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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇プリンツとウィーン室内合奏団のモーツアルト/ブラームス:クラリネット五重奏曲

2009-04-30 07:24:03 | 室内楽曲

モーツアルト:クラリネット五重奏曲
ブラームス:クラリネット五重奏曲

クラリネット:アルフレート・プリンツ

弦楽合奏:ウィーン室内合奏団

CD:日本コロムビア 20CO-2841

 このCDの2曲のクラリネット五重奏曲を聴くと、懐かしいクラシック音楽の故郷に戻って、思う存分、室内楽の名曲に浸れる喜びが体の奥から湧き上がってくる感じがして何ともいえない。プリンツのクラリネットは、実に平穏にメロディーを奏で、少しも気負ったところがない。ゆったりとした、そして暖かみのあるその雰囲気は、プリンツならではの世界である。

 モーツアルトのクラリネット五重奏曲はともかく、ブラームスのクラリネット五重奏曲はについては、多くのクラリネット奏者が人生の黄昏を思わせるような諦観に満ちた演奏を行うのが常であるが、プリンツはそんなことは一切お構いなしに、ブラームスの世界を優雅に奏で切る。

 プリンツのクラリネットの音色自体が他と比べられないほどの美しさと輝きに満ちているが、これはハンマーシュミット製のエーラー・システムと分厚くてなかなか吹くことが困難なリードから生まれるのだそうだ。アルフレート・プリンツは、1930年ウィーン生まれで、ウィーン国立音楽アカデミーに学んだ。15歳の若さでウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団。1955年からは伝説のクラリネット奏者のレオポルド・ウラッハの跡を継ぎウィーンフィルの首席クラリネット奏者に就任し、1995年に退団するま数々の名演を聴かせ、録音も多数残している。このウィーン室内合奏団とのCDのは、モーツアルトが1979年9月、ブラームスが1980年4月に、ウィーン・ポリヒムニア・スタジオで録音されたものである。

 プリンツの演奏には、師のレオポルド・ウラッハの影響が時折垣間見られるが、ウラッハほど陰影に富んだ演奏ではなく、どこか長閑で、のびのびとした明るさが身上だ。要するにウィーン情緒がたっぷりと詰まった演奏内容なのである。共演のウィーン室内合奏団がこれまた生粋のウィーン生まれの演奏者であるところから、このCDは他の録音では得られない演奏家同士の親密感に満ちたものとなっている。ウィーン室内合奏団はウィーンフィルのトップメンバーを集めて1970年に結成され、「ウィーン伝統の響きを現代に伝え、楽しんでもらうこと」を第一の使命として活動をしている室内合奏団だ。(蔵 志津久)


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