ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

お産難民の問題

2006年12月29日 | 飯田下伊那地域の産科問題

今年もあと残りわずかとなってきました。1年前(昨年暮れ)に何となくこのブログを立ち上げました。何事もなかなか長続きしないあきっぽい性格の私なんですが、次から次へと産科関係の歴史的大事件が勃発し、このブログの日々の更新だけは私には珍しく長続きしていまして、何とか開設1周年を迎えることができました。

今年の特徴的な出来事としまして、全国的に多くの産科施設が分娩取り扱いを中止してゆくなかで、お産難民の問題が表面化しました。

当医療圏におきましても、昨年末~今年初めにかけて分娩取り扱いを中止する施設が相次ぎ、当地も大量のお産難民が出る危機に直面しましたが、地域医療協議会(産科問題懇談会)を立ち上げて、地域の連携・協力体制を構築して、今年は何とかお産難民を一人も出さないで急場を乗り切ることができました。

しかし、今後、この地域の産科を取り巻く情勢はますます厳しくなってゆくことが予想され、来年の今頃はこの地域の産科事情が一体全体どうなっているのか?全く予測できません。みんなで無い知恵を絞って、今後も地域で緊密に連携・協力し、何とかして、この危機を乗り超えていきたいと考えています。

お産難民:病院で出産したくても、病院に産婦人科医が少ないなどの理由で、分娩場所を確保できない妊婦。


このままでは産科2次医療は崩壊する

2006年12月26日 | 地域周産期医療

最近数年間で、県内の非常に多くの産科施設が分娩取り扱いを中止しました。さらに近い将来に分娩取り扱いを中止せざるを得ないだろうと予想される病院も少なくありません。分娩取り扱い施設数は全県的に急減し続けていて、近い将来に産科施設が全滅しかねない医療圏もいくつか出てきました。

今、急速に進行している産科医療の崩壊は、全国的、全県的な現象であり、一人の医師や一病院の取り組みで打開できるような問題ではありません。

現場の産婦人科医達が職場放棄せざるを得ない極限状態になるまでとことん放置すれば、最悪の場合、県内の病院の産婦人科が全滅してしまうかもしれません。全滅してしまってから、一から立て直すのは大変なことですから、手遅れにならないうちに、国や県が強力な指導力を発揮して将来残すべきいくつかの重点化病院を決定し、残すべき病院がちゃんと残るように対策を講ずる必要があると思います。

集約化・重点化によって産婦人科が消滅してしまう地域には、負担を強いることになってしまうかもしれません。このことで地域住民の理解・納得を得るのは非常に難しいかもしれません。しかし、一人医長の産婦人科を県内に万遍なく点在させて、県内すべての地域で産婦人科がどんどん消滅してしまえば、かえって住民のためにはならないと思います。

*** 医療タイムス社、長野、2006年12月25日

「このままでは産科2次医療は崩壊する」

県地域医療対策協議会で信大産婦人科・金井講師

 信大医学部産科婦人科講師の金井誠氏は22日の県地域医療対策協議会(会長・渡辺康子県衛生部長)で、県内の産科医療体制について、「このままでは2、3年以内に産科の2次医療体制は崩壊する」との懸念を示し、早急に産科医の重点化などの対策をとる必要性を強調した。これに対し、委員からも地域内で機能分担する必要性を指摘する声が相次ぎ、産科と小児科医療体制の集約化・重点化の軟着陸をめざす方針を確認した。

 「県産科・小児科医療対策検討会」の委員を務める金井氏は、これまでの検討状況を報告する中で、勤務医が疲弊しきっている県内の産科体制を説明した。金井氏によると、現在、県内には分娩を取り扱っている医療施設は53施設あるが、この5年間で23施設、特に最近1年間で11施設減少したという。さらに来年は2次医療を担っている2病院の産科部長が離職、1病院が廃止、2病院が分娩制限をせざるを得ない状況になっているという。

 また、県内は病院での出生割合が7割を超えるが、金井氏は「2次病院といえども産科医は2~3人で、年間300~500件の分娩を扱い、さらに帝王切開や手術、外来も対応している。これが2次病院の現状。若い医師からは『現状の勤務状況は限界』との声があがっており、産科医は限界を超えて使命感だけで患者を受け入れている。このままでは2、3年以内に県内の産科2次医療は崩壊する。この数年のうちに何か手を打たなければならない」と訴えた。

 県内の産科体制を維持するための方策として金井氏は、「本質的な解決策は産科医を増やすしかない」と前置きした上で、当面の対策として ①医事紛争の問題解決 ②高次病院への産科医療の重点化 ③報酬面での優遇 ④助産師のサポートシステムの確立-をあげた。このうち「重点化」については、県内を2次医療圏にとらわれず、いくつかのブロックに分けて、そのブロックごとに産科医を重点配置する病院を作り、そこから地域病院に産科医を派遣するシステムを構築するもので、「将来的な理想の医療と言っているわけではない。緊急避難的な対策として行うべき。(重点化により)不便な思いをする住民もいると思うが、このままでは産科体制が崩壊する」と述べ、重点化に理解を求めた。

(以下略)

(医療タイムス社、長野、2006年12月25日)


求む「納得の医療」/06年記者ノート(朝日新聞)

2006年12月24日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

正常の分娩経過で、突然、母体や胎児の状況が急変し、母児の救命のために緊急的な医学的対応を要するような場合は決してまれではありません。

奈良県南部地域(五條市・吉野郡3町8村)をすべてカバーする唯一の産科施設が、今まで一人医長態勢で維持されていた!ということが驚異的だと思います。その先生の長年のご苦労は並大抵のものではなかったと推察します。長年にわたり地域医療に貢献してきた功労者をよってたかってバッシングすれば、地域から産科が消滅してしまうのも当然の帰結だと思われます。

医師の勤務態勢は現状のまま放置して、『院内助産院』を充実させてこの問題を解決していこうというような動きも一部にありますが、母児の急変には全く対応できない中途半端な施設をこれから多く作っていっても、いざという時には全くお手上げということでは何の解決策にもならないと思います。

私は、産科医・小児科医・麻酔科医などの拠点病院重点配置を、最優先で早急に実行に移す必要があると考えています。

参考:

産科医や小児科医 「拠点病院重点配置を」

転送拒否続き妊婦が死亡 分娩中に意識不明

奈良県警が業務上過失致死容疑で捜査へ 妊婦死亡問題

「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡で県産婦人科医会

妊婦転院拒否、断った大阪に余裕なし 満床や人手不足

母子医療センター 4県で計画未策定 国の産科整備に遅れ

奈良の妊婦死亡、産科医らに波紋 処置に賛否両論

医療機関整備で県外派遣産科医の撤収へ 奈良・妊婦死亡

奈良南部の病院、産科ゼロ 妊婦死亡、町立大淀も休診へ

****** 朝日新聞、2006年12月23日

求む「納得の医療」/06年記者ノート

●重体の妊婦、転院拒否され死亡

●安心して産める環境を

(石田 貴子)

 12月上旬、五條市にある高崎実香(みか)さんの墓前に夫の晋輔さん(24)と一緒にお参りに行った。

 「実香は女性にとって一番幸せな時を生きられなかった。自責の念が晴れない」。真新しい白木の墓標に水を掛けながら、晋輔さんはつぶやいた。

 10月中旬、高崎さん宅を訪れた。晋輔さんは涙ながらに最愛の妻が苦しむ様子を語ってくれた。その胸の中で、実香さんが命を懸けて産んだ奏太ちゃんが大きな瞳で私を見つめた。胸がしめつけられた。同時に出産の恐ろしさを痛感した。もし自分が子どもを産むことになったら、どの病院に行けばよいのだろう。

 遺族は11月下旬、大淀病院に話し合いの場を設けるよう文書で申し入れた。9月に担当医から説明を受けたが、助産師らが同席していなかった。晋輔さんの父、憲治さん(52)は「実香の死に至るプロセスを正確に知りたい」と語る。12月中旬、病院から寄せられた回答は「応じられない」だったという。

 憲治さんらは「法廷で真実を問いたい」と弁護士に提訴の相談をしている。望むのは病院側の誠実な対応だ。「担当医が懸命に処置したとは思ってないし、納得できる説明もない。もしそうであったなら、『一生懸命やってくださってありがとうございました』と心から言えた」と話す。

 求められているのは「納得の医療」だと思う。

   ◆   ◆

 「子癇(しかん)発作でも失神やけいれんはみられる。脳内出血の判断は難しい」「現場の医師は身を粉にして働いている」。一線の産婦人科医からは、一連の報道に反発する声もあった。

 県警が担当医を立件したり、訴訟に発展したりすれば、現場はますます萎縮(いしゅく)する。ただでさえ少ない産婦人科医を目指す人がますますいなくなり、地域の病院の分娩(ぶんべん)が次々と中止に追い込まれてしまうのでは――そんな恐れが現実になった。

 町立大淀病院は22日、院内に「来年4月から産科診療(分娩(ぶんべん)の取り扱い)を休診します」との張り紙を出した。今春、同病院で娘を産んだ大淀町の山田さお里さん(28)は「家で陣痛が始まって5分後に病院に着いた時には子宮が8センチも開いていた。遠くの病院なら間に合わなかった。2人目を産むときにはどこに行けばいいのか」と話す。

 県の周産期医療体制は、他の自治体に比べて遅れている。母体・胎児の集中治療管理室 (MFICU)は3床だけ。重篤な状態になった妊婦の約4割を県外に搬送している。

 このため、県は08年1月に県立医大付属病院(橿原市)に「総合周産期母子医療センター」の開設を決め、MFICUをセンター化の指定基準の6床に増床。回復した母子が移る後方病床も12床設ける。現在21床の新生児集中治療室(NICU)も21床から51床に増やす方針だ。

 センター開設に伴い、新たに必要となる産婦人科医と看護師、助産師をどう確保するか。県立医大が産婦人科医を派遣している県外の病院から医師を引き揚げる案も出ているが、その地域で分娩ができなくなる懸念がある。結局、医師を増やすしかないのではないか。

 04年、自由に研修先を選べる制度が始まった。研修医たちは勤務先に地方より都会を選び、激務の産婦人科や小児科などを避ける傾向にあるという。

 私なら、できるだけ夫がすぐに駆けつけられる地元で産みたい。慢性的な医師不足の解消には時間がかかるだろうが、民間病院や開業医を含め地域の医師同士が連携をはかって、安心して子どもを産める環境をつくって欲しいと願う。

 【重体妊婦の転院拒否問題】 大淀町の町立大淀病院で今年8月、出産中に意識不明の重体となった高崎実香さん(当時32)が奈良、大阪の19病院に「満床」などを理由に受け入れを断られた。意識喪失の約6時間後にようやく大阪府吹田市の国立循環器病センターに搬送され、出産後に脳内出血で死亡。大淀病院は妊娠中毒症患者が起こす「子癇」と診断し、脳を検査しなかった。県警は業務上過失致死容疑で捜査に着手。県は、母子の高度治療ができる「総合周産期母子医療センター」を県立医大付属病院(橿原市)に08年1月、開設することを決めた。同センターは全国8県で未整備で県はその一つだった。

(朝日新聞、2006年12月23日)


産科医や小児科医 「拠点病院重点配置を」

2006年12月23日 | 地域周産期医療

全国の多くの地域において、拠点病院の産科部門が閉鎖されて、周産期医療体制が崩壊の危機に直面しています。産科ゼロとなってしまった地域も、田舎・都会を問わず、どんどん広がっています。そういう厳しい現実がありますから、『産科医や小児科医を拠点病院へ重点配置する必要がある』という意見も、だんだん支持を得られやすくなってきていると感じます。

****** 信濃毎日新聞、2006年12月23日

産科医や小児科医 「拠点病院重点配置を」 県対策検討会考え方示す

 県内の医師確保策などを検討する県地域医療対策協議会(会長・渡辺庸子県衛生部長、十五人)は二十二日、本年度二回目の会合を県庁で開いた。県が十一月に設けた県産科・小児科医療対策検討委員が検討状況を報告。地域の拠点病院に重点的に医師を配置する必要がある-との考えを示し、対策協の委員からも賛同する意見が出た。

 報告した同検討会産科分科会の金井誠委員(信大医学部講師)は、出産を扱う病院に医師を集め、検診を扱う病院や診療所と役割分担をしなければ「産科医療の崩壊を招きかねない」と説明。正常な出産は助産師が扱う「院内助産所」の整備を求める意見が出ていることも紹介した。

(中略)

 これに対し対策協の委員からは、医師配置の重点化を進めるためには「住民の理解をどう得ていくかが課題だ」といった意見が出た。対策協は検討会の報告に基づき、来年三月の次回会合でさらに議論を深める。

(信濃毎日新聞、2006年12月23日)


奈良南部の病院、産科ゼロ 妊婦死亡、町立大淀も休診へ (産経新聞)

2006年12月22日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

いくら医学が発達しても、母体死亡、胎児死亡、新生児死亡、脳性麻痺などは、決してゼロにはできません。分娩時には、かなりの確率で、母児の命にかかわる予測不能の急変が起こりえます。

病院では、母児の救命のためにできる限りの医学的な対応をしますが、その結果が常に患者側の期待通りとなるとは限りません。それぞれの医療施設の人員・設備から、おのずと医療の限界があり、限界以上のものを望んでも無理なものは無理です。

たとえ理想には程遠い不十分な医療施設であろうとも、何も無いよりははるかにましだということに、世の中の人々が早く気付く必要があると思います。

このままでは、早晩、あたり一面、焼け野原になってしまって、いったんは何もなくなってしまいそうです。

自ブログの参考記事: 

転送拒否続き妊婦が死亡 分娩中に意識不明

奈良県警が業務上過失致死容疑で捜査へ 妊婦死亡問題

「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡で県産婦人科医会

妊婦転院拒否、断った大阪に余裕なし 満床や人手不足

母子医療センター 4県で計画未策定 国の産科整備に遅れ

奈良の妊婦死亡、産科医らに波紋 処置に賛否両論

医療機関整備で県外派遣産科医の撤収へ 奈良・妊婦死亡

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奈良 妊婦死亡 ついに町立病院産科休診へ 
(勤務医 開業つれづれ日記)

[医療][記事]報道の影響。 (S.Y.’s Blog)

撤退:魔女狩り報道のすえに・・・
(東京日和@元勤務医の日々)

ペンの暴力 (ある内科医の嘆息)

大淀病院、分娩中止。マスコミを訴えろ!
(健康、病気なし、医者いらず)

****** 産経新聞、2006年12月22日

奈良南部の病院、産科ゼロ 妊婦死亡、町立大淀も休診へ

 今年8月、分娩(ぶんべん)中だった高崎美香さん(32)が脳内出血のため意識不明となり、19病院から転院を断られた後、搬送先の病院で死亡した問題が発生した奈良県大淀町の町立大淀病院で、来年4月1日から産科を休診することが22日、わかった。

 奈良県中南部では今年4月以降、県立五條病院(五條市)や済生会御所病院(御所市)が医師不足を理由に相次いで産科を休診。今回の大淀病院の休診で、南部地域の病院には一つも産科がなくなる状況になる。

 同病院は「助産師や看護師の確保が困難なため」としており、同日から病院内に休診の経緯について掲示。4月以降に出産予定の患者については、事情を説明した上で他院への転院措置を取るという。

 同病院は、看護師が常勤、非常勤合わせて約110人と不足。275病床のうち、事実上稼働しているのは165病床。また、医師は現在、常勤1人、非常勤2人の3人体制で、婦人科は継続するため、婦人科医師の数については今後、検討していくとしている。

 奈良県では、高度医療が必要と診断された妊婦の県外搬送率が16年で37・2%に達するなど、周産期医療に対する整備の遅れも指摘されている。

(産経新聞、2006年12月22日)

****** 読売新聞、2006年12月22日

妊婦転院死の奈良・大淀病院産婦人科、来春から休診

 19病院から転院を断られた末、搬送先の病院で死亡した妊婦(当時32歳)が入院していた奈良県大淀町立大淀病院が、来年4月から産婦人科を休診することがわかった。

 同病院は「医師や看護師の確保が難しく、十分な対応ができなくなったため」と説明している。

 同病院によると、現在の常勤の産科医は1人。通院中の妊婦の多くが、来年3月末までに出産予定のため、町と相談して、同月までは診療を続けることにした。再開のめどは立っていないという。22日に院内に事情を説明する張り紙を掲示した。

 県は「できるだけ早く大淀病院が診療を再開できるようサポートしたい」としている。

(読売新聞、2006年12月22日)

****** NHK大阪放送局、2006年12月22日

妊婦死亡 町立病院産科休診へ

今年8月、奈良県大淀町の病院で、妊婦の容体が急変し、ほかの病院に次々に受け入れを断られた末、大阪の病院で死亡した問題で、この奈良県の病院が来年3月いっぱいで出産の扱いを取りやめることになり、県南部で出産を扱う病院がなくなることになりました。

奈良県大淀町の町立大淀病院で、今年8月、高崎実香さん(当時32)が出産中に意識不明になり、ほかの19の病院に受け入れを断られて大阪の病院まで運ばれ、出産後に脳内出血で死亡しました。町立大淀病院では常勤の医師1人とほかの病院から派遣されている非常勤の医師2人の計3人で、年間150件ほどの出産を扱っていますが、関係者によりますと死亡した高崎さんの出産にあたっていた常勤の医師が産科の診療をやめる意向を示したということです。病院は、ほかに産科の常勤の医師を確保するめどが立たないことから、来年3月いっぱいで出産の扱いを取りやめ産科を休診にするということです。

この常勤の医師は、「産科のスタッフが少なく、肉体的に負担が大きい」と理由を説明しているということですが高崎さんの死亡がきっかけであることも関係者にほのめかしているということです。

奈良県内には出産を取り扱う病院が26ありますが、県北部に集中しており、これによって県南部で出産を扱う病院がなくなることになります。

(NHK大阪放送局、2006年12月22日)

****** 朝日新聞、2006年12月22日

奈良・大淀病院、分娩対応中止へ 県南部のお産の場消える

 奈良県大淀町の町立大淀病院で8月、重体になった妊婦(当時32)が計19病院に搬送の受け入れを断られた末、大阪府内の病院で死亡した問題で、同病院が来年3月で分娩(ぶんべん)の取り扱いを休止することがわかった。同病院の産婦人科にはこの妊婦を担当した常勤の男性医師(59)しかおらず、長年にわたる激務や妊婦死亡をめぐる対応で心労が重なったほか、別の産科医確保の見通しが立たないことなどが理由とみられる。

 県などによると、同病院は来年3月末で産科診療を休止し、その後は婦人科外来のみ続ける方針。スタッフの拡充を検討したが、県内の公立病院に産科医を派遣してきた奈良県立医大の医師不足などから、新たに医師が確保できず、分娩対応の継続ができないと判断した。病院側は同日、院長名で事情を説明する文書を張り出した。

 男性医師は県立医大から非常勤医師の応援を得ながら、年間150件以上のお産を扱っていた。宿直勤務は週3回以上で、妊婦が死亡した後、「ここで20年以上頑張ってきたが、精神的にも体力的にも限界」と周囲に漏らしていたという。

 県南部では、県立五條病院(五條市)が4月に産科医不足から分娩取り扱いを中止しており、大淀病院がお産を扱う唯一の病院だった。県幹部は「早急に県内の周産期医療のあり方を見直さねばならない」と話す。

(朝日新聞、2006年12月22日)

****** 毎日新聞、2006年12月22日

奈良・妊婦転送死亡:奈良南部、産科ゼロに 大淀病院、来春から休診

 今年8月、入院中の妊婦の高崎実香さん(当時32歳)=奈良県五條市=が転送先探しの難航の末、死亡する問題が起きた同県大淀町立大淀病院(原育史(やすひと)院長)が、来年4月から産科を休診することが分かった。県南部(五條市・吉野郡3町8村)で分べんができる医療施設はゼロになる。婦人科は継続する。病院側は「医師が辞めるわけではないが、十分な看護師、助産師を確保できず、リスクが大きいと判断した」と説明している。

 同病院が22日、休診を知らせる張り紙をした。21日夕に連絡を受けた県医務課の高橋渉課長は、「妊婦死亡の問題で医師に心労があるという話は聞いた。かかりつけの妊婦には、県立医大付属病院(同県橿原市)や民間クリニックを紹介する」と話した。【青木絵美、松本博子】

(毎日新聞、2006年12月22日)

****** 朝日放送、奈良、2006年12月22日

妊婦死亡の病院 看護師確保厳しく産科休診

今年8月、奈良県の町立大淀病院で、出産を迎えた妊婦が転院先を相次いで断られた末、死亡しましたが、その大淀病院が、来年春から、お産の取り扱いをやめることを決めました。奈良県南部から、お産ができる病院がなくなることになります。

大淀病院では、8月、高崎実香さん(当時32)が、初めてのお産の途中で意識不明となり、より高度な治療が可能な病院への転院が必要となりました。しかし、19の病院に次々と受け入れを断られ、その後死亡しました。産科医不足が問題となる中、大淀病院は、奈良県南部で唯一、常勤の医師1人と非常勤2人の体制でお産に対応してきましたが、看護師らの確保が厳しく、来年4月からお産の取り扱いをやめる決定をしました。病院の利用者は、「大変ですよね。私らは、もういいけど、これから結婚して子供産もうとする人は・・・」と話しています。病院側は、お産の取りやめについて、「診ている妊婦を他の病院に紹介するには、今がギリギリの時期。高崎さんが亡くなった問題が直接の原因ではない」としています。

(朝日放送、奈良、2006年12月22日)

****** FNNニュース、2006年12月22日

奈良・妊婦たらい回し死亡問題 妊婦が入院していた病院が産科を休診へ

8月、出産中に意識不明となった妊婦がおよそ20の病院で受け入れを断られた末、死亡した問題で、当初、妊婦が入院していた病院が2007年の3月で産科を休診することになった。

この病院は、奈良県大淀町立大淀病院で、病院は「助産師などの確保が難しくなり、リスクが大きくなるため」としている。この結果、奈良県南部で出産を扱う病院がなくなることになった。

一方、妊婦の遺族は、病院に対する刑事告訴や損害賠償請求の訴訟を検討している。

(FNNニュース、2006年12月22日)


勤務医に相当の報酬を/菊地臣一さん (朝日新聞)

2006年12月20日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

地方病院での研修の場合に、都心の大病院での研修と比べて、『経験できる症例数の不足、日進月歩の最新技術の習得が困難、専門医資格の取得が困難』などの多くのハンディキャップがあり、地方病院ではなかなか新人を集められません。

若い意欲のある医師達が、自分の技量を最大限に高められる病院で研修をしたいと思うのは当然のことだと思います。「地方では医師不足が深刻だから、是非とも来て欲しい」などと言って、いくら一生懸命に勧誘しても、若い医師達が集まるとは到底考えられません。

例えば、研修医本人の希望に応じて、症例数の多い都心の最先端の病院などと提携した研修プログラムを提案するとか、地方病院での研修と国内外の希望大学への留学とを組み合わせた研修プログラムを提案するとか、超一流のカリスマ指導医師に定期的に地方病院に直接指導に来ていただくとか、のさまざまな工夫が絶対に必要だと思います。当然ながら、”相当な報酬”も必要になると思われます。そのような研修プログラムに多くの若い医師達が参加してくれれば、地方病院にとって、単に医師不足の解消だけでにとどまらず、医療水準の向上も大いに期待できると考えられます。

****** 朝日新聞、2006年12月17日

産婦人科医希望2割減 研修必修化以降、特に男性が敬遠

 全国的に産婦人科医不足が問題となる中、2年間の臨床研修を終え、今年度、日本産科婦人科学会に入った医師は、これまでより、2割以上減ったことが16日わかった。学会のまとめでは、例年350人前後の医師が入会して産婦人科で働いていたが、今年度は285人になっていた。特に男性医師の落ち込みが激しいという。

 臨床研修が04年度から必修化され、研修医は2年間、各科を回った後、専門科を選ぶ制度になった。学会が02~04年度に国家試験に合格した医師の学会入会者数を調べたところ、02年度346人、03年度366人だったのに対し、研修1期生の04年度(今年度入会)は285人に減少した。うち男性医師は、02、03年度は130人台だったが、04年度は82人しかいなかった。

 こうした状況が続くと、お産を担う医師が、さらに不足するため、学会は、医師勧誘のDVDをつくるほか、他の診療科に比べて高い訴訟リスクを低くするために診療ガイドラインを整備する。学会理事の吉川裕之・筑波大教授は「出産に、男子医学生の立ち会いを拒否するケースも増えており、希望者が減っているのだろう。女性医師を活用した働き方を検討しなければならない」と話している。

(朝日新聞、2006年12月17日)


産科医不足、大阪の都市部でも深刻 分娩制限相次ぐ(朝日新聞)

2006年12月17日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

北海道や東北地方など地方の周産期医療は、どこもかしこも崩壊寸前の危機的状況にあると連日のように報道されていますが、どうやら、国内屈指の医師数を誇っている大阪においても、産科医不足は相当に深刻となってきて、周産期医療の崩壊が迫りつつある状況にあるようです。

周りの病院がどんどん産科を辞めていく中、かろうじて生き残っている病院の産科には、非常に多くの患者が集中します。大阪のような大都会では、人口が非常に多いだけに、集約化病院の分娩件数は桁外れに多くなってしまうことが予想されます。

それぞれの病院のスタッフ数や病床数に応じて、当然、受け入れ可能な分娩件数にも限度がありますから、分娩制限も止むを得ないと思われます。

参考:

「大阪のお産を考える-迫り来る周産期医療の崩壊」公開シンポジウム (毎日新聞)

産科医の現場離れ深刻 (共同通信)

****** 朝日新聞、2006年12月16日

産科医不足、大阪の都市部でも深刻 分娩制限相次ぐ

 地方で深刻化している産科医不足が、都市部でも加速してきた。一施設あたりの産科医数が東京に次いで多い大阪でも、産科を閉める病院が続出し、残ったところは分娩(ぶんべん)制限が相次ぐ。大阪市内でお産できる病院は来春、23カ所に減り、3年前の4分の3。お産の場の連携・再編は待ったなしだが、予算も医師も不足しており、拠点病院に医師を集める「集約化」のめどさえ立たない。(久保佳子、阿久沢悦子)

 ●市民病院も制限

 地域医療の中核を担ってきた大阪市内の市民病院で現在、お産ができるのは市立総合医療センター(都島区)、住吉(住之江区)、十三(淀川区)の三つ。住吉、住之江、西成3区のお産の約2割、年約750件を扱ってきた住吉市民は9月、月二十数件と半分以下に絞る分娩制限を始めた。産科医3人が定年などで病院を去り、常勤医が3人になったからだ。

 麻酔科医も1人だけで、夜間の緊急帝王切開は産科医が自ら麻酔をする。中村哲生医師は「初めて聞いた人は驚くが、ここではずっとそうだ」。応援医を1人頼んでいるが、それでも月の半分近くは当直や自宅待機で夜間も拘束される。

 医師5人態勢の十三市民病院も女性医師の産休で1人減となった。淀川区内で唯一のお産ができる総合病院で、分娩数は年間約750件。出口昌昭・産婦人科部長は「市民に身近な公立病院として踏ん張ってきたが、これ以上、人が減れば分娩制限を検討せざるを得ない」。

 リスクが高い分娩も扱う総合医療センター。産科医6人で年900件のお産を診てきたが、周辺の産科廃止が相次ぎ、今年上半期は25%増のペースだった。来年から正常産の受け入れ上限を月45件から39件に減らす。合併症のあるハイリスク出産や緊急搬送の計50件の枠を狭めるわけにはいかないという。

 ●焼け石に水

 産科医が減り続ける中、大阪市は昨年8月、四つの市民病院にある産科を三つに再編。医師を住吉市民病院などに振り分け、5人以上の態勢を整えたが、わずか1年で崩れた形だ。医師らは「勤務が過酷な状態が変わらなければ再編しても効果が上がらない。焼け石に水だ」とこぼす。

 医師の負担軽減に向けて市が期待するのが、医師に代わって助産師が正常産を担当する「助産師外来」。今年11月に住吉市民病院に設置され、来春には十三市民病院にもできる。さらに今年5月には、当直の応援医確保のため、産科と麻酔科の当直単価を1回最高7万5千円と約3倍に引き上げた。ただ、常勤医の確保は困難な状況だ。

 ●深刻さ増す南部

 「安全にお世話できる受け入れ能力の限界に近づいております」。今月1日、民間の愛染橋病院(浪速区)のホームページに、来年3月まで新規の分娩予約を断る通知文が掲載された。産科医は8人。毎月約120件の予約分娩と10~20件の緊急搬送を受け入れている。分娩数は西日本一だ。

 だが、産科医1人の退職が決まり、補充のめどが立たないまま、産科を休止したほかの病院から移ってくる妊婦が相次ぐ。今月は予約だけで150件を超えた。村田雄二院長は「市内の『最後の砦(とりで)』として、すべてのお産を受け入れようと思ってきたが、医療事故が起きてからでは遅い」。

 来年3月、阪和住吉総合病院(住吉区)が分娩をやめ、市南部の4区にある病院の産科はすべて分娩を休止するか制限することになる。年500件を扱ってきた診療所のオーク住吉産婦人科(西成区)も同4月にお産を休止する。

 市は住吉市民を周産期医療の拠点と位置づけ、常勤医を6人以上に増やすとともに、老朽化が著しい建物を改築する考えだ。ただ、返済期限が迫っている市の病院事業の不良債務は約116億円。総務省は5年以内に解消しなければ、新規起債は許可できないとしており、先行きは厳しい。

 巽陽一・市医務保健総長は「お産状況の改善のためには、市内だけでなく、近隣都市を含めた産科医の集約化を考えなければならないだろう」と強調する。

(朝日新聞、2006年12月16日)


第1回婦人科腫瘍専門医筆記試験、問題

2006年12月17日 | 婦人科腫瘍

【問題021~問題030】

問題001 外陰病変で下床に腺癌を伴うことがあるのはどれか。
a)vulvar intraepithelial neoplasia (VIN)
b)Bowen様丘疹
c)Paget病
d)硬化性苔癬
e)悪性黒色腫

問題002 外陰癌で誤っているのはどれか。
a)60~70歳代の女性に頻度が高い。
b)角化型扁平上皮癌が大部分を占める。
c)最も頻度が高い部位は腟前庭である。
d)進行癌では鼠径リンパ節転移が多い。
e)Ⅰ期癌には手術療法が第一選択である。

問題003 Paget病で誤っているのはどれか。
a)外陰掻痒感や違和感を訴えることが多い。
b)スクリーニングに擦過細胞診が有用である。
c)術前評価では病巣周囲の多数の生検を行う。
d)手術では病巣辺縁から3 cm外周を皮切する。
e)約10%は間質浸潤を伴う浸潤Paget病である。

問題004 外陰癌のFIGO進行期分類(1994)で誤っているのはどれか。
a)外陰に限局し、最大径1 cmで間質浸潤の深さ3 mm以下であればⅠa期である。
b)会陰に限局し、最大径3 cmであればⅡ期である。
c)肛門への浸潤があればⅢ期である。
d)両側の鼠径リンパ節に転移があればⅣa期である。
e)骨盤リンパ節に転移があればⅣb期である。

問題005 外陰癌のリンパ行性転移でただしいのはどれか。
(1)片側に限局する2 cm未満の腫瘍では、対側の浅鼠径節への転移は少ない。
(2)原発腫瘍の大きさが2 cm未満であれば、リンパ節転移は5%以下である。
(3)Cloquet節は、浅鼠径節のうちで最も内側に存在するリンパ節である。
(4)リンパ節転移は、浅鼠径節、深部大腿節、骨盤節の順に進展することが多い。
(5)浅鼠径節に転移を認める場合、その20~25%で骨盤節への転移がある。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題006 外陰癌Ⅰa期の標準的治療はどれか。
a)レーザー蒸散
b)根治的外陰部分切除(radical local excision)
c)根治的外陰部分切除+患側鼠径リンパ節郭清
d)広汎外陰切除(radical vulvectomy)+両側鼠径リンパ節郭清
e)根治的放射線治療

問題007 腟癌で正しいのはどれか。
a)40歳代の女性に最も頻度が高い。
b)組織型では腺扁平上皮癌が最も多い。
c)発生部位では中1/3に最も頻度が高い。
d)下1/3に発生した癌は鼠径リンパ節に転移する。
e)Diethylstilbesterolを服用した女性に腺癌が発生する。

問題008 腟癌の臨床進行期(FIGO)で正しいのはどれか。
(1)腟壁に限局していればⅠ期である。
(2)傍組織に浸潤するが骨盤壁に達していないとⅡ期である。
(3)傍組織浸潤が骨盤壁に達しているとⅢ期である。
(4)外子宮口に達していればⅢ期である。
(5)膀胱に胞状浮腫があればⅣ期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題009 子宮頚癌のリスク因子でないのはどれか。
a)HPV
b)喫煙
c)初交年齢
d)アルコール
e)性パートナー数

問題010 頚癌検診における細胞採取で正しいのはどれか。
a)腟円蓋から細胞を採取する。
b)子宮腟部表面と頚管内から細胞を採取する。
c)妊娠中は偽陽性が多いので避けるほうがよい
d)スライドグラスへ塗布した後30分以内に固定する。
e)自己採取による癌検出率は通常の検診と同様である。

問題011 子宮頸部細胞診クラスⅣから推定される病変はどれか。
a)軽度異形成
b)中等度異形成
c)高度異形成
d)上皮内癌
e)微小浸潤癌

問題012 子宮頸部上皮内癌の細胞診所見で正しいのはどれか。
(1)平滑な核縁
(2)著しい核の大小不同
(3)出血壊死性の背景
(4)錯角化または異角化
(5)傍基底型の癌細胞

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題013 新コルポスコピー所見分類(日本婦人科腫瘍学会、2005)で正しいのはどれか。
a)ヨード塗布試験が必須である。
b)移行帯は異常所見に分類される。
c)白色上皮は軽度または高度にgradingする。
d)白斑は異常所見から除かれた。
e)HPV感染所見を特別に分類する。

問題014 子宮頸部にみられたポリープ状の病変である。組織診断はどれか。(図 1)
a)尖形コンジローマ
b)正常頚管腺上皮
c)微小頚管腺過形成
d)腺癌
e)扁平上皮癌

【問題14-図1】

問題015 子宮頸部腫瘤の生検標本である。組織診断はどれか。(図 2)
a)内頸部型ポリープ
b)正常重曹扁平上皮
c)扁平上皮癌
d)腺癌
e)尖形コンジローマ

【問題15-図2】

問題016 子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染で正しいのはどれか。
a)HPVは異形成の90%以上に検出される。
b)HPV感染の有無は血清抗体価で判定できる。
c)HPVの型分布は世界中でほぼ同じである。
d)ハイリスクHPVをもつ異形成の約90%が上皮内癌へ進展する。
e)HPVワクチンはタイプ非特異的に感染予防効果をもつ。

問題017 子宮頚癌発生におけるハイリスク型HPVはどれか。
a)11型
b)42型
c)43型
d)44型
e)52型

問題018 ヒトパピローマウイルス(HIV)で正しいのはどれか。
a)頚部扁平上皮癌で最も高頻度に検出されるHPVは52型である。
b)頚部腺癌で最も高頻度に検出されるHPVは18型である。
c)細胞診に異常のない女性でのHPV検出頻度は約50%である。
d)koilocytosisを示す細胞ではHPVは検出されない。
e)妊娠中にはHPVの増殖能(replication)が低下する。

問題019 子宮頸癌の臨床進行期分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)進行期決定に迷う場合は重い方に分類する。
b)進行期の決定にはCT所見とMRI所見を参考にする。
c)術前診断0期で摘出子宮に微小浸潤癌があればⅠa期とする。
d)膀胱内洗浄液中に癌細胞があればⅣa期とする。
e)進行期決定に頚部円錐切除の病理所見は考慮しない。

問題020 子宮頚癌Ⅰa2期(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)浸潤の深さ3 mmを超え5 mm以内で広がり10mmを超えない。
b)脈管侵襲が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
c)癒合浸潤が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
d)広がりの計測には微小浸潤巣の最大の幅を計測する。
e)深さの計測の基点は浸潤巣直上の最も深い表層基底膜とする。

問題021 TNM分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)TX - 原発腫瘍を認めない。
b)TO - 浸潤前癌
c)NX - 所属リンパ節に転移を認めない。
d)N1 - 所属リンパ節に転移を認める。
e)MO - 遠隔転移の検索が行われていない。

問題022 子宮頚癌の臨床進行期と治療法の組み合わせで誤っているのはどれか。
a) 0 期 - レーザー円錐切除術
b)Ⅰa1期 - 単純子宮全摘出術
c)Ⅰa2期 - 子宮頸部円錐切除術
d)Ⅰb1期 - 広汎子宮全摘出術
e)Ⅲb期 - 化学放射線療法

問題023 子宮頸癌の治療で誤っているのはどれか。
a)広汎子宮全摘出術では症例によっては卵巣温存が可能である。
b)広汎子宮全摘出術で傍大動脈節郭清の治療的意義は不明である。
c)放射線療法では全骨盤照射と腔内照射を組み合わせる。
d)化学放射線療法ではプラチナ製剤を同時に用いる。
e)化学療法後の放射線療法は生存期間を延長させる。

問題024 子宮頸癌の各組織型で誤っているのはどれか。
a)腺癌は扁平上皮癌に比し放射線感受性が低い
b)小細胞癌は腺扁平上皮癌に比し予後不良である。
c)すりガラス細胞癌は扁平上皮癌に比し予後不良である。
d)扁平上皮癌で角化型は非角化型に比し予後不良である。
e)腺癌のうちvilloglandular adenocarcinomaは予後良好である。

問題025 子宮頚部の上皮内腺癌で誤っているのはどれか。
a)子宮頚部細胞診が診断に有用な場合がある。 
b)コルポスコピーで病変の拡がりを評価できない。
c)円錐切除で断端陰性であれば残存病変はない。
d)リンパ節転移は認められない。
e)妊孕能温存は可能である。

問題026 子宮内膜増殖症で正しいのはどれか。
a)子宮体癌取り扱い規約で4 種類に分類されている。
b)異型増殖症の内膜細胞診による正診率は90%を超える。
c)異型増殖症では篩状(cribriform pattern)の腺管増生が著しい
d)異型増殖症が腺癌へと進展する割合は約5 %である。
e)異型増殖症と腺癌との鑑別にMRI検査が有用である。

問題031 子宮内膜細胞診で正しいのはどれか。
a)内膜細胞の細胞異型のみを評価する。
b)内膜細胞がみられなければ再検査を指示する。
c)細胞診陰性であれば子宮内膜癌は否定できる。
d)疑陽性の場合、内膜組織診は不要である。
e)卵巣癌細胞が検出されることはない。

問題032 わが国の女性10万人あたりの子宮体癌罹患数はどの程度か。
a)1 人未満
b)6~15人
c)106~115人
d)506~515人
e)1006~1015人

問題033 タイプⅡ子宮体癌で正しいのはどれか。
a)肥満
b)閉経後
c)予後良好
d)類内膜腺癌
e)エストロゲン依存性

問題034 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
(1)浸潤が筋層1/2を超えるものはⅠb期である。
(2)頚管腺のみを侵すものはⅡb期である。
(3)腟に転移を認める場合はⅢb期である。
(4)骨盤リンパ節に転移があればⅢc期である。
(5)鼠径リンパ節に転移があればⅣb期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題035 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
a)腹腔細胞診で陽性であったのでⅠc期とした。
b)卵巣に転移がみられたのでⅡa期とした。
c)大網に径1 cmの転移がみられたのでⅢb期とした。
d)子宮傍結合織浸潤がみられたのでⅢc期とした。
e)傍大動脈リンパ節転移がみられたのでⅣ期とした。

問題036 子宮体癌の治療で正しいのはどれか。
(1)若年女性で類内膜腺癌G1かつⅠa期と予測される場合は子宮温存を考慮する。
(2)傍大動脈リンパ節郭清が長期予後改善に寄与するか否かは不明である。
(3)臨床進行期Ⅱ期の症例に対する腟壁切除の有用性は証明されている。
(4)進行例に対する手術療法の意義は低く、腫瘍減量手術は行うべきでない。
(5)内視鏡下手術は確立しておらず、その適応は慎重に考慮すべきである。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題037 子宮体癌の化学療法で正しいのはどれか。
(1)中リスク症例の術後化学療法は放射線療法と同等かそれ以上に有効である。
(2)高リスク症例で術後残存腫瘍2 cm以下の場合に化学療法が推奨される。
(3)アンスラサイクリン系とプラチナ製剤の併用が推奨される。
(4)進行例に対する術前化学療法の有効性が証明されている。
(5)放射線療法後の再発例にはイリノテカンが有用である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題038 子宮体癌化学療法のkey drugはどれか。
a)エトポシド
b)ジェムシタビン
c)アドリアマイシン
d)サイクロフォスファミド
e)5-FU

問題039 子宮内膜増殖症および体癌の治療で誤っているのはどれか。
a)単純型子宮内膜増殖症に対して単純子宮全摘術を施行した。
b)子宮内膜異型増殖症に対して黄体ホルモン療法を施行した。
c)体癌で浸潤が筋層1/2を超えており傍大動脈リンパ節郭清を施行した。
d)体癌で頚部間質に深い浸潤を認めたため広汎子宮全摘出術を施行した。
e)体癌の高リスク例にdoxorubicinとcisplatinによる化学療法を施行した。

問題040 子宮肉腫の治療で正しいのはどれか。
a)第一選択の治療法は手術療法である。
b)標準的手術術式は広汎子宮全摘出術である。
c)進行例に対しては化学療法が有用である。
d)平滑筋肉腫には黄体ホルモン療法が奏功する。
e)低悪性度内膜間質肉腫の5年生存率は50%以下である。

問題049 胞状奇胎娩出後の管理に有用な検査はどれか。
(1)尿中hCG値測定
(2)胸部レントゲン撮影
(3)血中エストラジオール値測定
(4)骨盤CT
(5)基礎体温測定

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題050 絨毛癌肺転移に対してまず行う治療はどれか。
a)胸部腫瘤の摘出術
b)胸部腫瘤と子宮の摘出術
c)MTX単独化学療法
d)TJ化学療法
e)EMA-CO化学療法

問題051 卵巣腫瘍の組織分類で正しい組合わせはどれか。
a)ブレンナー腫瘍 - 表層上皮性・間質性腫瘍
b)未分化胚細胞腫 - 表層上皮性・間質性腫瘍
c)漿液性嚢胞腺腫 - 性索間質性腫瘍
d)顆粒膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
e)莢膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍

問題052 卵巣腫瘍組織分類で胚細胞腫瘍でないのはどれか。
a)卵黄嚢腫瘍
b)ステロイド細胞腫瘍
c)未熟奇形腫
d)卵巣甲状腺腫
e)カルチノイド

問題053 卵巣腫瘍の組織学的特徴で誤っているのはどれか。
a)顆粒膜細胞腫 - Call-Exner body
b)未分化胚細胞腫 - Schiller-Duval body
c)明細胞癌 - hobnail cell
d)Krukenberg腫瘍 - signet-ring cell
e)Brenner腫瘍 - coffee-bean nuclei

問題061 卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化で正しいのはどれか。
a)頻度は約10%である。
b)閉経後の患者に多い。
c)腫瘍径の小さいものが多い。
d)両側性発生例が多い。
e)組織型は明細胞腺癌が多い。

問題062 若年者の卵巣悪性胚細胞性腫瘍で正しいのはどれか。
a)原則として妊孕性温存手術を考慮する。
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が低い。
c)未熟奇形腫では血性LDH高値を示す。
d)絨毛癌の予後は良好である。
e)治療後の問題点は妊孕能のみである。

問題077 ヒトパピローマウイルス(HPV)と関係が深い癌抑制遺伝子はどれか。
(1)p53
(2)BRCA1
(3)FHIT
(4)NF1
(5)Rb

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題099 癌化学療法に使用するG-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤で正しいのはどれか。
a)好中球減少Grade 4が確認されたらG-CSF製剤の投与が必須である。
b)好中球数が5,000/mm3を超えたらG-CSF製剤の投与を中止する。
c)G-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤は原則的に抗癌剤と同日投与する。
d)有熱性好中球減少症Grade 3では第3世代抗菌剤の投与が必須である。
e)5-HT3受容体拮抗剤は遅発性嘔吐に著効する。

問題100 抗癌剤の毒性が現れやすい臓器・組織で誤っているのはどれか。
a)ドキソルビシン - 心筋
b)エトポシド - 呼吸器
c)イリノテカン - 消化器
d)パクリタクセル - 神経
e)シクロホスファミド - 卵巣


県立大野病院事件 公判前整理手続き終了

2006年12月16日 | 報道記事

コメント(私見):

福島県立大野病院で起きた妊婦死亡事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医についての、福島地裁での5カ月間にわたる公判前整理手続きが終わったようです。

争点は以下の3点に絞られたとのことです[(1)については4点が問題となる]。 

(1)胎盤と子宮の癒着を認識した時点で胎盤の剥離を中止すべきだったか否か
 ①癒着した部位やその程度
 ②出血の程度や予見可能性
 ③死亡との因果関係
 ④クーパー(手術用ハサミ)を使用して剥離したことの妥当性

(2)医師法違反にあたるのかどうか
(3)被告の供述の任意性

弁護側は会見で、「医師に対する業務上過失致死事件で、医師の裁量が問われた裁判はこれまでにない。加藤医師に過失はなく、最善を尽くしたので無罪だと確信している」と検察側と全面対決する方針を改めて示したようです。

参考:

日本医学会、声明文

公判概略について(06/7/28)

公判概略について(06/9/23)

公判概略について(06/10/19)

県立大野病院事件についての自ブログ内リンク集

****** 朝日新聞、2006年12月15日

焦点3つに絞る 県立大野病院事件

 大熊町の県立大野病院で女性(当時29)が帝王切開手術中に死亡し、執刀した産婦人科医加藤克彦被告(39)が業務上過失致死と医師法違反の罪で起訴された事件の公判前手続きが14日、福島地裁であり、争点は大きく3点に絞り込まれた。公判前手続きはこれで終了し、来年1月26日に初公判が開かれる。

 弁護側によると、地裁側は(1)胎盤と子宮の癒着を認識した時点で胎盤の剥離(はくり)を中止すべきだったか否か(2)医師法違反にあたるのかどうか(3)被告の供述の任意性の3点を争点として認定した。

 さらに、争点の中の胎盤の剥離について、癒着した部位やその程度▽出血の程度や予見可能性▽死亡との因果関係▽クーパー(手術用ハサミ)を使用して剥離したことの妥当性の4点が問題になる、としたという。

 来月の初公判では、検察側、弁護側双方が冒頭陳述を行い、2~5月の4回の公判で、検察側が証人尋問を行う予定。

 検察側は、同院の作山洋三院長や、手術室にいた医師や看護師、子宮の病理鑑定を行った、県立医大の杉野隆講師らを証人申請し、認められたという。

 検察側は、「第1回公判期日以降、主張を明らかにし、事実関係の立証に努めたい」となどとする談話を発表した。

(朝日新聞、2006年12月15日)

****** 毎日新聞、2006年12月15日

大野病院医療事故:「医師は最善尽くした」 弁護側、改めて対決方針

 ◇公判前整理終了

 県立大野病院(大熊町)で起きた医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医、加藤克彦被告(39)の福島地裁での5カ月間にわたる公判前整理手続きが14日終わった。弁護側は会見で、「医師に対する業務上過失致死事件で、医師の裁量が問われた裁判はこれまでにない。加藤医師に過失はなく、最善を尽くしたので無罪だと確信している」と検察側と全面対決する方針を改めて示した。

 争点は6点に絞られ、弁護側は加藤医師の刑事責任を全面的に否定している。癒着胎盤について、「子宮後壁の一部への癒着で、程度も軽かった。はく離を継続しても問題はなかった」と主張。出血は「はく離に伴うものだけではない」と指摘し、手術用はさみの使用は「はく離面の面積を小さくして出血を最少にするため」と説明している。

 また、弁護側は医師法の届け出義務は「異状死の定義があいまい」と指摘し、「加藤医師の供述調書は本人の主張とずれている。文献や医学書が証拠採用されず、検察側が専門的なことを理解しようとする姿勢がみられない」と批判した。

 検察側はこれまでに、癒着の範囲は弁護側の主張より広かったとし、出血もはく離によるものが大部分だと主張しているという。福島地検の片岡康夫次席検事は「来年の公判期日以降において、主張を明らかにし、事実関係の立証に努めたい」とコメントした。

 来年1月の初公判では、検察側、弁護側双方の冒頭陳述が行われる。2回目以降は月1回程度公判が開かれ、検察側が証人申請した手術に立ち会った医師や看護師、病理鑑定をまとめた医師ら計8人への尋問を5月ごろまで行う。その後、弁護側証人の尋問が予定されている。【町田徳丈】

(毎日新聞、2006年12月15日)

****** 読売新聞、2006年12月15日

「子宮摘出」最大の争点

大野病院産婦死亡公判前整理手続き終了

 大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開手術を受けた楢葉町の女性(当時29歳)が出血性ショックにより死亡した事故で、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(39)の第6回公判前整理手続きが14日、福島地裁であった。地裁側は、大量出血に対する加藤被告の予見可能性など6つの争点を示し、同手続きが終了した。

 加藤被告の弁護団によると、6つの争点は〈1〉出血の部位・程度、それに対する加藤被告の予見可能性〈2〉手術用ハサミを使用するなどして、はく離したことの妥当性〈3〉医師法違反の正否――など。弁護団は「胎盤はく離を中止し、子宮摘出に移らなければならない義務があったかどうか」という点が最大の争点としている。初公判は来月26日。

 起訴状などによると、加藤被告は、胎盤が子宮に癒着し、大量出血する可能性を認識していたにもかかわらず、本来行うべき子宮摘出を行わず、胎盤を無理にはがして大量出血を引き起こしたなどとされる。

(読売新聞、2006年12月15日)

****** 河北新報、2006年12月15日

来年にも結審か 福島・大野病院事件 公判前手続き終了

 福島県立大野病院(大熊町)で帝王切開手術を受けた女性=当時(29)=が失血死し、産婦人科医加藤克彦被告(39)が業務上過失致死罪などに問われた事件の公判前整理手続きで、福島地裁は14日、検察、弁護側と第6回協議を行い、加藤被告が癒着胎盤の手術で、胎盤の剥離(はくり)を続けた行為の妥当性など6点を争点とすることで合意した。

 協議は今回で終わり、初公判は来年1月26日に開かれる。

 ほかの争点は、胎盤の癒着程度や出血の原因、死亡と剥離の因果関係など。弁護側は「胎盤の剥離の継続は産科臨床の常識で過失はない」と主張、剥離を止めて子宮を摘出すべきだったとする検察側と対立している。

 初公判後、検察側の証人尋問が5月ごろまで行われ、弁護側の証人尋問に入る。来年中には結審し、判決が言い渡される見通し。

 起訴状によると、加藤被告は2004年12月17日、同県楢葉町の女性の帝王切開手術を行った際、胎盤と子宮の癒着を確認。無理にはがせば大量出血で女性が死亡する恐れがあるのに、子宮を摘出するなど事故を回避する注意義務を怠り、胎盤をはぎ取って女性を失血死させた。

(河北新報、2006年12月15日)

以下、産科医不当逮捕事件より転載
http://www.yk.rim.or.jp/~smatu/iken/sankafutotaiho/20061214.htm

大野病院医療過誤 争点6項目確定
福島地裁公判前手続き、危険予見性で相違癒着剥離妥当か

<裁判の争点>
1:癒着胎盤の程度、部位
2:手術中の出血の程度、部位
3:女性の死亡と手術との因果関係
4:胎盤剥離の際に医療器具(クーパー)を使ったことの妥当性
5:異状死の際の届出を義務付けた医師法違反の認識
6:捜査段階における加藤被告の供述の任意性


 大熊町の県立大野病院の産婦人科医が業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた医療過誤事件で、最終の公判前整理手続きとなる第六回協議が十四日、福島地裁で開かれ、手術と死亡との因果関係など六項目の争点が確定した。

 これまでの協議を受けて地裁側が争点を提示し、検察、無罪主張の弁護側が同意した。癒着胎盤というきわめてまれな症状に対する医師の措置の是非が問われることになる。初公判は来年一月二十六日。全国の医療団体などが注目する事件は女性の死亡から二年を経て、舞台を法廷に移す。

 起訴されたのは大熊町・・産婦人科医加藤克彦被告。起訴状によると、加藤被告は平成十六年十二月十七日、楢葉町の女性の帝王切開手術を執刀し、癒着した胎盤をはがし大量出血で死亡させた。女性が異状死だったのに二十四時間以内に警察署に届けなかった。

 弁護団によると、地裁が示した争点は表の通り。特に、癒着胎盤をはがしたことに対する妥当性では検察、弁護側の意見が対立している。検察側は「剥離を中止して子宮摘出手術などに移るべきだった」、弁護側は「出血を抑えるため剥離を続けるべきで、子宮摘出は最終手段」と主張している。

 争点の1-4は剥離の是非がポイント。弁護側は癒着の程度、範囲ともに検察側の認定よりも軽度と見ている。検察側が剥離による出血が多く、女性の死亡を予見できたとみているのに対し、弁護側は剥離行為以外が原因の出血もあり、予見できなかったと反論している。死亡と手術の因果関係では、加藤被告に過失があったかどうかを争う。

 手術ではさみのような医療器具クーパーを使ったことについて検察側は手ではがせなかったために用いたことを問題視したが、弁護側は「剥離の範囲を最小にし、より早く行うために使うことがある」とした。

 5の医師法違反の認識では、検察側は「被告は死体に異状があると認めた」とし、弁護側は「被告に異状死の認識がない」と反論。異状死の基準があいまいで、報告義務は憲法の黙秘権などに反するとしている。

 6の供述の任意性について弁護側は「被告の言い分を聞いてもらえなかった部分がある」としている。加藤被告は捜査段階で、手術による女性の生命への危険を予見できなかったとして容疑を否認している。

 癒着胎盤は、胎児と母体をつなぐ胎盤が子宮内の壁と癒着するケース。出産の後に通常行われる胎盤の除去が難しくなる。一万人に数例の珍しいケースとされ、加藤被告は事件前、執刀経験がなかった。

来年末に結審へ

 協議では後半の進行予定も決まった。来年末には結審する見込み。

 初公判では検察側、弁護側それぞれが冒頭陳述し、証拠書類を調べる。第二回から第五回までは、検察側が請求した証人尋問。手術に立ち会った医師や鑑定医が証言台に立つ。第六回以降は弁護側請求の証人尋問で、鑑定医などの出廷が見込まれる。いずれも午前十時から午後五時まで。

公判日程は次の通り。

初公判=1月26日
第2回=2月23日
第3回=3月16日
第4回=4月27日
第5回=5月25日

 福島地検福島地検の片岡康夫次席検事は十四日、公判前整理手続きの終了について「第一回公判で主張を明らかにし、事実関係の立証に勤めたい」とコメントした。

裁判に全国的注目

 事件発生から初公判までの経緯は左表の通り(省略)。県立病院医師の逮捕や全国の医療団体による抗議声明などを受け、裁判は全国的な注目を集めている。

 女性が帝王切開手術中に亡くなったのは平成十六年末。県は翌年三月に「病院側のミス」と認めた。今年二月、富岡署が「証拠隠滅の恐れがある」などとして加藤被告を逮捕し、県病院局を家宅捜索した。県立病院医師の逮捕は初めて。福島地検は同年三月、加藤被告を起訴した。

 起訴後、日本産科婦人科学会や日本産婦人科医会が「医療過誤ではない」とする声明を相次いで発表した。

 産婦人科医が不足する地方医療の現状がある一方、医療過誤が刑事事件として立憲されにくい背景もあることも、話題を呼ぶ一因となっている。

(以上、産科医不当逮捕事件
http://www.yk.rim.or.jp/~smatu/iken/sankafutotaiho/20061214.htm
より転載しました。)

****** 福島民友、2006年12月15日

争点7つに絞り込む/大野病院医療事故

 業務上過失致死と医師法(異状死の届け出義務)違反の罪に問われた県立大野病院の産婦人科医加藤克彦被告(39)=大熊町下野上=の公判前手続きの第6回協議が14日、福島地裁(大沢広裁判長)であり、争点を7点に絞り込んだ。同日で公判前手続きは終了した。

 争点は(1)癒着胎盤が分かった後の胎盤はく離の中止義務の有無(2)癒着部位と程度(3)出血部位と程度(4)死因と因果関係(5)はく離における手術用はさみ使用の妥当性(6)医師法による異状死届け出義務違反の有無(7)被告医師の供述の任意性。

 検察側は、女性患者の手術に加わっていた医師や看護師、検察側の病理鑑定を行った医師や専門医など11人を証人として申請。これに対し弁護側は、3人の採用を留保、8人に同意した。

 協議後に記者会見した主任弁護人の平岩敬一弁護士は、「胎盤はく離の途中で癒着胎盤が分かった場合、癒着胎盤をまずはく離した対応は医師として正当。これが過失となれば医療行為ができなくなる」と無罪を主張した。

 初公判は来年1月26日。その後は月1度の割合で公判を開き、2月以降は順次、証人尋問を行う予定。

(福島民友、2006年12月15日)


第1回婦人科腫瘍専門医筆記試験問題、日本婦人科腫瘍学会

2006年12月15日 | 婦人科腫瘍

問題001 外陰病変で下床に腺癌を伴うことがあるのはどれか。
a)vulvar intraepithelial neoplasia (VIN)
b)Bowen様丘疹
c)Paget病
d)硬化性苔癬
e)悪性黒色腫

解答:c

c)Paget病は通常は扁平上皮に限局する異型腺細胞からなる癌であるが、約10~20%の症例においてPaget病変下に腺癌を伴う(Fanning、1975)。

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問題002 外陰癌で誤っているのはどれか。
a)60~70歳代の女性に頻度が高い。
b)角化型扁平上皮癌が大部分を占める。
c)最も頻度が高い部位は腟前庭である。
d)進行癌では鼠径リンパ節転移が多い。
e)Ⅰ期癌には手術療法が第一選択である。

解答:c

c)外陰の扁平上皮癌の発生部位は、大陰唇および小陰唇(60%)、陰核(15%)、会陰(10%)である。症例の約10%では、病変が拡がり過ぎて発生部位を特定できない。症例の5%は多中心性である。(Berek & Novak's Gynecology 14th Ed, p.1553)

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問題003 Paget病で誤っているのはどれか。
a)外陰掻痒感や違和感を訴えることが多い。
b)スクリーニングに擦過細胞診が有用である。
c)術前評価では病巣周囲の多数の生検を行う。
d)手術では病巣辺縁から3 cm外周を皮切する。
e)約10%は間質浸潤を伴う浸潤Paget病である。

解答:e

臨床的には浸潤が疑われなくても、症例の約30%で病理組織学的に間質浸潤が認められる。(Atlas of Gynecologic Surgical Pathology, p32)

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問題004 外陰癌のFIGO進行期分類(1994)で誤っているのはどれか。
a)外陰に限局し、最大径1 cmで間質浸潤の深さ3 mm以下であればⅠa期である。
b)会陰に限局し、最大径3 cmであればⅡ期である。
c)肛門への浸潤があればⅢ期である。
d)両側の鼠径リンパ節に転移があればⅣa期である。
e)骨盤リンパ節に転移があればⅣb期である。

解答:a

a)Ⅰb期:外陰または会陰に限局した最大径2cm以下の腫瘍で、間質浸潤の深さが1mmを超えるもの。

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問題005 外陰癌のリンパ行性転移でただしいのはどれか。
(1)片側に限局する2 cm未満の腫瘍では、対側の浅鼠径節への転移は少ない。
(2)原発腫瘍の大きさが2 cm未満であれば、リンパ節転移は5%以下である。
(3)Cloquet節は、浅鼠径節のうちで最も内側に存在するリンパ節である。
(4)リンパ節転移は、浅鼠径節、深部大腿節、骨盤節の順に進展することが多い。
(5)浅鼠径節に転移を認める場合、その20~25%で骨盤節への転移がある。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:c

(2)腫瘍径<1.0cm リンパ節転移18.0%
     腫瘍径 1~2cm リンパ節転移19.4%

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問題006 外陰癌Ⅰa期の標準的治療はどれか。
a)レーザー蒸散
b)根治的外陰部分切除(radical local excision)
c)根治的外陰部分切除+患側鼠径リンパ節郭清
d)広汎外陰切除(radical vulvectomy)+両側鼠径リンパ節郭清
e)根治的放射線治療

解答:b

Ⅰa 期では鼠径リンパ節転移はないと考えられ、最低1cm 以上病変から離れて切除する根治的外陰部分切除術のみでよいと考えられる。

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問題007 腟癌で正しいのはどれか。
a)40歳代の女性に最も頻度が高い。
b)組織型では腺扁平上皮癌が最も多い。
c)発生部位では中1/3に最も頻度が高い。
d)下1/3に発生した癌は鼠径リンパ節に転移する。
e)Diethylstilbesterolを服用した女性に腺癌が発生する。

解答:d

a)原発性腟癌の好発年齢は50~65歳で、平均年齢は約60歳である。

b)腟悪性腫瘍の組織型別頻度では扁平上皮癌が大多数を占めている。

c)好発部位は腟の上部1/3である。

d)所属リンパ節
  腟の上部2/3の場合:骨盤リンパ節
  腟の下部1/3の場合:鼠径リンパ節

e)欧米では、かつて切迫流産治療のためにDES (Diethylstilbesterol)が投与された妊婦から生まれた女児に、腟癌(明細胞癌)が好発し、大きな社会問題となった。

******

問題008 腟癌の臨床進行期(FIGO)で正しいのはどれか。
(1)腟壁に限局していればⅠ期である。
(2)傍組織に浸潤するが骨盤壁に達していないとⅡ期である。
(3)傍組織浸潤が骨盤壁に達しているとⅢ期である。
(4)外子宮口に達していればⅢ期である。
(5)膀胱に胞状浮腫があればⅣ期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:a

(4)腟病変が子宮腟部を侵しかつ外子宮口に及ぶものは子宮頸癌に、外陰を侵すものは外陰癌にそれぞれ分類される。

(5)Ⅳa期:膀胱、または直腸の粘膜に浸潤する腫瘍および/または小骨盤を超えて進展する腫瘍   
 注:胞状浮腫のみではⅣ期としない

******

問題009 子宮頚癌のリスク因子でないのはどれか。
a)HPV
b)喫煙
c)初交年齢
d)アルコール
e)性パートナー数

解答:d

子宮頸癌は、主に前癌病変である異形成から進行し発生すると考えられている。この前癌病変のリスクが、HPV感染、HIV感染、喫煙により高くなる事が報告されている。またこれらの感染は、複数のsex partnerをもつ者、partner が複数のsex partnerをもつ者、で多くなると考えられている。

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問題010 頚癌検診における細胞採取で正しいのはどれか。
a)腟円蓋から細胞を採取する。
b)子宮腟部表面と頚管内から細胞を採取する。
c)妊娠中は偽陽性が多いので避けるほうがよい
d)スライドグラスへ塗布した後30分以内に固定する。
e)自己採取による癌検出率は通常の検診と同様である

解答:b

子宮頸部の異形成、上皮内癌、微小浸潤癌の発生部位は扁平円柱上皮境界であり、当該部位の細胞が確実に採取されている場合には、標本上に外頸部由来の扁平上皮細胞と頸管内膜由来の円柱上皮細胞の両者が観察される(どちらか一方の細胞を欠く場合は、診断に不適当な標本と判定される)。

******

問題011 子宮頸部細胞診クラスⅣから推定される病変はどれか。
a)軽度異形成
b)中等度異形成
c)高度異形成
d)上皮内癌
e)微小浸潤癌

解答:d

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問題012 子宮頸部上皮内癌の細胞診所見で正しいのはどれか。
(1)平滑な核縁
(2)著しい核の大小不同
(3)出血壊死性の背景
(4)錯角化または異角化
(5)傍基底型の癌細胞

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:b

上皮内癌細胞の形態的特長としては、細胞分化が少なく、主として傍基底型の異型細胞が集族性に出現する。細胞は、その分化程度の差により卵円形から紡錘形までの多彩な形態をとる。核クロマチンは増量し、粗大顆粒状を示す。N/C比は増大し、ときに裸核を見る。背景は清明である。

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問題013 新コルポスコピー所見分類(日本婦人科腫瘍学会、2005)で正しいのはどれか。
a)ヨード塗布試験が必須である。
b)移行帯は異常所見に分類される。
c)白色上皮は軽度または高度にgradingする。
d)白斑は異常所見から除かれた。
e)HPV感染所見を特別に分類する。

解答:c

b)移行帯は正常所見に分類される。

新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005
A) 正常所見 NCF
 1 扁平上皮  S
 2 円柱上皮  C
 3 移行帯  T
B) 異常所見  ACF
 1 白色上皮  W
    軽度所見 W1
    高度所見 W2
       腺口型(腺口所見が主体の場合) Go
    軽度所見 Go1
    高度所見 Go2
 2 モザイク  M
    軽度所見 M1
    高度所見 M2
 3 赤点斑  P
    軽度所見 P1
    高度所見 P2
 4 白斑  L
 5 異型血管域  aV
C) 浸潤癌所見 IC
 コルポスコピー浸潤癌所見 IC-a
 肉眼浸潤癌所見 IC-b
D) 不適例  UCF
 異常所見を随伴しない不適例 UCF-a
 異常所見を随伴する  UVF-b
E) その他の非癌所見 MF
 1 コンジローマ Con
 2 びらん Er
 3 炎症 Inf
 4 萎縮 Atr
 5 ポリープ Po
 6 潰瘍 Ul
 7 その他 etc

******

問題014 子宮頸部にみられたポリープ状の病変である。組織診断はどれか。(図 1)
a)尖形コンジローマ
b)正常頚管腺上皮
c)微小頚管腺過形成
d)腺癌
e)扁平上皮癌

【問題14-図1】

解答:c

******

問題015 子宮頸部腫瘤の生検標本である。組織診断はどれか。(図 2)
a)内頸部型ポリープ
b)正常重曹扁平上皮
c)扁平上皮癌
d)腺癌
e)尖形コンジローマ

【問題15-図2】

解答:e

******

問題016 子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染で正しいのはどれか。
a)HPVは異形成の90%以上に検出される。
b)HPV感染の有無は血清抗体価で判定できる。
c)HPVの型分布は世界中でほぼ同じである。
d)ハイリスクHPVをもつ異形成の約90%が上皮内癌へ進展する。
e)HPVワクチンはタイプ非特異的に感染予防効果をもつ。

解答:a

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問題017 子宮頚癌発生におけるハイリスク型HPVはどれか。
a)11型
b)42型
c)43型
d)44型
e)52型

解答:e

HPVは子宮頸癌発症との関連性が確認されている。16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型などがハイリスク型である

******

問題018 ヒトパピローマウイルス(HIV)で正しいのはどれか。
a)頚部扁平上皮癌で最も高頻度に検出されるHPVは52型である。
b)頚部腺癌で最も高頻度に検出されるHPVは18型である。
c)細胞診に異常のない女性でのHPV検出頻度は約50%である。
d)koilocytosisを示す細胞ではHPVは検出されない。
e)妊娠中にはHPVの増殖能(replication)が低下する。

解答:b

a)頚部扁平上皮癌では16型が最も高頻度である。
c)若年者には、HPV感染は30%前後で、50歳以降では5 %程度である。

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問題019 子宮頸癌の臨床進行期分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)進行期決定に迷う場合は重い方に分類する。
b)進行期の決定にはCT所見とMRI所見を参考にする。
c)術前診断0期で摘出子宮に微小浸潤癌があればⅠa期とする。
d)膀胱内洗浄液中に癌細胞があればⅣa期とする。
e)進行期決定に頚部円錐切除の病理所見は考慮しない。

解答:c

******

問題020 子宮頚癌Ⅰa2期(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)浸潤の深さ3 mmを超え5 mm以内で広がり10mmを超えない。
b)脈管侵襲が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
c)癒合浸潤が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
d)広がりの計測には微小浸潤巣の最大の幅を計測する。
e)深さの計測の基点は浸潤巣直上の最も深い表層基底膜とする。

解答:d

a)浸潤の深さ3 mmを超えるが5 mm以内で、広がりが7 mmを超えないもの。

b)c)癒合浸潤、脈管侵襲がある場合はその旨記載する。進行期の判定には採用しない。

e)深さの判定は浸潤の開始している基底膜部位から最も深い部位までの距離となる。

******

問題021 TNM分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)TX - 原発腫瘍を認めない。
b)TO - 浸潤前癌
c)NX - 所属リンパ節に転移を認めない。
d)N1 - 所属リンパ節に転移を認める。
e)MO - 遠隔転移の検索が行われていない。

解答)d

******

問題022 子宮頚癌の臨床進行期と治療法の組み合わせで誤っているのはどれか。
a) 0 期 - レーザー円錐切除術
b)Ⅰa1期 - 単純子宮全摘出術
c)Ⅰa2期 - 子宮頸部円錐切除術
d)Ⅰb1期 - 広汎子宮全摘出術
e)Ⅲb期 - 化学放射線療法

解答:c

c)Ⅰa2期 - 広汎子宮全摘出術

******

問題023 子宮頸癌の治療で誤っているのはどれか。
a)広汎子宮全摘出術では症例によっては卵巣温存が可能である。
b)広汎子宮全摘出術で傍大動脈節郭清の治療的意義は不明である。
c)放射線療法では全骨盤照射と腔内照射を組み合わせる。
d)化学放射線療法ではプラチナ製剤を同時に用いる。
e)化学療法後の放射線療法は生存期間を延長させる。

解答:e

Neoadjuvant Chemotherapy(NAC)後の放射線治療については、メタアナリシスの結果、その効果が否定的な結論となったため、最近は、試みられなくなっている。

******

問題024 子宮頸癌の各組織型で誤っているのはどれか。
a)腺癌は扁平上皮癌に比し放射線感受性が低い
b)小細胞癌は腺扁平上皮癌に比し予後不良である。
c)すりガラス細胞癌は扁平上皮癌に比し予後不良である。
d)扁平上皮癌で角化型は非角化型に比し予後不良である。
e)腺癌のうちvilloglandular adenocarcinomaは予後良好である。

解答:d

d)角化型、非角化型の分類と予後との関連は少ないと考えられている。

e)villoglandular adenocarcinoma:肉眼的には頚管内に小乳頭状の腫瘍として観察される。長く細い茎を有する絨毛状構造を特徴とする。上皮細胞の異型は軽度で浸潤は浅い。経口避妊薬との関連性が指摘されている。若い人に多く、予後は良好とされている。円錐切除や単純性子宮全摘出術が推奨される。

******

問題025 子宮頚部の上皮内腺癌で誤っているのはどれか。
a)子宮頚部細胞診が診断に有用な場合がある。 
b)コルポスコピーで病変の拡がりを評価できない。
c)円錐切除で断端陰性であれば残存病変はない。
d)リンパ節転移は認められない。
e)妊孕能温存は可能である。

解答:c

円錐切除で断端陰性の症例においても、6~40%程度に病変の残存が証明されたとの報告がある。

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問題026 子宮内膜増殖症で正しいのはどれか。
a)子宮体癌取り扱い規約で4 種類に分類されている。
b)異型増殖症の内膜細胞診による正診率は90%を超える。
c)異型増殖症では篩状(cribriform pattern)の腺管増生が著しい
d)異型増殖症が腺癌へと進展する割合は約5 %である。
e)異型増殖症と腺癌との鑑別にMRI検査が有用である。

解答:a

a)単純型子宮内膜増殖症、複雑型子宮内膜増殖症、単純型子宮内膜異型増殖症、複雑型子宮内膜異型増殖症。

c)腺癌では篩状構造をとるが、異型増殖症の場合はそのような構造は示さない。

d)腺癌への進展率:単純型子宮内膜増殖症が1 %、複雑型子宮内膜増殖症が3 %、単純型子宮内膜異型増殖症が8 %、複雑型子宮内膜異型増殖症が29%と報告されている(Kurmanら)。

******

問題031 子宮内膜細胞診で正しいのはどれか。
a)内膜細胞の細胞異型のみを評価する。
b)内膜細胞がみられなければ再検査を指示する。
c)細胞診陰性であれば子宮内膜癌は否定できる。
d)疑陽性の場合、内膜組織診は不要である。
e)卵巣癌細胞が検出されることはない。

解答:b

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問題032 わが国の女性10万人あたりの子宮体癌罹患数はどの程度か。
a)1 人未満
b)6~15人
c)106~115人
d)506~515人
e)1006~1015人

解答:b

子宮体癌は近年増加傾向にあり、推定罹患数は1996年4507人(女性10万人あたり5.7人)、2015年には6623人(女性10万人あたり7.3人)にまで増加すると予測されている。(婦人科腫瘍の臨床病理、改訂第2版、118頁)

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問題033 タイプⅡ子宮体癌で正しいのはどれか。
a)肥満
b)閉経後
c)予後良好
d)類内膜腺癌
e)エストロゲン依存性

解答:b

Ⅰ型子宮体癌
 発生機序:unopposed estrogenの長期持続により、子宮内膜異型増殖症を経由しそれが癌に至るもの
 好発年齢:閉経前~閉経早期
 頻度:80~90%
 病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:あり
 組織型:類内膜腺癌
 分化度:高分化型
 筋層浸潤:軽度
 予後:比較的良好
 遺伝子:K-ras(癌原遺伝子)、PTEN(癌抑制遺伝子)の変異が高率で見られる

Ⅱ型子宮体癌
 発生機序:子宮内膜異型増殖症を介さないで癌化するもの(de novo癌)
 好発年齢:閉経後
 頻度:10~20%
 病巣周辺の子宮内膜異型増殖症:なし
 組織型:漿液性腺癌、明細胞癌など
 分化度:低分化型
 筋層浸潤:高度
 予後:不良
 遺伝子:p53(癌抑制遺伝子)の変異が高率に見られる

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問題034 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
(1)浸潤が筋層1/2を超えるものはⅠb期である。
(2)頚管腺のみを侵すものはⅡb期である。
(3)腟に転移を認める場合はⅢb期である。
(4)骨盤リンパ節に転移があればⅢc期である。
(5)鼠径リンパ節に転移があればⅣb期である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:e

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問題035 子宮体癌の手術進行期分類(取り扱い規約、1996年)で正しいのはどれか。
a)腹腔細胞診で陽性であったのでⅠc期とした。
b)卵巣に転移がみられたのでⅡa期とした。
c)大網に径1 cmの転移がみられたのでⅢb期とした。
d)子宮傍結合織浸潤がみられたのでⅢc期とした。
e)傍大動脈リンパ節転移がみられたのでⅣ期とした

解答:d

a)b)Ⅲa 期:漿膜ならびに/あるいは付属器を侵す、ならびに/あるいは腹腔細胞診陽性のもの。

c)Ⅳb 期:腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの。

d)子宮傍結合織浸潤例はⅢc期とする。

e)Ⅲc 期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの。

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問題036 子宮体癌の治療で正しいのはどれか。
(1)若年女性で類内膜腺癌G1かつⅠa期と予測される場合は子宮温存を考慮する。
(2)傍大動脈リンパ節郭清が長期予後改善に寄与するか否かは不明である。
(3)臨床進行期Ⅱ期の症例に対する腟壁切除の有用性は証明されている。
(4)進行例に対する手術療法の意義は低く、腫瘍減量手術は行うべきでない。
(5)内視鏡下手術は確立しておらず、その適応は慎重に考慮すべきである。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

解答:b

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問題037 子宮体癌の化学療法で正しいのはどれか。
(1)中リスク症例の術後化学療法は放射線療法と同等かそれ以上に有効である。
(2)高リスク症例で術後残存腫瘍2 cm以下の場合に化学療法が推奨される。
(3)アンスラサイクリン系とプラチナ製剤の併用が推奨される。
(4)進行例に対する術前化学療法の有効性が証明されている。
(5)放射線療法後の再発例にはイリノテカンが有用である。

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

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問題038 子宮体癌化学療法のkey drugはどれか。
a)エトポシド
b)ジェムシタビン
c)アドリアマイシン
d)サイクロフォスファミド
e)5-FU

解答:c

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問題039 子宮内膜増殖症および体癌の治療で誤っているのはどれか。
a)単純型子宮内膜増殖症に対して単純子宮全摘術を施行した。
b)子宮内膜異型増殖症に対して黄体ホルモン療法を施行した。
c)体癌で浸潤が筋層1/2を超えており傍大動脈リンパ節郭清を施行した。
d)体癌で頚部間質に深い浸潤を認めたため広汎子宮全摘出術を施行した。
e)体癌の高リスク例にdoxorubicinとcisplatinによる化学療法を施行した。

解答:a

******

問題040 子宮肉腫の治療で正しいのはどれか。
a)第一選択の治療法は手術療法である。
b)標準的手術術式は広汎子宮全摘出術である。
c)進行例に対しては化学療法が有用である。
d)平滑筋肉腫には黄体ホルモン療法が奏功する。
e)低悪性度内膜間質肉腫の5年生存率は50%以下である

解答:a

******

問題049 胞状奇胎娩出後の管理に有用な検査はどれか。
(1)尿中hCG値測定
(2)胸部レントゲン撮影
(3)血中エストラジオール値測定
(4)骨盤CT
(5)基礎体温測定

a(1)(2)(3)、b(1)(2)(5)、c(1)(4)(5)、d(2)(3)(4)、e(3)(4)(5)

問題050 絨毛癌肺転移に対してまず行う治療はどれか。
a)胸部腫瘤の摘出術
b)胸部腫瘤と子宮の摘出術
c)MTX単独化学療法
d)TJ化学療法
e)EMA-CO化学療法

問題051 卵巣腫瘍の組織分類で正しい組合わせはどれか。
a)ブレンナー腫瘍 - 表層上皮性・間質性腫瘍
b)未分化胚細胞腫 - 表層上皮性・間質性腫瘍
c)漿液性嚢胞腺腫 - 性索間質性腫瘍
d)顆粒膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍
e)莢膜細胞腫 - 胚細胞腫瘍

問題052 卵巣腫瘍組織分類で胚細胞腫瘍でないのはどれか。
a)卵黄嚢腫瘍
b)ステロイド細胞腫瘍
c)未熟奇形腫
d)卵巣甲状腺腫
e)カルチノイド

******

問題053 卵巣腫瘍の組織学的特徴で誤っているのはどれか。
a)顆粒膜細胞腫 - Call-Exner body
b)未分化胚細胞腫 - Schiller-Duval body
c)明細胞癌 - hobnail cell
d)Krukenberg腫瘍 - signet-ring cell
e)Brenner腫瘍 - coffee-bean nuclei

解答:b

卵黄嚢腫瘍:特徴ある多彩な組織像を呈する腫瘍で、種々の組織像が混在し、移行もみられる。免疫組織化学的にAFPが証明される。主として次の4 組織像からなる。
 ①内胚葉洞型:最も高頻度で、網目状、Schilller-Duval body(腫瘍細胞が血管周囲に配列),hyaline globules(好酸性球状の硝子様小球)などがみられる。
 ②多嚢胞性卵黄型:卵黄嚢に類似した多数の嚢胞からなり、一層の扁平な中皮様細胞に被覆。
 ③類肝細胞型:未熟肝細胞あるいは肝細胞癌に類似する腫瘍細胞が索状に配列。
 ④腺型:立方形の腫瘍細胞が管状、胞巣状あるいは原腸状配列を示す。

******

問題061 卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化で正しいのはどれか。
a)頻度は約10%である。
b)閉経後の患者に多い。
c)腫瘍径の小さいものが多い。
d)両側性発生例が多い。
e)組織型は明細胞腺癌が多い。

解答:b

a)成熟嚢胞性奇形腫の悪性化は約2%の頻度である。

b)閉経後女性に発生することが多い。

c)腫瘍径の大きいものが多い。腫瘍の急速な増大を示す場合がある。

d)すべてが片側発生である。

e)80%は扁平上皮癌である。

******

問題062 若年者の卵巣悪性胚細胞性腫瘍で正しいのはどれか。
a)原則として妊孕性温存手術を考慮する。
b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が低い。
c)未熟奇形腫では血性LDH高値を示す。
d)絨毛癌の予後は良好である。
e)治療後の問題点は妊孕能のみである。

解答:a

b)未分化胚細胞腫は放射線感受性が高い。

******

問題077 ヒトパピローマウイルス(HPV)と関係が深い癌抑制遺伝子はどれか。
(1)p53
(2)BRCA1
(3)FHIT
(4)NF1
(5)Rb

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:b

HPVのもつ2つの癌原遺伝子、E6遺伝子とE7遺伝子が発癌に関与している。E6蛋白質とE7蛋白質はHPVが産生する蛋白質で、宿主細胞の癌抑制遺伝子産物であるp53蛋白質、Rb蛋白質と結合し、その機能を抑制する。

******

問題099 癌化学療法に使用するG-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤で正しいのはどれか。
a)好中球減少Grade 4が確認されたらG-CSF製剤の投与が必須である。
b)好中球数が5,000/mm3を超えたらG-CSF製剤の投与を中止する。
c)G-CSF製剤や5-HT3受容体拮抗剤は原則的に抗癌剤と同日投与する。
d)有熱性好中球減少症Grade 3では第3世代抗菌剤の投与が必須である。
e)5-HT3受容体拮抗剤は遅発性嘔吐に著効する。

解答:b

G-CSF製剤の癌化学療法による好中球減少症に対する適応は好中球数が500/μl(白血球数1000/μl)未満の時である。好中球数が5000/μl(白血球数10000/μl)以上で投与中止と規定されている。

******

問題100 抗癌剤の毒性が現れやすい臓器・組織で誤っているのはどれか。
a)ドキソルビシン - 心筋
b)エトポシド - 呼吸器
c)イリノテカン - 消化器
d)パクリタクセル - 神経
e)シクロホスファミド - 卵巣

解答:b


地方病院での医師確保策

2006年12月14日 | 地域周産期医療

医師の偏在が顕著となってきており、とりわけ、地方公立病院では、産婦人科、小児科、麻酔科などの医師を確保するのが非常に難しくなっています。

考えてみれば、今、どこもかしこも医師不足で就職先はいくらでもある中で、『ド田舎、超多忙、高い訴訟リスク、収入は他と同じ』という最悪の条件で、いくら熱意をもって人材集めに全国を駆け回っても、絶対にうまくいく筈がありません。

都会のもっとはるかに条件のいい病院はいくらでもあるわけですから、それらの好条件の病院との医師獲得競争に見事打ち勝って医師を確保しようと思えば、何らかのインセンティブが必要なのは当然です。


地元でお産「できない」/拠点病院へ集約化 (朝日新聞)

2006年12月12日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

昨年の分娩件数が177件だったということは、平均すれば2日に1件程度の分娩件数ということですから、実質的な仕事量は大したことありません。

しかし、お産はいつ始まっていつ終わるのか全く予測がつかないので、1人勤務態勢の病院であれば、産科医は1年中病院の近辺にいなければならない生活になってしまい、休みも全く取れません。

その上、いざと言う時には、常勤医1人だけでは人手が全く足りず、適切な医学的対応も困難です。

今後のさらなる周産期医療体制の崩壊を阻止するために、産科医・助産師・小児科医・麻酔科医などの拠点病院への集約化を、全国的規模で早急に進めてゆく必要があると思います。

**** 朝日新聞、北海道、2006年12月10日

地元でお産「できない」/拠点病院へ集約化

■2時間かけ釧路へ 妊産婦「不安」
 ―― 産婦人科常勤医ゼロ 根室では

 産婦人科の看板を掲げながら、お産ができない医療施設が道内で増えている。産科医の減少や拠点病院への集約化で、診療はできても分娩や入院をするだけの態勢が取れないためだ。近隣の病院に通うにしても、広い北海道は妊産婦に大きな負担を強いる。地元でお産が出来なくなってから3カ月が過ぎた根室市の場合を見た。

 市立根室病院(羽根田俊院長、199床)は、北大が派遣医を引き上げて1人の常勤態勢が維持できなくなり、9月以降は、釧路市の病院の派遣医が週2回だけ外来診療にあたる。入院や出産はできない。市内唯一の産婦人科だったため、お産は釧路市など近隣の病院に頼らざるを得なくなった。

    ◇

■誘発分娩勧める

 「やっと子どもが出来たのに、こんどは産むのが大変」

 今月半ばが出産予定の根室市内の女性(32)は、釧路市の病院で不妊治療を続け、結婚5年目で念願の子どもを授かった。お産は地元でと考えていたが、市立根室病院の分娩休止で釧路での出産準備を進めている。

 根室から釧路までは車で約2時間。雪道のいまはさらに時間がかかる。出産が間近になって会社員の夫(32)に晩酌をやめてもらった。緊急以外に救急車は使えないからだ。「万が一を考えると不安です」と話す。

 11月末に釧路市内で長女を出産した26歳の女性は、妊娠37週目だった。予定日にはまだ2週間あったが、胎児の成長が進んだこともあって薬で陣痛を促す誘発分娩で、入院から2日目で出産した。

 市立根室病院は、分娩休止にあたって作成した緊急対応マニュアルの中で、妊産婦に計画入院による誘発分娩を勧めている。女性の母親(54)は「自然な陣痛を待つにこしたことはないが、行き来を考えればそんなゆとりはない」と割り切る。

 別の女性(31)は、公務員の夫(29)が転勤する前に、実家のある根室で2人目の子どもをつくろうと夫婦で考えていた。だが地元では産めなくなった。「上の子を抱えて遠くでの出産は大変。転勤後も『里帰り出産』ができないし、どうしたものか」

 妊産婦らには、事前に休止の予定が伝えられていたため大きな混乱はなかったが、羽根田院長は「地方の一医療機関で解決できる問題ではないとはいえ、結局は患者にしわ寄せが行く」と苦しい胸の内を語った。

    ◇

 北大はこの春から、派遣医の1人勤務態勢を改善するため、拠点病院への集約化を進めている。市立根室病院はその影響を受けた。今年2月、福島県で医療ミスを巡って産科医が逮捕された事件が背景にある。

 水上尚典・北大産婦人科教授は「緊急の際、医師1人では判断ミスの危険性が高まる。引き上げは苦渋の判断だった」とし、再開には「北大単独では難しい。旭川医大、札幌医大の3者による態勢づくりができれば」という見方をする。

    ◇

■市は負担軽減策

 市立根室病院が昨年度扱った出産件数は177件で、市に届け出のあった出生数の7割を占めた。市は分娩休止による妊産婦の負担を軽減するため、出産時の交通費を助成したり、出産前後に子どもの保育を請け負ったりする新制度を設けた。

 これまで、早産や流産につながる緊急事態は発生していないが、万が一の救急車による搬送に備えて、助産師と看護師がいつでも出動できるよう、24時間態勢も取り始めた。

 69年に約5万人あった根室市の人口は、水産業の衰退で現在3万1千人。入院・分娩の休止で出産に二の足を踏むケースが増え、人口減にさらに拍車がかかるという不安も市民の間に広がっている。

 市は11月、長谷川俊輔市長を本部長とする「医師確保対策プロジェクト」を立ち上げた。医師不足は産婦人科にとどまらない。長谷川市長は「国による医療制度の見直しが地方を追いつめている。広大な北海道は、その特殊性を考慮した手当てが必要だ」と訴える。

■拠点病院への集約化 国が指導

 厚労省が3年に一度行っている医療施設調査によれば、道内の産婦人科・産科の病院、診療所のうち、実際に分娩を扱ったのは、96年が253中165カ所(65.2%)に対し、05年は198カ所中114カ所(57.6%)。また、産婦人科の医師数自体も96年度の418人(他科との重複を含む)から04年度は366人まで減った。

 厚労省は、産婦人科や小児科については拠点病院への医師の集約化を各都道府県に指導している。「通院に不便な地域などでは、拠点病院に宿泊用の付帯施設を設けるなど、地域の実情に即した医療提供態勢をつくるため、行政が積極的に関与していくことが必要だ」(同省医政局)としている。

(朝日新聞、北海道、2006年12月10日)

****** 参考:

産科医集約(北海道・砂川市立病院の例)

読売新聞:[解説]産科医減少 対策は

北海道新聞:旭医大派遣の産婦人科医、室蘭・日鋼病院から引き揚げ

北海道の産科医不足の状況

産院が消えた北海道根室市から


第1回婦人科腫瘍専門医試験

2006年12月10日 | 医療全般

昨日は、第1回婦人科腫瘍専門医試験(日本婦人科腫瘍学会)が実施され、午前中に筆記試験(100問、2時間)があり、午後に面接試験がありました。

従来、産婦人科診療に従事する医師は、大学卒業後5年後に受験資格ができる産婦人科専門医資格と母体保護法指定医師資格はほぼ全員が取得してきました。今までは、その2つの資格さえ取得しておけば、資格的にはほぼオールマイティで済んでいたわけですが、最近は、産婦人科の中でも細分化された周産期、腫瘍、不妊症、内視鏡手術などのそれぞれの専門分野の専門医資格制度があいつで創設されました。

医療の世界では、最近、救急医療に従事するのは救急専門医の資格取得者でなくてはならないとか、助産に携わることができるのは医師か助産師の資格取得者に限定されるとかの規制が非常に厳しくなってきつつあり、自分の専門分野の専門医資格を取得してないと、将来、『無資格診療』とか言われて、へたをすると何もできなくなってしまう可能性もあります。

現在の婦人科腫瘍『暫定』指導医の資格は5年後には消滅してしまうので、とりあえず当面は受験しなくても全く困らないのですが、5年後以降も婦人科悪性腫瘍の診療に従事する予定のある者はこの資格を取得してないと、もしかしたら今まで普通にできていた専門分野の診療がいきなり無資格診療になってしまってできなくなってしまう可能性もあります。私も年齢的に5年後はまだ引退してないはずなので、立場上、やむなくこの試験を受けてきました。

今回は、第1回の最初の試験だったので、一体全体、どんな試験になるのか?さっぱりわかりませんでした。試験範囲もさっぱりわかりませんので、何をどこまで勉強したらいいのかも全くわかりませんでした。また、果たしてどの程度の合格率なのか?も全くわかりません。

会場には、非常に多くの受験生がいました。受験番号で席が指定されていて、たまたま席が隣り合わせた『受験生』は、試験が終わってからちょっと話してみたら大学の同窓(出身大学が同じ)ということが判明し、共通の知り合いや恩師の話題などで試験後に大いに話が弾みました。

なお、今回の受験対策用に、『婦人科腫瘍学の基本必修知識』をざっとまとめましたので、一応、このブログにもアップしておきます。今回の筆記試験の問題冊子も持ち帰ることができましたので、近日中にアップできる予定です。


日本医学会、声明文

2006年12月08日 | 大野病院事件

****** 日本医学会ホームページより転載
http://www.med.or.jp/jams/

                    平成18年12月6日

          声明文

                      日本医学会長
                        高久 史麿

 本年2月,大野病院産婦人科医師が業務上過失致死と医師法第21条違反で逮捕されたことにつきまして,すでに多くの関連団体・学会から声明文・抗議文が提出されたことはご存じの方が多いと思います.

 事例は前置胎盤と術中に判明した予測困難な癒着胎盤が重なった事例であったと報告されています.この事例は担当医が懸命な努力をしたにもかかわらず医師不足や輸血用血液確保の困難性と地域における医療体制の不備が不幸な結果をもたらした不可抗力的事例であり,日本における医療の歪みの現れといわざるを得ません.地方や僻地では一人の医師が24時間365日体制で過酷な労働条件の中で日本の医療を支えています.過酷な医療環境の中で地域の医療に満身の努力をされ,患者側からも信望の厚かったといわれる医師が,このような不可抗力的事故で業務上過失致死として逮捕されたことは誠に遺憾であります.むしろ過酷な環境を放置し,体制整備に努力しなかった行政当局こそ,その非を問わなければならないでしょう.不可抗力ともいえる本事例で結果責任だけをもって犯罪行為として医療に介入することは決して好ましいと思いません.

 本事例は業務上過失致死のみならず医師法第21条違反にも問われております.この第21条は明治時代の医師法をほぼそのまま踏襲しており,犯罪の発見と公安の維持が目的であったといわれています.異状死の定義については平成6年の日本法医学会の異状死ガイドライン発表以来数多くの学会で論争が続いている問題であります.日本法医学会の「過失の有無に係わらず異状死として警察に届け出る」については,昨年9月にスタートした厚生労働省の医師法第21条の改正も視野に入れた「医療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を含め,本件逮捕以降,政府・厚生労働省・日本医師会・各学会等関連団体で検討に入ったばかりであり,異状死の定義も定かでなくコンセンサスの得られていない医師法第21条を根拠に逮捕することは,その妥当性に問題があるといわざるを得ません.過失の有無にかかわらず届け出なければ届出義務違反で逮捕される.届け出たら重大な医療過誤が疑われ,業務上過失致死罪に問われる.医師は八方塞がりであります.純然たる過失のない不可抗力であっても,たまたま重篤な合併症や死亡事例に遭遇したことで逮捕されるようでは必要な医療を提供できず,大きな国家的・国民的喪失となります.消極的・防御的医療にならざるを得ず,このような逮捕は萎縮医療を促進させ,医療の平等性・公平性のみならず医療・医学の発展そのものを阻害します.若い医師は事故の多い診療科の医師になることを敬遠しており,ますます医師は偏在することになります.

 日本医学会は異状死の問題に関する委員会でこの問題を検討しますが,今回,大野病院産婦人科医師の公判が近々に始まることを契機として以下の学会から同様の要望が出ていますので,これらの要望をまとめる形で日本医学会から声明を発します.

                             記

日本整形外科学会
日本周産期・新生児医学会
日本消化器外科学会
日本超音波医学会
日本小児神経学会

****** 日本医学会ホームページより転載

県立大野病院事件についての自ブログ内リンク集

****** 読売新聞、2006年12月7日

逮捕は医療委縮させる、帝王切開死で医学会声明

 福島県立大野病院(福島県大熊町)の産婦人科医(39)が帝王切開手術で女性(当時29歳)を失血死させたとして、業務上過失致死罪などで起訴された事件を巡り、日本医学会(高久史麿会長)は6日、「医師不足や地域医療体制の不備がもたらした不可抗力的事例で、結果責任だけで犯罪行為とするのは好ましくない」との声明を発表した。

 声明文では、「たまたま重い合併症や死亡事例に遭っただけで逮捕されるのでは、必要な医療は提供できない」として、「逮捕は医療を委縮させる。事故の多い診療科が敬遠され、医師が偏在化する」と訴えている。

(読売新聞、2006年12月7日)

****** 共同通信、2006年12月7日

「不可抗力的事故」と声明 福島の医療事故で医学会

 福島県立大野病院で帝王切開を受けた女性が死亡し、執刀医が業務上過失致死と医師法違反の罪で起訴された医療事故で、日本医学会(高久史麿(たかく・ふみまろ)会長)は6日、「担当医が不可抗力的事故で逮捕されたことは誠に遺憾」とする声明を発表した。

 声明は、来年1月26日に福島地裁で開かれる初公判を前に発表。「担当医は懸命な努力をしたにもかかわらず、医師不足や輸血用血液確保の困難性などが不幸な結果をもたらした」とした上で「たまたま重篤な合併症や死亡事例に遭遇したことで逮捕されるようでは、消極的、防御的医療にならざるを得ない」としている。

 また各地で問題になっている産科医不足にも触れ「若い医師は事故の多い診療科の医師になることを敬遠しており、ますます医師は偏在する」と指摘している。

(共同通信、2006年12月7日)


女性医師支援の新講義 信大が来年度開設へ

2006年12月05日 | 地域周産期医療

全国的に、基幹病院に勤務する産婦人科医の数がどんどん減っていく中で、地域の周産期医療体制を維持してゆくのがだんだん難しくなってきています。

せっかくこの業界に参入して来てくれた貴重な若い女性医師達が辞めないで済むような働きやすい職場環境を作ってゆく必要がありますし、働いている若い人たちのキャリア形成に寄与できるような体制を整えていく必要があります。

****** 信濃毎日新聞、2006年12月4日

女性医師支援の新講義 信大が来年度開設へ

 信大医学部は2007年度、医学部の学生と学内外の医師を対象に、選択科目講義「女性医師のキャリアについて考える」(仮称)を開設する。女性の医学生が増える一方、出産や育児でキャリア(職業上の経験・経歴)を中断せざるを得ない医師も多く、医師不足に拍車をかけることが懸念されている。講義は、女性医師のキャリア形成を学生時代から支援し、医師不足解消の社会ニーズに応える狙いで、同学部によると、全国でも珍しいという。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2006年12月4日)