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◇クラシック音楽CDレビュー◇フォーレ:ピアノ四重奏曲第2番/ピアノ五重奏曲第2番

2021-09-07 09:43:23 | 室内楽曲



<クラシック音楽CDレビュー>



~フォーレ:ピアノ四重奏曲第2番/ピアノ五重奏曲第2番~



フォーレ:ピアノ四重奏曲第2番

           ピアノ:ジャン=フィリップ・コラール
           
           弦楽三重奏:パレナン四重奏団員

     ピアノ五重奏曲第2番
     
           ピアノ:ジャン=フィリップ・コラール

           弦楽四重奏:パレナン四重奏団

                  ジャック・パレナン(第1ヴァイオリン)
                  ジャック・ゲスタン(第2ヴァイオリン)
                  ジェラール・コセ(ヴィオラ)
                  ピエール・ペナスウ(チェロ)

CD:エラート/ワーナークラシックス WPCS23167~8から




【フォーレ 室内楽曲集 第2集】


フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番

         ピアノ:ジャン=フィリップ・コラール
    
         ヴァイオリン:オーギュスタン・デュメイ
         ヴィオラ:ブルーノ・パスキエ
         チェロ:フレデリック・ロデオン

フォーレ:ピアノ四重奏曲第2番

         ピアノ:ジャン=フィリップ・コラール

         弦楽三重奏:パレナン四重奏団員

     ピアノ五重奏曲第1番/第2番

         ピアノ:ジャン=フィリップ・コラール

         弦楽四重奏:パレナン四重奏団

     弦楽四重奏曲

         弦楽四重奏:パレナン四重奏団

                ジャック・パレナン(第1ヴァイオリン)
                ジャック・ゲスタン(第2ヴァイオリン)
                ジェラール・コセ(ヴィオラ)
                ピエール・ペナスウ(チェロ)

CD:エラート/ワーナークラシックス WPCS23167~8






「フォーレ 室内楽曲集 第2集」と名付けられたCD2枚組アルバムの中から、ピアノ:ジャン=フィリップ・コラール、パレナン四重奏団(員)によるフォーレ:ピアノ四重奏曲第2番とピアノ五重奏曲第2番を聴いてみることにしよう。

 ジャン=フィリップ・コラール(1948年生まれ)は、フランス、シャンパーヌ地方のマルイユ・スィル・アイ出身。パリ音楽院にてピエール・サンカンに師事。1969年「ロン=ティボー国際コンクール」5位入賞。1970年第2回「国際シフラ・コンクール」優勝。フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルといった近代フランス音楽のピアノ曲の専門家として知られるほか、ラフマニノフの卓越した解釈によっても知られている。ソリストとして世界各地で演奏旅行を続けているほか、各国の数々の名オーケストラとも共演を重ねている。また室内楽の演奏にも卓越した演奏と繊細鋭敏な感覚を発揮して評価が高い。2003年「レジオン・ドヌール騎士章」受勲。

 パレナン四重奏団は、ジャック・パレナンを中心にパリ音楽院出身者によって1943年に結成された。かつて、フランスの弦楽四重奏団としてその名を世界に馳せた。ジャック・パレナンは、パリ音楽院で著名なカルヴェに師事。このカルヴェの指導の下、同音楽院で学んだ3人と共に弦楽四重奏団を結成。1957年と1961年の2回、来日を果たしている。同弦楽四重奏団の特徴は、どちらかというと明るい音色に加え、ときおり張りつめた緊張感もみせ、まるで透明感溢れる水彩画を見ているような雰囲気を漂わすなど、フランスのクァルテットの良さを存分に持ち合わせている。

 フォーレ:ピアノ四重奏曲第2番 ト短調 作品45は、1886年に完成したピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための室内楽曲。この曲の初演が1887年1月であることから、おおよそ1885年から1886年にかけての作曲されたと考えられる。 この時期、フォーレは他の作品をほとんど書いない。1885年7月25日、フォーレが40歳のときに父が死去しており、これをこの曲の作曲動機と結びつける見方もある。フォーレはこの曲をドイツの著名な指揮者、ハンス・フォン・ビューロー(1830年―1894年)に献呈している。 また、フォーレは、チャイコフスキーにもこの曲の楽譜を贈っている。

 フォーレは、1883年にマリー・フレミエと結婚、さらに1885年には室内楽作品の功績が認められ、フランス学士院からシャルティエ賞を受賞するなど、充実していた頃の作品で、作品自体、生き生きとした内容となっているが、第3楽章は父の死を悼んでか、しみじみとした情感が印象に残る。この曲でのジャン=フィリップ・コラールのピアノは、明確で明るく、一点の曇りもないような爽快な演奏内容に徹する。一方、パレナン四重奏団員の演奏は、微妙なニュアンスに彩られた奥深さを強調した演奏を見せる。これらの二つの要素が結びつくことによって、この曲が普段聴く以上の新たな広がりを見せる。特に第3楽章は、両者が強固に結びつくことで、至高の美を聴かせてくれる。

 フォーレ:ピアノ五重奏曲第2番 ハ短調 作品115は、1919年夏に着手され、2年後の1921年に完成した。第2番の初演は、第1番の初演から15年が経っていた。フォーレは、1919年の夏、オート=サヴォワ県の村アヌシー=ル=ヴューに逗留した。この地で歌曲集「幻影」を完成させた後に、ピアノ五重奏曲第2番に着手。1905年からパリ音楽院の院長職にあったフォーレは、その職務のために作曲の中断を余儀なくされていた。そこで、74歳という高齢のため院長職を退職し、作曲に専念することになる。しかし、その頃、聴覚障害は深刻で、極度の難聴に加えて、わずかに聞こえるその音自体も狂っていたといわれている。

 この曲は、フォーレの晩年の作品で、何気なく聴くと難解な室内楽曲に思えるが、何回も繰り返し聴いているうちに、フォーレの当時の心境がじわじわと心に沁みてくる。ベートーヴェンが耳が聴こえなくなりながらも作曲したことは広く知られているが、実はフォーレの晩年も同じ状態に置かれていた。初演の時、この曲が聴衆から熱狂をもって迎えられた背景にはこのことを抜きにしては語れない。この曲でのジャン=フィリップ・コラールとパレナン四重奏団の演奏は、あえて難解さを避けることなく、真正面から向き合う。そうすることによって、当時のフォーレの置かれていた心情がひしひしと伝わってくるのだ。特に、第3楽章の限りなく奥深い演奏内容が耳から離れない。(蔵 志津久)   


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