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心筋再生:ヒト応用目指しブタ実験へ=自治医科大学、東京女子医科大学

2006年12月30日 | 再生医療
 自治医科大と東京女子医大の研究チームが来年1月、ブタの心筋細胞から作ったチューブを別のブタに移植し拍動させる実験に乗り出す。ラットを使った同様の実験は既に成功しており、研究チームの小林英司・自治医大教授(移植免疫)は「将来はヒトの細胞から心不全治療に使える『拍動動脈』を作りたい」と話す。

 現在、心臓移植を受けられない重症の心不全の患者は、補助人工心臓を埋め込む治療を受ける。長く使用できるタイプもあるが、機械を体内に入れることによる感染症や機械の故障などトラブルも多い。

 研究チームは昨年春、生まれたばかりのラットの心筋細胞を培養し、別のラットから取り出した動脈に巻きつけて直径1.3ミリのチューブを作った。それを大人のラットの大動脈に移植したところ、4週間後にチューブが独自の拍動をし、血圧が上がっていることを確認した。

 ブタの実験では、ブタの胎児から心筋細胞を採取して同様のチューブを作り、別の大人のブタの大動脈に移植する。移植するチューブが1本の場合と3本の場合を比べ、血圧上昇への関与を調べる。実験が成功すればヒトへの応用も視野に入ってくるという。

 ただ、大人のヒトの心筋細胞を増殖させることは難しいため、実現には受精卵から作る胚(はい)性幹細胞(ES細胞)などから心筋細胞を成長させる技術の確立が必要だ。

 小林教授は「国内では脳死臓器提供者が非常に少なく、移植までの待機期間が非常に長い。チューブは生体と同じ組織。補助人工心臓と違って動力の外部エネルギーも不要なため、成功すれば患者側のメリットは大きい」と話している。
【永山悦子】

[毎日新聞 2006年12月30日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20061230k0000m040117000c.html