goo blog サービス終了のお知らせ 

BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

Sバンタム級10回戦

2011-10-16 19:20:41 | Boxing
フェルナンド・モンティエル VS アルバロ・ペレス

モンティエル 3ラウンドKO勝利

考察 ~モンティエル~

長谷川戦を思わせる一瞬の左の交錯。
科学者のように戦うというコメントをその前に発していたが、
こういう試合を見せられるとリングIQの高さに改めて嘆息させられる。
メキシカン全般に言えることだが、敗北後のメンタル面のダメージが少ないことを
我々は往々にして「潔くない」と断じてしまいがちだ。
しかし、日墨の立ち直りを比較するに、
単なる民族的な精神構造の違い云々以前に
日本人があまりにも自分を追い詰めすぎているのではなかろうかとも思える。


考察 ~ペレス~

ニカラグア人というのはロマゴンやマヨルガのような柔軟さと硬質さが両居する民族なのだろうか。
両足のスタンスは広く、パンチを打ちながらでも左右に動け、
動きながらのパンチにも固さが感じられる。
長谷川戦では呼び込まれるままに打ちに行って衝突したが、
モンティエルには攻防のつなぎ目を瞬間的に狙われた。
ボクシングに三段論法は通用しないが、
A・ペレスを通じて長谷川とモンティエルの現時点の実際の力関係を見た気がする。

WBA世界Lフライ級タイトルマッチ

2011-10-10 21:44:20 | Boxing
王者 ローマン・ゴンサレス VS 挑戦者 オマール・ソト

ゴンサレス 2ラウンドKO勝利

考察 ~ゴンサレス~

メイウェザーやパッキャオとは異なる意味での宇宙人っぷりを感じさせる。
ラッシュ時に見せる異様なまでのヒット率の高さは何なのだ?
肘の屈曲自由自在、肩の回転も自由自在。
そういう選手ならラテン系には多かろうが、
動く的を捉える力というか、瞬間的に相手の顔面がどこにあるのかを察知しているのか。
ハヤブサさながらの動体視力の為せる技なのだろうか。

階級に比して大きく見えるのは、それだけ均整のとれた肉体をしているからだ。
Sフライ級ぐらいまでは違和感なく上がりそうな予感がする。


考察 ~ソト~

E・ソーサのワン・ツーで吹っ飛ばされた印象しかなく、
日本の観客、視聴者の大部分も同じだと推測する。
キャリアの無い選手ではないが、
この王者と相対したとき、打つスペースが見当たらず、
また打たれるに際して防御できなかった。
この選手の瞬間的な反射や動体視力を標準的なボクサーと仮定すると、
王者のそれらは野生の動物的なものがある。
蛇に見込まれた蛙のような状態だったとしか言いようがない。

ウェルター級10回戦

2011-10-03 22:54:35 | Boxing
亀海喜寛 VS ヘクター・ムニョス

亀海 6ラウンドTKO勝ち

考察 ~亀海~

対戦相手の突然の変更にはがっかりした。
亀海の罪ではないのだが……
ディフェンスに一家言あるそのスタイルは確かにハイレベルだが、
それは結果よりもスタイルのバリエーションそのものにあると言うべきか。
L字で敢えて相手の攻め手を受けた上で封じ込めようという意図は
日本東洋レベルでは、それこそ赤子の手をねじるがごとく(は大袈裟か)
打たせながら打たれずに勝ってきたが、
カウンターというよりも打ち終わりを狙うオフェンスは
ともすれば後手を引いているようにも見える。
減量苦からの階級アップは歓迎すべき決断だが、
ウェルター級での世界戦線に食い込むためには
力の差を見せたいみたいな妙なこだわりを捨てられれば
成長が加速しそうだ。
しかし、こだわりの無いボクサーというのも魅力に欠けてしまう。


考察 ~ムニョス~

late sub ということで準備不足ありあり。
多分もう観ることはないのだろうな。

WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ

2011-10-02 15:46:28 | Boxing
王者 西岡利晃 VS 挑戦者 ラファエル・マルケス

西岡 判定勝利

考察 ~西岡~

初回は両者も観客もfeeling out time。
インタビューでも語っていたようにジャブの伸びには面食らった。
ただし裏返せば、王者の左に最大限の敬意を払っていることの証明。
なればclean effective punchを競うのみ。
脚を使うという予想は反時計回りの意だったが、
時計回りを基軸にスポットごとに左フックと左ストレートのバリエーションを
当てられたことが大きかった。
また防御については冴えを見せたというよりも
予想外の相手の攻撃オプションが自身の特性にある程度ハマったという
嬉しい誤算(?)というかツキもあった。
ジャブに対してはフットワーク主体で距離を作り、
ストレート系のパンチに対してはスリップ、パリー、
左の打ち込み後の相手の返しの左フックはダッキングで尽く空を切らせた。
そして相手の消耗に合わせて左が当たり、それが小さな右の返しにつながる好循環。
最高の誕生日プレゼントを貰った気分だ。

今後の予定としてアルセ、ドネア大歓迎。
R・ラモスとの統一戦で下田のリベンジ?
またまたセニョール本田、ご冗談を。
ところで次戦で引退ってマジですか?


考察 ~マルケス~

豪快に倒すか豪快に散るかの二択かと思い込んでいたが、
陣営の選んだ戦略は、早い段階で微差を奪って守り抜くこと。
そしてリーチ差と柔軟性を活かした左ジャブによって最初の3ラウンドは
ポイント奪取に成功したものの、それによりスキル、スタミナを争う展開となった。
結果として取れたラウンドは1、2、5、6、12(管理人採点)となった。
現地の公式採点は fair and firm なものと評価したい。

ジャブによる牽制に主眼を置いたプランは正直予想外だったが、
決定的な一発だけはもらうまいというdeterminationは本物だった。
ジョニゴンを吹っ飛ばした左の一撃の秘訣が右足の2段階の踏み込みにあることを
事前に研究済みで、足踏みのいくつかは故意だろう。
互いに右と左の溜め合いで、リアルタイム観戦中には心拍上がりっぱなしだったが、
見返してみるとラファエルの主導権はラウンド開始直後がほとんど。
挑戦者の目に見える形のプレッシャーは、王者の目に見えないプレッシャーに
飲み込まれた形になってしまった。
単発の威力は挑戦者の方があるかなと感じていたが、実際は互角か、やや落ちるか。
全盛期なら……という声もあちらでは聞こえてくるが、
それこそ Styles make fights. で冒頭述べたような、
倒すか倒されるかのエキサイティングな試合になっただろう。
ただこの日は力がどうこうではなく、技術、駆け引き、メンタルで敗れた。

WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ

2011-09-30 22:46:08 | Boxing
王者 西岡利晃 VS 挑戦者 ラファエル・マルケス

予想:西岡の判定勝利

当地のメディアもブックメーカーも西岡勝利予想になっている。
当然日本のファンも同じことと思われる。

マルケスについて最も注意すべきは左アッパーだと考える。
長い距離、近い距離、どちらにおいてもだ。
ジョニゴン戦ではその機会が訪れる前に倒してしまったが、
メキシカンの左アッパーにどう対処するか。
左フックについては右のガードの上げ下げと細かいフェイントで
対応ができていたが、下からの攻撃に西岡がどう応えるのかが気になる。
ちなみに右アッパーは来ないと考えられる。
西岡の左ストレートの方が速いということは両者とも解っている。
もし右アッパーを打ち込まれるとすれば、
(考えたくないが)その直前に勝負あったという瞬間があるはず。

西岡の攻撃プランの第一は脚だろう。
早い段階での打ち合いは極力避けるはず。
なぜなら最近のマルケスは明らかにshot fighterの傾向があり、
打たせないことよりも、ある程度打たせることで、
耐久力を維持しているように見えるから。
逆説的だが、ガツンと1発もらうよりも、
コツンと3発もらった方がいいという考え方。
ボクサータイプはキャリアの晩期にファイター型に変身することがあり、
マルケスはそうなりつつある。
ジョニゴン戦ではパーフェクトに決まってしまったが、
あの試合の2ラウンド的な展開が軸になると予想する。

西岡の海外試合はKO勝利というジンクスは破れるだろう。
イチローだって3割、200本に届かなかったし、
羽生善治も王座から陥落した。
しかし、SPEED KINGのwinning streakは継続すると信じている。

WBC世界Sウェルター級タイトルマッチ

2011-09-19 22:54:21 | Boxing
王者 サウル・アルバレス VS 挑戦者 アルフォンソ・ゴメス

アルバレス 6ラウンドTKO勝利

考察 ~アルバレス~

メキシカンといえばやはりアッパー、フック。
フィニッシュを演出したこのパンチは、
究極的にはディフェンスマインドから生まれる。
ミハレスの武恵一アッパーやマルガリートのfront handでのコツンアッパー連打が
どちらかというと印象的かつ王道だと思う。
それほどアッパーというのは特殊なパンチで、
どう打つかも大事だがいつ打つのか、あるいは打たないのかより重要なのだ。

以前にも指摘したが、この選手は小さくまとまる傾向にある。
もちろん、詰めの連打の中の左フックなどを見るに、
左のホームランバッターないしはテニスの両手打ちバックハンドの
腰の回転を連想させるほど、安定感たっぷりのフォームで、
威力も実際に乗っている。
またメイウェザーを意識したのかどうかは本人にしか分からないが、
ダック、スウェー、スリッピング、ロールとどれも高速で、
それでいてバランスは失わない。
柔軟性とともに体幹の強さも証明している。

ただし、マッチメイクと王座奪取の経緯がマニアの期待に応えていない。
謎の負傷ジンジルク、強気アングロ、弱気マルティロスヤン、
ちょっと落ち目のシントロンらとの対戦の話は持ち上がって来ないのだろうか。
プロ野球で喩えるなら、マー君になれるはずなのにハンカチで終わりそうな予感。
チャベスJrと激突?
ないだろうね。
最近のボクシングはスポーツというにはビジネスでありすぎる。


考察 ~ゴメス~

中間距離でストレートの差し合いをしたいのかな。
本人が目指すスタイルとしてはそれもいいのだろうが、
観る側からすれば、この選手の真価は打ちつ打たれつの根性勝負でこそ
発揮されるもののように思える。

尻餅つかされたけどコットにも似たようなダウンを食っていたな。
J・S・カラスに尻切れトンボな勝ち方をしてcontentionに踏みとどまった、
というよりもガチンコファイトクラブUSAバージョン出身だから
生き残っているのだろう。
直近のカスティージョ戦も呆気ない幕切れだった。
ガッティのキャリアに終止符を打った男というよりも、
ナバーロとかフアレスの系列として記憶されるのだろう。

Sウェルターは似つかわしくないと思う。
亀海の試金石にはカラスよりもゴメスがふさわしい。

WBC世界Sライト級王座決定戦

2011-09-19 22:25:15 | Boxing
エリック・モラレス VS パブロ・セサール・カノ

モラレス 10ラウンド終了TKO勝利

考察 ~モラレス~

昔とった杵柄という言葉が当てはまるのかどうか。
衰えと表現してしまえば話は早いが、
加齢も成長・発達のプロセスだと考えれば、
モラレスのボクシングの変化も進化と呼べるかもしれない。
(腹周りは……)

基本的な脚のスタンスはパッキャオとのtrilogyから変わらず、
むしろブレーキの性能が良くなったと言える。
たとえばパッキャオとのラバーマッチ。
一発当ててロープまで追い詰め、さらなる連打を浴びせんとしたところで、
死角から左のカウンターをもらいダウンした。
考えるより先に体が動いてしまう瞬間というのはあるもので、
それを制御できるのが良い場合もあるし、良くない場合もあるだろう。
モラレスに関して言えば、年齢的にそれが良い方向に作用している。

近年は高齢ボクサーの活躍が目覚しく、喜ぶべきところもあるが、
新星の登場がかつてほど頻繁でなくなり、その点では憂うべき事態でもある。
ここで想起すべきはジョージ・フォアマンの至言「老いは恥ではない」。
時代がこの言葉に追いついてきたということなのだろう。


考察 ~カノ~

late subということであまり期待していなかったが、
これは普通に良い選手。
亀田興毅の直近の相手をでかくして、スキルアップさせ、野望を抱かせれば、
そのままカノになりそうだ。
スピードもパワーも特段のものはないが、妙な当て勘があり、
左フックはカチディスほどではないが、
肘を上げ、あわよくば、または隙あらばの気配を漂わせている。
実戦的なダーティテクの持ち主だ。
要所で必ず一発を食うそのディフェンスは世界王者になるには足りないが、
今後世界戦線で便利屋的ポジションにつくことが予想されるスタイルで、
マニア的に覚えておいて損のなさそうな選手だと思える。

この試合と関係するが、最近ジョー小泉&浜田両氏と自分の採点が
噛み合わないことが多くなった気がする。
浜さんは明らかに頓珍漢な、というよりも好みがモロに出る採点を過去にもしてきたが、
ジョーと食い違うとなるとちょっと不安になる。
なぜならジョーと間接的にカズマレックから学んできたからだ。
この試合、序盤のラウンドはカノのものに見えたのは自分だけなのだろうか。

WBC世界世界ウェルター級タイトルマッチ

2011-09-18 14:39:32 | Boxing
王者 ビクター・オルティス VS 挑戦者 フロイド・メイウェザーJr

メイウェザー 4ラウンドKO勝利

考察 ~メイウェザー~

自信満々に判定を予想してKOされては我が目の不明を恥じるのみ。
マルケス戦、モズリー戦とKOできるところでリスクを冒さないのが
強みでもあり弱みでもあると思ったが、この結末は予想できなかった。
まさに予想を超越する試合だった。

スピード論についてはジョー小泉以上に語るところがない。
何かで読んだか聞くかしたが、メイウェザーのパンチは時速44kmとか。
YouTubeで観た徒手空拳の空手家のパンチが時速40kmだったことを考えると
驚異的なハンドスピードと言える(ボクサーはグローブ着用だから)。

それにしてもショートパンチの巧さでは王者と雲泥の差。
こちらのパンチはクリーンに当たり、向こうのパンチは無効のパンチだった。
またディフェンスについても特段述べるところもなかった。
つまり、サビは無かったということ。
管理人は過去に2度軽い交通事故に遭ったことがあり、
一度目は視界がスローモーションになるのを経験した。
ボクサーなどはインタビューで「スローに見えた」と言うのもいれば、
「写真を一枚ずつ撮っていく感じ」と表現するものもいる。
極限状態の脳の為せる業であることが科学的に証明されているが、
メイウェザーは意識的にこの状態を作り出せるのだろうか?

それにしてもラリー・マーチャントと丁々発止とやり合うのは名物になったが、
威嚇的な態度に出るのは如何なものか。
話だけに聞いていたアメリカ社会における弱者としての高齢者を見た気がしたが、
メイウェザーに言わせれば、黒人差別の方が遥かに苛烈なのだろうな。

考察 ~オルティス~

ゲームプランは何だったのだろうか?
ボディにまとめるでもなく、顔面への空振りを繰り返し、
位置取りでは相手に先に反時計回りを許し、
左ストレートを当てる前に右ストレートを当てられた。
また中間距離での睨み合いで相手の細かなフェイントに
ことごとく引っ掛かっていたようにも見えた。
浜さんの言うワン・ツーがピンチなのかチャンスなのか、
それへの興味を2ラウンド半ばで失ったマニアも多いと思う。

あの故意のヘッドバットを若気の無分別と捉える向きもあろうが、
あれは許容してはならない。
反則行為の2大原則は後ろめたさとテクニック。
後ろめたさとは行為後に反省する姿勢を見せることではなく、
そもそも反則なのか不可抗力なのか分からないように見せることを指す。
自分でそれが反則だと自覚しているから、バレにくいようにやるわけだ。
それを可能にするのがテクニック。
ホプキンスやポンサクレック、徳山などがこれを持ち、
残念ながらオルティスは持っていたなかった。

モズリー戦から考えればあのタイミングで打ってくることは
予想できていなければならない。
もちろんオルティスの過ちであり、判断の甘さではあったのだが、
後味の悪さの最大の原因はレフェリーのジョー・コルテスだ。
boxingsceneでもDonovanやRoldらの大御所記者が(ブレイクのタイミングについて)
コルテス批判をして、この試合でもレフェリングに危惧を表明していたが、
それら悪い予想が的中した形になってしまった。

スローリプレイを見て気づいたけどodd shoesだったのか。
K・ホルトがシューズを忘れてodd shoesでR・トーレスと戦ったことがあったが、
あの奇跡の激闘の再現とはならなかった。

追記

問題の結末のシーン、ひょっとしてコルテスの"Time in"の
声がなかったので、タイムキーパーがコルテスに確認したのか?
オフィシャルのpoor communicationが背景にあるのは間違いなさそうだ。

WBC世界ウェルター級タイトルマッチ予想

2011-09-17 22:43:39 | Boxing
王者 ビクター・オルティス VS 挑戦者 フロイド・メイウェザーJr

予想:メイウェザーの判定勝ち

メイウェザーから景気の良いKO宣言が飛び出しているが、
そんなリスクは冒さないだろう。
リスクを冒すことのリスクを知っているボクサーは
勝ち方へのこだわりや美学を持たないものだ。
ルイスしかりオットケしかりシドレンコしかりウィテカーしかり徳山しかり……
注目すべきはサウスポーへの対応力がどれほどあるのか、もしくは無いのか。
ジュダーの右フックに狼狽し、グラブを着いた幻のダウンをファンは覚えている。
ジュダーだからこそ当てられたパンチだと言えるし、
逆にジュダーだからこそ中盤以降に失速して敗れたのだとも言える。
オルティスの武器は右フック。
マイダナを転がし、ベルトを吹っ飛ばしたパンチ。
そしてメイウェザーのL字ガードがカバーしていない左テンプルに
ヒットする可能性のあるパンチだ。
モズリー戦では思わぬ被弾と予想以上の危機管理能力を見せつけたメイウェザーが
さらなる危機対応力を見せるのか、それ以上の危機回避能力を見せるのか。
精神的に一皮むけたオルティスの番狂わせを期待したいが、
観る側はその先にメイウェザーとパッキャオとのスーパーファイトを見ている。
メイウェザー盤石の判定勝利と予想する。

WBC世界ヘビー級タイトルマッチ

2011-09-13 05:25:17 | Boxing
王者 ビタリ・クリチコ VS 挑戦者 トマス・アダメク

クリチコ 10ラウンドTKO勝利

考察 ~クリチコ~

毎回見るたびにあまりの強さにため息が出る。
猫さながら左で痛めつけ、虎のごとき右で沈めるスタイルは完成形だが、
この日はD・ウィリアムスを痛めつけた下からの変則アッパーワン・ツーありと、
どこかワイルドさを取り戻しつつあるのかもしれない。

ビタリ復帰後のコンディションの良さについては
あらゆる評論家、解説者の語るところ。
それ以上に素晴らしいと言えるのはコンスタントな試合間隔。
なんと復帰後2年11ヶ月で8試合!
結果や結末にケチがついたことはあったが、
少なくとも試合前の段階では純粋に”世界戦”として期待できるものだった。
これはウラディミールに言えることだが、ビタリの方が内容は素晴らしい。
最近の王者連中はプロモーションの兼ね合いや権利意識、リスク管理もあるのだろうが、
6ヶ月に1試合ペースが標準的で、さらにカネで揉めたり、
対戦相手を突然変更したり、ドタキャンしたりとやりたい放題だ。
T・ブラッドリーやV・マルティロシャンなどはビタリの爪の垢を煎じて飲むべきだろう。
ヘビー級の停滞が叫ばれて久しいが、これほどコンスタントに試合をする、
言葉の正しい意味においての Fighting Champion は近年では稀有な存在で、
業界、ファン共にこの兄弟王者への評価を再考すべきだと考える。

D・ヘイがウラディミールとのリマッチもしくはビタリとの対戦があるなら
10月引退プランを6ヶ月先延ばしすると言っているが、
噂されている12月のビタリvsヘイは是非実現してほしいもの。

考察 ~アダメク~

観る側にはD・ヘイ vs W・クリチコが下敷きとしてあり、
ビタリの弟にないある種の残酷さがアダメクが持つヘイにはない勇敢さと
どう噛み合うのか、あるいは噛み合わないのかが焦点だった。
結論から言うと噛み合った。
なぜならビタリのこれまでの対戦相手とアダメクが同じ経過をたどったから。
プランとしてはジャブの打ち終わりに左フックから右ストレートが基軸。
しかし、あまりの距離(物理的かつ心理的)の遠さに空転させられ、
またジョー小泉の指摘通り、ボディワーク不足でパンチを受けてしまった。
観る者に哀愁すら感じさせるほどの打たれ強さを披露したが、
これは元々備わっている耐久力に地元の期待が上乗せされたものだろう。
そう考えないと説明しにくい。
耐久力に難のあるD・ヘイほどに動かなかったのは練習不足というよりも
過剰な防衛意識、もしくはパンチへの恐怖感が背景にあるような気がする。
試合後の各コメントを見に、それを覆い隠すほどの大声援が確かにあったようだ。
ビタリは健闘を称賛しつつもクルーザーに帰るべきとそっけないが、
ヘイ側が許せば、クリチコ兄弟への指名挑戦者決定戦を行なってほしい。
またはC・アレオラと再戦して、自身を取り戻すとか。