BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ

2010-10-02 23:17:24 | Boxing
王者 プーンサワット・クラティンデーンジム VS 挑戦者 李冽理

李 ユナニマスディシジョンで王座奪取

考察 ~李~

徳山のシルエットが随所に重なって見えたファンは多いと思う。
自分もその一人だからだ。
王者のサンデーパンチ(左フック)を警戒した時計周りのサークリングからのジャブは
スクエアスタンスの左肩から真っ直ぐに伸び、自身の距離を構築した。
相手はガードを高く掲げるので、視界の両端が必然的に狭くなる。
豆タンク型の王者に細野は真正面から打っていき、逆に相手の高速ジャブを被弾した。
互いに正対した状態のジャブの差し合いは10cm以上のリーチ差が無ければ互いに届くのだ。
それを一切拒否し、視界の端から真っ直ぐに入るジャブと視界の外から回り込んでくるフックが
王者の焦り、苛立ち、迷いなどの負の情動を喚起したといえる。
まさに徳山の間合いを彷彿させた。
その徳山はペニャロサ相手に窮屈そうな左フックも使っていたが、
相手に左右の違いがあるとはいえ、これほど左フックや右アッパーを功打するとは思わなかった。
一つ下の階級、初めての長丁場、陣営内部の不協和音などマイナス要素ばかりを考えたが、
まさに徳山の世界初挑戦に優るとも劣らぬ鮮やかなボクシング。
コーナーに詰められても、目のフェイントと右の的確さ、ダッキングでたやすく抜け出し、
右ストの軽打から左フックの引っかけでピボットするところなど、
本人も徳山の映像を参考にして研究と練習を重ねたんだろうな。

試合前のロングインタビュー映像と試合後の放送席とのやりとりから、
ボクシングIQだけでなく、元々の頭の良さとプライドも感じさせる。
やたらと感謝の念とキモチだけを強調するスポーツ選手が多い中、
新王者・李の落ち着きと賢明さは特筆に値する。
冬場の減量も問題なさそうだ。

浜田剛史は100点満点をつけるが管理人採点では99点。
敵地タイで奪取していれば120点だった、というのは冗談。
オプションは一つ自腹で買い取って無難な相手を選ぶか、
細野あるいは下田の挑戦のために大橋や帝拳が買い取りに出るか。
敵地での再戦は必須だろう。
これをクリアすれば文句無しに徳山の後継者となることができる。
それにしてもこの内容と結果に底浅い我が洞察を恥じるほかない。
2010年の Upset of the Year 決定!!

考察 ~プーンサワット~

数えてはいないが、手数ではおそらく2倍ぐらい出したのでは?
そして前進度(そんなもんはないが)では4倍以上に達したのでは?
評価上々の盤石王者にして油断があったのだろうか。
コットを思わせる高速で真っ直ぐのジャブが機能せず、
ラウンドを重ねるごとに連打から一発強打にシフトせざるを得なかった。
だがジャブは長く、ストレートが速くとも、
クラウチングで構える王者は飛び込むワン・ツーを持っておらず、
攻勢を強めた後半は確かにジャッジにはアピールしたが、
KOの予感は遠ざかるばかりではなかったか。
打ち合いもカウンターにも全くひるむところを見せなかった王者にして、
この夜の挑戦者のカウンターにはひどく狼狽していたからだ。
体格とリーチから畢竟インファイトするしかなくなるが、
その距離を潰すための布石たる自慢のジャブにクロスカウンターを合わされた。
おそらく長いキャリアの中でも初めての経験で、
自身にもセコンドにも最後までプランを修正することができなかった。
elusiveなだけの相手なら中盤以降に捕まえる力はあるが、
近距離で打ち合いに応じるアウトボクサーもおそらく初体験だろう。
ステップ幅が大きい選手との対戦経験も豊富に違いないが、
全ラウンド摺り足でカウンターとフェイントを間断なく予感させる相手もおそらく初めて。
日本のリングや日本人挑戦者(ではないが…)には好感触しかなかっただろうが、
相手はコリアンファイターの”スピリット”を備えた日本製アウトボクサーだった。
しかし、これだけで評価を地に落とすことはなく、
当然リベンジの舞台がプロモーターからは用意されるはず。
長谷川に敗れた時のウィラポン的な存在になることが予想される。

WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ予想

2010-10-02 16:56:42 | Boxing
王者 プーンサワット・クラティンデーンジム VS 挑戦者 李冽理

予想:プーンサワット判定勝利

李が足を使ってサークリングする展開に終始しながらも、
王者の分厚いブロックの前に有効打がヒットせず、
むしろ終盤にはダメージと疲労の蓄積でTKO寸前に追い詰められると見る。
榎を下した実績は見事の一語に尽きるが、
その榎はクリス・ジョンに完敗していることから、
日本の強豪とアジア発の世界のトップではその差が大きいものと思われる。
徳山が初回から行くようにアドバイスしているらしいが、
その言は正しいと思っていい。
現に徳山自身も初回から飛ばし、終盤に自分の展開を完成させていた。
(アレはスタミナ切れではなく徳山ワールド)
徳山が仁柱への挑戦で見せたような鮮烈なパフォーマンスを挑戦者に期待できるだろうか?
関会長の死、新井田、木村の陥落・引退から始まり、
最近の所属選手の試合のレフェリングへの不穏当な抗議までを見ると、
ジム全体がギクシャクしているように思う。
ボクシングは個人競技ではあるが、マラソンやF1並みにチームワークが物を言う。
挑戦者がキャリアのこの時点で世界挑戦するのは悪くないが、
セコンドが的確な指示を出せずに後手に回ってしまう光景が目に浮かぶ。


Sウェルター級12回戦

2010-10-02 11:23:37 | Boxing
ポール・ウィリアムス VS カーミット・シントロン

ウィリアムス 4ラウンド負傷判定勝ち

考察 ~ウィリアムス~

リーチを距離の支配に使わないことが特徴的ではあるが、
タイミングに割り込んでくる、あるいは打ち終わりにカウンターを狙う相手には
分の悪い瞬間を作ってしまう。
そこを手数で相殺する、あるいは上回るの持ち味ではあるが、
どこまでそのスタイルを貫けるのだろうか。
「どこ」とは階級であり対戦相手のqualityでもある。
セルヒオ・マルチネス戦ではカウンターに苦しめられ、
打ち終わりも狙われた。
この試合では打ち終わりと打ち始めを徹底して狙われた。
メイウェザーにはひょっとしたら明確に敗れるかもしれない。

試合をすればするほど精神的には円熟味を増していくのだろうが、
スタイル自体は体格面と同じくすでに完成の域に達しており、
対戦相手の研究により少しずつ苦しくなってくるような気がする。


考察 ~シントロン~

まあ、毎度物議を醸してくれる選手である。
マルガリートへのKO負けとアングロへの判定勝ちで
ようやく自分に合ったスタイルを見つけ出したのかな。
マルチネスとの分の悪いドローも精神的に良い方向に作用している。

一発の威力が鳴りをひそめたわけではないが、
明らかにパワーよりもスピード、スキルに重点を置くようになり、
総合力は各段に上がっていると思われる。
相手が距離を重視したジャブを打たないことを研究済みで、
打ち始めはショルダーブロック、バックステップ、あるいはジャブ的な左フックで迎撃し、
打ち終わりには自慢の右を的確に合わせてきた。
リングと平行なパンチが最も威力を有するかと思ったが、
上への軌道でもパンチはキレるし、ダメージも与えられるんだ。
それにしても4ラウンド含めて採点せよと命じられたジャッジの心境やいかに。
シントロン陣営とすれば皮算用が立っていたのかも知れないが、
前戦の結果を真摯に受け止めていればこんな戦術(ダイブ)は採用しなかったはず。
あるいは本当にアクシデントだったのだろうか。

ミゲール・コットと同じく、階級を上げてもパンチは維持しつつ、
よりテクニカルに、よりスキルフルになっていくタイプなんだね。
しかし、実のある対戦相手が見つからない。
アングロとの対戦も相手の事情で実現しそうにないしね。

WBA暫定世界フライ級タイトルマッチ

2010-10-02 10:25:17 | Boxing
王者 ルイス・コンセプシオン VS 挑戦者 エリック・オルティス

コンセプシオン 4ラウンドTKO勝利

考察 ~コンセプシオン~

対日本人をいくつか想定する。

正王者 亀田大毅
大毅がフライ級まで落とせるのかどうかは置いておいて
このマッチアップは右ストレートと左フックの打ち合いになるだろう。
体格では大毅にアドバンテージがあるので大毅やや有利とも思うが、
コンセプシオンの数少ない防御技術である右へのダックとスウェーに
ぴったりハマる可能性が高いのも事実。 
うーむ、読めん。

元王者 坂田健史

すでに消耗しきっていると考えるが
あえてそこは無視して考慮する。
ずばり判定勝ち。
打ち合い上等の試合で一発には劣るが
スタミナとキャリアで優るからね。
まあ、実際にやればキャリアにトドメ刺されるだろうが。

亀田興毅

コンセプシオンのスピードは一歩の踏み込みに特化したものなので
下がるスピードがあり、タイミングを読むのに長けた興毅ならば
プラン次第で難なく判定勝ちが狙える。
だがこれには条件が一つ。
右ジャブを欠かさないことだ。
相手は絶対にそこにかぶせようとしてくる。
そこを読み切ってカウンター、もしくはバックステップ。
フェイントも威圧感もない興毅のボクシングでは
エル・ニカは止められない。
旺盛なジャブを撃てるようになれば、コンセプシオンなにするものぞ。
まあ、それができればポンサクレックに完敗(と表現したい)しなかったはずだが・・・


考察 ~オルティス~

アランブレットと同じ路線かいな。
中身はさらに悲惨だったけれども。
ジャブとフェイントとバックステップしかすることなかったね。
当たるパンチがクリンチの時の左フックだけでは・・・

WBO世界クルーザー級タイトルマッチ

2010-10-02 10:20:38 | Boxing
王者 マルコ・フック VS 挑戦者 ブライアン・ミント

フック 9ラウンド終了TKO勝利

考察 ~フック~

リーチがさほどではないゆえに右を強く打つ際にバランスを崩しにくい。
下半身の強さ、重さもさることながら、バランスの良さにはリーチの無さも寄与しているはず。
ただし、であるがゆえに攻撃はストレート系で構成するか、単発アッパーに頼り切る傾向が生まれる。
カニンガム戦の負けはまだ見ることができていないが、
どういう展開だったのだろうか?
そしてそこから何かが変わったのだろうか?
それとも、その頃のスタイルをさらに強化して今にたどり着いたのだろか?
現時点でも将来性が大いに見込まれる選手ではあるが、対サウスポーには?
黒人スピードスターには?
サークリングとジャブを多用するアウトボクサーには?
トップアマさながらのsystematicなボクサーには?
クエスチョンが次から次へと湧いてくる。
能力自体を疑問視するわけではないが、
証明すべき課題があまりにもたくさんあるように思う。
ヘビー級進出も将来的な構想にはあると思うが
この選手はクルーザーがいっぱいいっぱいに感じられる。
アブラハムの敗戦を知っただけになおそう思わされる。

考察 ~ミント~

体形、顔から予想されるスタイルを見事に裏切るボクサーで、
どうしてなかなかシャープなスタイルの持ち主だ。
明らかな瑕疵はジャブを打てないこと。
ジャブを前進の合図として用いており、
距離の測定、牽制、リズム作りとなっておらず、
人間の正直さなのかヘビーの三線級の特徴なのか。
これでは懐に入れたからといって自身に有利な態勢にはならない。
まあ、負け役ですな。