ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

全国医学部長病院長会議声明

2006年05月23日 | 大野病院事件

全国医学部長病院長会議声明(全文掲載)

平成18年5月19日

                                                  全国医学部長病院長会議
                                                              会長 吉村 博邦

                             大学病院の医療事故対策に関する委員会
                                                           委員長 嘉山 孝正

                                   声 明

 平成16年12月に福島県立大野病院で腹式帝王切開術を受けた女性が死亡したことに関し、手術を担当した医師が業務上過失致死および医師法違反の容疑で逮捕起訴された件について。

 はじめに、亡くなられた患者様とそのご遺族に対して謹んで哀悼の意を表します。

 本件に関し、手術を担当した産婦人科医師が業務上過失致死ならびに医師法違反の罪で起訴されたことに対し、医師養成及び教育に責任を有する医育機関およびその教育病院の責任者という立場から、本会議としても重大な関心を寄せております。

 本件は、癒着胎盤という、術前診断がきわめて難しく、治療の難度が最も高い事例であります。そのような症例に対する医療行為に対し、担当医師個人が業務上過失致死という刑事責任を問われるに至ったことはきわめて残念なことであり、今後、献身的に日夜医療に取り組んでいる多くの医師の善意を無にするとともに不安を助長することが強く懸念されます。

 本来、医療には予見できない合併症や、予見できたとしてもそれをはるかに凌駕するような重篤な合併症が起こることは避けがたいことであります。本会議は、今回の事件の事実経過ならびに地域医療の構造的問題の解明と共に、医療行為の結果次第で逮捕起訴されることのないよう、中立的な立場で適正な医学的根拠に基づいた判断の上で医療行為の是非を判定できるシステムの早急な確立が必要と考えます。

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参考:毎日新聞:「医療判断制度を」医学部長会議が声明


共同通信:若手医師、半数が大学離れ

2006年05月23日 | 地域医療

以前はほとんどの研修医が大学で初期研修を行ってましたが、現行の臨床研修制度が開始されてから、初期研修を都会の一般病院で行う研修医の割合が増えました。そのため、特に地方の大学病院では関連病院から多くの医師を引き揚げ、地方の多くの基幹病院が医師不足に陥りました。現行の臨床研修制度が地方の医師不足に拍車をかけたと多くの人が指摘してます。

****** 共同通信、2006年5月19日

若手医師、半数が大学離れ 臨床研修導入前より21ポイント減 地域医療に悪影響も

 大学医学部・医科大を卒業後に大学に残り勤務や勉強をするのを選んだ若手医師は、現在の臨床研修制度が導入される前の2002年には72・1%だったのに、制度1期生としてこの春に研修を終えた医師では51.2%と20.9ポイントも減ったことが19日、全国医学部長病院長会議(会長・大橋俊夫(おおはし・としお)信州大医学部長)がまとめた調査の中間報告で分かった。

 地域別では、大都市部での減少が緩やかだったのに対し、北海道や東北、中国、四国地方などで若手医師の大学離れが目立った。診療科では、脳神経外科、小児科、産婦人科、救急など労働条件が厳しい職場を避ける傾向があった。

 大学病院は地方の病院への「医師供給元」となってきたが、調査した小川彰(おがわ・あきら)岩手医大医学部長は「臨床研修を通じ、勤務条件のいい民間病院を選ぶ医師が増えたようだ。地域医療を支える大学病院の機能が失われる恐れがある」と指摘。同会議は近く制度改善を国に求める声明を出す。

 同会議には医学部のある大学と医科大学の計80校が参加、うち67校が中間報告の対象。

 後期研修生や大学院生として大学(出身校以外も含む)に残った割合は、02年は全国平均で72.1%だったが、06年は51.2%と激減。中でも北海道、東北、中国、四国では、02年より43.8―31.0ポイント下がって30%台に落ち込んだ。一方、関東は8.7ポイント減の65.0%、近畿は12・9ポイント減の60.6%にとどまった。

 人口50万人以上の都市がある都府県と札幌市は平均5.5ポイント減だったが、他の県と札幌以外の北海道は同42.4ポイント減と地方離れが目立った。

 診療科別では、脳神経外科での勤務を選んだ医師が42.3ポイントの大幅減。小児科や産婦人科も不人気で28.1―18.5ポイント減った。半面、形成外科が40.9ポイント増で、皮膚科や麻酔科も人気が高かった。小川医学部長は「24時間勤務や患者の生命にかかわる医療現場を避ける傾向がみられる」と分析している。

(共同通信、2006年5月19日)