BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBO世界Sウェルター級暫定王座決定戦 ポール・ウィリアムスVSバーノ・フィリップス

2009-02-12 12:07:44 | Boxing
ウィリアムス 8ラウンド終了TKO勝利

ウィリアムスにとって確かな成長を披露できた試合と言えよう。
リードブローには左右ともに採用し、そのジャブは距離の測定や牽制の意味合いよりも
連打の起点としての色合いが強かったが、その並外れたリーチと長身により、
相手のカウンターをナチュラルに封じ込めることにもつながっていた。
思い切りよくコンビネーションを放て、なおかつそのパンチが的確。
雑誌のインタビューで「練習のとき以外はボクシングのことは一切考えない」と
語っており、個人的にはもっとボクシングに打ち込んで欲しいと期待したが、
この男にはそういう姿勢が性に合っているのかもしれない。
初回のバッティングでの流血に、本来ならば苛立ち、落胆、焦り、迷いなどの
様々な負の感情をあらわにしてもおかしくなかったが、完全なる無表情だった。
ラウンドが進むにつれ、インターバルで微笑を見せたが、
これは余裕の表れとリラックス法の2つだと推測する。
自身のメンタルをコントロールする術を身に着けたのだろう。
冒頭で指摘した成長とはこれを指す。
C・ドーソンは鍛え上げたフィジカルで連打を繰り出すが、
P・ウィリアムスの連打はナチュラルに備えた体幹のバランスに支えられているようだ。
あれだけのリーチでコンパクトに左右を振るうには下半身の安定が不可欠。
また接近戦を好むがゆえにフィリップスのフックを危ないタイミングでもらう場面もあったが、
常に両グローブを頬に置く意識も忘れず、事実、ほとんど全てシャットアウトした。
フィジカル、メンタル、スキルにおいて現在のSウェルターでも突出している。
ちなみに年来のボクシングファンである父曰く、
「こいつはハーンズより強くなるかもしれんな」

フィリップスは決死もしくは必死と名状される覚悟で試合に臨んだはよかったが、
策が完全に空回りした印象。
パブリックをひねったホプキンス、あるいはドーソンを追い詰めたG・ジョンソンなど、
長身でリーチのある相手を攻略するには出入りとパンチのprecision=正確性をもって戦うべきで、
これはキンタナが採った戦術でもあったが、この試合では機能しなかった(させてもらえなかった)。
カウンター狙いでも良かったと思うが、その際にはフックではなくストレート。
さらに相手のジャブをブロックした上で、そこから放たれる二の矢三の矢にドンピシャで
合わせれば勝機も手繰り寄せることが出来た・・・かもしれない。
コットがマルガリートに敗れた際に語っていたが、
「リングの中と外では大違い。観ることと実行することは全くの別物だ」と語ったが、
まさにその通り。
岡目八目はトレーナーには当てはまってもファンには当てはまらないことが多い。
「何故こうしない?」とあれこれ打開策を探るのも一興だが、
「何がそれをさせないのか?」という視点で観るのもボクシングの醍醐味だ。