ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療全般、産婦人科医不足の問題、地域周産期医療の現状と未来、当医療圏の産科問題に対する取り組み。

HPVワクチンが登場しても子宮頸がん検診は重要

2009年06月28日 | 婦人科腫瘍

参考:子宮がんについて

****** 産経新聞、2009年6月27日

子宮頸がん 

若い世代に無料クーポン券配布 

100%予防可能、検診受けて

 検診でほぼ100%予防できる子宮頸(けい)がん。米国では検診受診率が80%を超え発症や死亡が減っているが、日本では24%にとどまり、年間2500人が亡くなっている。特に若い世代の受診率が低く、厚生労働省は受診率アップを目指し、対象年齢の女性に検診の無料クーポン券を配布する。専門医は「検診が自分の命を守るのに有効なことを知ってほしい」と呼びかけている。【平沢裕子】

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検診で必ず発見

 子宮頸がんは子宮の入り口(頸部)にできるがんで、性交渉によってHPV(ヒト・パピローマウイルス)に感染することが原因で起こる。HPVはありふれたウイルスで性交渉があれば誰でも感染の可能性がある。感染しても多くの人は自分の免疫力でウイルスを排除できるが、約1割がウイルスを排除できずに感染が持続し、さらにその中からがんに進行する人がいる。

 ただ、感染からがんに進行するまでには5~10年以上かかり、がんになる前に細胞が変形する「異形成」という状態になるため、定期的な検診でがんになる前に必ず発見・治療できる。

 自治医大附属さいたま医療センター産婦人科の今野良教授は「子宮頸がん検診は世界で最も普及し、効果が評価されている。先進国のほとんどで検診受診率が60~80%と高いのに対し、日本は30%以下で、それが若い世代の発症や死亡の増加につながっている」と指摘する。

 欧米に比べて検診受診率が低いとはいえ、50歳以上の世代はそれ以下に比べれば高く、子宮頸がんの発生と死亡は減少。一方で、20~40代では発生・死亡ともに増加、中には妊娠で初めて婦人科を受診し、悪化した子宮頸がんが発見されるケースもある。

将来の出産のために

 子宮頸がんの発症のピークは30代半ば。結婚・出産年齢が上がり、“アラフォー世代”の出産が増加していることを考えれば、20、30代での検診は将来の出産の備えにもなる。今野教授は「検診を定期的に受けていれば『子宮をとらずにすんだのに』と思うケースは少なくない」と警鐘を鳴らす。

 こうしたことから、厚労省は女性のがん検診受診率を上げようと、今年度補正予算で約216億円を投じ、子宮頸がんと乳がんについて検診の無料クーポン券を配布する。子宮頸がんの対象は前年度に20、25、30、35、40歳になった女性400万人で、早ければ各市町村から7月初めに送付される。

 検診は子宮の入り口を肉眼や拡大鏡で見る内診と、表面をブラシや綿棒でこすって採取した細胞を顕微鏡で見る細胞診。個人差はあるが基本的に痛みもなく、1分程度で済む。簡単な検査だが、日本では内診を嫌がる女性が多く、それが受診率の低さにつながっているという声もある。

 今野教授は「予防に検診が必要なことを理解していない人も多い。検診は女性の当然の権利と理解してほしい。将来子供を産むため、自分の命を守るため、ぜひ検診を受けてもらいたい」と呼びかけている。

検診の受診率、どうすれば上がる?

 がん検診の受診率を上げるにはどうすればいいのか-。東京都杉並区は乳がん検診を呼びかける案内文書の内容を、(1)従来通り(2)「補助が出る」とお得感を強調(3)「早期発見が命を救う」と安心感を強調(4)「発見が遅れると命にかかわる」と恐怖感を強調-の4種類用意し、どれが最も受診につながるかを調べている。

 文書は今年1月に40、50代の女性6000人に送付。返信があった2248人のうち、(1)が379人で受診希望が最も少なく、ほかは約430人でほぼ同じだった。受診期間は来年2月末まで。同区は実際に受診するかどうかをみた上で、今後のがん検診の通知内容を検討したいとしている。

(産経新聞、2009年6月27日)

コメント

山梨大指導で分娩再開断念 塩山市民病院 「常勤医1人では緊急時対応不十分」 既に予約、市民に不満 (

2009年06月26日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

一昔前までなら、公立・公的病院であっても、常勤の産婦人科医1名の体制で分娩を取り扱うのはごくごく普通のありふれた状況でした。

しかし、長期的に実働の産婦人科医の総数が減り続けて、分娩施設の急減が全国的に問題となり、若い医学生や研修医が専門診療科として産婦人科を敬遠する傾向も顕著でしたので、日本産科婦人科学会も、産婦人科医を増やすためには産婦人科医の勤務環境の改善が急務として3年前に、「ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う公立・公的病院は、3名以上の産婦人科に専任する医師が常に勤務していることを原則とする」との緊急提言を発表しました。

最近では、全国的に分娩施設の集約化が進行しつつあり、産婦人科医1~2名体制の公立・公的分娩施設はかなり減ってきていると思われます。産婦人科医1名の体制で分娩を取り扱っている先生方もまだまだ少なくないですが、長年1人医長体制で頑張ってこられた経験豊富な先生方が多いと思われます。今の若い先生方にそれを強要することは絶対に無理だと思います。

日本産科婦人科学会の地道な多方面の努力の成果もあり、最近では「産婦人科を第一に考えています」と元気に答えてくれる若い医学生や研修医の数がだんだん増えてきている印象もあります。多くの大学で産婦人科入局者数が増えているようにも聞いてます。

地域によっては、産婦人科の勤務条件改善の必要性が全く理解されず、1人でも産婦人科医を確保すれば分娩の取り扱いを再開できるという考え方に立って、産婦人科医確保の努力を行っている自治体や病院の事例も、時々報道されています。 もしも、産婦人科の集約化が全く進まないまま、個別の自治体や病院の努力で一人医長体制の産婦人科が復活するだけの状況が続けば、産婦人科の勤務条件はますます悪化するばかりで、母児の安全も確保できませんし、新人産婦人科医も増えないでしょう。 暗黒時代から脱出するために今、我々はどうしたらいいのでしょうか?その一つの回答が日本産科婦人科学会のこの提言だと思います。多くの人に知ってもらいたいです。

緊急提言(日産婦委員会):ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う病院は3名以上の常勤医を!

ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う公立・公的病院は、常勤産婦人科医3名以上が原則!

                           平成18年4月7日
都道府県知事
市町村長
公立・公的病院長、病院開設者
各位

                                                    日本産科婦人科学会
               産婦人科医療提供体制検討委員会

本委員会は、中間報告書の提出に際して、以下の点について緊急の提言を行います。本提言の趣旨をご理解の上、何卒、迅速かつ適切なご対応をお願い申し上げます。

緊急提言

ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う公立・公的病院は、3名以上の産婦人科に専任する医師が常に勤務していることを原則とする。

提言の理由

1. 産婦人科医の不足の原因の一つが、その過酷な勤務条件にあることは、既に周知の事実である。しかし、平成17年度の本学会・学会あり方検討委員会の調査においても、分娩取扱大学関連病院のうちで、14.2%が一人医長、40.6%が常勤医2名以下という事実が明らかとなっており、勤務条件の改善傾向は認められていないと考えざるを得ない。

2. それに加えて、地域の病院によっては、産婦人科の勤務条件改善の必要性が理解されず、一人でも産婦人科医を確保すれば、分娩取扱を継続できるという考え方に立って、産婦人科医確保の努力を行っているという現状がある。

3. 産婦人科医を志望する医師および医学生に対して、近い将来の産婦人科医の勤務条件の改善の見通しを提示するためには、この状況を改善する明確な意思を学会が示す必要があると考えられる。

4. 本提言を実効のあるものとするために、各地域の医療現場で働く産婦人科医師は主体的にその活動の場を再編成すべきである。

****** 山梨日日新聞、2009年6月25日

山梨大指導で分娩再開断念 塩山市民病院

「常勤医1人では緊急時対応不十分」

既に予約、市民に不満

 医師不足で産婦人科の分娩ぶんべんを中止していた甲州市の塩山市民病院(沢田芳昭院長)が、助産師による正常分娩を始めようとしたところ、同病院に医師を派遣している山梨大から指導を受け、断念していたことが、24日分かった。市民の要望に応えようと早期再開を目指した同病院だが、同大は「常勤医が1人しかおらず、緊急時の対応が不十分」と待ったをかけた。医療関係者は「多くの医師派遣を受ける山梨大の方針に従わざるを得なかったのではないか」と病院側対応に同情するが、市民からは不満の声が上がっている。

 同病院によると、産婦人科は当初、山梨大からの派遣医が3人いたが、同大が「小児科医と麻酔科医が確保できない」として全員を引き揚げたため、2007年10月に分娩を中止した。昨年8月、新たに1人が派遣された。

 同病院は、分娩を求めた市民ら7万7千人の署名が提出されたことを重視、早期の分娩再開を模索。正常分娩に限り助産師5人が主体的に措置する仕組みをつくり、緊急時は山梨市内の診療所の産婦人科医と、系列の山梨厚生病院の麻酔科医に協力してもらうことが決まった。

 今年1月、同病院で検診を受ける妊婦のうち、6月以降の出産予定者を対象に分娩の受け付けを始めた。しかし同大から指導を受けたため、4月に取りやめることを決め、予約者に通知した。

 同病院は「診療所は医師1人でお産を扱う。助産師や看護師は多く、正常分娩なら安全と判断した。ただ山梨厚生病院を含め、同大から多くの医師の派遣を受けていて、再開に慎重にならざるを得ない」と説明する。

 同大は、同病院を指導したことについて「院内助産でも母体や胎児に異常があった場合、助産師から医師にバトンタッチする。分娩再開には少なくとも常勤医3人が必要」などと説明。常勤の小児科医、すぐに駆け付けられる麻酔科医がいないことも理由に挙げている。

 同大が地方病院から医師を引き揚げ、拠点病院に医師の集約を図る背景には医療事故が起きた際の訴訟リスクがあり、「お産に百パーセントの安全を求められる時代。万全な体制で分娩を再開したいが、医師不足で難しい」(同大)という。

 ある医療関係者は、県内の多くの病院が、県内で唯一、医師の派遣機能を持つ山梨大に頼っている現状を指摘。「大学の方針に従わざるを得ない傾向を解消するには、医師を増やすことはもちろん、国や県が積極的に大学側へ働き掛けてほしい」と注文する。

 分娩を予約した山梨市上之割の村松幸恵さん(36)は「地元で産めると思って喜んだのに残念」と肩を落とす。分娩再開の署名活動を進めた「子育てネットこうしゅう」の坂野さおり代表は「再開してもすぐに中止されては困る。一日でも早くお産ができる環境を整えてほしい」と訴えている。

(山梨日日新聞、2009年6月25日)

****** 毎日新聞、山梨、2009年6月12日

周産期医療:“減床”の波紋/上 NICU

 新生児や妊婦の命を守る周産期医療。実は山梨県は全国でもトップレベルの水準を維持している。しかし、国立病院機構甲府病院の新生児集中治療室(NICU)の病床数が6から3に削減される見通しとなり、県内の周産期医療の環境は大きく変わりそうだ。【沢田勇】

県は病床数維持の方針 

「スタッフ増やさねば意味なし」

 「ピーピーピー……」

 県立中央病院(甲府市)の「総合周産期母子医療センター」のNICUでは、アラームが頻繁に鳴る。その都度、看護師が慌ただしく保育器に駆け寄り、異常がないか確認する。透明なカバーに覆われた保育器の中では、手のひらに乗るほどの小さな赤ちゃんが手足を動かしていた。人工呼吸器を付けられた、体重わずか500グラムの未熟児だ。

 部屋に9台の保育器が並ぶ。窓のカーテンは日中も閉められたまま。薄暗くして胎内にいるような安心感を新生児に与えるためだ。

 新生児はナースコールを押せない。医師と看護師が常に注意を払わなければならず、張りつめた空気が漂う。

 夜間の当直医は1人だが、容体の悪い新生児がいる場合は、6人の医師全員が未明まで残ることもある。

 「帰れば赤ちゃんが死んでしまうかもしれない。居ざるを得ないのです」。同センター新生児科の内藤敦医長は話す。

 看護師も同じだ。加藤京子・同病院主任看護師長は「NICUは高度の技術や知識が要求される。多くの機器に気を配り続けるのは心身共に緊張を強いられます」と話す。

 NICU9床の稼働率は95%。常に満床に近い状態だ。現在非常勤1人を含む医師6人と看護師34人が24時間体制で勤務する。

   ◇  ◇

 厚生労働省の人口動態統計によると、山梨県の周産期死亡率は07年3・0(1位)、08年3・2(2位)と、全国トップクラスの低さを誇る。だが、00年代初めまではずっとワーストレベルだった。それが06年(3・7)に3位に急浮上。以降、トップレベルを維持するようになった。

 県医務課の山下誠課長は要因として、この総合周産期母子医療センターが設置されたこと、他県に比べ人口当たりのNICU病床数が多いことを挙げる。

 同センターは01年開設。NICUに加え、母体・胎児集中治療室も備えた県内唯一の施設だ。これで県内のNICUは一気に9床増え、15床となった。

 国立甲府病院も04年に3床増床し、市立甲府病院(3床)を合わせて県内18床となった。07年の厚労省の調査によると、人口や年間出生数が山梨とほぼ同じ佐賀県は3床、福井県は9床しかない。

 ところが、5月27日、国立甲府病院のNICUが6床から3床に削減されることを横内正明知事が明らかにした。日大医学部から派遣されている医師2人が9月末に大学に戻されるためだ。

 これを受けて県は周産期医療協議会を開いて対策を検討。県立中央病院を3床増やすことで、県全体のNICUベッド数を維持する方針が決まった。

 しかし、同病院の内藤医長は「ベッドが増えるなら、スタッフも増やさなければ意味がない」と指摘する。

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 ◇周産期死亡率

 周産期(妊娠満22週から生後7日未満)の胎児・新生児の死亡数を年間の総出産数(死産と出産の合計数)で割り、1000例当たりで換算した値。母子保健の重要な指標となっている。

(毎日新聞、山梨、2009年6月12日)

****** 毎日新聞、山梨、2009年6月13日

周産期医療:“減床”の波紋/下 態勢

医師らの確保が生命線 

「床数だけ増やされても…」

 甲府市の県立中央病院・総合周産期母子医療センターは01年9月に設置されて以降、一度も受け入れを拒否したことはない。

 一方で、県内で出産できる医療施設は減少の一途をたどっているにもかかわらず、同センターの新生児集中治療室(NICU)の態勢(非常勤1人を含む医師6人と看護師約40人)は開設以来、ほとんど変わっていない。同センターの負担は大きくなる一方だ。

 にもかかわらず、トップレベルの周産期死亡率の低さを維持できる背景について、同センター新生児科の内藤敦医長は、医師や看護師の経験の豊富さと病院間の連携を挙げる。

 周産期医療が同センターに集中するため、必然的に医療スタッフは多くの経験を積むことになる。

 一方で、満床の場合は他病院に引き受けてもらうなどして医療レベルを確保してきた。特に6床のNICUを持つ国立甲府病院とは「両輪」の関係にある。内藤医長は「誰か来たら誰かを追い出すのでは、救急病床とはいえない」と言葉に力を込める。

 しかし、10月からはその国立甲府病院の6床が3床に減り、その分同センターが増床される見込みだ。

 国立甲府病院の減床は、3人いたNICU担当医が1人になるためだ。しかし、県立中央病院の医師の増員については、今のところ「医師を派遣してもらっている山梨大医学部の協力が得られるかどうか」(県医務課)と、不透明な状況だ。

 「床数だけ増やされても対応できない」。5月28日に開かれた県周産期医療協議会で、県立中央病院の永井聖一郎・母性科主任医長はそう訴えた。新生児科の内藤医長によれば、増床で12床になれば、最低でも常勤医は7人必要という。

 一方、文部科学省は、NICUのない山梨大学医学部付属病院に12年までにNICUを最低6床設置する方針を示している。

 しかし、最終的にはベッド数よりも医師や看護師の確保が生命線となる。

 内藤医長は「今ある山梨の素晴らしい周産期医療をどう維持していくのか、医師だけでなく社会全体で考えていかなくてはならないと思います」と話している。【沢田勇】

(毎日新聞、山梨、2009年6月13日) 

****** 読売新聞、山梨、2007年11月2日

産科激減 近くで産めない不安

 「オンギャー、オンギャー」

 井出ときみさん(30)は笛吹市内の自宅で、生後1か月の長女、杏理(あんり)ちゃんを慈しむようにあやす。「出産を手伝ってくれた先生方には本当に感謝しています」

 杏理ちゃんは9月20日に塩山市民病院(甲州市)で生まれた。10月から産科を停止した病院にとって“最後”の赤ちゃん。分娩は、当番の産婦人科スタッフ全員で見守った。古明地文子産婦人科婦長(49)は「(安産で)ほっとした反面、『ああ、これで最後なんだなあ』とさみしさがこみ上げてきた」と話す。

 同病院の分娩数は309件(2006年度)。ここ4年で約120件も増えた。山梨大医学部から派遣された産科医3人、助産師8人、看護師5人の態勢が敷かれ、県立中央病院や市立甲府病院が受け入れなかった産婦人科救急が回ってくることもあった。07年度は350件に達することも予想して、助産師や看護師は期待と緊張感を抱いていた。

 ところが昨年末、産科医から、「病院を離れることになった」と告げられた。常勤麻酔科医がいないことが理由だった。唐突な知らせに、沢田芳昭院長(67)もしばらく言葉が出なかった。

 病院は1月、新規分娩の受け付け中止を伝える張り紙を張った。受け付けを断られ、肩を落とす妊婦を見て、涙を流すスタッフもいた。「『受け入れられない』と言うのは、心が張り裂ける思いだった」。古明地婦長はそう言って声を詰まらせる。

 県内で分娩を扱う病院は激減している。県医務課によると、10月末現在、県立中央、市立甲府など甲府を中心に8病院だけ。ここ3年で塩山市民を含む6病院が産科医の派遣元大学への引き揚げなどを理由に中止した。医師不足の中でも、産科は深刻な診療科の一つ。都留市立病院でも来年度の存続が困難な状況だ。

 塩山市民病院については、地元の母親らが団体をつくり、存続を求める7万7000人分の署名を田辺篤・甲州市長に提出した。代表の坂野さおりさん(38)は「2人分の命がある妊婦は不安が多い。『近くで産める』安心感は大きい」と訴える。

 産科中止は、他の産婦人科施設に影響を与える。同じ峡東地域にある中村産婦人科医院(山梨市)は先月、分娩数の増加を懸念して「分娩制限」を始めた。同医院は年間260件ほどを扱うが、今年は約300件と予測。中村雄二院長(47)は「(塩山市民病院の中止で)近くで出産したいと思う地域の妊婦がうちに来ているのでは」と分析する。だが、取り扱える分娩数には限界がある。

 塩山市民病院の2階。かつての産科病棟には、妊婦用の個室や分娩室、新生児室などが残ったままだ。

 「いつまでも放置はできない。しかし、別の科にしたら、分娩がなくなることが確定してしまう」

 沢田院長は、苦悩の表情を浮かべながら言った。【越村格】

(読売新聞、山梨、2007年11月2日)

****** 読売新聞、山梨、2007年11月6日

分娩取り扱う病院 激減

関係者に聞く

 県内で分娩を取り扱う病院が激減している。県内唯一の医師派遣機関である山梨大学は、お産のリスクへの対応が万全でない病院から医師を引き揚げている。一方、自治体や地域病院は、地域バランスへの配慮を訴える。産科の集約化が必要とみる星和彦・同大医学部付属病院長と、来年3月で産科医派遣中止を通告された都留市立病院の大原毅名誉院長に聞いた。

【地域バランス配慮】

大原毅 都留市立病院名誉院長

――県東部唯一の産科が開設以来6年でなくなるのか。

 都留市立病院では、分娩予約を8月9日から休止した。集約化するなら地域バランスに配慮すべきと、市長や市議会が10月18日に山梨大医学部付属病院長と横内知事に、分娩継続を求める市民2万15人分の署名を添えて要請書を提出した。18歳以上の市民の87%を占めた署名数の重みは市民以上に十分認識している。

 一方で、分娩を扱う態勢について、大学側が安全面で万全を求めることも医師として理解でき、ある意味では板挟みになっている。私の両親は都留市出身で、自分も戦時疎開で小学2年から中学卒業まで過ごした都留は第二の故郷。やむを得ず休止にしたことに非常に胸が痛む。

 ――山梨大が分娩を継続する条件の一つとしている常勤麻酔科医確保の見通しは。

 大学の医局から確保するのは極めて難しい状況と言わざるを得ない。全国的に麻酔科医の数は増えているが、手術の件数も増えており、どこの病院でも不足している。当院は民間、公立の病院を問わず勤務医をあたっている。しかし、麻酔科医は決まった病院に勤務せずに複数の病院と契約するケースも多く、4000万~5000万円の収入を得ているとも聞く。地域医療を守るため、フリーではなく勤務医を探している。

 ――なぜこれまで常勤の麻酔科医を確保してこなかったのか。

 麻酔科医は、当院開設の1990年から非常勤医で対応してきた流れがある。また、帝王切開で緊急手術が必要な年間約10件の重篤患者は、甲府市の県立中央病院に救急搬送するという2次医療圏の病院の役割を支障なく果たしてきたからだ。06年度の分娩数は396で、隣接の大月と上野原の分が140件を占めている。

 ――医師の派遣元は分散していないのか。

 山梨、自治医科、千葉、群馬、東京女子医科、順天堂の6大学から常勤医19人、非常勤41人が派遣されており、分散はしている。最大の派遣元は山梨大で、常勤医は産科の3人を含む9人で非常勤医は36人。非常勤の麻酔科医13人も全員山梨大からの派遣だ。

 助産師は今3人いるが5人以上にして安全性を充実させたい。都市と地方の医療の地域格差は歴然だ。医師のリスクが回避されないと地域医療は守れないとの側面は否定できない。

 ――分娩予約を休止した。余波とアフターケアは。

 「地元で産めないのはとても不安だ」などの声が当院に直接寄せられている。8月8日までに予約された方は、昨年度並みの350人ほどいるが、このままでは来年3月20日以降は出産はできなくなる。出産予定がそれ以降の30人ほどの妊婦については、受け入れ可能なほかの病院について責任を持って個別相談と紹介に応じている。(聞き手・林浩也)

【産科集約 やむを得ず】

星和彦 山梨大医学部付属病院長

 ――県内の産婦人科医不足の原因は何か。

 産婦人科医は勤務がきつく、厳しい。高い緊張感を伴うことなどから3Kとも4Kともいわれる。他の診療科より訴訟件数も多く、若い医師が、こうしたリスクが高い科を避けることはある。そして、2004年に福島県内で産婦人科医が逮捕された大野病院事件が起きたのが大きかった。一生懸命やった医師には故意でもなく悪意もないのに。若い医師が産婦人科を希望しなくなったのは当然だ。

 さらに、学生が研修先を選べる新医師臨床研修制度が04年に始まり、研修医が大都市の有名病院に集中して、地方には残らない状況となった。その結果、山梨大に04、05年に入った産婦人科医はゼロ。06年は2人、07年は1人だけだった。

 山梨大学にきて12年になるが、県内の産婦人科の勤務医は、年平均で3人が退職する。ここ4年間で県内の勤務医は12人前後減少したのに、3人しか補充されていないという計算になる。

 ――山梨大学医学部の状況は。

 産婦人科には一時期、医局員が30人いたこともあるが、新研修制度の導入のころから雲行きが怪しくなった。地域に派遣する医師数の維持に努めてきたが、大学では17人まで減少した。分娩、手術、教育、研究を十分にカバーするには、実際は24、25人は必要なので、今以上に減らすことはできない。

 ――都留市立病院から産科医を引き揚げざるを得ない理由は大学の事情か。

 それもあるが、一方で、各病院には前々から訴訟を避けるため、万全の態勢を敷いてくれとお願いしてきた。都留市立は難しかったようだ。産科では、急に赤ちゃんの心音が聞こえなくなったり、母胎の出血が止まらなくなったりするなど、緊急事態が起きる。15~30分以内に赤ちゃんを出してあげることが必要な時もある。特に、大野病院事件が発生して以来、常勤の麻酔科医や小児科医がいて、助産師もそろっている態勢でないと大変であるとの認識を強く持った。それが整わなければ、医師の生活と健康を守るために、産科の中止を通告せざるを得なかった。

 ――今後の産科医療はどうあるべきか。

 病院の拠点化・集中化を図るしかないのでは。例えば3病院に3人ずつ医師がいるより、1病院9人のほうが、1日当たりの医師の負担は増えても、当直は9日に一度で済む。郡内では、分娩を扱っている3病院を1~2病院にすべきと考える。もし3病院の医師を集約して産婦人科を立ち上げることができたら、素晴らしい診療科になると思う。

 また、産婦人科医の維持には給与など、待遇の改善が必要だ。現行の医療保障制度を改め、医師側に過失がなくても患者側に補償金が支払われる無過失補償制度を早急に整備すべきとも考えている。(聞き手・林英彰)

◆大野病院事件 福島県大熊町の県立大野病院で04年12月、帝王切開手術を受けた女性が失血して死亡。同県警は06年2月、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の容疑で担当した産婦人科医を逮捕した。医師は起訴され、現在、福島地裁で公判中。

◇ここ3年間 6病院中止

 県内で分娩を取り扱っているのは8病院。県医務課によると、ここ3年で、大月市立や上野原市立、白根徳洲会など計6病院が取り扱いを中止した。

 一般の救急医療や入院医療サービスを提供する2次医療圏別にみると、分娩を扱う病院は甲府市などを含む中北に5病院、富士・東部に3病院。峡南、峡東の両医療圏はゼロという状況だ。

 厚生労働省によると、県内の産婦人科医の数は2000年末には88人だったが、02年、04年はそれぞれ87人、85人と微減傾向にある。一方、山梨大で勤務する産婦人科医の数は、1998年の22人から01年には30人にまで増加。しかし、その後は減少を続け、05年に20人を切った。07年は17人にまで減っている。

◇求められる現実直視◇

 医師を守る立場の大学も、市民のために産科存続を目指す地域病院も、医師不足にあえいでいるのは同じだ。星院長、大原名誉院長とも互いの事情を知り尽くしており、インタビューでは相手への気遣いともとれる発言が目立った。

 そもそも、9月いっぱいで分娩の扱いを停止した塩山市民病院や、都留市立病院が産科を始めたのは、地域での産科医療の強化の必要性を感じた星院長が医師を派遣したからだ。星院長にとって、医師の引き揚げが苦渋の選択であることは想像に難くない。

 現状のままであれば、医師の集約化が不可避と言えそうだ。各自治体は、県内の医師不足の現実を直視し、そのうえで地域として最良の選択は何かを、考える必要があると思う。(英)

(読売新聞、山梨、2007年11月6日)

****** 毎日新聞、山梨、2007年11月22日

お産難民のゆくえ:求められる「助産師」像/上 

分娩体制崩壊の危機

産婦人科医の確保に限界

 全国的に産婦人科医不足が進み、県内でも分娩(ぶんべん)できる医療機関が激減する中、妊婦が安心して身近な施設で出産できない「お産難民」が現実になりつつある。県は医師確保に奔走する一方、助産師の存在に着目し、妊婦の健診を行う「助産師外来」の検討に入った。ただ、県内の医療機関における助産師の充足率は全国最低レベルという問題を抱える。助産師はお産難民を救えるのか――。可能性を探った。【吉見裕都】

 県東部で唯一出産ができる都留市立病院(都留市)の関係者らが10月中旬、市民約2万人の署名を携えて山梨大医学部付属病院(中央市)の星和彦病院長を訪れた。きっかけは、都留病院の産婦人科に医師を派遣している付属病院が示した08年4月からの引き揚げ方針。付属病院の医師不足が理由だが、都留病院は同3月から分娩中止に追い込まれるため、関係者が医師の派遣継続を付属病院に訴えた。

 集まった署名は、約1カ月で18歳以上の市民の9割近く。短期間での盛り上がりに、市議会の藤江厚夫議長は語気を強めた。「市民も切羽詰まっている証拠だ」

 同様の理由で、9月末で分娩を取りやめた甲州市の塩山市民病院でも、医師の派遣継続を求めて約7万7000人が署名した。

 30年にわたり甲府市下石田2で開業している「杉田産婦人科医院」(杉田茂仁院長)も、10月から分娩を取りやめた。1人で対応してきた杉田院長(70)は「365日24時間働き、人間的な生活はできないと覚悟してきたが、年齢的に厳しくなった」と話す。長男(40)は千葉の病院で産婦人科医として勤務するが、「医師1人の開業は安全面で懸念を持っているようだ」とした。

 県内の分娩可能な医療機関はここ10年で半数以下の17カ所に減少。うち9カ所が甲府市内に集中している。

  ×  ×  ×

 困窮の度合いを増すお産現場の改善に向け、分娩場所の拠点化や医師の集約化が議論に上っている。国立病院機構甲府病院の外科系診療部長で産婦人科医の深田幸仁医師(44)は「若い医師が安全に安心して働ける勤務環境を整えないと産婦人科医は増えない」と訴え、この動きを支持する。

 受け入れ病院が決まるまでの照会件数は、消防庁によると、県内は04年のゼロから06年は▽1回1件▽3回2件▽5回1件――と急増した。集約化により、既に分娩場所のない峡南地域など都市部以外の妊婦に、さらなる長距離移動を強いることにつながりかねないとの指摘もある。

 県産婦人科医会の武者吉英会長は「2、3年後には県内の分娩体制が崩壊する恐れがある」と警鐘を鳴らす。県は、県内で医師として働くことを条件にした奨学金制度の導入などに着手したが、限られた産婦人科希望の学生を全国で奪い合う構図に「限界がある」との声も漏れる。

 そんな中、横内正明知事は9月議会で助産師外来設置の検討を表明した。病院によっては1人の医師が1日で70人もの妊婦に行う健診を助産師に担ってもらい、医師の負担を減らすのが狙いだ。医師不足をカバーしようと、同医会も助産師を養成しやすい仕組み作りを行政に働きかけ始めた。「医師が一人前になるには何年もかかる。助産師養成の方が早く、頼もしいパートナーになり得る」。武者会長も期待を寄せる。

………………………………………………………………………………………………………

助産師 保健師助産師看護師法(保助看法)で定められた国家資格。助産師になるには、大学の看護学科で学んだり、看護師資格を取得して「養成所」に1年間通った後、国家試験に合格する必要がある。保健指導や正常分娩の介助、子宮収縮の状態を調べる「内診」などの助産行為にあたることができる。

(毎日新聞、山梨、2007年11月22日)

****** 毎日新聞、山梨、2007年11月23日

お産難民のゆくえ:求められる「助産師」像/中 

助産師主導に賛否両論

医療事故時の対応に課題

 「生まれた赤ちゃんをすぐに母親の胸に置くと、赤ちゃんは慣れ親しんだ心音を聞き、泣きもせずに静かに過ごします。へその緒も急いで切る必要はなく、1時間もすると自分でおっぱいに吸いつく。この時間が母子にかけがえのないきずなを築かせるんです」

 今月2日、甲府市内で行われた講演会。自然分娩(ぶんべん)を中心に行っている上田市産院(長野県上田市)の広瀬健副院長は、分娩のあるべき姿として熱っぽく語った。

 一方で、一般的な病院での分娩は「訴訟に対する『医師の安全』を優先している」と疑問を表明。妊娠から分娩、産後まで長期的に助産師が主導し、異常出産時に産婦人科医がバックアップする体制の確立を訴えた。

 ただ、助産師が分娩まで行う助産院は、県内に2施設しかない。その一つ、韮崎助産院(韮崎市富士見1)を訪れると、甲府市善光寺2、主婦、田中真理さん(30)が助産師の雨宮幸枝さん(65)と紅茶を飲みながらくつろいでいた。「病院での分娩は不自然さを感じます。本来人間に備わっている力でお産をしたい」。田中さんは助産院を選んだ理由をこう話し、雨宮さんに絶対の信頼を置いている様子だった。

 出産をスムーズに行うため、病院分娩では陣痛促進剤がよく使われ、会陰切開も少なくなく、赤ちゃんは母親と離れて数日間、新生児室で過ごす。助産師による自然分娩を望む妊婦もいるが、甲州市のサークル「子育てネットこうしゅう」の坂野さおり代表(38)は「妊婦と病院で産みたいスタイルにズレがあるが、出産施設の減少で選択肢がない」と妊婦の悩みを代弁する。

 一方、医師側は「助産師主導」の早期展開に懐疑的だ。県産婦人科医会の武者吉英会長は、情報化の進展で妊婦は高度な出産知識を持っているとして、「助産師に妊娠から産後まで任せるといっても、医療事故まで受け入れられないだろう。仮に妊婦にその気持ちがあっても、夫や両親といった周辺は納得しない」と分析。韮崎助産院でも分娩直前に家族に促され、最終的には病院でお産をする妊婦も時折いるという。

 国立病院機構甲府病院の産婦人科医、深田幸仁医師(44)は、さらに「リスクを背負うことになり、助産師自身が主導を望んでいるかどうか」と指摘する。今年2月には新生児の死亡は助産師の過失が原因として、横浜市の医院が慰謝料など5320万円を求められる訴訟が起こされ、06年には栃木県の助産所の助産師が新生児の死亡事故で提訴され、3700万円で和解している。

 武者会長は「医師の厳しい勤務環境が続く中、助産師に仕事が流れるなどという思いはなく、助産師の活躍の場が広がるのをむしろ歓迎する」と話す。ただ、深田医師は「助産師主導」について、「検討する前に、妊婦と助産師の意向を確認する必要がある」と述べ、前のめりの議論にくぎを刺した。【吉見裕都】

(毎日新聞、山梨、2007年11月23日)

****** 毎日新聞、山梨、2007年11月26日

お産難民のゆくえ:求められる「助産師」像/下 

医師との分業体制

“ダンス踊れる”連携必要

 「スタッフがついてこれるか、いつも気にしています」
 助産師外来を導入している渕野辺総合病院(神奈川県相模原市)の尾崎信代看護師長は10日、甲府市であった県母性衛生学会で講演後、参加者の質問にこうもらした。
 助産師外来とは、妊婦への健診や保健指導を助産師が行い、分娩(ぶんべん)は医師の責任下に置く分業体制で、同病院は05年10月に開設。尾崎さんは「異常の発見ではなく、お産が正常に進むように妊婦の『セルフケア』を誘導していくのが助産師の役割」と述べ、医師との分担の必要性を説く。

 課題は「マンパワー」。同病院の常勤助産師8人のうち外来は4人で担当しているが、実際は尾崎さんが8割を担う。長く医師のサポート役だったこともあり、助産師が責任を負う外来に行きたがらないという。

 助産師のかかわり方として、▽助産師主導の分娩▽病院の助産師外来▽地域で開業した助産師が健診、分娩は病院――などさまざまな方法が考えられ、医師の仕事量が減るのは間違いない。これにより、激務のため敬遠していた医学生が産婦人科医を志す可能性は高い。

 しかし、医師と同様、絶対数が少ないのは助産師も同じだ。助産師の数は全国でピーク時5万人を超えていたが、今は2万人台で、県内も158人(06年12月末)と減少傾向。日本産婦人科医会によると、県内の助産師の充足率(06年3月)は診療所が16・28%と全国ワースト2位、病院も71・33%で同4位と低水準に陥っている。

 県内で助産師になるには、県立大看護学部か山梨大医学部看護学科で学ぶしかないが、枠は十数人分しかなく、何人かは県外へ出てしまう。他県には看護師を対象に1年間で助産師資格が取れる「養成所」があるが、県内にはない。県立大の伏見正江准教授(助産学)は定員や教員の増加を訴え、県産婦人科医会の武者吉英会長は行政による養成所設置を提案する。

 助産師の熱意の醸成も重要だ。活躍の場が広がることを期待する助産師ばかりではないが、韮崎助産院(韮崎市富士見1)の助産師、雨宮幸枝さん(65)は訴える。「妊婦さんにはいい状況といえないが、助産師が見直されるチャンス。母子の命を守る厳しい仕事だが、お産の喜びはたまらないはず」。尾崎さんも「自分の技術でお金をもらうんだからプロ意識を持って」と強調する。

 県内でも、医師と助産師が連携する動きが出てきた。近くの産婦人科医、中島達人医師(58)や国立病院機構甲府病院の深田幸仁医師(44)と連携する雨宮さんは「恥をかいてもいいから早めの相談。状況が悪くなってからではお医者さんも困るでしょう」と相互連絡の“ツボ”を話す。

 ただ、深田医師は懸念する。「新生児集中治療室(NICU)のある病院がない郡内地域では医師もバックアップできない。そもそも忙しい医師が十分に助産師を支えられるのか」。医師確保も重要というわけだ。

 自分の体験も踏まえ、雨宮さんは医師との協力関係をたとえた。「医師と助産師はチークダンスを踊れるような関係じゃないといけないんですよ」【吉見裕都】

(毎日新聞、山梨、2007年11月26日)

****** 毎日新聞、長野、2009年6月25日

小諸厚生総合病院:産婦人科診療を再開 

常勤医復帰で--来月1日から

 常勤医の病気療養に伴い4月以降の分娩受け入れを中止していた小諸市の小諸厚生総合病院が、常勤医が復帰したことから、7月1日から産婦人科の診療、妊婦検診を再開することになった。23日からは、合併症がなく正常な分娩に限定して8月以降の予約の受け付けを始めた。

 常勤医1人が病気で休んだ後、もう1人の産科医師が5月に退職したため、信大病院などの医師2人が週2回、小諸厚生総合病院の婦人科の診療を担当。4~9月の分娩予定の約160件は、これまで佐久市の病院などに紹介してきた。

 今後は当面、月10~15件の出産を予定。医師の確保ができ次第、順次態勢を整えていくという。
【藤澤正和】

(毎日新聞、長野、2009年6月25日)

****** 信濃毎日新聞、2009年6月23日

小諸厚生総合病院 8月から条件付きで分娩再開

 4月以降、出産の受け入れを見合わせていた県厚生連小諸厚生総合病院(小諸市)は23日から、出産予定日が8月上旬以降で、合併症がなく出産リスクも低い妊婦に限り、分娩の予約を再開する。3月から病気療養していた産婦人科の常勤医1人が復帰するためで、7月1日からは妊婦健診など産婦人科の診療も再開する。

 同病院では3月以降、十分な数の医師を確保できなかったため、4~9月の出産予定者のうち150人余を佐久市立国保浅間総合病院などに紹介していた。4月末にはもう1人いた常勤医が退職し、5月からは信大病院(松本市)と県厚生連篠ノ井総合病院(長野市)の医師2人が非常勤で婦人科に限り診療をしてきた。

 分娩は復帰した医師が担当し、受け入れ件数は1カ月当たり10~15件から始める。今後の対応は医師確保の状況などで判断していく。リスクのあるケースは近隣の病院に紹介する。小諸厚生の中村みゆき助産師長は「病院として受け入れが可能か、状況や経過を把握する必要があるので、お産を希望する人は来院前に必ず電話をしてほしい」と話している。

(信濃毎日新聞、2009年6月23日)

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臨床研修6年目 競争激化、質も向上

2009年06月22日 | 医療全般

以前は医学部を卒業した新人医師のほとんどが直ちにどこかの大学の医局に入局しました。また、地域の基幹病院のほとんどが、どこかの大学の関連病院となってました。伝統的な大学医局制度においては、医学部教授は医局という大企業の社長で、関連病院は医局の支店にあたり、多数の支店社員の人事は教授や医局長が決定する仕組みです。各関連病院ごとに責任者(院長、理事長、市長、県知事など)は存在しますが、それらの責任者の意志とは無関係に、医局員の人事は医局で決められます。兎にも角にも、どこかの大学医局に所属しないことには、ちゃんとした研修が開始できませんでしたし、有力病院への就職もほとんど不可能でした。

ところが、2004年の新臨床研修制度導入などの厚生労働省の政策により、以前ならば大学の医局に入局した卒後医師の多くが、都市部の大病院などでの研修を希望した結果、特に地方大学医学部では医局に入局する医師の数が激減しました。そのため、大学病院自体の人手が不足し、関連病院に派遣される医師の数が激減して、大学医局による医師派遣に依存してきた地域医療の崩壊が全国各地で大問題となっています。

以前であれば、研修の質とは関係なく、黙っていても医局人事で研修医が自動的に回されて来ることが期待できました。しかし今は、新臨床研修制度の導入により、研修医自身の自由意思で研修病院を決められるようになって、ちゃんとした研修ができない病院にはなかなか研修の志願者が集まりません。先輩研修医の口コミで後輩研修医の集まり具合が決まります。以前と比べて、どこの病院も研修の質向上には力を入れるようになってきたと思います。現行の新臨床研修制度もメリットは十分あったと私は感じてます。

大学病院にとっても、関連病院にとっても、人手不足では何もできません。毎年新たに多くの若者達が志願して集まって来るような、魅力のある柔軟な組織であり続ける必要があります。初期研修や後期研修の質を向上させ、職場の環境や待遇を改善させて、多くの学生や研修医が集まって来るように、大学医学部と関連病院とが一致協力していく必要があると思います。

****** 朝日新聞、長野、2009年6月18日

臨床研修6年目 競争激化、質も向上

 大学医学部を卒業し、医師国家試験合格後に受ける臨床研修が必修化されて、6年目に入った。この医師臨床研修制度について、国は医師不足を加速させたなどとして、来年度から制度を大幅に変えることを決めた。しかし、医療関係者からは「新しい制度のメリットはあった」「見直しは時期尚早」との声も上がる。新制度で何がどう変わったのか。【長谷川美怜】

 県主導による初めての臨床研修病院の合同説明会が、5月中旬に長野市で開かれた。医師不足が続く中、少しでも多くの医学部生を獲得しようと、病院間だけでなく都道府県同士の競争が激しくなっているのが背景だ。研修内容だけでなく、地元の野菜を配ったり、スキーやカヌーなどのレジャーの充実度を宣伝したり、どの病院も必死だ。

 参加したのは、県内に28あるすべての臨床研修指定病院。臨床研修が必修化される前の03年度までは、研修は卒業した大学病院で受けるのが一般的だった。研修を実施する病院も県内では90年代まで数病院に限られていたが、新制度に伴って急増した。

 実際、必修化前までは信州大医学部卒業生の約7割が信大付属病院で研修を受けていたが、今では3割ほどにとどまる。ただ、採用実績が何年間もゼロの病院があるなど、一部の「勝ち組」を除いて多くの病院が学生獲得に苦労しているのが実態だ。

 説明会では、県内外から訪れた学生ら約70人が、各病院のブースをくまなく回っているようだった。群馬大6年の男子学生は「研修先はプログラムの内容で決める。現段階では大学病院に行きたい」と話した。信大6年の女子学生は「大学以外の病院で救急を重点的に学びたい」。母校の病院であっても、他の病院と同じ「選択肢の一つ」に過ぎないようだ。

 病院間による競争は、大学も含めて研修の質を上げた、と好意的に受け止める医療関係者は多い。

(以下略)

(朝日新聞、長野、2009年6月18日)

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静岡県・志太榛原地域の深刻な医師不足の状況

2009年06月21日 | 地域医療

****** 静岡新聞、2009年6月20日

知事選 託す一票 県政の課題 地域医療 医師偏在の調整緊要

 焼津市の男性(79)は3月下旬、自宅から静岡市内の病院に救急車で運ばれ、病院到着後、間もなく息を引き取った。急性心筋梗塞(こうそく)だった。東名高速道路を使った搬送時間は約1時間。以前に心筋梗塞を起こした時は、地元の焼津市立総合病院で診てもらえたが、今回は素通りした。長女(55)は「近くの病院に循環器の先生がいたら助かったかもしれない」と無念さをにじませた。

 焼津市立総合病院は、5人いた循環器科の医師が昨年春までに全員辞めた。今年5月、ようやく常勤医1人が着任したが、十分に患者を受け入れる状況にはない。

 循環器を含めた内科医は3年ほど前まで30人を超えていた。今は半数以下の15人。激務によってさらに退職者が出る悪循環。内科医の1人は「どこまで頑張れば展望が開けるのか」と暗い表情で語った。

 頼りになるはずの地域の基幹病院に医師がいない―。深刻な医師不足は焼津市に限った話ではない。県内各地の公立・公的病院で続いている。県内の人口10万人当たりの病院勤務医数は112・9人で全国43位(2007年10月)。県内の地域格差も大きいままだ。

 県は勤務医の研修費用や救急勤務医手当の助成など医師確保対策は打ってきた。本年度予算の対策費は前年度の3倍近い5億6000万円。特に医学生向け奨学金は採用枠を100人に拡充し、約150人の応募があった。

 ただ、県中部の病院幹部は「医療崩壊のスピードに再生の速度が追い付いていない。その間にどんどん病院自体の体力が落ちている」と指摘する。

 病院勤務医1人がもたらす年間診療収入は平均およそ1億円。医師の流出は患者離れを招き、病院経営を圧迫する。県内市町と一部事務組合が運営する公立22病院は、07年度決算で16病院が赤字だった。繰入金として市町が235億円を投入しながら、最終的な赤字額は総額70億円に上った。

 「地域や診療科ごとの医師偏在を解消する調整が必要」。有識者でつくる県医療対策協議会は2月、知事に提言した。病院によっては医師の流出が止まらず、産科や救急医療などで新たな空白域が生まれていた。

 限られた数の医師を有効活用するには、近隣の病院間で診療機能を分担したり、ネットワーク化を進めたりするしかない。「医師配置の見直しは、病院の再編や集約化にもつながる」。そう指摘する県中部の産科医は「関係病院の合意形成は一筋縄ではいかない」と説明する。急場をしのぐため総論では賛成だが、個別具体的には自分の病院に有利に誘導したい―。設置主体の市町や、医師を派遣する大学医局の思惑も絡み、各病院とも存亡を懸けた思いが交錯する。

 県は5月、志太榛原地域の4病院をそれぞれ管理する4市にネットワーク化の素案を提示したが、全市の合意にはこぎ着けなかった。ある病院の副院長は「難しい行司役は、やはり県にやってもらうしかない。病院単独でもがいていたら、そのうち圏域の病院が総倒れになってしまう」と危機感を募らせる。

 住民が等しく一定水準の医療サービスを享受できる仕組みを県はどう描くのか。地域医療の立て直しが迫られる中、県の強いリーダーシップが問われている。

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(静岡新聞、2009年6月20日)

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神奈川県の産婦人科常勤医15人増

2009年06月21日 | 地域周産期医療

最近は若い医師の産婦人科志望者が増加傾向にあるように思います。この傾向が今後も長く続いてくれるといいのですが...

****** 東京新聞、神奈川、2009年6月19日

産科医なお不足 常勤医15人増 多い若手 経験豊富な働き手必要

 県内で出産を取り扱う医療機関に勤務する常勤医師数が本年度、四百五十二人に達し、前年度から十五人増とやや上向きに転じたことが、県の産科医療調査で分かった。産科医不足の傾向に一矢を報いた形ともいえるが、医療現場の医師不足はまだ解消されたとはいえず、各自治体や医療機関は担い手確保の努力を引き続き迫られそうだ。 (中山高志)

 県保健福祉部によると、産科の常勤医師数は二〇〇七年に四百三十八人、〇八年に四百三十七人と、ここ数年横ばい傾向だった。本年度、増加した十五人のうち、十四人が女性だった。

 ただ、医療機関が必要と考える人員体制や、実際の勤務数などから計算すると、全体で常勤医師が計百四十一人、常勤助産師が二百二十六人不足するという。

 一方、助産所を含めた出産取り扱い施設の数は百六十二カ所で、前年度比二カ所減とほぼ横ばい。内訳は病院と診療所がそれぞれ六十五カ所、六十二カ所で前年度と同じ。助産所は三十五カ所で二カ所減少した。

 この調査結果は、医師確保策について話し合う「医療対策協議会」で報告された。出席者からは、「医師が増えたといっても若手が多く、すぐに現場の負担軽減につながるわけではない」など、産科医療の厳しい実態を訴える声が相次いだ。

 県保健福祉部の担当者は、「産科医療の魅力に目を向ける医師が増えたことが常勤医増につながったのではないか。今後も、産科医が勤務を継続できるような取り組みを進めたい」と話している。

(東京新聞、神奈川、2009年6月19日)

****** 毎日新聞、神奈川、2009年6月19日

産科医:141人不足、医療機関が認識--県調査

 県内で分娩(ぶんべん)を取り扱う医療機関で常勤医師が計141人不足していると、医療機関は認識していることが県の調査で分かった。今年度の常勤医師数は昨年度比15人増の452人だが、県保健福祉部の担当者は「現場に不足感が強い。行政も負担軽減を図り、医師確保の取り組みを進めたい」と話している。

 今年度に分娩を取り扱う施設数は▽病院65カ所▽診療所62カ所▽助産所35カ所。病院・診療所は昨年度と同数だが、助産所は2カ所減った。分娩の取扱件数は819件増の7万533件、施設別では病院で1653件増と予想され、分娩が病院に集中する傾向がある。【木村健二】

(毎日新聞、神奈川、2009年6月19日)

****** 産経新聞、神奈川、2009年6月16日

産科医が増加 県の分娩に関する調査

 神奈川県がまとめた「産科医療および分娩(ぶんべん)に関する調査結果」によると、平成21年度の県内の分娩取り扱い施設に勤務する常勤医師数は452人で、20年度に比べて15人増加した。分娩取り扱い施設数も病院が65、診療所が62で、20年度に比べて横ばい。いずれも調査を始めた18年度からおおむね減少傾向にあったが、転じた格好となった。

 県によると、常勤医師の増加分15人の内訳は男性1人、女性14人。また、分娩取り扱い施設は、助産所が20年度から2施設減って35施設だった。分娩取り扱い件数はこれまで7万件前後で推移しており、21年度は7万533件の見込み。

 ただ、医療機関が不足していると考える人員については、常勤医師が141人、常勤助産師が226人で、県内の周産期医療体制は依然として厳しいことがうかがえる。

(産経新聞、神奈川、2009年6月16日)

****** 読売新聞、神奈川、2009年6月16日

常勤産科医141人不足 県調査

「当直減らしたい」

 県内の常勤産科医は141人足りないのに、常勤より負担の少ない非常勤産科医は必要な人数より56人多いと、医療機関側が考えていることが15日、県の調査でわかった。常勤医がさらに必要な理由として「当直回数を減らしたい」とする回答が多く、医療機関は、常勤医の激務を緩和したいと考えていることがうかがえる。県は、産科医の確保策を講じているが、目立った効果は上がっておらず、常勤医不足の解消には時間がかかりそうだ。

 調査は4月、県内の医療機関にアンケートで行った。お産を扱う医療機関127施設のうち、現状の医師数や必要な医師数については121施設が回答した。それによると、121施設の常勤産科医421人に対し、本来は562人が必要と考えていることがわかった。一方、非常勤の産科医は、必要な387人を上回る443人が勤務していた。

 常勤医がさらに必要な理由について、半数近くが「医師1人当たりの当直回数を現状より減らすため」と回答した。次いで「医師1人当たりのお産の扱い数を現状より減らすため」が多かった。

 県は産科医確保のため、出産や育児で離職した女性産科医の職場復帰を図ろうと、県立病院で再教育訓練する事業を2007年に始めたが、申し込みはない。復職を考える産科医に勤務地、当直の可否などを登録してもらい、勤務条件が合致する医療機関を紹介する「医師バンク」も昨年3月のスタート以降、就業を成立させた実績はない。

 県は「今後、現在勤務している医師らが辞めないような工夫を検討していきたい」としている。

(読売新聞、神奈川、2009年6月16日)

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新型インフルエンザ 全医療機関で診療 厚生労働省が運用指針改定

2009年06月20日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザが秋以降に急速に感染拡大することは避けられないとの判断から、厚生労働省は新型インフルエンザ対策の運用指針を大幅に改定しました。今後は、対策の重点が重症者に対する医療体制の維持にシフトされます。この厚生労働省の発表を受けて、当院でも緊急の感染症対策委員会が召集され、強制的に入院措置がとられていた新型インフルエンザの患者さんは直ちに退院となり、発熱外来も廃止されました。また、軽症者に対しては原則としてPCR検査を実施しないことになったので、季節性インフルエンザと新型インフルエンザとを区別することができなくなり、今後は両者を同様に取り扱っていくことになります。

秋以降の新型インフルエンザの第2派で、感染者数が大幅に増えることが専門家の間でも確実視されています。それに加えて、秋以降には例年通り、通常の季節性インフルエンザの感染者数も急増します。新型インフルエンザと季節性インフルエンザとを症状から区別することはできませんから、軽症者に関しては同じ扱いとせざるを得ません。毎年の季節性インフルエンザでも多いときには1万人以上の死亡者数となっていますから、新型インフルエンザの感染者が急増する秋以降には例年以上の死亡者数となる可能性も否定できません。従って、今後の新型インフルエンザ対策としては、重症化した患者さんにいかに適切に対応していくのか?が最も重要となります。運用指針は、今後も状況に合わせて随時見直していく必要があります。

****** 読売新聞、2009年6月19日

新型インフル、全医療機関で診療

…厚労省が運用指針改定

 新型インフルエンザの今後の流行に備え、厚生労働省は19日、医療や検疫、休校などに関する運用指針を改定した。

 舛添厚労相が閣議後の記者会見で発表した。

 患者がほとんどいない地域と、増加している地域との二つに分けていた対策を一本化し、原則として、すべての医療機関で患者を診療するとしている。

 指針では、感染の拡大状況から「患者をゼロにするのは困難」と指摘。主な対策として〈1〉患者の自宅療養〈2〉患者発生時の休校〈3〉集団感染を重視した監視・検疫体制――などを掲げた。

 現在多くの地域で入院させている軽症患者は原則、自宅療養に変更。持病がある患者は悪化しやすいため、軽症でも入院が必要かどうか医師が判断する。重症化しやすい妊婦や幼児、高齢者も同様の対応とした。

 季節性インフルエンザと同様、原則として全医療機関で診療する。ただし、発熱者の待機場所や診療時間を、他の受診者と分けるほか、都道府県は、透析病院や産院など発熱者を診療しない病院を指定できることとした。

 患者全数を把握していた従来の厳重な監視体制は廃止。その代わり、流行の端緒を早期につかむため、学校などの集団感染に着目した新たな監視体制を敷く。

 旅行者に対する検疫体制は、症状がある場合も隔離せず帰宅させ、同一グループ内で複数の感染があった場合のみ検査するなど大幅に緩和する。

(読売新聞、2009年6月19日)

****** 読売新聞、長野、2009年6月20日

軽症患者は自宅療養

新型インフル感染確認、9人に

 厚生労働省が、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)対応の運用指針を大幅に変更したことを受け、県は19日、軽症患者は自宅療養とすることなどを決めた。一方、18日深夜から19日にかけて、新たに5人の感染が確認され、県内での患者確認は計9人となった。

 厚労省の改定指針では、新型インフルエンザの患者も全医療機関で診療することになった。しかし、医療機関への周知に時間がかかるため、県は当面、電話での相談受け付けと、医療機関の紹介を継続する。

 新型インフルエンザの遺伝子検査については、〈1〉集団感染が疑われる〈2〉重篤な症状の患者――以外の場合は、原則として行わないことにした。

 一方、長野市保健所は、すでに感染が確認された女性と、米ハワイへの旅行で同行していた同市内の25歳の女性2人の感染を確認。県は、下高井郡内の実家に帰省していた東京都内に住む男子大学生(18)と、一緒に帰ってきた千曲市の男性(19)の感染を確認。13日にハワイから帰国した飯田市の女性(26)の感染も確認した。

 また、飯田市は19日、休園・休校措置について、予定通り、保育園と幼稚園は20日まで、三穂小は21日までで解除すると発表した。

(読売新聞、長野、2009年6月20日)

****** 産経新聞、2009年6月19日

新型インフル「季節性」並みに対応策緩和 

厚労省が新指針

 新型インフルエンザ対策の見直しを進めていた厚生労働省は19日、医療体制や空港の検疫体制を大幅に弾力化させ、通常の季節性対策に近づける新たな運用指針を発表した。ウイルスが「弱毒性」であることや、秋冬での感染の拡大が避けられないとの判断から、病床の確保など重症患者の救命を優先させる。同日から段階的に切り替えていく。

 運用指針は秋から冬にかけて、患者の大幅な増加が起こりうるとの立場から、患者数の急激な増加をできるだけ抑制し、感染の拡大時期を遅らせることを基本方針とした。急激な患者数の増加を抑えることで、医療機関の負担を軽減させ、重症者に対する医療体制の維持を図る。

 具体的には、患者発生が少ない「少数地域」と患者の急増が見られる「急増地域」に分けて実施している現在の対策区分を廃止。すべての地域で急増地域に近い対応がとられることになる。

 医療体制では、感染症指定医療機関での入院措置を原則としてやめ、自宅療養とする。入院が必要なケースでは、一般医療機関でも入院を可能とした。

 診察も感染者と一般患者を分ける発熱外来に限定せず、すべての医療機関で可能とした。その際、各医療機関は発熱患者と一般患者の待合室を分けるなどの対策をとる。感染者の把握も全数にこだわらず、集団感染など大規模な感染が発生している地域を優先して調べる。

 空港の検疫所での遺伝子診断「PCR」も原則中止。濃厚接触者の把握のため、空港の検疫で実施してきた「健康状態質問票」の配布もやめる。

 厚労省は今回の運用指針について、「秋の大流行も見据えた中長期的な指針」と説明。ただし、ウイルスの病原性が増した場合には、再度運用指針を見直すとしている。

 一方、新型インフルエンザのワクチンについても、7月中旬から製造を開始すると発表。約2500万人分が製造可能となる見通し。接種の優先順位は今後の検討課題だが、10月にも供給が可能となる。

(産経新聞、2009年6月19日)

****** 毎日新聞、2009年6月19日

新型インフル: 厚労相が新指針 

全医療機関で診察

 舛添要一厚生労働相は19日、新型インフルエンザの秋以降の流行「第2波」に備えた対策の新たな運用指針を公表した。今後、軽症者は自宅療養とし、原則的に全医療機関が新型患者を診察するなど、態勢は大きく切り替わる。また、季節性インフルエンザ用のワクチン製造を7月中旬で中断し、新型用の製造を始める方針を明らかにした。

 舛添厚労相は、現状を「国内で患者の大幅な増加が起こりうる秋冬に向けての準備期間」と説明。国内の感染の広がりの見通しについては「予想がつかない。今後は原則として遺伝子検査はやらないので、正確に1人まで数えるのは不可能」と述べ、「警戒を怠ることなく、正しい情報に基づいて冷静な対応をお願いしたい」と呼び掛けた。

 一方、厚労省によると、季節性用のワクチンは7月中旬の製造中断までに、国内メーカー4社で昨年の約8割にあたる約4000万人分を確保できる見通し。新型用は年内いっぱい作り続ければ約2500万人分を確保でき、10月から順次、接種が可能になるという。接種対象者は、厚労省が専門家の意見を聴いたうえで考え方を示す。【清水健二、奥山智己】

 ◇運用指針の要旨

 厚生労働省が19日発表した新型インフルエンザ対策の運用指針の要旨は次の通り。

 ■地域における対応

(1)患者と濃厚接触者への対応

 患者は原則として自宅で療養する。基礎疾患がある患者は軽症でも抗インフルエンザ薬を投与し入院を考慮。濃厚接触者には外出自粛などを求め、発熱などがあった場合は保健所への連絡を求める。基礎疾患がある濃厚接触者で感染が強く疑われる場合は、医師の判断で抗インフルエンザ薬を予防投与する。

(2)医療体制

 発熱外来だけでなく原則として全医療機関で患者を診察する。発熱患者と他の患者の待機場所や診療時間を分けるなど注意を払う。重症者の入院は、感染症指定医療機関以外でも受け入れる。都道府県は地域の実情に応じ病床を確保する。

(3)学校・保育施設など

 患者が発生した場合、都道府県などは必要に応じ臨時休業を要請。感染拡大防止に必要と判断した場合は、患者が発生していない施設を含め広域での臨時休業を要請できる。

 ■サーベイランスの着実な実施

(1)感染拡大の早期探知

 保健所は全患者(疑い例含む)を把握するのではなく、大規模な流行となる可能性のある学校などの集団について重点的に把握。地方衛生研究所は、これらの疑い患者の一部の検体の検査を実施し、新型と確定すれば医師が保健所に届け出る。

(2)重症化やウイルスの変化の監視

 入院した重症患者の数を把握。病原体定点医療機関から患者の検体の提出を受け、地方衛生研究所と国立感染症研究所で病原性や薬剤耐性などウイルスの変化を監視する。結果は対応に反映させる。

 ■検疫

 全入国者に健康カード配布などで注意を呼びかけ、発症した場合の医療機関受診を求める。検疫で判明した有症者は原則、遺伝子検査をせず、マスクを着用し可能な限り公共交通機関を使わず帰宅(自宅療養)させる。

(毎日新聞、2009年6月19日)

コメント

全地域で原則、自宅療養へ 重症化防止にシフト 厚労省、国内対応見直し 新型インフルエンザ

2009年06月18日 | 新型インフルエンザ

現時点では、日本国内のほとんどの地域において、新型インフルエンザに感染していると判明した場合、軽症者でも強制的に入院措置がとられています。しかし、この厚生労働省の方針に対して、専門家の間でその意義を疑問視する意見が当初より多くあがっていて、近日中に方針の見直し案が正式決定されるようです。見直し案では「軽症者は原則として自宅療養」となり、重症化防止に対策の重点がシフトされます。また、発熱外来のある医療機関のみで受診が可能とする現在の対応を見直し、「原則としてすべての一般医療機関で診療を行う」ことになるようです。

****** 共同通信、2009年6月17日

全地域で原則、自宅療養へ 重症化防止にシフト 

厚労省、国内対応見直し 新型インフルエンザ

 新型インフルエンザをめぐる国内対応の見直し案づくりを進めている厚生労働省は16日、軽症の感染者については全地域で原則、自宅療養とし、入院措置をとらない方針を固めた。感染の広がり度合いに応じた現行の地域分類を廃止し、重症患者やぜんそくなど重症化につながる疾患を持つ人への感染防止対策にシフトする。専門家の意見を聞いた上で、週内にも正式決定する。

 現行の国内対応は、地域を(1)感染者発生が少数(2)急速に患者数が増加-に2分類。(2)の地域では軽症者のみ自宅療養としているが、(1)の地域では症状にかかわらず入院措置をとるよう都道府県に求めている。

 見直し案ではこうした地域分類をやめるとともに、軽症患者は原則、自宅療養に切り替える。入院措置はとらず、感染拡大の恐れがある場合に入院させることが可能とするほか、重症化につながる基礎疾患のある患者は初期症状が軽症でも入院を考慮するよう促すとしている。

 また発熱症状がある人の治療について、現行は(1)の地域では発熱外来を設置する医療機関に限定しているが、見直し案では「原則としてすべての一般医療機関で診療を行う」とし、感染者の待合場所や診察時間を一般の患者と分けるよう促す。

 このほか、想定される重症患者の発生数に応じた病床を確保するよう都道府県に求めることも検討しているが、正確な予測が可能かどうかが課題となりそうだ。

 入院措置は感染症法に基づくもので、同法は新型インフルエンザ感染者について「都道府県知事は、まん延を防止するため必要があると認めるときは、患者に入院を勧告することができ、勧告に従わない場合は入院させることができる」と規定している。

(共同通信、2009年6月17日)

****** TBSニュース、2009年6月17日

新型インフル、軽症者は原則自宅療養

 新型インフルエンザの国内対応の見直しを検討している厚生労働省は、軽症の感染者については全ての地域で原則自宅療養とし、入院措置は取らない方針を固めました。感染者が少ない地域で新型インフルエンザの患者が発生した場合、現在、厚労省は症状に関わらず入院措置をとるよう都道府県に求めています。しかし、新型インフルエンザが季節性のインフルエンザと危険度が変わらないことから、厚労省は感染者について重症化の恐れがある人以外は「原則自宅療養とする」など、国内の対応を見直す方針を固めました。また、発熱症状のある人の治療についても「一般の医療機関で診察を行う」とし、発熱外来のある医療機関のみで受診が可能とする現在の対応を見直す方針です。厚労省専門家の意見を聞いた上で、今週中にも見直し案を正式に決定することにしています。

(TBSニュース、2009年6月17日)

****** 南信州新聞、2009年6月16日

飯田市で新型インフル2人が感染

 県は13日に飯田市内の事務職の女性(27)、15日に同市内の会社員男性(42)それぞれで、新型インフルエンザの感染を確認したと発表した。男性は13日午後に同市内で市職員労働組合などが開いた保育関連イベントの「2009保育フェア」に、14日朝に同市立三穂小学校の地域学校行事に参加していたため、同市は市内の公立、私立のすべての保育所、幼稚園、認可外保育施設を16日から20日まで、三穂小を16日から21日まで臨時休業することを決めた。

 感染者2人の接触は確認されておらず、別ルートの感染と見られる。いずれも感染症指定医療機関の飯田市立病院に入院しているが、16日正午現在、容態は安定しているという。

 県内での発生を受け、県庁と飯田、伊那の両保健福祉事務所は24時間体制で電話相談窓口を開設。県は県民に対し、手洗いやうがいの徹底、混み合った場所でのマスクの着用など「個人予防策」の実施を求めている。

 飯田保健福祉事務所には16日、正午現在で約300件の電話相談があった。半数ほどが保育フェス参加者からだったというが「深刻と思われる事例はない」(関係者)としている。

 15日夕に感染が確認された男性は今月9-12日に東京都と神奈川県内に滞在し、12日中に飯田市の自宅に帰宅。14日夕に38・4度の発熱があり、市内の医療機関で簡易検査を受けた結果、A型ウイルスの陽性が確認された。同日夜に市立病院を受診。再度の簡易検査は陰性だったが、県環境保全研究所の遺伝子検査で、15日午後4時15分に新型インフルの感染が分かった。

 男性は市立病院に入院しており、同日夜現在の体温は36・8度。せきの症状はあるが、容態は安定しているという。家族4人はタミフルの予防内服を行っており、発熱などの症状は出ていない。

 一方、県内初の感染が確認された女性は1日から9日までハワイに滞在し、10日午後7時ごろに飯田市内の自宅に帰宅。11日夜に39・2度の発熱があり、13日に飯田保健福祉事務所の相談窓口に電話で連絡し、診療所を経て飯田市立病院を受診した。簡易検査でA型陽性だったため、県環境保全研究所で遺伝子検査を実施。13日午後10時半に新型インフルの感染が確認された。入院後の容態は安定しており、15日午前までに熱は36・6度に下がっている。

 女性の発症24時間前から入院までの濃厚接触者は、家族や親せき計6人と職場の同僚20人。飯田保健福祉事務所の保健師らが健康観察を続けているが、発熱などの症状は出ていない。家族と親せきはタミフルの予防内服をしたという。同所は外出の自粛を求めている。

 県内の感染確認により、県は当面の間、県庁と飯田、伊那の両保健福祉事務所の電話相談を24時間体制で行う。

(南信州新聞、2009年6月16日)

****** 毎日新聞、長野、2009年6月16日

新型インフルエンザ:県内感染を初確認 

2人目も飯田在住

 県は14日、米国ハワイから帰国した飯田市在住の事務員の女性(27)が新型インフルエンザに感染したと発表した。県内の感染確認は初めて。熱や頭痛などの症状があり、同市立病院に入院。容体は安定し、家族や同僚に症状は出ていないという。女性は1-9日にハワイへ旅行していた。県は濃厚接触者26人の健康観察を行っている。さらに同じ飯田市で15日、県内2人目の感染者も確認された。同市内の会社員の男性(42)で、同病院に入院し、容体は安定している。女性と明らかな接触があったことは確認されていないという。【竹内良和、福田智沙、小田中大】

 県健康づくり支援課によると、女性は9日にハワイから成田空港に到着し、他県を経由してバスと電車で10日に自宅に戻った。11日夜に39・2度の発熱があり、13日に飯田保健福祉事務所に電話で相談。県環境保全研究所の遺伝子検査で感染が確認された。女性は11、12両日に市内の職場へマイカーで出勤したが、窓口業務ではないという。感染がハワイか帰国後かは不明。15日朝には熱は36・6度まで下がったという。

 15日時点で、濃厚接触者に該当する女性の家族・親族と職場の同僚の計26人には予防的にタミフルが処方され、現時点で感染の疑いはないという。県は26人に外出自粛を要請、健康観察も行う。同課の小林良清課長(医師)は「患者への偏見や住所の割り出しは控えてほしい」と強調した。

 一方、同課によると、2人目の感染者の男性は9-12日に東京都と神奈川県に滞在。14日に38・4度の発熱があり、市内の診療所を受診した。簡易検査で陽性とされたため、診察した医師が飯田保健福祉事務所に相談。同日夜の再検査でいったん陰性とされたが、15日に同研究所の遺伝子検査で感染が確認された。

 熱はその後、36・8度まで下がった。

 県は14日に村井仁知事らが緊急の対策幹事会議を開催し、学校、保育施設の臨時休業やイベントの自粛などはしないことを報告。電話相談を拡充し、県健康づくり支援課と飯田保健福祉事務所は相談を24時間受け付ける。

 また日本より罹患(りかん)率が高い38カ国・地域へ渡航歴があり症状が出た人から相談があれば、発熱外来を紹介する。

市長「冷静な対応を」 福祉施設・小中学校、

予防措置の徹底確認--飯田市

 27歳の女性ら2人が新型インフルエンザに感染したことが確認された飯田市では、県の発表前の13日夜から、県下伊那地方事務所や市などの関係機関で担当職員が招集され、対応に追われた。県飯田保健福祉事務所では、10人の保健師が濃厚接触者の健康状態を調べるなど、感染拡大の恐れについても確認作業を進めた。

 同市は14日朝、対策会議を開催。牧野光朗市長は「市民の皆さんには冷静な対応をお願いしたい」と述べた。市内の福祉施設や小中学校などでのマスクの着用といった予防措置の徹底を確認。ただ女性の親族や勤め先などで接触した人は判明しており、感染拡大の恐れは少ないとして保育園、小中学校の休校措置は取らず、市内で行われるイベントなども予定通りとした。【仲村隆】

(毎日新聞、長野、2009年6月16日)

****** 信濃毎日新聞、2009年6月16日

飯田市が緊急保育実施へ 新型インフルで休園・休校

 県内2人目となる新型インフルエンザ感染者が飯田市で確認されたことを受けて16日、感染拡大防止のため同市内の全保育園、幼稚園計43園と、市立三穂小学校での臨時休園・休校が始まった。市によると、対象となる子どもの数は約3700人。同市に隣接する下伊那郡高森町、喬木村もこの日、全保育園(高森町5園、喬木村3園)の休園を始めた。両町村の園児計約700人が対象になる。

 休園・休校は、感染が確認された同市の会社員男性(42)が、13日に市内の飯田文化会館に約1160人が集まった「2009保育フェア」と、14日朝に三穂小で行われた資源回収に参加していたことを受けた措置。県が市などに要請していた。高森町、喬木村は、保育士らが同フェアに参加していたため、自主的に対応を決めた。

 休園・休校の時期は、飯田市内の全保育園、幼稚園と喬木村の保育園が20日まで、三穂小が21日まで。高森町の保育園は17日までを予定している。同市の私立保育園、幼稚園のうち、同フェアに参加した園児、保育士らが1人もいないと今後確認された園については、休園の解除も検討していく。

 また、両親とも医療従事者や教員のケースなど「保護者がどうしても仕事を休めない場合」に対応するため、同市は17日から、緊急保育を松尾東保育園で始める。対象はほかに、母子、父子家庭で仕事を休むと雇用などに著しい不利益がある場合などを想定。前日午後5時までに、現在在籍する園に申し込む。

 牧野光朗市長は16日午前に記者会見し、市民に「重ねて冷静な対応をお願いしたい。新型インフルエンザにおびえることなく、侮らないで冷静な対応を」と呼び掛けた。

 県によると、会社員男性の感染が判明した15日夕以降、県飯田保健福祉事務所(保健所)には、16日午前10時半までに約300件の電話相談が寄せられた。このうち半分が、男性が参加していた「保育フェア」に足を運んだ保護者からの相談という。男性の家族4人には予防のため15日から、治療薬タミフルを投与している。

(信濃毎日新聞、2009年6月16日)

****** 信濃毎日新聞、2009年6月16日

「仕事休めない」一斉休園に共働き家庭困惑

 「仕事を休めない」「子どもの預け先は」-。県内2人目の新型インフルエンザ感染者が確認され、16日から保育園、幼稚園などが一斉臨時休園になった飯田市。目立った混乱は見られなかったものの、共働きの家庭などからは、今後の生活への影響を不安がる声も聞かれた。

 各園は市の休園措置が決まった15日深夜から、それぞれ家庭に電話やメールで連絡。ただ、上郷西保育園には16日午前8時10分ころ、30代の母親が女児を連れて登園。園長から休園を告げられると、「すぐに職場に連絡しないと」と困惑した表情を浮かべた。園児数200人以上の松尾保育園にも、メールに気付かなかった1組が登園した。

 同市白山町の自営業女性(33)は、感染者が参加した13日の「2009保育フェア」に園児の長男(3)を連れていった。事前に用意しておいたマスクを16日から着用し「実家が近くにないので仕事は夫にお願いし、私は息子の相手」。一方、同所の自営業女性(60)は、息子から孫3人を預かった。孫の女児(6)は「おばあちゃんに会えてうれしいけれど、保育園の友達に会えないのが残念」。

 同市正永町の共働きの会社員男性(39)は、夫婦で対応を話し合い、園児の長女(5)を2日間ほど実家に預け、後は夫婦で分担して育児に当たることにした。それでも「休むのなら妻に休んでもらう形になるだろう。会社にも迷惑を掛けるし、家計にも響く」と悩みを漏らした。

 飯田中央保育園の塩沢鎮子園長(55)は「『首になるので仕事を休めない』と言う母親もいる」と申し訳なさそうに話した。

 唯一の臨時休校措置となった同市三穂小学校は、保護者らの問い合わせもなく、落ち着いているという。

(信濃毎日新聞、2009年6月16日)

コメント

長野県内初の新型インフルエンザ感染の確認

2009年06月14日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザは、当初のメキシコ、米国、カナダからヨーロッパや日本、さらにオーストラリアなど冬季にさしかかった南半球を含む多数の国に拡大し、WHOは新型インフルエンザの警戒度を世界的大流行(パンデミック)を示す「フェーズ6」へ引き上げました。日本での感染が初めて確認されてからすでに1カ月が経過して、全国各地で感染確認の報道が続いていますから、身近なところで感染が確認されるようになるのも時間の問題だろうと考えてました。人類と新型インフルエンザとの戦いは今後も延々と続きます。多くの専門家が、近い将来、日本でも新型インフルエンザの大規模な感染拡大が必ず起きることを予想しています。健康被害を最小限にくい止めるために、最新情報の入手に努め、事態の変化に冷静に対応していく必要があると思います。

新型インフルエンザ、WHO フェーズ6に引き上げを宣言

****** 信濃毎日新聞、2009年6月14日

県内初の新型インフル確認 飯田の27歳女性

 県は13日深夜、飯田市の日本人事務職女性(27)が新型インフルエンザに感染したと確認した。県環境保全研究所(長野市)の詳細(PCR)検査で感染が判明した。県内での感染確認は初めて。

 県によると、女性は今月1~9日、旅行で米国ハワイに滞在。10日夜に飯田市の自宅に帰った後、11日午後7時ごろに39・2度の発熱があったため、13日、県飯田保健福祉事務所(保健所)に電話相談し、同市内の診療所を受診。簡易検査でA型陽性反応が出たため、感染症指定医療機関の飯田市立病院の発熱外来で診察を受け、ここでも簡易検査でA型陽性反応が出た。検体は県環境保全研究所に送られ、同日午後10時半、感染を確認した。

 女性は同病院に入院。13日夜現在、体温37・4度で、頭痛、鼻汁の症状があるが、容体は安定しているという。

 女性は成田空港から電車、バスを使って帰宅した。11、12日には飯田市内の職場に出勤したという。旅行には女性の家族1人が同行したが症状は出ておらず、職場の同僚などにも今のところ症状が出ている人はいないという。

 県は14日午前0時から記者会見。小林良清・健康づくり支援課長は「患者が家族や職場の人以外に感染を広げる可能性は少なく、県民に直ちに感染が広がることは想定しにくい」とし、現時点で行事や外出の自粛要請、学校の臨時休校などの対応は検討していないと説明した。

 県は14日朝、新型インフルエンザ対策本部幹事会議を開き、今後の対応を協議する。県庁や県内10カ所の保健福祉事務所に設けた電話相談の受付時間を拡大する方向で検討している。飯田市も同日朝、対策本部会議を開く。

 国内の新型インフルエンザの感染者は13日、ほかに千葉県、東京都、横浜市、名古屋市、大阪府、京都府、福岡県、福岡市、鹿児島市で新たに確認され、計594人になった。

新型インフル 飯田市は慌ただしく情報収集

 「ただちに感染が広がる事態は想定しにくい」。13日深夜に県内で初めて新型インフルエンザ感染者が確認され、14日午前0時から県庁で記者会見した県幹部は、県民に冷静な対応を呼び掛けた。感染者の女性(27)が生活する飯田市では、県飯田保健福祉事務所(保健所)や市役所本庁に職員らが次々と集まり、情報収集や電話連絡、打ち合わせなどに慌ただしく動いた。

 県庁では、桑島昭文・衛生部長と小林良清・健康づくり支援課長が会見し、感染した女性の症状などを淡々と説明。急速な感染拡大は想定しにくいとし、手洗いの徹底や人込みを避けるといった個人での予防策を引き続き行うよう県民に呼び掛けた。

 小林課長は「感染の可能性がある人には、われわれが連絡し調査する。今回の患者を特別視したり、どこの人かを探ったりすることは控えてほしい」とも念押しした。

 飯田市追手町の県飯田合同庁舎は13日夜、1階の飯田保健所と3階の下伊那地方事務所に明かりがともり、それぞれ佐々木隆一郎所長、岩崎弘所長が出て、職員が県庁や市役所などと電話連絡に追われた。日付が変わって県庁で発表があると、職員もやや落ち着いた表情に。感染者の行動や接触者の詳しい調査を始めているといい、対応を続けた。

 同市大久保町の市役所本庁。市長公室などがある2階に幹部職員らが集まり、上村地区などでの懇談会を終えた牧野光朗市長も13日午後10時ごろ、市長公室へ。県から感染確認の連絡を受けて協議を重ね、14日朝から対策本部会議を開くことを決めた。

 市危機管理・交通安全対策室は「現段階では県からの情報や指示に基づいて、会議で具体的対応を決めたい」。職員の間では「長丁場の対応か」などと短い言葉が交わされていた。

(信濃毎日新聞、2009年6月14日)

****** 信濃毎日新聞、2009年6月15日

新型インフル「感染広がる状況にない」と県対策本部

 米国ハワイから帰国した飯田市の日本人女性(27)が13日に県内で初めて新型インフルエンザ感染者と確認されたことについて、県は15日、女性と「濃厚に接触した」と確認したのは同日午前現在で家族と親せきの計6人で、いずれもインフルエンザのような症状は出ていないと発表した。14日には、県庁で県新型インフルエンザ対策本部の幹事会議を開催。「現時点では感染が広がるような状況にない」として、地域に対し、学校の休校や外出、集会などの自粛要請は行わないことを確認した。

 県健康づくり支援課によると、感染症指定医療機関の飯田市立病院に入院している女性は13日から治療薬タミフルを服用。15日午前8時半現在で熱は36・6度に下がり、頭痛やのどの痛みはあるが症状は落ち着いているという。厚労省の通知に基づき、女性は発症から7日後の18日まで入院。この間にウイルス検査を2回行い、いずれも結果が陰性なら退院できるという。

 女性と濃厚に接触したと確認した6人には予防のためタミフルを投与。県飯田保健福祉事務所(保健所)は女性の同僚約20人に症状の有無などの聞き取り調査を行い、一部にはタミフルも処方しているが、同課によるといずれもインフルエンザのような症状は出ていないという。

 14日の幹事会議で村井知事は「今回の新型インフルエンザは毒性がそれほど高くないことが分かっている。不要な社会的混乱を避け、正確な情報に基づく的を射た対応が大切だ」と指示した。

 一方、飯田市の幹部職員らでつくる市新型インフルエンザ対策本部は14日、市役所で本部員会議を開いた。患者と濃厚に接触した人が限られ、県が「地域の中で感染が拡大する状況にはない」としていることから、イベントや行事は予定通り実施すると確認。保育園、幼稚園、小中学校も休校などの措置は取らず、15日も平常通りだった。

 県は当面の間、県庁と県飯田保健所の電話相談を24時間態勢に拡大。ほかの9カ所の県保健所と長野市保健所は従来通りの対応とし、県保健所は午前8時半~午後5時15分、長野市保健所は午前8時半~午後7時に電話相談を受け付ける。同課によると14日(15日午前8時半までの集計)は、前日の3倍の221件の相談が寄せられた。

飯田市民は冷静な受け止め マスク姿まばら

 県内初の新型インフルエンザ感染者が確認されて初の平日となった15日、飯田市役所では職員にマスクを着用する姿は見られず、落ち着いた様子だった。14日には一時、市内の店でマスクの売れ行きが普段より増えたが、休日の大型店などでもマスク姿はまばらで、冷静な受け止めが目立った。

 市内のドラッグストアでは14日、店頭に並べた7枚入りマスク10箱とアルコール消毒液5本ほどが午前中に売り切れた。ただ、その後は問い合わせも夕方までに数件にとどまった。別のドラッグストアは、チェーン本部の指示で同日からマスク着用で接客。売れ行きも前日までより増えたが、「(国内発生が確認された)5月に比べると落ち着いている」(店長)という。

 市内の大型店を同日訪れた同市上郷飯沼の自営業女性(40)は、国内感染が広がる中、小学1年生の娘に手洗いなどを徹底させているというが、「学校で流行すればマスクも考えるが、過剰に反応するつもりもない」。同市丸山小学校PTAの資源回収でも、保護者らはいつもと変わらぬ様子で作業に汗を流した。

 一方、首都圏などと結ぶ高速バスを運行する信南交通(飯田市)は14日の社内会議で、マスク着用はこれまで通り運転手らの判断に任せることを確認した。

(信濃毎日新聞、2009年6月15日)

****** 信濃毎日新聞・社説、2009年6月14日

インフル1カ月 秋冬への備えを急げ

 人が地球規模で移動する現代は、ウイルスもたやすく国境を越える。新型の豚インフルエンザの発生が認定されてから、わずか1カ月半で、感染者は2万7千人を突破した。世界保健機関(WHO)は、世界的大流行(パンデミック)を宣言している。

 日本で感染が確認されてから、まもなくひと月になる。感染は20都道府県以上、570人超に広がっている。集団感染も相次ぎ、終息の気配は見えない。

 新型ウイルスの病原性はいまのところ高くない。感染者の多くが軽症で回復している。当初患者が集中した大阪と兵庫も、落ち着きを取り戻した。

<貴重なデータ生かして>

 世界は強毒性鳥インフルエンザに備えてきた。政府の対策も強毒性の想定だった。実態に即して、柔軟に修正していきたい。

 冬を迎えた南半球で感染が急拡大していることに、注意が要る。北半球も、いまの流行がおさまっても、今秋以降に第2波がやってくるだろう。

 過去の大流行では、第2波、第3波で深刻な被害が出た。秋冬を見越した備えが肝要になる。

 ウイルスの分析や臨床データの集積が進みつつある。情報を各国で共有して、対策に生かしたい。

 主な症状は、38度以上の高熱とせき、のどの痛み、頭痛やだるさなど。通常の季節性インフルエンザとよく似ている。

 違いもある。患者は高齢者よりも10代などの若い世代に多い。健康な若者でも重症になるケースがある。基礎疾患のある人や妊娠中の女性もリスクが高い。

 潜伏期間は7日間程度。ポイントは、症状が出る前から感染性を持つことだ。本人も周囲も気づかないうちに感染が広がりやすい。

<重症者を確実に救う>

 こんな予想が立つ。秋以降、新型が季節性に取って代わるのか、あるいは、新型と季節性が同時に流行するか。いずれにしても、インフルエンザの患者が多数、発生するだろう。

 政府の計画では、新型に感染した可能性のある人は、感染症指定医療機関の「発熱外来」を受診する。だが、患者が急増すれば発熱外来はパンクする。兵庫と大阪で証明済みだ。

 地域の医療態勢を柔軟に組み直したい。軽症の患者は、季節性インフルエンザと同様に一般の医療機関が診るのが現実的だ。同時に、重症者に対応できる入院設備の整った治療拠点を確保しておく。つまりは、通常のインフルエンザ対策の拡充である。

 すでに仙台市が取り組んでいる。内科、小児科を中心に300を超える医療機関が、軽症者を診療する準備を進めている。

 開業医も含めて、医師らが二次感染した場合の手厚い補償が欠かせない。医療機関と自治体の連携の強化、夜間診療などの協力態勢も求められる。

 自治体は危機管理能力を磨いておきたい。流行が始まると、臨時休校、保育や介護サービスの維持、高齢者世帯の支援など、市民生活に直結する判断を迫られる。事前にできるだけシミュレーションをしておきたい。

 政府は医療態勢の充実に、いっそう力を注いでもらいたい。

 若年層に感染者が多く出る可能性がある。医師不足が深刻な小児医療への支援が必要だ。ワクチンの開発と備蓄も急がれる。

 気がかりなのは、一部に感染者を過剰に避けたり、非難、中傷する風潮があることだ。

 感染症は、だれもがかかる可能性がある。感染しても社会から排除されることなく、安心して最善の治療を受けられる環境が保障されること。これが対策の基本であることを確認しておきたい。

<「試行錯誤」も糧に>

 99年に施行された感染症予防法は、前文に過去のハンセン病やエイズの問題を挙げ、「感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かす」とある。感染症の流行を防ぐ措置は「必要な最小限度のものでなければならない」と、条文に定めている。

 新型インフルエンザ対策も、常にこの規定に照らして検証されるべきだ。行政は過剰な規制をしていないか。いたずらに不安をあおる面はないだろうか。

 情報提供のあり方についてはメディアの役割も大きい。自戒も込めて、検証していきたい。

 未知のウイルスへの恐怖心は、だれの心にもある。それが増幅されて社会が冷静さを失うことがないよう、不安をコントロールするすべを身につけたい。

 この先、ウイルスが病原性を増す可能性もある。強毒性鳥インフルエンザの脅威も、去ったわけではない。

 数年がかりの長期戦である。山あり谷ありは覚悟のうえ、試行錯誤も将来への貴重な糧になる-。そんな心構えで、新型インフルエンザとのつきあい方を探り、社会で共有していきたい。

(信濃毎日新聞・社説、2009年6月14日)

****** NHKニュース、2009年6月13日

WHO ワクチンの製造急ぐ

新型インフルエンザの警戒レベルを世界的な大流行=パンデミックの宣言を意味する最も高い「フェーズ6」に引き上げたWHO=世界保健機関は、各国政府とも協力して、新型インフルエンザ向けのワクチンの製造を急ぐことにしています。

WHOのチャン事務局長は、日本時間の12日に行った会見で、「まもなく季節性インフルエンザのワクチンの生産が終了し、新型向けのワクチンの生産に集中することになる」と述べ、新型インフルエンザ向けのワクチンの製造を急ぐ考えを示しました。そのうえで、チャン事務局長は、安全で有効なワクチンの承認手続きが迅速に進むよう、WHOとしても各国政府と協力して取り組んでいく方針を強調しました。新型インフルエンザ向けのワクチンをめぐっては、スイスの大手製薬会社が、12日、細胞工学を使った新たな手法でワクチンの開発に成功したと発表するなど、各国の製薬会社が研究開発を急いでいます。ただ、そのほとんどは先進国の製薬会社で、十分な資本や技術を持たない発展途上国にワクチンが行き渡らないのではないかと懸念する見方もあり、ワクチンは、製造だけでなく、いかに普及させるかも大きな課題となっています。

(NHKニュース、2009年6月13日)

****** 共同通信、2009年6月13日

日本で半年以内の大規模感染確実  押谷東北大教授が警告

 世界保健機関(WHO)で感染症対策を担当した押谷仁東北大教授は13日、都内で講演し「日本で半年以内に新型インフルエンザの大規模な感染拡大が必ず起きる。地域によっては、早ければ数週間以内にも起きる」と警告した。

 国内の現状について押谷教授は「患者間の疫学的なつながりがなく感染源が特定されないケースが出ており、明らかに感染拡大が続いている。隔離や自宅待機を恐れて名乗り出ていない人もいるとみられ、感染源が特定されず地域社会に広がっている」と指摘。

 予想されるシナリオとして「南半球や東南アジアで一気に大流行する可能性がある。そうなると日本への感染者の流入をまったく止められなくなり、冬まで局地的流行が続くことも考えられる」との見方を示した。

 押谷教授は「重症化する患者に対する医療態勢の整備が課題で、各地域で真剣に考えなければならない」と述べた。

(共同通信、2009年6月13日)

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新型インフルエンザ、WHO フェーズ6に引き上げを宣言

2009年06月12日 | 新型インフルエンザ

世界保健機関(WHO)は、新型インフルエンザの警戒度を、世界的大流行(パンデミック)を示す「フェーズ6」へ引き上げることを決めました。世界が20世紀以降に経験するパンデミックは今回で4度目で、過去には世界中で死者が100万~4000万人という大きな犠牲者が出ました。今回のパンデミックは、約100万人が死亡した1968年の「香港風邪」以来、41年ぶりとなります。

WHOはパンデミックの場合、流行の第2波までに世界人口の3分の1が感染すると予測しています。この割合を当てはめると、国内では約4000万人が感染する計算となります。

ワクチンは既に主要国保健当局と世界の主要メーカーが開発の準備に入っており、7月にも生産が始まり今秋には本格的に流通する見通しです。それまでは感染者の早期発見と、重症者に対する抗ウイルス剤投与が対策の中心となります。

****** NHKニュース、2009年6月12日

WHO フェーズ6に引き上げ

新型インフルエンザをめぐってWHO=世界保健機関のチャン事務局長は11日、緊急の記者会見を行い、南半球を含めた世界的な感染の広がりを受けて、警戒レベルを今の「フェーズ5」から世界的な大流行=パンデミックの宣言を意味する最も高い「フェーズ6」に引き上げると宣言しました。

日本時間の午前1時すぎから始まった緊急の記者会見の冒頭、WHOのチャン事務局長は「世界では今、新型インフルエンザのパンデミックが始まろうとしている」と述べ、警戒レベルを最も高い「フェーズ6」に引き上げると宣言しました。その理由として、チャン事務局長は、アメリカや日本などの北半球に続いて、冬を迎えた南半球でもオーストラリアなどで急速に感染が広がっていること。症状が軽いことから検査を受けない感染者もいて、実際には把握されている以上に世界的な感染が広がっているおそれがあることなどをあげています。その一方、チャン事務局長は過剰な反応が起きることに懸念を示し、国境を閉鎖したり国際的な人や物の往来を制限したりしないよう、各国に適切な対応を呼びかけました。さらにチャン事務局長は、医療体制が整っていない発展途上国で、感染が深刻になることが懸念されるとして、こうした国々への支援が必要だと強調しました。最後に、チャン事務局長は「わたしたちすべてがこの事態に向き合わなければならない。いっしょになって乗り越えていこう」と述べて、国際社会が一丸となって新型インフルエンザの危機に対応していくことを求めました。

(NHKニュース、2009年6月12日)

****** 東京新聞、2009年6月12日

新型インフル世界的大流行を宣言 

警戒水準「6」に引き上げ

 【ジュネーブ11日共同】世界保健機関(WHO)のチャン事務局長は11日、記者会見し、新型インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を広域流行を意味する現行の「5」から最高の「6」に引き上げ、世界的大流行(パンデミック)を宣言した。インフルエンザの世界的大流行は、約100万人が死亡した1968年の「香港風邪」以来、41年ぶり。

 事務局長は、今回はウイルスの病原性が低く、「重度」より軽く「軽微」より重い「中」程度だとの認識を示した。今後も感染が拡大するとの見通しを示す一方で「重症者や死者が突然急増することは予想しない」と表明。各国に国境閉鎖や旅行制限など過剰な反応をしないよう呼び掛けた。

 新型インフルエンザは当初のメキシコ、米国から欧州や日本、さらにオーストラリアなど冬季にさしかかった南半球を含む多数の国に拡大。オーストラリアは10日の主要感染国による会議で、同国ビクトリア州で北米などへの渡航者と無関係な人の間で感染が続く「地域社会レベルの持続感染」の発生を認め、大流行宣言を出す条件は出そろった。

 WHO当局者によると、宣言に伴い、新型インフルエンザがもたらす感染者の健康被害について3段階の新たな評価基準を設定。チャン事務局長は新型インフルエンザに有効なワクチンについて「メーカーができるだけ早く製造できるよう支援していく」と言明した。

 記者会見に先立ち、専門家による緊急委員会の電話会合が開かれ、チャン事務局長に対し引き上げを勧告。事務局長は各国外交団に警戒水準引き上げを通知した。

 ワクチンは既に主要国保健当局と世界の主要メーカーが開発の準備に入っており、7月にも生産が始まり今秋には本格的に流通する見通し。それまでは感染者の早期発見と、重症者に対する抗ウイルス剤投与が対策の中心となる。

(東京新聞、2009年6月12日)

****** 東京新聞、2009年6月12日

世界的大流行「3年続く」 

WHO医務官が見通し

 【ジュネーブ12日共同】世界保健機関(WHO)が11日に宣言した新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)について、WHOの進藤奈邦子医務官は同日、記者会見し「今後3年間はパンデミック状態が続く」と述べ、警戒水準(フェーズ)が最高位の「6」に長期間据え置かれるとの見通しを明らかにした。

 医務官は「今後は(冬を迎える)南半球の動向を注視する必要がある」とした上で「感染者は米国など北半球でも増加し、新型ウイルスが衰える気配はない」と安易な終息ムードを戒めた。

 フェーズ6の期間中、世界の多くの人が新型ウイルスに感染して免疫を獲得したり、ワクチンで感染被害を抑え込むことなどにより、患者数は徐々に減少。新型ウイルスはその後、通常の季節性インフルエンザウイルスと同じ扱いになるという。

 また、進藤医務官はこれから季節性インフルエンザの流行期に入る南半球について「季節性と新型の双方が同時に流行する可能性がある」と指摘。さらに、双方のウイルスが交雑し、抗ウイルス剤、タミフルに対する耐性を持った新型ウイルスが発生する危険性があるとの懸念も示した。

(東京新聞、2009年6月12日)  

****** 朝日新聞、2009年6月12日

WHO、パンデミック宣言 

新型インフル「フェーズ6」

 世界保健機関(WHO)は11日、新型の豚インフルエンザの警戒レベルを現行のフェーズ5から、世界的大流行(パンデミック)を意味する最高度のフェーズ6に上げることを宣言した。インフルエンザシーズンを迎えつつある南半球に感染が及んだことが決め手となった。大流行は「香港風邪」以来、41年ぶりとなる。

 WHOのマーガレット・チャン事務局長は11日午後6時(日本時間12日午前1時)過ぎに記者会見し、大流行を正式に宣言。「感染の拡大を止めることはできない」と述べた。今回の新型を「2009インフルエンザ」と名付けたことも明らかにした。

 厚生労働省の担当者は11日、この決定に先立ち、大流行が宣言された場合の対応について、「これまでの(政府の)方針に沿って、感染拡大防止に努める」とし、現状では国内対策の警戒レベル引き上げは考えていないことを明らかにした。

 ただ、WHOが宣言したことで、国によっては移動や集会の制限などを検討する可能性があり、市民生活や世界経済などに影響が出かねない。

 このためWHOは過剰反応を戒めており、「渡航・貿易制限や国境閉鎖はすべきではない」と改めて求めている。

 WHOの基準では、感染が広がっている米州地域以外の1カ国で「地域社会レベルの人から人への持続的感染」が確認されれば、フェーズ6の要件が満たされる。

 冬を迎えた南半球では6月に入り、感染の拡大が著しい。11日現在で豪州は1307人、10日現在で南米チリは1694人の感染者が確認されている。特に、感染者が1千人を超えた豪州ビクトリア州で、人から人への持続的感染が確認されたことが、今回の大きな決定要因となった。

 WHOが確認した世界の感染者は10日朝現在で75カ国・地域の2万7737人。大半は軽症で済んでいるが、死者は141人になっている。

 WHOは、今回の新型インフルの「重症度」は「中等度」であると評価した。「軽度」としなかったのは、「今回、死亡、重症化した人の大半は、30~50代だったことなどを考慮に入れた」(チャン事務局長)という。

 各国政府に対し、状況に応じて、感染拡大防止から、医薬品以外の対処法を含めた感染症状の緩和策にシフトさせていくべきだと求めている。

 WHOは、医療態勢や医薬品が十分でないアフリカなどの途上国で今後、感染の影響がどのように出るか懸念、これまでに抗ウイルス薬やワクチンメーカーと途上国への提供について議論してきた。

 「季節性インフルエンザワクチンの製造は間もなく終了し、今後数カ月の間に新型インフルワクチンを可能な限り多く供給ができるような製造態勢を取ることができるようになるだろう」としている。

 人類は20世紀にインフルエンザの世界的大流行を3度経験した。今回は21世紀初の大流行となる。【大岩ゆり、編集委員・浅井文和、ジュネーブ=飯竹恒一】

(朝日新聞、2009年6月12日)

****** 読売新聞、2009年6月12日

新型インフル、「フェーズ6」引き上げを宣言

…WHO

 【ジュネーブ=平本秀樹】世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は11日夕(日本時間12日未明)、記者会見を開き、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の警戒水準を世界的大流行(パンデミック)を意味する最高の「フェーズ6」へ引き上げると宣言した。

 同日開催の専門家による緊急委員会が、南半球での急速な感染拡大を踏まえ、「世界的大流行の要件が満たされた」と結論づけたことを受け、決断した。

 新型インフルエンザの世界的大流行は死者100万人に及んだとされる1968年の「香港風邪」以来41年ぶりとなる。

 チャン事務局長は、感染者の大半の症状が軽いことを指摘し、「国境閉鎖や国際的な人・モノの移動制限措置を取るべきでない」と述べ、各国に冷静な対応を求めた。また、世界各地にウイルスが広がってしまっているため、患者隔離など「封じ込め策」より、早期治療を軸とする感染拡大の「軽減策」に重点を移すよう訴えた。

 メキシコ、米国を起点に4月以後、急速に広がったウイルスは、WHOによると11日までに74か国・地域に拡散し、感染者は2万8000人以上に達する。感染者の増大は、冬に入った南半球で顕著で、豪州では毎日100人のペースで増え、1200人を超した。

 WHOの警戒水準は地理的な広がりを尺度に定められており、フェーズ6は、世界の2地域で人から人への持続的感染が起きていることが条件。北米に加え豪州でも人から人への持続的感染が確認されたため、フェーズ6への引き上げが避けられなくなった。

 警戒水準は各国の対策を左右するだけに、引き上げに際しては、ウイルスの地理的な広がりだけでなく、病原性の強弱を表す新たな尺度の必要性が認識された。WHOは「重症」「中度」「軽症」の3段階の尺度を検討しており、今回は「中度」としている。

 チャン事務局長は、また、ワクチンメーカーに対し、季節性インフルエンザ用ワクチン製造が完了した後、新型用ワクチンをフル稼働で生産するよう求めた。

 WHOは新型インフルエンザの警戒水準を4月29日にフェーズ5に引き上げた。5月初め、英国やスペインでも感染者が増大し、フェーズ6への引き上げが本格的に検討されたが、世界的大流行を宣言することによる経済的、社会的影響への懸念から、欧州諸国のほか日本や中国が反対したため、引き上げは見送られていた。

(読売新聞、2009年6月12日)

****** 毎日新聞、2009年6月12日

新型インフル:警戒度6「世界的大流行」宣言

…WHO

 【ジュネーブ澤田克己】世界保健機関(WHO)のマーガレット・チャン事務局長は11日夕(日本時間12日未明)、新型インフルエンザの警戒度を現行の「フェーズ5」から、世界的大流行(パンデミック)を意味する「6」へ引き上げると発表した。インフルエンザのパンデミック発生は、世界中で約100万人が死亡した1968年の香港風邪以来41年ぶり。

41年ぶり「大流行」

 チャン事務局長は会見で「感染の状況はフェーズ6の条件を満たしている」と話し「今後の感染の拡大は避けられない」とした。同日開いた専門家による緊急委員会や、前日までの各国との協議を総合的に判断してフェーズ6を宣言した模様だ。

 ただ、現段階ではウイルスは大きな変異を起こしておらず、特に治療の必要がない程度の軽症患者が多い。事務局長は「(新型インフルエンザは)重症度からみると世界的に中等度となっていると言える」とし「国境封鎖や旅行・貿易の制限はしないよう」呼び掛けた。

 現行規定に基づくフェーズ6引き上げの条件は、世界の複数地域で「地域社会レベルの持続的感染が起きている」ことだ。メキシコと米国に加え、日本や英国などで感染が拡大したうえ、これから冬に向かう南半球のオーストラリアで感染が1200人以上と急拡大していることを重視したとみられる。

 WHOは5月の総会時、パンデミック宣言がもたらす社会的混乱を恐れる日本や英国などからの反発を受けて、基準見直しを表明していたが、その後、軌道修正を図っていた。

 WHOは4月24日、メキシコで豚インフルエンザ感染を疑われる死者が多数出ていると発表。「フェーズ3」だった警戒度は、同月27日に新型インフルエンザ発生を意味する「4」、29日にパンデミックが目前に迫っていると警告する「5」へと引き上げられていた。WHOによると感染者は世界で2万7737人、死者は141人にのぼっている。

(毎日新聞、2009年6月12日)

****** 毎日新聞、2009年6月12日

新型インフル:解説 警戒度「6」に

…「第2波」に備えを

 世界保健機関(WHO)は、新型インフルエンザの警戒度を、世界的大流行(パンデミック)を示す「フェーズ6」へ引き上げることを決めた。国内での対策に大きな変更はないが、秋以降に懸念される流行の「第2波」に備え、患者の早期治療や重症化を防ぐ準備が必要だ。

 世界が20世紀以降に経験するパンデミックは今回で4度目。過去には世界中で死者が100万~4000万人という大きな犠牲者が出た。だが、WHOのチャン事務局長は今回の新型発生後、「我々はかつてない準備ができている」と述べた。世界はこの病気に関する知識と、一定の医療態勢を整えている。これらをいかに生かせるかが問われている。

 WHOはパンデミックの場合、流行の第2波までに世界人口の3分の1が感染すると予測している。この割合を当てはめると、国内では約4000万人という計算だ。

 新型は、感染したことに気が付かないケースもあるなど、多くの人で症状が軽い特徴がある。その一方で、高齢者が死亡する季節性と異なり、糖尿病などの基礎疾患がある人や妊婦のほか、健康な成人でも重症化し、死亡する例が出ている。国内でも感染者数が増えれば、一定数の重症者、死者が出ることも避けられない。政府は被害軽減のため、バランスの取れた対策をとらねばならない。医療関係者の協力を得ながら、早期発見、治療の態勢を整え、年内に2500万人分の製造が見込まれるワクチンについて有効な接種方針を明確に示すことが求められている。【関東晋慈】

(毎日新聞、2009年6月12日)

****** 毎日新聞、2009年6月12日

渡航歴に関係なく遺伝子検査実施を…厚労省

 厚生労働省は10日付で、都道府県などに新型インフルエンザの監視強化を求める通知を出した。全国約500カ所の「病原体定点医療機関」を受診したインフルエンザ患者▽学校、家族、集会参加者などから集団で発生したインフルエンザ患者--などは、渡航歴などに関係なく遺伝子検査を原則実施するよう求めている。

 これまでは、感染が広がっている地域に行ったり、感染者と接触した可能性があるとして保健所に届け出があった「疑い例」に限られていた。【清水健二】

(毎日新聞、2009年6月12日)

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「過酷な」勤務実態で産科女医の就労継続困難に

2009年06月07日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

最近の若い産婦人科医では、女性医師の占める割合がだんだん多くなってきてます。女性医師の場合、自身の妊娠・出産・育児と仕事の両立が難しくなって、就労継続を断念し離職する者も少なくありません。院内保育所の整備、柔軟な勤務形態(フレックスタイム、短時間勤務、ワークシェアetc.)の導入など、女性医師が就労継続しやすい職場環境を整える必要があります。

柔軟な勤務形態を導入しても業務に支障がでないようにするためには、産婦人科医の頭数を増やすことと同時に、産婦人科を志望する男性医師を増やしていくことも非常に重要だと思います。

たまたま当科の女性医師が医局人事の異動、個人都合などで同時に2人退職した関係で、今月から当科の常勤産婦人科医は(当世では珍しく)男性医師のみ5名の診療体制となっています。やはり、女性医師を待望する巷の声もちらほら耳にします。

ここ20年間だけでも日本の産婦人科医療提供体制は大きな変貌を遂げました。その間の当科の職場環境の変化も非常に大きかったです。今後も試行錯誤を繰り返しながら、女性医師にとっても男性医師にとっても、働きやすい理想の職場環境の実現に向けて、自ら変化していく必要があります。

****** CBニュース、2009年6月4日

「過酷な」勤務実態で産科女医の就労継続困難に

【要約】 日本産科婦人科学会は、「産婦人科勤務医・在院時間調査」の最終報告書を公表し、病院産婦人科の厳しい勤務環境は、特に結婚・出産などを経た40歳以上の女性医師の継続的就労を困難にしている可能性があるなどとした。調査は、「卒後研修指導施設」750病院を対象に、昨年6月から11月にかけて実施。一般病院に常勤する産科医451人と、大学病院に常勤する産科医182人から回答を得た。一般病院勤務医451人のうち、がん診察専門施設勤務医を除き、当直体制のある一般病院勤務医は364人、当直体制のない一般病院勤務医は80人だった。データを回収した40歳以上の女性医師数は一般病院と大学病院を合わせて38人で、男性医師数256人に比べて非常に少なかった。現状の病院産婦人科の勤務環境は、家族のいる40歳以上の女性医師が継続的な就労をするには条件が厳し過ぎる可能性があるとした。20歳代と30歳代の産婦人科医に占める女性医師の割合が多いことから、こうした人たちが40歳以上になっても病院勤務を継続して臨床現場を支え、若手医師を指導できる環境を整備することによって初めて、「産婦人科医療の将来に明るい展望を持つことが可能になる」と強調。「過酷な」勤務実態を改善し、「在院時間の短縮」を達成するための具体的な方策を立案し実行することが必要と結論付けている。

(CBニュース、2009年6月4日)

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昭和伊南病院に婦人科医着任 外来拡大、入院にも対応 (長野日報)

2009年06月04日 | 地域周産期医療

塩尻市で産婦人科を開業されていた山田医師が、2010年5月からは駒ケ根市内で産科クリニックを開業し分娩も取り扱う予定とのことです。駒ケ根市民にとっては朗報だと思います。

駒ケ根でお産ができる 産婦人科医院来年5月開業 (長野日報)

長野県・上伊那地域の産科医療

****** 長野日報、2009年6月2日

昭和伊南病院に婦人科医着任 

外来拡大、入院にも対応

 駒ケ根市の昭和伊南総合病院に1日、婦人科医の山田雅人医師(61)が着任した。辞令を伝達した長崎正明院長は「地域住民は婦人科医を切望していた。活躍に期待しています」と歓迎した。

 山田医師はこれまで同院の非常勤医師だったが、今後は産婦人科長として常勤となり、入院にも対応する。来年5月からは市内に産婦人科医院を開業し、お産も取り扱うという。

 昭和伊南は昨年4月以来、産婦人科の常勤医師が不在で、外来診療は非常勤医が週4日行っていた。山田医師の着任で、1日から平日は毎日診療できる体制となった。これまで20週までだった妊婦検診を30週まで拡大することも検討している。昭和伊南での分娩(ぶんべん)については再開の予定はない。

 山田医師は「できるだけの力を発揮して病院に貢献し、地域の皆さんのために頑張りたい」と抱負を語った。

(長野日報、2009年6月2日)

*** 医療タイムス、長野、2009年6月4日

産科医2人が産休へ 伊那中央産婦人科

 伊那中央病院産婦人科に1日付で、信大病院から横西哲医師が着任した。これで同科は7人体制になったが、2人が妊娠しており、うち1人は9月末ごろから産休に入る見込み。同院は、月100件平均受け入れている分娩の取り扱いに当面は支障はないとしながらも、「2人が産休した場合は厳しい」ことから、引き続き信大病院などに医師派遣の要請を行っていく。同院の産婦人科医は、7人中5人を女性が占めている。

(医療タイムス、長野、2009年6月4日)

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カンガルーケアで安全指針

2009年06月02日 | 周産期医学

カンガルーケア(赤ちゃんを母親の乳房と乳房の間に抱いて、裸の皮膚と皮膚を接触させながら保育する方法)は、1970年代に南米コロンビアで低出生体重児に対する保育器不足対策として開始されました。1980年代より欧米で、日本でも1990年代より新生児集中治療室(NICU)の中で行われるようになりました。最近は規模の大きな病院のほか、産科のクリニックなどにも急速に広がっています。カンガルーケアのメリットとしては、母乳の分泌が促進されたり赤ちゃんの不安が和らいだりして、母子の絆を深める効果があるとされています。しかし、出生直後のカンガルーケアにより、児の死亡や重大な脳の障害が残るなどの深刻なトラブルも起こっていることが報道されています。

このため、カンガルーケアを安全に実施するためのガイドラインが、「カンガルーケア・ガイドライン ワーキンググループ」によってまとめられました。ガイドラインでは、児にモニターをつけて血液中の酸素濃度や脈拍数を監視することや、経験を積んだ医師や助産師などが立ち会うことなど、十分な安全対策が求められています。

****** NHKニュース、2009年5月30日

カンガルーケアで安全指針

生まれたばかりの赤ちゃんを母親の胸に抱かせる「カンガルーケア」というスキンシップをしているときに、容態の急変に気づくのが遅れて赤ちゃんが死亡するなどの深刻なトラブルを防止するため、カンガルーケアを行う際は赤ちゃんの呼吸の状態などを監視する安全対策が必要だとするガイドラインがまとめられました。

このガイドラインは小児科や産科の専門医や助産師などでつくるグループが作成したもので、30日に那覇市で開かれた講演会で公表されました。

「カンガルーケア」は、生まれたばかりの赤ちゃんを裸のまま母親の素肌の胸に抱かせていっしょに過ごすスキンシップで、母乳の分泌が促進されたり赤ちゃんの不安が和らいだりして、母子のきずなを深める効果があるとされています。

最近は規模の大きな病院のほか、産科のクリニックなどにも広がっていますが、母親と赤ちゃんだけになって容態が急変していることに気づくのが遅れて、赤ちゃんが死亡したり脳に重い障害が残ったりする深刻なトラブルも起きています。

このためガイドラインでは、赤ちゃんにモニターをつけて血液中の酸素濃度や脈拍数を監視するとともに、経験を積んだ医師や助産師などが立ち会って安全を確保することなどを求めています。

(以下略)

(NHKニュース、2009年5月30日)

日本産婦人科医会報、平成19年、第59巻01月号、No.682:p12-13  

カンガルーケアの留意点

正常産児生後早期の母子接触(通称:カンガルーケア)中に心肺蘇生を必要とした症例

長野県立こども病院
総合周産期母子医療センター長
新生児科部長 中村友彦

問 カンガルーケアとは

 Kangaroo care は、1970年代に南米コロンビアで、低出生体重児に対する慢性的な保育器不足に対して開始され、1980年代より欧米で、低出生体重児に対する「愛とぬくもりと母乳」を期待して新生児医療施設で実施、評価されました(Kangaroo Mothers Care Program)。
 さらにUnicef/WHO の後援のもとに発展途上国に広がり、日本でも1990年代より低出生体重児に対してNICU の中で行われるようになり、本医会報でも平成13年3月号に、聖マリアンナ医科大学の堀内勁教授(現日本周産期新生児医学会理事長)が解説されています。日本でもカンガルーケア研究会が発足し、国際的にもカンガルーケア国際ネットワークが国際ワークショップを定期的に開催しているようです。

問 正常産児の生後早期の母子接触とは

 哺乳類の動物は、出生後一度母親から離されると正常な母子関係が築けないことはよく知られています。人間の正常産児でも出生後母子を分離しないことによって、良好な母子関係が構築できるのではないかと考えられ、1990年代より正常産での生後早期の母子接触の有効性の報告が出始め、この行為はEarly skin-to-skin contact:Kangaroo care と呼ばれるようになりました。前述の早産児に対するKangaroo Mothers Care Program が、医療行為の一貫として考えられているのに対して、同じKangaroo care と呼ばれていますが、Early skin-to-skin contact:Kangaroo care は、分娩後のより良い母子関係を築き、母乳哺育を進めるための文化的、生活習慣上の行動として推奨されています。開始するのは多くの文献が生後約10分後より、施行時間は15分から48時間までと様々のようです。この生後早期の母子接触中に初回の母乳哺育が試みられています。

問  正常産児の生後早期の母子接触の有効性と安全性について

  2003年のCochrane review では、17の文献、総数806組の母子で正常産児の生後早期の母子接触の有効性について検討しています。生後早期の母子接触は、有意に1~3カ月の母乳哺育率を向上させ、母乳哺育の期間を延長し、生後1時間後、または生後1.5時間の間の児の啼泣回数が少なくなると報告しています。
  しかし、生後早期の母子接触によって、その後の良い母児関係が築かれるかどうかについては評価するのが難しいとしています。早産児関連では、ほとんどの文献が未熟児無呼吸発作の頻度は変化ないか、減少していると報告しており、短期、長期的な副作用については報告されていません。安全性については、早産児、成熟児ともに系統的な検討は報告されていません。

問  我が国の現状は

  毎年2月に、長野で開催している新生児呼吸療法モニタリングフォーラムでは、全国の新生児医療に関わる医師、看護師、企業が集まって様々な新生児に関するモニタリングについて検討しております。本年行われた第8回フォーラム(平成18年2月15~17日、大町)で、前述のカンガルーケア研究会に参加する184施設に「正常産児のカンガルーケア」に関するアンケートを行い、118施設(64%)から返答をいただきました。
  回答をいただいた施設の80%が認可されたNICUのある病院で、一般診療所は含まれておりませんので、我が国の現状と言うには偏りがあるかもしれませんが、115施設(97%)で「正常産児のカンガルーケア」が行われており、36施設(31%)で全員の児に行っており、施行する適否の判断基準を定めている施設は66施設(56%)でした。臍帯切断直後より開始するのが26施設(22%)、初期処置後から開始するのが61施設(52%)でした。施行時間は5分以内が26施設(22%)と最も多く、次いで1時間以上が21施設(18%)でした。112施設(88%)がモニターを装着しておらず、看護師または助産師が観察しているとの結果でした。

問  カンガルーケア中に心肺蘇生を必要とした正常産児の症例とは

  最近私の施設で、産科診療所にて正常分娩で出生し生後早期のカンガルーケア中に心肺蘇生を必要とした症例を経験しましたので報告します。

症例1:
在胎40週3日、出生体重3,036 、経腟分娩にて出生。助産師が付き添いながら出生直後より母親の胸でカンガルーケアをし、出生50分後より乳頭からの授乳を開始しました。生後70分助産師が児の観察を行ったところ全身蒼白、筋緊張低下、心拍数50回/分であったため直ちに助産師がマスクアンドバックで心肺蘇生の初期対応を行うと同時に、産婦人科医師を呼んでさらなる心肺蘇生が行われ、20分後に自発呼吸が見られるようになり、当院に搬送依頼入院となりました。入院後全身強直性痙攣がみられましたが、脳波、頭部MRI、ABR に異常なく、日齢15に退院しました。

症例2:
在胎38週4日、出生体重2,950 、経腟分娩にて出生。助産師が付き添いながら出生直後より母親の胸でカンガルーケアを開始したところ約5分後に全身チアノーゼが出現、心拍数80回/分、直ちに助産師がマスクアンドバックで心肺蘇生の初期対応を行うと同時に、産婦人科医師を呼んでさらなる心肺蘇生が行われ、多呼吸が持続するため、当院に搬送依頼入院となりました。一過性多呼吸のため4日間陽圧換気療法を行いましたが、脳波、頭部MRI、ABR 検査に異常なく、日齢13に退院しました。本症例は、本年の長野県産婦人科医会で症例報告し、現在米国誌に投稿する準備をしています。

  いずれの症例も、発見が早く、かつ蘇生が適切であったので、大事にはいたりませんでしたが、非常に危険な状態でありました。私が調べた限りでは、正常産児のカンガルーケア中の心肺蘇生を必要な危険な状態に陥ったとの文献的報告はありません。しかし、我が国の新生児医療施設では、私どもが経験した症例に似た状態の児を経験していることが知られており、現在我が国の新生児医療施設170カ所が参加している、新生児医療連絡会で、新生児医療施設に入院となった「正常産児のカンガルーケア中に急変した症例」について、調査検討する予定です。

問  Systematic review ならびに我が国の現状から推測する正常産児の生後早期のカンガルーケアに関する問題点は

  胎内生活から胎外生活に呼吸循環状態がダイナミックに移行する出生後早期は、呼吸循環状態が不安定なため、危機的状況となる可能性は高い時期であると考えられていますが、正常産児の生後早期のカンガルーケアに関する文献では、その安全性についてはほとんど議論されていません。
  また、我が国の現状では、正常産児でカンガルーケアを行うか否かの選択基準、判断する時期が不明確です。新生児医療従事者は、早産児のKangaroo Mothers Care Program は治療の一貫で、その安全性の責任は医療者側にあることを認識していると思われますが、母子関係の確立に望ましいと考えられ、文化的、生活習慣上の行為であると思われる正常産児のEarly skin-to-skin contact:Kangaroo care 中の安全性の責任は、医療者側なのか母親なのかが不明確と思われます。

問  正常産児の生後早期のカンガルーケアに関する今後の課題は

  正常産児の生後早期のカンガルーケアについては、以下の3点について検討する必要があるのではないかと思います。
1.適応(または不適応)症例の判断、その判断方法と時期
2.安全性について責任の所在の明確化
3.子供の異変に気づいた母親・家族、医療従事者がすぐに対応できる体制

おわりに

  我が国には、今まで系統的な新生児蘇生の研修・研究プログラムがなく、蘇生に使用する物品、使用法、蘇生方法も標準化されたものがありませんでした。平成16年度より厚生労働省子ども家庭総合研究事業「アウトカムを指標とし、ベンチマーク手法を用いた質の高いケアを提供する周産期母子医療センターネットワークの構築に関する研究」(主任研究者:藤村正哲)の分担研究「小児科・一般産科医・助産師・看護師向けの新生児心肺蘇生法の研修プログラムの作成と研修システムの構築とその効果に関する研究」(分担研究者:田村正徳)で、米国小児科学会のNeonatal resuscitation program を参考に日本における新生児蘇生の標準化を検討しています。
  私もその研究協力者として、長野県では周産期医療従事者に月に一度、新生児蘇生講習会を地域周産期センターで開催しております。今回症例報告した一般産科診療所の医療従事者は、いずれもこの講習会に積極的に参加している施設でした。
  我が国において「正常分娩」の分娩室での母子ケアについては、科学的根拠に基づく標準的な方法がないと思われます。母乳育児、母子関係の確立に有効性が期待される生後早期のカンガルーケアについて様々な側面から検討することが、分娩後の母子ケアを向上させる良い機会となるのではないかと思い、話題提供させていただきました。

(日本産婦人科医会報、平成19年、第59巻01月号、No.682:p12-13)

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駒ケ根でお産ができる 産婦人科医院来年5月開業

2009年06月01日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

駒ヶ根市では、従来、昭和伊南総合病院が年間5百件程度の分娩を取り扱ってました。昨年4月より昭和伊南総合病院・産婦人科の常勤医が不在となり、現在、同病院での分娩の取り扱いは休止されてます。

伊那中央病院では、上伊那地域に在住する妊婦さんの分娩をほとんどすべて受け入れるために、現在、里帰り分娩の受け入れを全面的に断っているそうです。

来年5月に駒ヶ根市内に産科医院開業の予定があり、それが実現すれば、伊那中央病院での里帰り分娩の受け入れも、ある程度は可能となるかもしれません。

****** 長野日報、2009年5月30日

駒ケ根でお産ができる 産婦人科医院来年5月開業

 駒ケ根市の杉本幸治市長は29日の定例記者会見で、来年5月から市内に個人の産婦人科医院が開業することを明らかにした。お産も取り扱うという。

 昭和伊南総合病院が昨年4月から分娩の取り扱いを休止し、上伊那地方で出産できる公立病院は伊那中央病院のみとなり、開業医も限られている。市によると、開業する医師は昭和伊南に今月から着任している。開業するまでは、昭和伊南に勤務する。

(以下略)

(長野日報、2009年5月30日)

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