ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産婦人科医の数が増加

2009年12月24日 | 産婦人科の医師確保

厚生労働省は、全国の医療機関や福祉施設などを対象に、2年に1回、診療科ごとの医師の人数などについて調査しています。今年12月17日に公表された、厚生労働省「2008年医師・歯科医師・薬剤師調査」によれば、昨年12月31日時点で、すべての診療科をあわせた医師の数は、全国で28万6699人でした。このうち、産婦人科医の数(産科もしくは産婦人科を主たる診療科とする医師数)は、計1万389人で、前回(2006年)調査の1万74人から315人(3.1%)増加したことが明らかになりました。

産婦人科医の数は1998年の1万1269人以降、減少を続けてましたが、今回10年ぶりに増加に転じました。これは近年の診療報酬上の産科医療の評価や日本産科婦人科学会の取り組みなどが、奏功した結果とも言えるでしょう。厚労省は「産科医不足への危機意識の広がりや、新臨床研修制度による臨床経験、産科補償制度の創設などにより、若い医師の志望が増えた」と分析しています。

もっとも、1998年との比較では、産婦人科医の数は880人(7.8%)減少していて、未だ十分と言うには程遠いのが現実です。また都道府県別の格差は依然としてあります。15歳から49歳の女子人口10万人当たりで見ると、産婦人科医が最も多いのは、徳島県の56.3人、一方、最少は奈良県の28.3人で、1.99倍の開きがあります。

産婦人科医が全診療科の医師の中で占める割合は3.8%ですが、最近2年間で研修医の4.5%が産婦人科医になっていて、若い世代の産婦人科医が増加しました。若い世代の産婦人科医が増え始めたとすれば、非常に心強い限りです。

人間の寿命には限りがあり、どの分野で頑張っている人でも、みんな年々歳を取っていき、いつかは引退しなければなりません。その時、その業務を引き継いでくれる人がいなければ、そこでその業務は途絶えてしまいます。産婦人科の業務は、人類が存続する限り、今後も引き継いでいく必要がありますが、次世代が増えてくれないことには業務を存続させることが困難となってしまいます。次世代の若い人達が入門を尻込みするような過酷な勤務環境で、無理に無理を重ねて頑張り続けるのは考えものです。次世代の若い人達が喜んで入門できるような勤務環境を整えることが重要だと思います。

若い世代の産婦人科医が増えると、職場の雰囲気にも活気が満ちあふれてきて、我々のようなロートルの出る幕はだんだん少なくなります。今後も若い世代の産婦人科医が増え続けて、いい形で次世代にバトンタッチできればと考えてます。

また、周産期母子医療センターの場合、産科、新生児科、麻酔科の間の緊密な連携が必須なので、産婦人科医の確保だけではなく、小児科医や麻酔科医などの確保も非常に重要です。今回の調査で、小児科医は1万5236人で、2006年の1万4700人より増加しました。麻酔科医も7067人で、2006年の6209人から増加しました。