ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

平成21年度 研修医マッチングの結果

2009年10月30日 | 医療全般

本年度の研修医マッチングの結果が10月29日に発表されました。

研修医マッチングとは、国家試験に合格し医師免許を取った研修医が最初の2年間の臨床研修を受ける病院を決めるため、研修希望者と病院の双方が希望を出し、コンピューターで組み合わせる方式です。厚生労働省が2004年度から臨床研修を義務化した時に導入され、毎年10月に翌春の国家試験受験予定者を対象に実施されます。学生らは研修を受けたい病院を第1希望から順位を付けて登録し、病院側も面接などをもとに受け入れたい学生を選んで登録して、コンピューターで研修希望者と病院の組み合わせを決定します。

長野県の今年度の状況を見てみますと、全体のマッチ者数は125人で、昨年の111人よりも14人増えました。定員を満たしたフルマッチの病院も昨年の6病院から12病院に倍増しました。

当院も、今年は定員6人でマッチ者数6人と、何とか定員を満たすことができました。当院のマッチ者の中には、産婦人科志望の者も含まれてました。来年度から研修プログラムは大幅に変更されますが、当院のプログラムの場合は1年目で産婦人科研修が1か月間必修になっていて、2年目の研修はほとんど全期間が自由選択となっています。信州大学とのたすき掛けで当院で研修する研修医も1年目と2年目それぞれ数名づついる筈で、その中にも産婦人科志望の者が含まれている可能性がありますので、来年度からは1年目研修医と2年目研修医が、ほぼ常時、産婦人科研修をしていることになる筈です。また、来年度から当院での産婦人科後期研修を開始する予定の者もいます。若いスタッフが増えて、大勢の研修医たちと日々頑張っていける環境になれば、職場の雰囲気にも活気が出てきます。当院での臨床研修を選択してくれた若い医師たちががっかりしないように、研修医の指導には全力投球していきたいと考えています。

当院での2年間の初期研修を修了した研修医たちのその後の進路を見てみますと、人それぞれですが、やはり大学病院に移って後期研修を開始する者が最も多いです。当院に残って後期研修を開始する者も毎年何人かづついます。また、当院を巣立ってから何年かしてそれぞれの分野で立派に成長し、大学の医局人事で赴任して来て、現在は当院のスタッフとして活躍している者も多いです。研修医たちを単なる労働力として見るのではなく、長い目で彼らの成長を見守っていく必要があります。医師としての長いキャリアを積む最初の2年間を過ごす研修病院は、研修医自身が学びたいものを自由に思いきり学べるような研修環境であるべきだと思います。

長野県内のマッチ者数(計125人)の内訳
定員充足率83.3%(125/150)

信州大学医学部附属病院 49人(定員58人)
 信大と県内関連病院の統一研修 35人(定員40人)
 信大診療科自由選択研修 11人(定員14人)
 信大産婦人科研修 1人(定員2人)
 信大小児科研修 2人(定員2人)
県厚生連佐久総合病院 15人(定員15人)
長野赤十字病院 9人(定員9人)
相澤病院 8人(定員12人)
飯田市立病院 6人(定員6人)
諏訪赤十字病院 6人(定員6人)
県厚生連長野松代総合病院 6人(定員6人)
諏訪中央病院 4人(定員4人)
長野市民病院 4人(定員4人)
県厚生連小諸厚生総合病院 3人(定員3人)
県厚生連篠ノ井総合病院 3人(定員3人)
長野中央病院 3人(定員4人)
安曇野赤十字病院 2人(定員2人)
伊那中央病院 2人(定員2人)
県厚生連北信総合病院 2人(定員2人)
県厚生連安曇総合病院 1人(定員2人)
県立須坂病院 1人(定員2人)
波田総合病院 1人(定員2人)
県厚生連富士見高原病院 0人(定員2人)
国立病院機構長野病院 0人(定員2人)
佐久市立国保浅間総合病院 0人(定員2人)
市立岡谷病院 0人(定員2人)

****** 参考記事:

臨床研修の都道府県別来年度定員

10年度臨床研修の募集定員  地方大学病院の割合が初めて増加 マッチングで研修医の動き注視

****** 医療タイムス、長野、2009年10月30日

県内マッチ者は125人 マッチング、04年以降で過去最多

 医師臨床研修マッチング協議会は10月29日、研修医のマッチング結果を発表した。2004年度の臨床研修制度から5年が経過したことから、今回は都市部での医師偏在といった課題を解消する狙いで、都道府県ごとの募集定員を設定するなど制度を見直した。県内でも実態に即した形でマッチング参加病院が6減の22、総定員数が54減の150となったが、マッチ者は125人となり、制度開始以降で最多だった04年度の118人を上回った。充足率は83.3%で、前年度より28.9ポイント上昇した。

 定員を満たしたのは、県厚生連佐久総合病院(定員15人)、諏訪赤十字病院(同6人)、飯田市立病院(同6人)、長野赤十字病院(同9人)、県厚生連北信総合病院(同2人)、県厚生連小諸厚生総合病院(同3人)、県厚生連篠ノ井総合病院(同3人)、諏訪中央病院(同4人)、県厚生連長野松代総合病院(同6人)、長野市民病院(同4人)、安曇野赤十字病院(同2人)、伊那中央病院(同2人)の12病院。定員を満たした病院は、前年度の6病院から倍増した。

(中略)

 信大病院は、総定員58人に対してマッチ者は49人(前年度比5人増)、充足率は84.5%。プログラム別では、「信大と県内関連病院の統一研修プログラム」(同40人)のマッチ者が35人、「信大診療科自由選択研修プログラム」(同14人)のマッチ者が11人、「信大産婦人科研修プログラム」(同2人)のマッチ者が1人、「信大小児科研修プログラム」(同2人)のマッチ者が2人だった。

(以下略)

(医療タイムス、長野、2009年10月30日)


新型インフルエンザ・ワクチン: 接種の実施スケジュール

2009年10月28日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ: 重症化率が高い小児へのワクチン接種順位の前倒しの検討を提言 (日本ウイルス学会)

新型インフルエンザワクチン 1回接種、当面は医療従事者限定 妊婦や基礎疾患のある人の接種回数は再検討

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 南信州新聞、2009年10月28日

新型インフルワクチン 接種は来月9日から

妊婦や持病患者など優先

 県は26日、新型インフルエンザワクチンの優先接種スケジュールを発表した。妊婦や基礎疾患(持病)のある患者は11月2日から医療機関で予約を受け付け、最も早い人は同9日から接種を始める。接種を行う医療機関は今月29日に県ホームページなどで公表する。

接種の実施スケジュール(長野県)
優先接種対象者  予約開始日  接種開始日

医療従事者                  10月19日
妊婦:バイアル製剤   11月2日    11月9日
         シリンジ製剤  11月2日    11月18日
基礎疾患を有する者:
     最優先分   11月2日    11月9日
     その他    11月2日    12月9日
乳幼児(1~6歳)   11月16日   12月9日
小学1~3年      12月2日     12月22日
1歳未満児の保護者など  12月17日  1月13日
小学4~6年    12月後半~1月前半 1月後半
中学生       12月後半~1月前半 1月後半
高校生(輸入ワクチン)   12月または1月 1月中
65歳以上(輸入ワクチン) 12月または1月 1月中

 国の定めるワクチン接種の標準的なスケジュールに沿った内容だが、国が接種回数を2回から1回に見直す可能性もあるため、変更となる場合がある。接種は原則予約制で、個々の医療機関によって予約開始日が異なることもあるという。

 県のスケジュールによると、妊婦のうち、保存剤を含む「バイアル製剤」の希望者や、基礎疾患のある患者で「最優先」とされた人は11月9日から接種を開始。続いて、妊婦のうち、保存剤を含まない「シリンジ製剤」の希望者が同18日から接種を受けられる見込み。

 基礎疾患のうち「その他」と1~6歳の乳幼児は12月9日、小学1~3年生は12月22日、1歳未満児の保護者などは来年1月13日からの接種開始を予定。小学4~6年生と中学生は来年1月後半、輸入ワクチンの使用を見込む高校生と65歳以上は1月中の開始を予定している。

 基礎疾患者は1歳から小学3年相当の低年齢者を最優先としているが、さらに疾患ごとに優先基準が定められている。県は「国の基準を参考に総合的に判断するため、主治医に問い合わせてほしい」としている。

 限られたワクチン接種を円満に実施するための注意点として「1人で複数の医療機関へ予約することは避けてほしい。ほかの人への接種が遅れてしまう可能性がある」と指摘し、協力を呼び掛けている。

(南信州新聞、2009年10月28日)

****** 信濃毎日新聞、2009年10月27日

新型インフルのワクチン優先接種 県がスケジュール

 県は26日、新型インフルエンザワクチンの優先接種対象者の接種スケジュールを決めた。原則予約制で、妊婦や、慢性の心疾患、腎疾患、糖尿病などの基礎疾患(持病)のある人は11月2日から医療機関で予約を受け付け、同9日に接種を始める。

 国が示した接種スケジュールに沿った内容。国が接種回数を見直す可能性もあるため「今後、変更する場合もある」(県健康づくり支援課)。医療機関によって予約開始日が違うこともあるとしている。

 県のスケジュールでは、妊婦(県内約1万8千人)のうち、保存剤を含まない「シリンジ製剤」を希望する人には、出荷日程に合わせて11月18日に接種を開始。基礎疾患のある人のうち、疾患の程度などで「最優先」(約9万8千人)とされた人は接種開始が同9日、「その他」(約4万9千人)は12月9日とした。

 1~6歳の乳幼児(約10万8千人)も12月9日に接種が始まり、小学1~3年生(約6万3千人)は同22日、1歳未満児の保護者(約3万6千人)は来年1月13日の開始予定。小学4~6年生(約6万3千人)と中学生(約6万3千人)は1月後半となる。

 輸入ワクチンを使う見通しの高校生(約6万3千人)と65歳以上(約55万4千人)は1月中の開始予定。優先対象者以外のワクチン接種は今のところ未定としている。

 接種費用は全国一律で1回目が3600円。2回目を同じ医療機関で接種すれば2550円。県は、接種を受けられる医療機関名を29日に公表する方針だ。

 また県は26日までに、重症患者の受け入れ態勢を確保するため、入院患者数や受け入れ可能病床数を把握する「医療情報ネットワーク」の運用を始めた。医療機関からの報告を県が集約、医師会や医療機関などに提供するという。

(信濃毎日新聞、2009年10月27日)


新型インフルエンザ: 重症化率が高い小児へのワクチン接種順位の前倒しの検討を提言 (日本ウイルス学会)

2009年10月28日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ・ワクチン: 接種の実施スケジュール

新型インフルエンザワクチン 1回接種、当面は医療従事者限定 妊婦や基礎疾患のある人の接種回数は再検討

****** 毎日新聞、2009年10月26日

新型インフル:小児のワクチン接種前倒し…学会が提言

 日本ウイルス学会は26日、新型インフルエンザに関するパネルディスカッションを開き、重症化率が高い小児へのワクチン接種順位の前倒しの検討などを提言した。

 ディスカッションには7人の専門家が出席。押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は、国内で小児の重症化率が高いことや、米国で入院患者の5割以上が未成年であることを説明。現在の優先順位で小学校低学年は医療従事者、妊婦、基礎疾患のある人、幼児に続いて来年1月中旬となっていることについて「接種しないまま流行のピークを迎えることになるかもしれない。この順位のままでいいのか早急に議論が必要だ」と訴えた。

 座長の河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)は「輸入ワクチンは製造方法や接種方法が異なり、簡単に小児に接種できないが、基礎疾患のある人全員の接種回数が2回のままなら、小児まで国産ワクチンが回らない。ワクチンの接種回数を早急に議論し、政策に専門家の意見が反映される仕組みが必要」とまとめた。【関東晋慈】

(毎日新聞、2009年10月26日)

****** 共同通信、2009年10月28日

「専門家の意見反映を」 ワクチン接種回数で議論

 新型インフルエンザワクチンをめぐり、日本ウイルス学会が26日夜、都内で開いたパネルディスカッションで「予防接種について専門家の意見が反映される仕組みを作るべきだ」などの意見が相次いだ。

 新型ワクチンをめぐっては、厚生労働省が16日の専門家意見交換会で「1回接種」でいったんは合意したが、足立信也厚生労働政務官(民主)が異を唱え「医療従事者のみ1回、ほかは当面2回」と方針が変更された。

 パネルディスカッションで神谷斉(かみや・ひとし)・三重県予防接種センター長は「専門家が1回接種と決めた事を政治的に変える問題ではない」と指摘。1回でも効果があることを確認した臨床研究を担当した三重病院(津市)の庵原俊昭(いはら・としあき)院長は「2回するかは(2回目で)どのくらい効果を上乗せできるかにかかってくる。接種できない人を増やすのがいいのか、多くの人に1回接種するのがいいのかの議論になる」と述べた。

 押谷仁(おしたに・ひとし)東北大教授は「今のままでは(重症化しやすい)小学校低学年に接種できるのは12月中旬以降。その子たちは流行時期に接種を受けられない」と指摘。神谷センター長は「接種の順位を変える議論を早急にやるべきだが、厚労省に動きが無く、現場は不満を感じている」と批判した。

(共同通信、2009年10月28日)

****** 読売新聞、2009年10月27日

脳症50人…7~10月 7歳児最多10人

 新型インフルエンザに感染し、インフルエンザ脳症を発症した患者が7月からの3か月間に計50人に上ったことが、国立感染症研究所の調査でわかった。最も多かった年齢は7歳。5歳以下に多い季節性インフルエンザに比べて年齢が高く、感染研は注意を促している。

 調べたのは、7月6日~10月11日に16都道府県から報告された脳症。年齢は1歳~43歳で、最も多かった7歳児は10人だった。

 感染研は、症例を報告した医療機関に調査票を送り、回答を寄せた20症例をさらに詳しく分析した。その結果、全員に意識障害がみられ、11人に熱性けいれんや気管支ぜんそくなどの基礎疾患(持病)や既往症があった。

 このうち15人は回復したが、1人が死亡。3人に精神神経障害、まひなどの後遺症が確認された(1人は無回答)。全員がインフルエンザ治療薬を服用しており、発熱当日が3人、1日後が12人、2日後が3人と、治療薬の効果があるとされる発症48時間以内の投与が大半だった。

(読売新聞、2009年10月27日)

****** 毎日新聞、2009年10月27日

新型インフル:「元気な幼児」急変 感染死増加

 幼い子どもの新型インフルエンザ感染死が増えている。一体何が起きているのか。自治体の記録などから読み取ると--。 【國枝すみれ、山寺香】

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 新型インフルエンザ感染による10歳未満の死亡例

 26日までに、新型インフルエンザ感染により10歳未満で死亡したのは全国で6人。そのうち5人にはぜんそくなどの基礎疾患がなかった。厚生労働省のまとめでは7月28日から10月13日までの新型インフルエンザによる入院患者は2146人。10歳未満は約6割の1234人に上る。

 死亡例が3件の東京都。男児(3)は19日に38度の熱を出し、医療機関でかぜと診断された。20日、熱が39.6度に上昇、午前9時過ぎに再受診。インフルエンザA型陽性で、昼前にタミフルを1回飲んだ。自宅ではアイスクリームを食べるなど比較的元気だったが、午後5時過ぎに嘔吐(おうと)していたのを発見された。呼びかけに反応がなく救急搬送された。異変に気づいて30分で病院に着いた時には心肺停止状態。午後6時50分に死亡した。

 男児(4)は4日夜39.9度の発熱。翌朝A型陽性が判明した。帰宅途中にけいれんし、病院でタミフルを投与。だが6日早朝、意識障害から呼吸停止に。13日に死亡した。

 男児(5)は、2日朝発熱し、診療所でかぜと診断された。3日午前中に熱は40度に。タミフルを飲んだが、夕方に嘔吐、意識がもうろうとし白目をむいた状態となり、午後4時すぎに病院に搬送された。「おなかの動きが悪い」との記載が残り、タミフルが吸収されなかった可能性もある。同日夜には多臓器不全に陥り、6日午後8時前に死亡した。

 東京都福祉保健局の大井洋参事は「3例とも重症化や死亡までの経過が早く、治療で他に何かできたという選択肢は少ないのではないか」と話す。

 兵庫県西宮市の女児(8)は11日に微熱、12日朝に38.8度に上昇した。同日午後5時には意識障害がみられ、同市の病院に運ばれたが、全身状態が悪く、薬も飲めなかった。同日午後9時40分、神戸市の医療機関に転送された時にはショック状態に。直接の死因は多臓器不全と記載されたが、脳炎を疑われるケースだった。

 横浜市の男児(5)はウイルスが肺で増殖したウイルス性の重症肺炎で15日に死亡した。12日に発熱、13日にタミフルを飲んでいた。

 東京慈恵会医科大の浦島充佳准教授は「オーストラリアやニュージーランドでも、5歳未満の子どもの死亡率が最も高かった。小さい子どもは体力がない。幼いということ自体が基礎疾患を持っているのと同じくらい危険だ」と話す。

 また、季節性インフルエンザに罹患(りかん)した経験が少ない子どもは、大人より新型インフルエンザに感染しやすく、重症化しやすい。

 病状は(1)タミフル投与のタイミング(2)本人の体力(3)侵入したウイルス量などで変わる。

 新型インフルエンザは発症から12時間で感染が判明し、48時間以内にタミフルを投与すれば重症化を防げるとされていたが、死亡例ではタミフルを飲んだ時には手遅れのケースもあった。「小児科医の間には、新型インフルエンザが疑われたら、感染判明を待たずにタミフルを投与するという方針が広まりつつある」(浦島准教授)。日本ウイルス学会は重症化率が高い小学生へのワクチン接種時期の前倒しを検討すべきだと提言した。

 親がすぐ病院に連れて行くべき兆候は。インフルエンザ脳症と脳炎は、呼びかけても反応しないなど意識障害の症状が出たら危険。ウイルス性肺炎は、息が長く続かず会話が途切れる、子どもが「息苦しい、胸が痛い」と訴えるなどだ。

(毎日新聞、2009年10月27日)

****** 朝日新聞、埼玉、2009年10月27日

新型インフル 基礎疾患ない中2女子死亡

県 「重症化 兆候に注意」

 県は26日、入間市の中学2年生の女子生徒(13)が、新型インフルエンザによるウイルス性心筋炎で死亡した疑いがある、と発表した。女子生徒に基礎疾患はなかったという。新型インフルエンザによる県内の死者(疑い含む)は、基礎疾患があった川口市の67歳の女性に次いで2例目。全国では33例目。県は「重症化のサインを見逃さないよう心がけて」と呼びかけている。

 県疾病対策課によると、女子生徒は22日、38・8度の熱が出て中学校を早退し、自宅近くの診療所で受診しリレンザの投与を受けたが、翌日も熱が下がらず胸の痛みを訴えた。24日、診療所で受診し解熱剤を服用した。その後嘔吐(おうと)を繰り返すようになり、25日夜、救急車で市外の病院へ搬送したが、搬送先で死亡が確認されたという。

 PCR検査(遺伝子検査)では新型インフルエンザの感染は確認されなかったが、簡易検査で新型感染が疑われるA型の反応が出ていること、PCR検査がリレンザによる治療後であったこと、心筋炎の状況などから、県は新型インフルエンザによる死亡例と考えられると判断した。全国で10代の死亡例は女子生徒が3例目で、基礎疾患がなく死亡したのは初めてという。

 県内の1週間の新型インフルエンザの患者数(10月12~18日)は1医療機関あたり22・97人。ひとケタ台が続いていた9月までに比べ、10月に入り患者数が急増している。地域別では、入間市を含む所沢保健所管内が37・29人で最も多く、川口、越谷、朝霞市などでも流行発生警報レベルの30人を超えている。

 同課は「発熱後2日以内の受診や、健康でも容体が急変しやすい10代までの子どもは、呼吸や脈の速さ、反応の鈍さのほか、嘔吐を繰り返すといった重症化のサインを見逃さないよう心がけて」と呼びかけている。

(朝日新聞、埼玉、2009年10月27日)


閉鎖する産院 危険負いたくない

2009年10月26日 | 地域周産期医療

産科医療では、一定の比率で、死産、脳性麻痺、大量母体出血、母体死亡などが発生するのは避けられません。従来は、それらの事例を、産婦人科一人医長の施設でも多く扱ってきましたが、今の風潮だと、不可抗力だとしても、どうしても産科医個人の責任が問われることとなりがちです。今後の産科医療は、多くのスタッフを擁する病院のチーム医療が主流となっていくのは避けられないと思います。

****** 中日新聞、2008年7月19日

危機のカルテ 医療現場から 第1部

閉鎖する産院 危険負いたくない

 「凶悪犯と一緒じゃないか」。岐阜県土岐市の産婦人科医、西尾好司(68)は一昨年2月、テレビのニュースを見ながらつぶやいた。警察に連行される医師の姿が映し出されていた。

 全国の産科医に衝撃を与えた「大野病院事件」。福島県立病院の医師が、帝王切開で出産した女性に適切な処置をせずに大量出血で死亡させたとして業務上過失致死容疑で逮捕された。産科婦人科の学会は「診断が難しく、治療の難度も高い」と反発した。

 西尾は30年間、1人で診療所を守り、約9000人の新生児を取り上げた。急な出産で深夜に起こされ、寝られないことはしばしば。朝から通常の診察もあり「72時間労働なんてざらだった」。そんな生活も「産科医として当たり前」と思っていた。

 70歳が近づき、大学病院で働く産科医の長男に後を継ぐように頼んだが、断られた。「帰ってきたら1人でやることになる。危険を負いたくはない」。長男の言葉が耳から消えない。出産時に万一のことがあれば、巨額な損害賠償を求められ、刑事責任をも問われる時代になっていた。西尾は昨年1月、産科の扱いをやめた。

 この年の秋、同じ土岐市の女性(33)が、2人目の分娩の予約を入れるため走り回っていた。「もういっぱい」「前回の帝王切開はうちじゃない」と産院から相次いで断られた。4ヵ所目でようやく予約できた。「お産難民なんて、もっとへき地の話だと思っていた」

 女性は今週、岐阜県瑞浪市の産院で女児を無事出産した。多治見市を含めた岐阜県の東濃西部地方で出産できる施設は、この3年で4ヵ所減り、6ヵ所になった。「こんな状況では、3人目をほしくても、産む気になれない」とこぼす。身近な場所で産みたいという女性の思いは根強い。

 地域の中核を担う県立多治見病院には妊婦が押し寄せる。昨年は、例年より100件ほど多い約500件の出産を手掛けた。医師は定員より1人少ない5人。危険度の高い妊婦の診察や腫瘍手術をしながら、正常分娩も扱う。

 院長舟橋啓臣(64)は「身を削ってやっている」と言いつつ「安全なお産を守るためには近くに産む場所を求めるより、医者を集めることが大切だ」と進むべき道を模索する。

 妊婦と産科医の意識のギャップは大きい。「産科が置かれた状況を、妊婦や住民に分かってもらうしかない」。舟橋は昨年、東濃地方の医師と行政関係者で「考える会」をつくった。市民向けのシンポジウムを催し、ホームページ「お産ネット東濃」を開設した。医師不足の中、地域のお産を守ろうとする努力が続く。【文中敬称略】

  *  *

 命を守る医療の現場が、きしみを上げている。過酷な職場から医師が去り、経営に苦しむ病院が続出する。診療縮小であふれた患者がさまよい、さらに別の病院の疲弊を招く「負の連鎖」が続いている。医療の問題をさまざまな角度から探る。

産科医の現状 全国で出産を取り扱う病院、診療所は減少している。厚生労働省によると、昨年12月に3341施設あったが、今年中に少なくとも77施設が休止、制限する見通し。産婦人科医が中心の日本産科婦人科学会の会員は15400人で、10年前より約600人減少。2人に1人が50歳以上で、40歳未満は女性が半数を超える。女性は結婚、出産で現場を離れる傾向があり、将来の産科医不足が懸念される。

(中日新聞、2008年7月19日)


地域の病院に医師を派遣する拠点病院「マグネット・ホスピタル」を整備する県の構想

2009年10月20日 | 地域医療

今や、研修希望者(医学生、初期研修医)が研修先病院を自由に選ぶ時代となった以上、地域中核病院は、研修希望者にとって魅力のある研修先病院に変身していく必要があります。

研修医が集まって来ない病院には、指導医も集まって来ません。とにかく、『研修医に選ばれる病院』に変身していかない限り、病院の未来は決してあり得ません。

一つの研修先病院だけであらゆる疾患や技術の研修をカバーするのは難しいので、若手医師たちは数年ごとに研修先を変えて成長していきます。病院独自で採用した若手医師達が次の研修先病院に転勤する場合には、病院独自で後任者を補充し続けなければなりません。従って、今後、研修医たちの意見を取り入れて、研修内容や待遇を毎年少しずつ改善し、研修先病院としての魅力を高め続けていく必要があると思います。

そうは言っても現実には、地方の病院に研修医を毎年コンスタントに集め続けるのは本当に至難の業だと思います。研修医の海外留学費用を補助してくれるという県の構想は、若い研修医にとっては非常に魅力的な話だと思います。

****** 読売新聞、長野、2009年10月20日

医師派遣 拠点病院を整備 県方針

研修医集めに補助金

 県は来年度から、県内の病院に医師を派遣する拠点病院「マグネット・ホスピタル」の整備を始める方針を決めた。一定規模以上の病院に、指導医の人件費などを補助し、後期研修医を集めやすいようにするもの。医師不足に悩む県内各地の病院から派遣要請が集中している信州大病院の負担を減らすことも狙いの一つだ。

 マグネット・ホスピタルとは、「磁石のように人材を集める」病院のこと。若手医師の多くは、2年間の初期研修の後、専門的な知識や技術を身につけるため、病院に“即戦力”として勤務しながら後期研修を受ける。全国から後期研修医を集めることができれば、病院や地域の医師不足解消にもつながる。

 県は、来年度から4年間で、3億2000万円を事業用基金として積み立て、後期研修1年目から3年目の医師が一定数以上在籍し、今後、医師派遣先を増やす用意がある病院を公募し、補助対象とする方針。地域バランスや病院規模を考慮し、県内8か所程度の病院を選ぶという。

 補助金は、後期研修医を指導できる専門性の高い医師の人件費や、研修医の海外留学費用のほか、研修医を集めるためのPR活動などにもあてられるようにする予定。県医師確保対策室では、「後期研修医を全国から集めるため、各病院でぜひ魅力ある指導プログラムを考えてほしい」としている。

(以下略)

(読売新聞、長野、2009年10月20日)


新型インフルエンザワクチン 1回接種、当面は医療従事者限定 妊婦や基礎疾患のある人の接種回数は再検討

2009年10月20日 | 新型インフルエンザ

新型インフル: 13歳以上は1回接種の見通し(厚生労働省)、自治体は「寝耳に水」

新型インフルエンザ: ワクチン接種を前に自治体悲鳴 「準備間に合わない」

新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 読売新聞、2009年10月19日

新型ワクチン1回接種、当面は医療従事者限定

 厚生労働省の足立信也政務官は19日夜、新型インフルエンザ用ワクチンの接種回数について、原則1回にするとした方針は拙速だったとして、専門家との意見交換会で再検討した。

 その結果、優先接種対象者のうち1回接種とするのは当面、医療従事者に限るとする案で合意した。20日に政務三役で正式決定するとしている。

 国産ワクチンを20代から50代の健康な成人200人に実施した臨床試験の結果では、1回の接種で有効性が確認された。海外でも1回接種で十分とする知見が相次いで出されているため、16日に開かれた先の意見交換会では、13歳以上は原則1回接種とする意見で合意していた。

 しかし、この結論に足立政務官が難色を示したため、今回は別の専門家からも意見を聞き、健康な成人以外の1回接種は科学的根拠に乏しいとの結論に至った。妊婦や基礎疾患(持病)のある人たちが1回接種のみで免疫がつくかどうかについては、「まだ結論づけることはできない」との意見が相次いだ。

 「小規模でも妊婦や基礎疾患のある人を対象にした臨床試験も実施すべきだ」とする意見も大勢を占めたため、足立政務官は政務三役で改めて具体策を詰めるとしている。

(読売新聞、2009年10月19日)

****** 共同通信、2009年10月20日

妊婦ら接種回数を再検討 新型インフルで厚労省

 新型インフルエンザワクチンの接種回数をめぐり、厚生労働省の足立信也政務官は19日夜、専門家らとの意見交換会を開き、先に別の専門家メンバーらが示した13歳以上は妊婦や基礎疾患(持病)のある人たちを含めて1回接種にするとした方針は拙速だったとして、引き続き検討することを決めた。

 一方、健康な成人である医療従事者については1回接種で良いとの方向性を確認。政府として早急に結論を出すという。

 国産ワクチンの接種回数については、尾身茂自治医大教授ら政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会のメンバーが出席した16日の会合で、従来の2回ではなく1回でも十分な効果を期待できるという臨床研究結果が報告された。

 これを受けて同会合では、13歳未満の子どもと著しく免疫が低下している持病のある人を除いては、1回接種とすることで合意していた。

 しかし、あらためて開かれたこの日の会合では「健康な成人を対象にした研究結果を基に、医療従事者以外について1回で良いと結論づけることはできない」など、合意を疑問視する意見が相次いだ。

 席上、足立政務官は「(先の専門家による)合意は言い過ぎだった。医療従事者は1回接種もあり得る。その上で、妊婦や持病のある人の1回目の接種開始を早めたい」と述べた。

 厚労省は今後、妊婦や持病がある人、中高校生を対象にした小規模な臨床研究の実施を検討、医療従事者以外の接種回数を慎重に決める考えだ。

(共同通信、2009年10月20日)

****** 毎日新聞、2009年10月19日

新型インフルエンザ:予防接種始まる まず医療従事者 妊婦・子ども、来月以降に

 新型インフルエンザの予防接種が19日、医療従事者を対象に始まった。11月以降、妊婦や基礎疾患のある人、小児らに順次接種される。対象者は計5400万人。7月以降の新型インフルエンザ感染者は推計234万人に上っており、流行の本格化に備え、死亡や重症者の増加を食い止める効果が期待される。

 厚労省によると、19日に接種を始めるのは大阪、千葉、山梨など23府県。残りは、23道県が週内に、実施医療機関の取りまとめに時間がかかった東京都が26日から、それぞれスタートする。

 接種対象の医療従事者は、インフルエンザ患者の診察にかかわる医師や看護師、救急隊員ら約100万人。厚労省はこのうち国立病院機構の病院にいる2万人を対象に詳細な副作用調査を行い、安全性評価に活用する。

 一般の接種開始は11月からで(1)妊婦、ぜんそく・糖尿病・肝硬変などの基礎疾患のある人(2)1歳~小学校低学年の小児、児童(3)1歳未満の乳児の保護者ら--などの順に、リスクの高い層から優先される。厚労省は近く、当初2回としていた接種回数を「13歳以上は原則1回」と改めたうえで、スケジュールの目安を公表する。

 接種費用は1回3600円。厚労省は今のところ、13歳未満は免疫効果を高めるため2回接種とする方針で、同じ医療機関なら2回目は2550円に減額される。 【清水健二】

(毎日新聞、2009年10月19日)

****** 毎日新聞、2009年10月19日

新型インフルエンザ:予防接種開始 医療現場に安心感 予約制、保険証提示も

 新型インフルエンザの本格的な流行に備え、19日、医療従事者へのワクチン接種が始まった。日常的に感染の危険性にさらされている関係者からは「これで安心できる」と歓迎の声が上がった。ワクチンは製造分から順次供給され、11月以降、重症化の危険性が高い人から順に接種が受けられるようになる。どの程度の効果と副作用が見込まれるのか、接種の手続きは……。大流行の恐れが指摘される中、関心が集まる。 【清水健二、沢田勇】

 甲府市朝日1の井上内科小児科医院には10人分のワクチンが届き、この日午前9時半過ぎから、井上利男院長(70)が同院の看護師に注射した。

 最初に接種を受けた看護師の長沼和子さん(61)は「患者と接するので、いつも感染の不安はありました。これでひと安心しました」と話した。同院では、医師、看護師、事務員15人に接種を予定している。

 7月以降、新型インフルエンザに感染したとみられる患者五十数人を診察してきた井上院長は「ワクチンで大きな危機は乗り越えられると思う。不安を挙げるとすれば、基礎疾患のある人に接種した場合の副作用だ」と話した。

 医療従事者以外への接種は、11月から始まる。時期の目安は厚生労働省が示すが、流通の時間などを勘案して具体的な日程は都道府県が決めることになっており、自治体のホームページなどで公開される。

 接種を受ける場所について厚労省は、かかりつけの医療機関が望ましいとしている。基礎疾患(持病)がある場合、それが優先接種対象になるかどうかを判断してもらえるからだ。予約制で、16歳未満は保護者同伴が原則。予防接種は保険診療ではないが、年齢確認などで保険証の提示を求められることもある。

 かかりつけ医がワクチン接種をしていなかったり、かかりつけの医療機関がない人は、市町村に照会して接種できる医療機関を調べることになる。勤務先の近くなど、居住地と異なる地域の医療機関を選んでもいい。接種対象者であることを示すため、妊婦は母子手帳、持病がある人は、かかりつけ医に発行してもらう証明書が必要。

重症化防ぐ効果期待 「季節性」同時接種で負担減

 医療従事者を対象に、新型インフルエンザのワクチン接種が始まった。ワクチンは、感染自体を防ぐことはできないが、感染後の重症化を防ぐ効果が期待される。一方、厚生労働省は副作用の発生状況を監視するため、医療機関から国に直接報告する制度を設ける方針だ。

 厚労省によると、後遺症が残る重い副作用は、毎年流行する季節性のインフルエンザワクチンでは100万人に1人に起きるとされる。新型の国産ワクチンについて、厚労省は今月、46%に副作用があったとする治験結果を公表した。大半は注射した場所が腫れるなど軽いものだったが、治験対象者200人のうち急なアレルギーショックと全身の発疹(はっしん)が各1例あったという。

 専門家は新型、季節性の2ワクチンの同時接種も、医療機関や接種対象者の負担を減らすことができるとして勧めている。一方、高齢者は新型、季節性を問わずインフルエンザウイルスに感染すると、免疫力の低下で肺炎球菌による肺炎を発症しやすい。このため、肺炎球菌ワクチンの接種も勧めている。 【山田大輔】

(毎日新聞、2009年10月19日)

****** CBニュース、2009年10月20日

国産ワクチン接種始まる 医療従事者を優先 まず100万人 準備整わず出遅れも 新型インフルエンザ

 新型インフルエンザワクチンの接種が19日、医療従事者を対象に全国各地で始まった。医療従事者は、ワクチンの供給量に限りがあるとして政府が設定した優先接種対象の順位1位。主に新型インフルエンザ患者の診療にかかわる医師や看護師らで、約100万人を対象に国産ワクチンを接種する。

 ただ、接種に向けた準備状況は都道府県や地域によってまちまちで、初日のこの日に開始できない所も出た。共同通信が今月16日時点で実施した調査では、47都道府県のうち16都道県が「19日の接種開始は難しい」と回答している。こうした地域でも、近日中に接種が始まる見通しだ。

 医療従事者に続き、来月には重症化のリスクが高い妊婦や基礎疾患(持病)を持つ人への接種が始まり、その後、1歳から小学校低学年までの子ども、乳児の保護者らに順次接種される。

 厚生労働省は、従来2回としていた国産ワクチンの接種回数を13歳以上は高リスク者も含め原則1回に変更する方向で、対象ごとの接種時期は当初の予定より前倒しになる可能性がある。新たな接種スケジュールは今週中にも示される。

 また、厚労省は医療従事者のうち2万人について、副作用の発生頻度などを調べる方針。

 この日、甲府市の井上内科小児科医院では午前10時ごろ、井上利男(いのうえ・としお)院長(70)が看護師の長沼和子(ながぬま・かずこ)さん(61)の右腕に0・5ミリリットルのワクチンを注射した。接種後、長沼さんは「副作用の不安はない。(医療従事者を最優先とするのは)患者と接触するので良いことだと思う」と話した。

 同医院には16日に1ミリリットル入りのワクチンが5本(10人分)届いた。追加分も含め、最終的に15人のスタッフが接種を受ける予定。井上院長は「持病のある人に打つのは(副作用の面で)不安はあるが、危機は乗り越えられると思う」と、ワクチンの効果に期待した。

(CBニュース、2009年10月20日)


子宮頸がんワクチン、11~14歳へ優先接種を 日本産科婦人科学会など3学会が提言

2009年10月19日 | 婦人科腫瘍

子宮頸がんワクチンが正式承認され、年内にも発売されます。日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本婦人科腫瘍学会は、11歳~14歳の女子に優先的に接種し、費用は公費負担にするように連名で提言しました。ワクチン接種により、将来的に子宮頚がんが7割以上減ると見込まれるので、接種費用を公費負担としても医療費は抑制されるとしています。

ワクチンは3回の接種が必要で、全額自己負担だと3~4万円かかります。欧州や豪州、カナダなど26カ国では全額公費負担または補助が行われていて、接種率が9割に上る国もあります。厚生労働省は接種費用をどうするのかまだ決めてませんが、もしも全額自己負担ということになったら接種率はかなり低くなってしまうことでしょう。

子宮頚がんはありふれた病気で、当院でもほぼ毎週のように新たな子宮頚がんが見つかり、多くの子宮頚がんの手術(円錐切除術、単純子宮全摘術、広汎性子宮全摘術など)を実施していますし、放射線治療も多く行われています。子宮頚がんで亡くなる患者さんも毎年少なからずいらっしゃいます。

子宮頸がんワクチンを11歳~14歳の女子に公費負担で接種するという政策は、国家戦略として、次世代での子宮頸がんの発生率を減少させる試みです。決して税金の無駄遣いにはなりません。ぜひとも公費負担にしていただきたいと思います。

子宮頸がん予防ワクチン承認決定、国内初

****** 読売新聞、2009年10月16日

子宮頸がん予防ワクチンの製造販売を承認…厚労省

【要約】 厚生労働省は16日、子宮頸がんを予防するワクチン「サーバリックス」の製造販売を承認した。子宮頸がんワクチンの承認は国内初。子宮頸がんの主な原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、7割を占める2種類のウイルス感染を防ぐことができると期待されている。ただ、ワクチンは3回の接種が必要で、費用は4万~6万円程度かかる見込み。日本産科婦人科学会などは同日、政府に対して11~14歳女児への無料接種などを求める声明を出した。子宮頸がんは、年間1万人以上が新たに発症し、約3500人が死亡している。特に近年、20~30歳代の若い女性で発症者が増加している。

(読売新聞、2009年10月16日)


「地域医療再生計画」について

2009年10月18日 | 地域医療

私見(コメント):

「地域医療再生計画」は、国が総額3100億円の基金を設け、市町村をまたいで広域で設定される全国の「医療圏」の中から90カ所程度に、それぞれ25億円か100億円程度を交付するという事業で、これは政府が今年4月27日の臨時閣議で、一般会計規模で13兆9255億円に上る補正予算案を決定し国会に提出したことにさかのぼります。

現在、補正予算の見直し作業が進行中で、3100億円の地域医療再生基金のうち750億円は執行停止が決定され、今後さらに縮小される可能性もあると報道されています。

長野県では、10の二次医療圏(佐久・上小・諏訪・上伊那・飯伊・木曽・松本・大北・長野・北信)がありますが、今回、県医療審議会で、「地域医療再生計画」の交付対象となる医療圏として、上小と上伊那の2医療圏が選定され、今後、この2医療圏の「地域医療再生計画」に対し、25億円づつの交付が受けられる見込みとのことです。

上小と上伊那の2医療圏の医療環境が非常に厳しいことは分かりますが、県内の他の8医療圏もそれぞれ相当厳しい状況に置かれていることは間違いありません。どの医療圏も危機的状況に置かれ、必死にもちこたえているのが現状です。もしも、交付される補助金が一部の医療圏のハード面の整備に使われるだけなら、これが県全体の地域医療の再生につながっていくのかどうか疑問に感じます。

例えば、上小の医療再生計画には、上田市産院を長野病院の近くに新築移転する計画とか、東御市民病院に院内助産所を新設する計画とかが盛り込まれていますが、常識的に考えて、産科一次施設の整備に莫大な公的資金を投入し続けたとしても、もしも地域の基幹病院である長野病院の周産期医療提供体制が現状のまま放置されるのであれば、この計画が地域の周産期医療提供体制の再構築に寄与するのか疑問に感じます。また緊急の課題として、今現在の上小地域における多くの産科救急患者を受け入れている佐久総合病院や篠ノ井総合病院などの周辺医療圏の基幹病院が疲弊して、万が一、次々に機能不全に陥ったら、近い将来、上小だけでなくその周辺の医療圏の周産期医療提供体制も崩壊の危機に陥ってしまう可能性があります。現在ぎりぎりのところで何とかもちこたえて地域の周産期医療や救急医療を支えている医療機関にも、機能不全に陥らないための緊急避難的な救済措置が必要だと思います。

二次医療圏は全国で348ヵ所ありますが、各都道府県に2医療圏づつしか「地域医療再生計画」が認められないのはなぜでしょうか? 国の医療対策として地域医療を再生するために各都道府県に50億円づつの予算が計上されるのであれば、国内のすべての二次医療圏の地域医療の体制強化に寄与するような、もっと合理的な予算の使い方もあったのではないか?と疑問に感じます。

****** 東信ジャーナル、2009年10月15日

長野病院に研修医や指導医 信州大学と連携し安定医師派遣 上小医療圏22億4千万円 長野県上田市

 県は13日、地域医療の課題解決に取り組む医療圏を国が支援する「地域医療再生事業」に、上小(坂城町を含む)と上伊那の2医療圏の再生計画を国へ提出することを決めた。上小医療圏は、平成21~25年度の5年間で22・4億円の事業費を投じ、国立病院機構長野病院(上田市緑が丘)の機能回復や、周産期医療体制の整備を図る。

 上小医療圏は、ハイリスク分娩を取り扱っていた長野病院が平成20年8月から分娩を休止しており、ハイリスク分娩は他医療圏に依存せざるを得ない状況が続いている。また2次救急医療機関(輪番病院など)の負担が増しており、患者の受け入れに支障が出ているとする。

 計画では、信大と連携して長野病院に研修医や指導医の受け入れ体制を整備し、産婦人科医や麻酔科医など安定的な医師派遣につなげる。

 救急医療体制では、平日夜間に内科系の軽症患者を受け入れる成人初期救急センターを整備。同センターは当面は長野病院の敷地内にある小児初期救急センターと併設し、25年度までに新たな施設を整備する方向で検討する。成人初期救急センターの受け入れ患者数は平成25年度は約1300人を目標に掲げている。

 周産期医療体制の確立では、上田市産院の移転新築の建設費や、東御市民病院の院内助産所の設備費に充てる費用などを盛り、25年度の圏域内の受け入れ分娩数を20年度比23%増の1900件、このうち長野病院の分娩再開でハイリスクは約200件を目標にする。

 上小医療圏の再生計画は、上田地域広域連合の5市町村や上田市、小県、歯科の各医師会などと策定した。

 同事業は、政権交代後の見直し対象の補正予算に含まれていたが、県によると、厚生労働省は「各都道府県2カ所の再生計画は予定通り進めたい」と説明しているが、政府の最終決定には至っていないとしている。

(東信ジャーナル、2009年10月15日)

****** 伊那毎日新聞、2009年10月14日

地域医療再生事業 上伊那医療圏選定される 県医療審議会で了承

 地域医療の課題を解決するため、県が策定する事業を実施する「地域医療再生事業」に、上伊那医療圏が選定された。

 これは13日、長野県庁で開かれた県医療審議会で報告され、了承された。

 県内で厳しい医療環境にある上伊那と上小の2医療圏が選ばれた。

 審議会で示された計画によると、上伊那では伊那中央病院、昭和伊南総合病院、辰野総合病院の公立3病院で新たに「公立病院運営連携会議」を設立し、3病院の将来的な経営統合を見据えて、機能分担と連携のあり方を検討する。

 伊那中央病院は、第3次救命救急センターを担う病院と位置づけ、現在ある「地域医療センター」を一部拡充するほか、5年のうちに救命救急センターへの指定を目指す。

 昭和伊南総合病院は、「地域医療支援リハビリテーションセンター」を整備し、2次救急から回復期を担う病院に、辰野病院も2次救急から回復期を担う病院として体制を整備する方針。

 機能再生を推進するため、電子カルテなどによる診療情報を共有する地域連携ネットワークも整備するとしている。

 そのほか、伊那中央病院に「内視鏡トレーニングセンター」を整備し、全国からトレーニング医師を受け入れ、医師不足の解消につなげたい―としている。

 これらの事業は国から25億円の補助を受け、5ヶ年計画で実施される予定。

(伊那毎日新聞、2009年10月14日)


新型インフル: 13歳以上は1回接種の見通し(厚生労働省)、自治体は「寝耳に水」

2009年10月17日 | 新型インフルエンザ

10月16日に厚生労働省が開催した「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」において、国内で製造された新型インフルエンザワクチンの臨床試験の結果が報告され、13歳以上への新型インフルエンザワクチン接種回数を見直し、1回とする意見がま とめられたそうです。新型インフルエンザワクチンは当初、効果を得るためには2回の接種が必要とされていましたが、1回の接種でも効果があるとの結果が出たことで、数に限りがあるワクチンを大幅に節約でき、より多くの人に接種できる可能性が出てきました。厚生労働省は来週中にも接種の回数を正式に決めるそうです。

新型インフルエンザ: ワクチン接種を前に自治体悲鳴 「準備間に合わない」

新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** NHKニュース、2009年10月16日

国産ワクチン 接種1回で効果

 国内で製造された新型インフルエンザワクチンの臨床試験について、16日、中間報告がまとまり、2回必要だとされていた接種は1回でも十分に効果があることがわかりました。これによって、13歳未満の子どもを除いて接種は基本的に1回となる見通しで、当初の計画よりも多くの人に国産ワクチンが接種できる可能性が高くなりました。

 厚生労働省は、国内メーカーが製造したワクチンの効果などを確認するため、先月、健康な成人の男女200人を対象に臨床試験を行いました。中間報告は16日にまとまり、厚生労働省は1回の接種で十分に効果があることがわかったとして、ワクチンの専門家を集めた会議で報告しました。これを受けて、会議では、これまで2回必要だとしてきたワクチンの接種を、13歳未満の子どもを除いて1回とする意見をまとめました。一方、13歳以上でも感染すると重症になりやすい持病のある人で、医師が免疫がつきにくいと判断した患者は、2回目のワクチン接種を行うとしています。これによって、輸入ワクチンの対象となっていた中学生や高校生などにも国内産のワクチンを接種できる可能性が高くなり、厚生労働省は来週、接種の回数を正式に決めることにしています。

(NHKニュース、2009年10月16日)

****** 産経新聞、2009年10月17日

新型インフル: 1回接種、自治体は「寝耳に水」

 新型インフルエンザワクチンの接種開始を19日に控え、厚生労働省の専門家会議が従来の「2回接種」から「1回接種」に方針転換したことで、自治体や医療機関に混乱が広がっている。当初のスケジュールでも休日返上で準備に追われていたのに、1回接種となれば準備の態勢を変える必要があるからだ。厚労省は来週中にも接種回数を決定するが、関係者は「なぜ今ごろ」と不満を隠さない。

 厚労省が各自治体に具体的な供給計画を示したのが今月2日。開始まで2週間程度という厳しいスケジュールに自治体から不満の声が上がっていた。

 さらなる1回接種への方針転換で不満はピークに達している。「1回接種になれば対象者が広がり、周知の方法も変わる。寝耳に水だ」。千葉県の担当者は怒りをあらわにする。

 16日の専門家会議は1回接種でも効果は変わらないとし、これまで2回としていた接種回数を、13歳以上は基本的に1回ということで合意した。厚労省は「9月にできあがった国産ワクチンの接種試験の結果がこの時期になった。これ以上早くはできなかった」と弁明する。

 千葉県は医療従事者の接種が始まる19日の準備に追われている状態。「19日もやっとなのに…」と話すだけに、現段階で態勢を変更するのは容易ではない。11月中旬には医療従事者以外の妊婦や持病のある人の接種を始めなければならないが、接種可能な医療機関のリストがいつ公表できるのかも決まっていないという。

 約11万人が接種を受ける東京都。19日の接種開始は間に合わず、1週間ずれ込む事態となっている。

 「接種回数が変われば、各自治体への配布量が変わる。接種開始の作業が山場を迎えているこの時期に、なぜなのか」と悲鳴を上げる。

 1回接種について、医療関係者は「希望者が接種できる」と歓迎する一方、患者と接種希望者が同時に殺到する懸念もある。

 吉祥院こども診療所(京都市)の今井博之所長は「海外では早い段階で2回目のワクチンの効果は限定的との報告があった。国がこれまで調査してこなかったツケが回った」と指摘。すでに季節性ワクチンで予約が埋まっているといい、「小児は集団接種にするなど工夫がない限り、医療機関がパンクする」と危惧(きぐ)している。 【長島雅子】

(産経新聞、2009年10月17日)

****** 読売新聞、2009年10月17日

新型インフル、国産ワクチン1回接種

優先対象の13歳以上

 新型インフルエンザの国産ワクチンについて、厚生労働省は16日、これまで2回接種としていた方針を見直し、優先接種対象者のうち13歳以上は、原則1回接種とすることを決めた。

 専門家らの意見交換会が同日開かれ、健康な成人に実施した臨床試験の結果、1回の接種で有効性が確認されたとする報告があり、合意に至った。

 厚労省は来週にも接種計画を見直す。対象者のうち、優先順位が低かったグループの接種スケジュールが前倒しになるほか、輸入ワクチンを使用することが前提だった中高生などの接種対象者にも国産ワクチンが使える見込み。

 国産ワクチンの臨床試験は、9月17日から国立病院機構で、20歳以上の健康な成人を対象に実施。通常量のワクチンを接種した96人中72人(75%)で新型インフルに対する免疫物質(抗体)が増加した。

 一方、副作用は接種者全体のうち45・9%に見られ、多くは局所の腫れや痛みだったが、ショック症状など重い副作用が2人に出た。

 1回接種となるのは医療従事者のほか、▽妊婦▽持病のある人▽1歳未満の乳児の保護者▽13歳以上の中高生▽65歳以上の高齢者。

 持病のある人で免疫力が低下している人などは、主治医らの判断で2回接種できる方向で検討している。13歳未満の小児は、通常の季節性インフルエンザワクチンと同様、2回接種を維持する。

          ◇

 厚労省は16日、都道府県ごとの医療従事者への接種開始日を公表した。それによると、47都道府県のうち、大阪、京都、沖縄など23府県が19日に接種を開始。23道県は「19日の週」に、東京都は翌週の26日にそれぞれ開始する。

未成年8割以上、新規患者64万人

 国立感染症研究所は16日、全国約5000医療機関を対象にした定点調査で、今年7月上旬以降のインフルエンザ患者数が累計で、約234万人に上ったと公表した。また、10月5~11日の1週間の新規患者数は約64万人で、これを年代別で見ると、8割以上が未成年だった。内訳は0~4歳が約4万人、5~9歳が約16万人、10~14歳が約23万人、15~19歳が約10万人で、小中学生の世代で特に感染が広がっている。

(読売新聞、2009年10月17日)

****** 共同通信、2009年10月16日

国産ワクチン1回でも効果 新型インフル、臨床研究で より大勢に接種の可能性

 国内メーカーが製造した新型インフルエンザワクチンの有効性と安全性を確認する臨床研究の中間報告がまとまり、1回の接種でも免疫の指標となる抗体価の上昇がみられ、一定の効果が期待できることが分かった。厚生労働省が16日開催した専門家の意見交換会で報告された。

 新型インフルエンザワクチンは当初、効果を得るためには2回の接種が必要とされていたが、1回でも効果があるとの結果が出たことで、数に限りがあるワクチンを大幅に節約でき、より多くの人に接種できる可能性が出てきた。この日の会議では、健康な中高生以上について1回接種とする方向性が示された。これまで、海外メーカーが製造したワクチンでも同様の結果が報告されている。

 臨床研究は、先月中旬から国内4カ所の医療施設で実施。北里研究所(埼玉県北本市)が製造したワクチンを使って、健康な20~59歳の男女200人を対象に、3週間の間隔をあけて2回接種する。1回につき通常量の0・5ミリリットル接種するグループと、2倍の1ミリリットル接種するグループの2グループに分けた。

 中間報告では、2回目の接種前に採血し、抗体価の上がり方などを調べた。すると、採血できた194人のうち、0・5ミリリットル接種のグループでは96人中75人(78・1%)で、1ミリリットルのグループでは98人中86人(87・8%)で、免疫効果が期待できる抗体の保有が確認された。これらの数字は、国際的な評価基準に照らして「効果あり」と判断できるレベルだという。

 副作用は全体の45・9%にみられ、接種部位の発赤や腫れが多かった。このうち2人に、アレルギー反応であるアナフィラキシーなどの「高度の有害事象」が現れた。

 この結果を受け、厚労省は専門家の意見も踏まえて接種回数を決める方針。国産ワクチンは、来年3月までに2700万人分製造される見通しだが、これは2回接種を前提にした数字で、1回の接種で済めば単純計算で2倍の5400万人分になる。

(共同通信、2009年10月16日)

****** m3com医療維新、2009年10月16日

新型ワクチン接種、「13歳以上は1回」で専門家合意

厚労省が意見交換会を開催、決定は大臣が週明けに行う予定

村山みのり(m3.com編集部)

 10月16日、厚生労働省の「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」において、13歳以上への新型インフルエンザワクチン接種回数を見直し、1回とする意見がまとめられた。

 合意された方針では、(1)13歳未満の小児については2回接種(今後の臨床試験の結果により1回接種に見直す可能性あり)、(2)13歳以上18歳未満は1回接種(今後の臨床試験の結果により2回接種に見直す可能性あり)、(3)18歳以上は1回接種(妊婦、基礎疾患を持つ患者も含むが、これらの接種希望者については希望・主治医の判断により2回接種も可能)となる。この意見は長妻昭・厚生労働大臣へ報告され、来週初めに大臣の決定が発表される予定。

 意見交換会への列席者は厚労省担当者の他に、尾身茂氏(自治医科大学教授)、田代眞人氏(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長)、川名明彦氏(防衛医科大学教授)の3人。また庵原俊昭氏(国立病院機構三重病院長)と岡部信彦氏(国立感染症研究所感染症情報センター長)の2人が電話参加した。

 意見交換会では、9月17日から国立病院機構病院4施設で行われた、新型インフルエンザ国産ワクチンの免疫原性についての臨床試験の中間結果が報告された。対象者は200人の健康成人で、北里研究所製造のワクチンを通常量(15μg:皮下注射)と倍量(30μg:筋肉注射)接種した。

 1回目接種の3週間後、15μg1回接種群ではHI抗体価が40倍以上の人が96人中75人(78.1%)、30μg1回接種群ではHI抗体価が40倍以上の人が98人中86人(87.8%)だった。また、抗体価が4倍以上上昇し、HI抗体価が40倍以上の人の割合は、15μg1回接種群では96人中72人(75.0%)、30μg1回接種群では98人中86人(87.8%)。抗体価変化率は15μg1回接種群は14.5倍、30μg1回接種群は35.0倍だった。HI抗体価値の変化率が4倍以上の人の割合は、15μg1回接種群は83.3%、30μg1回接種群は93.9%だった。

 副反応は接種者全体のうち45.9%に見られた。H5N1ワクチンの66.1%に比べて低かったが、15μg皮下注群は58.8%と30μg筋注群33.3%に比べ、発赤、腫脹の頻度が高かった(手技の違いによる差)。高度の有害事象として、アナフィラキシー反応、中毒疹が各1例認められた。

 これらの結果から、治験調整医師は、(1)1回接種後の抗体保有率、抗体陽転率、抗体価変化率とも30μg接種群の方が優れているが、15μg接種群も30μg接種群も1回摂取でEMEAの評価基準(文末を参照)を満たす、(2)CSL(スプリット、アジュバントなし)のデータ、Novartis(スプリット、MF59入り)のデータと比較しても遜色はない(comparable)、(3) 15μg1回接種でEMEAの評価基準を満たすこと等を考慮すると、HAタンパク量15μg1回接種で効果的な免疫反応が期待できる、とコメントしている。

 また意見交換会の議論では、(1)米国やオーストラリアなどで、ワクチン接種は1回で効果があるとの報告がなされている(FDAのホームページ)、(2)先進諸外国では、新しい型のインフルエンザウイルスが出現しない限り、年少児を除いてほとんどの人がインフルエンザに対する基礎免疫を獲得しているため、1回の接種で追加免疫の効果があるとする考えが一般的である、(3)日本におけるインフルエンザワクチンの接種回数に関する近年の研究結果を検討し、65歳以上の高齢者については1回の接種で十分有効であるとの結論に至っている、といった点も考慮された。

 臨床試験は健康成人のみを対象としたものだが、田代氏は13歳以上18歳未満(中高生に該当する年代)への1回接種の効果について「1977年からAソ連型が流行しており、ほとんどの人がこれに暴露している。中学・高校生の年代もソ連型ウイルスにプライミングされており、成人と同様の抗体レスポンスが起こることが十分に予測される」と述べた。

 岡部氏はこれに同意しつつも、「1回で免疫は上がるだろうと思うが、もし時間があるのであればパイロット試験を行い、中学・高校生のデータを取った上で判断した方が確実ではないか」と慎重な対応を促した。この発言を受け、中学・高校生への接種開始が1月後半以降となる見込みであることから、厚労省側は1回接種を前提としつつ、小規模試験を行うことを了承した。

 妊婦については、「免疫状態が極めて異常であるということはなく、健康成人と同様に考えて良い」として1回接種で合意。基礎疾患を持つ人について、庵原氏は「喘息や糖尿病の患者と、白血病、抗がん剤使用者、HIV感染者など、著しい免疫不全患者は分けて考える必要がある」と指摘。免疫不全者は不活化ワクチンでは免疫が付きにくいため、アジュバント入りワクチンの使用も含め検討することが望ましいとした。ただし、今回はアジュバント入りの国外産ワクチンの輸入を待つと接種が遅れるため、まず国内産ワクチンを接種し、今後副反応などの観点も含めて検討する方針とされた。基礎疾患のある患者については医師の裁量でワクチンの2回接種も可能とされ、その具体的基準などについては今後Q&Aなどで示される予定。

 このほか、臨床試験において報告された有害事象がいずれも重篤であることから、詳細をさらに調べることなどが要望された。今回の議論は国産ワクチンに関するものであり、国外産ワクチンの接種回数については輸入・接種がなされる12月-1月頃改めて検討される。なお、ワクチンが1回接種となった場合の費用については、当初の2回接種の場合の1回目の料金3600円が据え置きとなる方針。

******

インフルエンザワクチンの有効性の国際的な評価基準
                                  参考:EMEA評価基準(HI抗体価)

・18-60歳 以下の3つのうち少なくとも一つを満たすこと

1) 抗体陽転率 「HI抗体価が接種前に<10倍かつ接種後40倍以上」または「HI抗体価の変化率が4倍以上の割合 >40%

2) 抗体変化率 幾何平均抗体価(GMT)の接種前後の増加倍率 >2.5倍

3) 抗体保有率 HI抗体価40倍以上の割合 >70%

・60歳以上 以下の3つのうち少なくとも一つを満たすこと

1) 抗体陽転率 「HI抗体価が接種前に<10倍かつ接種後40倍以上」または「HI抗体価の変化率が4倍以上の割合 >30%

2) 抗体変化率 幾何平均抗体価(GMT)の接種前後の増加倍率 >2倍

3) 抗体保有率 HI抗体価40倍以上の割合 >60%

(m3com医療維新、2009年10月16日)


上田市産院に副院長着任 常勤医2人体制に

2009年10月15日 | 地域周産期医療

上田市を中心とした「上小(じょうしょう)医療圏」(人口:約22万人、分娩件数:約1800件)は、長野県の東部に位置し、上田市、東御(とうみ)市、青木村、 長和町などで構成されています。

現在、同医療圏内で分娩に対応している産科一次施設は、上田市産院(上田市)、上田原レディース&マタニティークリニック(上田市)、角田産婦人科内科医院(上田市)などです。ハイリスク妊娠や異常分娩は、信州大付属病院(松本市)、県立こども病院(安曇野市)、佐久総合病院(佐久市)、長野赤十字病院(長野市)、篠ノ井総合病院(長野市)などに紹介されます。分娩経過中に母児が急変したような場合は、救急車で医療圏外の高次施設に母体搬送されています。

産科二次医療が存在しない地域では、産科一次施設での分娩の取り扱いの継続が次第に困難となってゆくことが予想されます。また、産婦人科の二次医療を提供する研修施設が存在しなければ、産婦人科志望の若手医師を集めることもできません。

将来的に多くの若手医師が集まってくるように、医療提供体制を根本的に変革していく必要があります。『今この地域で最も必要とされているものは何なのか?』について、もう一度根本からよく検討し、医療圏全体で一体となって、地域の周産期医療提供体制を再構築するための第一歩を踏み出していく必要があると思われます。

****** 信濃毎日新聞、2009年10月14日

常勤医2人体制に 上田市産院に副院長着任

 上田市産院(常磐城5)に村田昌功(まさのり)医師(49)が常勤の副院長として着任し、13日、記者会見した。産院は常勤2人、非常勤2人となる。常勤医が2人となるのは、2007年12月以来。村田副院長は市医療政策参事として、産科を中心とした医療体制充実のための市の政策立案にも携わる。

 村田副院長は秋田大を卒業後、秋田市立総合病院などに勤務。07年12月、医師不足で産科を休止していた沖縄県名護市の県立北部病院の産婦人科部長となり、出産受け付け再開に向け、医師確保などに尽力したという。

 上田市には、全国自治体病院協議会の紹介で着任。村田副院長は会見で、国の政策で医師が増えるようになるまで今後5年、10年とかかるとし「国立病院機構長野病院や信大、医師会などと連携を深めながら、沖縄での経験も生かし、まず医師や助産師、看護師確保に努めたい」と抱負を語った。

 上田市産院では前院長が07年末で退職。以降は常勤1人、非常勤2~3人の体制で、出産数(新生児数)は、ピークの06年度には688人だったが、08年度は479人にまで減っている。

(信濃毎日新聞、2009年10月14日)

***** 東信ジャーナル、2009年10月14日

上田市産院へ常勤産科医が着任 村田昌功医師(49)

「県内外の即戦力の医師を集めたい」

 上田市は13日、上田市産院へ9日付で常勤産科医が着任したと発表した。

 着任したのは、村田昌功医師(49)。上田市には、全国自治体病院協議会を通して紹介があった。

 村田医師は、大阪府豊中市出身で秋田大大学院博士課程修了。同大医学部の文部教官(助手)として勤めた後、市立秋田総合病院・産婦人科医長や沖縄県立北部病院・産科部長として勤務した。前任地の沖縄県立北部病院では閉鎖していた産婦人科の立て直しに尽力し、2年間で閉鎖前の状態に回復させたという。

 産院では副院長として勤務するとともに、市の政策企画局医療政策参事として市産院の建て替え計画や地域医療政策へかかわる。村田医師は「医療の政策にもタッチできないか、効率的な医療資源の活用ができるような仕事に携われないかという条件で(全国自治体病院協議会に)問い合わせたところ、複数の自治体からオファーがあった。(上田市に)情熱を感じ、これ以上適した自治体、病院はないと判断した」とし、「5~10年は医師不足の状態が続く。県内外の即戦力の医師を集めたい」と話した。

 母袋創一市長は「産院の医療体制を含めて地域周産期医療の問題はまだまだ多いが、村田先生の招へいで一筋の光明が射してきた。地域全体の医療の底上げ、充実に全力で取り組んでいきたい」と話した。

 村田医師の着任で市産院は常勤医2人、非常勤医2人、助産師は常勤4人、パート3人、看護師は常勤11人、パート2人の体制になった。

(東信ジャーナル、2009年10月14日)


新型インフルエンザ: ワクチン接種を前に自治体悲鳴 「準備間に合わない」

2009年10月10日 | 新型インフルエンザ

10月19日の週から医療従事者への新型インフルエンザのワクチン接種が始まり、11月第1週より妊婦と基礎疾患がある人への接種が始まります。

接種費用は実費負担となり、1回目の接種は3600円、2回目の接種は2550円(ただし、2回目を異なる医療機関で接種を受けた場合は、基本的な健康状態等の確認が再度必要となるため3600円)です。

季節性インフルエンザのワクチンは今回の新型インフルエンザウイルスに対しては有効ではないと考えられています。

これまでの季節性インフルエンザワクチンでは、2回接種した成績によりますと、2回目の接種1~2週後に抗体が上昇し始め、1カ月後までにはピークに達し、3~4カ月後には徐々に低下傾向を示します。したがって、ワクチンの予防効果が期待できるのは接種後2週から5カ月程度と考えられており、新型インフルエンザワクチンでも同程度と考えられます。

インフルエンザワクチンは妊婦に対して特別に重篤な副作用は起こらないと考えられ、一般的に妊娠中の全ての時期において接種可能であるとされています。今回の新型インフルエンザワクチンでは、プレフィルドシリンジ製剤(あらかじめ注射器に注射液が充てんされている製剤)には保存剤の添加は行われておらず、保存剤の添加されていないワクチン接種を希望する妊婦はプレフィルドシリンジ製剤が使用できることになってます。

新型インフルエンザの患者は急増中で11月にも流行のピークを迎えるとの予測があり、ワクチン接種が間に合わない可能性もあります。妊婦は基礎疾患がある患者と同等以上に重症化ハイリスク群と考えられますので、周囲の状況や患者症状からインフルエンザが疑われる場合には簡易検査結果いかんにかかわらず同意後、躊躇なくタミフルを投与することが推奨されてます。

新型インフルエンザワクチンQ&A (厚生労働省)

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ対応のQ&A (日本産科婦人科学会)

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新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 共同通信、2009年10月10日

ワクチン接種を前に自治体悲鳴

「準備間に合わない」

 新型インフルエンザワクチンの接種開始を前に、地方自治体が態勢整備に追われている。2日に国の基本方針が示されてから19日のスタートまでわずか2週間あまり。準備が間に合わず、実施を遅らせる地域も出てきそうだ。

 「国からの情報があまりに少なく、決まっていないことが多すぎる」。千葉県の担当者は頭を抱える。県の相談窓口には1日300~400件の電話が殺到。3分の1はワクチンに関する問い合わせだ。

 「どこで」「いつから」との質問が一番多いが「われわれにもまったく分からない」(担当者)。

 厚生労働省が示した標準的なスケジュールでは、19日以降、医療従事者を皮切りに順次、優先対象者への接種を始める。しかし、県側は接種を行う医療機関の取りまとめや対象者の人数把握、卸業者との納入量の調整などの膨大な作業に追われており、日程通り実施するのは難しいという。

 「県民の不安を取り除くために、早く具体的な日程を示したい」。開始までに、住民に情報を周知できるかどうかも大きな課題だ。

 「段取りを現場に丸投げするなら、もっと時間的な余裕がほしい」とぼやくのは大阪府の担当者。大阪府内で接種を行う医療機関は5千以上になる見込み。「すべての医療機関が一斉に始めるのは無理」といい、準備が整ったところから順次スタートする。

 ワクチン接種が1回で有効なのか、2回必要なのかについても国の最終判断はまだ示されていない。スケジュールが確定しない中、現場の医療機関にも混乱が広がっている。

(共同通信、2009年10月10日)

****** 毎日新聞、2009年10月10日

インフルエンザ:患者最多に 

前週の1.5倍、新たに33万人

 厚生労働省は9日、約5000カ所の定点医療機関を9月28日~10月4日に受診した患者数が、前週(9月21~27日)の約1・5倍の6・40だったと発表した。今シーズン最多で、大半が新型インフルエンザ感染とみられる。この1週間の新たな患者は33万人で5~14歳が過半数の18万人を占めると推計している。

 定点1施設当たりの患者数は、大型連休があった前週に4・25と減少し、流行の拡大に歯止めがかかることが期待されたが、再び増加に転じた。昨冬の季節性インフルエンザに当てはめると、患者数が6を超えた4週間後が流行のピークになっており、今回は11月にピークを迎える可能性がある。

 都道府県別では▽北海道(1施設当たり16・99)▽福岡(同13・41)▽沖縄(同10・47)▽愛知(同10・39)の4道県で、1カ月以内に大流行の恐れがあるとされる「注意報レベル」の10を超えた。東京(9・60)、大阪(8・54)も高い水準のままで、厚労省は「大都市から流行が本格化している」と分析している。 【清水健二】

(毎日新聞、2009年10月10日)

****** 毎日新聞、2009年10月9日

新型インフルエンザ:ワクチン初出荷

 新型インフルエンザの国産ワクチンの出荷が9日始まった。初回出荷は59万人分。19日から医療従事者を対象に予防接種が始まる。

 国内では4社がワクチンを製造中で、この日出荷したのは、北里研究所(埼玉県北本市)▽化学及血清療法研究所(熊本市)▽デンカ生研(東京都中央区)--の3社。阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)のワクチンは20日の初出荷を予定している。国産ワクチンは年度内に約2700万人分を製造。接種対象者約5400万人の不足分を補う海外メーカーのワクチンは12月下旬にも輸入が始まる。

 北里研究所生物製剤研究所では、所内の工場で製造され5度に保たれた冷蔵庫で貯蔵されていたワクチンをトラックで初出荷。この日は計約9万4000人分(約18万8000回分)を大阪府や埼玉県の薬品販売会社に届ける。【清水健二、平川昌範】

(毎日新聞、2009年10月9日)

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザのQ&A

今回(平成21年9月28日)改定の要旨

① 新生児の厳重観察内容と異常が出現した場合の対応を加えたこと
② 予防投与について記述をまとめて、かつ投与日数10日間を明記したこと

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (一般の方対象)

         平成21年9月28日(6版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1:妊婦は肺炎などを合併しやすく、基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなりました。

Q2: 妊婦が新型インフルエンザワクチンを受けても大丈夫でしょうか?
A2: 安全かつ有効であると考えられています。季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されています。米国では毎年、約60万人の妊婦さんが季節性インフルエンザワクチン接種を受けていますが、大きな問題は起こっておりません。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの赤ちゃんについても有害事象は観察されていません。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられています。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと世界保健機構(WHO)も考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨しています。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことにつながります(妊娠中にワクチンを受けると出生した赤ちゃんも数ヶ月間インフルエンザになりにくいことが証明されています)。

ワクチンの安全性に関しては以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q3:妊婦にインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳)が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A3:インフルエンザであった場合、症状発現後48時間以内の抗インフルエンザ薬(タミフル)服用開始が重症化防止に最も効果があります。予め医療機関に電話をして早期に受診し、タミフルによる治療を受けます。この際、他の健康な妊婦や褥婦への感染を予防するために、かかりつけ産婦人科医を直接受診することは極力避け、地域の一般病院受診をお勧めします。あらかじめ受診する病院を決めておくと安心です。もし、一般病院での受診が困難な場合には、かかりつけ産婦人科医が対応します。この際にも事前に電話をして受診します。これは他の妊婦への接触を避けるために非常に重要な注意点になります。当然ですが、産科的問題(切迫流早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。いずれの病院へ受診する際にもマスク着用での受診をお勧めします。これは他の健康な方に感染させないための重要なエチケットとなります。 新型インフルエンザであっても簡易検査ではしばしばA型陰性の結果が出ることに注意が必要です。周囲の状況(その地域で新型インフルエンザが流行しているなど)から新型インフルエンザが疑われる場合には、簡易検査結果いかんにかかわらずタミフルの服用をお勧めします。妊婦は基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなったために、このようなお勧めをしています。

Q4: 妊婦の新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4: ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル、75mg錠を1日2回、5日間)を服用するよう、お勧めします。

Q5: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)服用(予防目的)をお勧めします。ただし、予防される期間は予防薬を服用している期間に限られます。また、予防効果は100%ではありませんので予防的に服用している間であっても発熱が有った場合には受診することをお勧めします。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の安全性については以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q7: 抗インフルエンザ薬 (タミフル、リレンザ) の予防投与 (インフルエンザ発症前) と治療投与 (インフルエンザ発症後) で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)10日間
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)10日間
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)5日間

Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q9: 母親が感染した場合、新生児・乳児への注意点は?
A9: 児への感染が心配されます。児の観察をしっかり行い、発症の早期発見に努めます。児が感染した場合の症状は「活気がない、母乳・ミルクの飲みが悪い、呼吸回数が多くて苦しそうだ、呼吸が止まったように見受けられる時がある、発熱がある、咳・鼻水・鼻閉がある、少しの刺激にも過敏に反応する」などですので、これらの有無に注意します。もし、これらのいずれかが出現した場合には、タミフルの早期投与開始が重症化防止に奏功する可能性があるので、できるだけ早く小児科医を受診します。児が未感染の場合、無防備な児への接触は児への感染危険を高めますので、児のケアや観察時には次Q&Aを順守します。

Q10: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A10: 母乳を介した新型インフルエンザ感染は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することができます。ただし、児と接触する前に手をよく洗い、清潔な服に着替えて(あるいはガウンを着用し)、マスクを着用します。また、接触中は咳をしないよう努力することをお勧めします。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能なかぎり別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えることをお勧めします。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる可能性は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられていますので通常に近い母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日
         5版 平成21年9月7日
         6版 平成21年9月28日

******

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (医療関係者対象)

         平成21年9月28日(6版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊婦は非妊婦に比して、新型インフルエンザに罹患した場合、重症化しやすいのでしょうか?
A1:妊婦は重症化しやすく、また死亡率が高いことが強く示唆されています。

Q2: 妊婦への新型インフルエンザワクチン投与の際、どのような説明が必要でしょうか?
A2: 季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されている。米国では季節性インフルエンザワクチンは毎年、約60万人の妊婦に接種されている。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの児についても有害事象は観察されていない。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられている。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと考えられている。WHOも同様に考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨している。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことである。以上のようなことを説明し、ワクチン接種の必要性について理解して頂きます。

ワクチンの安全性に関しては以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q3: インフルエンザ様症状が出現した場合の対応については?
A3: 発熱があり、周囲の状況からインフルエンザが疑われる場合には、「できるだけ早い(可能であれば、症状出現後48時間以内)タミフル服用開始が重症化防止に有効である」ことを伝えます。受診する病院に関しては、あらかじめ決めておくよう指導します。妊婦から妊婦への感染防止という観点から妊婦が多数いる場所(例えば産科診療施設)への直接受診は避けるよう指導します。これはあくまでも感染妊婦と健康な妊婦や褥婦との接触を避ける意味であり、「接触が避けられる環境」下での産科施設での感染妊婦の診療は差し支えありません。妊婦には一般病院を受診する際にも事前に電話するよう指導します。また、マスク着用の上、受診することを勧めます。一般病院へのアクセスが種々の理由により時間がかかる、あるいは困難と判断された場合にはかかりつけ産婦人科医が対応します。当然ですが、産科的問題(切迫流・早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。ただし、院内感染防止対策に関しては最大限の努力を払い、感染妊婦と職員あるいは健康な妊婦・褥婦間に濃厚接触があったと考えられる場合は、濃厚接触者に対して速やかにタミフル、あるいはリレンザの予防投与を考慮します。
A型インフルエンザ感染が確認されたら、ただちにタミフルを投与します。妊婦には、「発症後48時間以内のタミフル服用開始(確認検査結果を待たず)が重症化防止に重要」と伝えます。新型インフルエンザであっても簡易検査でしばしばA型陰性の結果となることに注意が必要です。基礎疾患があり、インフルエンザが疑われる患者には簡易検査の結果いかんにかかわらずタミフルを投与すべきとの意見もあります。妊婦は基礎疾患がある患者と同等以上に重症化ハイリスク群と考えられていますので、周囲の状況や患者症状からインフルエンザが疑われる場合には簡易検査結果いかんにかかわらず同意後、躊躇なくタミフルを投与します。

Q4: インフルエンザ重症例とはどういう症例をさすのでしょうか?
A4: 肺炎を合併し、動脈血酸素化が不十分な状態になった場合、人工呼吸器が必要となりますので、それらに対応できる病院への搬送が必要となります。したがって、呼吸状態について常に注意を払う必要があります。また、若年者ではインフルエンザ脳症(言動におかしな点が出て来ます)や心筋炎もあり、これらも重症例です。

Q5: 妊婦が新型インフルエンザ患者と濃厚接触した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的投与(10日間)を行います。予防投与は感染危険を減少させますが、完全に予防するとはかぎりません。また、予防される期間は服用している期間に限られます。予防的服用をしている妊婦であっても発熱があった場合には受診するよう勧めます。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)は胎児に大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

抗インフルエンザ薬 (タミフル、リレンザ)の安全性については以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q7: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、本邦妊婦の場合にも同様な投与方法が推奨されます。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)10日間
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)10日間
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)5日間

Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q9: 分娩前後に発症した場合は?
A9: タミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療をただちに開始します。また、母親が分娩前7日以内あるいは分娩後に発症した場合、母児は可能なかぎり別室とし、児も感染している可能性があるので、厳重に経過観察します。児が感染した場合、想定される症状としては「活気不良、哺乳不良、多呼吸・酸素飽和度の低下などの呼吸障害、無呼吸発作、発熱、咳・鼻汁・鼻閉などの上気道症状、易刺激性」があるので、これらの有無に注意します。これらが出現した場合には直ちに簡易検査を行いますが、感染初期には陰性と出やすいので、陰性であっても症状の推移に十分注意し、必要に応じて小児科医(新生児担当小児科医)に相談・紹介あるいはタミフル投与(治療投与:4mg/kg 分2×5日間)を考慮します。一般にタミフルの副作用は下痢と嘔吐とされているが、新生児でのデータはありません。

児から児への感染予防のための隔離法や母児同室の場合の注意点については日本産婦人科医会ホームページに公開されている対応法を参考にします。あわせて、日本小児科学会ホームページの新型インフルエンザ関連情報 も参考にします。

Q10: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A10: 母乳を介した新型インフルエンザ感染は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することを母親に勧めます。ただし、児と接触する前の手洗い、清潔な服への着替え(あるいはガウン着用)、マスク着用の励行を指導します。また、接触中は咳をしないよう努力することを指導します。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えるよう指導します。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる危険は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられているので、通常に近い母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日
         5版 平成21年9月7日
         6版 平成21年9月28日


出産時に世界全体で年間200万人の母子が死亡 米研究グループが報告書

2009年10月09日 | 出産・育児

ヒトの出産では、母児が一定の頻度で死亡するのは避けられませんし、いろいろな原因で児に脳性まひが一定の頻度で発生するのも避けられません。しかし、母児の死亡率や脳性まひの発生頻度を少しでも減らすために、周産期医療関係者は日夜努力してます。

母体死亡、死産などの母児のリスクは、分娩時に集中します。分娩のほとんどは正常に経過しますが、ひとたび分娩時に母児の異常が発生した場合は、助産師、産婦人科医、小児科医、麻酔科医などが一致協力して、迅速かつ適切に対応する必要があります。

分娩経過中に母児の状態が急変した場合には、異常発生後30分以内に児を娩出できる周産期医療体制が必要です。異常が発生してから、救急車を呼んで、どこの病院が受け入れてくれるかなかなか決まらず大騒ぎしているようでは、絶対に間に合う筈がありません。

分娩は、女性の長い一生の中でたった1回か2回かのイベントです。輝かしい新しい人生の出発点であるはずです。そこでむざむざ命を落としていたんでは、夢に描いていたその後の人生が全くなくなってしまいます。ですから、いざという時には迅速かつ適切に母児の異常に対応できるような分娩環境を選択すべきだと思います。より安全な分娩環境を選択することは、これから生まれてくる赤ちゃんに対する親としての責任でもあります。もしも自分が居住する地域にそのような周産期医療体制が整備されてなければ、分娩時に妊婦さん自身が周産期医療体制の整備された地域に出向いて、より安全な分娩環境を選択できるようにした方が得策だと思います。

****** 共同通信、2009年10月8日

出産時に世界全体で年間200万人の母子が死亡 

米研究グループが報告書

【要約】 米ジョンズ・ホプキンス大などの研究グループがまとめた報告書によると、年平均の死産数は約102万人、出産直後に死亡する母子は90万4000人。また出産時に死亡する母親は約53万6000人で、このうち約42%が出産中に死亡しており、アフリカと南アジアが母子の全死者数の4分の3を占めているという。報告書は、こうした死亡例の多くは基本的な衛生管理、帝王切開など救急治療を行う医師の訓練などで防止できると述べている。しかし一方では、貧困がこうした死亡を招く主因の1つであり、富裕国ではほとんどの母親が経験のある医師や助産婦の立ち会いの下で出産しているが、貧困国ではそうした例は少ない。またほとんどの母子死亡例は医師や看護師が少ない都会から離れた農村部で発生しており、世界全体の年平均1億3600万人の新生児のうち6000万人は病院などの医療施設がない場所で出産しているという。

(共同通信、2009年10月8日)


2010年度の県内臨床研修指定病院

2009年10月08日 | 地域医療

信州大学医学部附属病院 58人
県厚生連佐久総合病院 15人
相澤病院 12人
長野赤十字病院 9人
飯田市立病院 6人
諏訪赤十字病院 6人
県厚生連長野松代総合病院 6人
諏訪中央病院 4人
長野市民病院 4人
長野中央病院 4人
県厚生連小諸厚生総合病院 3人
県厚生連篠ノ井総合病院 3人
県厚生連安曇総合病院 2人
安曇野赤十字病院 2人
伊那中央病院 2人
県厚生連富士見高原病院 2人
県厚生連北信総合病院 2人
県立須坂病院 2人
国立病院機構長野病院 2人
佐久市立国保浅間総合病院 2人
市立岡谷病院 2人
波田総合病院 2人

計 150人

****** 医療タイムス、長野、2009年10月7日

6病院が指定取り消し 10年度の県内臨床研修指定病院

 県内の2010年度の臨床研修指定病院は、前年度より6少ない22病院となることが、厚生労働省のまとめで分かった。臨床研修制度開始から5年が経過したことに伴う見直しで国は、過去3年間マッチ者がゼロだった病院について、当核病院が主体となる「基幹型臨床研修病院」を取り消す方針を示していた。

 今回、指定を取り消されたのは、国立病院機構まつもと医療センター松本、昭和伊南総合、飯山赤十字、県立木曾、県立こども、市立大町総合の6病院。いずれも過去3年間でマッチ者がゼロだった。

 ただ、6病院とも信大病院の協力型臨床研修病院にはなっている。

 一方、指定病院は、県厚生連佐久総合、国立病院機構長野、諏訪赤十字、飯田市立、信大、長野赤十字、県厚生連北信総合、相澤、県厚生連小諸厚生総合、県厚生連篠ノ井総合、長野中央、諏訪中央、県厚生連長野松代総合、県厚生連安曇総合、長野市民、安曇野赤十字、佐久市立国保浅間総合、市立岡谷、波田総合、県厚生連富士見高原、伊那中央、県立須坂の各病院。

 マッチングスケジュールは9日に中間発表を行い、22日に希望順位登録最終締め切り。29日に最終結果が発表される。

(医療タイムス、長野、2009年10月7日)

****** 信濃毎日新聞、2009年10月8日

大町病院存続、医師が市民に呼び掛け

 医師不足から経営難に陥っている大町市立大町総合病院の現状を知り、地域を挙げて存続に立ち上がろうと、同病院の医師が市民への呼び掛けを始めた。今後、同病院とともに、市民との対話集会を開く予定だ。

 呼び掛けを始めたのは同病院外科科長の高木哲さん(42)。市内のホテルで3日に開かれた同病院の「健康づくりセミナー」では、がん予防の講話を前半で切り上げ、後半は病院の医師不足の現状などをスクリーンに映し出して説明。「署名を集め、県や大学などに医師派遣を訴えることも必要」と訴えた。

(信濃毎日新聞、2009年10月8日)

****** 信濃毎日新聞、2009年10月7日

勤務医らの率直な声 県立木曽病院で意見交換会

 木曽広域連合議会福祉環境委員会は5日夜、木曽郡内唯一の病院である県立木曽病院(木曽町福島)存続のための課題を探ろうと、病院側との意見交換会を同病院で開いた=写真。医師不足などについて医師らの率直な声が聞かれた。

 広域連合側は、委員長の深沢衿子・木祖村議ら議員に加え、副連合長の瀬戸普・王滝村長らも出席。病院側は、久米田茂喜院長ら約20人が出席した。

 医師不足については、医師から「都市部から離れていると研修に行くのも難しく、若い医師は敬遠する」との声や「若い医師は田舎に来たがらない。昔のように半強制的に派遣するシステムにしないと駄目だ」との指摘が出た。

 一方で、「木曽に行けと言われたとき、正直『えっ』と思ったが、内視鏡など大学病院と遜色(そんしょく)ない医療機器がそろっていた」「都市部の病院とは診察する疾患も異なり、勉強になる」などの意見もあった。

 入院患者もいるため外来に対応する時間が限られる-といった病院側の事情や医療の実態に対する理解を深めてほしいとの訴えも。医師不足の背景を探るには大学に出向いて研修医たちの声も聞くべきだとの提案もあった。

 広域連合によると、意見交換会は2006年から続けており、4年目。深沢委員長は「ざっくばらんな話が聞けて良かった」と話していた。

(信濃毎日新聞、2009年10月7日)

****** 中日新聞、長野、2009年10月7日

木曽病院の経営で議論 独立行政法人化控え

 来年4月から県立病院が地方独立行政法人化するのを前に、木曽広域連合議会福祉常任委員会は5日、木曽町の木曽病院で病院医師らと意見交換会をした。医師からは「人手が足りず医師も看護師も疲弊している」といった声や、時間外診療の態勢が整わない中で高度な治療を求める患者に、病院の実情を知った上での配慮を求める意見も上がった。

 現場で働く医師の率直な意見を聞き、今後の対策に反映させようと、今年で4回目。委員の各町村議や病院関係者ら約40人が参加した。

 久米田茂喜院長が慢性的な医師不足が続く現状に「このままでは病棟閉鎖もいずれ考えなければならない」と危機感をあらわにしたのをはじめ、病院関係者からは、診療時間外に訪れ「早くみて」と不平を言う患者の例を報告。「利用者が病院の現状をあまり知らないのでは」とし、「安い料金で高いサービスが受けられる今の状態は長く続かない」との厳しい見方も出た。

 同常任委員会の深沢衿子委員長は「住民への説明会などを通し、木曽病院の実情を把握してもらいたい」と話した。 【市川泰之】

(中日新聞、長野、2009年10月7日)


子宮頸がん予防ワクチン承認決定、国内初

2009年10月03日 | 婦人科腫瘍

近年、子宮頸がんの原因のほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスであることが分かってきました。 このウイルスに感染しても多くの場合は、免疫力によってウイルスが体内から排除されますが、何らかの理由によりウイルスが持続感染した場合、長い年月(ウイルス感染から平均で約10 年以上)をかけ、子宮頸がんへと進行する危険性があります。

子宮頚がんの原因がウイルスだとわかり、子宮頚がん予防ワクチンが開発されました。2006年6月に米国で初めて承認されて以降、欧米や豪州、カナダなど世界100カ国以上ですでに使われています。ワクチンによる予防手段があるため、子宮頸がんは予防できる唯一のがんと言われています。間もなく、子宮頸がん予防ワクチンが日本でも使用できるようになる見込みです。

多くの国では、12歳を中心に9~14歳で接種が開始され、学校や医療機関で接種が行われています。ワクチンは3回の接種が必要で、全額自己負担だと3~4万円かかります。欧州や豪州、カナダなど26カ国では全額公費負担または補助が行われていて、接種率が9割に上る国もあります。厚生労働省は接種費用をどうするのかまだ決めてません。

子宮頸がん予防ワクチンを接種するのは、次世代の子宮頸がん発生率を減らすための対策です。すでにがん年齢に達している世代の人の場合は、子宮頸がん検診(細胞診検査)を定期的に受診する必要があります。

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****** 産経新聞、2009年9月28日

子宮頸がん抑止に本腰 厚労省、ワクチン承認へ

国内で年間約3500人の女性の死因となっている子宮頸がんを予防するワクチンが、29日に開かれる厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の薬事分科会で承認される見通しとなった。頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因。感染前のワクチン接種によって、頸がんの原因の約7割を占めるHPVの感染予防が期待できる。女性にとっては朗報であると同時に、接種開始年齢や費用など解決すべき課題も多い。【長島雅子】

(以下略)

(産経新聞、2009年9月28日)


新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

2009年10月02日 | 新型インフルエンザ

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 中日新聞、2009年10月2日

新型インフルエンザ:10月中旬からワクチン接種 2回で一律6150円

 政府の新型インフルエンザ対策本部は1日、ワクチン接種の基本方針を決定した。10月中旬から医療従事者や妊婦、基礎疾患(持病)がある人ら約5400万人を対象に順次接種する。費用は接種2回で全国一律6150円とし、国と地方自治体が分担して生活保護世帯を無料とするなどの負担軽減策を取る。

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 ワクチンは5000万人分の輸入を含め来年3月までに計7700万人分を確保する方針。

 接種対象で優先されるのは、医療従事者▽妊婦と基礎疾患(持病)がある人▽1歳~小学3年までの子ども▽1歳未満の乳児の保護者と、優先対象だがアレルギーなどで接種を受けられない人の保護者-の順。小学4~6年生、中高校生、持病のない65歳以上の高齢者も優先する。

 国産ワクチンは19日の週から接種を開始。輸入ワクチンは12月末~1月に輸入が始まる。妊婦らの最優先対象者は国産ワクチン、次に優先する小学高学年、中高生、持病のない高齢者らには輸入ワクチンの接種も想定されている。

 希望者は、都道府県ごとに決める接種時期や日程に従って医療機関などで2回接種する。費用は1回目が3600円、2回目が2550円となる。

 副作用被害の救済制度の拡充や、輸入ワクチンの副作用被害で訴訟が起きた場合、メーカー側の訴訟費用や賠償金を国が肩代わりする内容の特別立法を臨時国会に提出する。

(中日新聞、2009年10月2日)

****** 読売新聞、2009年10月2日

ワクチン接種、19日から…大半は年明け

 政府の新型インフルエンザ対策本部(本部長=鳩山首相)は1日、ワクチン接種に関する基本方針を正式決定した。接種は10月19日の週から始める。医療従事者と重症化の危険性が高い人など計5400万人に順次接種していくが、児童・生徒や高齢者など大半の対象者は年明けの接種になり、流行のピークに間に合わない恐れもある。

 基本方針では、接種目的として感染者の重症化を防ぎ、医療体制を維持することを明示した。接種するかどうかは対象者自身が決め、接種費用(2回接種で計6150円)は自己負担となる。生活保護世帯を含む市町村民税非課税世帯は、無料にする。

 ワクチンは来年3月までに1385億円をかけ、国産2700万人分と海外産4950万人分(計7650万人分)を確保する。

 副作用が起きた人に対して行う救済措置は、季節性インフルエンザワクチンの定期接種と同等にする新たな制度を作る。また、海外ワクチンメーカーが副作用の免責を求めているため、副作用被害者が企業を相手取って訴訟を起こした場合、企業側の訴訟費用や賠償金を政府が肩代わりする制度創設に向け、特別措置法案を今秋の臨時国会に提出する方針だ。

 ワクチンは、優先順位に従って接種。医療従事者や妊婦など優先接種対象者には国産を、健康な児童・生徒と高齢者は来年1月から海外産を接種する。小学校低学年については重症化する症例が多いため、優先接種対象者に組み入れた。

 厚生労働省は今後、全国の各医療機関と接種に関する委託契約を結び、10月中旬までに医療機関名を公表する。対象者は予約をした上で接種するが、医師が保健所などに赴く形での集団接種もできるようにする。

(読売新聞、2009年10月2日)

****** 毎日新聞、2009年10月2日

新型インフルエンザ:ワクチン2回で6150円--接種19日から

 政府は1日、政権交代後初の新型インフルエンザ対策本部(本部長、鳩山由紀夫首相)の会合を開き、ワクチン接種の基本方針を決めた。19日をめどに接種を始め、(1)医療従事者(2)妊婦と基礎疾患のある人(3)1歳~小学校低学年(4)1歳未満の小児らの保護者(5)小学校高学年~高校生と高齢者--の順に進める。同じ医療機関で2回打った場合、接種費用は計6150円になる。

 9月上旬の厚生労働省案では、小学校低学年の接種順位は最後のグループだったが、10歳未満の小児の入院が多いことなどから引き上げた。優先対象の合計は約5400万人で、(1)~(4)の約2300万人は原則的に国産ワクチンを使う。(5)の約3100万人には輸入ワクチンも使う。

 費用は全国一律で1回3600円。2回目は同じ医療機関ならば初診料分が減額されて2550円になる。住民税非課税世帯の優先接種対象者は、65歳以上が対象の季節性インフルエンザワクチンの定期接種と同様に、無料で受けられる。対象者全体の3割弱が無料になるという。

 政府は年度内に必要な新型インフルエンザ対策費を3000億~4000億円と推計。うち約1380億円はワクチン買い上げ費で、低所得者の接種費用の公費負担は約900億円を見込む。公費負担は国が2分の1、都道府県と市町村が4分の1ずつだが、自治体負担分の約450億円は特別交付税を交付する。【清水健二、江口一】

(毎日新聞、2009年10月2日)

****** 毎日新聞、2009年10月2日

新型インフルエンザ:ワクチン接種、妊婦は来月から 優先対象、基礎疾患は八つ

 政府の新型インフルエンザ対策本部の基本方針を基に決定されたワクチン接種のスケジュール。医療従事者を除いた優先接種対象者のうち、妊婦など最も優先度が高い人たちは、11月から接種が始まることになった。年度内には全優先接種対象者(約5400万人)への接種を終える方針だ。【江口一、清水健二】

 優先接種対象となる基礎疾患(持病)について、厚生労働省は慢性の呼吸器病や心臓病など八つを示した。当初は供給量が限られるため、小児を含め、中でも最優先とする患者の基準を設定。この人たちは11月に接種を始め、それ以外の患者は12月以降接種予定とした。

 接種対象の1歳~小学3年生までのうち、アレルギーなどがあって接種できない子の保護者らも新たに優先接種対象となり、1歳未満の保護者と併せて来年1月以降接種する。

 対象者かどうかは医師が判断し、接種は基本的にかかりつけの医療機関で予約して受ける。しかし自治体の方針などによっては接種対象者の証明書を発行してもらい、別の医療機関や保健所などで接種することもある。

 スケジュールは、対象者に4週間間隔で2回接種することを前提としている。しかし、海外では「健康な成人には1回接種で十分」との臨床試験(治験)結果が出ており、国内の結果も10月中旬には判明するため、今月下旬以降に見直される可能性もある。その場合は、優先接種対象者以外の一般国民も接種を受けられるようになる可能性もある。

 輸入ワクチンは国内の治験などで安全性が確認されれば、来年1月から使用を始める。製薬会社大手のグラクソ・スミスクライン(英)から3700万人分、ノバルティス(スイス)から1250万人分を輸入するとしている。両社は副作用被害に対する免責を販売条件にしており、政府は、訴訟費用などの損失を国が肩代わりするための特別法案を臨時国会に提出する。

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優先接種対象の基礎疾患と、その中でも最優先となる患者の基準

対象の疾患 最優先となる患者の基準

慢性の呼吸器病 治療や綿密な経過観察が必要なぜんそくや肺気腫などの患者。特に呼吸機能の低下している患者

慢性の心臓病 「安静時には無症状だが、日常活動でも疲労や動悸(どうき)、呼吸困難、狭心痛がある」という状態より重い症状の患者

慢性の腎臓病 透析中や透析を始める前の腎不全患者。腎移植を受けた人。腎臓病と他の合併症がある人など

肝硬変 進行した患者

神経・神経筋の病気 多発性硬化症や重症筋無力症など免疫異常性の神経疾患。筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)などの神経難病で呼吸障害などがある人

血液の病気 白血病、悪性リンパ腫などすべての造血器腫瘍(しゅよう)患者。造血幹細胞移植後、半年以上たった患者

糖尿病 ぜんそくや心臓病、腎不全などを併発した糖尿病患者や妊婦。1歳~高校生までの患者、インスリン療法が必要な患者

病気や治療で免疫抑制状態 HIV感染を含む免疫不全疾患。抗がん剤治療中の人。免疫抑制剤やステロイドを継続して使っている人

小児の病気 長期入院の子ども、ぜんそく、脳性まひ、重症心身障害児。15歳までの染色体異常症、小児がんなど

※最優先ではない患者は、基礎疾患のある人(その他)に分類される。

(毎日新聞、2009年10月2日)