徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナ禍でも減っていない「突発性発疹」

2022年04月24日 07時28分27秒 | 小児科診療
少し前に「新型コロナ禍で減った感染症、減らない感染症」という文章を書きました。

先日福島県で開催された第125回日本小児科学会でも題名の内容が報告され、
この事実がますます明らかになりました。

▢ 全国調査でコロナ下でも突発性発疹は減っていないことを確認
中西 亜美=日経メディカル

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下で様々なウイルス感染症の疫学が変化している。一方、突発性発疹の患者数はCOVID-19流行前と変わらないことが示唆されていたが、新潟大学医学部小児科学教室助教の相澤悠太氏らによる調査の結果、全国的に減少していないことが確認された。成果は、第125回日本小児科学会学術集会(会期:4月15~17日、福島県郡山市の会場とウェブのハイブリッド開催)で発表された。
 相澤氏らが新潟県と全国の定点当たり報告数を調べたところ、2020年はいずれも学校閉鎖期間(第10~22週)に突発性発疹患者の減少を認めた以外には、2016~2019年の平均値と大きく変わらず、例年通りの報告数であることが明らかになった。学校閉鎖期間に報告数が減少した理由については、受診控えがあった可能性などが考えられた。
 突発性発疹は乳幼児期に発症する発熱発疹性疾患で、原因病原体であるヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)とヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)に感染すると、生涯にわたり体内にウイルスが潜伏する。感染経路は正確なところは不明であるものの、家族(同胞や親)の唾液を介して感染するとの仮説が有力視されている。また、この30年ほどで突発性発疹の罹患年齢が上昇しており、その要因として考えられているのが離乳食を口移しで与える機会の減少や出生数減による年長児との接触機会の減少などだ。
・・・
 COVID-19流行下では、感染対策の徹底により曝露機会を失った感染症が軒並み減少傾向にあるが、突発性発疹の感染者数は減少せず、2020年上半期で乳児の感染割合が高かったという結果を踏まえ、相澤氏は「HHV6/7の感染経路は市中ではなく家庭内にあるという従来の伝播様式の仮説を支持している」と結論した。


さて、新型コロナ禍で従来より強化された感染対策の影響で、
減った感染症と減らない感染症を観察すると、
その感染症の「感染様式」が浮かび上がってきます。

季節性インフルエンザが姿を消してしまうほどの感染対策でも、
新型コロナは消えないことを医療関係者は驚いています。

季節性インフルエンザは「接触感染+飛沫感染」、
新型コロナも当初は「接触感染+飛沫感染」とされていましたが、
これでは説明できません。
同じであれば、季節性インフルエンザ同様、感染拡大が止まるはずですから。

そこで登場したのが飛沫感染と空気感染の中間である、
「エアロゾル感染」あるいは「マイクロ飛沫感染」です。

先日、日本政府もようやく公式に認めました。

▢ 新型コロナ 「エアロゾルでも感染」 感染研、見解を変更
 新型コロナウイルスの感染経路について、国立感染症研究所(感染研)は28日、ウイルスを含んだ空気中に漂う微粒子(エアロゾル)を吸い込んでも感染するとの見解をホームページで公表した。感染研はこれまでエアロゾル感染に否定的で、飛沫(ひまつ)感染と接触感染だけを挙げた報告書を発表していたため、国内の科学者が「世界の知見とは異なる」と説明を求めて公開質問状を出していた。

実はこの「見解を変更」には伏線がありました。

未だ「空気感染を認めない」日本のコロナ政策の謎有識者8人が連名で国立感染症研究所に質問
鈴木 理香子 : フリーライター 著者フォロー
国立感染症研究所が1月に公表した「新型コロナウイルスの感染経路」の記述に間違いがあるのではないか――。2月1日、感染症や物理学などの有識者8人が連名で国立感染症研究所の脇田隆字所長に公開質問状を送った。

「新型コロナは空気感染」国はなぜ認めないのか空気感染は「迷信的な考え」と軽視される理由
西村 秀一 : 国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルス疾患研究室長 
2022/03/21:東洋経済オンライン)より一部抜粋;
・・・
ダイヤモンド・プリンセス号での感染の大流行が患者の移送作戦で終わろうとしていたころ、私は臨時検疫官として船に乗り込む機会を得ました。
事前の情報から船内の空調システムの概略を知ったのですが、これは「空気感染」が起きるのに最適なつくりだと驚きました。なぜなら、各部屋の空気を1カ所に集め、約3割分外気を混ぜただけで温度調節をし、それを一斉に各部屋に戻すものだったからです。
◆ 700人以上が感染した「仕組み」とは?
なるほど効率的な省エネ空調なのでしょうが、客室の1つに感染患者がいたために、これを介して日を追うごとに感染が拡大し、最終的に700人以上が感染してしまいました。
これだけ短期間に多くの部屋に分散していた大勢の人が感染したということは、特定の汚染か所に触れての接触感染や短時間で落下するような大きな飛沫での感染(飛沫感染)では説明できません。空気感染があった紛れもない証なのです。
何より重要なことは、新型コロナウイルスが発見されてから早い段階(2020年2月)で、すでに接触感染ではなく空気感染だということが、さまざまなところから報告されていた事実です。
それなのに、公に発表された感染経路は「感染者がくしゃみや咳をし、その飛沫あるいはそれを手で押さえたあと、その手で周りの物に触れてウイルスがつき、別の人がその物に触ってウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触って粘膜から感染する」というものでした。
・・・

これはひとつの進歩ですね。
このような科学的事実を踏まえて、感染対策を進化させていくべきだと思います。

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