BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC世界ウェルター級タイトルマッチ アンドレ・ベルトVSルイス・コラーゾ

2009-02-18 22:44:42 | Boxing
ベルト 12ラウンド判定勝利

ベルトの判定勝利という結果にケチをつけることはできないが、
その試合内容にはケチをつけざるをえない。
初回に被弾した左ストレートはサウスポーにとっての定石のパンチで
これをあっさりと喰ってしまったということはサウスポー対策が不充分だったか
もともとサウスポーが苦手なのかのどちらか、あるいは両方だ。
スピードとパワーはウェルターの世界戦線でもトップレベルだが、
精神力とスタミナ、戦術面に大きな課題を残した。
精神的な弱さはピンチの場面で顔を出す。
もろに被弾し、遮二無二クリンチに行くのは構わないのだが、
ホールディングの減点直後の軽いパニックには呆れた。
元々持っているセンスと運の良さ(メイウェザー引退など)と
プロモーションの妙でタイトル獲得にこぎつけた選手だが、
順調にキャリアを作りすぎたツケが出た。
キャリアとは目指すべきスタイルの構築過程であることは以前にも書いたが、
これは他のスポーツにおいても同様だが、『経験』とも翻訳される。
経験を積むとは技術や身体能力、メンタルが向上することではなく、
経験を積むことにより技の使いどころを理解するようになり、
トラブルに陥った際にも己の精神状態を客観的に把握できるようになる。
この日のベルトはつまり、経験不足を露呈したということ。

このブログでもベルトは高く評価してこなかったが、
期せずしてそれが証明されてしまった形になった。
今後の練習とマッチメークは極めて重要となる。
大きく飛躍するかあっさり潰されるかのどちらかだからだ。

コラーゾにしても世界奪取を再度期待される内容とまではいかなかったと思う。
この夜のWOWOWのラインナップの中では唯一敗れたサウスポーになったが、
それでもサウスポーがオーソドックスに対して持つa prioriな優位性は示した。
ベルトは自分の間合いで気分よくコンビネーションを打ちたい気持ちが強いので、
敢えてタイミングで勝負したのがハマった。
フォーブスはelusivenessでベルトをある程度幻惑したが、
コラーゾは離れたときにはタイミングとフェイント、くっついたときにはボディへ連打、
効かされたときにはノーガードと、こちらはキャリアを駆使した戦い。
相手のスピードとパワーに圧された感はあるが、
フットワークとフェイント、インサイドワークと上体の柔軟性を活かし
決定打はもらわなかった。
左グローブの置き所を知っており、また初回の左ストは最終ラウンドまで
相手の脳裏にその残像を残し、相手の弱気に助けられた面もあるが、
受けたダメージはそのラウンド内で着実に回復させていた。
ハットン戦、ベルト戦を経てウェルター級世界戦線の真のgatekeeperになったと言える。