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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

細胞膜直すタンパク質を解明=京都大学ら

2008年12月01日 | 遺伝子組替マウス
 穴が開いた細胞膜を修復するときに働くタンパク質を、京都大薬学研究科の竹島浩教授ら日米の研究グループが突き止めた。タンパク質の異常が筋ジストロフィーの原因の一つである可能性があるという。英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」で1日に発表する。

 竹島教授らが見つけた細胞膜近傍のタンパク質MG53の機能を調べた。MG53は、心臓や筋肉の絶えず動いて傷つきやすい細胞で作られている。

 MG53を作れないマウスは、成長とともに細胞が壊れ筋細胞が貧弱になり、筋ジストロフィーと同じ症状を示した。MG53が作れない細胞は細胞膜に穴を開けても穴はふさがれないが、外からMG53を入れると修復できるようになった。

 MG53は、細胞膜と同じ成分のリン脂質でできた小胞と結びついており、細胞膜に開いた穴に集まり、リン脂質が穴をふさぐように働いていた。

 筋ジストロフィーはさまざまな遺伝子の異常によって引き起こされるが、症例の半数近くは原因遺伝子が分かっていない。MG53の異常も原因である可能性があり、日米で確認を進める。

 竹島教授は「MG53が働くようにする筋ジストロフィー治療も期待できる。潰瘍(かいよう)や炎症も細胞の損傷が関係しており、MG53やMG53に似た他のタンパク質の役割を調べたい」と話している。

[京都新聞 2008年12月01日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008120100026&genre=G1&area=K00

早期実用化へ競争より協力 iPS細胞発表1年、京都大学・山中教授

2008年12月01日 | 再生医療
 京都大iPS細胞研究センター所長の山中伸弥教授が1日、ヒトiPS(人工多能性幹)細胞樹立の発表から1年を迎え、京都市左京区の京大時計台記念館で記者会見した。多忙を極めた1年間を振り返りつつ、「目標は一日でも早い実用化」とし、競争ではなく海外の研究機関と協力し、より多くの研究成果を発信することに強い意欲を見せた。

 山中教授は1年の成果として、全国のiPS細胞の研究拠点や企業との連携など「オールジャパン」の体制づくり、iPS細胞の基本特許の国内成立、iPS細胞研究センターによる特許出願体制の整備、より安全なiPS細胞の樹立の4点を挙げた。

 今後1年間の目標として、国内だけでなく海外の研究機関とも積極的に協力することを掲げた。

 iPS細胞研究で独自の成果を挙げているカナダ・トロント大と10月に、特定の患者の細胞から作製したiPS細胞についての情報交換を内容とした協定を締結し、米ハーバード大の研究者とも来年1月に非公開で会合を持つ予定で、「一日も早い実用化という共通の願いの下、研究データを交換し、場合によっては共同研究もしたい」と抱負を述べた。

 かつて臨床医として患者を診てきた経験から「論文を出すことも大切だが、患者が治ることの方がうれしい」と強調。治療の難しい病気の女児の親から「iPS細胞研究の報道があって初めて、娘に『10年たったら治るかもしれない』と本当に(自信を持って)伝えることができた」という感謝と励ましを受けたことを打ち明け、感極まって涙ぐむ場面もあった。

[京都新聞 2008年12月01日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008120100175&genre=G1&area=K00