喫茶 輪

コーヒーカップの耳

『足さん』

2022-03-04 10:14:55 | 
中嶋裕子さんという人からお送りいただいた。

『足さん』(中嶋紗弥香・中嶋晃太郎・中嶋蒼太著・編集工房ノア刊)。
裕子さんの三人の子どもさんの口頭詩集です。
表紙は蒼太君の絵。いいですねえ。

三人のうちの晃太郎君の詩がNHK・Eテレで、一昨日放映されました。裕子さんに事前に教えて頂いていたのです。
ご家族で出演。
10分足らずでしたが、いくつかの詩が紹介されました。
兄弟で元気に家の周りで遊ぶ姿や、お母さんの裕子さんの談話が紹介されたりして、いい番組でした。

『足(あし)さん』から詩を紹介しましょう。

これは紗弥香さんの「地きゅう」という詩。紗弥香さんは先日、神戸新聞の「読者文芸」欄で特選になった人。
「地きゅう」
  ざりがにをつかまえた
  こうちゃんが
  虫入れをひっくりかえした
  ざりがにの
  地きゅうがかたむいている


虫入れというのはバケツのことでしょうか。作者はザリガニになったつもりで感じています。
子ども独特の感覚です。

これも紗弥香さん。
「おとしあなができたよ」
  まえばがぬけたよ
  くちのなかに
  おとしあなができたよ
  おとなりのはが
  びっくりして
  のぞきこんでるよ


「なんきんじょう」
  ちいさなまちの
  ちいさなかばん
  こびとさんのおとしものかな

対象をよく見て、この子にしか感じられない感じ方を言葉に。

これは晃太郎君。
「たのしいへや」
  ママは
  「かたづけなさい
  きたないへや」
  というけど
  ちらかっているのは 
  たのしいへやよ


テレビでも映っていましたが、晃太郎君の部屋にはびっくりしました。見事な集中力と持続力の感じられる創造の部屋でした。

「ママへ(1)」
  ママ
  どうしたら うれしい
  何をしたら
  よろこぶん  
  ママがわらっていると
  たのしくなってくるよ


なんと心優しい子でしょうか。

同じく晃太郎君。
「手をつなごう」
  ママ
  なんで
  すきな人と手をつないだら
  こんなに
  うれしいん?

  手をつなぐだけやのに


これは凄い詩です。簡単そうで、なかなかこうは言えないでしょう。
この一篇を採取できただけでも、この一冊は値打ちがありますね。

ところで口頭詩集ですが。
わたしも遠い日に自分の子ども二人の詩集を作っています。
長男ひとしの『ライオンの顔』1991年刊。
長女きよの『きよのパーティー』1992年刊。
これらの二冊、どなたが寄贈されたのかしらないのですが、西宮図書館に所蔵されています。
たった30部ほどしか作らなかったものです。
杉山平一先生の勧めで、まど・みちおさんにお送りしたら、丁寧なハガキをくださったのでした。

それぞれから一篇ずつ。
ひとし 3歳。
  「お月さん」
  お月さん、電気ついてるわ。
  お月さんね、車うごいたら お月さんもね
  ついてくるよ。
  車とまったらね お月さんもとまる。


きよ 9歳。
  「もしも」
  もしもお父さんがね
  いまのお母さんんと別れてね
  よその 子どもが三人ある奥さんと
  結婚したらね
  わたしとお兄ちゃんとで
  その人たちを いじめるからね
  覚悟しといてよ
  わたしは ほんまにやるからね
  わたしはきつい女やねん。


子どもの発想は凄いですね。

今回、『足さん』を読ませていただいて、わたしも遠い昔の素晴らしかった時を思い起こさせていただきました。
ありがとうございました。



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