。表皮の下にある真皮のコラーゲン量が減ると、皮膚がたるみ、しわができる。ほかにも、喫煙、飲酒、紫外線、砂糖の摂りすぎなど、さまざまな要因がコラーゲンを作る能力を低下させることが、研究で示されている。それによってコラーゲンが減り、しわが増える。(参考記事:「「老化細胞を除去する薬」で若返り、実用化へ高まる期待」)

▶ 市場に出回るサプリメント
 市場にはさまざまなコラーゲン製品が出回っているが、中に何が含まれているかに関しては基準がない。米国の場合、栄養サプリメントであるコラーゲンは、米食品医薬品局(FDA)の規制対象になっていないため、企業にはその安全性や有効性、純度を示す義務がない(編注:日本でもコラーゲンは薬機法上の医薬品に該当しないため、成分や表示については一般の食品と同様の規定に従う)。
 一口にコラーゲンといっても、牛、魚、鶏など、由来はさまざまだ。I型やIII型など種類が書かれていたり、「コラーゲンペプチド」などと表示されている場合もある。コラーゲンペプチドは、アミノ酸の鎖が短いコラーゲンのことだ。サプリメントの形状は、錠剤、粉末、グミ、ドリンクなどがある。
 コラーゲンペプチドは、1日2.5グラムから15グラムまで安全に摂取できるとズンパーノ氏は言う。しかし、体はコラーゲンをそのまま吸収することができないため、最終的には個々のアミノ酸にまで分解し、必要に応じて利用する

▶ 宣伝される効果、根拠は不足
 コラーゲンは、美容整形でもよく用いられる。ケンケア氏によると、皮膚に注入して一時的に張りを与えることができるが、最後には体内で分解されるという。しかし経口サプリメントの場合、目に見える皮膚の変化とコラーゲンを関連付けたデータはあまりない
 サプリメントの摂取によって皮膚の状態がわずかに改善される可能性があることを示す研究もあるが、いずれも但し書きがついている。2021年に医学誌「International Journal of Dermatology」に発表されたレビュー論文によると、大半が女性である1125人を対象に行った19の研究から、コラーゲンのサプリメントを摂取することでしわが減り、肌の張りとうるおいが向上することを示す証拠が見つかったという。
 とはいえ、どのサプリメントにも、コラーゲン以外の成分も含まれており、それらが結果に影響した可能性もあると、米ハーバード大学医学部と米マサチューセッツ総合病院の皮膚科医たちは分析している。さらに、2016年に学術誌「Journal of the Science of Food and Agriculture」に発表された、肌の張りやうるおい、しわなどへの効果を調べたランダム化比較試験の結果にも、大きな違いは見られなかったと指摘している。髪や爪に関する研究はほとんど存在しない。「もっと多くの研究が必要です」とズンパーノ氏は言う。
 肌以外にも、運動選手や変形性関節症患者について、関節の動きや、ひざや関節の痛みが改善したこととコラーゲンのサプリメントを関連付ける研究が2006年に医学誌「Current Medical Research and Opinion」や2020年に医学誌「Rheumatology and Therapy」で発表されている。これに関してはさらに詳しい研究が進められている。
 サプリメントに頼らなくても、コラーゲンの潜在的な恩恵を得ることはできる。肉、魚、卵のほか、骨でだしをとったスープなど、コラーゲンを含む食品は多い。ズンパーノ氏は、コラーゲンが作られるのを補助するためにビタミンC、銅、亜鉛、アミノ酸のプロリンとグリシンも一緒に摂取するよう勧めている。多くのアンチエイジングクリームに配合されているレチノイドには、コラーゲンが作られるのを促す働きがあると、ケンケア氏は付け加えた。
 ズンパーノ氏は、コラーゲンを豊富に含む食事と栄養素を取り入れ、体が自らコラーゲンを作るようにすることが大事だと話す。「サプリメントは万能だとは言えませんから」(参考記事:「こんなサプリメントにご用心」)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ビタミン剤、無意味です。 | トップ | “マザーキラー”と呼ばれる子... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小児科診療」カテゴリの最新記事