ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

大野病院事件「表彰」は妥当?(県議会一般質問)

2006年06月30日 | 報道記事

****** コメント

この事件に関しては、「癒着胎盤の術前診断は不可能であること」、「癒着胎盤は非常にまれな疾患で、治療の難易度はきわめて高いこと」などから、事件が報道された当初から、日本全国の多くの専門医達が異口同音に逮捕は不当と主張しています。また、日本医師会、日本産科婦人科学会をはじめとした非常に多くの医療関係の団体が、今回の事件に対して「逮捕は不当」とする声明を相次いで発表しました。

そのことは警察側でも十分に承知しているはずなのに、あえて、県警本部長が今回の事件の「功績?」により富岡署を表彰したというのは、確かに、非常に奇妙な話だと思います。福島県警のトップが、「治療に最善を尽くした医師であっても、治療の結果次第で、今後もどんどん逮捕しなさい!」と組織全体に対して命令を下し、そのことを世間に対しても堂々とアピールしているわけです。警察権力によって地域内のあらゆる医療行為が全面的に禁止されたようなものだと思われます。

****** 河北新報、2006年6月29日

 福島県立大野病院(大熊町)で2004年に帝王切開手術を受けた女性=当時(29)=が死亡し、産婦人科医が業務上過失致死などの罪で逮捕、起訴された事件で、県警本部長が医師逮捕で富岡署を表彰したことの可否が28日、県議会一般質問で取り上げられた。

 質問した県議は「(事件は)治療に最善を尽くした医師が逮捕された国内初の出来事。どんな基準で富岡署が本部長表彰に該当したのか」と疑問を投げ掛けた。綿貫茂本部長は「事案の重要性と困難性を認め、表彰した」と答えた。

 事件は、子宮壁に胎盤が密着する「癒着胎盤」だった女性が帝王切開手術中に出血性ショックで死亡。富岡署は今年2月、無理に胎盤をはがそうとしたのが原因として執刀医(38)を逮捕した。日本産科婦人科学会などは「難度の高い手術で刑事責任を問われたらメスを持てない」と一斉に反発、「逮捕は不当」とする声明が相次いだ。

 富岡署が4月14日に本部長表彰を受けた際も、大阪府保険医協会などが「不当な『表彰』の辞退を要求する」との声明文を同署に提出した。

(河北新報、2006年06月29日)


産科「利便性より安全性」、拠点病院への集約化を提言(厚労省、医師の需給に関する検討会)

2006年06月29日 | 地域周産期医療

少ない産婦人科医の地域における配置を考える場合に、利便性を優先して産婦人科医を分散させるのか?あるいは、安全性を優先して産婦人科医を集約化させるのか?はまさに究極の選択です。

従来、日本では、妊産婦の病院へのアクセスの利便性が優先されて、少ない産婦人科医が多くの病院に分散して配置され、(一人医長などの)非常に不十分な体制で分娩が多く取り扱われてきました。

しかし、日本でも、もはや今までのような不十分な体制では分娩を取り扱えない社会的状況となってきました。

厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」が、今後は方針を転換し、地域拠点病院への重点化、集約化が必要と提言する報告書案をまとめたとの報道です。

また、臨床研修修了後の「後期研修」で診療科ごとの定員を設けることなども検討されているようです。

****** 共同通信、2006年6月28日

産科「利便性より安全性」 拠点病院への集約化提言

 医師不足問題の解決策を議論している厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」は28日、減少が深刻とされる産婦人科について「緊急事態に対応するため(地域の拠点病院などへの)重点化、集約化が必要」と提言する報告書案をまとめた。地域の産婦人科医が減ると「利便性が損なわれる」としながらも「安全性を重視するべきだ」としている。

(以下略)

(共同通信より引用)


女性産科医の仕事を支援(学会が委員会を設置)

2006年06月28日 | 地域周産期医療

私と同世代で産婦人科医になるのはほとんど男性ばかりでしたが、最近の若い産婦人科医では女性の占める割合が圧倒的に多くなってきました。

我々の世代の若い頃の産婦人科医の生活は仕事一色で、毎日、病院に寝泊りしているような仕事漬けの生活が当たり前でした。特に、一人医長時代は、一年中、毎日が当直勤務のような勤務形態で、ほとんど帰宅する暇もないくらいに忙しい仕事一色の毎日でした。

女性医師の場合は、若い一時期に、妊娠・出産・育児と仕事の両立が非常に難しくなる時期が必ずあります。そういう時期には、フルタイムでの勤務が難しくても、数人の女性医師で互いに都合をつけあってワークシェアしたり、育児を互いに助け合ったりできれば、その時期も、比較的無理なく、乗り越えられるかもしれません。

世の中のトレンドはどんどん変化しています。やはり、産婦人科医の勤務形態も、男性医師ばかりであった時代とは大きく変えてゆかねばならないと思います。

****** 共同通信社、2006年6月26日

女性産科医の仕事を支援 学会が委員会を設置

 日本産科婦人科学会(武谷雄二(たけたに・ゆうじ)理事長)は24日、産科医不足の解決策の一つとして、女性産科医が育児をしながらでも仕事を続けられるような環境の整備を検討するための組織を設置したと発表した。

(以下略)

(共同通信社、2006年6月26日)


神奈川県の産科医不足の状況

2006年06月27日 | 地域周産期医療

神奈川県は首都圏に位置し、横浜、湘南など、日本中の多くの人が一度は住んでみたいとあこがれているところです。人口も非常に多いし、大学付属病院や超有名巨大病院も多数あります。医師不足とは全く無縁という気がしていましたが、最近の報道では、その神奈川県にも産科医不足の荒波が押し寄せ、状況はかなり厳しくなってきているようです。

****** 毎日新聞/神奈川、2006年6月26日

産科医療:分べん施設や医師減少 早急な対策必要--県がアンケート /神奈川

 全国的な産科・産婦人科医の不足が問題になる中、県内でも分べんを取り扱う施設や医師が減少していることが県のアンケート調査で明らかになった。医療関係者などからは「産科医は激務を強いられており、早急な対策が必要だ」との声が上がっている。
 県内で産科や産婦人科を扱う病院や助産所など556施設のうち、76%に当たる424施設から回答を得た。
 06年4月以降も分べんを取り扱うと回答したのは165施設で、03年度から16施設減少。06年3月時点は179施設で、今年度に入って取り扱いをやめる施設が増えている。
 分べん取り扱い施設の常勤医の数は06年度に399人となる見通しで、03年度の434人から35人減。特に横浜市域の病院は169人の常勤医を必要としていながら、134人しか確保できる見込みがない。県全体の病院と診療所では06年度、465人の需要に対して109人の常勤医が不足する見通しという。
 調査結果は県が月1回開く医療審議会医療対策部会で議論する。県は医療関係者へのヒアリングなども行い、9月末までに開かれる審議会に対策の中間取りまとめを提出する予定。【稲田佳代】

(毎日新聞) - 6月26日12時2分更新

****** 朝日新聞/神奈川、2006年05月30日

お産担当常勤医 2年で10人減少

  病院でお産を担当する常勤医師が、この2年で10人減った――横浜市が市内のお産扱い施設を対象にアンケートした結果、横浜でも産婦人科医不足が深刻になっている実態が明らかになった。市医療政策課が29日発表した。

  県の全体調査の一環として横浜市医療政策課が3月に、市内の病院32、診療所137、助産所64の計233施設を対象にアンケートし、うち152施設(65%)から回答を得た。病院はすべて回答した。

  それによると、病院の常勤医師は04年度は146人いたが、05年度は143人に減り、今年4月時点でさらに136人に落ち込んだ。

  お産を扱う病院は05年度の30から今年4月に27に減り、さらに2病院が今年度中にお産の扱いをやめる予定だ。

  各病院がお産に必要だと考える常勤医師の人数を合わせると、155人になり、常勤医不足の実態も浮かび上がった。

  また、市内の病院のお産のうち、約77%は市民だったが、約23%は市外の人だった。

****** 朝日新聞/神奈川、2006年06月03日

お産の場 どう確保

 産婦人科医が減り、赤ちゃんを産む場所が失われつつある問題を、どう解決したらいいのか――。県内のお産を扱う病院・診療所にアンケートして実態を調べた県産科婦人科医会の会長、医師不足によりお産を休止した民間病院の事務部長、医師を育てている大学医学部産婦人科のトップである教授の3氏に聞きました。(大貫聡子、赤木桃子)

県産科婦人科医会会長(八十島クリニック院長)・八十島唯一氏

  ――県産科婦人科医会は今年1月、県内で2015年に少なくとも約1万人の出産場所がなくなるという調査結果を発表しましたね。

  「調査では、今後分娩(ぶんべん)の受け入れをやめると答えた診療所の医師が全体の3割に上り、県内でも産科医不足が深刻な状態にあることがわかりました。働き盛りの世代が他の診療科に転科するケースも目立っています」

  ――産科医不足について、危機感を持ったのはいつですか。

  「これは大変だと思ったのは、今年の春です。診療所の医師が減るとしても、お産の大半は病院でおこなわれています。調査でも、分娩の受け入れをやめると答えた病院はほとんどありませんでした。ところが、県内の各大学医学部の研修を終えて医局に入る新人医師がこの春に600人いたのですが、産婦人科を希望したのは、たったの10人でした。産婦人科医を増やさない限り、日本の周産期(妊娠28週から生後7日まで)医療は崩壊すると思います」

  ――県西部の拠点の病院である松田町の県立足柄上病院は、横浜市立大医学部が常勤医師全員を引き揚げたため、現在はお産の件数を制限しています。

  「大学病院は二重苦なんだと思います。地域医療のため、医師を派遣しなければならないが、自分の病院も医師不足で苦しい。怖いのは、大きい病院がダメになると他の病院に妊婦が殺到してドミノ倒しのように、その地域の医療が崩壊してしまうことです」

  ――厚生労働省は、お産の場の減少を受けて、産科医が少ない病院が多い地域では、医師の集約化を推進するよう提言しています。

  「行政は、医師を同じ数だけ集めれば、分娩を休止している病院が再開できるだろうと考えているかもしれませんが、そんな単純な話ではありません。お産はチーム医療です。医師の判断のタイミングや手術の手技は、受けた教育やキャリアによって違ってきます。寄せ集められた医師がチームワークを保つのは、そう簡単ではありません。長期的にはやはり、医師の数を増やすことが問題解決の絶対条件です。ただ、短・中期的には医師の集約化と重点化でしのぐしか手はないのかなとも思います」

  ――助産師の活躍を期待する声もあります。

  「正常な分娩なら助産師で十分と思われていますが、助産院で生まれた新生児が危険な状態になってから病院に搬送されるというケースもあります。助産師と医師のしっかりとした連携が必要でしょう」

  ――行政への期待はありますか。

  「周産期医療の保険点数を引き上げ、もっと産婦人科医の仕事を金銭面で評価していくべきだと思います。産婦人科医はお産が好きで入ったんだから勤務が過酷でも当然だろう、と言われてきましたが、志だけではもうどうにもならないところまで来ています」

衣笠病院事務部長・古屋修身氏

  ――衣笠病院は2年前の秋から、お産の受け入れを休止していますね。横須賀市内でお産の件数が多い病院だっただけに、受け入れ休止は県内でも、かなり注目されました。

  「病院では年間1千件近いお産を扱っていた時期もあり、お産は病院にとっての看板でした。休止はつらい選択で、地域の人に迷惑をかけていると思います」

  ――休止に追い込まれた理由を教えてください。

  「4人いた常勤医が、大学病院の引き上げや退職で1人になり、とてもお産をこなせなくなったからです」

  ――再開のめどはあるのでしょうか。

  「産婦人科の医師が来たら、いつでも再開するという姿勢を見せるため、いまも産科病棟は他の診療科に転用せずに残してあります。お産を扱わない時期が長く続くと、地域の人から『あの病院はもういい』ということになりかねない。それでは、地域医療の第一線を担うべき民間病院の役割がなくなってしまいます。ただ、再開のめどはついていません」

  ――産科医は、まったく集まらないのですか。

  「お産を再開するには4人の医師が必要だと考えています。40代後半から50代の医師数人が協力したいと申し出てくれていますが、4人にはまだ足りません。休止の期間が長くなると、再開は余計に難しくなります。もう1年半、休止の状態が続いているので、この半年で、再開できるかどうかを見極めたいと考えています」

  ―― 一時的に4人の医師がそろったとしても、医師がまた辞めれば、再び休止に追い込まれることになりませんか。安定して産科診療を続けるにはどうしたらいいのでしょうか。

  「若い医師が来てくれないと、人数がそろって再開できたとしても、いずれ続けられなくなります。一つの生き残りの道は、研修医受け入れ病院の指定を受けることです。実績のある指導医を招き、研修医を受け入れるようにすれば、なんとかなるかもしれません。ただ、すぐに実現できるかというと、現実には厳しいと思います」

  ――半年間で医師がそろわなかった場合、どうするのですか。

  「横須賀市内で産む場所が足りないのであれば、民間病院の責任として、ほかの病院と手を組むことを考えなければいけないと思っています。病院単独で産科をどうするかではなく、地域で解決するという発想です。お産はいつ赤ちゃんが生まれるかという時間との戦いです。近くに病院があることに意味があります。衣笠病院を拠点に、医師や助産師を集め、輪番制でお産を扱うというような形態ができないか、ほかの民間病院に積極的に提案したい」

  ――ところで、お産の休止は病院の経営にも響いているのでしょうか。

  「お産は病院の入院収入の約10%を占めていました。それがなくなったことは経営上マイナスです。横須賀では『お産の衣笠』という評判をいただいていたのですが、そのイメージが失われ、看護職の募集にも影響が出ています」

東海大学医学部産婦人科学教授 ・三上幹男氏

  ――東海大医学部は、松田町の足柄上病院に4月から非常勤で医師を派遣していますね。

  「県から、地域医療をなんとか維持したいと頼まれ、医師の派遣を決めました。常勤医は不可能だったので、現在週に3~4日、日勤と夜間当直、オンコールの非常勤医師を派遣しています。私も含め、スタッフ14人が順番で回っています。しかし、大学病院の勤務をこなしながらなので、大学病院の当直を終えてから足柄上病院に向かう、なんてこともしばしばです。体力的にも精神的にも厳しい状態です」

  ――大学病院も含め、地域の中核となる病院の産婦人科医師不足は深刻です。

  「東海大学でも今年、産婦人科に入局したのは、新人医師60人中たったの1人です。昨年までは付属病院以外に6カ所の病院に常勤医を派遣していましたが、マンパワーが足りず、現在は4カ所、来年には3カ所に減らす予定です。大変なのはうちだけではありません。他の中核病院でも、医師が減って、周産期救急医療システムの指定病院を辞退したいと言うところも出ています」

  ――厚生労働省は、医師の集約化を解決策に挙げています。

  「どう集約するというのでしょうか。具体性がぜんぜんありません。例えば、足柄上病院のある県西部をとっても、県立病院もあれば個人病院もある。経営母体もルールも違う人たちが、どうやってどこに集まるというのでしょうか。国がお金を出し、分娩センターを作って医師を集める、ということでもしない限り無理でしょう」

  ――助産師の力を積極的に活用すべきだという意見もあります。

  「良いことだと思います。ただ、妊婦の状態がひどくなってから、なんとかしてくれと病院に送られてきても、処置が難しいときもあります。実際、もう少し早く搬送してくれたら母子とも何とかなったのにというケースもあります。ほとんどのお産が正常だから、赤ちゃんは元気に生まれてきて当たり前、もっと助産師を活用しようというだけでは安易すぎます」

  ――県は実態調査をようやく始めました。お産の場を減らさないために、行政に何を期待しますか。

  「過酷な労働に見合った対価がきちんと支払われるための金銭的なバックアップや、訴訟による医師の負担を減らすための保障制度の確立です。給与体系はどの診療科も一緒です。当直もなく、きちんと休みが取れる科がある一方で、産婦人科は36時間勤務が当たり前で、休日も呼び出される。給料が同じであれば、誰も産婦人科を選びませんよ」

  ――医師の確保が必須ということですね。

  「そうです。産婦人科は、女性のダイナミックな体の変化を一生にわたってサポートできる仕事です。大学の講義や実習では、いかにやりがいのある仕事かをアピールし、医学生に産婦人科を選んでもらう努力をしています。ですが、医師不足が解消されない限り、お産の未来は暗いと思います」

参考:

衆議院厚生労働委員会 奥田美加先生発言

朝日新聞/神奈川: どこで産むの?

朝日新聞/神奈川:自治体 危機感薄く

朝日新聞/神奈川:近所の医院も分娩受けず

読売新聞: “お産難民”深刻に


北海道の産科医不足の状況

2006年06月26日 | 地域周産期医療

****** コメント

広い北海道で、地元の自治体では出産できなくて札幌や旭川など近郊の都市に出向いて出産する例が増えているとの調査報告である。北海道では、一番近くの産科施設が百km以上遠方ということも決して珍しくはないらしい。また、道内でも都市部に産婦人科医が集中し、都市部以外の産科医の職場環境が非常に過酷な状況にあるため、一部の地域で産科施設の集約化が先行して実施された(例:砂川市立病院)。今後、道と道内3医大が協力して、産科施設の集約化を全道的に推進してゆく方針とのことである。

****** 北海道新聞、2006年06月14日

産婦人科医いない、施設ない…自治体の8割「出産ゼロ」 04年、道が初調査  

 道内で、地元で出産した女性が一年間に一人もいなかった自治体が、二○○四年に全市町村の八割近い百五十七に上ったことが十三日、道の初の調査で分かった。道は、産婦人科医がいない、出産設備がないなどの理由で、地方に住む女性が札幌や旭川など近郊の都市に出向いて出産する例が増えている実態が裏付けられた、としている。

 調査は今年二月、○四年に提出された出生届を基に実施。市の保健所を持つ札幌、旭川、函館、小樽を除く二百市町村(○五年九月現在)を対象に、その市町村在住の女性が出生届に記入した出産場所を確認した。

 この結果、出産が一件でもあったのは、夕張、歌志内、北広島、登別の四市を除く二十六市と、日高管内浦河町、留萌管内羽幌町、桧山管内江差町など十七町。残る百三十の町は出産件数がゼロで、二十三ある村でも皆無だった。

 このうち、上川中部の八町ではいずれも出産例がなく、出生届を出した居住女性の93・7%が旭川市内で出産していた。渡島南部の九町も同様に女性の92・6%が函館市で出産していた。

 また、札幌市には少なくとも九十二市町村から出産に訪れ、旭川市にも五十一市町村の女性が出向いており、出産の「都市集中」傾向が顕著に表れた。

 これについて、道は産婦人科医の減少で地方が出産体制を整備できなくなっているためと分析。○四年以降もこの状況は進んでいると見ている。

 道内の産婦人科医数は○二年度に四百十三人だったが、○四年度には三百六十六人に減少。このうち札幌には百五十四人が集中していた。このため、地方の産婦人科医の負担は大きく、道保健福祉部は「過酷な勤務状況がさらに地方での産婦人科医不在を生んでいる」と分析している。

 国は昨年十二月、全国的な産婦人科医不足を踏まえて、医師の集約化を進める方針を打ち出した。近隣市町村が協力して複数の医師による安全な出産体制を整えていく内容で、道もこの方針に従い本年度中に集約化を具体化していく考えだ。

****** 朝日新聞、2006年05月14日

産科医不足 中空知で集約化先行

■ 3医大 全道で拡大検討

 産婦人科医不足は、道内でも深刻な問題だ。手近な病院での出産が不可能になった地域もあり、人口減少や少子化に拍車がかかりかねない。医師たちも疲れている。その打開策として、中空知地方では産婦人科医の「集約化」が実施された。道や北海道大、札幌医大、旭川医大の道内3医大は、集約化の試みを全道に広げようと検討を始めている。
 (報道部・若松聡、須藤大輔)

 ■ 身重で運転「へとへと」

 昨年末、滝川市の女性(37)は隣接する砂川市の市立病院で女の子を産んだ。砂川までは車で約20分。公共交通機関の便が悪く、自ら冬道を運転して通院した。地元の病院は車で5分だった。

 「(集約化で)砂川の病院はとても込み、通院は一日仕事で、帰ってくるとへとへと。地元に病院があった方が安心なのですが」と女性は言う。

 中空知では04年9月、北大の産婦人科医局が集約化を実現した。滝川・美唄両市の市立病院に1~2人ずつ派遣していた医師を、砂川に集めて4人態勢とした。滝川と美唄には週3日ずつ医師を派遣して外来診察をするが、出産や手術は砂川でしかできなくなった。

 集約化の背景には、産婦人科医の過酷さがある。病院に医師一人の場合、赤ちゃんはいつ生まれるかわからないため、24時間待機を迫られる。2年前に始まった臨床研修制度も影響した。研修の2年間は新たな医者の供給がストップ、「地方の公立病院への供給源」である大学医局の医師不足が決定的になった。

 研修の過程で過酷さを知った研修医たちも産婦人科を敬遠した。道内3医大では、臨床研修制度の導入前は年間15人ほどが産婦人科医局に入ったが、今春は3医大で計5人だけだった。

 医師を引き揚げられた病院は、経営に大きな打撃を受けた。滝川市立病院では、収益の大きな柱だった出産に伴う入院がなくなり、産婦人科の外来患者も半数以下に激減。病院事業会計は、03年度の1億3千万円の黒字から、04年度は約9千万円の赤字に転落した。

 住民の間には地元で出産できないことへの不満や不安が根強い。自治体側は医局に頼らず自前で医師確保に乗り出したが、来てくれる医師は見つかっていない。道によると、道内の産婦人科医は96年の421人から04年は362人に減り「現時点ではさらに減っているのは確実」という。

 産婦人科医数の減少を防ぐ特効薬が見つからないなか、道は3医大と協議し、道内他地域での集約化も検討中だ。また、来年度中に08年から10年間の「道医療計画」を策定し、医師の配置計画を策定する考えだ。

 だが、道子ども未来推進局は「医師配置の権限は道にはない。3医大や医師会と相談し、道民のニーズにも応える方策を探るしかない」と話す。

 また、集約化を進めた場合、交通手段をどうするかも大きな問題だ。中空知は比較的車での移動時間が短く、集約しやすい地域だったが、道東などで実現する場合は課題は多い。

 ■ 北大・櫻木教授に聞く
  ――医師の生活・医療レベル向上

 中空知での集約化を中心になって進めた北大産婦人科医局の1人、櫻木範明教授に聞いた。

                           ◇

 1人勤務の病院に医師を派遣するのは好ましくない。昼夜を分かたぬ過酷な労働条件で訴訟などの全責任を負わせると、医学生や新卒医師たちは産婦人科を敬遠し、ますます産婦人科医が少なくなる。この悪循環を断ち切らなくてはならない。

 集約化した中空知で、医師たちの評判はいい。学会や研修会に参加できるようになっただけでなく、冠婚葬祭や家庭人としての責任も果たせるようになった、と。

 また札幌まで行かなくても子宮がん手術や不妊治療など高度医療に対応できるようになった。医療レベルは上がった。

 産婦人科医はあらゆる地域に必要だ。絶対数があれば各自治体に配置すればよいが、そうではない。医師数が増加に転じるまでの間、現在の不十分な医師数で、いかに地域の産婦人科医療を守っていくか知恵を出し合わなくてはならない。

 広域な道内では、すべての地域で中空知同様の集約化が出来るとは思わないが、分娩(ぶんべん)も出来る「連携病院」を置くなど様々な集約化の形が考えられる。地域の理解を得ながら、今後、数年間のうちには他地域での集約化も考えたい。

参考:
産科医集約(北海道・砂川市立病院の例)

読売新聞:[解説]産科医減少 対策は


お産の場どう確保

2006年06月25日 | 地域周産期医療

中核病院産婦人科の勤務医は、産科診療だけではなく、婦人科悪性腫瘍の高度な手術や化学療法、末期がん患者の緩和ケアなども実施している。良性婦人科疾患の内視鏡手術なども多数行っている。体外受精などの不妊症治療も行っている。

施設を「集約化」すれば、分娩件数は少なくとも年間千数百件にはなるだろうし、同時に婦人科の手術件数も年間数百件に及ぶことだろう。

「集約化」後の1施設あたりの産婦人科医数の目標が5人程度ではあまりに中途半端すぎて、「集約化」前よりもはるかに激務となってしまうことも予想され、職場環境が改善されるとはとても思えない。職場環境が改善されない限り、産科医減少に歯止めはかけられないし、新人も入って来ない。

やはり、日本産科婦人科学会の医療供給体制検討委員会が提唱しているように、「集約化」後の中核病院は産婦人科医10人以上の体制を目標にすべきと思われる

****** 朝日新聞、2006年6月20日

減る産科医「職場環境の改善」急務に

 お産を扱う医師と病院・診療所の減少が止まらない。過酷な勤務と訴訟の多さから敬遠され、医師不足が労働環境をさらに厳しくする悪循環が断ち切れないのだ。妊娠中に病院が閉鎖されるなど、産む場所を求めてさまよう「出産難民」も増え続けている。深刻度を深めるお産の場の危機。赤ちゃんが生まれる場をどう確保し、育てていけるのだろうか。(阿久沢悦子、龍沢正之、山内深紗子)

施設の「集約化」推進へ

 お産ができる施設は全国に3063ヶ所、医師は7985人。日本産科婦人科学会が14日、初めてまとめた周産期医療の全国調査は、産科医が予想を超えて減っていることを明らかにした。常勤医師数は1施設あたり平均2.45人、医局員が多い大学病院を除くと1.74人と2人を切る。

 筑波大学の吉川裕之教授(産婦人科)は「予想外に厳しい数字。今年2月、福島県で1人で産科を担っていた医師が業務上過失致死の疑いで逮捕された影響で一人医長は激減するだろう。すっぱり産科をやめるか、複数の産科医を確保して続けるか、病院の対応が二極化している」とみる。

 今後10年間で、産科医の4分の1を占める60歳以上の多くが退職、30歳未満の6割を占める女性医師が結婚や出産に直面する。状況は厳しい。

医師10人以上

 少ない医師数で産科医療をどう切り回してゆくか。吉川教授が委員を務める同学会の医療供給体制検討委員会は4月、中間報告をまとめ、安全性確保のために、分娩施設の「集約化」を提唱した。その新しい周産期医療体制の将来像は、産科医療圏ごとに、産科医10人以上を集めた24時間救急対応の中核的病院を置き、地域病院や診療所と役割分担・連携する。急変時、30分以内に帝王切開が可能な体制が原則だ。

 厚生労働省も基本的には同じ考え方で、集約先の病院には「5人以上の産科医」としている。同省は都道府県に対し、今年度中に集約化計画をつくるよう求めている。14日改正されたばかりの医療法でも「地域の実情に応じた医療供給体制・連携体制」を定めるのは都道府県の責務とした。

 集約化は、産科医を現場につなぎとめる「職場環境の改善」面でも期待されている。1施設あたりの産科医数が増えれば、当直や待機日数が減るし、麻酔科などの支援体制も整い、訴訟リスクも減らせるからだ。

(以下略)

(朝日新聞、2006年6月20日)


人口35万人の中核市・いわきの医療体制

2006年06月25日 | 地域周産期医療

**** いわきBiweekly Review、日々の新聞 第76号

病診連携を進めるのが理想 いわきの産婦人科医の減少

 医師不足。そのなかでも産婦人科医は全国的に深刻で、くらしている地域で出産ができないところも出てきている。いわき市内では共立病院の産婦人科医が4月から1人減って3人になり、8月には福島労災病院の産婦人科がなくなる。産婦人科医をとりまく状況、いわきの現状、そこでの共立病院の役割など、共立病院産婦人科部長の土岐利彦さんに聞いた。

いわき市立総合磐城共立病院 産婦人科部長 土岐利彦さん

 10年前、いわきで出産できる病院は共立、労災、松村、呉羽の4つ、それに診療所が12あった。いま病院は3つ、診療所は6つに半減している。しかし、分娩数は半減していない。8月には労災の産婦人科がなくなるから、病院は共立と松村だけになる。茨城県北部でも北茨城病院が外来だけになったり、出産を扱っているのは助産院を含めて3つだけ。
 共立病院は4月から医師が1人減って3人。3年前は比較的多くて6人いたが、それと比べると半減している。昨年の分娩数は649件、そのうち双胎分娩が29件。双胎分娩はほぼすべて共立で診ている。帝王切開は242件。それに婦人科の手術を193件した。
 関西だと医師の数が多いので、これだけの件数をやるのなら医師は2桁になる。最低でも8、9人。それを4人でやってきた。1人が160件ほどの分娩。以前は医師1人で200から300の結構な数をやったが、産科は突出して訴訟問題が増えた。分娩数は減っているが、1人1人への説明、それに手続きが面倒になった。
 医師が3人になって大変だろうと、4月から、1カ月に30件の出産制限を始めた。誤解されているようだが、正常分娩の人の予約も受け付けている。予約がいっぱいになっても、前回のお産で帝王切開だったとか、救急で来たりと、すべて引き受けているので、月50件ほどになりそう。
 4月、5月の分娩がものすごく多く、一時的かもしれないが、いまのペースでいくと年間600件。制限した意味はない。この状況が続くと、正常な経過の人の分娩は開業している診療所でという形になるしかない。
 産婦人科医の不足はやむを得ない。これからも増える要素は見られない。医師の研修期間中は産婦人科も好評だが、実際には専攻するまでにはいかない。産婦人科は夜中に呼び出しが多い。それに、若者は対人関係のトラブルを嫌う。どうしたらリスクを回避できるかと考えても、産婦人科は敬遠される。
 医師の派遣はほとんど大学頼り。その大学にいま医師が残らず、減り、関連病院への派遣は難しい。産婦人科、小児科、麻酔科は派遣しようにも入局者が減っている。
 共立の場合、NICU(新生児集中治療室)、麻酔科、放射線科など、いろんな科の医師が協力して診療できる。高度診療、ハイリスクの妊婦の管理・出産、産科の救急、婦人科の悪性腫瘍など、病院でなければできないことを担う。正常経過の人の診療や分娩は診療所が受け持つ。そういう役割分担、病診連携をもう少し進めるのが理想だと思う。
 患者さんのなかには、共立でなければダメという人がいるが、一次救急は診療所でやってくれればと思う。夜間や休日の一次救急が負担になっている。日によっては夜間に2回ぐらい起こされ、2、3時間しか寝ないで翌日の大きな手術をすることもある。
 以前はそれで通ったとしても、いま世の中の目が厳しくなっている。無理をすれば、危機管理が難しくなる。本当に困った患者さんが来た時、対応ができなくなる。
 いま「どこで産もうか」と病院や診療所を選べる時代ではない。今後、どうなるか予断は許さないが、当面 、いわき市民分の出産は何とかなる。しかし、里帰り出産は難しい。

****** 福島民報、2006年6月24日
http://www.fukushima-minpo.co.jp/news/kennai/20060624/ronsetu.html

大丈夫か、いわきの医療体制

 人口35万人の中核市・いわきの医療体制が揺らいでいる。8月から福島労災病院が医師不足で産婦人科を休診するのをはじめ、産科、小児科を中心に病院勤務医が減少し、市民が抱く心配が現実のものとなりつつある。市では県に対し市立の2病院への医師派遣を要請していたが、1人も認められなかった。現在進めている市立病院改革の根幹にかかわる医師確保が進まなければ、地域医療全体に及ぼす影響は計り知れない。1日も早い改善策が待たれる。

 福島労災病院ではこれまで、3人の常勤医師が診療に当たってきた。今年1月、医師を派遣していた福岡県内の医科大学の意向で引き揚げが決まり、以後、新規の患者を受け付けていない。4月からは2人体制で診療を行ってきたが、残った2人も8月で退職するため、休診を余儀なくされた。医師の確保と診療再開のめどは立っていない。

 医師不足は6月定例市議会でも取り上げられた。5月末現在、市内の医療機関で産科または婦人科があるのは19施設で、平成7年と比べ4施設減った。この中で、分べん可能な医療機関は病院3施設、診療所8施設、助産所2カ所。出生数は減少傾向にあるものの、それを上回るペースで施設、医師が減少しているのが現実である。年間約300件の分べんを扱っている福島労災病院が産婦人科を休診する影響は決して小さくない。

 小児科についても厳しい現実が見える。4月末現在で市内の病院に勤務する常勤医師は11人で、平成14年に比べ7人減少した。市内で小児科診療を行う医師の数はほぼ横ばいだが、病院勤務医の減少で市立病院も午後からの急患診療は原則、紹介状持参か救急車で搬送された場合に限られる事態になっている。重症患者については須賀川市の国立病院機構か、仙台市の病院に運ぶケースも出ているという。

 地方の勤務医が減っている現象については、臨床研修制度の義務化で大学医局に在籍する医師が減っているのに加え、医師の多くが東京など都市部での勤務を希望しており、産科や小児科など特定の診療科を希望する医師が減少していることが背景にあるといわれる。特に国が臨床研修制度を義務化して以来、勤務医の減少に拍車がかかった―と指摘する医療関係者は多い。

 市内で病院を経営するある医師は「産科、小児科に限らず脳外科、呼吸器内科なども専門医不足は深刻。臨床研修制度が見直されない限り、県に医師派遣を要請しても期待は薄い」と語る。

 いわき市は現在、総合磐城共立、常磐の2つの市立病院改革に向け市長を本部長とする推進本部を立ち上げ、運営全般の見直しに着手しているが、最優先課題は医師の確保をおいてあるまい。救急医療も担う基幹病院が充実してこその安全・安心のマチづくりだろう。厳しい情勢を承知の上で、市民ぐるみで知恵を出さなければいけない時期にきたと考える。医療関係者に限定せず幅広い意見を集約して改善策を模索してほしい。35万を超す人が住む中核市であり、双葉地方、茨城県北部までカバーする医療ネットワークが一部とはいえ、破たんをきたすことは許されない。(倉島 隆)

****** 福島民友新聞、2006年6月8日

産科医不足/集約化も現実的な選択では

 県内では産科医不足がより進みそうな状況だ。いわき市の総合磐城共立病院が産婦人科医の減少で新たな自然分娩(ぶんべん)を引き受けないことを表明。同市の福島労災病院でも医師2人の退職で八月から産婦人科を休診することにした。

 磐城共立病院は医師が1人減って3人になり、負担が増えたために、リスクの高い妊婦のみを診療することにしたためだ。福島労災病院では4月から1人減って2人になっていたが、その医師が退職する。

 両病院では合わせて年間約700件のお産を扱っていた。この分をどうするのかが、市や医師会、そして市民にとって差し迫った問題だ。

 公立小野町地方綜合病院では産婦人科などで常勤医がいなくなったことなどが響き、運営資金不足となった。運営母体の構成市町村がその分を負担する方向で急場をしのぎそうだが、同じような問題を抱えるほかの公立病院もある。

 産科医不足は小児科医とともに全国的な傾向だ。拘束時間が長く、訴訟も多い勤務医を嫌い、開業する医師も目立つ。一方で高齢化も進む。

 新しい研修制度も拍車をかける。卒業後2年間の臨床研修のあと、大学の医局に残らない医師が増え、医局がその分、派遣病院から医師を引き揚げるからだ。医師不在の診療科は休診を迫られる。

 厚生労働省が2年ごとに12月末現在で行う調査では、2004(平成16)年の全国の産婦人科医は1万163人で02年より455人も減った。本県では153人で2年前よりも11人減。いわき、県北、会津で減少が目立つ。

 県内では1年間に約1万8千件の出産がある。病院と開業医でおよそ半数ずつだ。一人医長がお産を扱ったり、非常勤医が外来を担当してかろうじて運営している病院もある。

 しかし、医師確保に決め手はない。長期的には産婦人科医の診療報酬アップなども考えられるが、さしあたり、現状を踏まえてどう新たな対策を立てるかだ。国や産婦人科の学会では拠点病院への医師の集約化を打ち出しており、現実味を持つ。

 病院に勤務する産科医や小児科医を公立病院を中心とした拠点病院に複数集め、24時間体制の高度な医療を整えようというのが目的だ。

 実現までにはいくつかの問題が浮かぶ。拠点病院までの通院時間や手段などだ。短時間に搬送が必要な緊急事態への対処もある。医師がいなくなる病院では経営的な支障も考えられよう。また、拠点病院には麻酔科医や外科医も必要だ。

 安心して産める環境がなければ、少子化の解決にもならない。県、医大、地域が医師集約化に伴う問題を十分に話し合い、納得したうえで、実現できる地域から着手していくのが現実的な選択ではないか。

******

参考:産科医不足、地方で不足深刻


産科医不足、地方で不足深刻

2006年06月24日 | 地域周産期医療

今まで日本では、妊産婦の病院へのアクセスの利便性が最優先されて、少ない産婦人科医が多くの病院に分散して配置され、非常に不十分な体制で分娩が取り扱われてきました。

日本でも、もはや今までのような不十分な体制では分娩は取り扱えない社会的状況となってきました。

現状のまま放置すれば、産婦人科常勤医数1~2名の産婦人科はどんどん閉鎖され、中核病院の産婦人科がますます激務となって勤務医達が耐え切れずに辞めていって科の存続も困難となり、状況は今後ますます悪化するばかりでしょう。

行政側の誘導で、現状の病院数を大幅に減らし、産婦人科医を再配置(集約化)する必要があると多くの人が考えています。

****** 読売新聞、2006年6月24日

常勤医2人以下の産科病院38%、地方で不足深刻

 出産を取り扱っている病院のうちの4割近くが、常勤産科医が2人以下という貧弱な態勢で運営されている実態が24日、日本産科婦人科学会(武谷雄二理事長)の調査で明らかになった。

 特に、常勤医不足の病院は、東京、大阪、愛知などの大都市圏を除く地方に目立った。出産の安全確保のため、同学会では、地域の拠点病院に産科医を重点的に集める必要性を訴えてきたが、産科医不足が足かせとなり、地方では、こうした集約化さえ進まない現実が浮き彫りになった形だ。

(以下略)

(読売新聞より引用)


日医が「分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度」の制度化に関するプロジェクト委員会を設置

2006年06月22日 | 出産・育児

****** コメント

脳性麻痺は、一定頻度で発生し、遺伝的要因、脳奇形、脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)、中枢神経感染症(胎内でのサイトメガロウイルス感染症、ヘルペス感染症など)、分娩時低酸素症など、非常に幅広い原因があり、原因不明の場合も多くあります。

しかし、我が国においては、脳性麻痺の原因が不明の場合や分娩時の病院側の対応に特に問題がなかったような場合であっても、裁判では医師側に過失があったとされる場合が少なくありません。

これは、医師側に過失があったことにしないと、患者側が一切救済されないという現行制度にも起因していると考えられます。無過失補償制度を、我が国においても早急に導入する必要があると思われます。

****** 日医白クマ通信、2006年6月21日

定例記者会見
日医が「分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度」の制度化に関するプロジェクト委員会を設置

 木下勝之常任理事は、6月20日の記者会見で、日医が、「分娩に関連する脳性麻痺に対する障害補償制度」の制度化に関するプロジェクト委員会を設置したことを明らかにした。

 木下常任理事は、まず、世界的には、ニュージーランド・スウェーデンなどの無過失補償制度実施国があるものの、わが国の医賠責保険制度では、事故が起きたとき、医師が“有責”の場合のみ保険適用となり、医師に責任のない“無責”のケースでは、障害・死亡ともに賠償金は一切受け取れないのが現状であると説明。そこで、日医では、障害者救済の視点から、すでに、「医療に伴い発生する障害補償制度検討委員会(プロジェクト)」で検討、本年1月、「医療に伴い発生する障害補償制度の創設をめざして」という答申をまとめた。これを受けて、今回、答申のなかで、現在、最も問題になっている「分娩に伴って生ずる脳性麻痺」に対する補償制度の実現を図る目的で、プロジェクト委員会を立ち上げたもの。木下常任理事は、来年の通常国会への提出を目指し、今後、対象・補償額・基金・制度運用方法等、具体的な制度の内容を詰め、7月末を目途に結論をまとめて、国に働き掛けていきたいとの考えを示した。

 木下常任理事は、「この制度化は、障害者救済を第一に考えたものだが、ひいては、(1)医師患者間の信頼関係構築、(2)少子化対策、(3)患者さんの経済的・精神的負担の軽減、(4)減少する産婦人科医への支援等にもなるので、国の社会保障制度の一環と考えて欲しい」と述べ、実現へ向けての協力を報道各社にも要請した。


婦人公論:産科が病院から消える日

2006年06月21日 | 地域周産期医療

****** コメント

元朝日新聞記者(烏賀陽弘道さん)の産科医療の現状分析である。今後の方策を考える上で、一般の人達に現状を正確に知っていただくことは非常に重要なことだと思う。事ここまでに至れば、当面の方策としては、産科医療を徹底的に集約化してゆく以外に道はないように思われる。根本的には、産科医が増えないことには解決できないが、現状では産科医を増やすのは容易なことではない。厚生労働省や日本産科婦人科学会が産科医を増やすための今後の方策をいろいろと公表してはいるが、この問題の解決には、たとえうまくいったとしても、非常に長い時間(十年以上!)を要することは間違いない。

****** うがやジャーナル、

烏賀陽(うがや)弘道

「婦人公論」06年4月22日号掲載

産科が病院から消える日

ルポ 妊婦の悲鳴を聞け~激務と訴訟リスクで医師激減

隣県までの通院も珍しいことでなくなり、移動中の車内で分娩してしまった例もあると言う。安心して出産できる街はどこにあるのか。少子化の進む今、さまよう出産難民と、崩壊する産科の現状を追った。

●3日に1回の宿直

「十年ほど前なら、50歳を超えて部長にでもなれば、当直勤務はやらなくてもよかったんですが……産婦人科だけはそうも言ってられなくなったんです。私の年齢なら当直の回数は減ったものなのに、今は逆に増えている。他にこんな診療科目ありませんよ」

 そう言って苦笑する埼玉県・川口市立医療センターの栃木武一・産婦人科部長は、58歳。同センターの診療局長でもある栃木部長自身が、月に6回、つまり5日に一回は病院に泊まり込む宿直勤務をこなしている。他の診療科目、たとえば外科系なら、泊まりはせいぜい月3回程度である。

 しかも、当直が明けても、休めない。そのまま続けて翌日の勤務に突入、外来患者の診察や手術をこなす。そうしないとシフトが回らないくらい、産科の医師が足りないのだ。

 常勤の産婦人科医は4人しかいない。他は、栃木部長が講師を勤める日本大学医学部系の病院から、若手医師の応援をもらい、さらにセンターの近くで開業する医師にもシフトに入ってもらって、ようやく6人体制で当直を回している。本来は産婦人科医2人が常時当直している体制が理想だが、現実はほど遠い。

 断っておくが、これは過疎地の話ではない。また零細病院の話でもない。川口市は荒川を隔てて東京都の北側に隣接する人口47万人の大都市であり、同医療センターは17の診療科目に約90人の医師と539のベッドを抱える。埼玉県南東部の人口約70万人をカバーする、中核的な大規模医療施設なのだ。

 年間の分娩数は約800件にものぼる。当然、医師の負担は重くなる。

 例えば、医師になって4年目の男性医師(31)の場合――。朝8時に出勤し、9時から外来患者を診察。昼食を取る時間はまずない。が、それも当たり前になってしまった。午後は入院患者の診察のほか、週4日の手術日がある。午後5時から翌朝9時までは「宿直」の時間帯だが、担当患者はぽんと引き継ぐのもなかなか難しい。診察や手術が長引くと、帰宅が午前3時ごろになることも稀ではないという。

 それに加えて、前述の泊まり勤務が月6回なのである。さらに「オン・コール」と呼ばれる「自宅待機」は「1週間くらいの夏休みと、年末年始2,3日を除いて年中ずっと」だそうだ。この「オン・コール」からの夜間呼び出しも、平均して週に2回はあるというから過酷である。こうした緊急事態に備えて「自宅は病院から1時間以内」と決められている。

 日大系病院から応援に来ている女性医師(29)の場合は、川口での宿直に加えて元々の職場での宿直もあるので、泊まりは月10回。つまり3日に一回である。月15回というときもあって、さすがにそのときは「病院に住んでいるようなものか」と苦笑したそうだ。「最近は慣れました」とはいえ、働き始めたころは、あまりの体力的な過酷さに半年ほど生理が止まったという。

「泊まり明けの勤務、正直言って眠いです」。

 医師のひとりはそう言う。

「10分でも15分でも横になって眠りたいんですが、できない。机に突っ伏して眠れればラッキー」

「こんな状態では(産婦人科に)若い医師が来ない。このまま放置すれば、うちも閉鎖になりかねないですよ。そうしたら一体どうするんですか」

 栃木部長が危機感をつのらせるのには理由がある。現実に、医師の数が足りず、産婦人科の閉鎖に追い込まれる病院が全国各地で急増しているからだ。

●新幹線の駅はあるのに 

 同じ埼玉県の草加市にある草加市立病院は、05年3月から分娩の受け付け休止に追い込まれた。当初医師5人で発足したが、1人が個人的理由で退職、1人が体調不良で長期療養に。残る3人でかろうじて持ちこたえていたが、分娩数が月50件程度から60~70に増加したため、「医療事故が起きてからでは遅い」と市が分娩の受け付け休止を決めた。

 23万人の草加市民にすれば、税金を払っている自分の街の市立病院でお産ができない。お産のために市外に出かけなくてはならない。おかしな事態である。市長や病院長があちこちの医大や医療法人に医師の派遣を働きかけたが、どこにも「産婦人科医の絶対数が足りない」と断られた。とうとう、市議会で問題になった。05年6月、同市議会は「臨月を迎えた妊婦を含む患者400人が転院を余儀なくされ、約1億7550万円の損失が生じた」として「木下博信市長の反省を求める決議」を全会一致で可決した。

 草加市も、川口市と同じように東京都に隣接するベッドタウンである。銀座から直通電車で40分しかかからない。医師不足から産科が閉鎖され、お産をする場所が消える「産科崩壊」は首都圏にまで忍び寄っているのだ。

 首都圏ですらこのありさまなのだから、非都市部の事態はもっと悪い。

 青森県十和田市では、クリーニング取次店を経営する日野口泰子さん(61)ら約10人の主婦たちが、スーパーの店頭や幼稚園・保育園などを回り、産科医の確保を求める署名を集め、同市に提出した。地元の十和田市立中央病院が05年春に産科を閉鎖してしまったからである。市内の妊婦は、産前検診や出産のため、車で片道1時間近くかけて八戸市や三沢市まで出かけていかなくてはならなくなった。隣の岩手県まで出かけて出産した人もいる、という。

 署名を始めたきっかけは、日野口さんの店先に集まる主婦たちの井戸端会議だったという。これまでに約1800人分の署名を集めた。日野口さんには、28歳になる息子が難産のすえ生まれたとき、死なずに済んだのは産科の病院があったおかげだという思いがある。

「(検診に行く)妊婦の負担は『きつい』なんてもんじゃないですよ。もう私は生まないけれど、若い人の不安は半端じゃない。人口の半分は女なのに、地域の中核病院の産科がもぬけの空なんて、どう考えてもおかしいじゃないですか」

 隣の岩手県でも事情は似たようなものだ。花巻市、遠野市、旧江刺市(現奥州市)などの地域中核病院で、産科の閉鎖が相次いでいるからだ。

「分娩場所を失った地域住民が分娩をするためには車で1時間、2時間もかかる最寄りの医療機関に行かざるを得ない。このため陣痛発来で移動中の車の中で分娩をしてしまった例や、胎動感の消失・出血など自己の体調不良があっても、遠方のため受診を躊躇し治療時期を逸してしまった例が相次いでいる」(岩手県医師会『いわて医報』05年10月号)

 皮肉なことに、花巻市や旧江刺市には東北新幹線の駅がある。新幹線の駅はあるのに、お産をする病院がない。何ともアンバランスな状態なのだ。

 こうした事態を受けて、岩手県は中国・瀋陽市の中国医科大から産婦人科の中国人医師を岩手医大に受け入れることを検討中だ(05年4月23日付朝日新聞)。診療経験や日本語の会話能力など、一定の基準を満たした外国人医師が指定病院で研修できる「臨床修練制度」を利用することにしている。制度そのものは88年からあるが、人手不足を補うために行政がこの制度を利用することは非常に珍しい。

 こうした医師不足のあおりを真っ先に食らうのは、言うまでもなく妊婦たちである。産科医がいなくなった地域からは、悲鳴に近い声が聞こえる。

「青森県は雪国です。雪の時期、妊婦が車で検診・出産に行くのはどれだけ負担になるか、考えたことはあるのでしょうか? 1人目を育児しながら遠方に行けというのでしょうか? いろいろ考えて、私は2人目をあきらめました。私の周りにはそういう方が多いです」(『東奥日報』ウエブ版に寄せられた30代主婦の投書)

 都会暮らしであっても、地方出身の女性にとっては、親元に戻っての「里帰り出産」は実現不可能な行為になりつつある。岐阜県高山市の高山赤十字病院のように、里帰り出産を受けつけない病院が多くなっているからだ。同院の場合、常勤医3人で年630例の分娩を扱うという過重労働状態が続いたため、約3割を占める里帰り出産を制限せざるをえなくなった。

●仕事量は救急救命医以上

 それでは産婦人科の医師は実際にどのくらい減っているのだろうか。

 日本には約26万人の医師がいる。1975年の12万6000人に比べると、約30年間でほぼ倍に増えた計算である。循環器科(2・65倍)や消化器科(2・21倍)などは医師数の増加が目立つ。ところが、産婦人科だけは0・92倍と、逆に減少しているのだ(05年9月18日付日本経済新聞)。

 日本産婦人科医会の会員数も、91年の1万3801人をピークに減少に転じ、04年には約1万2450人になった。日本産婦人科学会が毎年新しく認定する「専門医」の数も、99年の364人から04年には271人に減少。つまり新しく産婦人科医になる若い医師が減っている。そのため、日本産婦人科医会員1万2450人のうち約3割が60歳以上と、高齢化が進んでいる。

 その結果、病院はどうなったか。驚くべき数字がある。

 1989年、産婦人科を持つ病院は2166あった。それが、04年には1469と、3分の2に激減しているのだ(医会調べ)。また、05年に日本産婦人科学会が、大学病院に医師の派遣を依頼している全国1096病院を対象に調査したところ、約1割にあたる117施設が、産婦人科医がまったくいなくなるか、いなくなることが確実になっている、という結果が出た。つまり「お産のできる病院」は急速に消えつつあるのだ。

 では、なぜ、産婦人科医は数が減ったのだろうか。

 産婦人科には、大きく分けて三つの専門領域がある。まず、赤ちゃんの分娩を扱う「周産期医療」。いわゆる「産科」のことだ。そして、腫瘍や筋腫を扱う「腫瘍」と、不妊治療を扱う「不妊内分泌」。つまり「婦人科」の領域だ。このうち、医師が宿直勤務をしなくてはいけないような緊急性を要するのは主に「周産期=産科」である。

 言うまでもなく、赤ちゃんは一日24時間のうちいつ生まれてくるかわからない。さらに、赤ちゃんの心音が突然止まってしまったり、母体から大量の出血が起きたりと、出産には「その場になってみないとわからない」予測不可能な危険が常につきまとう。しかも、いったん危険な状態になると、一分二分を争う手当てが必要だ。最悪の場合、母子とも死んでしまうことさえある。問題のない分娩なら医師が1人いれば済むが、緊急の手術にでもなれば、複数の医師がかかわらなくてはならない。もともと「産科」は緊急性が非常に高い診療科目なのだ。

 この「一日24時間いつ呼び出されるかわからない」という仕事の性格が、若い医師に敬遠される原因になった。若い世代の医師は、定時に帰宅できて、夜間に緊急の呼び出しもない眼科や皮膚科といった診療科目の方を好むのだ。

 日本産婦人科医会が01年に実施した「各大学の産婦人科医局員増加対策に関するアンケート調査」によると、89年以降に54大学で産婦人科に入った2783人のうち、437人が内科や眼科、精神科へと転科している。その理由には「仕事がきつい」「忙しすぎる」「当直がつらい」と言った文言が並ぶ。

 産婦人科の業務は、医師全体の業務の約1割を占めるといわれる。ところが、産婦人科の医師数は全体の約5%でしかない。つまり、単純に計算しても2倍の過重負担であることがわかる。例えば、同会の2000年の調査によれば、産婦人科医の当直回数は月平均4・7回で、全診療科のなかで最多。これは「救急関係」の3・1回をも上回る。「外科」2・3回の2倍以上である。「おめでた」というほのぼのとした印象とはうらはらに、産婦人科医は救急救命医以上の激務なのだ。

 もうひとつ、若い医師を産婦人科から遠ざけている原因は、患者が起こす民事訴訟の多さと、その請求金額が非常に大きいことだ。

 04年の「医事関係訴訟事件」の診療科目別の新規受け付け数では、産婦人科は143件。一見、内科(272件)や外科(228件)、整形・形成外科(148件)ほど多くない(最高裁調べ)。ところが、これを医師1人あたりの数に計算し直すと、産婦人科は0.013件で抜きん出て1位になる。内科のほぼ5倍、外科の2倍である。

 しかも、産婦人科を相手取った訴訟の数や請求金額はさらに増える傾向にある。福島県立大野病院で04年12月に起きた、帝王切開手術中に患者の女性が出血性ショックで死亡した事件のように、医師が業務上過失致死容疑で警察に逮捕されてしまう例さえ出ている。

 医療ミスによって新生児が死んだり、何らかの後遺症が残ったことが裁判で認められた場合、その損害賠償金額は、ゼロ歳を起点に就労可能年齢を計算する。母親まで死んだり後遺症が残ったりした場合は、賠償金額も「2人分」になる。産婦人科の訴訟の請求金額が他の診療科目に比べて高い一因はこれである。1億円を超える訴訟も稀ではない。

 その賠償金は保険で支払われるとはいえ、いったん訴訟になれば、ただでさえ疲弊している医師の事務負担はまた増える。「それだけで日常業務が吹き飛んでしまう」と言う医師もいるほどだ。

 産科病院が減った三つ目の原因は、04年から始まった新人医師の「臨床研修制度」である。この制度は、医学部を卒業し、国家試験に合格した新人医師に2年間、全診療科目を回る臨床研修を義務づけている。この新人医師の指導者役として、大学医学部が中堅の医師を出先の病院からいっせいに引き上げ始めたのだ。そのため、ただでさえ減っている産婦人科医がますます一線の病院から姿を消していった。

●苦悩する女性医師たち

 かくして、産科の現場は疲弊し切っている。厚生労働省のアンケート調査によれば、産婦人科医2200人のうち26%が「産科をやめたい」と考えている。 オーバーワークのあげく、産科診療で医療事故を起こしたか、起こしそうになった経験があると答えた医師は、何と53・5%にものぼっている。そんな空恐ろしい数字も出ている。

 こうして労働環境が悪化した結果、皮肉な現象が起きた。女性医師が産科の第一線を退く例が続出しているのである。

 東京都内に住むある女性医師(36)は、29歳のときに外科医の夫と結婚。1年半ほどして妊娠した。そのまま月5回の宿直をこなしつつ病院での勤務を続けていた。が、妊娠4ヶ月目のころ、外来患者を診察している途中、猛烈な動悸と、腹部全体がこむら返りを起こしたような激しい腹痛に襲われ、うずくまったまま動けなくなってしまった。切迫早産の症状だった。

 そのまま、子宮収縮抑制剤の点滴を受けつつ、自分の病院に入院。流産だけは免れたが、その後も出産まで自宅での静養を強いられた。

 その後、産科の現場からは離れた。現在は、都心のオフィス型クリニックで週3日、婦人科の診療だけを担当している。緊急性がないので気は楽だ。が、産科の現場に戻りたいとよく思う。

「どうやって元気な赤ちゃんを取り上げるか、すごく楽しかった。みんな『おめでとう』と言ってくれる世界は産科しかありませんしね。結婚前は喜んで当直にも行っていたものです。仕事は大好きだし、一生懸命やっていた。やりたくないわけじゃないです。一体どうしたらいいのかな」

 外科医の夫も激務で、家事を分担する余裕はない。産科の仕事と家事は、どうしても両立しないのだという。現場をいったん離れると、復帰するのに不安もある。非常勤の勤務を受け入れてくれる病院を探すのも難しい。

「(人手不足なので)妊娠すると上から怒られるんです。スタッフは足りているか、代わりはいるか考えつつ子どもを作らなくてはいけない。個人の人生設計としてはヘンですよね」

 そういう彼女は、自分のような「ママ女医」が非常勤でも勤務できる病院を探してマッチングする派遣会社を作れないかと考えている。

 大阪市近郊で働く女性医師(31)は、勤務先の病院の部長が開業のために辞めてしまい、「2日に1回宿直」という過酷な勤務条件になったのを機に「常勤」から「非常勤」の道を選んだ。非常勤の身分だと、午前中に外来患者を診察するだけでいい。泊まりがないのはもちろん、緊急呼び出しもないし、患者を受け持つこともない。

 結婚して2年半。夫は内科医だ。まだ子どもはいないが、子どもができた場合、常勤の産科医では家庭と両立しないのは目に見えていた。

「今までは生活のすべてが仕事でした。疲れ切ってしまって、他は何もできないんです。とても子どもを育てる環境じゃありません。それに、英会話を習うとか本を読むとか、教養を高めることだってしたかったんです」

 日本産婦人科医会が頭を痛めているのは、いま新しく産婦人科の専門医になる医師の半分以上が女性であることだ。彼女たちが結婚し子どもを持とうとすると、産科から離職してしまい、ますます人手不足に拍車がかかるのではないか。そう案ずるのだ。

 自分も妊娠・出産を経験した女性医師は、妊婦にとっては心強い理解者のはずである。が、現実の医療現場は、女医が妊娠し、子育てをすることを歓迎する環境ではない。何とも皮肉な話である。

(「婦人公論」06年4月22日号掲載)


医学部入試の「地域枠」拡大

2006年06月20日 | 地域医療

****** コメント

将来の地域医療を支えてくれる後継者を養成するために、我々も医学生の臨床実習の指導に全面的に協力している。本音を言えば、将来の専攻科が産婦人科であってくれたら一番うれしいけれど、まあ別に産婦人科志望でなくてもいいから、できることであれば、卒業後に県内に残ってくれると非常にありがたいと思いながらいつも医学生達と接している。出身高校を聞いて、地元の高校の卒業生だとわかると、ついつい指導にも熱が入ってしまう。そういうわけで、医学部入試の「地域枠」拡大に、私は諸手を挙げて賛成する立場だ。できれば枠をもっと広げてほしいと思っている。

****** 朝日新聞、2006年04月28日l

信州大医学部入試、県内推薦枠倍増の10人

 信州大医学部は4月25日、長野県内の高校卒業予定者限定の推薦入試の募集人員を、07年度から現在の5人から10人に増員することを明らかにした。これに伴い、一般入試前期日程の募集人員を45人から40人に減員するという。

 へき地での医療態勢の確保が課題となっている中、将来、県内に定着して地域医療を担う医師の確保強化が狙い。県内推薦入試枠は05年度から全国に先がけて実施し、05年度は県内11校から22人、06年度は県内13校から29人が受験しており、受験者数が伸びていることが背景にあった。

(以下略)

(朝日新聞から引用)


産科医、厳しい労働くっきり 厚労省研究班が調査

2006年06月18日 | 地域周産期医療

1人医長勤務だと、実質、当直回数が週7日!ということになり、1年中、休日なしで、どこにも出掛けられません。

常勤医2人体制だと、1日おきに当直と裏当直(拘束)をすることになり、やはり1年中、病院のそばから離れられません。

常勤医3人体制になって、やっと3日に1度の割合で拘束フリーとなります。

当直回数を1週間に1回以下とし、当直の翌日は非番とする勤務体制を組むためには、最低でも常勤医10人程度のマンパワーが必要となります。

いきなり常勤産婦人医10人の体制にするのは非常に難しいとは思いますが、最終的にはその程度のマンパワーが必要だと思っています。そのためには、いくつかの中核病院の産婦人科を統合して集約化してゆく必要があるのかもしれません。

****** 朝日新聞、2006年06月18日

産科医、厳しい労働くっきり 厚労省研究班が調査

 産科医は週61時間労働で、当直は月17回、休みは年50日――。そんな労働実態が、厚生労働省の研究班の調査で明らかになった。ほとんどが当直明けもそのまま続けて働いており、調査を担当した杉本充弘日赤医療センター産科部長は「かなり厳しい状況で、産科の救急診療体制は崩壊しつつある。集約化や地域の助産所との連携などの対策が必要だ」としている。

(以下略)

(朝日新聞より引用)


毎日新聞 論点:産婦人科医不足をどうする 有効な応急対策ない

2006年06月18日 | 地域周産期医療

****** コメント

私と同世代で産婦人科医になるのはほとんど男性ばかりであったが、最近の若い産婦人科医では女性の占める割合が圧倒的に多くなってきた。

我々の世代の若い頃の産婦人科医の生活は仕事一色で、毎日、病院に寝泊りしているような仕事漬けの生活が当たり前だった。特に、一人医長時代は、一年中、毎日が当直勤務のような勤務形態で、ほとんど帰宅する暇もないくらいに忙しい仕事一色の毎日だった。

女性医師の場合は、若い一時期に、妊娠・出産・育児と仕事の両立が非常に難しくなる時期が必ずある。そういう時期には、フルタイムでの勤務が難しくても、数人の女性医師で互いに都合をつけあってワークシェアしたり、育児を互いに助け合ったりできれば、その時期も、比較的無理なく、乗り越えられるかもしれない。

やはり、産婦人科医の勤務形態も、男性医師ばかりであった時代とは大きく変えてゆかねばならないと思う。

****** 毎日新聞、2006年6月3日

有効な応急対策ない

期待できる若手女性産婦人科医の増加
自己管理できない妊婦が多いのも問題

仲井育子(佐久総合病院産婦人科部長)

 産婦人科医(特に分娩に携わる産科医)不足が頻繁に報道されるようになり、おかげで、一般の方々にも認識していただける機会が増えた。しかし、ほとんどは「お産する場所がない」という現実が紹介されるにすぎず、行政への働きかけや要望が必要という文言で終わる。

 産婦人科医の絶対数不足が存在し、減少傾向に歯止めがかからない以上、有効な応急手当はない。また、60歳以上の医師が3分の1を占める高齢化問題と30歳以下の若手の6割が女性であるという事実もさほど表に出されていない。今後、高齢医師の退職と女性医師自身の妊娠・出産問題が積み重なるため、産科医療体制の危機的状況が短期間で解決されることはありえない。この事実を、まず多くの方に認識していただきたい。

 私自身は、産婦人科医として30年目に入り、地方基幹病院の勤務医として日々疲弊しつつも何とか奮闘している。女性という立場からみれば、この30年の変化は極めて大きい。妊娠・出産・育児をしながら仕事を継続してきた者の視点から、女性医師の増加について少し述べたい。

 私が医師になったころは、女性医師自体が数%の存在にすぎず、外科系医局は門戸が閉ざされていることも珍しくなかった。産婦人科も典型的な男社会で、私の入局時、先輩は全員男性であり、私の後に続く女性入局まで6年間の空白があった。最近の急激な女性医師の増加は、多くの男性医師にとって予測外の現象であろう。現在、教授や病院長、部長クラスはほとんどが私と同世代の男性である。彼らが本音では非常に困惑し、できれば拒絶したいぐらいと思っていても不思議はない。

 私はどの診療科においても、男女はほぼ同数の医師がかかわるのが理想的だと考えている。現状はあまりにいびつすぎるが、適正な状況に発展するまでには、まだまだかなりの年数を要するであろう。

 若手女性医師がどの程度、産婦人科医であり続けられるであろうか。甘く見ても、半分が関の山だろう。自身の妊娠・出産・育児に直面した時、改めて男社会であることを実感し、厳しい現実の前に離職を選択していく。24時間拘束される産婦人科医療の現場は心身の負担を強いる。男性にとっても過酷なものである。しかし、産婦人科医を選ぶ女性は「やりがいがある」という理由で増えてきた。大いに期待できると言えまいか。

 産婦人科医自身が安心して出産できる状況にあらずして、「安心してお産ができる」体制など提供できるはずがないと思う。まだまだお寒い情勢が続き、残念ながら多くの妊産婦さんに不安や不便を強いるであろう。

 ただ、最近の妊婦さんには、自己管理ができない方も多い。その点は認識を改めてほしいと思う。

 産婦人科医の願いは、元気な赤ちゃんをお母さんに抱いていただくことだ。産声をあげた赤ちゃんに「ようこそ!」と心から声をかけたい、そんな思いに共感していただけるとうれしい。

(毎日新聞、2006年6月3日)


出産扱う産科は65% 3000施設、常勤医は8000人 学会調査、推計を下回る

2006年06月17日 | 地域周産期医療

****** コメント

参考:http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/JYOSEI/center.htm

日本全国では、総合周産期母子医療センターが54施設、地域周産期母子医療センターが187施設認定されている。

北海道では、総合周産期母子医療センターが2施設、地域周産期母子医療センターが25施設認定されている。しかし、地域周産期母子医療センターと認定された施設が、次々に産科部門を閉鎖せざるを得ない事態に追い込まれているようなので、現在の2次医療圏を統合してより広域の二次医療圏に設定しなおし、2次医療圏の数を思い切って減らして医師の再配置を進めてゆくしかないと思われる。

****** 共同通信、2006年6月15日

出産扱う産科は65% 3000施設、常勤医は8000人 学会調査、推計を下回る

日本産科婦人科学会(武谷雄二(たけたに・ゆうじ)理事長)は14日、産科や産婦人科を掲げる医療機関のうち、実際に出産を扱っているのは約65%に当たる3063施設で 、常勤医師は7985人とする初の全国調査の結果を発表した。

厚生労働省の調査を基にした推計(5000施設以上、1万1000人以上)を大幅に下回った。

少子化に加え、医師の高齢化や厳しい労働環境の産婦人科を目指す医師が減っているなどで、出産の扱いをやめる施設が増えているためとみている。

調査は同学会の委員会(委員長・吉川裕之(よしかわ・ひろゆき)筑波大教授)が、産婦人科の集約化に向けた具体策を検討するために実施。全国の地方部会を通じ、昨年12月 1日時点で調査し、東京都の一部を除き回答があった。

産科、産婦人科のある病院(20床以上)と有床診療所は計4740施設あった。このうち出産を扱っているのは1280病院、1783診療所の計3063施設(約65%)。 残る1677施設(約35%)は、妊婦健診は行っていたが、出産は扱っていなかった。

また、出産を扱う常勤医師は7985人で、1施設平均2.45人。大学病院を除くと平均1.74人だった。大学病院を含めても平均医師数が2人以下しかいない県も、青森、 福島、岐阜など8県あった。

病院の約78%は医師が4人以下。医師1人の病院が最も多かったのは石川県で40%、2人以下の病院が多かったのは帝王切開を受けた女性が死亡し医師が逮捕、起訴された病 院のある福島県で71%だった。

厚労省などは昨年、医師不足の地域での産科医療の安全確保のため、医師の集約化を進める方針を打ち出している。しかし調査では、集約化の第一段階の目標である医師5人以上 を確保している病院は334施設にとどまり、その半数以上は大都市のある都府県だった。

=産婦人科医の不足=

産婦人科医の不足 労働時間が長く、当直や深夜の緊急呼び出しが多いなど勤務環境が過酷で、医療訴訟を抱える割合も高いことなどから、産婦人科を目指す若手医師が大幅に減っている。さらに2 004年、新人医師に指定病院での2年間の臨床研修を義務付ける制度が始まり、これまで派遣を受けていた関連病院での医師不足に拍車をかけているとみられる。

(共同通信、2006年6月15日)


読売新聞:“マイ助産師”見つけよう

2006年06月17日 | 地域周産期医療

****** コメント

今、多くの産科医が、その激務に耐えられず、産科業務に従事することを辞めていて、全国各地の多くの産科施設が閉鎖に追い込まれ、連日、新聞各紙で大きく報道されている。

厚生労働省や日本産科婦人科学会などが公表している資料によれば、病院における産科医の激務を緩和し、地域の産科医療を存続させるための今後の方策として、国を挙げて、産科医の集約化策を柱にすえて大きく動き出そうとしているようだ。

報道されている多くの事例では、産科医が撤退して産科が閉鎖された病院にも助産師がそのまま残っていることが多い。彼女達の多くは、病院の産科以外の部署で看護師として働いている。要するに、助産師資格を持っていて助産業務に従事する意欲が十分にありながらも、助産業務には従事していない者が日本中に非常に多く存在していることになる。

ところがその一方で、現在、分娩を取り扱っている産科施設の多くが、助産師不足で悩んでいるという矛盾した現実もある。

今後、国の政策として、日本の多くの地域で、産科医療の生き残りのために、瀕死の状態にあるいくつかの産科施設が統合されて、産科医の集約化策が実行に移されてゆく筈である。その際には、産科医と一緒に助産師も連動して同じ施設に集約化することが非常に重要だと思う。

産科医が撤退して分娩取り扱いを中止している病院にとり残された助産師達が、院内助産院を立ち上げるような動きが一部に報道されている。産科医の体制が不十分となり安全な分娩管理ができなくなったという理由で、産科医が撤退し分娩の取り扱いが中止となった病院で、とり残された助産師だけで分娩の取り扱いを再開するような動きが全国的に広がってゆくようであれば、分娩時の安全性確保という観点からは非常に問題だと思われる。

参考:

産婦人科医療を安定的に供給する体制の提案、日本産科婦人科学会

緊急提言(日産婦委員会):ハイリスク妊娠・分娩を取り扱う病院は3名以上の常勤医を!

拡大産婦人科医療提供体制検討委員会配付資料

朝日新聞 神奈川: 助産師の活躍期待

****** 読売新聞、2006年6月16日

どうする?私たちのお産 “マイ助産師”見つけよう

 静岡県浜松市の主婦佐藤友子さん(30、仮名)は2人目のお産に、同市の「石井第一産科・婦人科クリニック」を選んだ。6人の助産師が、母乳育児に熱心に取り組み、入院中は毎日母乳の勉強会があり、丁寧に教えてくれた。

 3年前に初めてのお産で入院した病院では、母乳で育てたかったのに相談に乗ってもらえず、ノイローゼのようになってしまった。

 「1人目の時、あんなに悩んだのがウソみたいです」

 同クリニックでは、お産も助産師が中心となり、できるだけ医療処置を行わない自然なお産を目指している。院長の石井広重さん(56)は「いよいよ生まれるという時に呼ばれていくけれど、僕が分娩(ぶんべん)室にいるのは10分程度。そうでなければ、常勤医師1人で年間600件のお産はこなせない」

 産科医が不足している今、リスクの低いお産は助産師に任せてはどうか、という議論が盛り上がっている。しかし、石井さんのクリニックのように、助産師が活躍している診療所は少ない。

 厚生労働省によると、日本の赤ちゃんの47%は、ベッド数19以下の診療所で生まれている。ところが、2万6000人いる助産師のうち、診療所勤務は2割足らず。雇用は義務付けられているわけではないため、1人もいない診療所もある。

 診療所に助産師が少ない背景には、待遇の問題などもあるが、横浜市などで出産準備クラスを開いている日本出産教育協会代表の戸田律子さんは「妊婦がもっと助産師の役割を知り、活躍している所を選ぶようになれば、そうした施設が増える手助けにもなるのでは」と話す。

 戸田さんのクラスに来る妊婦の中にはお産の知識はあっても、看護師と助産師の区別が付かない人が3~4割はいるという。

 実際どこで産むか選ぶ際、助産師の有無を考慮する妊婦はあまりいない。首都圏のある総合病院は、助産師が妊婦健診を担当する「助産師外来」を導入し、きめ細かいサービスに取り組んでいるが、きれいな病室や豪華な食事が売り物の診療所に妊婦が流れ、ベッドが余っているという。

 このような状況で、自ら「助・助産師」を名乗り、母親と助産師をつなぐ活動に力を入れる女性もいる。横浜市の熊手麻紀子さんは3人の子の出産や子育てを助けてもらった経験から、2001年に母親の体験談を集めた「だから日本に助産婦さんが必要です」を自費出版した。

 「助産師は、妊娠・出産や子育てのプロ。お産の場でもっと活躍すれば、女性も支援が受けやすいし、医師の負担も減らせるはず。ホームページで情報発信している人も多いので、相談ができる“マイ助産師”を見つけて」と、熊手さんは話している。

(2006年6月16日  読売新聞)

****** 読売新聞、2006年5月1日

助産師6700人不足

産科施設 75%“定員割れ”

 全国的に産婦人科医不足が問題になる中、出産を扱う産科施設の75%で助産師が不足し、その不足数は約6700人に上っていることが日本産婦人科医会(会長・坂元正一東大名誉教授)の「助産師充足状況緊急実態調査」で明らかになった。

 厚生労働省の助産師の需給見通し(1700人不足)を大幅に上回るもので、産科医に加え、助産師も不足と我が国の産科医療が極めて深刻な状況にあることが改めて浮き彫りになった。

 調査は昨年12月から今年2月にかけて、産婦人科を標榜(ひょうぼう)するほぼすべての医療機関6363施設を対象に実施。5861施設から回答(回答率92・1%)を得た。

 分娩(ぶんべん)を取り扱っている医療機関(有床診療所と病院)は2905施設。現在、計1万6748人の助産師(うち病院は1万3872人)が勤務していた。

 これら産科施設が、24時間態勢の整備に加え、週40時間勤務や助産師自身の産休、育児休暇の確保など、労働基準法を順守する、労働環境を維持するには計2万3466人の助産師が必要で、計6718人(病院は2515人)が不足していることが分かった。

 また、分娩を扱う医療機関で、必要な助産師の数を満たしていなかったのは75・3%に当たる2188施設に上った。

 厚労省の今年の助産師の需給見通しによると、助産師の不足は1700人程度と今回の調査より少なかった。

 同医会常務理事の佐藤仁(まさし)・舘出張(たてでばり)佐藤病院院長(群馬県高崎市)は「この深刻な状況が続けば、多くの産婦人科の医療機関が機能マヒに陥る。スタッフ不足の過重な負担を避けるため、現在は許容されていない、看護師が分娩前に妊婦の容体を監視・管理することを、認めてもらいたい」と話している。

 助産師 看護師資格を持つかそれと同等の教育を受けた女性が、国家試験に合格すると免許が与えられる。正常分娩の場合、医師の監督なしで病院、家庭などでの出産に立ち会い、介助、支援ができる。助産婦と呼ばれていたが、法改正に伴い、2002年3月に助産師に改められた。

(2006年5月1日  読売新聞)