<クラシック音楽CDレビュー>
ベートーヴェン:七重奏曲 変ホ長調 op.20
モーツァルト:ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407(386c)
モーツァルト:ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407(386c)
演奏:ベルリン・ゾリステン
ヴァイオリン:ベルント・ゲラーマン
ヴィオラ:ライナー・モーク
ベルンハルト・ハルトーク
チェロ:イェルク・バウマン
コントラバス:クラウス・シュトール
クラリネット:カール・ライスター
ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ
ファゴット:ミラン・トゥルコヴィチ
CD:ワーナーミュージック WPCS-21063
ベルリン・ゾリステンは、シューベルトの八重奏曲などを演奏することを狙いに、1987年に創設された、弦楽器と管楽器からなる室内楽アンサンブルである。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団の3つのオーケストラのメンバーから構成されている。すなわち、ヴァイオリン:ベルント・ゲラーマン、ヴィオラ:ライナー・モークとベルンハルト・ハルトーク、チェロ:イェルク・バウマン、コントラバス:クラウス・シュトール、クラリネット:カール・ライスター、ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ、ファゴット:ミラン・トゥルコヴィチの面々である。いずれも当時、オーケストラの第一線の演奏者たちであり、それらが奏でる演奏の質は、正に折り紙付きのヴィルトゥオーソ・アンサンブルと言うにふさわしい。
ヴァイオリン:ベルント・ゲラーマン
ヴィオラ:ライナー・モーク
ベルンハルト・ハルトーク
チェロ:イェルク・バウマン
コントラバス:クラウス・シュトール
クラリネット:カール・ライスター
ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ
ファゴット:ミラン・トゥルコヴィチ
CD:ワーナーミュージック WPCS-21063
ベルリン・ゾリステンは、シューベルトの八重奏曲などを演奏することを狙いに、1987年に創設された、弦楽器と管楽器からなる室内楽アンサンブルである。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団の3つのオーケストラのメンバーから構成されている。すなわち、ヴァイオリン:ベルント・ゲラーマン、ヴィオラ:ライナー・モークとベルンハルト・ハルトーク、チェロ:イェルク・バウマン、コントラバス:クラウス・シュトール、クラリネット:カール・ライスター、ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ、ファゴット:ミラン・トゥルコヴィチの面々である。いずれも当時、オーケストラの第一線の演奏者たちであり、それらが奏でる演奏の質は、正に折り紙付きのヴィルトゥオーソ・アンサンブルと言うにふさわしい。
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ベートーヴェン:七重奏曲変ホ長調 op.20は、6つの楽章からなる7つの楽器による室内楽曲。作曲されたのは1799年から1800年にかけてで、同時期に作曲されたものには交響曲第1番などがある。作曲者によるピアノ三重奏への編曲版も存在する(ピアノ三重奏曲第8番 変ホ長調 作品38)。その内容は、ベートーヴェン初期の傑作で、ディヴェルティメント風の明るい旋律と堂々としたリズムをもち、自らの独自性を秘めた曲で、作品が公開された当初から人気があったという。モーツァルトのディヴェルティメントのように、娯楽的でサロン向けの音楽として書かれてはいるが、旋律やリズム、構成の面などでその後のベートーヴェンらしい作品の登場を予感させる部分も随所に見られる。ベートーヴェン自身はというと、この成功に満足せず、その後、さらに独自性の追求に邁進して行くことになる。
ベートーヴェン:七重奏曲は、如何にもベートーヴェンの作品らしい強固な意志を感じさせる演奏とディヴェルティメント風に演奏されるものに二分されるが、このCDにおけるベルリン・ゾリステンの演奏は、どちらかと言えばややディヴェルティメント風の演奏に力点が置かれている。そのため、全部で6楽章からなり、40分を超える演奏時間も、その長さがそれほど気にかかることもなく、十分に楽しく聴き通すことができる録音となっている。ただ、この演奏は、ベートーヴェンがその後の作品で追求することになる比類のない構成力、力強さ、強固な意志の表出が、聴き進めるうちにじわじわとリスナーの下へと届けられ、聴き終わってみるとディヴェルティメント風というより、ベートヴェンの独自の世界も十分に聴き取ることができるのだ。その意味から、このCDは誠に貴重な録音だと思う。
ベートーヴェン:七重奏曲は、如何にもベートーヴェンの作品らしい強固な意志を感じさせる演奏とディヴェルティメント風に演奏されるものに二分されるが、このCDにおけるベルリン・ゾリステンの演奏は、どちらかと言えばややディヴェルティメント風の演奏に力点が置かれている。そのため、全部で6楽章からなり、40分を超える演奏時間も、その長さがそれほど気にかかることもなく、十分に楽しく聴き通すことができる録音となっている。ただ、この演奏は、ベートーヴェンがその後の作品で追求することになる比類のない構成力、力強さ、強固な意志の表出が、聴き進めるうちにじわじわとリスナーの下へと届けられ、聴き終わってみるとディヴェルティメント風というより、ベートヴェンの独自の世界も十分に聴き取ることができるのだ。その意味から、このCDは誠に貴重な録音だと思う。
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モーツァルト:ホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407(386c)は、独奏ホルンと弦楽のための五重奏曲である。自筆譜が散逸してしまっているため詳しい作曲時期・目的は不明であるが、親しい友人であったホルン奏者ヨーゼフ・ロイトゲープのために、4曲のホルン協奏曲を作曲する前の1782年末頃に作曲されたものと推測されている。内声部の充実とともにヴァイオリンと独奏ホルンの対話が鮮明になるという効果をあげ、室内楽というよりも協奏曲的な性格を持っている。ロイトゲープは、モーツァルトがザルツブルクに定住してから親しくなった友人で、モーツァルトとは冗談相手の親友となっていた。有名な4曲の番号付きのホルン協奏曲及びコンサートロンド K.371は、ロイトゲープのために書かれたもの。この曲は、協奏曲を作曲するに先立ってホルンの演奏技術を試す意味もあったと推測されている。
モーツァルトの4曲のホルン協奏曲(K.412、K417、K447、K495)は、多くのリスナーにとってはお馴染みの曲となっているに違いない。ところがホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407(386c)というと、聴いたことのないリスナーが多いのではないか。このCDには、ベートーヴェン:七重奏曲にカップリングされてホルン五重奏曲が収録されているので、この曲を聴くいいチャンスとなる。このCDでのラドヴァン・ヴラトコヴィチのホルン独奏には、その音色の美しさに加え、軽快で、輪郭のくっきりとしたホルンの魅力がたっぷりと盛り込まれており、たちまちのうちにその演奏の魅力の虜になること請け合いだ。このホルン五重奏曲 が、有名な4曲のホルン協奏曲の習作的位置づけとなるという意味合いが、自然と伝わってくるような演奏内容となっている。(蔵 志津久)
モーツァルトの4曲のホルン協奏曲(K.412、K417、K447、K495)は、多くのリスナーにとってはお馴染みの曲となっているに違いない。ところがホルン五重奏曲 変ホ長調 K.407(386c)というと、聴いたことのないリスナーが多いのではないか。このCDには、ベートーヴェン:七重奏曲にカップリングされてホルン五重奏曲が収録されているので、この曲を聴くいいチャンスとなる。このCDでのラドヴァン・ヴラトコヴィチのホルン独奏には、その音色の美しさに加え、軽快で、輪郭のくっきりとしたホルンの魅力がたっぷりと盛り込まれており、たちまちのうちにその演奏の魅力の虜になること請け合いだ。このホルン五重奏曲 が、有名な4曲のホルン協奏曲の習作的位置づけとなるという意味合いが、自然と伝わってくるような演奏内容となっている。(蔵 志津久)