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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ヒト遺伝子導入米を承認、薬用成分生産で=米農務省

2007年03月03日 | 創薬
 【ワシントン2日共同】人間の遺伝子を組み込んだコメの商業規模での栽培を米農務省が基本的に認めたと、米紙ワシントン・ポストが2日報じた。カリフォルニア州のバイオ企業が申請していた計画で、下痢止めの薬効があるタンパク質を抽出するのが目的という。

 花粉が飛散してアレルギーの原因になったり、ほかの食用のコメに遺伝子が広がったりする可能性が市民団体などから指摘されている。

 計画しているのはベントリア・バイオサイエンス社。抗菌作用のあるタンパク質ラクトフェリンやリゾチームをつくる遺伝子をコメに組み込み、中部カンザス州で約1300ヘクタール栽培する。収穫したコメはその場ですりつぶして有用成分を抽出、ヨーグルトなどの健康食品への添加用や薬として利用する。

 申請を受けて環境影響評価をした農務省は「特に危険性はない」として基本的に承認、一般からの意見を聴く手続きに入った。

[共同通信47NEWS / 2007年03月03日]
http://www.47news.jp/CN/200703/CN2007030301000209.html

アメリカ農務省 ホームページ
スライド"Plant-made Pharmaceuticals & Industrials"
Ventria Bioscience社 ホームページ

子宮内膜症治療に光 マウスで発症に成功=慶応大学、実験動物中央研究所

2007年02月04日 | 創薬
 人間のほか一部の霊長類でしか発症しないため、実験動物を使った治療薬開発などが困難だった「子宮内膜症」を、マウスで発症させることに、慶応大医学部の岡野栄之、吉村泰典両教授と実験動物中央研究所(川崎市)の研究チームが成功した。

 子宮内膜症は、不妊症の原因にもなっているだけに、発症メカニズムの解明や治療薬の開発につながる研究成果として注目される。

 同研究所が開発した、人間の細胞を移植しても拒絶反応を起こさないマウスを使った上で、異物に対して拒絶反応を起こしにくい腎臓の表面に、人間の子宮内膜細胞を移植した。10週間後には、移植したすべてのマウスの腎臓の表面に子宮内膜組織が出来上がった。

 これらのマウスでは、月経周期にあわせた組織増殖や、出血なども確認されたという。

 また、今回の研究では、移植した子宮内膜細胞に、ホタルのように発光する遺伝子を組み込むという工夫もなされた。

 このため、体の外側から発光強度を測定することにより、マウスを解剖せずに体内の子宮内膜組織の増殖状況などを把握することも可能で、効率よく研究を進めることが出来るという。

 子宮内膜症 子宮の内側を覆う子宮内膜に似た組織が、子宮以外の卵巣や骨盤内などにでき、月経の周期に合わせて増殖、出血を繰り返す原因不明の病気。強い痛みを伴うという。国内には、100万~300万人の患者がいると推定されている。

[読売新聞 / 2007年2月4日]
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070204ik01.htm

慶応大学医学部・プレスリリース
http://www.med.keio.ac.jp/topics/others.html
http://www.keio.ac.jp/pressrelease/070126-2.pdf


アルツハイマー病ワクチンを開発=埼玉医科大学、南フロリダ大学他

2007年01月23日 | 創薬
 埼玉医科大学、南フロリダ大学などの国際チームは、アルツハイマー病を治療するワクチンを開発、マウスの実験で安全性と有効性を確認した。脳内にたまる原因とされるたんぱく質が半減した。成果は近く米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載される。

 注射で投与するタイプを中心に国内外でアルツハイマー病ワクチンの研究開発は盛んだが、髄膜炎や軽い脳内出血などの副作用が出るとの報告もある。今回開発したワクチンは、皮膚に直接塗ったりパッチにして張ったりして体内に吸収させることが可能で、実現すれば治療時の患者への負担も少なくて済むという。

 埼玉医科大学の森隆・助教授らは、脳にたまってアルツハイマー病を起こすとされるたんぱく質アミロイドベータ(抗原)と免疫反応を促進する薬剤として微量のコレラ毒を混ぜてワクチンを作った。

 アルツハイマー病を発症したマウスで実験。4カ月間、ワクチンを塗り続けると体内でアミロイドベータにくっつく抗体ができ、塗らなかったマウスに比べてこのたんぱく質の量が約半分になった。逆に血液中では増えた。

[日本経済新聞社 NIKKEI NET / 2007年01月23日]
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070123AT1G2300Q23012007.html


合併は今年10月・社長に田辺の葉山社長=三菱ウェルファーマと田辺製薬

2007年01月18日 | 創薬
 合併に向けて最終調整に入った国内製薬9位の三菱ウェルファーマと11位の田辺製薬は18日、合併期日を今年10月とする方針を固めた。合併会社の社長には田辺製薬の葉山夏樹社長(67)が就任する。両社は今後、合併比率や社名などを詰め、2月上旬の基本合意を目指す。

 三菱ウェルファーマと田辺製薬は18日、「合併の可能性について協議・検討を進めている」とのコメントをそれぞれ発表した。三菱ウェルファーマ株を全株保有する親会社の三菱ケミカルホールディングスも同日、「田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併を検討していることは把握している」との談話を公表した。

 三菱ウェルファーマと田辺製薬は今年6月の株主総会でそれぞれ合併を決議したうえで、10月の合併を目指す方針。東証1部上場の田辺製薬が存続会社となって非上場の三菱ウェルファーマを吸収合併し、合併会社に三菱ケミカルが50%超出資する方向で交渉している。合併会社の売り上げ規模は国内製薬6位に浮上し、研究開発力や資金力が大幅に高まる。

[日本経済新聞社 NIKKEI NET / 2007年01月18日]
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070118AT1D1800B18012007.html

日本イーライリリー:中皮腫向けの薬「アリムタ」承認、厚労省

2007年01月04日 | 創薬
 医薬品会社の日本イーライリリー(神戸市)は4日、アスベスト(石綿)が原因で引き起こされるがんの一種、悪性胸膜中皮腫向けの薬「ペメトレキセド(商品名アリムタ)」の製造販売が、同日付で厚生労働省から承認されたと発表した。

 悪性胸膜中皮腫は進行が進んでから診断されるために治療が難しく、有効な治療法がなかった。同社によると、治験では、アリムタと抗がん剤のシスプラチンを併用すると、シスプラチンの単独療法に比べ生存期間が約3カ月延びた。薬価基準が決まり次第、発売するという。
[2007.01.04./朝日新聞]
http://www.asahi.com/life/update/0104/009.html

アフリカ原産植物のエキスに抗HIV活性を確認=東北大学

2006年12月29日 | 創薬
 世界中でエイズの新薬研究が進む中、東北大大学院医学系研究科の服部俊夫教授(感染症・呼吸器病態学)らの研究グループは、アフリカ原産の植物のエキスにエイズウイルス(HIV)の感染を抑制する「抗HIV活性」があることを確認した。南アフリカでは民間療法としてエイズ治療に用いられており、有効成分を特定して新薬開発の可能性を探る。

 東北大が2006年度に着手した「アジア・アフリカプログラム」の一環。服部教授らは薬学研究科、南ア・ベンダ大学の研究者と共同で、エイズや結核など感染症の研究を進めている。

 抗HIV活性を確認した植物は、「コンブレタム・モーレ」と「ペルトフォルム・アフリカナム」。コンブレタムは熱帯を中心に草原や湿原で自生し、ペルトフォルムは美しい花を付け、アフリカ各地で生育している。
 南アフリカでは以前から、民間療法士らが根から抽出したエキスをエイズ治療薬として処方、現地では効果があるとされていた。

 研究グループは、ベンダ大が国内で採取したサンプルを使い、抗HIV活性の有無を調べた。ヒトの細胞株にHIVの入った養液をかけると、通常24時間以内に感染するが、植物エキスを加えた場合はいずれも感染しなかったという。

 今後は、エキス中の有効成分の特定と解析、化学構造の解明に力を入れ、抗ウイルス剤の開発を進める。植物の特徴や分布状況、民間療法での使用実態などを詳細に把握するため、3月に現地調査する予定。

 南アはエイズの流行が深刻化している国の一つだが、高額な治療薬を利用できる患者は少ないとされる。服部教授は「安価な新薬開発を目指しつつ、現地の民間療法も生かして、エイズの感染拡大を防ぐ方策を共同研究の中で考えたい」と話している。

[河北新報 / 2006年12月29日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061229-00000006-khk-soci

Pfizer製薬、新薬の開発中止で苦境に/ファイザー製薬

2006年12月08日 | 創薬
Pfizer製薬、新薬の開発中止で苦境に

製薬最大手の米Pfizerが、非常に有望視されていた医薬品の開発を中止する決定を下した。臨床試験の結果、服用によって死亡率が増大することが明らかになったためだ。Pfizerにとっては手痛い開発中止となった。

問題の薬はトルセトラピブ(torcetrapib)。いわゆる「善玉」(HDL)コレステロールを増やすことによって心臓発作や脳卒中を防ぐ薬だ。PfizerのCEO(最高経営責任者)を務めるJeffrey Kindler氏がつい先日、「われわれの世代で最重要と言える開発かもしれない」と自信を見せたばかりだった。

Pfizerは、トルセトラピブの試験に8億ドルもの研究資金を注ぎ込んできた。他のどの医薬品の試験にもこれほどの費用はかけていない。同社が夢に描いたのは、リピトール(Lipitor)の成功を再現することだった。リピトールは、世界でも売上高トップクラスの医薬品で、年120億ドルを生み出すPfizerのドル箱だ。Pfizer幹部らは「トルセトラピブが製品化されれば、リピトールに劣らない成功を収めるだろう」と話していた。

しかしPfizerは米国時間12月2日夜にプレスリリースを発表し、被験者1万5000人を使った臨床試験を中止せざるを得なくなったと明らかにした。3年前に開始したこの試験は、トルセトラピブが心臓発作を抑え、患者の生命を救うことを立証するはずだった。ところが、臨床実験をモニターしてきた独立の委員会が、「薬を投与した患者は、投与されなかった患者より、死亡や心血管障害の率が高い」と報告した。これによって、トルセトラピブを市場に出して成功を収めるというPfizerの希望は、完全に打ち砕かれた。

Kindler氏は2日の声明で、委員会の報告は「予期せぬものであり、失望を禁じえない」としながらも、「Pfizerは患者の利益を最優先に考えている。トルセトラピブの開発中止を決断した」と述べた。「この事態が、われわれのビジネスにどれほど深刻な影響を与えるか理解している。われわれは迅速かつ積極的に対応していく。この情報を、Pfizerの改革への取り組みと、製品ライン・財務体質の強化の両面に役立てていくことが重要だ」

トルセトラピブで見込まれた売り上げを穴埋めできそうな治験薬は他にない。Pfizerにとってこの知らせは手痛いものだったに違いいない。さらに、医師たちにとっても失望は大きかった。毎年、動脈血栓に起因する心臓発作および脳卒中の発生件数は90万件にも及ぶ。トルセトラピブがこの数字を小さくしてくれることに期待した医師は多い。リピトールや英AstraZenecaのクレストール(Crestor)など既存のコレステロール降下剤も、心臓発作のリスクを少なくとも3分の1は減らす。血圧降下剤もまた大きな効果がある。しかし、それでも心臓病は相変わらず死因のトップを占めている。

米国の非営利医療法人Cleveland Clinicの心臓病部門責任者で、トラセトラピブの研究を行っていたSteven Nissen氏は、「残念なニュースだ。患者のために、この薬には大いに期待していた。まったく新たな心臓発作予防法にこれだけの費用を注ぎ込んだPfizerは称賛に値する」と語った。

トルセトラピブの失敗により、Pfizerは苦しい時期を迎える可能性が高い。リピトールは、あと4年で主要な特許が切れる。そうなれば安いジェネリック薬が出回り、売り上げのほとんどが奪われてしまう可能性がある。そうしたなか、トルセトラピブはPfizerにとって、リピトールの売り上げ減少の打撃を和らげる最大の切り札だったのだ。

既にPfizerは、抗生物質ジスロマック(Zithromax)や抗てんかん薬ニューロンチン(Neurontin)などの特許が切れ、ジェネリック薬との競争に巻き込まれている。これらの医薬品の売り上げは横ばい状態だ。同社は11月末に、業績見通しをわずかに上方修正した。しかし一方で、販売部門従業員の5分の1にあたる2000人以上を解雇するとも発表している。

Pfizerはトルセトラピブの他にも多くの新薬の開発を手がけており、年間研究予算は70億ドルに達している。11月末に開催した研究開発会議でも、30もの研究プログラムの概要を発表した。トルセトラピブはその中の1つにすぎない。開発中の新薬は、肥満、ガン、HIV、アルツハイマー病などに対して効果が見込まれるものだ。もちろん、これらの薬でPfizerが成功を収める可能性もある。しかし、それでもトルセトラピブを失ったことは痛い。

トルセトラピブが失敗したことで、他社が開発する同様の新薬にも、同じような嫌疑がかけられる可能性がある。スイスのRocheは、Pfizerより数年遅れてトルセトラピブの類似薬を開発している。米Merckも同様の新薬を開発していると思われる。Pfizer自体にも、トルセトラピブ以外に同様の新薬が複数ある。これらは、臨床試験の初期の段階にある。

トルセトラピブの失敗の理由はよく分かっていない。これまでにも、この薬の副作用で血圧が上昇することが明らかになっており、さまざまな疑いが渦巻いていた。血圧の上昇は、それ自体が心臓発作を引き起こす。科学者の中には「トルセトラピブのような薬品で生成されるタイプの「善玉」(HDL)コレステロールは正常に機能しないのかもしれない」と指摘する声もある。RocheとMerckの新薬は血圧上昇を引き起こすとは考えられていないが、どちらもトルセトラピブとまったく同じ仕組みでHDLコレステロールを増加させる。

たとえそうした新薬のすべてが失敗したとしても、他にHDLコレステロールを増やす効果的な方法が見つかるかもしれない。Merckは、HDLコレステロールを増加させる作用がある市販のナイアシン(ビタミンB3)の主な副作用を緩和する医薬品に取り組んでいる。米Kos Pharmaceuticalsは、ナイアシンの処方薬を販売している。Pfizer、スイスのNovartisをはじめとする複数の製薬企業が、注射または経口により摂取できる合成HDLの開発に取り組んでいる。Pfizerはこれまで、こうした開発中の治療法のすべての中で、トルセトラピブによって一歩リードしていた。しかし現在、他社にはるかに後れをとることとなった。

米Cedars Sinai Medical Centerのコレステロール専門家Prediman K. Shah氏は、こう語る。「トルセトラピブについては、血圧の上昇と、どのような種類のHDLが生成されるか分からない点をめぐり、ずっと不安があった。常に影が付きまとっていたのだ」

原文タイトル:A Catastrophe For Pfizer
原文掲載サイト:www.forbes.com
著者名:Matthew Herper
原文公開日時:2006年12月2日

[日経BP-Net / 2006年12月08日]
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/forbes/061208_pfizer/

たった2つの酵素による新規ベンゼン環合成経路を発見=東京大学

2006年11月29日 | 創薬
 たった 2 つの酵素の働きによってベンゼン環を合成するという非常にシンプルな新規ベンゼン環合成経路を微生物で発見した。本酵素は微生物を用いた物質生産にも応用可能である。

 生物にとってベンゼン環を合成することはそれほど容易ではない。動物はベンゼン環合成能がないため、ベンゼン環を有するアミノ酸は必須アミノ酸として食餌から摂取しなければならない。
植物や微生物は、「シキミ酸経路」と呼ばれる経路をもっており、この経路によってベンゼン環が合成されることが知られている。シキミ酸経路あるいはそれに類似した経路以外では、ある種のポリケチド合成酵素がベンゼン環を合成できることが報告されているが、そのほかにはベンゼン環合成経路は知られていなかった。

 土壌に生息する放線菌ストレプトマイセス・グリセウスはグリキサゾンという黄色色素を生産するが、この化合物は3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸(3,4-AHBA)というベンゼン環を有する化合物を前駆体として生合成される。今回、我々は、3,4-AHBAがGriI, GriHと命名した2つの酵素の働きによって生合成されていることを突き止めた。GriIはアスパラギン酸セミアルデヒド(アミノ酸生合成の中間体)とジヒドロキシアセトンリン酸(解糖系の中間体)を結合させ、GriHがその反応産物を3,4-AHBAに変換する(添付図参照)。

 この新規ベンゼン環合成経路は、たった2つの酵素によって細胞内のありふれた2つの化合物からベンゼン環が合成されるという驚くべき経路であり、シキミ酸経路とは全く異なるものであった。3,4-AHBAはグリキサゾン以外の二次代謝化合物の前駆体にもなっており、本経路は多くの放線菌において使用されていると考えられる。一方、イネやシロイヌナズナのゲノムにも、3,4-AHBA合成の鍵酵素であるGriHと相同性を示す蛋白をコードする遺伝子が存在しているため、この経路は植物においても存在している可能性がある。

  3,4-AHBAは機能性ポリマーであるポリベンズオキサゾールの合成原料として有用な化合物である。GriI, GriH酵素遺伝子を組み込んだ微生物は3,4-AHBAを発酵生産することができたため、本研究成果は高分子原料の脱石油化という観点からも注目を集めている。

東京大学プレスリリース
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/horinouti.html
図  GriI 、 GriH による 3,4-AHBA 生合成経路
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/horinouti_clip_image003.gif

Novel Benzene Ring Biosynthesis from C3 and C4 Primary Metabolites by Two Enzymes
J. Biol. Chem., Vol. 281, Issue 48, 36944-36951, December 1, 2006
http://www.jbc.org/cgi/content/abstract/281/48/36944

「リバースジェネティクス」が注目されている、遺伝子からウイルス合成=東京大学医科学研究所

2006年11月14日 | 創薬
ウイルスとの闘いで、「リバースジェネティクス(逆遺伝学)」という技術が注目されている。
実験室内で遺伝子からウイルスをつくり出すというもので、遺伝現象から遺伝子の正体を明らかにしてきた従来の研究とは逆方向の手法だ。特定の遺伝子を改変したウイルスを増やして研究できるほか、効率のよいワクチン開発にもつながる。
いわば「ウイルスの人工合成」。これがさまざまなウイルスで可能になってきた。

 感染すると40~70%と高い死亡率を示すニパウイルス。東京大学医科学研究所の甲斐知恵子教授と米田美佐子助手らは、このウイルスでリバースジェネティクスに初めて成功、10月に米科学アカデミー紀要に発表した。

 ニパウイルスはリボ核酸(RNA)しか持たない。酵素を使ってこれを相補的DNAに変換し、サルの細胞に入れると、感染性のあるウイルスの増殖が確認できた。最も危険なウイルスに分類されているため、国内では扱えず、フランスで研究を進めた。

 このウイルスは、98年にマレーシアで見つかった。オオコウモリからブタなどを介してヒトに感染すると考えられている。甲斐さんは「なぜ死亡率が高いのかなどの謎を解明したい」と話す。

 ウイルスの遺伝子がDNAの場合は、宿主動物の細胞に入れるだけで増殖が始まが、
RNAの場合は相補的DNAへの変換が必要だ。なかでも狂犬病ウイルスやニパウイルスなどは、ほかのたんぱく質を発現させるなど複雑な手順が必要で、人工的につくり出せるようになったのは90年代になってからだ。

 永井美之・理化学研究所感染症研究ネットワーク支援センター長は「この技術を使えば、特定の遺伝子に手を加え、その働きを生きたウイルスで解析できる」と、効用を説明する。

 ワクチン開発にも威力を発揮する。世界的な大流行の発生が懸念される新型インフルエンザ。
ワクチンは鶏卵でウイルスを増やして製造するが、新型への変化が心配される鳥インフルエンザ(H5N1型)は強毒で鶏卵が死んでしまう。東大医科学研究所の河岡義裕教授らは、毒性にかかわる遺伝子を取り除く手法を確立した。
これを利用して弱毒化ウイルスがつくられ、現在、世界中で使われている。

 病原性のある麻疹ウイルスでこの技術を確立した一人、竹内薫・筑波大助教授は「病原性を高め、様々な動物の広範な部位に感染するようなウイルスをつくることも原理的には可能」という。

 その意味では危険性も秘めた技術だが、遺伝子組み換え実験についてはウイルスの危険度に応じた封じ込め対策をとるように法律などで規制されている。排水時のウイルスの処理方法や実験室の構造などが危険度の段階別に定められ、文部科学省で専門家の審査を受ける。
ニパウイルスやエボラウイルスなど、危険度分類が最も高いウイルスを扱える施設は、現在、国内にはない。

[朝日新聞 / 2006年11月14日]
http://www.asahi.com/science/news/TKY200611140243.html

インフルエンザ治療薬タミフル服用時の異常行動について注意喚起要求=米FDA報告

2006年11月14日 | 創薬
 インフルエンザ治療薬タミフルを服用した子どもに異常な行動が相次ぎ、交通事故による死者も出ていることを受けて、米食品医薬品局(FDA)は13日、異常行動に対する注意喚起の表示を製薬会社に求める方針を明らかにした。ロイター通信などが報じた。

 報道によると、FDAは薬と異常行動との因果関係を立証したわけではないが、「潜在的な危険性を緩和するため」に、服用直後からの監視が必要だとした。
 また、FDAは05年8月から今年7月までの間、タミフル服用後の自傷行為や精神錯乱などの異常行動103件の報告を受けており、そのうち95件が日本からのものだという。
 日本では既に異常行動が起こり得るとの趣旨の表示を義務付けており、これにならった表示内容になるとしている。
 タミフルは、通常のインフルエンザに有効な抗ウイルス薬としてこれまでに世界で数千万人が服用しているほか、世界的な流行が懸念される新型インフルエンザの特効薬と目されている。
(ワシントン共同)

[毎日新聞 / 2006年11月14日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20061115k0000m040048000c.html

「脊髄再生」ラットで成功、治療薬開発に期待=慶応大学、大日本住友製薬

2006年11月13日 | 創薬
 かびから取り出された物質をラットに投与し、切断された脊髄(せきずい)を再生させることに、慶応大と大日本住友製薬の共同チームが成功した。交通事故などによる脊髄損傷患者は国内に10万人以上おり、治療薬につながる可能性があるという。
13日付の米医学誌「ネイチャーメディシン」(電子版)に掲載された。

 中枢神経の脊髄が損傷すると、損傷部分より下部の脚などがまひし動かなくなる。脊髄の神経線維は一度切れると伸びないためで、「セマフォリン3A」というたんぱく質が再生を妨げる物質の一つと考えられている。
 同製薬は十数万種類の化合物を調べ、地中のかびの一種から、このたんぱく質の働きを抑える物質を見つけた。01年から慶応大と共同で研究を開始。ラットの脊髄を背中で切断し、後ろ脚をまひさせた状態にして、切断部位にチューブでこの化合物を1カ月注入した。注入ラット20匹は約3カ月後に、神経組織の1割程度が再生して部分的につながり、後ろ脚のひざなどすべての関節が動くようになった。
注入しなかったラット20匹は後ろ脚がまったく動かないままだった。

[毎日新聞 / 2006年11月13日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061113-00000029-mai-soci

武田薬品工業、藤沢に新研究所 新薬の研究開発を加速

2006年10月25日 | 創薬
 医薬品国内最大手の武田薬品工業は24日、新薬の研究開発を加速させるため、閉鎖した同社湘南工場跡地(神奈川県藤沢市)に中央研究所を新設する方針を固めた。藤沢市と大阪府茨木市のいずれかを候補地に検討してきたが、早期建設を目指す武田は、敷地を既に所有している藤沢市を選んだ。研究者は1000人規模に上り、製薬会社の研究所としては国内最大規模。10年度内の稼働を目指す。

 武田は、大阪市と茨城県つくば市と米サンディエゴ市に研究拠点をもち、研究者は計約1100人。このうち手狭な大阪工場(約850人)にある研究部門を順次、藤沢市に移す方針だ。

 投資額は500億~600億円に上る見込み。当初は約1000人規模だが、最終的に2000人規模に増員する計画もある。


 武田は、好調な業績を支えている抗潰瘍(かいよう)剤や糖尿病治療薬など主力4製品が09年以降に相次いで特許切れとなり、次の柱となる新薬の投入を急いでいる。大阪工場内の研究所は手狭な上、老朽化が進んでいた。国内外から人材を集めるには首都圏に近い藤沢市が優位と判断した。


 中央研究所の誘致をめぐっては、武田が本社を置く大阪府と、湘南工場跡地(06年3月閉鎖)がある神奈川県が昨年から綱引きを続けてきた。

[朝日新聞 / 2006年10月25日]
http://www.asahi.com/health/news/OSK200610240115.html

パーキンソン病に発症関与の酵素発見=山形大学

2006年10月14日 | 創薬
 パーキンソン病の発症に深く関与している酵素を、山形大医学部の加藤丈夫教授(神経内科)らが突き止めた。

 この酵素の働きを阻害する治療薬を開発すれば、発病の予防や進行の抑制が期待できそうだ。米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」で発表した。

 パーキンソン病は、ふるえや手足の硬直などが特徴で、大脳の神経伝達物質の欠乏で起きる神経疾患。高齢者に多く、国内には約12万人の患者がいる。

 山形大医学部と、東京のベンチャー企業「ヒュービットジェノミクス」の研究チームは、パーキンソン病の患者286人と健常者496人の細胞を採取して比較した。

 その結果、細胞膜で刺激の伝達を調節する「GRK5」という酵素の遺伝子が、患者の細胞に大量に含まれていることがわかった。患者の脳の病変部位でもこの酵素の沈着が目立った。

 患者の脳では、特定のたんぱく質が化学変化を起こし、凝集する現象が起こる。この現象が進行することで、神経細胞が死に発病すると考えられている。研究チームは、GRK5が一連の現象を促進することも確認した。

[2006年10月14日/読売新聞]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20061014it13.htm

抗癌活性のある血管内皮細胞障害物質フェニラヒスチン誘導体の開発に成功=京都薬科大学

2006年07月29日 | 創薬
 京都薬科大の林良雄助教授(創薬化学)らの研究グループは28日、がん細胞の周囲の血管を壊す化合物を開発したと発表した。新しい抗がん剤として期待できるといい共同研究を進める米バイオベンチャー会社が米国で臨床試験を始める。

 がん細胞は、増殖に必要な栄養と酸素を得るため、周囲に血管を作り細胞へ引き入れる。この新生血管の内皮細胞はチューブリンというタンパク質の繊維でできており、繊維を壊せば、がん細胞を死滅させることができる。

 林助教授らは、土壌中の微生物が作る天然化合物フェニラヒスチンの一部構造を変えた化合物を開発。投与するとチューブリンの繊維を断片化して新生血管が破壊され、がん細胞が死滅することをマウスなどの実験で確かめた。

 チューブリンは細胞分裂にも不可欠で、その機能を阻害することで、がん細胞の増殖を抑える抗がん剤はすでに臨床で用いられている。林助教授らが開発した化合物は新生血管を壊す効果がより高いという。

 臨床試験は米国の医療機関で実施する。乳がんや大腸がんなどの患者の登録を始めており、抗がん剤としての効果と安全性を確かめる。林助教授は「ほかの抗がん剤との併用で、より高い治療効果を期待できるのではないか」と話している。                
[2006年07月29日/京都新聞]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060729-00000018-kyt-l26