寒いですね。冬より寒いという感じがします。何せ、身体も気力も緩んでしまいましたからね。だんだん寒くなってくるときには覚悟が次第に固まってきますけど、心の中で暖かくなったといったん決めてしまいましたから、その後に「また来たよ」なんて言わんばかりに戻って来た寒さに対しては、気持ちはもう無防備な状態になってしまっていますから。
もう敵は去ったとして、城の防備を解いたところに俄に敵が押し寄せてきた、なんてことに似ているんじゃ無いでしょうか。
急に襲われたって、土嚢は崩してしまっているし、櫓も分解し、殿様は温泉に湯治に行ってしまっていて今ごろはお女中たちとどんちゃん騒ぎをしているんじゃないの?とか、兵糧米も食べ始めてしまったし、「あちゃーっ。鎧や甲なんか修理に出してしまったよ。残っているのは竹槍くらいなもので。」 とか・・・・。
「おいおい、何を考えているんだね。たかが少しばかりの寒さが戻ってきたくらいで。大げさな。」 なんて言われそうなことを考えてしまいました。でもまあ、そういう事を思って見るのも楽しいものですから。
寒いと言っても、少しずつは本当の春が歩み寄って来ている気配はします。たまたま気流の関係でこうなっているんだろうとくらいしか思っていません。その判断は間違いであっても、たいしたことではありませんし。
種がこぼれたのか、ここに移植されたのか、とにかく此処に居場所を定めてから1,100年とはすごいものです。その間、何を見、どういうことを思ってきたのか。木と語ることが出来るのなら、聞いてみたいものです。「なーーんにも。」 なんて言わないでね。
人生の歌
人もをし人もうらめし あぢきなく
世を思ふゆゑに物思ふ身は 後鳥羽院
人をいとおしく(をし=愛しい、かわいい)思ったり、人を恨めしく思ったりする
つまらないなと世を思ったりして 自分というものはあれこれと思うものだ
世の中よ道こそなけれ思ひ入る
山の奥にも鹿ぞ鳴くなる 皇太后宮大夫俊成
世の中は(辛いことから逃れる)道が無いものだ
いろいろ思いながら分け入ってきたこんな山の奥でも鹿が(もの悲しく)鳴いている