BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界バンタム級タイトルマッチ

2010-10-04 23:14:11 | Boxing
王者 アンセルモ・モレノ VS 挑戦者 ネオマール・セルメニョ

モレノ 判定勝利

考察 ~モレノ~

座ってではなく、一部立って視聴したが、
こいつの脊椎はどうなっているのか。
人間には生理的彎曲というものがある。
肘にも膝にもあるものだが、この選手で注目すべきは脊椎。
普通は背中の部分は猫背になり、腰部にかけて内反し、
臀部にかけて少し外反する。
それを無きが如く前傾し、パンチもフットワークも駆使するとは…
レントゲンを撮ってみたいよ。
クラウチングやアストライドなどのスタンスはその選手のスタイル以上に
その選手の肉体的な特徴にマッチするからこそだと信じるが、
サウスポーの端くれとして自分でやってみると前傾すり足両肘120度は無理だ。
ボディへの対処で後手に回ったが、ダッキングとスウェーだけで右ストを
さばき続けるのだから、ボディが一番の弱点というわけではないのか?
攻撃において右フックをいつもより多用したが、あれだけ脇を締めた状態から
よくクロス・ミドル・ロングのレンジでフックを使い分けられるな。
同じ人間ではあっても同じ生き物ではないように感じられる部分が見るほどに出てくる。

以前にこの選手のことを肉体的素養が先行してこのボクシングスタイルに
たどり着いた可能性が高いと書いたが、実はスタイルが肉体に先行したのか?
カバジェロを見るとやはり前者かとも思うが、この選手はなかなか惑わせてくれる。
パナマのボクサー育成事情ってのは実際どうなっているのだろうか。


考察 ~セルメニョ~

軽めで弛めのパンチを身上とする選手が変則ボクサーに対するに
とことんオーソドックスを貫くか、相手の度肝を抜くかは状況による。
再戦なればなおさらで、自身と相手のスタイル、前戦のスコア、開催地、
コンディション、試合前の神経戦、試合中のadjustabilityの全てをreviewせねばならない。
前半はラウンドごとに優劣がつき、中盤はラウンド内で流れが二転三転し、
終盤はもうなにがなんやららららのら。
じっくりと座って観ないとだめなのかね。
この試合ではいつものぬるい連打が影をひそめ、
踏み込みの大きい筋緊張をともなう硬質な連打を放ったが、
当たるも八卦当たらぬも八卦の感で、互いに相手にしか見えないフェイントで
間合いとタイミングを削り合ったからこその噛み合わない噛み合わなさに終始したに違いない。
王者もそうだが、この挑戦者のボクシングも観るほどによく分からん。
見慣れた日本人選手との試合があれば、あれこれ勝手なことをもっと書けそうだが。
終盤に腰を落ちつけてパンチを出すほどに軌道も引きもバラバラになっていくところに
この選手の非凡さを感じたが、非凡だから勝てるとは限らないのだ。
逆を言えば第一印象何だこりゃ?というパンチの方が勝てたりするわけだ。

ミハレスを連続で退けた時には正統派の曲者という印象だった。
この試合では回を追うごとにガチャガチャのボクサーになった。
どちらが本物のセルメニョかと言えばやはり前者だろう。
To cut the long story short, 相手の曲者度が一枚上だったということ。

WBA・WBO世界Lフライ級王座統一戦

2010-10-04 21:32:31 | Boxing
WBO王者 イバン・カルデロン VS WBA王者 ジョバンニ・セグラ

セグラ 8ラウンドKO勝利

考察 ~カルデロン~

体格差のあるファイター型との過去の対戦といえばカサレス戦があるが、
その時は相手はスタンダードなコンビネーションで詰めてきた。
対照的にこの日の相手は単発強打と強引なボディへの連打で攻めてきた。
キャリアとボクシングIQで読み切れそうなものだが、
リング上でしか分からない相手の迫力に初回から飲まれたようだ。
相手があれではサウスポー云々は関係ないはずだ。
クリンチ、カウンターの右フック、体重を乗せた左ストレート、
どれも自身のイズムとリズムに反するものだろう。
チョコン、パシャパシャパシャというのがノッている時のリズムだからだ。
これまでの相手は自身のリズムに苛立ちを募らせてくれたが、
顔面ブロックをプランに織り込んで来られては分が悪い。
さらにこれまでの相手は一発で眠らせてやるぜとばかりに顔面狙いで来てくれたが、
てめーが飲み込んだ俺の嫁の結婚指輪吐き出せやと言わんばかりにボディに来られては……

カウントアウト後にすっくと立ち上がったが、
肉体的ダメージ半分に心理的ダメージ半分だったか。
ラウンドを重ねるごとに体が小さく見えてきたが、
実際に腰が落ちていたし、弱気の虫が顔を出していた。
返り咲きは苦しいだろう。
展開としてはマルガリートに敗れたコットに似ている部分もあるが、
余力や将来のビジョンはコットほどには残されていまい。


考察 ~セグラ~

相手のカウンターを自分から相撃ちに持っていくその様は
ボクサーではなくストリートファイター(それも素人の)。
先日の河野は顔面を隙だらけにして前進を繰り返し、敗れたが、
セグラとの違いは迫力に尽きる。
迫力とは精神力や鬼気迫る形相から生まれるのではなく、
純粋な攻撃力から生まれるもの。
そのまま昇龍拳でも打つのかと思わせるほどの右アッパーは
視聴者にとって滑稽であるがゆえに対戦相手の心胆寒からしめるものがある。
が、それは威嚇であり、真のプランはボディへの連打攻撃。
メキシカンの連打力は、たとえば日本人ボクサーがバッグ相手に唸りながら
手を出し続けるような根性によって支えられるものではなく、
当てた反動を利した返しを打ち、それを当てた反動でまた打つ。
空振りしてもリズムがあるので返しがついてくるわけで、
練習ではなく実戦もしくは実践で身に着けたものだ。
日本式の練習でこれを習得しようとするならば
メキシコ並みの歴史と裾野の広さが必要になるか、
あるいは指導者層にオカルティックな『脳内革命』が必要になる。
WBOタイトルはひとまず措いて、この選手を日本に呼べるか?
あるいは日本人がメキシコに乗り込んで勝算はあるか?
井岡甥の出番ではないということだけは断言できる。