BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

世界Sバンタム級王座統一戦 WBA セレスティーノ・カバジェロVS IBF スティーブ・モリター

2009-02-02 23:37:24 | Boxing
カバジェロ 4ラウンドTKO勝利

試合のたびに自陣営やレフェリーや対戦相手に対してキレていたように思うが、
この試合ではその悪癖が顔を出さなかったカバジェロ。
普通にやれば強いということは証明できたわけだが、
これによりSバンタム級の統一機運が盛り上がったことの意義の方が大きい。
体型の利を活かしてリズミカルなボクシングを展開したが、
そのパンチは少々、というか相当にユニーク。
なでるようにも見えるし、手打ちのようにも見えるが、
ナックルは返っており、膝と腰のリズムも拳に乗っている。
パナマ人というとユニークなボクシングを展開するボクサーが多いが、
この男はその筆頭だ。
プエルトリコもそうだが、人口わずか数百万のラテンの小国から、
ユニークなタレントが陸続と生まれてくる背景にあるのは何なのだろう。
それは日本も持ちうるものなのか、それとも遺伝的・先天的な素養なのだろうか。

Canadian Kidとはたいそうなニックネームだが、
ビュテの論議を呼ぶアンドラーデ戦、アルシンのKO負けもあり、
カナダのボクシング人気を支える一角のモリターが
ここで破れることは許されなかったが、実力の違いがありすぎた。
相手はタイでも勝てるボクサーなのだ。
28戦全勝は素晴らしいが、11KOはやや拍子抜け。
もちろん、このようなstatisticsがその選手の能力を正しく表しているとは限らない。
Statistics don't always do fighters justice.というわけだが、
モリターには当てはまってしまった。
ここで指摘しているのはパンチの威力や攻撃のバリエーションのことではなく、
その数字が対戦相手に与えるプレッシャーだ。
『先ず勝って後に戦う』と孫子に言うが、ボクシングも同じこと。
「相手が自分よりも強いと思った瞬間に本当の勝負が始まる」と
かつてのイーグル京和は語ったが、モリターにはそのメンタルタフネスが欠如していた。

WBC世界Lフライ級タイトル エドガル・ソーサVSファニト・ルビリャル

2009-02-02 23:28:30 | Boxing
ソーサ 7ラウンドTKO勝利

練習でやったことを試合で出す、と浜さんあたりはよく言うが、
これはボクシングに限らず、どんなスポーツにも当てはまる(はず)。
最高の練習はというと、これもあらゆるスポーツに当てはまると思うが、
それは実戦、試合の場だろう。
叩き上げのメキシカンは十代半ばにはプロデビューし、
着実にキャリアを積み上げていく。
キャリアとは試合数に比例するものでもなく、
かと言って強い相手との1試合は凡庸な相手との5試合に相当する、
という類のものでもない。
畢竟、キャリアとは自らの目指すスタイルの確立過程であり、
若年のうちに喫するいくつかの敗北は、それ自体で教材なのだ。
エドガル・ソーサのキャリア(≠ファイトスタイル)は、
ある意味で日本のジムに所属しているボクサーが目指すべき姿でもある。

国重戦ではウェートオーバーが一部で報じられたが、転級も時間の問題か。
日本でもメキシコでもいいからキャッチウェートで亀田興毅と戦ってくれないかな。
興味深い試合になりそうだ。

敗れたルビリャル、どうにもパッキャオのシルエットがちらつく選手だ。
真っ直ぐに突き出す左とスイングする右、上体を小刻みに左右に振るスタイルは
まさにパッキャオのコピーで、敵地メキシコで名のあるメキシコ人王者を喰おう
という意気込みは「買い」だが、世界を狙うことは出来ても獲ることは難しい。
繁雑、じゃない頻繁なバッティングは故意と偶然の両方があったが、
相手のカットで引き寄せた流れを勝利にまで結び付けられるほどの力量はなかった。
相手も自分も消耗、あるいは被弾によるダメージを負ったしまった際には、
当初のゲームプランを修正するか、またはそれに固執するかの決断が必要で、
どちらが正しい決断であるかは問題ではない。
この試合のルビリャルはポイントアウトからKOへと狙いがシフトしたかに見えたが、
打ち合いにおいての攻撃と防御の的確さ、一瞬のパンチの選択において王者の後塵を拝した。
結局はソーサに対して実力で劣っていたということ。