ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

臨床研修の都道府県別来年度定員

2009年09月27日 | 医療全般

来年度の臨床研修の都道府県別募集定員が厚労省より発表されました。全体の募集定員は前年より749人少ない10699人でした。都道府県別の募集定員の上限設定により、募集定員ベースでは研修医の大都市集中がやや緩和されました。

ただし、激変緩和措置などにより、来年度分の募集定員は医学部卒業生の数(約8600人)より約2000人多いため、大都市集中の傾向は従来と比べてあまり変わらない可能性もあります。10月29日に発表される10年度マッチング結果の動向を見て、11年度以降の激変緩和措置の取り扱いが決められるそうです。今後、医学部卒業者数が年々増えていく過程で、全体の募集定員とマッチング参加者数がほぼ一致するようになり、制度見直しの効果が徐々にあらわれると思われます。

10年度臨床研修の募集定員  地方大学病院の割合が初めて増加 マッチングで研修医の動き注視

****** 読売新聞、2009年9月25日

研修医、6都府県合計4割切る 2010年度定員発表、大都市への集中緩和

 厚生労働省は24日、2010年度の新卒医師の臨床研修制度について、都道府県別の募集定員を発表した。

 全国の定員総数は09年度より749人(約6・5%)少ない1万699人。04年度の同制度開始以降で初めて、東京や大阪など大都市を抱える6都府県の割合が全体の4割を下回った。同制度により、都市部の一般病院に研修医が集中し、地方の大学病院などで医師不足を招いたとの批判を受け、厚労省が偏在解消のため今回の募集から都道府県別の定員上限を設けており、その影響も出たとみられる。

 これまで研修医が集中していた東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡の都市部6都府県の合計は全体の約39・7%で、09年度より1・6ポイント減少した。

 都道府県別で、募集定員の減少数が最も多かったのは、大阪の130人減(定員682人)、次いで愛知の116人減(同583人)、神奈川の81人減(同671人)。東京は33人減(同1511人)だった。増加数が多かったのは、埼玉の79人増(同421人)、石川の35人増(同168人)、鹿児島の30人増(同165人)など。埼玉はこれまで人口が多い割に研修医が少なく、今回は大幅に増員された。

(以下略)

(読売新聞、2009年9月25日)


新型インフルエンザ: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

2009年09月24日 | 新型インフルエンザ

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

新型インフルワクチン最終案 1900万人接種最優先

****** 読売新聞、2009年9月23日

「新型」母が発症なら隔離を…新生児対応案

 日本小児科学会(会長=横田俊平・横浜市立大教授)は23日、新型インフルエンザに感染すると重症化する可能性のある新生児に対する治療対応案を公表した。

 出産7日前から母親に症状があった場合、出産後はすぐ母子を1週間隔離し、搾った母乳を第三者が与えるよう推奨した。また、同学会は、小児患者のインフルエンザ脳症の治療指針の改訂版や急速に重症化する肺炎の診療戦略も発表した。

 新生児の対応案によると、母子間で飛沫感染しないように新生児を別の個室などに入れるのが望ましいが、それが無理な場合は1・5メートル以上の距離を置く。新生児の感染の可能性を考慮して他の新生児とも部屋を分ける。新生児が発症した場合は、タミフルを投与する。感染が疑われる母子が他の新生児に接触した場合は、その新生児の両親に十分な説明をし同意を求めたうえでタミフルを予防投与できるようにした。

 この日開かれた同学会緊急フォーラムでは、小児の重症例としてインフルエンザ脳症20例、重症化した肺炎14例が報告された。同学会は今後、全国3000医療機関から脳症や重症化する肺炎について情報収集し、有効な治療法などをさらに検討する方針。

(読売新聞、2009年9月23日)

****** 中日新聞、2009年9月18日

新型インフルエンザ 妊婦は? 

免疫低下し重症化も

 妊婦は新型インフルエンザに感染・発症しやすく、重症化もしやすい。出産を迎えるまでの期間、予防や感染拡大防止に注意点がある。医療機関側も妊婦の出産時の対応策をまとめ、受け入れ準備を進めている。 

 「急な発熱やのどの痛み、せき、頭痛など新型インフルエンザの症状に十分注意してください」

 東京都練馬区の豊玉保健相談所で開かれた妊婦対象の「母親学級」。全国的に感染が広がった九月初旬、当初予定していた妊婦体操に加え、保健師が感染予防策をまとめたチラシを妊婦に渡して、新型インフルエンザの説明を行った。保健師の伊藤可奈子さんは「妊婦さんから問い合わせもきていた」と、感染対策への関心は高い。

 参加者で、来年一月に出産予定の荒木和美さん(32)は「帰宅後のうがいと手洗いを夫と徹底している。感染した人がどこにいてもおかしくないので、できることをしている」。母親学級での同様な取り組みは各地で始まっている。

 【タミフルは?】

 新型インフルエンザにかかると妊婦は重症化しやすい。「妊娠すると免疫機能が低下し、また大きくなったおなかに圧迫されて呼吸器機能が低下するためとされている」と日本産婦人科医会常務理事で横浜市立大付属病院産婦人科部長の平原史樹医師は説明する。

 三八度以上の発熱など症状が現れたら、早く医療機関へ受診することが大切だ。抗インフルエンザ薬タミフルについて、日本産科婦人科学会は「投与された妊婦や出生した赤ちゃんに有害な副作用の報告はない」との米国の報告を基に、妊婦に使用を勧めている。

 【受診は?】

 同学会では、妊婦から妊婦への感染を予防するため、原則として内科など新型インフルエンザ治療を行っている医療機関への受診を勧めているが、一般病院への来院が難しい場合は、かかりつけの産科でも対応することにした。受診する際には、あらかじめ電話で連絡をし、マスクを着けて行くようにする。

 【ワクチンは?】

 数量に限りのあるワクチンは、国の定める優先接種の対象に妊婦も入っている。同医会は「妊娠のどの時期に接種してもかまわない」との見解だ。接種場所は、地域の医師会が医療機関のリストを作成し、国がまとめて十月中旬に公表する。接種希望者は原則、医療機関に予約して受けることになりそうだ。ワクチンは二回接種で、費用は合計約八千円と見込まれる。

感染中分娩 産後は母児別室に

 出産を受ける産科側の感染者受け入れ策もまとまった。同医会が今月まとめた「新型インフルエンザ罹患(りかん)(疑いを含む)の妊産婦の分娩(ぶんべん)施設における対応について」によると、感染・発症した妊婦は医療機関内で常時マスクを着用し、手洗いと手指消毒を徹底し、できるだけ移動させないようにする。

 個室を使用してもらうが、それが難しい場合には常に同じスタッフが対応するなど周囲との接触の機会を減らす。

 出産は、重症化していなければ一般の分娩室で行え、分娩後に室内の十分な消毒を行う。重症化している場合は「救命救急の機能のある総合周産期医療センターなどでないと対応が難しい」と平原医師は言う。

 出産前七日以内に発症していた場合や、感染・発症中に出産した場合は原則一週間、母児別室にし新生児への感染を避ける。同室の場合、くしゃみなどのしぶきがかからないよう一、二メートル以上離すか、新生児を保育器に入れて対応する。この間母乳は直接ではなく、搾乳したものをあげる。

 「いつ患者が出ても対応できるよう医療機関は臨戦態勢の意識が必要だ。限られた医療機関で対応するには、妊婦や家族にも協力してほしい」と平原医師は呼びかけている。

(中日新聞、2009年9月18日)

****** 朝日新聞、2009年9月23日

新型インフル、呼吸不全も注意 急に症状悪化 小児学会

 新型の豚インフルエンザで脳症になった子どもは全国で20人、呼吸ができなくなる重い呼吸不全(ARDS)になった子どもは14人にのぼることがわかった。いずれも15歳以下で、23日に東京都内で開かれた日本小児科学会の緊急フォーラムで報告された。ARDSにつながる恐れのある呼吸障害が季節性インフルエンザより起こりやすいことを示す調査も報告された。

 厚生労働省のインフル脳症研究班代表を務める森島恒雄・岡山大教授は21日までに新型インフルで脳症になった子どもは20人と報告。「脳症の比率は季節性より多い」という。感染者に小学生以上が多いためか、平均年齢は7.3歳と、3歳以下が多い従来の季節性より高かった。

 また、同学会のまとめでは、21日までに14人の子どもがARDSになった。急激に症状が悪化するので迅速な治療が必要とされる。学会は今回、ARDSの治療戦略も発表した。肺がしぼむのを防ぐため、人工呼吸器で従来より高い圧力で酸素を供給するよう推奨している。経験のある医師がいない場合、地域の他の病院に患者を送ることも必要だという。

 ARDSや肺炎の治療に詳しい小児科医11人の名前や連絡先も小児科学会のウェブサイト(http://www.jpeds.or.jp/)で公開した。

 また、都立府中病院の寺川敏郎医師(小児科)によると、都立府中、墨東、荏原の3病院で7~9月に新型インフルで入院した小児は23人。うち19人が呼吸障害と、大半を占めた。これに対して過去2年間に都立府中病院に季節性で入院した小児23人では、19人がけいれんや意識障害などで、神経症状の方が圧倒的に多かった。 【大岩ゆり】

(朝日新聞、2009年9月23日)

****** 朝日新聞、2009年9月22日

新型インフルエンザで小1男児死亡 滋賀

 滋賀県は22日、新型インフルエンザに感染した同県守山市の小学1年の男児(7)が、インフルエンザ脳症で死亡したと発表した。厚生労働省によると、新型の感染が確認か、または疑われた患者の死亡は全国18人目で、今回の男児は最年少。インフルエンザ脳症になったことが確認された新型インフル患者は、この男児を含めて全国で24人いるが死者は初めて。

 滋賀県健康推進課によると、男児は19日朝からせきや熱などの症状を訴え、病院で子どもにも使える解熱剤などの処方を受けた。20日も40度以上の熱が続いたため診療所で診察を受けた。けいれんなどの症状があり、簡易検査でA型インフルエンザと診断された。

 同日に別の病院に入院しタミフルの投与などを受けたが意識不明となったためインフルエンザ脳症を疑い、滋賀医科大医学部付属病院(大津市)に転院。遺伝子検査で新型インフルと確認された。21日に体温が34.6度まで下がり、血圧も低下するなど容体が悪化。同日午後9時25分にインフルエンザ脳症で死亡した。男児には、数カ月に1度程度、熱を出す周期性発熱症候群の疑いがあった。

 男児の通っていた小学校によると、男児は18日まで元気に登校していた。この小学校ではインフルエンザ感染で19日から3年生1クラスが学級閉鎖となり、同日予定していた運動会を中止した。

(朝日新聞、2009年9月22日)

****** 朝日新聞、2009年9月17日

新型インフルエンザに感染の12歳死亡 横浜

 横浜市は17日、新型インフルエンザに感染した同市都筑区の小学6年の男児(12)が死亡したと発表した。頭蓋(ずがい)内出血が死因とみられる。気管支ぜんそくの病歴があるが、新型インフルエンザ感染との因果関係は不明という。厚生労働省によると、新型インフルエンザの感染が疑われる患者の死亡は全国15人目。未成年者で亡くなったのは初という。

 市によると、男児は今月2日午前、39度台の熱と吐き気のため近くの病院を受診。発熱が続き、意識がもうろうとしたため翌3日に市内の別の病院に入院した。ウイルスが原因とされることが多いという「心筋炎」と診断され、集中治療室で治療を受けていた。入院後の血液検査でインフルエンザが疑われ、14日に横浜市衛生研究所でA型が確認されたという。

 死因は頭蓋内の血管腫から出血を起こしたためとみられている。横浜市の修理淳・医務担当部長は「心筋炎で出血を起こしやすくなるが、頭蓋内出血も含め、インフルエンザとの関連も現時点では分からない」と説明した。

 日本アレルギー学会によれば、インフルエンザ感染はぜんそくを悪化させる原因のひとつ。呼吸器へのウイルス感染が発作を起こしやすくするという研究があるという。

 厚生労働省のまとめでは、7月28日~9月1日に新型インフルで入院した患者579人のうち半数弱に持病があり、ぜんそくなど慢性呼吸器疾患は138人と持病の中で最多だった。

 横浜市では夏休み終了後から17日まで、延べ70校82クラスがインフルエンザによる学級閉鎖となっている。

(朝日新聞、2009年9月17日)


新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

2009年09月20日 | 新型インフルエンザ

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

新型インフルワクチン最終案 1900万人接種最優先

****** 読売新聞、2009年9月20日

新型インフル、妊婦向けに防腐剤なしワクチン

 厚生労働省は、新型インフルエンザに感染すると重症化するリスクが高い妊婦のために、胎児への影響が不明な有機水銀系の防腐剤が入っていないワクチンを供給することを決めた。

 国内の妊婦をほぼカバーできる約100万人分の製造を、国内のメーカーが進めている。11月中旬ごろから、普通のワクチンと選択できるようになる見込みだ。

 通常のインフルエンザワクチンは、10ミリ・リットルか1ミリ・リットルの小瓶に入っている。この小瓶から、13歳以上は1回0・5ミリ・リットル、6歳以上13歳未満は0・3ミリ・リットルなどと、年齢に応じて決められた使用量を注射器で吸い出して使う。そのため、雑菌が混入、繁殖しないよう、エチル水銀系の防腐剤などが使われている。

 新しい妊婦用ワクチンは小瓶を使わず、製造段階で使い捨て注射器に1回分(0・5ミリ・リットル)を封入することによって、雑菌の混入を防ぐ仕組み。

 エチル水銀は重大な健康被害はないとされているが、胎児への影響は不明。国内では従来、妊婦へのワクチン接種を極力避けてきた経緯がある。

(読売新聞、2009年9月20日)

****** 共同通信、2009年9月19日

妊婦にワクチン90%の効果 

インフル免疫、新型も期待

 妊娠中に季節性インフルエンザワクチンを接種した女性には、感染や重症化予防に必要な抗体が90%の確率で生成され、胎児にも十分な免疫力が備わることが19日、国立成育医療センター(東京)の研究で分かった。

 一般の人に比べ、安全面に慎重な配慮が必要で研究対象になりにくい妊婦や胎児について、インフルエンザワクチンの有効性を免疫学的に立証した報告は海外にも例がないといい、研究を主導した同センター母性内科の山口晃史医師は「副作用も認められなかった。新型インフルエンザ用ワクチンも製造法は基本的に同じなので、同様の効果が期待できる」としている。

 研究は一昨年から昨年にかけ、同センターに来院した妊娠15~39週の女性125人(25~41歳)を対象に実施。病原性を除去したA型2種、B型1種のウイルス株を含む不活化ワクチンを使い、接種前と接種1カ月後の血中の抗体価(免疫力を示す指標)を調べた。

 その結果、45人は接種以前に3種すべてのウイルスに免疫があり反応は鈍かったが、残り80人の90%に当たる72人は、ワクチンに明確に反応。免疫のないウイルスに対する抗体が急増し、十分な免疫力の目安とされる「抗体価40倍」を超えた。8人は反応したものの程度が不十分だった。

 研究論文は近く米ウイルス学専門誌「ジャーナル・オブ・メディカル・バイロロジー」に掲載される。

インフルエンザワクチン 国内で製造されているワクチンは、培養したインフルエンザウイルスをエーテルで処理して感染性や病原性を失わせ、表面のタンパクを有効成分として使用する「スプリットタイプ」と呼ばれるもの。国内4社が新型インフルエンザ用ワクチンを製造しているが、これらは従来の季節性インフルエンザ用と製法が同じため、新たな治験や承認は必要ない。インフルエンザワクチンは重症化や死亡を防ぐことに一定の効果があるとされるが、感染防止や流行阻止について効果は保証されていない。また、まれではあるが、重い副作用が起こる可能性もある。

(共同通信、2009年9月19日)

****** 読売新聞、2009年9月19日

新型ワクチン優先接種、ぜんそく・心疾患などに

 厚生労働省は18日、新型インフルエンザワクチンを優先接種する9種類の病気を公表した。

 季節性インフルエンザワクチンとの同時接種についても、国産の新型ワクチンに限って認める方針を示した。持病がある人約900万人を、医療従事者に次ぐ2番目の優先対象としていたが、病名がはっきりしていなかった。

 9種類の内訳は〈1〉慢性呼吸器疾患(ぜんそくなど)〈2〉慢性心疾患〈3〉慢性腎疾患(透析患者も)〈4〉肝硬変〈5〉神経疾患・神経筋疾患(多発性硬化症など)〈6〉血液疾患(急性白血病など)〈7〉糖尿病〈8〉がんなどで免疫が抑制された状態〈9〉小児の疾患(重症心身障害も含む)。

 それぞれの病気の中で、季節性インフルエンザを発症すると重症化しやすい患者を、特に優先する。〈1〉なら、「ぜんそく患者や肺気腫などで継続して治療を受けている人」になる。

 季節性ワクチンとの同時接種は、通院回数を減らせることから、要望が強かった。ただ、現時点で安全性を確認できていない輸入ワクチンについては、判断を見合わせた。

(読売新聞、2009年9月19日)

****** 毎日新聞、2009年9月18日

新型インフル:季節性とのワクチン同時接種を容認 厚労省

 厚生労働省は18日、新型インフルエンザワクチンの専門家会合を開き、医師の判断に基づき、季節性と新型ワクチンの同時接種を認める方針を示した。

 通常、異なるワクチンの同時接種は副作用が生じた場合、原因解明が難しくなるため避けられている。だが、厚労省は季節性、新型ともに流行が拡大する冬季を前に、同時接種を容認する姿勢を示し、医療機関の負担を軽減するとともに、利用者の通院回数を減らし医療機関での感染拡大を防ぐことにした。【江口一】

(毎日新聞、2009年9月18日)

****** NHKニュース、2009年9月18日

感染小児重症化 学会が対策室

17日、横浜の小学6年生の男の子が死亡するなど、国内で新型インフルエンザに感染した子どもが重症化するケースが増え始めていることから、日本小児科学会では専門家による対策室を設置し、全国およそ3000の医療機関から抗ウイルス薬の効果などの情報を集め、治療の遅れが起きないよう医療態勢の整備を進めていくことになりました。

新型インフルエンザをめぐっては、17日、横浜の小学6年生の男の子が死亡し、国内で初めての子どもの死亡例となったほか、各地で重い肺炎や脳炎になった子どもの例が報告されていて、感染の拡大に伴い同様のケースの急増することが懸念されています。このため日本小児科学会では、感染症の専門家11人による「新型インフルエンザ対策室」を新たに設置したもので、意識障害などを引き起こす「インフルエンザ脳症」や「ARDS」と呼ばれる急性の重い肺炎になった場合の最新の治療指針を来週中にまとめ、インターネットなどを通じ、全国の小児科の医師に周知することにしています。また、全国およそ3000の病院に呼びかけて、重症で入院したすべての子どもについて、▽ぜんそくなど基礎疾患の有無や▽症状の進み方、それに▽抗ウイルス薬の効果などの情報を集め、治療の遅れで症状が悪化することがないよう医療態勢の整備を進めていくことになりました。対策室長を務める岡山大学の森島恒雄教授は「情報の共有化が遅れている影響で、医療現場の危機感に温度差がある。対策室が中心となって、重症の子どもの命を救える全国的な態勢づくりを急ぎたい」と話しています。

(NHKニュース、2009年9月18日)

****** 読売新聞、2009年9月17日

新型インフル国産ワクチンの治験始まる

 厚生労働省は17日、新型インフルエンザの国産ワクチンの安全性や有効性を確認する臨床試験(治験)を全国4病院で始めた。

 健康な20~64歳のボランティアの男女計200人に接種し、10月中旬に中間報告を行う。

 被験者は100人ずつ2グループに分かれ、一方は1回あたり0・5ミリ・リットル、もう一方は倍の同1ミリ・リットルを、それぞれ3週間の間隔を置いて2回接種し、抗体がどのくらいできたか調べる。季節性インフルエンザの用量は0・5ミリ・リットルだが、これまでに感染経験のない新型ウイルスのため、2倍の用量を接種した場合の効果を確認する。

 三重県内の病院では、公募で選ばれた被験者に、医師が体温や体調を聞き取りながら、ワクチンを注射した。17、18日で計50人に1回目の接種を行う。

(読売新聞、2009年9月17日)

****** 読売新聞、2009年9月16日

新型インフルワクチン、国内初の治験開始

 新型インフルエンザワクチンの有効性や安全性を確認する臨床試験(治験)が16日、国内では初めて鹿児島市内の治験専門の医療機関で始まった。

 初日は成人男女25人に接種。19日まで成人計100人を対象に効果を試す。

 ワクチンはスイスの大手製薬企業「ノバルティス」が製造。日本法人「ノバルティスファーマ」(東京都港区)が治験を行う。

 100人はそれぞれ、3週間後にもう一度接種し、抗体ができたかどうか血液を調べる。成人の安全性が確認されれば、10月から生後6か月~19歳の120人を対象に治験を実施し、12月にはすべての治験を終える予定。18日からは大阪市の医療機関でも成人への接種を始める。

 同社のワクチンの治験は、すでに英国で18~50歳の100人を対象にして行われており、1回の接種でも80%に効果があったとされている。

(読売新聞、2009年9月16日)

****** 読売新聞、2009年9月16日

新型、軽くてもタミフル早めに…感染症学会

 日本感染症学会は15日、新型インフルエンザの感染が疑われた場合には、軽症でも、タミフルなどの治療薬を早期に投与すべきだとする提言をまとめた。

 世界保健機関(WHO)は、6歳以上の若年者や64歳以下の成人で、かつ軽症の場合、治療薬の投与は不要とする指針を示している。これに対して、今回の提言は「WHOの指針は治療薬の備蓄が少ない国々の事情を踏まえたもの。備蓄が豊富な日本では、感染が少しでも疑われたら、できるかぎり早く治療薬を投与すべきだ」としている。

(読売新聞、2009年9月16日)

****** 読売新聞、2009年9月13日

新型インフル大流行時の沖縄、受診6時間待ちも

 この夏、沖縄県では全国でも突出して早く新型インフルエンザの流行が進んだ。最も多い週には県内58の定点医療機関だけで2686人(定点あたり46・31)と、例年の季節性のピークに近い患者数に達した。医療現場は、どんな状況になったのか。現地で取材した。

 ◆患者が倍々に

 「あっという間に患者が倍々に増えた。(受診数の)天井が全く見えず、毎日のように新しい対策が必要になった」。那覇の新都心・おもろまちの近くに立つ那覇市立病院。宮城とも・副看護部長はそう振り返る。

 沖縄では7月下旬から患者が増え、8月15日に全国で最初の死者が出た。受診が急増したのは、その翌日の日曜からだ。夜間休日診療を受け持つ市立病院には206人が訪れ、一般の急患を合わせると計300人以上であふれ、最高6時間待たされた人もいた。

 県立南部医療センター・こども医療センター(南風原町)にも98人が受診し、一般を含めると計220人が来て3時間待ちの状態。

 次の日曜の23日にはさらに増え、両病院だけで計353人がインフルエンザ症状を訴えて受診した。市立病院は、感染防御のため専用の臨時待合室も設けた。

 ◆自由選択が影響

 問題は、余裕のある病院や診療所がほかにあるのに、両病院を中心に一部施設への集中が続いたことだ。

 5月の兵庫・大阪での流行のあと、政府は特定施設に受診を限る方式をやめ、広く一般の医療機関での診療を認めた。それでも事前に電話してから受診するのが原則だが、受診先を自由に選べることが、特定の病院への集中につながった。

 ◆難しい見極め

 医療機関が機能不全に陥るのを防ぐには軽症者が外来受診を控えたほうがいい。しかし県内の重症者9人(死亡1人)のうち、6人は慢性疾患などのリスク要因がなく、ふだん健康な人だった。現場の医師らは「電話相談で軽症と判断しても、責任を持って『受診を控えて』とは言えない」と口をそろえる。

 県医務課は、県内の子どもの心臓手術を一手に担う南部センターがマヒしないよう、小児用の人工呼吸器を持つ10病院の使用状況を毎日調べ、小児患者を割り振るシステムを構築。もし集中治療室が満床になれば、琉球大病院がバックアップする体制も整えた。

 県医師会の宮里善次・感染症担当理事は「だれがいつ重症化するのか、特徴がわからず、多くの人を受け入れざるを得ないが、軽症者への対応に振り回されてはいけない。診察は少々待ってもらってもいい。大切なのは死者の最少化。重症者が手遅れにならないよう、医療機関の役割分担、受け入れ態勢を整えておくことが肝心だ」と強調した。 【大阪科学部 萩原隆史】

(読売新聞、2009年9月13日)

****** 毎日新聞、2009年9月13日

新型インフル:子どもに重症肺炎

…沖縄で5例 小児科学会

 日本小児科学会(横田俊平会長)は13日、新型インフルエンザを発症した子どもの中で、急激に呼吸困難となる重症の肺炎が起きていることを明らかにした。子どもが感染した場合、保護者らは様子を注意深く見守る必要がありそうだ。

 同学会によると、沖縄県では、これまでに子ども5人の重症肺炎の症例が報告され、人工呼吸器による治療を受けた。症状としては、発熱などインフルエンザと思われる症状が表れてから6~12時間で急激に呼吸状態が悪化し、エックス線写真で肺が真っ白になるほど炎症が進むという。

 また、呼吸困難の兆候には、呼吸が速い▽呼吸の頻度が多い▽息を吸うときに胸の一部が陥没する▽顔や唇が青白くなる--などがあるという。同学会は肺炎や急性脳症などの重症例の把握を急ぐとともに、近く一般向けに症例や治療法をまとめる方針。 【江口一】

(毎日新聞、2009年9月13日)

****** 読売新聞、2009年9月4日

ワクチン、1900万人に優先接種…最終案

 厚生労働省は4日、新型インフルエンザワクチン接種についての最終方針案を公表した。

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 必要としたワクチンは5400万人分。医療従事者と重症化しやすい人の合計1900万人を最優先接種者とし、この中での接種順位も示した。国民の意見を6日から1週間募り、政府の専門家諮問委員会に諮った上で、9月末までに正式決定する。接種は10月下旬から始まる見込みだ。

 ぜんそくや糖尿病など持病のある人の中では1歳~就学前の小児を優先する。ワクチンで免疫がつきにくい乳児は両親に接種する方針で、当初は乳児の年齢を6か月未満としていたが、1歳未満に拡大した。

 年度内に国内メーカーが生産できるワクチンは1800万人分だ。10月下旬から供給が始まり、最優先接種者に接種する。不足する分は輸入し、小中高校生と高齢者に使う。ワクチン到着は12月下旬以降になる見通しだ。ワクチンは2回の接種が必要。1回目の接種から免疫がつくまでには1か月ほどかかる。厚労省の「流行シナリオ」では流行ピークを10月上旬としており、10月下旬から接種が始まるとすれば、ピークに間に合わない可能性もある。

(読売新聞、2009年9月4日)


産婦人科医の状況、「悪化」が半減

2009年09月16日 | 地域周産期医療

周産期医療提供体制も地域により状況はさまざまですが、全体的に見れば数年前の最悪期は徐々に脱しつつあるような印象です。

「産婦人科動向意識調査」(日本産科婦人科学会)の集計結果報告によれば、現場の産婦人科医の意識は、1年前と比べpositiveな方向に変化しているとのことです。一般の方やマスコミの産婦人科への理解が深まったことに加えて、産婦人科医数の増加などが要因として考えらます。2006年度以降、日本産科婦人科学会の入会者は3年連続で増加し、2009年度はさらに増える見込みとのことで、若手医師の産婦人科への新規参入が年々増加する傾向にあります。

当医療圏においても、かつて十数施設あった分娩施設が3施設にまで急減し、毎年毎年、絶体絶命の危機的状況に追い詰められて、何度も何度も「もう駄目だ」とあきらめかけましたが、地域を挙げて一致団結してこの産科問題に取り組み、幸いにも多くの協力者が次々に出現し、優秀でやる気満々の若手医師の新規参入も毎年あり、今のところ何とかギリギリのところでもちこたえています。多分これからも繰り返し危機は訪れると思いますが、みんなの力を結集すればきっと窮地を乗り切っていける筈というpositiveな気持ちになってます。

****** CBニュース、2009年9月15日

産婦人科医の状況、「悪化」が半減

 産科医不足や分娩施設の減少など産科医療の崩壊が叫ばれる中、産婦人科医を取り巻く全体的な状況が1年前と比べて悪化したと感じている産婦人科責任者の割合が、昨年の前回調査から半減したことが、日本産科婦人科学会の医療改革委員会がこのほど発表した「産婦人科動向意識調査」の集計結果報告で分かった。

 調査は今年7月、同学会の卒後研修指導施設743施設の産婦人科責任者を対象に実施。462施設から回答を得た(回答率62%)。

 現場の産婦人科医を取り巻く全体的な状況について、1年前と比較してどのように感じているかを尋ねたところ、「変わらない」が39%(前回35%)で最も多く、以下は「少し良くなっている」34%(17%)、「少し悪くなっている」16%(26%)、「悪くなっている」8%(21%)、「良くなっている」3%(1%)の順だった。

=グラフ= (クリックするとフルサイズの画像が表示されます)

(以下、略)

(CBニュース、2009年9月15日)


沖縄北部病院 産婦人科救急と婦人科を休診へ 妊婦健診のみ予約制

2009年09月15日 | 地域周産期医療

沖縄県立北部病院はベッド数293床、22診療科の総合病院で、沖縄県北部医療圏(診療対象人口約12万人)における地域中核病院に位置付けられていて、地域災害拠点病院にも指定されています。同院産婦人科は05年4月1日から医師不足を理由に診療を休止しましたが、昨年11月には医師4人の体制が整って診療を再開し、今年1月には24時間体制の産婦人科救急診療も再開させました。今年4月に1名が退職し、5月からは産婦人科救急を一部制限して医師3名の体制で診療を続けていました。さらに医師1人が10月に退職して医師2名の診療体制となりました。同院は産婦人科医を募集していますが、すぐに勤務開始できる医師の確保には至っていません。産科は紹介予約制として妊婦健診に重点を置いた診療体制に変更し、婦人科は新規患者の受け付けを休止しています。

****** 琉球新報、2009年10月20日

地元主体の行動重要 産婦人科医不足で意見交換

 【名護】県立北部病院の産婦人科について考える会合「やんばるの母と子の命を守るために、今私たちに何ができるか」が16日、名護市中央公民館で開かれた。名護市各種団体女性代表ネットワーク協議会のほか、市役所や名桜大学などから約20人が参加。同病院産婦人科の現状や今後について意見が交わされた。

 会では同病院の大城真理子医師が2005年の産婦人科休止からの経緯を説明。現在は2人の医師だけで対応していることを挙げて「リスクの高い妊婦は中部まで送っている」と厳しい状況を話した。

 また、医師の増員を目指して県などに働き掛けているといい、「都市部の病院でも産婦人科医が足りないのが現状だ。県は全体を考えるので、北部だけを特別扱いしてくれない。北部のことは北部の市町村が考えるべきだ」と地元が主体性を持って行動する重要性を訴えた。

 参加者からは「医師が長期間働けるような環境をつくるべきだ」「市民がもっと声を上げた方がよい」「市町村が病院支援の積立金を集められないか」などさまざまな意見が出された。

 今後はフォーラムなどを実施して産婦人科の在り方などを考えていくことも確認された。

(琉球新報、2009年10月20日)

****** 沖縄タイムス、2009年9月20日

産婦人科救急と婦人科を休診へ 北部病院

健診のみ予約制

 産婦人科医3人のうち1人が退職予定の県立北部病院(大城清院長)が、28日から産婦人科の救急診療と婦人科の診療を休止する。当面の間、妊婦健診に重点を置いた診療態勢に移行。婦人科外来に通院中で、経過観察を必要とする人のみ、診療を継続するとした。

 同病院は新たな医師確保に向け関係機関に協力を要請中で、診療制限に理解と協力を求めている。

 病院ホームページによると、産婦人科は妊婦健診のみの紹介予約制、婦人科は再診のみの予約制となる。

 北部病院の産婦人科は医師不足のため2005年4月に休止したが、08年11月には医師4人の体制が整って診療を再開。今年1月からは24時間救急診療も再開したが、その後医師が1人退職したことで、5月から救急を制限していた。

(沖縄タイムス、2009年9月20日)

****** 琉球新報、2009年9月19日

県立北部病院:産婦人科救急を休止、

婦人科は一般診療も

 県立北部病院(大城清院長)は産婦人科医師の退職に伴い、医師2人の診療体制となるため、28日から当面の間、産婦人科救急と婦人科診療を休止する。

 産科は紹介予約制として妊婦健診に重点を置いた診療体制に変更。婦人科は新規患者の受け付けを休止する。同院はホームページで「大変申し訳ございませんが、引き続き医師の確保と診療業務の拡大に努力するので、理解と協力をお願いしたい」としている。

 北部病院は2005年4月に医師不足を理由に産婦人科を休止。08年11月には4人体制になり、ことし1月に24時間救急診療が再開した。その後1人が退職して3人体制となり、救急を一部制限していた。

(琉球新報、2009年9月19日)

****** 琉球新報、2009年9月13日

北部病院、産科医また退職 

2人体制で影響必至

 【北部】医師不足で2005年から一時休止し、08年11月から診療を再開した県立北部病院(大城清院長)の産婦人科医師が退職届を病院に提出していることが12日、分かった。同病院はことし4月から1人減の3人体制となっているが、医師退職後は2人体制となり、診療体制に影響が出る可能性がある。

 病院側は医師の退職届を受理しており、今月か来月にも退職する予定。病院はホームページで常勤医師を募集し、県病院事業局と協力して新しい医師確保に向けた調整を進めているが、難航している。

 北部病院は05年4月に医師不足を理由に休止。08年11月には4人体制の診療を開始し、ことし1月に24時間の救急診療が再開した。その後1人が退職して3人体制となっている。

(琉球新報、2009年9月13日)

****** 沖縄タイムス、2009年9月12日

産科医が退職願提出 

県立北部病院/2人体制の可能性も

 【北部】県立北部病院(大城清院長)の産婦人科に勤務している医師が、退職願を提出していたことが11日、分かった。今月中か、10月上旬に辞める考えを示しているという。現在3人体制の産婦人科だが、医師が辞めた後は、2人体制になる可能性がある。北部病院では診療に支障をきたさないよう、新たな医師確保に向け関係機関に協力を要請している。

 北部病院の産婦人科は医師不足のため2005年4月に休止。昨年11月、4人体制が整い、ことし1月からは24時間救急体制を完全再開したが、その後1人辞めて3人になったため、5月からは救急を制限していた。

 病院側は「できるだけ早めに医師を配置できるよう努力を続けている。今ある体制で、患者にとって一番いい方法をとれるよう、来週明けにも院内の関係者で診療内容の方針を話し合いたい」としている。 【新垣晃視】

(沖縄タイムス、2009年9月12日)

****** 沖縄タイムス、2009年5月1日

産科24時間救急を休止 

県立北部病院「医師3人で限界」

 【名護】県立北部病院(大城清院長)は、1日から産婦人科の24時間救急体制を休止し、救急対応を午後11時まで、週末は休診するなど大幅に時間を短縮する。4月までに医師の入れ替わりがあり、4人から現在は3人体制となった。同病院は「現在の人員で24時間体制を続けるのは無理があり、早急に医師を確保したい」としているが、再開のめどは立っていない。

 救急対応は、月曜から木曜の午後5時から同11時までとなる。金曜は通常診療(午前8時30分~午後5時)のみで救急対応は行わず土、日、祝日は休診する。

 同病院の砂川亨医療部長は「24時間体制の維持には4人か5人の医師が必要。月に10日の宿直勤務で、医師を疲弊させることはできない。対応できない時間帯の緊急患者は、中部病院に搬送される。地域の方々には、事情を理解していただきたい」と説明している。

 名護市各種団体女性代表ネットワーク協議会の宮城里子会長は「妊婦の身体的な心配もあるが、『地元で出産することができる』という今までの安心感がなくなる。大きなショックだ」と話した。同病院は今年1月、3年8カ月ぶりに、産婦人科の24時間救急診療を再開したばかりだった。

(沖縄タイムス、2009年5月1日)

****** 琉球新報、2008年6月21日

沖縄 県立北部病院、産科が来月再開

 【北部】医師不在のため2005年4月以降、産科を休止していた県立北部病院(大久保和明院長)が、7月から産科を再開することが20日、分かった。当面は同病院の婦人科で勤務している医師2人で運営する。同病院では医師不足のため05年4月以降、産婦人科を休止。07年12月に医師2人が配置され、ことし2月から婦人科外来診療のみを再開しているが、産婦人科としての再開は3年4カ月ぶり。

 産科再開に女性団体からは安堵(あんど)の声も上がるが、産婦人科で一般分娩(ぶんべん)や救急診療までを担うには通常、医師を最低でも3、4人配置しなければ勤務体制を確保できないといわれており、分娩が再開されても課題は残されたままだ。

 再開される産科では、外来と一般分娩を扱う。一般分娩は365日体制で対応し、外来は、月曜から木曜日に受け付ける。夜間は医師が交代で当直に当たる。金曜から日曜日は1人が緊急連絡係となり、緊急時に産婦人科医2人が確保できれば2人で緊急手術などに対応。1人の場合は、外科から医師1人の支援を受ける。

 対象となるのは、ほかの病院からの紹介妊婦と、合併症妊娠や異常妊娠など、開業医では対応が難しい妊婦。

 産科再開は、北部の女性団体が20日夜、北部会館で開いた同病院医師やスタッフとの歓迎懇親会の席上、村田昌功産科部長が明らかにした。

 名護市女性団体ネットワーク協議会の宮城里子会長は「再開が決まって本当にうれしい。しかし産科医不足は女性だけでなく、男性を巻き込んだ地域全体の問題だ」と語った。

(琉球新報、2008年6月21日)

*** やんばる母と子の命を守る勉強会、2008年5月28日

緊急声明
「県立北部病院産婦人科 医師4人以上の体制を」

 県立北部病院の産婦人科を再開させるには、4人以上の産婦人科医師が必要です。
 休診に至るまでの県立北部病院産婦人科は、個人開業医ではとりあげられない、いわゆるハイリスクのお産を行う施設であり、産婦人科的な救急疾患(子宮外妊娠による大出血など)の患者を救命する救急病院でした。
 そのために3名の産婦人科医が二十四時間三百六十五日、働いていました。産婦人科医にとっては三日に一度は病院に宿泊し、一晩寝ないで働いた後もそのまま外来や手術をするという厳しい職場環境です。使命感を持って働いていた医師たちも過酷な仕事を幾年も続けたあと、働き盛りの年齢なのに退職してしまい、休診となりました。
 県立北部病院を退職した産婦人科医師の言葉を紹介します。

 「四十代半ばにして死神の足音を聞いてしまった。」
 「子供をとりあげる仕事をしながら、自分の子供たちは知らないうちに(家庭で触れ合う時間もないままに)いつの間にか大きくなってしまいました。
 三日に一度は病院に泊まり(それ以外の日もほとんど)病院にいましたので。」

 医師も人間です。人間としての命があり、個人としての生活があります。
 命の危険を感じるような、個 人としての生活がない病院には、医 師は定着しません。
 以前と同じ産婦人科医師3人体制で再開したとしても、前と同様の過酷な勤務体制が再現され、医師が退職し再び休診となるだけです。そもそも、全国的な産婦人科医不足の中、そのような病院で働きたいという医師があらわれるでしょうか。
 再開、継続のためには、産婦人科医師数の増加は絶対に必要なのです。

 県立北部病院では、産婦人科医師を4人以上にした後、ハイリスクのお産と産科救急を本格的に再開させようとしています。現在2人の産婦人科医師が着任しており、婦人科診療のみを実施していますが、その2人の産婦人科医師を中心に病院を挙げて産科再開プロジェクトを進めています。
 北部地域の母と子の命を守りつつ、以前の轍を踏まないで済むよう、県外で働いている現役の産婦人科医やこれから産婦人科専門医をめざす若手医師が「この病院、この地域でぜひ働きたい」と思えるような、母と子と医療者が共に幸せを分かち合える病院、地域を作りたいものです。
 みなさんのご理解とご協力を、どうぞお願いいたします。

     平成二十年五月二十八日
     「やんばる母と子の命を守る勉強会」

(やんばる母と子の命を守る勉強会、2008年5月28日)

****** 琉球新報、2007年10月8日

中部病院、6割北部から 

新生児集中治療室が満床

 県立北部病院の産婦人科休止以降、早産など異常分娩(ぶんべん)の危険性がある北部地域の妊婦のほとんどを受け入れている県立中部病院で、未熟児らを管理・治療する新生児集中治療室(NICU)を昨年利用した乳児は、休止前と比べ北部在住の妊婦の出産が約6倍に増えていることが分かった。この影響で病床が満杯になった中部病院では異常分娩の恐れのある中部地域の妊婦を南部地域の病院に受け入れてもらう“玉突き”が発生。南部でも病床が満杯となり、県内の産科医療は全県的に未熟児の受け入れが困難な、深刻な事態に陥っている。

 北部病院の産婦人科休止により、許容範囲を超えた妊婦受け入れが県内の周産期医療の現場を圧迫、影響が全県に波及している実態が明らかになった。

 満杯の事態を重く見た県は4日「超早産児が例年になく多い」と妊婦に定期健診を受診するなど健康管理を呼び掛けたが、中部病院は「超早産児の数は例年とあまり変わらない。満杯状態が続いているのは妊婦の健康管理などではなく、北部病院産婦人科休止が原因だ」と受け入れ側の問題と指摘した。

 北部病院の産婦人科は2005年4月に休止。中部病院が新生児集中治療室に受け入れた北部地域の乳児は05年は444人中62人、06年は409人中59人。休止前の04年は434人中、わずか10人だった。

 06年は北部からの受け入れに伴い、中部病院は異常分娩の恐れがある中部地域の妊婦13人を、県立南部医療センター・こども医療センターを介し、南部地域の同治療室を持つ病院に受け入れてもらった。

 県内で新生児集中治療室を保持しているのは5病院で合計96床。内訳は県立中部病院30床、県立南部医療センター・こども医療センター30床、那覇市立病院9床、沖縄赤十字病院15床、琉大医学部付属病院12床。このうち県立2病院が、状態がより危険な妊婦を扱う中核医療を担っている。 【新垣毅】

(琉球新報、2007年10月8日)

****** 沖縄タイムス、2007年10月5日

NICU満床 早産予防訴え/県が緊急アピール

 県は四日、県内の周産期母子医療センター(NICU)五カ所の満床状態が続き、「新たな妊産婦の受け入れが困難」との緊急アピールを初めて発表した。早産が多く発生し、早産児の長期入院が続いていることが原因とみている。県内の妊産婦に対し「早産とならない自己管理を」と呼び掛けている。

 県立南部医療センター・こども医療センターの総合周産期母子医療センターによると、今年四月から県内すべてのNICU九十六床で満床状態が続いている。

 通常は在胎週数四十週で出産するが、十月三日現在、在胎二十三週での出産が七人、同二十四週六人、同二十五週二人、同二十六週二人が入院しており、NICUに入院する新生児の二割を超早産児が占めている。

 県健康増進課は県内の妊産婦に対し、(1)少なくとも毎月一回の妊婦健診受診(2)喫煙・飲酒の禁止(3)出血や腹痛、破水があったときにはかかりつけ医に早めの受診―などの早産防止対策をアピール。加えて「妊婦が早産とならないよう、県民全体で妊婦支援を」と呼び掛けている。

 県内の早産などによる低体重児が出生する割合は10・9%で全国平均の9・5%に比べて高い(二〇〇五年)。センターの宮城雅也医師は「早産防止には妊婦の健康管理が重要。病院の受け入れ態勢維持のためにも一人一人の意識改革を」と訴えた。

 県内には、県立中部病院と県立南部医療センター・こども医療センターに総合周産期母子医療センターが二カ所、琉球大学医学部附属病院に母子周産センター一カ所、那覇市立病院と沖縄赤十字病院に地域周産期母子医療センター二カ所が整備されている。

(沖縄タイムス、2007年10月5日)

****** 琉球新報、2007年7月6日

搬送中、救急車内で出産4件 県立北部病院

 2005年4月に県立北部病院の産婦人科医が不在になって以降、ことし4月末までの間、北部地区から県立中部病院へ救急車で搬送された妊婦は169人で、このうち救急車内で出産した妊婦が4人いた。それぞれ医師は添乗せず救急救命士が子供を取り上げた。5日の県議会文教厚生委員会で狩俣信子県議(護憲ネットワーク)の質問に対し、県病院事業局が明らかにした。

 救急車内で出産した4人のうち、2人は早産のため子供が未熟児だった。未熟児の場合、低温にならないようにするなどさまざまな措置が必要。県病院事業局は「低温にならないよう気を付けている」と対応を示したものの、一方で「通常、救急車の中に保育器などは設置していない」と明らかにした。

 狩俣県議は「未熟児の場合は病院で生まれても、大変なほどの、さまざまな措置が必要だ。それなのに救急車の中に保育器などの措置する機器がないのは問題だ。人の命を軽視しすぎている」と指摘。これに対し知念清県病院事業局長は「よく現状を調べて対応したい」と対応を約束した。

 未熟児の子供2人は産後、県立中部病院に入院。現在、その子らも含め救急車で生まれた4人の子供は後遺症などなく、健康に育っているという。

(琉球新報、2007年7月6日)

****** 沖縄タイムス、2007年3月31日

医官きょう引き揚げ/県立北部病院

 県立北部病院産婦人科に派遣されていた防衛医官が五月までの期間を繰り上げ三月末で引き揚げることが三十日分かった。派遣元の防衛医科大学校(埼玉県)も深刻な産婦人科医師不足に陥ったため。北部病院の産婦人科が休診状態になってから約二年。同病院は再び産婦人科医不在の状態に陥ることになった。

 県病院事業局の知念清局長は「北部地区の住民に再度不安を与えることになり、大変申し訳ない。県は引き続き産婦人科医獲得に全力を尽くしていく」と述べた。県は同日、島袋吉和名護市長に派遣切り上げを伝えた。

 県立北部病院は二〇〇五年四月、産婦人科医の辞任で休診状態になったが、防衛医官の派遣で、週一回診療を受け付けていた。

 県は「これまでの患者は、中部病院からの派遣などで診療継続できるよう配慮する」としている。同大学校の産婦人科医師は七人。うち六人を一―二週間交代で派遣していた。

(沖縄タイムス、2007年3月31日)

****** 琉球新報、2006年4月21日

政府、北部病院に防衛医官1人派遣 産婦人科再開目指す

 【東京】産婦人科医の不足のため昨年4月から県立北部病院の産婦人科が休止している問題で、政府は防衛医官1人を同病院に派遣することを決め、20日までに島袋吉和名護市長に伝えた。小池百合子沖縄担当相も20日午後、稲嶺恵一知事と面談した際、医官派遣について「21日に正式発表する」と述べた。派遣される医官1人と県立病院など他病院の医師との連携態勢を整え、5月中の産婦人科再開を目指す。

 北部市町村会の会長として防衛医官派遣を政府に要請した宮城茂東村長は「医官派遣は大変良かった」と述べるとともに、産婦人科再開に向け「週明けにも名護市長とともに関係医療機関に協力を求めたい」と語った。

 県立北部病院の産婦人科の休止後、合併症など高度医療が必要な妊婦は県立中部病院(うるま市)へ搬送されており、北部地区の妊婦の大きな負担となっていた。小池沖縄相は昨年10月、全国から産婦人科医を募集。今年1月、市長選に出馬した島袋氏の応援のため名護市入りし、「防衛医官を4月に派遣する」と明言していた。

 北部広域市町村圏事務組合理事長を務める島袋名護市長ら北部の三首長は3月6日、4月中の産婦人科再開に向け、額賀福志郎防衛庁長官に防衛医官の派遣を正式に要請。それに対し、額賀長官は自衛隊でも産婦人科医が不足しているとして「4月中の医官派遣は厳しい」と答えていた。

 島袋市長らは産婦人科の24時間態勢を確立するため、医師3人の派遣を求めていたが、防衛庁は「複数の医官派遣は困難」としている。産婦人科再開に向けて医師の確保を進めてきた内閣府も「医官派遣は1人が限界」と説明する。

 県内の他病院から常時、産婦人科を派遣するのも困難な状況にあり、高度医療が必要な患者が出た際には、北部病院に勤務する医官と県立中部病院など他病院の医師が連携して、治療に当たる態勢が敷かれるものとみられる。

(琉球新報、2006年4月21日)

****** 琉球新報、2006年4月21日

産科外来は行わず 県立北部病院、防衛医官派遣

 【東京】小池百合子沖縄担当相は21日午前の閣議後記者会見で、1年以上休診していた北部病院の産婦人科について、4月中に防衛医官1人を派遣し、5月から業務を開始すると発表した。防衛医科大学校の産婦人科講師、助手の計4人を1年の間に交代で派遣する。1人体制のため出産対応ではなく、産科の外来は行わない。同病院内のほかの診療科で産科が絡む際の支援と緊急時対応などに当たる。外来診療の再開については依然、めどが立っていない。

 防衛医官は当面1年の派遣になる。小池沖縄相は「厳しい中で防衛庁に人材を派遣してもらった。今後は沖縄県、県立北部病院の協力の下で徐々に業務を拡大していくことが現実的だ」と述べ、業務継続には県の協力が不可欠との認識を示した。

 防衛医官の派遣について、防衛庁側は「もともと3人の定数なので1人でできることは限界があるが、厳しい状況の中で率先して確保した。分べんはできないので、今回の派遣がほかの病院の医師の呼び水となり、将来的に人数が増えることを期待する」と話した。

 派遣決定を受け、稲嶺恵一知事は21日午前の定例記者懇談会で派遣に感謝の意を示した。今後の診療体制について知念清病院事業局長は「地域の産婦人科、県立中部病院とも協力体制を組んでサポートしたい」と述べた。

(琉球新報、2006年4月21日)

****** 読売新聞、2006年4月9日

医師不足で産婦人科が休診中、

名護に防衛医官を派遣へ

 政府は8日、産婦人科医がいないため2005年4月から休診している沖縄県名護市の県立北部病院産婦人科に防衛医官1人を派遣することを決めた。

 同市の要請を受けたもので、防衛医科大学校の教官を中心に人選し、4月中の派遣を目指す。

 米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題で、国と名護市が基本合意に達したことを受け、移設への地元住民の理解を得る助けとしたい考えだ。

 沖縄本島の名護市から北の6市町村には、産婦人科は北部病院と名護市内の2診療所しかない。

 帝王切開や異常出産などに対応できる救急施設は北部病院だけだ。しかし、同病院で辞職などが続き、産婦人科医がいなくなってからは、救急患者は車で30分以上離れた県立中部病院などに搬送されている。

 こうしたケースは昨年4月から今年2月末までに79件あったが、搬送時間がかかるため、病院到着前に救急車内で出産した例もあった。

 沖縄県は全国の大学などに産婦人科医の派遣を求めていたが、応じる医師がいなかった。このため、名護市の島袋吉和市長が3月6日に額賀防衛長官と会談し、防衛医官の派遣を要請していた。

 派遣される防衛医官は自衛隊員であるため、那覇市の自衛隊那覇病院所属とし、勤務先を北部病院とすることで調整している。

 ただ、今回は1人しか派遣できないことから、交代勤務の医師が3~4人必要となる、救急対応が可能な24時間診療は難しく、時間を限った診療となる見通しだ。

(読売新聞、2006年4月9日)

****** 琉球新報、2006年1月8日

「4月に医師派遣」 小池担当相、

北部病院産婦人科の再開へ意欲

 【名護】小池百合子沖縄担当相は7日来県し、昨年4月から休止している県立北部病院の産婦人科について「4月には医師を派遣したい」と再開に意欲をみせた。

 小池氏は「新生児の死亡率が北部地区で2・8%、南部で0・7%。北部は南部の4倍も高い」と指摘。「北部の産婦人科・小児科の再開・充実が必要」との認識を示した上で、「防衛医官の派遣をお願いし快諾を得た」と述べ、4月に北部病院の産婦人科を再開させたい意思を示した。

 同日夜、名護市民会館で開かれた名護市長選挙に立候補予定者の女性部総決起大会で語った。

 同会合に先立ち小池氏は、名護市の出雲殿内で北部市町村長、市町村議会議長と懇談した。この中で県立北部病院の産婦人科が休止となっている問題について「4月に再開できるよう詰めている」と述べた。

(琉球新報、2006年1月8日)

****** 琉球新報、2005年10月25日

沖縄へ医師求む 小池沖縄相が全国呼び掛け

 【東京】「醫師 急募 沖繩へ!」―。内閣府は、県立北部病院で産婦人科が休診となっている問題を受け、沖縄の県立、公立病院で働く医師を全国に呼び掛けている。

 小池百合子沖縄担当相は25日午前、閣議後の記者会見で「沖縄では、残念ながら産婦人科医が不足している。元気な沖縄で生を受ける時に、お医者さんがいないのは心細いこと。沖縄で働くお医者さんを募集します」と呼び掛けた。

 「求ム ドクタア 美ら島プロヂェクト」として「醫師 産婦人科 脳神経外科 急募 沖繩へ!」と、プロジェクト名と募集コピーもレトロ調。

 北部病院だけでなく那覇病院、八重山病院、公立久米島病院の産婦人科医、宮古病院、八重山病院の脳神経外科医も併せて募集している。

(琉球新報、2005年10月25日)

****** 琉球新報、2005年10月19日

救急搬送5ヵ月半で42件 県立北部病院の産婦人科休止

 今年4月1日から県立北部病院産婦人科が休止になっている問題で、9月19日までの間、妊婦が県立中部病院や琉球大学付属病院に救急で搬送された事例は42件あり、そのうち救急車の中で出産した事例が1件あったことが分かった。県は現在、同病院の医師(3人)確保に向け、県外の医師などと面談を重ねているが、確保には至らず、再開のめどは立っていない。

 18日行われた県議会決算特別委員会(池間淳委員長)では、北部病院の産婦人科医問題をはじめとして県立八重山病院や宮古病院など離島医療を含む医師不足問題に質疑が集中した。

 搬送先に間に合わず、救急車の中で出産した事例は7月に発生。救急隊員が処置し、その後は中部病院で対応した。このほか、自宅で出産後に搬送された事例も1件あったという。

 現在、県はホームページ(HP)などを通して医師を募集。これまでホームページにアクセスのあった3人の医師と面談を行っているが、「いつ再開と見通しを示すのは困難」(知念建次県立病院監)な状況だ。こうした中、県立病院に勤務する医師のうち、何らかの理由で退職することが決まっているのは本年度だけで17人おり、退職の意思を示している医師も2人いることが報告された。

(琉球新報、2005年10月19日)

****** 琉球新報、2005年9月7日

医療の低下防止へ 

県立北部病院産婦人科休止

 【名護】名護市の県立北部病院産婦人科休止問題の解決に向けて、北部の医療関係者らが情報の整理・発信をしようと8月30日、「やんばる母と子の命を守る勉強会」を発足させた。関係者らは同科が休止した今年4月から毎月、元妊産婦や搬送する消防関係者などを招いて勉強会を開き、休止の影響について情報交換をしてきた。今後も勉強会や調査などの活動を続け、同科の医師確保や北部周産期医療の低下防止を目指す。

 参加しているのは北部病院の小児科医のほか民間の産婦人科医や小児科医、保健師など約20人で、今後対外的な発言や働きかけにも力を入れる方針だ。役員などは次回の会合で検討する。

 これまでの勉強会では、同科休止後、元妊婦が中部病院までの遠距離通院のため仕事を休まなければならなかったり、負担から家族が体調を崩したりした経験を説明。中部病院や名護市内にある個人の産婦人科医院からは「綱渡り的」に事なきを得た急患事例や、外来患者が急増して労働過多になっていることなどが報告された。

 メンバーの一人、仲村小児科・内科・皮フ科医院=名護市=の仲村佳久院長は「急患搬送などの代替策で以前と同じ医療が確保されたと思っている人もいるが、事実は後退している。正しい情報、判断を共有するところから出発したい」と会の意義を語る。

(琉球新報、2005年9月7日)

****** 琉球新報、2005年4月9日

北部病院、婦人科も「休止」 

継続表明も外来診察せず

 【名護】1日から産科を休止した県立北部病院で、県が存続を明言していた婦人科が外来を受け付けず、事実上「休止」していたことが8日までに分かった。県病院管理局は県立中部病院から産婦人科医師を派遣し、婦人科外来は継続するとしていたが、北部病院の山城正登院長は「短時間しか勤務しない一医師では意味ある外来はできない。(中部の医師の業務は)もともと院内のみのつもりだ」との認識を示している。名護市の宮城幸夫福祉部長は「婦人科は継続する前提で、急患搬送も妊産婦のみを対象に検討してきた。これで約束違反だ」と非難している。 3月7日に北部市町村会会長の宮城茂東村長らが産婦人科存続を要請した際、県は「産科は当面休止するが、婦人科は医師を配置して存続させる」と説明したという。その後の取材に対し、県は婦人科外来は県立中部病院の応援を受けて継続するとしていた。

 しかし、実際には、中部病院の産婦人科医が週に1―2度、午前中に北部病院に派遣され、産婦人科の症状がある他科の入院患者らの治療に当たっている。

 外来・救急は受け入れておらず、実質的には休止状態で、院内の掲示も「産科・婦人科の休止」となっている。産科休止に伴い、産婦人科の入院患者は転退院している。市消防は「婦人科は存続と聞き、婦人科の急患は北部病院に運ぶつもりだった」と話している。

 県福祉保健部・県立病院管理課の松堂勇課長は「北部病院側から、婦人科を休止するという正式な報告は受けていない」とした上で「来週、北部病院と中部病院、消防の各関係者を集めた会議が開催される予定。産科を含めた急患搬送の問題点などを整理し、今後の対応を検討したい」と話した。

(琉球新報、2005年4月9日)


「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

2009年09月13日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザに感染した場合、妊婦は一般の人に比べ死亡率が数倍~10倍程度になるというデータもあります。妊婦が新型インフルエンザに感染した際に産婦人科医を受診すると、別の妊婦に院内感染を広げてしまう恐れがあります。日本産科婦人科学会は一般病院への受診が困難な場合を除き、原則として一般の内科医を受診するよう求めています。

****** 読売新聞、2009年9月12日

新型インフル「妊婦診療できぬ」 医療機関の4割

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の診療体制について、感染症治療の中核となる全国の主な医療機関に対し読売新聞がアンケートしたところ、妊婦など周産期(妊娠22週以降)の患者を「診療できない」とする施設が4割近くに上った。

 妊婦の治療は国の指針で、他の妊婦への感染を防ぐため、かかりつけの産科以外で受けることを原則としており、妊婦の患者を受け入れる治療体制の整備が急がれそうだ。

 アンケートは、国や都道府県が指定する感染症指定医療機関と日本感染症学会認定研修施設の計668施設に対し8月に行い、352施設(回答率53%)から回答を得た。

 新型インフルエンザの多くは軽症で治るが、妊婦や腎臓病、糖尿病など持病を持つ人は重症化しやすく、国は患者の1・5%で入院が必要と試算している。アンケートで、受け入れ可能な最大病床数を尋ねたところ、1施設平均19・2床で、施設により0~300床まで差があった。0床の施設は8か所あり、人員に余裕がないなどが理由だった。

 周産期の患者の診療を「できない」と答えた施設は132施設(38%)に上った。小児の診療が「できない」も66施設(19%)あった。腎臓病患者に対する人工透析も対応できない施設が91か所(26%)に上った。

 周産期の患者を診療できない理由を尋ねたところ、「産科はなく対応は難しい」などのほか、「産科はあるが医師不足」との声もあった。

 政府・新型インフルエンザ対策諮問委員の川名明彦・防衛医大教授(感染症・呼吸器)は「地域ごとに医療機関が役割分担を話し合うなど、妊婦が行き場を失わないようにする必要がある」と話す。

(読売新聞、2009年9月12日)

****** NHKニュース、2009年9月11日

“感染の妊婦は内科受診を”

 新型インフルエンザに感染すると重症化しやすい妊婦の間で感染が広がるのを防ぐため、日本産科婦人科学会は、新型インフルエンザに感染したとみられる妊婦に対し、産婦人科ではなく内科を受診してほしいと呼びかけるとともに、今後、内科との連携を強めていく方針を示しました。

 これは日本産科婦人科学会の吉村泰典理事長らが11日に記者会見をして明らかにしたものです。この中で吉村理事長は「新型インフルエンザに感染した妊婦が産婦人科を訪れると、ほかの妊婦に感染させるおそれがあるので、まず内科でみていただきたい」と述べて、感染したとみられる妊婦に対し、産婦人科ではなく、事前に電話連絡をしたうえで内科を受診してほしいと呼びかけました。また、吉村理事長は、新型インフルエンザの感染が疑われる妊婦が内科を訪れたところ、診察を断られ、逆に産婦人科で受診するよう戻されたケースがこれまでに複数報告されていることから、日本内科学会に対し、妊婦の診察への協力を文書で求めたことを明らかにしました。今回の新型インフルエンザでは、アメリカの研究機関の報告で、妊婦は一般の人に比べ死亡率が数倍から10倍程度になるというデータもあり、専門家は妊婦の人たちと医療機関の双方がともに適切な対応をとる必要があるとしています。

(NHKニュース、2009年9月11日)

****** 朝日新聞、2009年9月10日

新型インフル感染疑いの妊婦、産婦人科の受診OK

 日本産科婦人科学会(理事長・吉村泰典慶応大教授)は10日までに、妊婦が新型の豚インフルエンザに感染したと疑われる場合、かかりつけの産婦人科医が対応できるようにする項目を指針に加えたことを医療関係者に伝えた。これまでは、他の妊婦への感染予防を重視し、一般病院での受診を勧めていた。

 新たに加えられたのは、(1)一般病院に通うことが難しい地域などでは、かかりつけ産婦人科医が対応(2)新型インフルの症状が重症化しておらず、出産や切迫早産の兆候がある妊婦は、かかりつけ産婦人科を受診する、など6項目。

 学会は、出産間近の妊婦への投薬判断や切迫早産など合併症への対応が予想されるケースでは、産婦人科の専門医でなければ処置が難しいとの指摘を重くみて、指針の修正を決めた。妊婦からは、一般病院に電話で受診の相談をした時点で診療を拒否されるおそれがあるとの不安が寄せられていた。

 海外の新型インフルの感染例をみると、妊婦は一般の人より症状が重くなる傾向がある。指針づくりの責任者を務めた水上尚典・北海道大教授は「妊婦が受診するまで時間がかかってしまうことを避けたかった。重症化を防ぎ、妊婦の死亡をゼロにしたい」と話す。

 新型インフルの感染が拡大した場合、産婦人科の専門医が不足している一般病院で妊婦が受診するのは困難な状況が予想される。そのため、関東地方のある県では、不妊治療などを中心に扱う産婦人科医院にも受診の受け皿になってもらう仕組みづくりを検討している。 【熊井洋美】

(朝日新聞、2009年9月10日)

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザのQ&A

今回(平成21年9月7日)改定の要旨

① ワクチンに関するQ&Aを加えたこと
② 一般病院へのアクセスが困難な場合にはかかりつけ産婦人科医が対応すること
③ 当然であるが、産科的問題(分娩や切迫早産症状など)は重症でない限りかかりつけ産婦人科医が対応すること
④ 重症例は肺炎が疑われる患者であり、それら患者は適切な病院への搬送が必要であること
⑤ 新型インフルエンザであっても簡易検査でしばしばA型陰性と出ることがあるので、周囲の状況から新型インフルエンザが疑われる場合は躊躇なくタミフル投与を勧めること
⑥ 母親が分娩前7日以内に新型インフルエンザ発症した場合、母児は別室として児への感染に関して慎重に観察すること

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (医療関係者対象)

         平成21年9月7日(5版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊婦は非妊婦に比して、新型インフルエンザに罹患した場合、重症化しやすいのでしょうか?
A1:妊婦は重症化しやすく、また死亡率が高いことが強く示唆されています。

Q2: 妊婦への新型インフルエンザワクチン投与の際、どのような説明が必要でしょうか?
A2: 季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されている。米国では季節性インフルエンザワクチンは毎年、約60万人の妊婦に接種されている。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの児についても有害事象は観察されていない。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられている。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと考えられている。WHOも同様に考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨している。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことである。以上のようなことを説明し、ワクチン接種の必要性について理解して頂きます。

Q3: インフルエンザ様症状が出現した場合の対応については?
A3: 発熱があり、周囲の状況からインフルエンザが疑われる場合には、「できるだけ早い(可能であれば、症状出現後48時間以内)タミフル服用開始が重症化防止に有効である」ことを伝えます。受診する病院に関しては、あらかじめ決めておくよう指導します。妊婦から妊婦への感染防止という観点から妊婦が多数いる場所(例えば産科診療施設)への直接受診は避けるよう指導します。これはあくまでも感染妊婦と健康な妊婦や褥婦との接触を避ける意味であり、「接触が避けられる環境」下での産科施設での感染妊婦の診療は差し支えありません。妊婦には一般病院を受診する際にも事前に電話するよう指導します。また、マスク着用の上、受診することを勧めます。一般病院へのアクセスが種々の理由により時間がかかる、あるいは困難と判断された場合にはかかりつけ産婦人科医が対応します。当然ですが、産科的問題(切迫流・早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。ただし、院内感染防止対策に関しては最大限の努力を払い、感染妊婦と職員あるいは健康な妊婦・褥婦間に濃厚接触があったと考えられる場合は、濃厚接触者に対して速やかにタミフル、あるいはリレンザの予防投与を考慮します。
A型インフルエンザ感染が確認されたら、ただちにタミフルを投与します。妊婦には、「発症後48時間以内のタミフル服用開始(確認検査結果を待たず)が重症化防止に重要」と伝えます。新型インフルエンザであっても簡易検査でしばしばA型陰性の結果となることに注意が必要です。基礎疾患があり、インフルエンザが疑われる患者には簡易検査の結果いかんにかかわらずタミフルを投与すべきとの意見もあります。妊婦は基礎疾患がある患者と同等以上に重症化ハイリスク群と考えられていますので、周囲の状況や患者症状からインフルエンザが疑われる場合には簡易検査結果いかんにかかわらず同意後、躊躇なくタミフルを投与します。

Q4: インフルエンザ重症例とはどういう症例をさすのでしょうか?
A4: 肺炎を合併し、動脈血酸素化が不十分な状態になった場合、人工呼吸器が必要となりますので、それらに対応できる病院への搬送が必要となります。したがって、呼吸状態について常に注意を払う必要があります。また、若年者ではインフルエンザ脳症(言動におかしな点が出て来ます)もあり、これも重症例です。

Q5: 妊婦が新型インフルエンザ患者と濃厚接触した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的投与を開始します。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)は胎児に大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

Q7: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、本邦妊婦の場合にも同様な投与方法が推奨されます。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)
治療のための投与:75mg錠1日2回(計150mg)5日間
なお、本邦の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、本邦の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。

Q8: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A8: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。

Q9: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A9: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q10: 分娩前後に発症した場合は?
A10: タミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療をただちに開始します。また、母親が分娩前7日以内に発症した場合、母児は別室とし、児も感染している可能性があるので、厳重に経過観察し、感染が疑われる場合には検査(A型か否か)を行い、できるだけ早期に治療を開始します。

Q11: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A11: 母乳を介した新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行うためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することを母親に勧めます。ただし、児と接触する前の手洗い、清潔な服への着替え(あるいはガウン着用)、マスク着用の励行を指導します。また、接触中は咳をしないよう努力することを指導します。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えるよう指導します。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる危険は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられているので、通常に近い母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日
         5版 平成21年9月7日


10年度臨床研修の募集定員  地方大学病院の割合が初めて増加 マッチングで研修医の動き注視

2009年09月10日 | 医療全般

これまでは研修医の病院別募集定員枠を比較的自由に設定できたため、総募集定員数が実際の研修医数をはるかに上回っていました。地方では定員割れとなる病院が多く、研修医が都市部の有力病院での研修を選ぶ傾向が強くなり、大学の医師派遣機能が低下し、地方の医師不足を招いたとも言われてきました。

そこで制度を改めて、都道府県別、病院別の定員枠を厳密に設定し、研修医の地域偏在を解消しようとしています。病院別定員枠は、直近3年間におけるマッチング数など過去の実績を基準に算出し、実態に即した定員設定となります。大学病院の定員枠を優遇して、大学病院の医師派遣機能回復を目指す狙いもあります。

しかし、10年度の募集定員数には前年度のマッチング数確保などの激変緩和措置分が入っているため、都市部の研修医数は従来と比べてそれほど大きな変わりがないかもしれません。実際問題として、10年度の研修医募集定員1万683人に対して、マッチングに参加する医大生は約8千人程度で、いまだに募集定員の方がマッチング参加者数より約2千人程度上回っていて、売り手市場の状況は従来と比べてそれほど大きく変わらないと思われます。10月末に発表される10年度マッチング結果の動向を見て、11年度以降の激変緩和措置の取り扱いが決められるそうです。

今後長い目で見れば、医学部卒業者数が年々増えていく過程で、研修医募集定員数とマッチング参加者数がほぼ一致するようになり、制度見直しの効果が徐々にあらわれると思われます。

****** CBニュース、2009年9月7日

来年度の研修医募集定員、地方が初の6割台

 厚生労働省は9月4日、来年度の臨床研修の実施体制の概要を明らかにした。募集定員は前年度比765人減の1万683人(新規指定分を除く)で、新医師臨床研修制度が始まった2004年度以降、大都市部の6都府県(東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡)を除いた地方の定員の割合が初めて6割を超えた。地方の募集定員に占める大学病院と臨床研修病院の比率は、臨床研修病院が56.0%(前年度比0.9ポイント減)、大学病院44.0%(同0.9ポイント増)で、大学病院が初めてプラスに転じた。大都市部と地方の研修医数の格差を是正するため、来年度から新たな臨床研修制度が導入されることから、同省では「ほぼ想定通りの数字」としている。ただ、募集枠通りに研修医が選択するかどうかは不透明で、10月29日に発表されるマッチング結果が注目される。最終的な実施体制は、医道審議会の医師分科会医師臨床研修部会での審議を経て、9月下旬に決定する見通しだ。

 研修医を募集する「基幹型臨床研修病院」は、前年度比63病院減の1051病院(新規指定分を除く)で、04年度以降初のマイナスとなった。また、募集定員全体に占める大学病院と臨床研修病院の比率は、臨床研修病院53.5%(前年度比0.1ポイント増)、大学病院46.5%(同0.1ポイント減)とほぼ横ばいで、制度導入時から減少傾向にあった大学病院は下げ止まった形だ。

(以下略)

(CBニュース、2009年9月7日)


新型インフルワクチン最終案 1900万人接種最優先 

2009年09月05日 | 新型インフルエンザ

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****** 読売新聞、2009年9月5日

新型インフルワクチン最終案 1900万人接種最優先

重症化しやすい人 医療従事者

 厚生労働省は4日、新型インフルエンザワクチン接種についての最終方針案を公表した。必要としたワクチンは5400万人分。医療従事者と重症化しやすい人の計1900万人を最優先接種者とし、この中での接種順位も示した。接種は10月下旬に始まる見込みだ。

 ぜんそくや糖尿病など持病のある人の中では、1歳~就学前の小児を優先する。ワクチンで免疫がつきにくい乳児は両親に接種する方針で、当初は乳児の年齢を6か月未満としていたが、1歳未満に拡大した。

 年度内に国内メーカーが生産できるワクチンは1800万人分で、10月下旬に供給が始まり、最優先接種者から実施する。不足分は輸入し、小中高校生と高齢者に使う。

 ワクチンは2回の接種が必要だ。1回目の接種から実際に免疫がつくまでに1か月ほどかかるため、10月下旬に接種した人でも12月以降までは免疫がつかない。厚労省の「流行シナリオ」はピークを10月上旬としており、ピークに間に合わない可能性もある。

 厚労省は方針案への国民の意見を6日から1週間募り、政府の専門家諮問委員会に諮った上で、9月末までに方針を正式決定する。

(読売新聞、2009年9月5日)

****** 読売新聞、2009年9月3日

どうする?新型インフル 

妊婦 重症化に警戒を 発病予防にもタミフル有効

 大阪府内の内科・産婦人科病院の待合室。10月に出産予定の主婦(26)は、「手洗い、うがいを心がけているが、2歳の長女がいるので外出を控えるといっても限度がある」と不安げに話した。

 同病院では先月、インフルエンザに感染した妊婦が4人いたが、タミフルを服用し、重症化することはなかった。家族が感染したケースもあったが、妊婦が予防のためにタミフルを服用し、発症はしなかった。

 海外の報告から、妊婦は新型インフルエンザにかかると重症化する恐れがあると見られている。

 感染を防ぐため、日本産科婦人科学会は、妊婦にインフルエンザが疑われる症状が出た場合は、かかりつけの産婦人科を受診するのは避けるように求めている。

 北大産婦人科の水上尚典(みなかみひさのり)教授は、「インフルエンザにかかったかなと思ったら、まず産婦人科に電話で相談した上で、できるだけ早く地域の内科を受診して下さい」と話す。

 「できるだけ早く」というのは、発症後48時間以内にタミフルを服用することが、重症化防止に最も有効だとされているからだ。そのためにも「発症したらすみやかに受診できるよう、受診する医療機関を、かかりつけ医と相談してあらかじめ決めておいて下さい」

 妊娠中に薬を飲んで、胎児への影響はないのだろうか。

 日本産婦人科診療ガイドラインでは、妊婦・授乳婦への抗インフルエンザ薬投与は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に行う」とされている。新型インフルエンザでは、妊婦の重症化が特に懸念されているため、学会は「有益性が危険性を上回る」と判断、タミフルの早期服用を勧めている。

 国内の調査では、妊娠初期にタミフルを使用した90例のうち、流産などが4例あったが、「いずれも薬を飲まなくても発生する自然発生の範囲内だった」としている。

 感染予防が最も大切なのは言うまでもない。予防法は一般の人と同じ手洗い、うがいとマスクの着用。不要不急の外出は控えること。しかし、仕事を持つ人もいる。上の子が感染すれば、妊娠中でも看病せざるを得ない。

 そこで、国立感染症研究所・感染症情報センターの安井良則主任研究官は、ワクチンの接種を勧める。

 季節性インフルエンザのワクチンは、日本産婦人科診療ガイドラインで「母体、胎児への危険性はきわめて低い」とされている。10月に接種が始まる予定の新型ワクチンも、国産のものは季節性と同じ製法なので、同程度に安全とみられている。

 妊婦のほか、乳幼児、高齢者、持病のある人も、新型インフルエンザにかかると重症化しやすいといわれている。「こうした人たちは、機会があればワクチンを打つべきだ」と安井さんは話す。

 また、妊婦の同居家族が感染した場合などには、冒頭のケースのように妊婦が予防のためにタミフルを服用することを学会は勧めている。かかりつけの産婦人科医に相談したい。予防は、保険が適用されないので、7000~1万円(約10日間分)ほどの自費負担になる。

(読売新聞、2009年9月3日)

****** 産経新聞、2009年9月4日

新型用ワクチン、医療従事者を第一優先

厚労省素案発表

 厚生労働省は4日、新型インフルエンザ用のワクチンについて、医療関係者を第一優先とする接種者の順序を示した素案を発表した。6日から厚生労働省のホームページに掲載し、13日正午まで国民からの意見を募集。専門家の意見を踏まえた上で、9月中に正式決定する。

 厚労省は新型用ワクチンについて約5400万人分が必要としている。これまでは年度内の国内製造分を2200万~3000万人分としていたが、ワクチンの原料となるウイルスの増殖力が想定よりも弱く、1800万人分程度と下方修正した。

 厚労省は「死亡者や重症者の発生を減らすこと」と「医療を確保すること」を目的に、限りあるワクチンの接種について、医師や看護師など医療従事者(100万人)を最優先することにした。そのほか、優先接種対象者としてぜんそくや糖尿病など持病のある人(900万人)と妊婦(100万人)▽1歳~就学前の小児(600万人)▽1歳未満の小児の両親(200万人)-の順で接種させる方針。

 小中高生(1400万人)と高齢者(2100万人)は「接種が望ましい」と位置づけた。ただ、重症化するケースが多い10歳未満については「優先接種対象者と同様の対処」を求めている。

 厚労省は不足分のワクチンについては輸入する方針で海外の製薬会社2社と交渉を進めている。優先対象者には10月下旬に出荷が始まる国産を主に使用。小中学生や高齢者には輸入ワクチンが使われる方針。ただ、輸入ワクチンには国産に使われていない免疫補助剤が入っていたり、製法が違うことから安全面で懸念を示す専門家もいる。このため国内で何らかの治験を行う方針。早ければ12月下旬から接種できる見通し。

 素案では接種費用について触れていないが、舛添要一厚労相は同日、「所得制限を設けて低所得者は軽減策を取るのが妥当」との見解を示した。

(産経新聞、2009年9月4日)

****** NHKニュース、2009年9月4日

ワクチン 接種の優先順位発表

来月下旬から始まる新型インフルエンザのワクチンの接種について、厚生労働省は、患者の治療にあたる医療従事者を最優先とするなど、5400万人を対象にした優先順位を発表しました。

新型インフルエンザのワクチンは、ことし7月から国内メーカーで製造が始まっていますが、年内に生産できる量は1300万人分から1700万人分にとどまる見通しです。このため、厚生労働省は優先順位を決めたうえで、ワクチンが出荷される来月下旬から順次接種を進める方針です。

厚生労働省によりますと、▽最優先に接種の対象となるのはインフルエンザの治療などにあたる医療従事者およそ100万人で、医療体制を維持することが大きな目的です。▽次に優先的に接種されるのは感染すると重症になりやすい妊婦100万人と、ぜんそくや糖尿病などの持病がある人900万人のあわせて1000万人で、この中でも持病のある幼児は特に優先されます。次が、▽1歳から就学前の幼児で対象は600万人。そして、▽1歳未満の乳児の両親200万人という順に接種を進める方針です。また、▽小中学生と高校生の1400万人、さらには、▽65歳以上の高齢者の2100万人も接種の対象になっていますが、国産メーカーのワクチンには限りがあるため、足りない分は海外メーカーのワクチンを輸入して接種することを想定しています。こうした接種の対象者はあわせておよそ5400万人で、厚生労働省は来週この方針を重症になりやすい病気の患者団体や医学会などに説明して意見を聞くとともに、ホームページでも公表して意見を募ったうえで、今月中に最終決定することにしています。

東京都内の産婦人科クリニックを訪れていた妊娠中の34歳の女性は「新型インフルエンザに感染すると、おなかの子どもにどんな影響を及ぼすのかがわからず、不安だったのでとても嬉しいです」と話していました。

また2人目の子どもを妊娠している32歳の女性は「幼稚園に通っている上の子どもが感染すると家族が皆感染してしまう可能性もあるので、家族全員がいっしょに接種を受けることも考えています。その場合はワクチンを接種する費用もかなりの金額になるので国に援助してほしいです」と話していました。

東京都内の小児ぜんそくの専門外来に診察を受けに来ていた9歳の女の子の母親は「ぜんそくの場合、ただのかぜでも見ているほうがつらくなるほど症状が重くなるので、新型インフルエンザに感染したらどうなるのか不安がありました。ワクチンの安全性はよく考えないといけないが、優先的に接種できると聞いてほっとしています」と話していました。

厚生労働省がまとめたワクチンの接種方針について腎臓病の患者団体「全国腎臓病協議会」の金子智事務局長は「基礎疾患のある人が優先的に接種を受けられることに感謝するとともに、これからは確実に接種を受けるよう患者に呼びかけていきたい。人工透析を受けている患者の中には年金暮らしの高齢者など経済的にゆとりのない人も多く、所得の少ない患者が接種を控えることのないように引き続きワクチン接種の費用問題も検討してほしい」と話しています。

ワクチンの副作用に苦しむ子どもを持ち、薬害被害者団体「MMR被害児を救援する会」の事務局を務める栗原敦さんは「新型インフルエンザのワクチンは、有効性や安全性が確立していないので、国は副作用の被害が出た場合、速やかに情報を集め公表するシステムを整備するべきだ。また被害者の救済制度も副作用の被害を幅広く対象とし、本来の趣旨どおり運用してほしい。ワクチンを接種するかどうかはこうした情報を踏まえたうえで、それぞれの個人が判断することが重要だ」と指摘しています。

(NHKニュース、2009年9月4日)

******* NHKニュース、2009年9月5日

ワクチン製造量 再び下方修正 

国内メーカーが製造する新型インフルエンザのワクチンについて、厚生労働省は、来年3月までの製造量をこれまでより20%ほど下方修正し、最も少ない場合は1800万人分になると試算しました。

新型インフルエンザのワクチンは、厚生労働省が国内の4つのメーカーに依頼して7月から製造を始めています。しかし、ワクチンの元となるウイルスの増殖力が弱いことから、厚生労働省は来年3月までの製造量を当初の試算のおよそ半分の2200万人から3000万人分と修正していました。ところが、増殖力に加えてワクチンに必要な成分が取り出しにくいことがわかり、製造量はさらに減少する見通しだということです。このため厚生労働省は、来年3月までの製造量を20%ほど下方修正し、最も少ない場合は1800万人分になると試算しました。厚生労働省は、国内メーカーの製造で不足する分は、12月末にも海外から輸入を始めて来年の春までに6000万人分のワクチンを確保したいとしています。

(NHKニュース、2009年9月5日)


妊婦もしくは褥婦に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (医療関係者対象)

2009年09月03日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ流行期のピーク時(9月下旬~10月上旬)には、当然、妊婦や授乳婦で感染する人も多く出ます。インフルエンザの簡易検査の陽性率は50%と言われています。特に発熱1日目の検査ではほとんどの人が陰性です。重症化を防ぐためには、発症直後にタミフル投与を開始することが有効ですから、

新型インフルエンザ流行期に妊婦や授乳婦が発熱(38℃以上)した場合は、検査結果を待たずできるかぎり早期にタミフルを投与し始めること

が重要です。その際、

かかりつけ産婦人科医を直接受診するのではなく、地域の一般病院へできるかぎり早期に受診すること

を地域内で周知徹底しておく必要があります。

もしも、新型インフルエンザに感染した妊婦や授乳婦が産婦人科を受診すると、医療機関を介して、多くの妊婦に新型インフルエンザ・ウイルスが広がってしまうことが危惧されます。また、産婦人科医や助産師で多くの感染者が出現した場合は、その施設では一時的に分娩の受け入れが困難となってしまいます。

地域の一般病院の先生方にも、以下の日本産科婦人科学会からのお知らせを十分に御理解いただく必要があります。

また、流行の状況に応じて、対応方法が変わっていく可能性もあります。政府、自治体、学会、病院からの広報だけでは、正しい情報が十分に浸透しません。新聞やテレビなどでも、繰り返し繰り返し、最新の正しい情報を流していただきたいと思います。

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090825b.html

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (医療関係者対象)

         平成21年8月25日(4版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊婦は非妊婦に比して、新型インフルエンザに罹患した場合、重症化しやすいのでしょうか?
A1: 妊婦は重症化しやすいことが明らかとなりました。

Q2: インフルエンザ様症状が出現した場合の対応についてあらかじめ妊婦と相談しておいたほうがいいのでしょうか?
A2: もし、インフルエンザ様症状が出現した場合には、かかりつけ産婦人科医を直接受診するのではなく、地域の一般病院へできるかぎり早期に受診するよう、あらかじめ指導しておきます。これは妊婦から妊婦への感染防止という観点から重要な指導となります。

Q3: 妊婦がインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱と急性呼吸器症状)を訴えた場合、どのように対応すればよいでしょうか?
A3: 産婦人科への直接受診は避けさせ、地域の一般病院へあらかじめ電話をして、できるかぎりの早期受診を勧めます。WHOは新型インフルエンザ感染が疑われる場合には医師は確認検査結果を待たずに、ただちにタミフルを投与すべきとしています。妊婦には、「発症後48時間以内のタミフル服用開始(確認検査結果を待たず)は重症化防止に最も有効」と伝えます。

Q4: 妊婦に新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応(治療)はどうしたらいいでしょうか?
A4: ただちにタミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療を開始します。

Q5: 妊婦が新型インフルエンザ患者と濃厚接触した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的投与を開始します。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)は胎児に大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

Q7: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、本邦妊婦の場合にも同様な投与方法が推奨されます。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)
治療のための投与:75mg錠1日2回(計150mg)5日間
なお、本邦の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、本邦の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。

Q8: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A8: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。

Q9: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A9: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q10: 分娩前後に発症した場合は?
A10: タミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療をただちに開始します。また、新生児も感染している可能性があるので、厳重に経過観察し、感染が疑われる場合には検査(A型か否か)を行い、できるだけ早期に治療を開始します。

Q11: 感染している母親が授乳することは可能でしょうか?
A11: 母乳を介した新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することを母親に勧めます。ただし、児と接触する前の手洗い、清潔な服への着替え(あるいはガウン着用)、マスク着用の励行を指導します。また、接触中は咳をしないよう努力することを指導します。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えるよう指導します。このような児への感染予防行為は発症後7日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる危険は低いと考えられているので、通常の母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日


新型インフルエンザから妊婦を守れ 海外で死者、不安高まる

2009年09月01日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザワクチンに対する要望 (日本産科婦人科学会)

厚生労働省 新型インフルエンザ対策推進本部 御中

日本産科婦人科学会では「妊婦(110万人)ならびに産後6ヵ月以内の婦人(55万人)への新型インフルエンザワクチンの優先的な接種」を要望いたします。根拠は以下の通りです。

1.  妊婦は新型インフルエンザに罹患すると重症化しやすく、また死亡率も高い可能性がある。

理由: Lancet誌(Published Online 2009年7月29日)によれば

「米国疾病予防局(CDC、Center for Disease Control)は、2009年4月15日~同年5月18日間に13州で34名の新型インフルエンザ(H1N1)感染妊婦を確認した。うち11名(32%)が入院し、1名(2.9%)が死亡した。また、この1ヶ月間の総感染者数5,469名中、妊婦は34名(0.6%)を占めたが、妊婦での入院率(32.4%、11/34)は妊婦以外での入院率(4.0%、218/5,435)に比してはるかに高いものであった。」 

また、同時に同誌は以下のことも報告している。

「2009年4月15日~同年6月16日間に新型インフルエンザによる45名の死亡を確認した。うち6名(13%)が妊婦であった。これら6名はいずれもタミフル投与を受けたが、その投与開始時期は発症後6日、8日、8日、10日、14日、15日目であった。これらの妊婦はいずれも肺炎とARDSを合併し人工呼吸管理を必要とした妊婦であった。」

ちなみに、妊婦は全米人口の約1.3%である。

2.  WHOは上記Lancet誌の報告を受けて、2009年7月31日に「Pandemic influenza in pregnant women: Pandemic (H1N1)2009 briefing note 5」として、以下を推奨した。

1) 新型インフルエンザ流行地域の妊婦ならびに妊婦の治療に関与する者は妊婦のインフルエンザ様症状に注意を払うべきである。

2) 症状発現後はできるかぎり早期にタミフルによる治療を開始すべきである。

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (一般の方対象) 、日本産科婦人科学会

発熱患者の受診の流れ 【妊婦の場合】

新型インフルエンザ対策手引書 (厚生労働省)

****** 共同通信、2009年8月29日

新型インフルから妊婦守れ 

海外で死者、不安高まる

 新型インフルエンザの流行がさらに拡大する中、感染すると重症化しやすい妊婦をどのように守るか。ブラジルでは新型の死者の1割強を妊婦が占め、感染防止対策が最も必要なグループであることが浮き彫りになった。最も大切なのは手洗いなどで日常的に感染を防ぐこと。日本産科婦人科学会(日産婦)は、感染が疑われたらほかの妊婦への感染を防ぐために、産婦人科ではなく一般病院を受診するよう呼び掛けている。

 日産婦は治療薬の投与も推奨し、妊婦110万人と産後6カ月以内の女性55万人に、新型用ワクチンを優先接種するよう国に要請。国は9月中に優先接種を正式決定する見通しだ。

 「自分もリスクが高くて心配なのはもちろんだが、産んだ子どもはどうなるのだろうか。生まれたばかりの子どもは薬も飲めないし、分からないことが多く不安だ」。東京都文京区に住む妊娠9カ月の女性(42)は打ち明ける。

 27日の新型用ワクチン接種の優先順位の意見交換会で、日産婦の水上尚典北海道大教授は「妊婦は人口の約1%だが、海外では多くの死者が出ている。危機感を持っている」と訴えた。

(共同通信、2009年8月29日)

****** 毎日新聞、2009年8月28日

新型インフルエンザ:ブラジルの死者、

世界最多557人に

 【メキシコ市・庭田学】AP通信などによると、ブラジル保健省は26日、同国の新型インフルエンザによる死者が22日現在で557人になったと発表した。確認されている統計では、米国の522人(20日現在)を上回り世界最悪になった。死者の1割以上にあたる58人が妊婦だった。ブラジル保健省は、人口比でみると同国の死亡率は世界で7番目だとしている。

(毎日新聞、2009年8月28日)

****** 東京新聞、2009年8月30日

新型インフル家族が感染したら タオルは別々に 朝と晩熱測って

 流行がさらに拡大した新型インフルエンザ。家族が感染したら、ほかの家族はどう対応すればいいのか。厚生労働省や米疾病対策センター(CDC)は、さまざまな注意点を挙げている。

 ▽体調異変時

 熱やせきが出始めても、体力などにより個人個人で症状は異なり、自宅の常備薬で対応できることもある。ただ、妊娠中や持病のある人は、早めにかかりつけ医に相談する必要がある。

 受診する場合、都道府県の発熱相談センターに電話で相談できる。医療機関には行く前に電話を。「患者が多い時期は重症者を優先的に診る大病院より、地域の診療所のほうが待たずに済むことが多い」(厚労省)という。

 ▽自宅療養

 感染者本人はマスクをつけ、できればドアを閉められる個室で療養する。妊婦や持病のある人は感染者の看護を避ける。感染した子どもを抱く時は自分の肩に子どものあごを乗せるなど、面と向かわない工夫をしたい。

 口に手を当ててせきをした際など、小まめにせっけんや消毒液で手洗いを。タオルも家族で色分けをして別のものを使う。

 ▽外出は?

 厚労省によると、感染者の家族は会社や学校などへ行くのは問題ない。ただ朝晩に熱を測るなど体調のチェックを怠らないよう呼び掛けている。CDCは感染者本人について、解熱剤を使わずに熱が下がったとしても、丸一日は外出を避けるべきだとしている。さらに厚労省は「できれば発熱、せきなどの症状が始まった日の翌日から七日目まで避けてほしい」としている。

(東京新聞、2009年8月30日)

****** 読売新聞、2009年9月1日

ワクチン接種、医療従事者を最優先

…厚労省案

 新型インフルエンザのワクチンを接種する際、優先順位を医療従事者、持病がある人、妊婦、小児、乳児の両親とする厚生労働省の基本方針案が31日、明らかになった。

 これら約1900万人への接種が終わった後で、小中高校生、高齢者に接種する。政府の専門家諮問委員会などの意見を踏まえ、国民の意見を募集したうえで、9月中旬にも正式決定する。

 死亡者や重症者の発生を減らすことを目的に、健康に重大な影響を受けるおそれがある人を優先した。

 具体的には、〈1〉医療従事者100万人〈2〉持病(ぜんそく、糖尿病など)がある人1000万人と妊婦100万人〈3〉生後6か月~就学前の小児600万人〈4〉生後6か月未満の乳児の両親100万人――を最優先接種者とし、この順で接種を実施。持病のある人の中では、小児を優先することにした。その後で小学生、中学生、高校生、高齢者の順に接種する。

 年度内に国内で製造できるワクチンは、想定よりも大幅に少ない1800万人分と見積もっており、最優先接種者に使用する見通し。不足分は輸入する方針だが、治験などを実施して安全性を確認し、問題がある場合には使用しない。

(読売新聞、2009年9月1日)

****** 共同通信、2009年8月31日

厚労相、新型ワクチン輸入に意欲 精力的に交渉

 新型インフルエンザ用ワクチンの輸入について舛添要一厚生労働相は31日、「海外メーカーと精力的に交渉している。約束した通りの人数分か、できれば、それを超えるぐらいの量を確保したいと思っている」と述べ、あらためて輸入に強い意欲を示した。

 厚労相はこれまで、国内では最大で5300万人分のワクチンが必要だとし、国内メーカー4社の製造で足りない分を輸入で賄う考えを示している。

 一方、輸入ワクチンについては国内製品と製法が異なるため安全性に対する懸念の声がある上、国際的にワクチン不足が予想される中で、医療態勢が整い、インフルエンザ治療薬も豊富にある日本が輸入することに批判も出ている。このため専門家の間には輸入に慎重な意見があり、具体的な輸入相手や量は決まっていない。

(共同通信、2009年8月31日)

****** 時事通信、2009年8月29日

日本でもワクチン治験

新型インフルでスイス製薬大手

 スイス製薬大手のノバルティスは31日、新型インフルエンザのワクチンの効果や副作用を検証する臨床試験(治験)を、日本でも実施する方針を明らかにした。日本法人のノバルティスファーマ(東京)が成人200人、未成年者120人を対象に、9月中にも開始。日本政府が海外からの輸入を決めれば、年内にも供給できる見通し。

 国内のワクチンメーカーは4社に限られ、ワクチンが不足する恐れがある。このため、政府は海外からの輸入を検討している。

(時事通信、2009年8月29日)

****** 信濃毎日新聞、2009年8月30日

新型ワクチン 輸入は慎重であるべきだ

 新型インフルエンザのワクチン接種が緊急課題となっている。

 国内で年内につくれる量は、1700万人分がやっとという。厚生労働省が目標とする5300万人分には、はるかに届かない。接種の対象者を絞り込まなくてはならない。

 厚生労働省は、重症になりやすい基礎疾患のある人や妊婦、幼児らと、治療にあたる医療従事者に国産のワクチンを優先し、不足分は海外から輸入する考えだ。

 ワクチン接種の目的は重症化を防ぐことにある。リスクが高い人を優先するのは当然である。県内でも重い心臓病の男性が亡くなった。妊婦の死亡率が高いとの海外の報告もある。厚労省はさらに優先度を検討し、広く意見を聞いて社会の合意を得てほしい。

 一方、ワクチンの輸入には問題が多い。慎重に議論を尽くす必要がある。

 ワクチン接種には副作用のリスクがある。まして海外メーカーのワクチンは国産とタイプが異なり、添加物も含まれている。にもかかわらず、舛添要一厚労相は当初、安全性を確かめる国内の臨床試験を省く考えを示した。

 あまりに乱暴である。新型のワクチンは、接種を受けるかどうかを個人の判断に委ねる「任意接種」となる見通しだ。肝心の安全性があやふやでは、受ける側が判断に困ってしまう。

 ワクチンの接種は、安全性と有効性、副作用リスクなどの説明が広く行き渡っていることが前提になる。十分な臨床試験と情報の提供が欠かせない。

 輸入の是非は、国際的な視野からも論議されるべきだ。

 新型のワクチンは世界的に不足している。医療先進国でワクチンの生産設備もある日本が海外からワクチンを買い集める行為は、理解を得られるだろうか。そのツケは結局、医療資源の乏しい途上国に及ぶことになる。

 新型にかかっても、ほとんどの人は軽症で済んでいる。日本には治療薬もあり、公衆衛生の水準も高い。いま緊急に輸入が必要なのか、冷静に検討したい。

 そもそもワクチンに感染を防ぐ力はない。ワクチンに目を奪われて、他の対策がおろそかになるのが心配だ。

 厚労省は年内に患者数が2500万人に達すると予測する。

 あらためて確認したい。大事なのは感染拡大を防ぐ一人ひとりの努力だ。社会全体で新型対策に取り組み、医療態勢を整えることが重症者の命を救うカギになる。

(信濃毎日新聞、2009年8月30日)