平成18年5月19日
全国医学部長病院長会議
会長 吉村 博邦
大学病院の医療事故対策に関する委員会
委員長 嘉山 孝正
声 明
平成16年12月に福島県立大野病院で腹式帝王切開術を受けた女性が死亡したことに関し、手術を担当した医師が業務上過失致死および医師法違反の容疑で逮捕起訴された件について。
はじめに、亡くなられた患者様とそのご遺族に対して謹んで哀悼の意を表します。
本件に関し、手術を担当した産婦人科医師が業務上過失致死ならびに医師法違反の罪で起訴されたことに対し、医師養成及び教育に責任を有する医育機関およびその教育病院の責任者という立場から、本会議としても重大な関心を寄せております。
本件は、癒着胎盤という、術前診断がきわめて難しく、治療の難度が最も高い事例であります。そのような症例に対する医療行為に対し、担当医師個人が業務上過失致死という刑事責任を問われるに至ったことはきわめて残念なことであり、今後、献身的に日夜医療に取り組んでいる多くの医師の善意を無にするとともに不安を助長することが強く懸念されます。
本来、医療には予見できない合併症や、予見できたとしてもそれをはるかに凌駕するような重篤な合併症が起こることは避けがたいことであります。本会議は、今回の事件の事実経過ならびに地域医療の構造的問題の解明と共に、医療行為の結果次第で逮捕起訴されることのないよう、中立的な立場で適正な医学的根拠に基づいた判断の上で医療行為の是非を判定できるシステムの早急な確立が必要と考えます。
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