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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

熱回路への誘い⑤

2009-09-15 12:10:14 | 電子回路
「熱回路への誘い④」の続きです。
ラプラス変換式を解いていきましょう。

ΔT=(W/s)(Ra/sCS)/ (1/sCS+Ra) ----- ③

式を変形します。
ΔT=(W/s)(Ra)/(1+sCSRa) 
ΔT=(W/s)(1/CS)/(1/CSRa+s) 
ΔT=(W/CS) /s(1/CSRa+s) 
ΔT=(W/CS)(CSRa){1/s-1/(1/CSRa+s)} 
ΔT=(WRA){1/s-1/(1/CSRa+s)} 

逆ラプラス変換します。
ΔT(t)=WRa{1-e^-(1/CSRa)t } ----- 解

結果的にこれも1次遅れ特性になりました。

各パラメータに数値を入れます。
空気の熱抵抗:Ra=103.2(K/W)

ですが、「放射」による熱の拡散を考慮して2/3を乗じた値とします。

空気の熱抵抗:Ra=68.8(K/W)
セラミックの熱容量:Cs=3.17(J/K)
熱(I2R):W=3 とします。

もとめる式は 1/ CsRa=1/218.1 =0.00459 だから

ΔT(t)=206.4 (1-e^-0.00459t ) となります。

上図に、求めたΔTの応答波形を示します。

理論値による数値計算のみで求めたわりには、けっこういい線いっているようです。しかしながら、やはり実際との誤差はかなり大きく表れています。これを整合させるためには、恐らく、もっと多くの複雑なパラメータを考慮する必要があるのでしょう。抵抗メーカーや、ハンダコテメーカーが「温度上昇」に関しては、すべて測定値を仕様書に記載している理由がわかる気がします。複雑な計算のわりには実入りが少ない。

というわけで、今回計算で求めた値も、経験的値に基づいて強引に数値補正をします。

空気の熱抵抗:Ra=68.8(K/W) ですが
抵抗の実測温度 / 計算温度:206/344=0.6 を補正係数としてかけます。

空気の熱抵抗:Ra=68.8×0.6 =41.3(K/W) となります。
セラミックの熱容量:Cs=3.17(J/K)
熱(I^2R):W=5 とします。

1/ CsRA=1/131 =0.007638 となって

ΔT(t)=206.5 (1-e^-0.007638t ) となります。

下図に、得られたΔTの応答を示します。

これなら、まあ使えないこともないでしょう。しかし、「抵抗の上昇温度の算出」というテーマは、試みとしてはおもしろいけど、実利が薄いというのが結論ですね。完

関連記事:
熱回路への誘い④ 2009-09-14
熱回路への誘い① 2009-09-08
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コメント (5)
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