ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

JPTECプロバイダーコース (於:相澤病院)

2013年09月29日 | 医療全般

9月21日に松本市の相澤病院で開催されたJPTECプロバイダーコース(第73回信州外傷セミナー)を受講しました。

ロード&ゴー、ログロール、全脊柱固定、高エネルギー外傷など、一日中、普段全く聞き慣れない救急現場の業界用語が飛び交い、普段全くやり慣れてない手技の練習が続き、何から何まで初めてのことばかりで、還暦の身には大変な一日でしたが、救急救命士の方々がこんな大変な苦労をして病院まで患者さんを搬送して来てくださることがわかって、非常に有意義な一日でした。

JPTECガイドブック(プロバイダーマニュアル)

****** オープニング

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****** JPTEC協議会ホームページより

JPTECとはJapan Prehospital Trauma Evaluation and Careの略語です。平成15年6月に我が国における病院前の外傷観察・処置標準化プログラムの普及を目的としてJPTEC協議会が発足しました。

JPTECプロバイダーとは、JPTECの内容を理解し実践できる者をいいます。資格取得には、JPTECプロバイダーコースを受講し、プロバイダー認定基準(筆記試験で74%以上、実技試験で可以上)を満たした者がJPTECプロバイダーと認定されます。有効期限は3年間です。

JPTECプロバイダーコースの到達目標は、病院前救急医療の現場におけるロード&ゴーの概念を理解し、各段階において必要とされる観察・処置を見落としなく迅速に実施できるようになることです。コースでは、この到達目標を達成するために、講義、実技実習(スキルステーションおよびシナリオステーション)を行い、そのあとに知識と手技の理解度を筆記試験と実技試験で確認します。

JPTECプロバイダーコースを受講することにより、我が国における外傷死亡の実態や外傷診療システム、防ぎえた外傷死の概念、ロード&ゴーの概念を理解し、外傷現場において適切かつ迅速な観察、ロード&ゴー適応の判断、生命危機に関わる外傷の処置を正しく実施できるようになること、さらに傷病者の重症度と緊急度の違いを理解し、傷病者に応じた観察・処置と医療機関の選定、適切かつ迅速な搬送ができるようになることを目指します。

****** 用語解説

ロード&ゴー(Load and Go): 救急救助現場などで使われる言葉。高エネルギー外傷患者や、重症度が高く救命できる可能性のある外傷患者に対して、観察と救命・応急処置を施したのち、5分以内に救急車に収容、迅速に病院に搬送すること。 ロード&ゴーが宣言された傷病者に対しては、頭頚部~体幹の生命に危険のある損傷の処置を最優先し、予後にあまり影響を与えない損傷への処置は優先度を下げるかまたは省略される。救急救命の現場では正確・確実な観察と処置が求められるため、その観察方法や処置についてはJPTECで標準化されている。

ログロール(logroll): ログロールとは、傷病者の身体を1本の丸太(ログ)に見立て、脊柱軸にひねりや屈曲を加えずに回す(ロール)動作である。この方法を用いることにより、脊柱軸を保持しながら背面観察を行い、素早くバックボード上に傷病者を移動することが可能となる。

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全脊柱固定: ロード&ゴーの傷病者、脊椎・脊髄損傷の可能性のある傷病者等に対しては、頸椎を含む全脊柱固定が推奨される。頸椎カラー、頭部固定具、バックボード、固定ベルトを用いた固定法が推奨される。全脊柱固定の目的は脊柱をもっともストレスのない自然な位置に固定して搬送することである。

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高エネルギー外傷: 「高所からの転落」「ある程度のスピード以上での自動車事故」など、「目に見える徴候がなくても、受傷機転から考えて生命に危険のある損傷を負っている可能性が無視できない状態」を高エネルギー外傷という。高エネルギー外傷には明確な判断基準は無い。衝突した時の車のスピードや、転落した高さなどを救助段階で知ることは難しいからである。救助者によって高エネルギー外傷と判断された傷病者に対しては、全てロード&ゴーを適用しなくてはならない。

****** 修了証

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ALSOプロバイダーコース(於:千葉大学)

2013年09月20日 | 周産期医学

9月14日~15日に千葉大学附属病院クリニカルスキルズセンターで開催されたALSOプロバイダーコースに、インストラクターキャンディデイトとして参加しました。受講生50人の大規模コースで、全国から産婦人科医、助産師、救命救急医、初期研修医、医学生など多職種の人たちが千葉に集結し、チームで周産期救急に適切に対応するためのシミュレーション・トレーニングを2日間何度も繰り返し実施しました。

6月29日~30日に飯田市立病院でALSOプロバイダーコースを開催した時に、飯田で指導してくださったインストラクターの先生方の多くと、千葉で再会することができました。

当初は9月15日のうちに飯田に帰る予定でしたが、台風18号が関東方面に向かって北上して来ていたので、台風が通り過ぎる(9月16日午後)まで都内のホテルに避難してました。

ALSOプロバイダーコース in Chiba 2013 September

****** オープニングのスライド

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****** 補助経腟分娩(吸引分娩)

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****** 肩甲難産解除

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****** 妊婦の心肺蘇生

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****** 会陰裂傷の縫合

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****** 全員集合写真

Also


死戦期帝王切開術

2013年09月08日 | 周産期医学
Perimortem cesarean section

死戦期帝王切開術とは、心停止に陥った妊婦に対して、母体蘇生処置の一つとして実施する緊急帝王切開術である。児を娩出することにより子宮を小さくして下大静脈と大動脈の圧迫を解除し、母体血行動態を改善することが目的である。腹の大きな(およそ妊娠20週以降の)妊婦が心停止に陥った場合、ただちに死戦期帝王切開術の準備を始める。母体心停止後4分の時点で死戦期帝王切開術開始の判断をする。児の予後も考慮すると、心停止後5分程度のうちに娩出が行われることが望ましいが、心停止後15分までの母体生存例もある。死戦期帝王切開術は、子宮底が臍に達していない(およそ妊娠20週未満)場合や、母体救命の可能性が全くない場合には適応にならない。一方、胎児の生死は問わない。死戦期帝王切開術はAHAのガイドライン2000においてすでに推奨されているが、日本における施行数はきわめて少ない。これを施設で実際に施行するためには、施設において死戦期帝王切開術を行う体制を構築する必要があり、施設内の関係科でよく話し合い、シミュレーションを行っておくことが非常に大切である。

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妊産婦が突然心停止に陥った場合は、子宮を左方に圧排しつつ、まずは一般成人におおむね準じた蘇生措置(胸骨圧迫、人工呼吸、急速輸液、AED、アドレナリン投与など)が行われますが、一次蘇生に反応しない場合には、母体蘇生措置としての帝王切開術(死戦期帝王切開術)を考慮する必要があります。

「産婦人科診療ガイドライン-産科編 2011」には妊産婦の心停止に対する対応の項目はなかったんですが、2014年4月に刊行予定の「産婦人科診療ガイドライン-産科編 2014」では、新たに「妊産婦の心停止への対応」に関するCQ&Aの項目が追加され、そこで死戦期帝王切開術に関しても記載されるようです。

しかし、目の前で妊婦さんが心停止に陥った時に、ただちに大勢の人員を集めて、胸骨圧迫、人工呼吸、AEDなどの蘇生措置を実施しつつ、ただちに死戦期帝王切開術の準備にとりかかり、心停止後5分以内に無麻酔で緊急帝王切開術を施行するのは、実際には非常に困難と考えられ、日本国内ではまだほとんどの施設で死戦期帝王切開術の経験がないと思われます。

実際問題、死戦期帝王切開術を産婦人科の判断だけでいきなり実施することは無理なので、まずは、産婦人科、麻酔科、新生児科、救命救急科などの関係する診療科でよく話し合い、施設として妊産婦の心停止時にいかに対応するのか?について事前によく検討しておくことが重要だと思います。

妊産婦の心停止が突然院内で発症した時に、多くの診療科が一つのチームとして迅速に対応できるようにするためには、常日頃より、ALSO、ACLS、NCPRなどを院内で定期的に開催して、緊急時のチームとしての対応のシミュレーションを繰り返しておく必要があると思います。

****** 参考

妊婦の心停止
 妊婦の心停止における心肺蘇生は、一般成人における方法におおむね準ずるが、以下のようないくつかの相違点がある。
 ①子宮左方転位を行う。
 ②胸骨圧迫部位をやや頭側に置く。
 ③早期に確実な人工呼吸を確立する。
 ④急速輸液を考慮する。
 ⑤死戦期帝王切開術を考慮する。

死亡と判断された米国女性が赤ちゃんを出産 その後、蘇生 (CNN)
 米テキサス州ミズーリシティーで心臓疾患に突じょ襲われ、医学的に一時死亡と判断された妊娠中の32歳女性が、緊急の帝王切開で女の子を出産した後、蘇生を果たす出来事がこのほどあった。

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信州食育発信「3つの星レストラン」

2013年09月07日 | 医療全般

病院内のレストラン(クロスカフェ飯田店)で、信州食育発信「3つの星レストラン」登録メニューをいただきました。塩分控えめ、651カロリーのヘルシーメニューでおいしかったです。一応まだ糖質制限ダイエットが進行中なので、御飯は小盛りにしてもらいました。

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アルプスサーモン、豚しゃぶ、生野菜サラダ、ひじきの煮物、きんぴらごぼう、ポテトサラダ、季節のフルーツ、御飯、味噌汁、漬物。

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9月からの新メニューで、気に入ったので昼食は毎日これにしてます。今後いろいろなバリエーションを作ってほしいと思います。

信州食育発信 3つの星レストラン(長野県魅力発信ブログ)

健康料理県のお墨付き 飯田市立病院の飲食店 「三つの星レストラン」に(中日新聞)